(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前面が開口された筐体と、前記筐体内に前後方向に移動自在に設置され上面が開口された洗浄槽と、前記洗浄槽の前面に設けられ前記洗浄槽が前記筐体内に完全に収容された収納位置にあるときに前記筐体の前面を覆うドアと、前記洗浄槽が前記収納位置にあることを検知する位置検知装置と、前記洗浄槽内に収容された食器類に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄装置と、前記洗浄装置を制御して一連の洗浄運転を実行するとともに、前記位置検知装置により前記洗浄槽が前記収納位置から移動したことを検知すれば直ちに前記洗浄装置の運転を停止する制御装置と、前記洗浄槽が前記収納位置から引き出されるときに前記収納位置またはその近傍から所定位置まで引き出し速さを抑制する制動力を発生する制動装置とを有する食器洗い機。
前記制動力は、前記洗浄槽が前記収納位置から引き出されるときに前記収納位置から前記所定位置まで所定時間以上かかるように発生する請求項1または2記載の食器洗い機。
【背景技術】
【0002】
従来のビルトインタイプで引き出し式の食器洗い機は、洗浄運転中に使用者が洗浄槽を引き出そうとしたとき、噴射された洗浄水が洗浄槽から飛び出さないように構成され、例えば以下に示すような技術が開示されている。
【0003】
図8は従来の食器洗い機の側面断面図であり、いわゆる引き出し方式のビルトインタイプの食器洗い機がシステムキッチンに収納された状態を示す。なお、二点鎖線で記載された部分は食器洗い機本体から洗浄槽が引き出された状態を示す(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この食器洗い機は、前方に開口する食器洗い機本体101内に、前後方向に移動自在に設置され上方に開口を有する洗浄槽102と、洗浄槽102の前部に設けられて食器洗い機本体101の前面を覆うドア102aとを備えている。洗浄槽102内には食器類103を戴置する食器カゴ104と、食器カゴ104に戴置された食器類103に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄ノズル105が設けられている。食器洗い機本体101内で洗浄槽102の後方には、洗浄槽102の前後移動を検知するマイクロスイッチ106と、洗浄槽102の移動を第一の拘束位置と第二の拘束位置で拘束するギアードモータ107(電磁弁でもよい)とが配設されている。そして、ギアードモータ107による洗浄槽102の移動の拘束中に、洗浄槽102が第一の拘束位置から第二の拘束位置に移動したことをマイクロスイッチ106が検知してから所定時間以内は、ギアードモータ107による拘束を解除しないものである。
【0005】
この構成により、使用者がドア102aの取っ手102bを持って洗浄槽102を引き出そうとしても、少なくとも所定時間は洗浄槽102を第二の拘束位置より前に引き出せないので、洗浄ノズル105から噴射される洗浄水が外に飛び出したり、使用者にかかったりすることがない。
【0006】
図9は他の従来の食器洗い機のドア上部の側面断面図であり、洗浄槽を引き出す取っ手と取っ手に手を掛けられたことを検知する取っ手スイッチの概要を示す(例えば、特許文献2参照)。この食器洗い機は、
図8と同様に、食器洗い機本体内に前後方向へ移動可能に設けられた洗浄槽111を備え、洗浄槽111の前面にドア112を有する。ドア112は、上部に洗浄槽111を引き出すために手を引っ掛けるための取っ手113を備え、取っ手112の内側に回動自在に設けられた取っ手レバー114を有する。そして、使用者が洗浄槽111を引き出そうとして取っ手113に手を掛けると、取っ手レバー114が押されて軸114aを中心に角度θ1だけ回動し、取っ手113の内側に手を掛けるための空間が現れる。この構成により、取っ手レバー114を回動させない限り、取っ手113の内部に手を掛けることができる空間が現れず、洗浄槽111を前方に引くことができない。
【0007】
さらに、洗浄槽111の前後方向への移動をロックおよびロック解除するロック装置(図示せず)と、取っ手レバー114の回動を検知する取っ手スイッチ115とを備える。取っ手スイッチ115は、取っ手レバー114が角度θ1より小さい角度θ3だけ回動した時点で取っ手レバー114の回動を検知する。そして、図示しない制御装置は、取っ手
スイッチ115が検知した後に前記ロック装置をロック解除するとともに、図示しない洗浄ノズルから洗浄水を噴射させる洗浄ポンプを停止する。すなわち、使用者が取っ手113にわずかに手を掛けただけでロック装置が解除されるが、洗浄槽111を引き出すためには取っ手レバー114を角度θ1まで回動させるまで手を掛ける必要があり、わずかではあるが時間が経過する。その間に洗浄ポンプが停止して洗浄槽111が引き出される前に洗浄ノズルからの洗浄水の噴射が停止し、洗浄水が機外に飛び出すのを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明の食器洗い機は、前面が開口された筐体と、前記筐体内に前後方向に移動自在に設置され上面が開口された洗浄槽と、前記洗浄槽の前面に設けられ前記洗浄槽が前記筐体内に完全に収容された収納位置にあるときに前記筐体の前面を覆うドアと、前記洗浄槽が前記収納位置にあることを検知する位置検知装置と、前記洗浄槽内に収容された食器類に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄装置と、前記洗浄装置を制御して一連の洗浄運転を実行するとともに、前記位置検知装置により前記洗浄槽が前記収納位置から移動したことを検知すれば直ちに前記洗浄装置の運転を停止する制御装置と、前記洗浄槽が前記収納位置から引き出されるときに前記収納位置またはその近傍から所定位置まで引き出し速さを抑制する制動力を発生する制動装置とを有するものである。
【0017】
この構成により、洗浄運転中に使用者が洗浄槽を引き出そうとしたときには洗浄槽の引き出し速さが制動装置により抑制され、その間に洗浄水の噴射が完全に止まることによって噴射された洗浄水が筐体の外に飛び出すことが防止され、洗浄水が周囲を濡らすことがない。
【0018】
第2の発明は、第1の発明において、前記所定位置は、前記洗浄装置に含まれる洗浄ノズルから噴射された洗浄水が前記筐体の外に飛び出さない位置とするものである。これにより、洗浄水が筐体の外に飛び出さない洗浄槽の位置として明確であり、洗浄槽が引き出されるときに必要な制動力が作用して確実に洗浄水の飛び出しが防止される。
【0019】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記制動力は、前記洗浄槽が前記収納位置から引き出されるときに前記収納位置から前記所定位置まで所定時間以上かかるように発生するものである。これにより、洗浄槽が引き出されるときに必要な制動力が作用して引き出し速さが抑制され、確実に洗浄水の飛び出しが防止される。
【0020】
第4の発明は、第3の発明において、前記所定時間は、前記位置検知装置が前記洗浄槽の移動を検知してから前記洗浄ノズルからの洗浄水の噴射が停止するまでの時間とするものである。これにより、洗浄ノズルからの洗浄水の噴出停止までの停止時間を見越して、洗浄槽が引き出されるときに必要な制動力が作用して引き出し速さが抑制され、確実に洗浄水の飛び出しが防止される。
【0021】
第5の発明は、第1〜第4の発明において、前記制動力は、前記洗浄槽が引き出そうとされる速さに応じて変化するものである。これにより、洗浄槽がゆっくり引き出される場
合には使用者は余分な力を必要としなくて良いし、引き出し時間が無意味に延長されてしまうことが抑制される。そして、洗浄槽が勢いよく引き出される場合には大きな制動力が発生し、使用者のさまざまな使い方に対応して引き出し速さが抑制され、洗浄水が機外に飛び出すことが防止されるとともに使い勝手が向上する。
【0022】
第6の発明は、第1〜第5の発明において、前記制動力は、前記洗浄槽の前記収納位置からの動き始めには発生しないものである。これにより、使用者が洗浄槽を引き出すときの最初に必要な一番大きな力が増加することなく、使用感が損なわれない。
【0023】
第7の発明は、第1〜第6の発明において、前記制動装置はダンパーにより構成されたものである。これにより、電気エネルギーを消費することがない。また、使用者が洗浄槽を急いで引き出そうとしたときに、洗浄槽の移動に制動力が働くだけでロックされるものではないため、使用者が戸惑ったり不快感を生じたりすることがない。
【0024】
第8の発明は、第7の発明において、前記ダンパーは前記洗浄槽が引き出される方向にのみ前記制動力を発生するものである。これにより、洗浄槽が押し込まれるときに使用者は余分な力を必要としない。
【0025】
第9の発明は、第1〜第8の発明において、前記ドアは、収納されるシステムキッチンの扉の意匠に合わせたハンドルと化粧パネルを装着することができるものである。これにより、システムキッチンと一体化してシステムキッチンのデザイン性が向上する。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
図1から
図3は、本発明の実施の形態1における食器洗い機の側面断面模式図であり、引き出し方式のビルトインタイプの食器洗い機がシステムキッチンに収納された状態を示す。
図1は洗浄槽が筐体内に完全に収容された状態を示し、
図2は洗浄槽が所定位置まで筐体から引き出された状態を示し、
図3は洗浄槽が所定位置を越えて筐体から引き出された状態を示す。なお、本実施の形態では、
図1に示すような洗浄槽が筐体内に完全に収容された位置を収納位置と称する。また、図面上左方向が洗浄槽の引き出し方向である。
【0028】
図1から
図3において、食器洗い機はシステムキッチンKに収納され、箱状に形成され前面が開口された筐体1の内部に、前後方向に移動自在に設置され上面が開口された洗浄槽2を備える。洗浄槽2は、筐体1の両側壁の内側に水平に配設された案内レール3に懸架されて小さな力で前後方向に移動するように構成され、人である使用者の力によって筐体1の外へ引き出されたり、筐体1内に押し込まれたりする。洗浄槽2は、内部に食器類4を整列配置するための食器かご5を有し、食器類4に洗浄水を噴射して洗浄する洗浄装置6を備えている。洗浄装置6は、洗浄槽2に給水された洗浄水を循環させる洗浄ポンプ7と、洗浄ポンプ7で圧送された洗浄水を食器類4に噴射する洗浄ノズル8とを含む。
【0029】
洗浄槽2の前方にはドア9が設けられ、ドア9は洗浄槽2が筐体1の内部に完全に押し込まれて収容された収納位置にあるときに筐体1の前面を覆う。食器洗い機が収納されるシステムキッチンKの扉や引き出しと同じ意匠の化粧パネル9aがドア9の全面に装着される。ドア9には、洗浄槽2を筐体1の外へ引き出したり、筐体1内に押し込んだりする際に使用者が掴むハンドル9bが具備されており、ハンドル9bもシステムキッチンKの扉や引き出しと同じ意匠である。
【0030】
従来の食器洗い機のドアは、その大部分がシステムキッチンの扉と同じ意匠の化粧パネ
ルが装着されていたとしてもハンドルの意匠は異なり、ロックを解除する操作レバーを内蔵していたり、操作スイッチや運転ランプなどが配設されていたりする。しかし、本実施の形態の食器洗い機は、ドア9の意匠はシステムキッチンと同じであり、一見しただけでは食器洗い機が収納されていることが判別しにくいような構成である特徴を有する。
【0031】
洗浄槽2の上面の開口を閉塞する中蓋10が筐体1の内側上部に設けられている。中蓋10は裏面にパッキン10bを有するとともに、前後一対のリンクを含む左右一対のリンク機構10aにより上下動自在に配置され、洗浄槽2の前後の動きに応じて上下に移動して洗浄槽2が収納位置にあるときに上面の開口を閉塞する。また、食器洗い機の洗いステップ、すすぎステップ、乾燥ステップなどの一連の洗浄運転を実行する制御装置11が洗浄槽2とドア9の間に設置されている。さらに、使用者が一連の運転の設定などを行う操作部12が制御装置11の上方に設けられている。
【0032】
筐体1の内部には洗浄槽2が引き出されて収納位置から移動したことを検知する位置検知装置であるマイクロスイッチ13が設置され、制御装置11に接続されている。制御装置11は、マイクロスイッチ13により洗浄槽2が収納位置から移動したことを検知すれば直ちに洗浄ポンプ7の運転を停止する。
【0033】
また、筐体1の内側側面には、洗浄槽2が収納位置から引き出されるときに収納位置またはその近傍から所定位置まで引き出し速さを抑制する制動力を発生する制動装置14が設置されている。ここに記載した所定位置は、特に限定するものではないが、本実施の形態では洗浄ノズル8から噴射された洗浄水が筐体1の外に飛び出さない位置とし、具体的な位置は後述する。このようにすれば、洗浄水が筐体1の外に飛び出さない洗浄槽2の位置として明確であり、洗浄槽2が引き出されるときに必要な制動力を作用させて確実に洗浄水の飛び出しを防止することができる。洗浄槽2の側面には制動装置14と連携する突起部15が設けられている。
【0034】
図4と
図5は、本発明の実施の形態1における食器洗い機の制動装置の内部構造を示す模式図である。
図4は
図1に示す状態に相当し、
図5は
図2に示す状態に相当する。
図4において、制動装置14は筐体1の側面に取り付けられており、洗浄槽2は収納位置にある。制動装置14は、ケース16の内部に、ダンパー17と、突起部15が係合する受け部18と、バネ19とを有し、受け部18の移動を案内するガイド部16aがケース16の側面に形成されている。
【0035】
ダンパー17は、洗浄槽2の移動方向に出入りするダンパーロッド17aを有する引張りダンパーである。また、ダンパー17は片方向にのみ制動力を発生する構成であり、ダンパーロッド17aが引き出されるときに制動力を発生し、ダンパーロッド17aが押し込まれるときには制動力を発生しない。受け部18はダンパーロッド17aの先端を揺動軸17bとして筐体1の側面と平行に揺動自在に取り付けられている。受け部18は、受け部18に設けられた2本のガイドピン18a、18bがガイド部16aに係合することによりガイド部16aに沿って移動する。受け部18は下側が窪んだ凹部18cを有し、凹部18cに洗浄槽2に設けられた突起部15が収まる。ガイド部16aは、ダンパー17とは反対の端部側で上方に曲がるJ字形状に形成されている。
【0036】
バネ19は引張りバネであり、一端はケース16に設けられた係止部16bに係止され、他端は揺動軸17bより上部で受け部18に設けられた係止部18dに係止されている。バネ19の張力は、受け部18がガイド部16aでぐらつかないように常時、係止部18dに作用するとともに、ダンパーロッド17aを押し込む方向に作用する。また、この張力は、ダンパー17が有する、制動力が発生しない押し込み方向の抵抗を低減もしくは解消するようにも作用する。
図4に示した洗浄槽2が収納位置に収まった状態では、ダン
パー17はダンパーロッド17aが押し込まれた状態で、突起部15は受け部18に収まった状態である。
【0037】
図5は、洗浄槽2が引き出されて突起部15とともに受け部18が引き出し方向に移動した状態である。受け部18が突起部15の移動によりガイド部16aに沿って移動すると、引き出し側のガイドピン18aがガイド部16aの曲がりにより上方に移動する。これにより受け部18が傾き、突起部15は凹部18cとの係止が外れる。バネ19は引き伸ばされた状態になるが、受け部18がバネ19により受ける回転力によってガイドピン18aがガイド部16aの曲線端部に係止される状態となり、受け部18とともにこの状態を保持する。
【0038】
以上のように構成された食器洗い機について、以下その動作、作用を説明する。使用者がドア9に設けられたハンドル9bを掴んで洗浄槽2を引き出し、食器類4を食器かご5に配置して洗剤を入れた後、操作部12にあるコース選択ボタンにより運転コースを選択し、運転開始のボタンを押す。その後、洗浄槽2を筐体1内の収納位置まで押し込む。このとき、中蓋10はリンク機構10aにより後方かつ下方に移動し、洗浄槽2の開口を閉塞する。同時に、マイクロスイッチ13は洗浄槽2が収納位置にあることを検知して検知信号を制御装置11に送り、制御装置11は洗浄運転を開始する。
【0039】
制御装置11は、洗浄運転を開始すると、給水弁(図示せず)を開いて洗浄水となる水道水を給水し、ヒータ(図示せず)に通電して洗浄水を加熱し、洗浄ポンプ7を駆動するなどの制御を行い、洗浄槽2に収容された食器類4を洗浄する一連の洗浄運転を行う。
【0040】
ところで、このように洗浄運転を行っている途中であっても、使用者は食器類4の出し入れなどを行うことができる。その場合、使用者は洗浄槽2のドア9に設けられたハンドル9bを掴み、洗浄槽2を引き出すことになる。
【0041】
洗浄運転中に洗浄槽2が引き出されると、マイクロスイッチ13が洗浄槽2の移動を検知する。制御装置11は、洗浄水を噴射する洗いステップやすすぎステップの途中であれば、洗浄ポンプ7への通電を直ちに停止する。洗浄ポンプ7は洗浄水を洗浄ノズル8へ圧送しており、通電が停止されても残圧や慣性力により洗浄ノズル8からの洗浄水の噴出はすぐには完全に停止しない。すなわち、洗浄ポンプ7への通電停止から短時間ではあるが一定期間経過後、洗浄ノズル8から洗浄水の噴出が完全に停止する。
【0042】
一方、洗浄槽2の上面の開口は中蓋10により閉塞されており、洗浄槽2が引き出される当初に中蓋10が上方に移動し始めてもパッキン10bの弾性により封止効果が効いている間は洗浄水が漏れることはない。また、
図2に示す様に、少なくとも洗浄槽2の前端が筐体1より前に引き出されていなければ、洗浄ノズル8から噴出された洗浄水が筐体1の外へ飛び出すことはない。
【0043】
本実施の形態では、洗浄槽2の前端が筐体1の前端まで引き出された位置を所定位置とする。この所定位置は、洗浄水が筐体1の外に飛び出さない洗浄槽2の位置として明確である。したがって、使用者の引き出しによる洗浄槽2の移動をマイクロスイッチ13が検知してから、洗浄ノズル8からの洗浄水の噴出停止までの時間を停止時間とし、洗浄槽2が所定位置まで引き出される移動時間を引き出し時間とすると、停止時間と引き出し時間が同じかもしくは停止時間より引き出し時間が長ければ、洗浄水が筐体1の外へ飛び出すことはない。
【0044】
洗浄槽2の制動装置14は、この引き出し時間をダンパー17により制御するものである。制動装置14の制動力は、洗浄槽2が収納位置から引き出されるときに収納位置から
所定位置まで所定時間以上かかるように発生する。次に、制動装置14の動作について説明する。
【0045】
図4において、洗浄槽2が収納位置Aから引き出されるとき、突起部15は洗浄槽2に設けられているので引き出し方向に移動する。このとき、受け部18は突起部15に引っ張られて移動し、ダンパー17は、移動する受け部18によりダンパーロッド17aが引き出されて制動力を発生する。この制動力は、使用者が洗浄槽2を勢いよく引き出そうとした場合ほど大きく発生するものであり、ゆっくり引き出す場合には大きな制動力は発生しない。
【0046】
なお、本実施の形態では、
図4に示すように、受け部18の凹部18cの幅W1を突起部15の幅W2より大きくしている。これにより、収納位置Aから位置Bまでの動き始めには突起部15が受け部18を移動させないので制動力が発生しないため、使用者が洗浄槽2を引き出すときの最初に必要な一番大きな力が増加することなく、使用感が損なわれない。
【0047】
図5において、ガイド部16aの引き出し側の端に受け部18が来ると、ガイド部16aの曲線形状に合わせて受け部18が傾き、凹部18cから突起部15が外れる。これ以降、洗浄槽2は制動装置14に関係なく引き出される。受け部18はバネ19の張力によって傾いた状態に保持される。
【0048】
制動装置14はこの様に動作するため、洗浄槽2が引き出される場合、位置Bから所定位置Cまで引き出される間、ダンパー17の制動力が働く。所定位置C以降に制動装置14は全く作用しない。反対に、洗浄槽2が押し込まれる場合は、傾いた状態で保持された受け部18の凹部18cに洗浄槽2の突起部15が収まり、受け部18が洗浄槽2と同時に収納位置へ戻る。このとき、ダンパー17は制動力を発生せず、バネ19の張力が作用する。
【0049】
ダンパー17の制動力の大きさは、上述したように、洗浄水の停止時間と引き出し時間が同じかもしくは停止時間より引き出し時間が長くなるようにすればよい。本実施の形態の場合、例えば、マイクロスイッチ13が検知してから洗浄ノズル8からの洗浄水の噴出停止までの停止時間は約0.4秒であり、洗浄槽2の収納位置から
図2に示す様な洗浄槽2の所定位置までの所定寸法は30mmである。従って、洗浄槽2が、収納位置から所定位置となるまでの所定時間を0.5秒とした。この所定時間はこれに限定されるものではなく、停止時間以上かかるようにすればよい。これにより、洗浄ノズル8からの洗浄水の噴出停止までの停止時間を見越して、洗浄槽2が引き出されるときに必要な制動力が作用して確実に洗浄水の飛び出しが防止される。
【0050】
ちなみに、JIS S1200:2012において、収納ユニットの引出しの耐久性試験で推奨されている引出し開閉の平均速度は1秒間当たり0.25±0.1mである。これを参考とすると、平均速度は0.15m/s〜0.35m/sであり、所定寸法の30mmを移動するのは0.2秒〜0.09秒である。実際に使用者が食器洗い機の洗浄槽2を引き出すときには、洗浄槽2が収納ユニットの引出しより重量があったり、制動装置14のバネ19の張力があったり、図示しない引出しの引き込み装置が備えられたりしていて引き出し抵抗が増える。
【0051】
これらにより、引き出し時間が少し大きくなるのが実情であるが、本実施の形態では、洗浄槽2が収納位置から所定位置となるのに、引き出そうとされる速さに関わらず、所定時間の0.5秒以上で、できるだけ所定時間に近くなるように制動力を設定した。すなわち、制動力は、洗浄槽2が引き出そうとされる速さが速ければ大きくなり、遅ければ小さ
くなるように、速さに応じて変化する。これにより、洗浄槽2が引き出そうとされる速さが遅いときに引き出し時間が無意味に延長されてしまうことが抑制される。
【0052】
以上のように、本発明に係る食器洗い機は、洗浄槽2が収納位置から引き出されるときに収納位置またはその近傍から所定位置まで引き出し速さを抑制する制動力を発生する制動装置14を有することにより、洗浄運転中に使用者が洗浄槽2を引き出そうとしたときには洗浄槽2の引き出し速さが制動装置14により抑制される。これにより、洗浄槽2が所定位置まで引き出される間に洗浄水の噴射が完全に止まり、噴射された洗浄水が筐体1の外に飛び出すことが防止され、洗浄水が周囲を濡らすことがない。
【0053】
そして、制動装置14はダンパー17で構成されたことにより、電気エネルギーを消費することがない。また、使用者が洗浄槽2を急いで引き出そうとしたときに、洗浄槽2の移動に制動力が働くだけでロックされるものではないため、使用者が戸惑ったり不快感を生じたりすることがない。また、ダンパー17は洗浄槽2を引き出す方向にのみ制動力を発生するものであり、洗浄槽2が押し込まれるときに使用者は余分な力を必要としない。
【0054】
また、制動力は洗浄槽2が引き出そうとされる速さに応じて変化するので、洗浄槽2がゆっくり引き出される場合には使用者は余分な力を必要としなくて良いし、引き出し時間が無意味に延長されてしまうことが抑制される。そして、洗浄槽2が勢いよく引き出される場合には大きな制動力が発生し、使用者のさまざまな使い方に対応して引き出し速さが抑制され、洗浄水が筐体1の外に飛び出すことが防止されるとともに使い勝手が向上する。
【0055】
また、システムキッチンに収納される食器洗い機のドア9において、これまでから化粧パネル部分はシステムキッチンの扉の意匠に合わせられるように構成されているが、ハンドルについては食器洗い機独自の意匠を備えていた。本発明の食器洗い機によれば、ハンドルに機能性を持たせる必要がないため、ドア9の化粧パネル9aとハンドル9bとを合わせた全体をシステムキッチンの扉の意匠に合わせることが可能となり、システムキッチンと一体化してシステムキッチンのデザイン性が向上する。
【0056】
なお、本実施の形態において、ガイド部16aに対するダンパー17の位置は、本実施の形態では引き出し方向の反対側としたが、これに限られるものではなく、引き出し方向側でもよいし、上側や下側でもよい。また、ダンパー17は傾斜していてもよい。
【0057】
また、制動装置14は引張りダンパーを用いて構成したが、圧縮ダンパーを用いてダンパー17の向きを反転させて構成してもよい。また、ロータリーダンパーとラックアンドピニオンにより構成してもよく、ダンパーの種類は限定されない。
【0058】
また、突起部15を制動装置14の下方で係止するように構成したが、制動装置14の上下を反転させて突起部15を制動装置14の上方で係止するように構成してもよい。
【0059】
また、制動装置14と突起部15を筐体1内の側面後部で構成したが、これらを筐体1内の側面前部で構成してもよい。側面前部にあれば筐体1の前面から制動装置14に手などが届きやすく、洗浄槽2を引き出した状態で制動装置14の受け部18が
図5に示される本来の位置から
図4に示される収納位置の状態になってしまったときには、本来の位置戻すことが容易になる。
【0060】
また、制動装置14は筐体1の左右いずれか片側に取り付けられてもよいしより大きな制動力が必要な場合などで、左右両側に取り付けられてもよい。
【0061】
さらに、制動装置14を洗浄槽2の側面に取り付け、突起部15を筐体1の側壁内側に取り付けてもよく、その動作は本実施の形態と変わりないように構成することができる。
【0062】
(実施の形態2)
食器洗い機の洗浄槽の引出し速さを抑制する制動装置について、他の構成の一例を説明する。
図6は、本発明の実施の形態2における食器洗い機の側面断面模式図である。
図7は、本発明の実施の形態2における食器洗い機の他の制動装置の構成を示す模式図である。
【0063】
制動装置20は筐体1の内側壁に縦方向で固定されている。制動装置20は圧縮ダンパー20aを備え、ダンパーロッド20bが引き出される方向には制動力を発生しない。ダンパーロッド20bは先端に回転軸20cを有し、回転軸20cに回転自在のローラー21を備えている。
【0064】
ローラー21の外周面が当接し、洗浄槽2の移動とともにローラー21を上下に移動させて圧縮ダンパー20aの制動力を発生させる当接面22が、洗浄槽2の側面壁に帯状に形成されている。当接面22は、
図6のように洗浄槽2が筐体1内の収納位置にあるとき(
図1の洗浄槽位置と同等)にローラー21が当接している位置Aの近傍が最も低い位置で水平に形成された水平面22aを有する。そして、洗浄槽2がわずかに引き出された位置Bから位置C(
図2の洗浄槽位置に相当)まで上り傾斜となる傾斜面22bを有し、それ以降(
図3の洗浄槽位置に相当)は洗浄槽2が完全に引き出される位置Dまで最も高い位置で水平に形成された水平面22cを有する。
【0065】
制動装置20の制動力は、洗浄槽2が収納位置から引き出されるときに収納位置(位置A)から所定位置(位置C)まで所定時間以上かかるように発生する。なお、圧縮ダンパー20aの制動力の大きさについては、実施の形態1の記載と同様である。次に、制動装置20の動作について説明する。
【0066】
図6、
図7において、洗浄槽2が収納位置(位置A)から引き出されるとき、洗浄槽2に設けられた当接面22は引き出し方向に移動する。このとき、ローラー21は当接面22上で回転する。ここで、位置Aから位置Bまでは、洗浄槽2の動き始めであって、ローラー21がダンパーロッド20bを押し込まないので圧縮ダンパー20aの制動力は発生しない。そのため、使用者が洗浄槽2を引き出すときの最初に必要な一番大きな力が増加することなく、使用感が損なわれない。
【0067】
そして、洗浄槽2とともに当接面22が移動する位置Bから位置Cの傾斜面22bでは、圧縮ダンパー20aは、当接面22上を転がって移動するローラー21によりダンパーロッド20bを押し込まれて制動力を発生する。この制動力は、使用者が洗浄槽2を勢いよく引き出そうとした場合ほどダンパーロッド20bが勢いよく押し込まれて大きく発生するものであり、ゆっくり引き出す場合には大きな制動力は発生しない。
【0068】
さらに、位置Cから位置Dまでは水平面22cであり、ローラー21がダンパーロッド20bを押し込まないので、圧縮ダンパー20aは制動力を発生しない。なお、ローラー21の回転抵抗は、使用者が洗浄槽2を引き出すときに感じる重量による抵抗に比べて軽微なものであり、問題とならない。
【0069】
制動装置20はこの様に動作するため、洗浄槽2が引き出される場合、位置Bから位置Cまで引き出される間のみ、圧縮ダンパー20aの制動力が働く。反対に、洗浄槽2が筐体1内に押し込まれるときには、圧縮ダンパー20aは傾斜面22bでダンパーロッド20bを引き出されるので制動力を発生しない。ダンパーロッド20bを引き出すのは、付
加された圧縮バネ(図示せず)によるものでもよいし、ダンパーロッド20bとローラー21の重量によるものでもよく、限定はされない。
【0070】
なお、本実施の形態では、ダンパーロッド20bと当接面22とはローラー21を介して当接するように構成されるが、これに限られるものではなく、ダンパーロッド20bの先端が当接面22を摺動するように構成されてもよい。