特許第6244490号(P6244490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6244490
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレンチューブ
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20171127BHJP
   A61L 29/04 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C08J5/00CEW
   A61L29/04 100
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-41101(P2017-41101)
(22)【出願日】2017年3月3日
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-56365(P2016-56365)
(32)【優先日】2016年3月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-66946(P2016-66946)
(32)【優先日】2016年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-172416(P2016-172416)
(32)【優先日】2016年9月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145530
【氏名又は名称】株式会社潤工社
(72)【発明者】
【氏名】大鹿 望
(72)【発明者】
【氏名】宗像 俊輔
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004-340364(JP,A)
【文献】 特開2007-185931(JP,A)
【文献】 特開2008-223019(JP,A)
【文献】 特開2010-280915(JP,A)
【文献】 特開2015-127411(JP,A)
【文献】 特開2009-1595(JP,A)
【文献】 特開2010-155361(JP,A)
【文献】 特開2015-178614(JP,A)
【文献】 特開平7-102413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00− 5/24
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
A61L 29/04
B29C 47/00− 47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉厚が0.1mm以下であって、350%以上の引張破断伸びを有し、かつ示差走査熱量測定(DSC)の昇温過程において、370℃±5℃の吸熱ピークから算出される融解エネルギーが0.6J/g以上であるポリテトラフルオロエチレンチューブ。
【請求項2】
肉厚が0.1mm以下であって、450%以上の引張破断伸びを有し、かつ示差走査熱量測定(DSC)の昇温過程において、370℃±5℃の吸熱ピークから算出される融解エネルギーが0.6J/g以上であるポリテトラフルオロエチレンチューブ。
【請求項3】
チャック間距離50mmで測定したときの、チューブ変位量が10mmのときの引張強度が50N/mm以上である請求項1または2に記載のポリテトラフルオロエチレンチューブ。
【請求項4】
肉厚が外径に対して5%以下のチューブであって、350%以上の引張破断伸びを有し、かつ示差走査熱量測定(DSC)の昇温過程において、370℃±5℃の吸熱ピークから算出される融解エネルギーが0.6J/g以上であるポリテトラフルオロエチレンチューブ。
【請求項5】
肉厚が外径に対して5%以下のチューブであって、450%以上の引張破断伸びを有し、かつ示差走査熱量測定(DSC)の昇温過程において、370℃±5℃の吸熱ピークから算出される融解エネルギーが0.6J/g以上であるポリテトラフルオロエチレンチューブ。
【請求項6】
チャック間距離50mmで測定したときの、チューブ変位量が10mmのときの引張強度が50N/mm以上である請求項4または5に記載のポリテトラフルオロエチレンチューブ。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂チューブに関するものであり、特に薄肉でチューブの材質がポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」と言う)からなるチューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PTFEチューブは、その耐薬品性、非粘着性、低摩擦性などの優れた特性から、医療用カテーテルの材料などに好適に用いられる。血管内にカテーテルを挿入して血管内部の病変箇所の切除、治療などを行う血管内手術は、患者の負担が少なく、主流になりつつある。このような用途に用いられるカテーテルは、経皮的に体内に挿入し、血管を経由して病変箇所までチューブ先端を到達させる必要があり、血管内を直進する直進性や、治療を行う術者の操作を伝達する操作伝達性などが要求される。その要求を満たすために、カテーテルは異なる特性を有する層を積層して構成されている。カテーテル内部には、治具を挿入したり薬液を注入するなどの必要があるため、内径は出来るだけ大きく、患者の負担を小さくするために外径は小さいことが好ましい。したがって、カテーテルを構成する各層は、出来るだけ薄くすることが必要とされる。
【0003】
カテーテルチューブの製造方法の一つに、銅線などの芯線上にPTFEを被覆し、その上に外装樹脂層を形成した後に芯線を引き抜くことによってカテーテルチューブを得る方法がある(例えば特許文献1参照)。芯線上にPTFEを被覆する方法には、PTFE分散液を芯線上に塗布して焼結する方法(以下、「ディッピング法」と言う)、芯線上に直接ペースト押出成形する方法がある。また、芯線上をPTFEチューブで覆って被覆する方法があるが、このときPTFEチューブは、芯線を挿通した状態で延伸され、縮径されて芯線に密着するため、チューブは延伸するための伸び性と延伸に耐える引張強度が必要とされる。
【0004】
PTFEは溶融粘度が非常に大きいため、PTFEチューブは溶融押出成形ではなくペースト押出成形により成形されるのが一般的である(例えば特許文献2参照)。しかし、ペースト押出成形では薄肉のチューブを成形するのは困難であり、PTFEの薄肉のチューブを成形する場合には、ディッピング法が多く用いられる(例えば特許文献3参照)。しかし、ディッピング法で成形したチューブは引張強度が弱いという問題があった。
【0005】
例えば特許文献4では、薄肉で引張強度が大きいチューブを得るために、ペースト押出成形後にチューブ長手方向に延伸して薄肉化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013‐176583号公報
【特許文献2】特開2010‐226936号公報
【特許文献3】特開2000‐316977号公報
【特許文献4】特開2004‐340364公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献4に開示された技術は、薄肉化するために延伸することで、PTFEチューブの引張強度が大きくなる代わりに、引張伸び性を失うものであった。このように薄肉のPTFEチューブにおいて、引張伸び性と引張強度を両立させることは困難であった。そこで、本発明は、PTFE薄肉チューブにおいて、引張破断伸びが大きいにも関わらず、引張強度が大きいPTFEチューブを提供することを課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、肉厚が0.1mm以下、または肉厚が外径に対して5%以下のチューブであって、350%以上の引張破断伸びを有し、かつ示差走査熱量測定(以下、「DSC」と言う)の昇温過程において、370℃±5℃の吸熱ピークから算出される融解エネルギーが0.6J/g以上であるポリテトラフルオロエチレンチューブによって解決される。
【0009】
本発明の課題は、肉厚が0.1mm以下、または肉厚が外径に対して5%以下のチューブであって、450%以上の引張破断伸びを有し、かつ示差走査熱量測定(以下、「DSC」と言う)の昇温過程において、370℃±5℃の吸熱ピークから算出される融解エネルギーが0.6J/g以上であるポリテトラフルオロエチレンチューブによって解決される。
【0010】
さらに、チャック間距離50mmで測定したときのチューブ変位量が10mmのときの引張強度が50N/mm以上であるポリテトラフルオロエチレンチューブによって解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチューブは、引張破断伸びが大きいにも関わらず、引張強度が大きいため、PTFEチューブを延伸により変形させて芯材へ被覆する場合などに、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明のPTFEチューブのDSC曲線である。
図2図2は、本発明のPTFEチューブにおける370℃±5℃の吸熱ピークから算出される融解エネルギーとチューブ引張強度との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態のPTFEチューブについて詳しく説明する。以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の成立に必須であるとは限らない。
【0014】
本発明の実施形態では、PTFEチューブの肉厚は、0.1mm以下である。具体的には0.005〜0.1mmであり、好ましくは0.01〜0.08mmであり、さらに好ましくは、0.01〜0.05mmである。または、肉厚が外径に対して5%以下のチューブであり、好ましくは肉厚が外径に対して4%以下のチューブである。カテーテルの層の一部として使用したときに、肉厚が薄いことで、カテーテルの機能を妨げることなくカテーテルの細径化に貢献できる。
【0015】
本発明のPTFEチューブは、350%以上の引張破断伸びを示す。より好ましくは450%以上の引張破断伸びを示すものである。引張破断伸びとは、23℃±2℃の周囲環境下において、引張速度50mm/minで測定したときの、破断するまでのチューブの伸びを意味する。
【0016】
本発明のPTFEチューブは、示差走査熱量測定(DSC)の昇温過程において370℃±5℃の吸熱ピークから算出される融解エネルギーが0.6J/g以上である。本発明のPTFEチューブを粉砕したサンプルのDSC測定を行うと、結晶の融解による吸熱ピークが観察されるが、結晶構造の違いにより、低温側と高温側2つのピークが観察される。図1に本発明の実施形態のチューブのDSC曲線の一例を示す。本発明のPTFEチューブの場合、昇温速度10℃/minの昇温過程において、327℃付近に大きな吸熱ピーク、370℃付近に小さな吸熱ピークが観測される。この吸熱ピークの面積から、融解エネルギーを算出することができる。327℃付近の吸熱ピークは折りたたみ鎖結晶の融解によるものであり、370℃付近の吸熱ピークは伸びきり鎖結晶の融解によるものと考えられる。成形後に延伸をかけた場合には、この370℃±5℃の吸熱ピーク1が大きくなる傾向がある。チューブの引張強度を高めるためには、チューブを構成する樹脂の分子を、主鎖を伸長させチューブの軸方向に配列させることが有効である。絡み合ったフィブリルは、金型出口から排出されるときに、押出流れ方向、つまりチューブの軸方向に、引きそろえられて配列する。この配列したフィブリルが、伸びきり鎖結晶として、370℃付近に吸熱ピークを示していると考えられる。本発明のPTFEチューブは、成形後のチューブの延伸を5%以下に抑えながら、吸熱ピーク1の融解エネルギーが大きいチューブを作成する。 成形後のチューブに延伸をかけないことで引張破断伸びが大きいチューブが得られる。PTFEチューブを延伸して芯材に被覆するなどの用途では、チャック間距離50mmで測定したときのチューブ変位量(以下、「チューブ変位量」という。)が10mmのときの引張強度50N/mm以上、またはチューブ変位量が20mmのときの引張強度が70N/mmのものが望ましく、370℃±5℃の融解エネルギーが0.6J/g以上のチューブにすることでチューブ変位量が10mmのときの引張強度が50N/mm2以上、またはチューブ変位量が20mmのときの引張強度が70N/mmのチューブを得ることができる。
【0017】
本発明でいう引張強度とは、引張試験において、引張初期の、チューブ変位量(伸び量)が10mmのとき、または20mmのときの引張強度のことを指す。先述の、芯線上をPTFEチューブで覆って被覆する方法において必要とされるのは、PTFEチューブを延伸して芯線に密着するまでの間の引張強度であり、その間の引張強度を評価する尺度として、チューブの変位量が10mm、または20mmのときの引張強度を用いた。
【0018】
以下、本発明の実施形態のPTFEチューブの構成について詳しく述べる。
【0019】
成形用のPTFEパウダーは、ファインパウダーとモールディングパウダーの二種類がある。本発明の実施形態で使用するのは、乳化重合によって得られるファインパウダーである。ファインパウダーは、せん断応力をかけるとフィブリル化を伴って変形する性質を持っており、この性質を利用したのがペースト押出成形である。ペースト押出成形は、一般に助剤(潤滑剤)と呼ばれる有機溶剤と混合して圧縮し、予備成形体を作成して、それを押出機を用いて成形温度70℃以下で押出して成形する方法である。フィルム、チューブ、電線被覆材料などの成形に用いられる。
【0020】
本発明の実施形態で使用する上記PTFEは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」と言う)のホモポリマーであっても良いし、変性PTFEであっても良い。変性PTFEは、TFEと少量のTFE以外の単量体とを重合させたものである。少量のTFE以外の単量体は、
たとえば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PPVE)などが挙げられる。
変性PTFEを用いることで、成形品の耐熱性や、耐摩耗性、耐屈曲性などを変えることができる。
【0021】
PTFEファインパウダーは、平均粒径が0.2〜0.5μmの一次粒子が凝集して平均粒径400〜700μmの二次粒子を形成しているものが一般的である。本発明の実施形態では、平均二次粒径400〜600μmのファインパウダーを使用する。
【0022】
助剤は、PTFEファインパウダーに添加することによりペースト化して押出すことを可能にするもので、本発明の実施形態で使用する助剤は、潤滑性が高い有機溶剤を用いることが好ましい。PTFEファインパウダーに助剤を添加した後、押出機で金型を通してチューブに成形するが、成形中に助剤が揮発すると安定した成形が困難になり好ましくない。本発明の実施形態で使用する助剤は初留点(IBP)が150℃以上のものが好ましい。PTFEファインパウダーと助剤をチューブに成形後、チューブを焼成する前に、助剤を揮発させて除去する。このとき助剤を確実に除去できるように、助剤のIBPは250℃以下であることが好ましい。潤滑性が高く、IBPが150〜250℃の有機溶剤として、石油系溶剤が特に好ましく用いられる。
【0023】
従来のペースト押出しで用いられる助剤は、PTFEの界面張力と助剤の界面張力の差が小さいものが用いられてきた(特許文献1参照)。しかし、本発明の実施形態で使用する助剤は、界面張力が、PTFEの界面張力18.5mN/mよりも4mN/m以上高いことが好ましい。助剤の界面張力が高いことでPTFE粒子間を移動しにくく、粒子表面に留まり易くなると考えられる。PTFEペースト押出では、押出時にPTFE粒子同士が金型内で摺れる際に、粒子表面がフィブリル化し、そのフィブリル同士が絡み合うことで、変形しにくくなり押出圧力が上昇する。このとき、粒子間に助剤が存在することによって、PTFE粒子間の絡み合いを抑え、押出圧力の上昇が抑えられる。
【0024】
PTFEチューブの肉厚を0.1mm以下、または、肉厚が外径に対して5%以下のチューブにするためには、金型内の樹脂が流れる流路が極めて狭く、高Reduction Ratio(リダクション比とも呼ばれる。以下、「RR」と言う。)の条件で行うことになる。高RRの条件では、PTFE粒子と金型の内壁およびPTFE粒子間に生じるせん断力が大きくなる。PTFE粒子に急激に大きなせん断応力がかかると、PTFE粒子の大部分が一気にフィブリル化し、押出圧力が高くなる。ダイ内部では乱流状態になり、オーバーシェアとなる。オーバーシェアの状態で成形されたチューブには、表面荒れ、チューブ内部の歪み、キズなどが発生する。さらに、押出圧力が高くなりすぎ、押出機の能力範囲を超えると、押出不可能となる。本発明の実施形態では、助剤がPTFE粒子間に留まることで、PTFE粒子間およびPTFE粒子と金型の内壁との間のせん断力を低減させる効果が高く、PTFEの急激過ぎるフィブリル化と押出圧力の上昇を抑えることが可能になる。そのため、成形品内外部の欠陥が少ないチューブを得ることが可能であり、350%以上の引張破断伸びを有するにも関わらず、引張強度が大きいチューブが得られる。また、引張破断伸びは450%以上のものがより好ましい。
【0025】
本発明の実施形態のチューブは、フィラーまたはその他の樹脂を含むものであっても良い。フィラーとして、例えば、カーボン、アルミナなどの金属酸化物、樹脂フィラーなどが挙げられる。上記フィラーのうち、1種または複数種をPTFEに混合して用いることが出来る。
【0026】
以下、本発明の実施形態のチューブの製造方法について説明する。
[予備成形体の成形]
PTFEと助剤とを、タンブラーなどで混合する。先述のように助剤の界面張力がPTFEの界面張力よりも4mN/m以上高いものを用いる。また、助剤はIBPが150〜250℃のものが好ましい。PTFEと助剤の混合物を加圧成形して、予備成形体を作成する。
[押出成形]
予備成形体を押出機にセットし、金型を通してチューブ形状に成形する。本発明の実施形態のチューブは、肉厚が0.1mm以下なので、金型のテーパー部を通過する際に非常に高いせん断応力がかかる。ここで、本発明の実施形態では、界面張力がPTFEの界面張力よりも4mN/m以上高い助剤を用いるので、PTFE粒子間に助剤が留まり、PTFE粒子間および、PTFE粒子と金型内壁との潤滑性を高め、PTFE粒子の急激なフィブリル化を抑えることができる。それにより、押出圧力の上昇が抑えられる。
従来のペースト押出のダイの温度は、70℃以下にすることが知られている(例えば特許文献1参照)が、本発明の実施形態ではダイの温度を100℃〜200℃にすることが好ましく、130℃〜200℃にすることがさらに好ましい。ダイの温度を高くすることで、PTFE粒子表面ではフィブリル化が促進されて、形成されたフィブリルが絡み合った状態で金型出口から排出される。PTFEの急激過ぎるフィブリル化を抑え、かつPTFE粒子表面のフィブリル化とフィブリルの絡み合いを促進することで、焼成後のチューブは450%以上の引張破断伸びを有するにも関わらず、引張強度が大きいチューブが得られる。特にフィブリルの絡み合いが促進されることによって、変位初期の引張強度が大きいチューブが得られる。
[乾燥工程]
チューブ形状に成形したPTFEは、PTFEの融点以下の温度に加熱し、助剤を揮発させる。後工程でPTFEの焼成を行うときに、助剤が残留していることは好ましくないため、十分に揮発させる。本発明の実施形態のチューブにはIBPが150〜250℃の助剤を用いるため、乾燥工程で助剤を十分に除去することが可能である。乾燥工程において、チューブにテンションがかかりチューブが延伸されることを抑えるために、チューブの送り出し、引取のバランスなどで調整する。チューブの延伸が5%以内になるように調整することが好ましい。
[チューブ焼成]
乾燥したPTFEチューブは、PTFE 融点以上の温度に加熱して、焼成を行う。通常は、400℃前後にチューブを加熱する。チューブは、融点以上の温度で加熱されることで、PTFE粒子同士が融着される。
【0027】
発明を、下記の実施例でより詳細に説明する。下記の実施例は、発明を例示するものであって、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
<引張破断伸びおよび引張強度>
島津製作所製 オートグラフAGS‐1kNX型を用い、23℃±2℃の環境下において、チャック間距離50mm、チャックスピード50mm/minの条件で引張試験を実施した。
引張強度として、チャックにセットしたチューブが長手方向に10mm伸びたときの応力値、および長手方向に20mm伸びたときの応力値を引張強度として測定した。また、チューブが破断するまで試験を行い、チューブが破断したときのチューブ伸びを引張破断伸びとした。
<示差走査熱量測定>
NETZSCH JAPAN製 DSC3200SAを用い、室温から昇温速度10℃/minで昇温させて行った。得られたDSCの吸熱曲線から、370℃±5℃の吸熱ピークの面積から融解エネルギーを算出した。
【0029】
実施例1
容器に、PTFEファインパウダー(ダイキン工業社製 ポリフロンPTFE F‐208)100質量部に対して、助剤(エクソンモービル社製 アイソパーH)18質量部を入れて混合し、#10のふるいで塊を取り除いたものを、予備成形機に投入し予備成形体を作成した。チューブの押出成形に用いる押出成形機は、シリンダー径20mm、マンドレル径10mmのものを用い、ダイ内径0.77mm、コアピン0.66mmとし、ダイ温度は120℃とした。予備成形体を押出成形機に投入し、ラム速度3mm/minで押出してチューブ形状に成形した。成形したチューブは、150℃に設定した第1の乾燥炉、220℃に設定した第2の乾燥炉、430℃に設定した焼成炉を通過させて乾燥、焼成した。チューブ乾燥、焼成時にはチューブに必要以上の張力がかからないように、引取機の速度を調節した。完成したチューブは、内径0.49mm、外径0.566mm、肉厚0.038mmであった。得られたチューブは、100mmにカットし、引張試験を行い、引張強度と引張破断伸びを測定した。 また、得られたチューブの数か所からサンプルを採り、粉砕、混合した試料について、DSC測定を行い、ピーク面積から融解エネルギーを算出した。その結果を表1に示す。
【0030】
実施例2
押出ダイの温度を140℃とした以外は、実施例1と同様にチューブを作成し、引張試験、DSC測定を行った。
実施例3
PTFEファインパウダーに混合する助剤を、エクソンモービル社製 アイソパーMとした以外は、実施例1と同様にチューブを作成し、引張試験、DSC測定を行った。
実施例4
PTFEファインパウダーを、三井デュポンフロロケミカル工業製 PTFE640Jとした以外は、実施例3と同様にチューブを作成し、引張試験、DSC測定を行った。
実施例5
PTFEファインパウダーを、ダイキン工業社製 ポリフロンPTFE F‐201とし、助剤に、エクソンモービル社製 アイソパーLを用いた。混合比と混合方法は、実施例1と同様にした。押出金型に、ダイ内径0.72mm、コアピン0.66mmを用いた以外は、実施例1と同様にチューブを作成し、引張試験、DSC測定を行った。
実施例6
PTFEファインパウダーを、三井デュポンフロロケミカル工業製 PTFE640Jとし、
助剤に、エクソンモービル社製 アイソパーGを用いた。混合比と混合方法は、実施例1と同様にした。押出金型に、ダイ内径2.61mm、コアピン2.40mmを用いた以外は、実施例1と同様にチューブを作成し、引張試験、DSC測定を行った。
比較例1
押出ダイの温度を80℃とした以外は、実施例1と同様にチューブを作成し、引張試験、DSC測定を行った。
比較例2
助剤に、エクソンモービル社製 アイソパーEを用いた以外は実施例1と同様に押出成形した。押出圧力が押出機(金型)上限を超えたため、押出を中断した。
【0031】
各実施例、比較例1および2の結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
図2は、表1の実施例、比較例のPTFEチューブの、370℃±5℃の吸熱ピークから算出される融解エネルギーと、引張強度について、関係を示したものである。融解エネルギーが大きくなると引張強度が大きくなる傾向がみられる。PTFEチューブを延伸して芯材に被覆するなどの用途では、チューブ変位量が10mmのときの引張強度50N/mm、またはチューブ変位量が20mmのときの引張強度が70N/mmが望ましい。融解エネルギーが0.6J/g以上である実施例は、引張破断伸びが450%以上であり、チューブ変位量が10mmのときの引張強度が50N/mm以上のものが得られた。ダイの温度を80℃とした、従来の製造方法に該当する比較例1のチューブは、引張破断伸びは580%以上で大きかったが、引張強度は17.8N/mmしかなく、PTFEチューブを延伸して芯材に被覆するなどの用途では、実用に耐えるものは得られなかった。
【0034】
比較例3
助剤に、エクソンモービル社製 アイソパーEを用いた以外は実施例1と同様に予備成形体を準備した。比較例2では、押出圧力が使用した押出機(金型)の使用可能範囲を超えたため、押出を中断したが、押出圧力に耐えるようにマンドレルの形状を変えて成形を行った。マンドレルの形状以外は、実施例1と同様に押出成形を行った。
比較例4
実施例1と同様に予備成形体を作成した。この予備成形体を押出成形機に投入し、外径0.495mmの軟銅線上にPTFE層を押出した。用いた押出成形機は、シリンダー径20mm、マンドレル径10mm、ダイ内径0.6mm、ダイ温度120℃とした。ラム速度は、3mm/minとした。これを、150℃に設定した第1の乾燥炉、220℃に設定した第2の乾燥炉、430℃に設定した焼成炉を通過させて乾燥、焼成した。焼成後、軟銅線を延伸して焼成したPTFE層から引き抜き、チューブを作成した。完成したチューブは、内径0.49mm、外径0.566mm、肉厚0.038mmであった。得られたチューブは、実施例1と同様に引張試験、DSC測定を行った。
比較例5
外径0.495mmの軟銅線に水性ディスパージョン(ダイキン工業社製 ポリフロンPTFE D‐1)を塗布し、乾燥、焼成した。外径が0.566mmになるまでこれを繰り返してPTFE層を形成した。軟銅線を延伸してPTFE層から引き抜き、チューブを作成した。完成したチューブは、内径0.49mm、外径0.566mm、肉厚0.038mmであった。得られたチューブは、実施例1と同様に引張試験、DSC測定を行った。
【0035】
比較例3〜5の結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
比較例3は、助剤の界面張力とPTFEの界面張力の差が2.5mN/mしかなく、引張強度が小さいチューブとなった。押出圧力が上昇しすぎたため、オーバーシェアの状態となり良好な成形品が得られなかったと考えられる。比較例4、5は従来の方法で成形した薄肉チューブであり、引張破断伸びは得られたが、十分な引張強度が得られなかった。
【0038】
実施例7
PTFEファインパウダーを、三井デュポンフロロケミカル工業製 PTFE640Jとし、
助剤に、エクソンモービル社製 アイソパーGを用いた。混合比と混合方法は、実施例1と同様にした。内径1.9mm、外径1.966mm、肉厚0.033mmのチューブを作成し、引張試験、DSC測定を行った。
実施例8
PTFEファインパウダーに混合する助剤を、エクソンモービル社製 アイソパーGとした以外は、実施例1と同様にチューブを作成した。チューブサイズは、内径2.3mm、外径2.356mm、肉厚0.028mmとし、引張試験、DSC測定を行った。
【0039】
実施例7と8の結果を、表3に示す。
【0040】
表3
実施例7は、引張破断伸びが350%以上で、融解エネルギーが0.6J/g以上であり、チューブ変位量が10mmのときの引張強度は56.1N/mmのものが得られた。実施例8は、引張破断伸びが450%以上で、融解エネルギーは0.6J/g以上であり、チューブ変位量が10mmのときの引張強度が68.0N/mmのものが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のチューブは、特にカテーテルなどの医療用の医療用チューブに適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 370℃±5℃の吸熱ピーク

【要約】      (修正有)
【課題】薄肉のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるチューブに関し、引張強度の大きさと引張破断伸びの大きさを両立させたチューブの提供。
【解決手段】肉厚が0.1mm以下、又は肉厚が外径に対して5%以下のチューブであって、350%以上、好ましくは450%以上の引張破断伸びを有し、かつ示差走査熱量測定(DSC)の昇温過程において、370℃±5℃の吸熱ピークから算出される溶解エネルギーが0.6J/g以上であるポリテトラフルオロエチレンチューブ。チャック間距離50mmで測定し、チューブ変位量が10mmの時の引張強度が50N/mm以上であるポリテトラフルオロエチレンチューブ。前記チューブは、特にカテーテルなどの医療用チューブに適用することができる。
【選択図】図1
図1
図2