【実施例】
【0017】
(実施例1)
図1(a)は、本発明に係る浴室用収納棚の実施例1の全体構成を示している。この浴室用収納棚1は、
図1(b)に示す棚本体2と、
図1(c)に示す装飾用部材3と、を備えている。
【0018】
図2(a)、(b)に示すように、装飾用部材3を棚本体2の前面立ち上がり部6に上方から差し込み、
図2(c)に示すように、前面立ち上がり部6に設けられた嵌合部7と、装飾用部材3に設けられた嵌合部8とを嵌め合わせて固定することで、浴室用収納棚1が構成される。
【0019】
本実施例1の棚本体2は、樹脂で一体成形して製造されるが、樹脂又は樹脂以外の材料で形成してもよい、また別体で形成してもよい。棚本体2は、
図1(b)に示すように、底面11の外周は、上面側に立ち上げられた立ち上がり部で囲まれている。立ち上がり部は、前面立ち上がり部6、後面立ち上がり部12、左右の側面立ち上がり部13とから成る。
【0020】
前面立ち上がり部6は、左右の側面立ち上がり部13の間に形成されており、
図1(b)、
図2(b)、(c)、
図3(a)、(b)に示すように、前壁部16、後壁部17及び嵌合部7を備えている。
【0021】
前壁部16と後壁部17は、前後方向に間隔をおいて設けられているが、
図1(b)に示すように、棚本体2の横幅方向に間隔をおいて設けられた複数の補強用のリブ21で繋がれて(結合されて)いる。これによって、前壁部16、後壁部17及びリブ21等で囲まれた空間22が形成されている。なお、リブ21は、複数でなく1つ設けた構成でもよい。
【0022】
前壁部16は、
図2(b)、(c)、
図3(b)等に示すように、嵌合部7から上面側に立ち上がり、その前面側に平面部23が形成された構成である。換言すると、前面立ち上がり部6の嵌合部7は、前壁部16の下部に連続的に形成されている。
【0023】
より具体的には、前面立ち上がり部6に設けられた嵌合部7は、
図3(b)に示すように、前壁部16の下端に連続して下方に突出する突出部26と、前壁部16の下部前面から前方に向かう水平部27と、水平部27から下方に向かう垂直部28とから断面略Γ状に形成されている。
【0024】
前壁部16の前面側の上部には、
図2(b)、
図3(b)に示すように、頂部に向けて後方に序々に湾曲したガイド面31が形成されている。このガイド面31は、後記するが、装飾用部材3を上方から前面立ち上がり部6に差し込む際に、装飾用部材3の嵌合部8を滑らかにガイドする。
【0025】
後壁部17は、
図2(b)、
図3(b)に示すように、棚本体2の底面11から上方に立ち上がるように形成されている。後壁部17の後面側には平面部32が形成されている。なお、後壁部17は、前面立ち上がり部6の嵌合部7の後方に位置するように設けられている。
【0026】
装飾用部材3は、
図1(c)、
図2(b)、
図3(b)に示すように、前面部35、後面部36、頂部37及び嵌合部8とから成り、その断面形状は、略コの字形状に形成されている。装飾用部材3は、本実施例1では弾性を有する金属で形成され、前後方向に弾力的に拡開可能である。なお、装飾用部材3は、樹脂、樹脂メッキ等の材料で形成されていてもよく、その製造は、押し出し成形、その他の製法でもよい。
【0027】
装飾用部材3の長手方向の長さ(左右方向の長さ)は、
図1(b)に示すように、前面立ち上がり部6の長手方向の長さ(左右方向の長さであって、側面立ち上がり部13の間の長さ)と同じである。
【0028】
従って、側面立ち上がり部13の間において、前面立ち上がり部6に上方から差し込んで固定することで、前面立ち上がり部6を長手方向において完全にカバーできる。また、装飾用部材3の左右の側端面は、側面立ち上がり部13の内面側に隠れて、外部に露出しない。
【0029】
装飾用部材3の嵌合部8は、
図2(b)、
図3(b)に示すように、前面部35の下端に連続して形成されており、前面部35の下端から後方に折り曲げられた水平な下面40と、下面40から上方かつ前方にJ字状(又はレ字状)に折り返された上面41とから成る。
【0030】
棚本体2の底面11には、
図2(b)、
図3(b)に示すように、後壁部17の棚部側端部(後壁部17の下端部42の後面部)に沿って、溝45が設けられている。この溝45は、装飾用部材3の後面部36の下端部46を差し込んで係合することが可能な形状に形成されている。
【0031】
棚本体2の底面11は、
図1(b)、
図3(a)に示すように、後方に向けて下方に傾斜した傾斜面として形成されている。底面11の後端部は、底面11における最下位となっており、排水用の長孔47が左右方向に向けて伸びるように形成されている。
【0032】
(作用)
以上の構成から成る実施例1の浴室用収納棚1の作用を説明する。
図1(b)、(c)に示すような、互いに分離されている状態の棚本体2と装飾用部材3を組み立てて
図1(a)に示すような浴室用収納棚1を完成する場合は、
図2(a)、(b)に示すように、上方から装飾用部材3を、棚本体2の前面立ち上がり部6を外側からカバーするように、下方に向けて差し込む。
【0033】
この差し込みの際に、装飾用部材3の嵌合部8は、前壁部16のガイド面31で前方に装飾用部材3の弾力に抗して前方に撓うようにしてガイドされ、そのために、装飾用部材3は前後方向に拡開されながら下方に向けて差し込まれる。
【0034】
装飾用部材3が下方まで差し込まれると、装飾用部材3の前面部35及び後面部36は前壁部16の平面部23及び後壁部17の平面部32に弾力的に押し当てられるようにして当接される。
【0035】
そして、装飾用部材3の嵌合部8は、前面立ち上がり部6の嵌合部7に、
図2(c)、
図3(a)、(b)に示すように、嵌合して係合される。また、装飾用部材3の後面部36の下端は溝45内に入り込んで係合され、その結果、装飾用部材3は前面立ち上がり部6に固定された状態となる。
【0036】
このように装飾用部材3が前面立ち上がり部6に固定された状態では、装飾用部材3の前面部35及び後面部36は、それぞれ前壁部16の平面部23及び後壁部17の平面部32に当接し、装飾用部材3の後面部36の下端部46が溝45に係合して前後方向への移動が規制される。
【0037】
さらに、装飾用部材3の嵌合部8は、前面立ち上がり部6の嵌合部7の水平部27によって上方への移動が規制され、装飾用部材3の頂部37は前面立ち上がり部6の前壁部16の上端部によって下方への移動が規制されるために、上下方向の移動も拘束される。
【0038】
なお、装飾用部材3の左右方向の長さは、前面立ち上がり部6の左右方向の長さと同じであり、側面立ち上がり部13の間に上方から差し込まれるので、装飾用部材3は、左右方向の移動も拘束される。
【0039】
従って、装飾用部材3は、前面立ち上がり部6に上方から差し込む作業を行うだけで、両面テープや接着剤等使用することなく、簡単かつ比較的安価な構成で、外れたりはがれたりしにくく、確実に固定される。しかも、装飾用部材3は、上記のとおり、前後方向、左右方向及び上下方向にその動きが規制されるので、がたつきが無く、安定した状態で固定される。
【0040】
特に、装飾用部材3の前面部35及び後面部36は、それぞれ前壁部16の平面部23及び後壁部17に当接しているので、装飾用部材3の前面部35又は後面部36を前後方向に押しても、くぼんだり、撓んだりするような変形が生じることがなく、強度を高めることができる。
【0041】
また、前面立ち上がり部6は、その左右端部が側面立ち上がり部13の内面と連続的に形成されているので、外側に露出するようなことはなく、しかも、装飾用部材3が前面立ち上がり部6に固定された状態では、装飾用部材3が前面立ち上がり部6を外側から完全にカバーするので、使用者が外側から見ても、前面立ち上がり部6が露出するような部分がなく、意匠性が高まり、商品として高級感が生じる。
【0042】
なお、装飾用部材3は、その嵌合部8を前面立ち上がり部6の嵌合部7に嵌合することで固定でき、しかも、それらの嵌合部7、8は、装飾用部材3に覆われており、使用者が通常に外観しても見えないので、従来例において、嵌合爪を装飾用部材に設けた嵌合孔を嵌合して固定するような構成に比べて、意匠性にすぐれている。
【0043】
図7は、実施例1の浴室用収納棚1を浴室の壁48に取り付けた使用例を示す図である。この使用例では、鏡49の側方に3つの浴室用収納棚1が、浴室の壁48に上下方向に3段となるように取り付けられている。50は握りバーであり、55は照明具である。
【0044】
この使用例に示すように、浴室用収納棚1は、浴室の壁48のある程度高い位置に取り付けられているので、浴室用収納棚1の下側が、特に浴槽に浸かっている際等には、入浴者の目に入りやすい。しかし、上記のとおり嵌合部7、8は、装飾用部材3に覆われているので、下方から見えないので、見栄えを損なうことがない。
【0045】
さらに、装飾用部材3は、上記のとおり、側面立ち上がり部13の間に上方から差し込まれて固定され、装飾用部材3の左右の端面が外部に露出することがないので、意匠性を損なうことがないばかりでなく、装飾用部材3が金属製の場合は、その端面に触れて手が切れたりするようなことはなく、また、樹脂製の場合は、パーティングラインのバリや段差に触れて手が切れたりするようなことはないので、安全性も損なうことがない。
【0046】
なお、本実施例1では装飾用部材3は、前部立ち上がり部6のみをカバーする構成について説明したが、装飾用部材3は、側面立ち上がり部13もカバーする構成に適用してもよい。また、棚本体2に仕切りがある場合は、装飾用部材3は、側面立ち上がり部13をカバーする構成に適用してもよい。
【0047】
(実施例2)
図4(a)は、本発明に係る浴室用収納棚の実施例2を説明する図である。この実施例2の浴室用収納棚51は、実施例1の浴室用収納棚1と略同じ構成であるので、相違する構成を中心に説明する。実施例1の浴室用収納棚1と同じ構成部分については同じ符号を使用する。
【0048】
実施例1の浴室用収納棚1では、
図2(c)に示すように、溝45に装飾用部材3の後面部36の下端部46を差し込んで係合するようにしたが、溝45が浅いような場合では、係合が外れるようなことも想定される。このような場合であっても、より確実に装飾用部材3を固定するために、実施例2の浴室用収納棚1は、次のような構成とした。
【0049】
実施例2の浴室用収納棚51は、棚本体2の前面立ち上がり部6の後壁部17の左右端部の後面に対向するように、棚本体2の左右の側面立ち上がり部13の内面に、それぞれ受け杆52を上下方向に向けて設けた構成を特徴とする。
【0050】
この受け杆52は、その前面53が溝45の前面54(
図2(b)、
図3(b)も参照)と面一なるように設ける。このように側面立ち上がり部13の内面に受け杆52を設けたので、装飾用部材3の後面部36は、その溝45に係合されるだけでなく、受け杆52にも当接してより確実に係合され、後方への動きが規制される。従って、装飾用部材3が、仮に溝45からはずれても、前後方向にずれたり、ガタついたりしにくくなる。
【0051】
(実施例2の変形例)
図4(b)は、実施例2の浴室用収納棚の変形例を説明する図である。この変形例の浴室用収納棚56は、棚本体2の底面11と側面立ち上がり部13の内面の角部に、それぞれ三角形の受け板57を設けた構成を特徴とする。
【0052】
この受け板57は、その前面58が溝45の前面54(
図2(b)、
図3(b)も参照)と面一なるように設ける。この変形例の浴室用収納棚56の受け板57は、上記受け杆52と同じ作用効果を奏する。なお、実施例2の
図4では、装飾用部材3は実施例1と同じであるため、装飾用部材3は図示していない。
【0053】
(実施例3)
図5(a)は、本発明に係る浴室用収納棚1の実施例3を説明する図である。この実施例3の浴室用収納棚61は、実施例1の浴室用収納棚1と略同じ構成であるので、相違する構成を中心に説明する。実施例1の浴室用収納棚1と同じ構成部分については同じ符号を使用する。
【0054】
この実施例3の浴室用収納棚61は、溝が棚本体2の底面11より上方に配置された構成に特徴がある。具体的には、後壁部17に沿った底面11の前側部62を上方に突出するような構成として、この前側部62の上面に後壁部17に沿うように溝63を形成した。
【0055】
上記のように溝63が底面11から上方に配置された構成としたので、実施例3の底面11の上に溜まった水が溝63に入り込みにくくなるので、水によって底面11上のゴミが流されて溝63に溜まりにくくなり、衛生的である。
【0056】
(実施例3の変形例)
図5(b)は、実施例4の浴室用収納棚1の変形例を説明する図である。この変形例の浴室用収納棚66は、実施例3の浴室用収納棚61と同様に、後壁部17に沿った底面11の前側部67を上方に突出するような構成とした。しかし、この変形例の浴室用収納棚66では、底面11の前側部67の上面68には溝を形成することなく平坦な面とした。
【0057】
そして、この平坦な前側部67の上面68に、装飾用部材3の後面部36の下端部46を載置し当接する構成とした。このように、浴室用収納棚66は、前側部67が底面11より上方に形成され、溝が形成されていないので、ゴミが溜まりにくく、清掃性もよい。
【0058】
但し、溝がないので、装飾用部材3の後面部36の前後方向へのガタや移動が生じる可能性は皆無ではない。これを防止するために、実施例2及びその変形例において説明したように、棚本体2の側面立ち上がり部13の内面に受け杆52や受け板57を設けた構成を組み合わせて採用してもよい。
【0059】
(実施例4)
図6は、本発明に係る浴室用収納棚1の実施例4を説明する図である。この実施例4の浴室用収納棚71は、実施例1浴室用収納棚1と略同じ構成であるので、相違する構成を中心に説明する。実施例1の浴室用収納棚1と同じ構成部分については同じ符号を使用する。
【0060】
実施例4の浴室用収納棚71の目的は、実施例2の浴室用収納棚1と同様であり、装飾用部材3を、前部立ち上がり部6からはずれにくくして、確実に固定することである。そして、装飾用部材3の後面部36の下端部46が、仮に溝45との係合が外れても、装飾用部材3が前後方向に移動したりがたついたりしないようすることである。
【0061】
実施例4の浴室用収納棚71では、
図6(a)〜(c)に示すように、底面11と側面立ち上がり部13の角部にアール部72を形成した。このアール部72は、その前端面73が溝45の後面54(
図2(b)、
図3(b)も参照)と同じ位置となるまで形成されており、従って、アール部72の前端面73が溝45の後面54と面一となるように形成されている。
【0062】
上記構成から成る実施例4の浴室用収納棚71によれば、装飾用部材3の後面部36の下端部を溝45に差し込んで係合した状態では、
図6(c)に示すように、装飾用部材3の後面部36の下端部46がアール部72の前端面73に当接する。
【0063】
要するに、装飾用部材3の後面部36の下端部46は、溝45との係合に加えてアール部72の前端面73とも係合し、しかもアール部72の前端面73との係合は、溝45との係合よりさらに上方において行われることとなる。
【0064】
換言すると、
図6(c)に示すように、溝45の深さdとすると、このアール部72の前端面73の位置では、あたかも溝45の深さd’は、より深く形成されているかのような構成となる。
【0065】
そのため、溝45が浅くて後面部36の下端部46が溝45から外れるようなことがあっても、アール部72の前端面73との係合が維持されるので、装飾用部材3が簡単に外れたりすることはなく、また前後方向に移動したりがたついたりせず、より確実な装飾用部材3の固定が可能となる。
【0066】
この実施例4の浴室用収納棚71では、実施例2の浴室用収納棚51、56のように、受け杆52や受け板57を特に設けることなく、底面11と側面立ち上がり部13の角部にアール部72を形成し、その前端面73を装飾用部材3の後面部36の移動を規制するために活用したので、成形に際して複雑な金型を必要とすることなく、また構造もすっきりと簡単であるために、製造は比較的に容易にでき、ゴミが溜まりにくく、清掃性においてもすぐれている。
【0067】
ところで、
図6(a)、(b)に示すように、前面立ち上がり部6の後壁部17の左右端部の後面に、上下方向に伸びる帯状の切り欠き部(薄肉部)76が形成されている。この切り欠き部76は、実施例1〜3では特に説明をしていないが、実施例1〜3の浴室用収納棚においても形成されていることが好ましい。
【0068】
切り欠き部76が形成されている意義は次のとおりである。棚本体2を一体成形するために使用される金型(図示は省略)は、その一部に、溝45に対応する薄い板片状の溝成形部を有する。しかしながら、溝45がある程度深いと、溝成形部は上下方向の幅(高さ方向の幅)が大きくなり、その幅に比較して肉厚が薄くなるので、破損し易い。
【0069】
そこで、金型の溝成形部の機械的強度を補うために、金型における溝成形部の左右両側に補強部を設けるとよい。切り欠き部76は、成形に際して、このような金型の補強部に対応して形成される部分である。
【0070】
この切り欠き部76の左右方向の横幅wは、
図6(b)に示すように、底面11と側面立ち上がり部13の角部におけるアール部72の左右方向の水平横幅w’と同じ程度とする。
【0071】
切り欠き部76の左右方向の横幅wは、小さすぎると金型における溝成形部の補強部としての意味がなくなり、大きすぎると、装飾用部材3の後面部36に対して凹んだ部分の面積が広くなりすぎて、装飾用部材3を内側から支持する面が減少するために、装飾用部材3の後面部36を前方に押すとへっこんだり、撓んだりしてしまうという問題が生じる。
【0072】
そこで、発明者は、研究開発の過程において、切り欠き部76の左右方向の横幅wは、上記のとおりアール部72の左右方向の水平横幅w’と同じ程度とすると、上記両方の問題が解消されるという知見を得た。
【0073】
なお、底面11と側面立ち上がり部13の角部は、装飾用部材3の後面部36の移動を規制する構成であれば、アール部72でなくても他の構成でもよい。例えば、C面カット(45度の面取り)により直線状の傾斜面に形成してもよい。
【0074】
以上、本発明に係る浴室用収納棚を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。