【実施例】
【0024】
図1(a)は、本発明に係る浴室用収納棚の全体構成を示している。この浴室用収納棚1は、
図1(b)に示す棚本体2と、
図1(c)に示す装飾用部材3と、を備えている。
【0025】
装飾用部材3を、棚本体2の前面立ち上がり部6に上方から差し込み、
図3(c)に示すように、前面立ち上がり部6に設けられた嵌合部7と、装飾用部材3に設けられた嵌合部8とを嵌め合わせて固定することで、浴室用収納棚1が組み立てられる。
【0026】
本実施例の棚本体2は、樹脂で一体成形して製造されるが、樹脂又は樹脂以外の材料で形成してもよい、また別体で形成してもよい。棚本体2は、
図1(b)に示すように、底面11の外周は、上面側に立ち上げられた立ち上がり部で囲まれている。立ち上がり部は、前面立ち上がり部6、後面立ち上がり部12、左右の側面立ち上がり部13とから成る。
【0027】
前面立ち上がり部6は、左右の側面立ち上がり部13の間に形成されており、
図1(b)、
図2(a)、(c)、
図3(a)、(c)に示すように、前壁部16、後壁部17及び嵌合部7を備えている。
【0028】
前壁部16及び嵌合部7と、後壁部17とは、前後方向に間隔をおいて設けられている。そして、前壁部16及び嵌合部7と、後壁部17とは、
図1(b)に示すように、棚本体の横幅方向に間隔をおいて設けられた複数のリブ21で繋がれ(結合され)ている。これによって、前壁部16、後壁部17及びリブ21等で囲まれた空間22が形成されている。なお、リブ21は、複数ではなく1つ設けた構成でもよい。
【0029】
前壁部16は、
図3(a)、(c)に示すように、嵌合部7から上面側に立ち上がり、その前面側に立ち上がり平面部23が形成されている。換言すると、前面立ち上がり部6の嵌合部7は、前壁部16の下部に連続的に形成されている。
【0030】
より具体的には、前面立ち上がり部6に設けられた嵌合部7は、前壁部16の下端に連続して下方に突出する突出部26と、前壁部16の下部前面から前方に向かう水平部27と、水平部27から下方に向かう垂直部28とから断面略Γ状に形成されている。
【0031】
前壁部16の前面側の上部には、
図2(a)、
図3(a)、(c)に示すように、頂部に向けて後方に序々に湾曲したガイド面31が形成されている。このガイド面31は、後記するが、装飾用部材3を上方から前面立ち上がり部6に差し込む際に、装飾用部材3の嵌合部8を滑らかにガイドする。
【0032】
後壁部17は、
図3(a)〜(c)に示すように、棚本体2の底面11から上方に立ち上がるように形成されている。後壁部17の後面側には平面部32が形成されている。なお、後壁部17は、前面立ち上がり部6の嵌合部7の後方に位置するように設けられている。
【0033】
装飾用部材3は、
図1(c)、
図3(c)に示すように、前面部35、後面部36、頂部37及び嵌合部8とから成り、その断面形状は、略コの字形状に形成されている。装飾用部材3は、本実施例では弾性を有する金属で形成され、前後方向に弾力的に拡開可能である。なお、装飾用部材3は、樹脂、樹脂メッキ等の材料で形成されていてもよく、その製造は、押し出し成形、その他の製法でもよい。
【0034】
装飾用部材3の長手方向の長さ(左右方向の長さ)は、前面立ち上がり部6の長手方向の長さ(左右方向の長さであって、側面立ち上がり部13の間の長さ)と同じである。従って、側面立ち上がり部13の間において、前面立ち上がり部6に上方から差し込んで固定することで、前面立ち上がり部6を長手方向において完全にカバーできる。また、装飾用部材3の左右の側端面は、側面立ち上がり部13の内面側に隠れて、外部に露出しない。
【0035】
装飾用部材3の嵌合部8は、前面部35の下端に連続して形成されており、装飾用部材3の嵌合部8は、
図3(c)に示すように、前面部35の下端から後方に折り曲げられた水平な下面40と、下面40から上方かつ前方にJ字状(又はレ字状)に折り返された上面41とから成る。
【0036】
棚本体2の底面11には、
図3(a)〜(c)に示すように、後壁部17の棚部側端部(後壁部17の下端部42の後面部)に沿って、溝45が設けられている。この溝45は、装飾用部材3の後面部36の下端部46を差し込んで係合することが可能な形状に形成されている。
【0037】
棚本体2の底面11は、
図1(b)に示すように、後方に向けて下方に傾斜した傾斜面として形成されている。底面11の後端部は、底面11における最下位となっており、排水用の長孔47が左右方向に向けて伸びるように形成されている。
【0038】
以上の構成から成る浴室用収納棚1において、本発明の特徴は、次のような構成の排水部51を設けた点である。
【0039】
排水部51は、
図2(a)、(b)、
図3(a)〜(c)に示すように、後壁部17の下部の一部を切り欠き、溝45に連通するように形成される。ここで、「後壁部17の下部」は、後壁部17の下端部42、及び前壁部16と後壁部17との間の底部52を含む部分である。
【0040】
本実施例では、排水部51は、
図1(b)に示すように、後壁部17の左右方向(長手方向)に間隔をおいて複数形成されている。例えば、リブ21で区画された空間22ごとに排水部51を設ける構成としてもよい。
【0041】
ところで、溝45には、
図2(c)、
図3(c)に示すように、装飾用部材3の後面部36の下端部46が差し込まれているので、棚本体2の底面11に溜まった水を排水部51から排水するためには、装飾用部材3の後面部36の下端部46を切り欠いて溝45と排水部51を連通する構成が必要である。
【0042】
そこで、
図2(b)、3(c)に示すように、本実施例では、装飾用部材3の後面部36の下端部46にも切り欠き53が形成されている。この切り欠き53を通して、溝45と排水部51(後壁部17の下部に形成された切り欠き)を連通する構成となっている。
【0043】
(作用)
以上の構成から成る実施例の浴室用収納棚1の作用を説明する。
図1(b)、(c)に示すように、互いに分離されている状態の棚本体22と装飾用部材3を組み立てて、
図1(a)に示すような浴室用収納棚1を組み立てる場合は、上方から装飾用部材3を、棚本体22の前面立ち上がり部6に、外側からカバーするように、下方に向けて差し込む。
【0044】
この差し込みの際に、装飾用部材3の嵌合部8は、前壁部16のガイド面31で前方に装飾用部材3の弾力に抗して撓うようにしてガイドされ、そのために、装飾用部材3は前後方向に拡開されながら下方に向けて差し込まれる。
【0045】
装飾用部材3が下方まで差し込まれると、装飾用部材3の前面部35及び後面部36は前壁部16の平面部23及び後壁部17の平面部32に弾力的に押し当てられるようにして当接される。
【0046】
そして、装飾用部材3の嵌合部8は、前面立ち上がり部6の嵌合部7に、
図3(c)に示すように、嵌合して係合される。また、装飾用部材3の後面部36の下端は溝45内に入り込んで係合され、その結果、装飾用部材3は前面立ち上がり部6に固定された状態となる。
【0047】
前面立ち上がり部6内に溜まった水、具体的には、前壁部16と後壁部17との間において、底部52及び嵌合部7の水平部27の上面に溜まった水は、
図3(a)、(c)に示すように、排水部51から排水される。
【0048】
また、棚部、即ち棚本体2の底面11及び溝45に溜まった水は、
図2(c)、
図3(c)に示すように、装飾用部材3の切り欠き53を通過して排水部51から排水される。
【0049】
要するに、本発明の排水部51は、前面立ち上がり部6に溜まった水の排水と、棚本体2の底面11及び溝45に溜まった水の排水を両方行い、両排水のために共通の排水部として使用される。従って、排水部51を数多く設ける必要がないので、構成が簡素化され、見栄えが悪くなったり、強度が落ちたりすることもない。
【0050】
ところで、棚本体2の底面11及び溝45に溜まった水を排水するためには、溝45自体の底に排水孔を形成する構成も考えられる。しかしながら、このような構成であると、排水孔から装飾用部材3の下端が露出して見え、使用者等が誤って排水孔に指を入れたりすると、装飾用部材3の下端に触れて、指を傷つける等の危険が生じる。
【0051】
本発明に係る浴室用収納棚1の排水部51は、溝45の前側の後壁部17の下部を切り欠く構成であり、溝45の底に排水孔を形成していないので、上記のような危険は防止でき安全性が向上し、また下方から装飾用部材3の下端が露出して見えてしまうようなことはないので、見栄えを損なうようなこともない。
【0052】
但し、装飾用部材3の下端が、指が触れても怪我しないように滑らかに加工されている場合や、下方から装飾用部材3の下端が露出して見えてもよいような場合は、溝45の底にも排水孔を形成してもよい。
【0053】
図5は、実施例1の浴室用収納棚1を浴室の壁48に取り付けた使用例を示す図である。この使用例では、鏡49の側方に3つの浴室用収納棚1が、浴室の壁48に上下方向に3段となるように取り付けられている。54は握りバーであり、55は照明具である。
【0054】
浴室用収納棚1は、このように浴室の壁48に取り付けられて使用されるが、入浴者によって飛び散る湯水だけでなく、天井から滴る水滴等によって、浴室用収納棚1内に水が溜まるが、上記排水部51によって効果的に排水される。また、浴室用収納棚1の下側が、特に浴槽に浸かっている際等には、入浴者の目に入りやすい。しかし、上記のとおり下方から装飾用部材3の下端が露出して見えてしまうようなことはないので、見栄えを損なうようなこともない。
【0055】
(実施例の変形例)
上記実施例の浴室用収納棚1は、
図1(b)に示すように、棚本体2の底面11は、後方に向けて下方に傾斜した傾斜面として形成され、底面11における最下位となっている後端部に排水用の長孔47が形成されている。
【0056】
しかし、逆に、
図4(a)に変形例として浴室用収納棚50を示すように、棚本体2の底面11は、前方に向けて下方に傾斜した傾斜面として形成され、底面11における最下位となっている前端部(前面立ち上がり部6の後壁部17の後側に隣接する底面11の部分)56に排水用の長孔47が形成されている構成としてもよい。
【0057】
なお、底面11を前方に向けて下方に傾斜して形成した構成では、
図4(b)に別の変形例として浴室用収納棚57を示すように、特に長孔47等を設けることなく、上記排水部51が棚板の底面11に溜まった水を排水する排水孔として共用する構成としてもよい。
【0058】
以上、本発明に係る浴室用収納棚を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。