(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
扇ぎ葉の中央を中室とし、該中室から一方の畳み線を介して一方の外室が延設されており、該中室から他方の畳み線を介して他方の外室が延設されており、各々の外室の外縁から切り込まれた切込を境にして、上部を上外縁とし、下部を下外縁とし、一方の上外縁と他方の上外縁のうちどちらかを突出させ、一方の下外縁と他方の下外縁のうちどちらかの下外縁であって前記突出させた上外縁と反対側の前記下外縁を突出させ、一方の切込と他方の切込とが互いに組込まれた状態になって外室どうしの正面折り返し状態が固定されることを特徴とする紙扇子折畳み固定構造。
【発明を実施するための形態】
【0008】
扇ぎ葉自体に指を引っ掛ける箇所を設けて、折り畳んで固定できる紙扇子の折畳み固定構造を実現した。
【実施例1】
【0009】
図1は開き状態の正面図である。折線は一点鎖線で示し、縁及び切線は一本の実線で示し、引き出し(指示)線は細い曲線で示す。山折と谷折で表示する折り曲げ方向は開き状態での正面方向からを基準にする。左右方向を横とし、天地方向を縦とし、正面背面方向を前後とする。符号は数字で表示するが、同じ符号が複数ある場合は符号の後ろに一方をa、他方をbとする補助符号を表示することにし、該補助符号を表示しない場合は一方と他方の総称(双方を指示)とし、一方と他方の位置関係は限定ではないが、開き状態図の図面上での左を一方とし右を他方とする。本発明を形成する素材は限定ではなく、プラスチックであっても良いが、適宜に腰のある厚紙であることが望ましく、前記厚紙の硬さは楽に折り曲げられて適宜に湾曲して扇ぎ使用に耐えられる硬さであれば良く、具体的に述べるならば、官製ハガキよりも二倍以上硬ければ目的を果たせる。
【0010】
実施例1を切込固定型とする。本体1の全体は扇ぎ葉2で形成されており、該扇ぎ葉2の形状は限定ではないが下部縁が適宜に狭くなった略扇形状であることが望ましく、下縁は適宜に丸い形状であることが持ち易くなるので、望ましい。
【0011】
扇ぎ葉2の中央を中室3とし、該中室3は天地に貫く縦長の略扇形状を成し、該中室3の下部の略中央に指穴4を形成しており、該指穴4の形状は限定ではないが、円形であることが望ましい。
【0012】
中室3の左右両側の辺を畳み線5とし、該畳み線5の各々を介して外室6が延設されている。該延設の位置関係を具体的に述べるならば、該中室3の左側から一方の畳み線5aを介して一方の外室6aを延設しており、該中室3の右側から他方の畳み線5bを介して他方の外室6bを延設している。
【0013】
外室6と接している切縁領域を外縁7とし、該外縁7の略中央から切込8を入れる。該切込8は二本の平行線で図示しているが、切り離されていることを明瞭に表示するためであって、実際には一本の切込線である。該切込8の長さは
図2で後期するが、中室3の中心線までの長さにすることが望ましい。
【0014】
外縁7は切込8から上の領域を上外縁9とし、該切込8から下の領域を下外縁10とする。該切込8の切込口の角は角ばっていても良いが適宜に丸くすることが望ましい。該上外縁9と該下外縁10とは同一線上に位置しても良いが、上下間でどちらかを突出させて段差を形成することが望ましく、前記上下間の段差は一方と他方で互いに上下を逆にすることが望ましい。前記上下間の段差を形成する別の方法として、図示していないが切込8と略直角方向へ折線を入れて、該略直角折線の屈折によって段差を生じさせる構造であっても良い。
【0015】
切込8の位置関係を具体的に述べるならば、左側である一方の外縁7aの略中央に一方の切込8aを入れ、右側である他方の外縁7bの略中央に他方の切込8bを入れる。上下で隣り合う上外縁9と下外縁10のどちらかを突出させることが望ましいが、どちらを突出させるかは限定ではないが、具体的に述べるならば、一方の外縁7aでは一方の下外縁10aを突出させ、他方の外縁7bでは他方の上外縁9bを突出させることが望ましい。
【0016】
畳み線5の双方は谷折されることで本体1が折り畳まれることが望ましい。中室3は上部が広くなった縦長の略扇形であることから、該中室3と重なり合って折り畳まれる外室6も上部が適宜に広くなっている。本体1の折畳み時に重なり合った対岸の外縁7の部分領域を差し込んで固定する切溝11は、外室6の上部領域であることが望ましい。
【0017】
他方の上外縁9bが突出していることから、本体1を折り畳む過程で一方の上外縁9aが背方に折り畳まれることが自然の成り行きになるので、背面重なりとなる一方の外室6aの上部に切溝11を入れ、該切溝11に差し込まれる他方の外縁7bの上部領域の一部を差込縁12とする。
【0018】
図2は折畳み固定状態の要部透視正面斜視図である。透視箇所は破線で表示しており、二枚透視まで表示するのであるが、二枚透視の場合は破線の間隔を広くして細い線にすることで一枚透視と区別できるようにしている。
【0019】
双方の畳み線5を同時に同じ角度で谷折することで双方の外室6が正面へ折り返される。一方の上外縁9aよりも他方の上外縁9bが突出しているので、外室6の折り返し時には、該他方の上外縁9bが正面に重なる可能性が確実に高くなる。上外縁9とは逆に下外縁10では一方の下外縁10aが他方の下外縁10bよりも突出しているので、該外室6の折り返し時には、該他方の下外縁10bが背面に重なる可能性が確実に高くなる。
【0020】
上記のように、上外縁9と下外縁10の左右での突出が上下で逆の外縁が突出しているので、一方の切込8aと他方の切込8bとが互いに組込まれた状態になって外室6どうしの正面折り返し状態が固定されて、本体1の折畳み状態が固定される。
【0021】
切込8の長さは限定ではないが、該切込8どうしの組込み合った端部が中室3の中心線上に位置する長さにすることが望ましく、該中室3の中心線は垂直であることが望ましく、該中室3の該垂直な中心線と略直角な水平線上に組込みあった切込8が位置することが望ましい。
【0022】
切込8どうしの組み込みだけでも本体1の折畳み状態の固定は問題ないが、他方の上外縁9bの先端が若干浮き上がっており、該他方の上外縁9bの先端領域である差込縁12を切溝11に差し込むことで、該他方の上外縁9bの浮き上がりを防止できる箇所として設けることが望ましい。
【実施例2】
【0023】
図3は開き状態の正面図である。実施例1では左右両端から切込8を設ける必要があることから外縁7を滑らかな曲線にすることが困難であり、該切込8を介する上下で段差を設ける形状なので、扇ぎ葉2を左右対称にすることができない構造であった。実施例2では、望ましい形状である左右対称の扇ぎ葉22の折畳み固定構造を述べることにする。
【0024】
実施例2は外室切溝型とする。全体形状である扇ぎ葉が実施例ごとに変わったので、後ろに付ける符号を変えることにし、実施例2では扇ぎ葉22とし、該扇ぎ葉22に付けられた部所を含めた全体を本体21とする。
【0025】
扇ぎ葉22は自由にデザインした形状であっても良いが、左右対称の略扇形状にすることが望ましい。該扇ぎ葉22の中央は実施例1と略同形状の天広がり縦長の扇形で中室3にすることが望ましく。該中室3の下部略中央に円形の指穴4を設けている。先行技術で明記した特許文献1の特開平11−318531号には円形の指穴4を有しておらず、指を引っ掛けて持つことは不可能な構造である。
【0026】
中室3の一方の側に一方の畳み線5aを介して一方の外室6aを延設している。該中室3の他方の側に他方の畳み線5bを介して他方の外室6bを延設している。畳み線5の天地端どうしを繋ぐ外室6の縁を外縁7とし、該外縁7は略上部が湾出した角の丸い略くの字形状であることが望ましい。前記丸い角領域を差込縁12とし、該差込縁12を楽に差し込める長さの略直線で切溝11を外室6の略上部に形成している。
【0027】
図4は折畳み固定状態の要部透視正面斜視図である。左右双方の畳み線5を谷折することで双方の外室6は正面へ折り返され、該外室6の折り重ね順は限定ではないが、一方の外室6aを背面にして他方の外室6bを正面にした重ね状態で図示することにする。
【0028】
背面に重なった一方の外室6aに有する切溝11aに、正面に重なった他方の外室6bの差込縁12bを差し込むことで、本体21の折畳み状態を固定する。
【実施例3】
【0029】
図5は開き状態の正面図である。実施例3は中室切溝型とする。実施例3では略円形の扇ぎ葉32にして、該扇ぎ葉32の下部は上部と略同等に広くなった形状にしている。実施例1の扇ぎ葉2と実施例2の扇ぎ葉22は上部が下部に比べて明らかに広くなっていたが、本実施例3の扇ぎ葉32の下部は上部と略同等の広さにしたことによって外縁7の湾出ピークが下部に移行することになり、折畳み固定構造を変える必要が生じたので、以降で具体的に述べることにする。
【0030】
略円形を含む円形の扇ぎ葉32の中央に上広がりで縦長の扇形で中室3を設けており、該中室3の両側へ畳み線5を介して外室6を延設している。該中室3の下部を適宜に狭くすることで円周形状の該外室6の外縁7の下部領域が折畳み時に適宜に食み出す構造にすることが望ましい。
【0031】
該中室3の下部に指穴4を設けており、該指穴4は円形で図示しているが、該指穴4の左右両側を横方向へ延長して畳み線5の線上まで達する形状にしても良い。
【0032】
該中室3の中央より若干上部に位置する箇所に切溝11を左右対称の対で設けることが望ましく、対で設けられた該切溝11は略ハの字形であることが望ましい。
【0033】
扇ぎ葉32は円形であることから、畳み線5を介して外側に延設された外室6は縦長の半円形を成している。該畳み線5の上下端を結ぶ外室6の縁を外縁7とし、該外縁7の上部の一部は折畳み時に遠い方の切溝11に差し込まれる差込縁12となり、該外縁7の下部の大半は折畳み時に中室3から食み出る食み出し域13となる。
【0034】
図6は折畳み固定状態の要部透視正面斜視図である。畳み線5を介して折り返される外室6は縦長の半円形を成しており、外縁7の湾出ピークは該畳み線5の傾斜角度によって上下に移動する。該畳み線5が垂直ならば該外縁7の湾出ピークは中央の真横に位置し、該畳み線5の頂部が外側へ移動して傾斜するに連れて該外縁7の湾出ピークは下部へ移動する。該畳み線5の頂部が外側へ適宜に傾斜して中室3の下部が適宜に狭くなっている形状の方が、開き状態の扇ぎ葉32の下部を指で挟み込んで持つ場合、中室3と外室6の双方を一緒に挟んで持つことができるので、該中室3の下部を適宜に狭くした形状にしている。
【0035】
実施例3では折畳み時に外室6の下部が中室3から食み出す構造であるので畳み線5の双方を同じ方向へ折り返すことは少々難しい。該畳み線5の折り返し方向は限定ではなく、使用者が自由に変えることができるのであるが、具体的に説明するために、一方の畳み線5aを谷折して一方の外室6aを正面へ折り返し、他方の畳み線5bを山折して他方の外室6bを背面へ折り返して折り畳む構造にする。
【0036】
正面に折り返された一方の外室6aの一方の外縁7aの略中央は他方の畳み線5bとの交差箇所であり、該交差箇所の上隣り領域を一方の差込縁12aとし、該一方の差込縁12aを他方の切溝11bに差し込むことで一方の外室6aの折り返された状態は固定されており、該交差箇所の下隣り領域で他方の畳み線5bから他方へ食み出している領域を一方の食み出し域13aとする。
【0037】
背面に折り返された他方の外室6bの他方の外縁7bの略中央は一方の畳み線5aとの交差箇所であり、該交差箇所の上隣り領域を他方の差込縁12bとし、該他方の差込縁12bを一方の切溝11aに差し込むことで他方の外室6bの折り返された状態は固定されており、該交差箇所の下隣り領域で一方の畳み線5aから一方へ食み出している領域を他方の食み出し域13bとする。
【0038】
食み出し域13は指の引っ掛け箇所としても利用できるので、該食み出し域13を例えば右手の人差し指で引っ掛けて上隣り領域を親指で軽く押さえて外室6の上部面を少しだけ湾曲させて切溝11へ差込縁12を差込む。差し込まれた状態の該差込縁12の状態から該食み出し域13に例えば人差し指を引っ掛けて引くことで、該差込縁12を抜き易くできる。