(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体内に除湿手段を備え、室内空気を第1の吸込口から取り入れて前記除湿手段を通過させて除湿した空気を第1吹出口へ連通させる除湿風路と、第2の吸込口から取入れた室内空気を第2の吹出口へ連通させる循環風路とを備え、第1の吹出口および第2の吹出口から空気を衣類へ当てて衣類を乾燥させる衣類乾燥装置において、前記除湿風路には、前記除湿手段の下流側に配置した第1のファンモータと、前記第1の吸込口から吸い込んだ空気を前記除湿手段に通過させる第1の吸込風路と、前記第1のファンモータと前記第1の吹出口を連通させる第1の吹出風路を備え、前記循環風路には、第2の吸込口および第2の吹出口と連通する第2のファンモータと、前記第2の吸込口と第2のファンモータを連通させる第2の吸込風路と、前記第2のファンモータと第2の吹出口を連通させる第2の吹出し風路を備え、前記第2の吸込風路内に開動作によって前記除湿手段と前記第1のファンモータの間の第1の吸込風路と前記第2の吸込風路を連通させるダンパーを設け、前記ダンパーを開動作させた際は、前記ダンパーによって前記ダンパーから前記第2の吸込口までの前記第2の吸込風路を閉塞させるようにし、衣類乾燥開始時は、前記ダンパーを閉動作し前記除湿風路と前記循環風路を独立させて空気を流し、その後開動作に切り替えて、前記第1の吸込風路の一部の空気を前記第2の吸込風路に分流させて前記除湿風路と前記循環風路に空気を流すようにしたことを特徴とする衣類乾燥装置。
本体に衣類の乾き度合いを検知する検知手段を備え、前記検知手段からの検知情報から衣類の繊維表面が濡れている状態Aと、衣類の繊維内部にのみ水分が残存している状態Bを判断する判断手段と、ダンパーの動作を制御する制御手段を備え、衣類乾燥開始後、前記判断手段により状態Aであると判断した場合は、前記ダンパーを閉動作させた状態で保持し、その後、前記判断手段により状態Bであると判断した場合は、前記ダンパーを開動作させた状態で保持することを特徴とする請求項1に記載の衣類乾燥装置。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衣類乾燥装置は、ファンモータによって室内空気を取り込み、ヒートポンプを経由して除湿した空気を衣類に送風して乾燥させる除湿機が知られており、更に衣類乾燥時間を短縮することを目的に、衣類に送風する風量や風速を向上させた構成が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1ではファンモータによって取り入れた室内空気をヒートポンプによって除湿した後、別のファンモータによって新たに取り入れた室内空気と混合させて吹き出す構成が提案されている。
【0004】
以下、特許文献1記載の衣類乾燥装置について
図6を参照しながら説明する。
【0005】
図6は、衣類乾燥装置の構成を示す縦断面図を示している。
【0006】
キャビネット101の内部に、その上部に設けられた隔壁102を介して室内空気の冷却除湿及び再熱を行う除湿室103と、除湿空気及び室内空気の混合を行う混合室104とが設けられている。隔壁102の後部に両室を連通させる連通口105が形成されている。
【0007】
除湿室103の前壁に空気吸込口106が形成されている。除湿室103内に圧縮機107、冷却器108、放熱器109よりなる圧縮式冷凍機110と、空気吸込口106から除湿室103内に吸い込んだ室内空気を冷却器108及び放熱器109に通した後、連通口105から混合室104に送り出す送風機111と、除湿水タンク112とが配置されている。
【0008】
混合室104の左右両側壁及び後壁に室内空気の吸込口113が形成されている。キャビネット101の上壁のほぼ全体に除湿空気と室内空気との混合空気の吹出口114が形成されている。混合室104内に吸込口113から室内空気を吸い込むとともに連通口105から送り出された除湿空気と混合し、混合空気吹出口114から外部に吹き出す混合空気送風機115が配置されている。
【0009】
上記構成により、衣類乾燥時は送風機111によって得られる除湿空気に、混合空気送風機115で得られる室内空気を混合させて混合空気吹出口114から送風させることで風速を向上させている。
【0010】
また、例えば特許文献2では、除湿を行うメイン風路と、除湿を行わないサブ風路をそれぞれ独立させた構成が提案されている。
【0011】
以下、特許文献2記載の衣類乾燥装置について
図7を参照しながら説明する。
【0012】
図7は、衣類乾燥装置の構成を示す縦断面図を示している。
【0013】
本体201の内部に冷凍サイクルを構成する蒸発器202、凝縮器203、圧縮機204が内装されている。除湿を行うメイン風路205は室内空気を吸い込むメイン吸込口206、蒸発器202、凝縮器203、送風を行う遠心ファン207を順に通過し、最後にメイン吹出口208が設けられている。除湿を行わないサブ風路209は室内空気を吸い込むサブ吸込口210、送風を行うクロスフローファン211を通過し、最後にサブ吹出口212が設けられている。
【0014】
メイン風路205の遠心ファン207と、サブ風路209のクロスフローファン211は、それぞれ独立して運転制御可能である。
【0015】
上記構成により、衣類乾燥時、サブ風路209はメイン風路205の除湿能力に関係なく風を送ることで風速を向上させている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の衣類乾燥装置は、以下の衣類乾燥における乾燥過程の考え方が前提となっている。
【0025】
衣類の乾燥過程には定率乾燥過程と減率乾燥過程が存在する。
【0026】
すなわち、衣類乾燥開始時はまだ衣類の表面が濡れている状態であり、衣類の繊維表面に水膜が形成されている。このとき、衣類は繊維表面の水膜が蒸発することで乾燥していくと同時に繊維内部の水分が表面に移動し、水膜が保たれている。この乾燥過程は定率乾燥過程と呼び、時間と共に衣類に含まれる水分量が一定の比率で減少する乾燥速度となる。
【0027】
定率乾燥過程では、風速に比例して乾燥速度が向上することが分かっており、繊維表面の水膜と周囲空気との水分の受け渡し(蒸発)と拡散を促進させることが重要である。
【0028】
次に、衣類に含まれる水分量が減少していくと、繊維表面の水膜が消失し、繊維内部の水分が空隙を隔てて存在するようになる。この状態の乾燥過程では、衣類の繊維内部で水分の蒸発が発生している。繊維内部で蒸発した水蒸気は、空隙を拡散しながら繊維表面に達して外部に放出されるが、繊維内部の空隙の湿度が増加するため、乾燥速度が定率乾燥よりも遅くなる。この乾燥過程は減率乾燥過程と呼び、乾燥速度は一定ではなく、時間と共に衣類と周囲空気との水分の受け渡しが無くなる平衡状態になるまで緩やかに漸近していく。
【0029】
減率乾燥過程では、繊維表面ではなく、繊維内部で水分の蒸発が発生しているため、減率乾燥速度は気流の風速の影響をほとんど受けない。そのため、減率乾燥速度を向上させるためには、繊維表面付近の周囲空気の相対湿度を低下させることが有効であり、繊維内部の空隙に存在する水蒸気の拡散、放出を促進させ、空隙内の湿度を低下させて繊維内部の水分蒸発を促進させることが重要である。
【0030】
そこで、本発明の請求項1記載の衣類乾燥装置は、本体内に除湿手段を備え、室内空気を第1の吸込口から取り入れて前記除湿手段を通過させて除湿した空気を第1吹出口へ連通させる除湿風路と、第2の吸込口から取入れた室内空気を第2の吹出口へ連通させる循環風路とを備え、第1の吹出口および第2の吹出口から空気を衣類へ当てて衣類を乾燥させる衣類乾燥装置において、前記除湿風路には、前記除湿手段の下流側に配置した第1のファンモータと、前記第1の吸込口から吸い込んだ空気を前記除湿手段に通過させる第1の吸込風路と、前記第1のファンモータと前記第1の吹出口を連通させる第1の吹出風路を備え、前記循環風路には、第2の吸込口および第2の吹出口と連通する第2のファンモータと、前記第2の吸込口と第2のファンモータを連通させる第2の吸込風路と、前記第2のファンモータと第2の吹出口を連通させる第2の吹出し風路を備え、前記第2の吸込風路内に開動作によって前記除湿手段と前記第1のファンモータの間の第1の吸込風路と前記第2の吸込風路を連通させるダンパーを設け、衣類乾燥開始時は、前記ダンパーを閉動作し前記除湿風路と前記循環風路を独立させて空気を流し、その後開動作に切り替えて、前記第1の吸込風路の一部の空気を前記第2の吸込風路に分流させて前記除湿風路と前記循環風路に空気を流すようにしたものである。
【0031】
これにより、衣類乾燥開始時の衣類が濡れており、衣類の繊維表面に水膜が存在している定率乾燥過程において、ダンパーを閉動作させることで除湿風路を通過して第1の吹出口から吹き出す気流に加え、循環風路を通過して第2の吹出口から吹き出す気流によって衣類に到達する気流の風速を向上させることができる。この作用によって繊維表面の水膜の蒸発、拡散を促進でき、乾燥速度を向上させることができる。
【0032】
その後衣類の繊維表面の水膜が消失し、繊維内部に水分が残存している減率乾燥過程に移行した際に、ダンパーを開動作させることができるので除湿手段を通過する風量を、第1のファンモータの風量に加え、第2のファンモータの風量を加算することで除湿能力を増加させ、衣類の周囲空気の相対湿度を更に低下させることができる。この作用によって、繊維内部に残存する水分の蒸発、拡散を促進でき、乾燥速度を向上させることができる。
【0033】
すなわち、この2つの乾燥過程において、それぞれ乾燥速度を向上させることで衣類乾燥が完了するまでの乾燥時間を短縮することができるという効果がある。
【0034】
また、本発明の請求項2記載の衣類乾燥装置は、本体に衣類の乾き度合いを検知する検知手段を備え、前記検知手段からの検知情報から衣類の繊維表面が濡れている状態Aと、
衣類の繊維内部にのみ水分が残存している状態Bを判断する判断手段と、ダンパーの動作を制御する制御手段を備え、衣類乾燥開始後、前記判断手段により状態Aであると判断した場合は、前記ダンパーを閉動作させた状態で保持し、その後、前記判断手段により状態Bであると判断した場合は、前記ダンパーを開動作させた状態で保持することを特徴とするものである。
【0035】
これにより、判断手段は、検知手段からの検知情報から、定率乾燥過程である状態Aと、減率乾燥過程である状態Bを判断することで、制御手段により衣類の乾燥状態に合わせて適切なタイミングでダンパーを切り替えることができるので、それぞれの乾燥過程において、乾燥速度を向上させることで同様の効果がある。
【0036】
また、本発明の請求項3記載の衣類乾燥装置は、ダンパーを開動作させた際は、前記ダンパーによって前記ダンパーから第2の吸込口までの第2の吸込風路を閉塞させるようにしたことを特徴とするものである。
【0037】
これにより、ダンパーを開動作させて第1の吸込風路を流れる空気の一部を第2の吸込風路にバイパスさせる際、ダンパーによってダンパーより上流側の第2の吸込風路を閉塞させることにより、確実にバイパス流れを生じさせることができる。これにより、同様の効果が得られる。
【0038】
また、本発明の請求項4記載の衣類乾燥装置は、第2の吹出口の開口面積は第1の吹出口の開口面積より小さくし、前記第2の吹出口は前記第1の吹出口の開口の内側に設け、前記第2の吹出口から吹き出す気流の風速は、前記第1の吹出口から吹き出す風速よりも速くしたことを特徴とするものである。
【0039】
これにより、第2の吹出口から吹き出す高風速の気流によって、第2の吹出口の周りにある第1の吹出口から吹き出す除湿空気を巻き込みながら送風することができ、除湿空気を衣類に直接当てることが容易にできると共に到達風速を向上させることができるため、乾燥時間を短縮させることができるという効果が得られる。
【0040】
また、本発明の請求項5記載の衣類乾燥装置は、本体は略直方体とし、第1の吹出口及び第2の吹出口は前記本体上部に備え、第1の吹出口の開口形状は前記本体形状と長手方向を同一とした長方形であり、前記第2の吹出口は、前記第1の吹出口の開口の長手方向に間隔をおいて2個設け、且つ、各々の前記第2の吹出口から吹き出す気流は、外部に向かって長手方向に拡大する方向に送風することを特徴としたものである。
【0041】
衣類乾燥時、衣類乾燥装置の本体の長手方向の幅よりも広範囲に干された衣類に気流を当てて乾燥させる場合、端に干された衣類までの気流到達距離は本体正面側に干された衣類に対して遠くなり、風速の距離減衰の影響が大きくなることで同一の初速で吹き出した際に端に干された衣類に到達する風速が低下してしまうが、本発明の請求項5記載の構成により第2の吹出口から吹き出す高風速の気流が長手方向に拡大して送風するため、端に干された衣類に対しても十分な到達風速が得られるので、衣類毎の乾燥ムラを抑制することができ、乾燥時間を短縮できるという効果が得られる。
【0042】
また、本発明の請求項6記載の衣類乾燥装置は、除湿手段は、冷媒を圧縮する圧縮機と前記冷媒が供給空気に放熱する放熱器と前記冷媒を膨張させて減圧する減圧機構と前記冷媒が供給空気から吸熱する吸熱器とを配管接続した蒸気圧縮式のヒートポンプとし、第1の吸込風路内の上流側に吸熱器を、下流側に放熱器を備え、ダンパーは第1の吸込風路における前記放熱器と第1のファンモータの間と、第2の吸込風路とを連通、遮断できる構成としたことを特徴とするものである。
【0043】
これにより、ダンパーを開動作させて、第1の吸込風路内の空気の一部を第2の吸込風路にバイパスさせて除湿手段を通過する風量を増加させた時であっても、吸熱器と放熱器を通過する風量バランスが変わらないため、ヒートポンプの熱サイクルが不安定になりにくくなり、安定して除湿能力を向上させることができるという作用を有する。
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0046】
(実施の形態1)
図1に本発明の実施の形態1の衣類乾燥装置1の構成を示す断面斜視図を示す。
【0047】
また本実施の形態での衣類の乾燥過程についての考え方は、上記においてすでに説明したのでここでは説明を省略する。
【0048】
図1に示すように、室内の床面に設置される略直方体形状の衣類乾燥装置1は、外郭となる本体2を有し、本体2内に室内空気を吸い込んで除湿し、再度室内に向かって吹き出す除湿風路3と、室内空気を吸い込んでそのまま吹き出す循環風路4を設けている。
【0049】
除湿風路3は、第1のファンモータ5(一例としてシロッコファンとACモータ)を内包している。除湿風路3の吸い込み側は、本体2の側面に設けた第1の吸込口6から室内空気を吸込み、第1の吸込風路7を経由して第1のファンモータ5に案内している。第1の吸込風路7には、除湿手段8としての蒸気圧縮式のヒートポンプ装置9を設置している。
【0050】
ここで、ヒートポンプ装置9は、冷媒を圧縮する圧縮機10、冷媒の熱を供給空気に放熱する放熱器11、冷媒を膨張させて減圧する一例としてキャピラリーチューブとした減圧機構12(図示せず)、冷媒が供給空気から吸熱する吸熱器13を冷媒配管で接続した構成になっている。
【0051】
吸熱器13、及び放熱器11については、供給空気(第1の吸込口6から吸い込んだ室内空気)との熱交換が必要である。吸熱器13、及び放熱器11は、第1の吸込風路7内に空気の流れ方向に対して吸熱器13、放熱器11の順に並べて配置している。放熱器11は吸熱器13より若干大きくしている。それは、冷凍サイクルとして、放熱器11で放熱させる熱量は、吸熱器13で吸熱する熱量に加えて圧縮機10で冷媒を断熱圧縮した際の冷媒のエンタルピー増加分を放熱する必要があるためであり、第1の吸込口6から吸い込んだ空気の一部はヒートポンプ装置9の内部で吸熱器13を通さずに放熱器11を通過するように構成している。
【0052】
吸熱器13によって供給空気から熱を吸熱した際、供給空気は露点温度以下となって結露し、吸熱器13の表面に結露水が発生する。この結露水は、重力によって吸熱器13の下方へ流れるようにし、排水経路14を通って本体の最下部に設けたタンク15に貯蓄するようにしている。
【0053】
第1のファンモータ5の吹き出し側は、第1の吹出風路16を経由し、本体2の上部に設けた第1の吹出口17から上方に向かって除湿空気を吹き出す構成となっている。
【0054】
次に、循環風路4は、第2のファンモータ18(一例としてターボファンとACモータ)を内包している。循環風路4の吸い込み側は、本体2の側面に設けた第2の吸込口19から室内空気を吸い込み、第2の吸込風路20を経由して第2のファンモータ18に案内している。循環風路4の吹き出し側は、第2の吹出風路21を経由して本体2の上部に設けた第2の吹出口22から循環空気を吹き出す構成となっている。
【0055】
図2に示すように、第1の吸込風路7と第2の吸込風路20は、上下に隣り合っては配置している。そして、第1の吸込風路7における除湿手段8と第1のファンモータ5の間の壁面と、第2の吸込風路20の壁面は、それぞれ一部をダンパー23によって隔てられるようにしている。ダンパー23は、駆動用モータ24(一例としてステッピングモータ)を有し、開閉動作が可能になっている。すなわち、第1の吸込風路7と第2の吸込風路20はダンパー23が閉じているときに仕切られている。
【0056】
以下にダンパー23の開閉動作による風路流れについて説明する。
【0057】
図2にダンパー23の閉動作時の風路流れを示す模式図を示し、
図3にダンパー23の開動作時の風路流れを示す模式図を示す。
【0058】
図2に示すように、ダンパー23の動作は、閉動作によって第1の吸込風路7と第2の吸込風路20が仕切られ、それぞれ独立した吸込風路となり、開動作によって第1の吸込風路7と第2の吸込風路20が連通するようになっている。
【0059】
また、
図3に示すように、ダンパー23が開動作した際は、ダンパー23より上流側の第2の吸込風路20を閉塞するように第2の吸込風路20の断面形状とダンパー23の形状を略同一に合わせている。これにより、ダンパー23を開動作させた際に、確実に第1の吸込風路7から第2の吸込風路20へのバイパス流れを生じさせることができる。
【0060】
第2のファンモータ18は、第1の吹出口17の近傍に設置することで、第2の吹出風路21を短くすることができ、圧力損失が低減されるので、好適である。実施の形態1では、第1のファンモータ5のスクロール状ケーシングの舌部の裏側空間に配置した。
【0061】
上記構成により実現できる衣類乾燥時の送風制御方法について、
図4を示しながら説明する。
【0062】
図4に時間軸での衣類に含まれる水分量、衣類乾燥過程、衣類に当たる気流の風速、室内空気の相対湿度の変化、衣類の表面温度を表すグラフを示す。
【0063】
図4に示すように、衣類乾燥開始時の定率乾燥過程の際は、前記ダンパー23を閉動作し前記除湿風路3と前記循環風路4を独立させて空気を流し、その後、減率乾燥過程に移行した際に開動作に切り替えて、前記第1の吸込風路7の一部の空気を前記第2の吸込風路20に分流させて前記除湿風路3と前記循環風路4に空気を流すように変更することが可能となっている。
【0064】
これにより、衣類乾燥開始時の衣類が濡れており、衣類の繊維表面に水膜が存在している定率乾燥過程において、ダンパー23を閉動作させることで除湿風路3を通過して第1の吹出口17から吹き出す気流に加え、循環風路4を通過して第2の吹出口22から吹き出す気流によって衣類に到達する気流の風速を向上させることができる。この作用によって繊維表面の水膜の蒸発、拡散を促進でき、乾燥速度を向上させることができる。
【0065】
その後衣類の繊維表面の水膜が消失し、繊維内部に水分が残存している減率乾燥過程に移行した際に、ダンパー23を開動作させることができるので除湿手段8を通過する風量を、第1のファンモータ5の風量に加え、第2のファンモータ18の風量を加算することで除湿能力を増加させ、衣類の周囲空気の相対湿度を更に低下させることができる。この作用によって、繊維内部に残存する水分の蒸発、拡散を促進でき、乾燥速度を向上させることができる。
【0066】
すなわち、この2つの乾燥過程において、それぞれ乾燥速度を向上させることで衣類乾燥が完了するまでの乾燥時間を短縮することができるという効果がある。
【0067】
以上のように本実施の形態の基本構成について、説明をした。
【0068】
加えて以下に衣類の乾き度合いを検知する構成とその検知方法について説明する。
【0069】
すなわち、
図1に示すように室内に吊り干しされた検知手段25を設けることで、より精度良くそれぞれの乾燥過程を把握することができる。
【0070】
以下にその検知方法について説明する。
【0071】
本体2の上部には、室内に吊り干しされた衣類の乾き度合いを検知する検知手段25(一例として衣類の表面温度を測定できるサーモパイル)を設け、この検知手段25からの検知情報を受け取って衣類の乾き状態を判断する判断手段26(一例として制御基板に搭載したマイコン内のプログラム)と、ダンパー23の動作を制御する制御手段27(一例として制御基板)を設けている。
【0072】
上記構成にて判断手段26により衣類の繊維表面が濡れている状態Aと判断した場合は、ダンパー23を閉動作させた状態で保持し、衣類の繊維内部に水分が残存している状態Bと判断した場合はダンパー23を開動作させた状態で保持するように制御する。これにより、状態Aでは定率乾燥過程であるため、ダンパー23を閉動作させ、気流の風速を上げて乾燥を促進させることができる。また、状態Bでは減率乾燥過程であるため、ダンパー23を開動作させて相対湿度を更に低下させて乾燥を促進させることができる。この乾燥過程の移行を検知手段25と判断手段26によって精度良く把握し、制御手段27によってダンパー23動作を制御することで乾燥速度を向上させることができる。
【0073】
ここで、検知手段25による検知情報から判断手段26によって衣類の乾燥状態を判断する具体的な方法について
図4を示しながら説明する。
【0074】
図4に示すように、衣類乾燥開始時は、まだ衣類に水分が多量に含まれており、衣類の繊維表面に水膜が存在している状態である。このとき、衣類に気流を当てながら検知手段25によって衣類表面温度を計測すると、衣類の表面温度は周囲空気から5〜10℃程度低くなっている。これは、衣類の繊維表面の水膜から周囲空気への水分蒸発が発生しており、水分が水蒸気に変化する際に熱を奪うため、衣類表面の温度が低下する。この水膜からの水分蒸発は、定率乾燥過程の間、定常的に発生し続けており、衣類の表面温度もほぼ一定である。判断手段26は、例えば1分毎に検知手段25からの衣類表面温度情報を取得し、時間変化に対する衣類表面温度の変化が一定値を超えない間は状態Aであると判断することができる。
【0075】
次に、定率乾燥過程から減率乾燥過程に移行していく際は、衣類の繊維表面の水膜が断片的に存在する状態となっているため、周囲空気への水分蒸発量が減少し、それに伴って衣類の表面温度も徐々に上昇し、周囲空気の温度に近づいていくことになる。したがって、判断手段26は、例えば1分毎に検知手段25からの衣類表面温度情報を取得し、時間変化に対する衣類表面温度の変化が一定値を超えて上昇している場合は状態Bであると判断することができる。最終的には衣類の表面温度が周囲空気温度に漸近し、温度差がゼロに近づけば乾燥したという状態も検知可能となる。
【0076】
これにより、衣類乾燥過程を検知手段25及び判断手段26によって精度良く把握することができ、制御手段27により衣類の乾燥状態に合わせて適切なタイミングでダンパー23を切り替えることができるので、それぞれの乾燥過程おいて乾燥速度を向上させることができる。
【0077】
次に本体2から吹き出す気流、吹出口形状の一例、及び衣類乾燥時の状況について、
図5を参照しながら説明する。
【0078】
図5に示すように、第1の吹出口17は本体2と同一の長手方向を有する四角形であり、開口の外郭寸法は、350mm×180mmである。第2の吹出口22は、第1の吹出口17の外郭より内側、すなわち第1の吹出口17の開口の内側で且つ、間隔をおいて長手方向に2個配置している。第2の吹出口22の1個あたりの外郭寸法は、80mm×6mmとし、第1の吹出口17より狭くしている。また、第2の吹出口22から吹き出す気流の方向は、それぞれ長手方向に拡大する方向に送風するようにした。
【0079】
ここで、気流の角度は、一例として幅2mの範囲に吊干した衣類に対し、衣類のほぼ中央の位置で距離1mに本体2を置いたと仮定した場合、本体2の中央から端に吊った衣類に気流を向けた時の角度は約45°となるため、第2の吹出口22の吹き出し気流の角度は、本体2正面に対し、長手方向に45°拡大する角度とした方が良い。
【0080】
第1の吹出口17から吹き出す気流の出口風速に対し、第2の吹出口22から吹き出す気流の出口風速を速くしている。一例として、第1の吹出口17から吹き出す気流の出口風速に対して、第2の吹出口22から吹き出す気流の出口風速は2倍以上とすることが望ましく、第1の吹出口17の出口風速は10m/s、第2の吹出口22の出口風速は20m/sとしている。
【0081】
上記の構成により、第2の吹出口22から吹き出す高風速の気流によって、第2の吹出口22の周りにある第1の吹出口17から吹き出す除湿空気を巻き込みながら送風することができ、除湿空気を衣類に直接当てることが容易にできると共に到達風速を向上させることができる。また、衣類乾燥装置1の本体2の長手方向の幅よりも広範囲に干された衣類に気流を当てて乾燥させる場合、端に干された衣類までの気流到達距離は本体2正面側に干された衣類に対して遠くなり、風速の距離減衰の影響が大きくなることで同一の初速で吹き出した際に端に干された衣類に到達する風速が低下してしまうが、本実施の形態の構成により第2の吹出口22から吹き出す高風速の気流が長手方向に拡大して送風するため、端に干された衣類に対しても十分な到達風速が得られるので、衣類毎の乾燥ムラを抑制することができ、乾燥時間を短縮できるという効果がある。