(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記蓄熱運転において、前記蓄熱手段への蓄熱状態に応じて、前記蓄熱手段に流入する前記熱媒体の流量を低下させる期間を設けることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱装置。
前記加熱手段は、圧縮機、冷媒と前記熱媒体とが熱交換する熱媒体熱交換器、減圧手段、熱源側熱交換器が冷媒配管で環状に接続されたヒートポンプ装置であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の蓄熱装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、潜熱蓄熱材と熱媒体とが熱交換する蓄熱手段、及び、前記熱媒体を加熱する加熱手段が配管によって環状に接続された蓄熱回路と、少なくとも、前記加熱手段で前記熱媒体を所定の加熱温度まで加熱して、加熱された前記熱媒体によって前記蓄熱手段への蓄熱を行う蓄熱運転を実行する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記蓄熱運転中に、前記蓄熱手段への蓄熱状態に応じて、前記加熱温度を低下させる期間を設けることを特徴とする蓄熱装置である。
【0015】
これにより、潜熱蓄熱材の蓄熱状態に応じて、蓄熱に必要な熱量を持つ熱媒体を加熱手段によって生成するので、熱量を有効に利用することができる。また、蓄熱に必要な熱量を持つ熱媒体を加熱手段によって生成するので、蓄熱手段から流出し、再度、加熱手段へと流入する熱媒体の温度を低く維持することができる。よって、加熱手段で熱媒体を加熱するときの熱交換効率を高く維持できる。その結果、加熱手段のエネルギー効率を高く維持しながら蓄熱装置への蓄熱を行うことができるので、省エネルギー性に優れた蓄熱装置を提供することができる。
【0016】
なお、制御装置は、蓄熱運転において、蓄熱手段の蓄熱量が所定量を超えた場合に、加熱温度を低下させる期間を設けることとしてもよい。蓄熱手段への蓄熱量は、蓄熱運転の経過時間、または、蓄熱手段から流出する熱媒体の温度等に基づいて決定することができる。また、制御装置は、蓄熱手段から流出する熱媒体の温度が相対的に高い場合に、加熱温度を低下させる期間を設けることとしてもよい。また、制御装置は、蓄熱手段から流出する熱媒体の温度が所定温度以上となった場合に加熱温度を低下させる期間を設けていてもよい。以上のように、潜熱蓄熱材への蓄熱が進行し、潜熱蓄熱材の熱媒体からの吸熱量が減少し、蓄熱手段から流出する熱交換後の熱媒体の温度が上昇することに対応して、加熱温度を低下させる期間を設ける。これにより、加熱手段のエネルギー効率を高く維持しながら蓄熱装置への蓄熱を行うことができるので、省エネルギー性に優れた蓄熱装置を提
供することができる。
【0017】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記蓄熱手段は、融点の異なる複数の潜熱蓄熱材を有し、前記熱媒体は、前記蓄熱運転において、前記複数の潜熱蓄熱財を高融点の前記潜熱蓄熱材から低融点の前記潜熱蓄熱材へと順に熱交換するように、前記蓄熱手段を流れ、前記制御装置は、前記加熱温度が、蓄熱対象となる前記潜熱蓄熱材の融点のうち最も高い第1融点よりも高い温度となるように前記熱媒体を加熱し、前記制御装置は、前記蓄熱運転中に、前記蓄熱手段への蓄熱状態に応じて、前記加熱温度を、前記第1融点よりも高い温度の範囲で、低下させる期間を設けることを特徴とするものである。
【0018】
これにより、蓄熱手段から流出する熱媒体の出口温度を低く抑えることができ、よって、加熱手段に戻る熱媒体の温度も低下するので、加熱手段で熱媒体を加熱するときの熱交換効率を高く維持できる。
【0019】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、前記制御装置は、前記蓄熱運転において、前記潜熱蓄熱材への蓄熱状態に応じて、前記蓄熱手段に流入する前記熱媒体の流量を低下させる期間を設けることを特徴とするものである。
【0020】
これにより、潜熱蓄熱材の蓄熱状態に応じて、蓄熱に必要な熱量を持つ熱媒体を、必要な流量で用いることができる。よって、熱媒体と潜熱蓄熱材との温度差が小さい場合でも、熱媒体の潜熱蓄熱材への放熱量を増大させることができるので、蓄熱手段から流出する熱媒体の温度を低く保つことができる。その結果、加熱手段に流入する熱媒体の温度(戻り温度)も低下するので、加熱手段が熱媒体を加熱する際のエネルギー効率を高く維持することができる。
【0021】
第4の発明は、特に第1から第3の発明において、前記加熱手段は、圧縮機、冷媒と前記熱媒体とが熱交換する熱媒体熱交換器、減圧手段、熱源側熱交換器が冷媒配管で環状に接続されたヒートポンプ装置であることを特徴とするものである。
【0022】
これにより、冷媒の熱媒体熱交換器(放熱器)の入口・出口間のエンタルピー差が大きくなるので、ヒートポンプのエネルギー効率を高く維持することができる。
【0023】
第5の発明は、特に第1から第4のいずれかの蓄熱装置を備え、前記制御装置は、前記蓄熱装置に蓄えられた熱によって熱利用端末に供給する熱媒体を加熱する加熱運転を実行することを特徴とすることを特徴とする温水生成装置である。
【0024】
これにより、省エネルギー性に優れた蓄熱装置を提供することができる。
【0025】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって、本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態における蓄熱装置50及びそれを備えた温水生成装置100の構成図である。この蓄熱装置50は、熱媒体として水が循環する熱媒体回路4と、熱媒体を加熱する加熱手段8とを備えている。また、熱媒体回路4には、潜熱蓄熱材1を有する蓄熱手段2が設けられている。蓄熱手段2と熱媒体とが熱交換することで、蓄熱手段2への蓄熱が行われる。蓄熱装置50は、加熱手段8によって加熱されて熱媒体回路4を流れる熱媒体により、潜熱蓄熱材への蓄熱を行う蓄熱運転が可能な構成である。
【0027】
蓄熱装置4に、熱媒体回路4と接続され、熱媒体回路4に熱媒体を供給する熱媒体を供
給する給水配管12が接続されて、給水配管12から供給される熱媒体を潜熱蓄熱材1が有する熱によって加熱する加熱運転の実行が可能な構成として温水生成装置100が構成される。
【0028】
すなわち、温水生成装置は、熱媒体回路4に接続された給水配管12から供給された水を加熱手段8および/または蓄熱手段2によって加熱して温水を生成することができる。生成された温水は、蓄熱手段2への蓄熱に用いることができる。また、生成された温水は、熱媒体回路4に接続された給湯配管13から、カラン、浴槽、暖房端末等の熱利用端末に供給される。
【0029】
本実施の形態における加熱手段8は、圧縮機7、熱媒体熱交換器(放熱器)3、減圧手段(膨張弁)5、熱源側熱交換器(蒸発器)6が順に冷媒配管で環状に接続されて構成されたヒートポンプ装置である。熱媒体熱交換器3は、冷媒が流れる冷媒流路(図示せず)と熱媒体が流れる熱媒体流路(図示せず)とを備えている。熱媒体熱交換器3において、冷媒流路を流れる冷媒と熱媒体流路を流れる熱媒体とが熱交換を行う。熱源側熱交換器6は、蒸発器として機能する。本実施の形態において、熱源側熱交換器6は、ヒートポンプ装置を流れる冷媒と空気とが熱交換する空気熱交換器である。本実施の形態の加熱手段8は、熱源側熱交換器6に送風するためのファン(図示せず)を備えている。冷媒としては、二酸化炭素やHFC冷媒が用いられる。
【0030】
なお、加熱手段8としては、熱媒体を加熱する機能を有するものであればヒートポンプ装置に限られない。加熱手段8には、例えば、燃焼機や電気ヒータを用いることができる。
【0031】
熱媒体回路4は、蓄熱手段2、熱媒体熱交換器3、流量調整手段(10、11)が水配管(14、15)によって環状に接続されて構成されている。熱媒体回路4には、一端から水道管から水が流入する給水配管12と、一端から浴槽やカラン等の給湯端末(図示せず)、または、床暖房パネル等の暖房端末(図示せず)等の熱利用端末に温水を供給する給湯配管13とが接続されている。熱媒体回路4は、熱媒体熱交換器3が配設される加熱配管14と、蓄熱手段2が配設される蓄熱配管15とを備えている。
【0032】
給水配管12の他端は、第1流量調整手段(第1流量調整弁)10に接続されている。第1流量調整手段には、加熱配管14の一端と蓄熱配管15の一端とが接続されている。給湯配管13の他端は、第2流量調整手段(第2流量調整弁)11に接続されている。第2流量調整手段11には、加熱配管14の他端と蓄熱配管15の他端とが接続されている。これにより、給水配管12と給湯配管13との間で、熱媒体熱交換器3と蓄熱手段2とは並列に配置される。また、加熱配管14と蓄熱配管15とは、流量調整手段(10、11)を介して環状に接続されているので、熱媒体回路4は蓄熱回路として機能する。蓄熱回路には、熱媒体を循環させる搬送手段としてのポンプ9が設けられる。ポンプ9は蓄熱回路のうち、第1流量調整手段10と熱媒体熱交換器3との間の加熱配管14に設けられていることが好ましい。
【0033】
第1流量調整手段10は、給水配管12、加熱配管14、蓄熱配管15を流れる水の流量を調整する。また、第2流量調整弁11は、加熱配管14、蓄熱配管15、給湯配管13を流れる水の流量を調整する。
【0034】
蓄熱手段2は、潜熱蓄熱材1と、熱媒体が流れる熱媒体流路を有し、熱媒体と潜熱蓄熱材1とが熱交換を行うものである。蓄熱手段2が保有する熱量により、熱媒体を加熱することができる。また、加熱された熱媒体によって蓄熱手段2に蓄熱することができる。
【0035】
本実施の形態の蓄熱手段2は、潜熱蓄熱材1を有している。潜熱蓄熱材1としては、例えば、チオ硫酸ナトリウム5水和物、酢酸ナトリウム3水和物、硫酸ナトリウム10水和物、硫酸ナトリウムn水和物(但し、n:整数、n>10)を用いることができる。なお、チオ硫酸ナトリウム5水和物の融点は48℃、硫酸ナトリウム10水和物の融点は32℃である。なお、熱利用端末へと湯水を供給する温水生成装置100として用いる場合、潜熱蓄熱材1として融点が58℃の酢酸ナトリウム3水和物を用いることが好ましい。
【0036】
次に、温水生成装置100の動作について説明する。この温水生成装置100は、加熱手段8で水を加熱して温水を生成し、生成された温水によって蓄熱手段2に蓄熱する蓄熱運転を実行することができる。また、この温水生成装置100は、熱媒体を加熱して温水を生成する複数の加熱運転を実行することができる。複数の加熱運転は、蓄熱手段15によって水を加熱する第1加熱運転、加熱手段8と蓄熱手段15との双方を用いて水を加熱する第2加熱運転を含む。各運転の制御は、制御装置25によって行われる。
【0037】
蓄熱配管15には、蓄熱手段2の両側にそれぞれ少なくとも1つの温度検出手段(20、21)が設けられている。温度検出手段(20、21)は、蓄熱配管15を流れる熱媒体の温度を検出する。第1温度検出手段20は、蓄熱手段2と第1流量調整手段10との間の蓄熱配管15に設けられ、第2温度検出手段21は、蓄熱手段2と第2流量調整手段11との間の蓄熱配管15に設けられている。第1温度検出手段20は、蓄熱運転において、蓄熱手段2に流入する熱媒体の温度(入口温度)を検出し、複数の加熱運転において、蓄熱手段2から流出する熱媒体の温度(出口温度)を検出する。一方、第2温度検出手段21は、蓄熱運転において、蓄熱手段2から流出する熱媒体の温度(出口温度)を検出し、複数の加熱運転において、蓄熱手段2に流入する熱媒体の温度(入口温度)を検出する。さらに、蓄熱配管15には、蓄熱配管15を熱媒体の流量を検出する流量検出手段22が設けられている。本実施の形態では、流量検出手段22は、第2温度検出手段21が設けられた側の蓄熱配管15、すなわち、蓄熱運転において、潜熱蓄熱材1と熱交換後の熱媒体が流れる側の蓄熱配管15に設けられている。
【0038】
制御装置25は、第1温度検出手段20、第2温度検出手段21、流量検出手段22により検出された温度、流量に基づいて、加熱手段8の能力、加熱手段8による熱媒体の加熱温度、ポンプ9による熱媒体の流量の制御等を行う。
【0039】
蓄熱運転において、制御装置25は、
図1の破線矢印の方向に水が流れるように、ポンプ9、第1流量調整弁10と第2流量調整弁11を制御する。これにより、水は、加熱配管14と蓄熱配管15とが環状に接続された蓄熱回路を循環する。
【0040】
また、蓄熱運転において、制御装置25は、圧縮機7、減圧手段5、ファンを制御して、熱媒体熱交換器3に高温高圧の冷媒を供給する。
【0041】
熱媒体熱交換器3で高温高圧の冷媒と熱交換して生成され、所定の加熱温度まで加熱された高温の熱媒体(高温水)は、加熱配管14を流れ、第2流量調整弁11を介して蓄熱配管15に流入する。蓄熱配管15を流れる温水は、蓄熱手段2において、潜熱蓄熱材1と熱交換する。これにより、潜熱蓄熱材1に蓄熱が行われる。蓄熱手段2を流れる間に潜熱蓄熱材1に放熱して温度が低下した熱媒体(水)は、第1流量調整弁10を介して加熱配管14に流入し、熱媒体熱交換器3にて、再度加熱され温水となる。以上のような動作が繰り返され、熱媒体が蓄熱回路を循環することで蓄熱手段2への蓄熱が行われる。
【0042】
蓄熱手段2に蓄熱された熱を用いて水を加熱し、温水を生成する第1加熱運転において、制御装置25は、
図1の実践矢印の方向に水が流れるように、第1流量調整弁10と第2流量調整弁11とを制御する。これにより、水は、給水配管12、蓄熱配管15、給湯
配管13を順に流れる。蓄熱配管15を流れる水は、蓄熱手段2において、潜熱蓄熱材1と熱交換して加熱される。蓄熱手段2で加熱されて生成された温水は、第2流量調整弁11を介して給湯配管13へと流れ、熱利用端末へと供給される。
【0043】
加熱手段8と蓄熱手段15との双方を用いて水を加熱し、温水を生成する第2加熱運転において、制御装置25は、
図1の一点鎖線矢印の方向に水が流れるように第1流量調整弁10と第2流量調整弁とを制御する。このとき、ポンプ9を動作させてもよい。これにより、給水配管12を流れた水は、第1流量調整手段10を介して加熱配管14と蓄熱配管15との双方に分岐して流れる。加熱配管14を流れる水は加熱手段8で加熱されて温水となり、蓄熱配管15を流れる水は蓄熱手段2で加熱されて温水となる。加熱手段8で生成された温水と、蓄熱手段2で生成された温水とは、第2流量調整手段11で混合され、給湯配管13に流入する。
【0044】
次に、蓄熱運転における、潜熱蓄熱材1の温度変化(相変化)、及び、潜熱蓄熱材1の蓄熱状態を加味した蓄熱運転時の制御について
図2、
図3を用いて説明する。この時、蓄熱手段2に流入させる熱媒体の温度(入口温度)は蓄熱手段2に内蔵されている潜熱蓄熱材1の融点より所定温度だけ高くする。
【0045】
まず、蓄熱運転における潜熱蓄熱材1の温度変化(相変化)及びその温度分布について
図2を用いて説明する。
図2(a)は蓄熱運転における、潜熱蓄熱材1の温度変化(相変化)の時間経過を示す図である。
図2(a)に示すように、潜熱蓄熱材1の内部の温度は
図2(a)(1)から(5)のように変化する。
図2(b)は蓄熱運転を行ったときの蓄熱手段2から流出する熱媒体の温度(出口温度)の変化を示す図である。
【0046】
蓄熱運転の開始時には潜熱蓄熱材1は、融点より低い温度で均一な状態になっているU2(a)(1)。加熱手段8によって加熱された高温の熱媒体が蓄熱手段2に流入すると、潜熱蓄熱材1の最も上流が顕熱領域で熱交換しながら蓄熱され、温度が上昇する(2)。その後、潜熱蓄熱材1の上流側から融点に到達し、潜熱領域での熱交換が行われ、蓄熱される
図2(a)(3)。
【0047】
潜熱蓄熱材1のうち潜熱領域で熱交換する領域が増大すると、潜熱蓄熱材1の下流側の部分が潜熱領域での熱交換を行う前に、上流側の部分が融点よりも温度が高い状態となり、顕熱領域での熱交換を開始する場合がある
図2(a)(4)。その後、潜熱蓄熱材1の全領域が融点以上の温度となり、潜熱領域での蓄熱が完了し、潜熱蓄熱材1が顕熱領域に入って温度上昇して、熱媒体の入口温度に近づいていく
図2(a)(5)。なお、
図2(a)(4)の過程を経ず、潜熱蓄熱材1の全体が潜熱領域となった後に、上流側の部分が融点よりも温度が高い顕熱領域となる場合もある。
【0048】
このとき、蓄熱手段2の出口温度は、
図2(b)に示すように、潜熱蓄熱材1への蓄熱量が増大するにつれて次第に上昇する。ここで、蓄熱手段2から流出する熱媒体の出口温度は、潜熱蓄熱材1が顕熱領域にある場合
図2(a)(1)〜(3)、(4)〜(5)に上昇幅が大きく、潜熱蓄熱材1が潜熱領域にある場合
図2(a)(3)〜(4)に小さい。なお、潜熱蓄熱材1が潜熱領域にある場合
図2(a)(3)〜(4)にはほぼ一定の温度となる。
【0049】
潜熱蓄熱材1は、その融点における潜熱比熱が顕熱比熱に比べ非常に大きく、この潜熱比熱を利用することにより高密度の蓄熱が可能であり、融点を超えた後は温度上昇させることは好ましくない。したがって、本実施の形態では、制御装置25は、蓄熱運転において、蓄熱手段2に流入する熱媒体の温度(加熱手段8で加熱される熱媒体の加熱温度)を、潜熱蓄熱材1の蓄熱状態に応じて低下させる期間を設ける。すなわち、潜熱蓄熱材1の
上流側の部分の温度が融点以上、若しくは、融点よりも高くなった場合に、蓄熱手段2に流入する熱媒体の温度を低下させることにより、
図2(a)(4)(5)に示す、蓄熱手段2の上流側部分の温度上昇を抑制し、熱媒体の持つ熱量を有効活用した蓄熱運転が可能となる。また、蓄熱手段2の出口温度の上昇も抑制することができる。
【0050】
なお、制御装置25は、蓄熱運転において、潜熱蓄熱材1の蓄熱量が所定量を超えた場合に、加熱温度を低下させる期間を設けることとしてもよい。潜熱蓄熱材1への蓄熱量は、蓄熱運転の経過時間、または、蓄熱手段2から流出する熱媒体の温度等に基づいて算出、推定することができる。また、制御装置25は、蓄熱手段2から流出する熱媒体の温度が相対的に高い場合に、加熱温度を低下させる期間を設けていてもよい。また、制御装置25は、蓄熱手段2から流出する熱媒体の温度が所定温度以上となった場合に加熱温度を低下させる期間を設けていてもよい。以上のように、潜熱蓄熱材1への蓄熱が進行し、潜熱蓄熱材1の熱媒体からの吸熱量が減少することに対応して、加熱温度を低下させる期間を設けることで、熱媒体の持つ熱量を有効活用した蓄熱運転が可能となる。
【0051】
また、蓄熱手段2の出口温度の上昇を抑制することができるので、加熱手段8に流入する熱媒体の温度も低く維持することができる。したがって、ヒートポンプ装置の加熱効率が向上し、省エネルギー性に優れた蓄熱装置50及びそれを備えた温水生成装置100を実現することができる。
【0052】
ここで、蓄熱運転において、蓄熱手段2に流入する熱媒体の温度(加熱手段8で加熱される熱媒体の加熱温度)を低下させることは、蓄熱手段2において、熱媒体と潜熱蓄熱材1との温度差が小さくなることを意味する。したがって、熱媒体から潜熱蓄熱材1への放熱量が小さくなる。そこで、蓄熱手段2に流入する熱媒体の温度を低下させる場合には、熱媒体の流量を、ポンプ9によって低減することが好ましい。これにより、流速が低下し、熱媒体と潜熱蓄熱材1とが接触する時間が長くなるので、熱媒体と潜熱蓄熱材1との熱交換量を増大させることができる。また、これにより、蓄熱手段2の熱媒体の出口温度をさらに低く維持することができる。
【0053】
次に、蓄熱運転の制御フローについて
図3を用いて説明する。制御装置25は、加熱手段8とポンプ9との運転を開始し、蓄熱運転をスタートさせる(S1)。加熱手段8の冷凍サイクルの状態が安定するまでは十分な加熱能力が得られないため、熱媒体の流量は、冷凍サイクルの状態が安定するまでは、後述の定常動作よりも流量の少ない最低の流量(初期流量)とすることが好ましい。次に、流量検出手段22で検出された流量が、初期流量よりも大きい所定流量F1であるか否かを判断する(S2)。検出流量が所定流量と異なる、すなわち、検出流量が所定流量未満の場合(S2でNo)には、S3に進む、検出流量が所定流量以上の場合(S2でYes)には、S5に進む。なお、蓄熱運転の開始直後は、初期流量であるから、検出流量は所定流量F1よりも小さくなる。
【0054】
S2での検出流量が所定流量未満の場合には、次に、第1温度検出手段20により蓄熱手段2に流入する熱媒体の入口温度を検出し(S3)、初期運転を終了してもよいか否かを判定するための所定温度T1と入口温度とを比較する(S4)。所定温度T1以上であれば(S4でYes)、熱媒体の流量を増大させる(S4)。一方、所定温度T1未満であれば(S4でNo)、そのままの運転を継続する。以上の動作を、流量検出手段22により検出される熱媒体の流量が所定流量となるまで継続する。これが初期動作となる。なお、初期動作は必ずしもこれと同一の順序で行われる必要はなく、また、初期動作を経ずして、後述する定常動作を開始してもよい。
【0055】
流量検出手段22による検出流量が所定流量以上になると(S2でYes)、定常動作へと移行する。定常動作において、制御装置25は、加熱手段8によって加熱される熱媒
体の温度、すなわち、蓄熱手段2に流入する熱媒体の入口温度が、潜熱蓄熱材1の融点T3よりも所定温度(例えば10から20℃)高い温度Tgとなるように、加熱手段8とポンプ9とを制御する(S5)。すなわち、所定温度Tgは、蓄熱運転において、加熱手段8によって加熱される熱媒体の目標温度(加熱温度)となる。このとき、加熱手段8がヒートポンプ装置である場合には、減圧手段5、圧縮機7、ファン(図示せず)などは、制御装置25により、外気温度等の条件に応じて適宜制御される。
【0056】
次に、制御装置25は、第2温度検出手段21により検出された熱媒体の出口温度が、蓄熱温度を終了するための所定温度Teになると(S6でYes)、加熱手段8及びポンプ9を停止して、蓄熱運転を終了する。一方、第2温度検出手段21により検出された熱媒体の出口温度が、蓄熱温度を終了するための所定温度Te未満の場合には(S6でNo)、潜熱蓄熱材1の蓄熱状態に応じた終了動作の必要可否を判別するため、S7に進む。
【0057】
S7では、第2温度検出手段21により検出された熱媒体の出口温度が、所定温度T2以上であるか否かの判定を行う(S7)。所定温度T2は、所定温度T1よりも高い温度であって、かつ、所定温度Teよりも所定温度(例えば10℃)低い温度である。所定温度T2は、蓄熱手段2に流入させる熱媒体の温度を低下させるか否かの判断に用いる温度である。第2温度検出手段21により検出された熱媒体の出口温度が所定温度T2未満である場合(S7でNo)には、S6に戻る。この間、潜熱蓄熱材1への蓄熱が進行する。
【0058】
第2温度検出手段21により検出された熱媒体の出口温度が所定温度T2以上である場合(S7でYes)には、潜熱蓄熱材1への蓄熱が進行し、蓄熱手段2の熱媒体の入口温度を低下させる期間を設けるのに適した状態になったと判断してS8に進む。S8では、第1温度検出手段20により検出された温度と、潜熱蓄熱材1の融点T3よりも所定温度(例えば5℃)高い温度T4とを比較する。ここで、所定温度T4は、所定温度Tgよりも低い温度であることが好ましい。
【0059】
第1温度検出手段20で検出された温度が所定温度T4以上である場合(S8でYes)には、次に、加熱手段8の加熱能力が所定加熱能力よりも大きいかどうかを判定する(S9)。一方、第1温度検出手段20で検出された温度が、所定温度T4未満である場合(S8でNo)は、S11に進む。ここで、所定加熱能力とは、加熱手段8が実現できる最低の加熱能力よりも所定能力高い値であることが好ましい。
【0060】
加熱手段8の加熱能力が所定加熱能力以上であれば(S9でYes)、加熱手段8の加熱能力を減少させる(S10)。ここで、加熱手段8が燃焼機である場合には、燃料供給を小さくする。加熱手段8が電気ヒータである場合には、電気ヒータへの供給電力を小さくする。加熱手段8がヒートポンプ装置である場合には、圧縮機7の吐出温度を低くするおよび/または冷媒循環量を少なくすることにより、加熱能力を小さくして、蓄熱手段2の入口温度を下げることができる。
【0061】
なお、S9及びS10の代替として、ポンプ9による熱媒体の搬送量(蓄熱回路を流れる熱媒体の流量)を増大させることにより、蓄熱手段2の熱媒体の入口温度を下げてもよい。また、加熱能力の低減と熱媒体の搬送量の増大との双方によって、蓄熱手段2の熱媒体の入口温度を下げてもよい。
【0062】
これにより、
図2(a)(4)(5)に示す、蓄熱手段2の上流側部分の温度上昇を抑制し、熱媒体の持つ熱量を有効活用した蓄熱運転が可能となる。また、蓄熱手段2の出口温度の上昇も抑制することができる。
【0063】
S8で第1温度検出手段20の検出温度がT4未満である場合、または、S9で加熱能
力が所定加熱能力未満である場合にはS11に進む。S11では、流量検出手段22の検出流量が、所定流量F2以上であるか否かを判断する。ここで所定流量F2は、ポンプ9によって実現できる最低の流量よりも所定流量高い値である。検出流量が所定流量F2未満であれば(S11でNo)、S6に戻る。一方、検出流量が所定流量F2以上であれば(S11でYes)、S12に進んで、ポンプ9によって熱媒体の流量を低減する。流量を低減した後は、S6へと進む。
【0064】
これにより、蓄熱手段2の熱媒体の出口温度をさらに低く維持することができる。したがって、加熱手段8に流入する熱媒体の温度を低く維持して、加熱手段8での伝熱効率を向上させ、効率よく蓄熱運転を実現できる。その結果、省エネルギー性に優れた蓄熱装置50及び温水生成装置100を実現することができる。
【0065】
以上の制御フローにより、蓄熱手段2から流出する熱媒体の温度が、蓄熱運転を終了させる温度(所定温度Te)となるまで、蓄熱運転が行われる。
【0066】
このように、蓄熱運転の開始から終了まで、熱媒体の蓄熱手段2の出口における熱媒体の温度(出口温度)の上昇を抑制することができ、これにより、加熱手段8に流入する熱媒体の温度が低下する。その結果、加熱手段8として燃焼機を用いる場合、燃焼ガスから熱媒体への伝熱による加熱であるので、熱媒体の温度が下がることで、伝熱効率が高くなる。また、加熱手段8が電気ヒータの場合、熱媒体の温度が下がればヒータ自体の温度が低下し、ヒータ本体や支持体から外部への放熱ロスが低減することにより加熱の効率が高くなる。
【0067】
なお、本実施の形態においては、終了動作として、蓄熱手段2に流入する熱媒体の温度(入口温度)を低下させる動作と、熱媒体の流量を低下させる動作とを行ったが、少なくとも、いずれか一方を行えばよい。これにより、蓄熱運転が進行した場合でも、蓄熱手段2から流出する熱媒体の温度(出口温度)の上昇を抑制することができ、エネルギー効率のよい蓄熱運転を実現することができる。
【0068】
また、本実施の形態では、蓄熱手段2に流入する熱媒体の温度(入口温度)を低下させる動作を、熱媒体の流量を低下させる動作よりも優先して行うようにしているが、優先度を逆にしてもよい。すなわち、S8において、検出流量と所定流量F2との比較を行って、検出流量<所定流量F2の場合に、蓄熱手段2に流入する熱媒体の温度(入口温度)を低下させる動作を実行するように制御フローを構築してもよい。 (実施の形態2)
図4は、本実施の形態における蓄熱装置50及び温水生成装置100の構成図である。本実施の形態において、実施の形態1と同一の箇所については同一符号を付し、損詳細な説明は省略する。
【0069】
本実施の形態の蓄熱装置50及び温水生成装置100は、熱媒体として水が循環する熱媒体回路4と、熱媒体を加熱する加熱手段8とを備えている。また、熱媒体回路4には、融点が異なる複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)を有する蓄熱手段2が設けられている。蓄熱手段2と熱媒体とが熱交換することで、蓄熱手段2への蓄熱、及び、熱媒体の加熱が行われる。
【0070】
蓄熱手段2は、融点が異なる複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)と、熱媒体が流れる熱媒体流路を有し、熱媒体と潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)とが熱交換を行うものである。蓄熱手段2が保有する熱量により、熱媒体を加熱することができる。また、加熱された熱媒体によって蓄熱手段2に蓄熱することができる。なお、潜熱蓄熱材は、
本実施の形態の蓄熱手段2は、融点が異なる3つの潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)を有している。潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)としては、例えば、チオ硫酸ナトリウム5
水和物、酢酸ナトリウム3水和物、硫酸ナトリウム10水和物、硫酸ナトリウムn水和物(但し、n:整数、n>10)を用いることができる。なお、チオ硫酸ナトリウム5水和物の融点は48℃、硫酸ナトリウム10水和物の融点は32℃である。なお、蓄熱手段2は、少なくとも融点の異なる2つの潜熱蓄熱材を用いて構成されていればよく、融点の異なる3つ以上の潜熱蓄熱材を用いて構成されていてもよい。なお、熱利用端末へと湯水を供給する温水生成装置として用いる場合、潜熱蓄熱材1aとして、融点が58℃の酢酸ナトリウム3水和物を用いることが好ましい。 3つの潜熱蓄熱材は、最も融点の高い高融点潜熱蓄熱材1aが第2流量調整弁11側に、最も融点の低い低融点潜熱蓄熱材1cが第1流量調整弁10側に配置されている。高融点蓄熱材1aと低融点蓄熱材1cとの間には、高融点蓄熱材1aよりも融点が低く、低融点蓄熱材1cよりも融点が高い、中融点蓄熱材1bが配置されている。すなわち、融点の異なる複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)は、融点の高いものから低いものに順に配置されている。これにより、熱媒体は、融点が異なる複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)と順に熱交換するように流れる。
【0071】
次に、温水生成装置100の動作について説明する。この温水生成装置100は、加熱手段8で水を加熱して温水を生成し、生成された温水によって蓄熱手段2に蓄熱する蓄熱運転を実行することができる。また、この温水生成装置100は、熱媒体を加熱して温水を生成する複数の加熱運転を実行することができる。複数の加熱運転は、蓄熱手段15によって水を加熱する第1加熱運転、加熱手段8と蓄熱手段15との双方を用いて水を加熱する第2加熱運転を含む。各運転の制御は、制御装置25によって行われる。
【0072】
蓄熱運転において、制御装置25は、
図4の破線矢印の方向に水が流れるように、ポンプ9、第1流量調整弁10と第2流量調整弁11を制御する。これにより、水は、加熱配管14と蓄熱配管15とが環状に接続された蓄熱回路を循環する。
【0073】
また、蓄熱運転において、制御装置25は、圧縮機7、減圧手段5、ファンを制御して、熱媒体熱交換器3に高温高圧の冷媒を供給する。
【0074】
熱媒体熱交換器3で高温高圧の冷媒と熱交換して生成され、所定の加熱温度まで加熱されたた高温の熱媒体(高温水)は、加熱配管14を流れ、第2流量調整弁11を介して蓄熱配管15に流入する。蓄熱配管15を流れる温水は、蓄熱手段2において、高融点蓄熱材1a、中融点蓄熱材1b、低融点蓄熱材1cと順に熱交換する。これにより、それぞれの潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)に蓄熱が行われる。蓄熱手段2を流れる間に潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)に放熱して温度が低下した熱媒体(水)は、第1流量調整弁を介して加熱配管14に流入し、熱媒体熱交換器3にて、再度加熱され温水となる。以上のような動作が繰り返され、熱媒体が蓄熱回路を循環することで蓄熱手段への蓄熱が行われる。
【0075】
蓄熱手段2に蓄熱された熱を用いて水を加熱し、温水を生成する第1加熱運転において、制御装置25は、
図4の実践矢印の方向に水が流れるように、第1流量調整弁10と第2流量調整弁11とを制御する。これにより、水は、給水配管12、蓄熱配管15、給湯配管13を順に流れる。蓄熱配管15を流れる水は、蓄熱手段2において、低融点蓄熱材1c、中融点蓄熱材1b、高融点蓄熱材1aと順に熱交換して加熱される。蓄熱手段2で加熱されて生成された温水は、第2流量調整弁11を介して給湯配管13へと流れ、熱利用端末へと供給される。
【0076】
加熱手段8と蓄熱手段15との双方を用いて水を加熱し、温水を生成する第2加熱運転において、制御装置25は、
図4の一点鎖線矢印の方向に水が流れるように第1流量調整弁10と第2流量調整弁とを制御する。このとき、ポンプ9を動作させてもよい。これにより、給水配管12を流れた水は、第1流量調整手段10を介して加熱配管14と蓄熱配
管15との双方に分岐して流れる。加熱配管14を流れる水は加熱手段8で加熱されて温水となり、蓄熱配管15を流れる水は蓄熱手段で加熱されて温水となる。加熱手段8で生成された温水と、蓄熱手段2で生成された温水とは、第2の流量設定手段11で混合され、給湯配管13に流入する。
【0077】
ここで、複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)のそれぞれは、蓄熱運転及び第1加熱運転において、水の流れ方向に対して上流側の潜熱蓄熱材の相変化が下流側の潜熱蓄熱材の相変化よりも前に終了するように構成されている。
【0078】
すなわち、蓄熱運転において、複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)のそれぞれは、融点の低い潜熱蓄熱材の相変化が、融点の高い潜熱蓄熱材の相変化と同時またはそれよりも後に終了するように構成されている。また、第1加熱運転において、複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)のそれぞれは、融点の高い潜熱蓄熱材の相変化が、融点の低い潜熱蓄熱材の相変化と同時またはそれよりも後に終了するように構成されている。また、第2加熱運転において、複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)のそれぞれは、融点の高い潜熱蓄熱材の相変化が、融点の低い潜熱蓄熱材の相変化と同時またはそれよりも後に終了するように構成されている。
【0079】
具体的には、複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)は、蓄熱運転及び第1加熱運転において、下記の数式1を満たすように構成されている。
【0080】
【数1】
ここで、n:水の流れ方向においてn番目に配置された潜熱蓄熱材、ρ:潜熱蓄熱材の密度kg/L、V:潜熱蓄熱材の容量L、ΔH:潜熱蓄熱材の単位重量当たりの潜熱kJ/kg、G:水の重量流量 kg/h、Cp:水の比熱 kJ/(kg・K)、Ti:潜熱蓄熱材の入口の水温℃、To:潜熱蓄熱材の出口の水温℃である。なお、蓄熱手段2において、潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)は、順にならんで配置されている。したがって、n番目の潜熱蓄熱材の出口温度Tonとn+1番目の潜熱蓄熱材の入口温度Tin+1は等しくなる。
【0081】
潜熱蓄熱材の潜熱ΔHと重量ρVとの積は、蓄熱材の蓄熱容量Qを示す。また、水の重量流量Gと水の比熱Cp、及び、潜熱蓄熱材の入口の水の温度(入口温度)と出口の水の温度(出口温度)との温度差Ti−Toの積は、熱媒体と潜熱蓄熱材の間の単位時間当たりの熱交換量Pを示す。なお、潜熱蓄熱材と熱媒体との単位時間当たりの熱交換量は、潜熱蓄熱材と熱媒体との間の伝熱面積や、潜熱蓄熱材の材料及び熱媒体流路の形状によって調整できる。
【0082】
以上から、数式1の左辺及び右辺は、潜熱蓄熱材の蓄熱容量Qを単位時間当たりの熱交換量Pで除した値であって、潜熱蓄熱材の相変化が終了するまでの時間を示している。数式1を満たすことにより、蓄熱手段2において隣接する2つの潜熱蓄熱材は、蓄熱手段2を流れる水の流れ方向に対して、上流側の相変化が先に終了する。蓄熱手段2を構成する潜熱蓄熱材のそれぞれを、数式1の関係を満たすように構成すると、融点の異なる複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)の相変化が、水の流れ方向に対して上流側から順に終了していく。これにより、各潜熱蓄熱材の蓄熱量を有効に使用しながら、蓄熱運転及び第1加熱運転を実行することができる。
【0083】
ここで、隣接した2つの潜熱蓄熱材において、融点の高い方の第1潜熱蓄熱材の蓄熱容量をQh、融点の低い方の第2潜熱蓄熱材の蓄熱容量をQlとする。また、蓄熱運転又は第1加熱運転での、第1潜熱蓄熱材と水との単位時間当たりの熱交換量をPh、第2潜熱蓄熱材と水との単位時間当たりの熱交換量をPlとする。蓄熱運転においては、Qh/Ph≦Ql/Plが成り立つ。これにより、本実施の形態の温水生成装置では、蓄熱運転において、低融点蓄熱材1cの融解時間が最も長くなる。また、第1加熱運転においては、Ql/Pl≦Qh/Phが成り立つ。これにより、本実施の形態の温水生成装置では、第1加熱運転において、高融点蓄熱材1aの凝固時間が最も長くなる。
【0084】
なお、3つ以上の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)を用いて蓄熱手段2を構成した場合には、水の流れ方向に対して最も下流側の潜熱蓄熱材よりも上流側の潜熱蓄熱材を、下記の数式を満たすように構成してもよい。
【0085】
【数2】
ここで、Tm:潜熱蓄熱材の融点℃である。すなわち、潜熱蓄熱材の潜熱ΔHと重量ρVとの積は、蓄熱材の蓄熱容量Qを示す。また、水の重量流量Gと水の比熱Cp、及び、潜熱蓄熱材の融点の温度差の積は、熱媒体と潜熱蓄熱材の間の単位時間当たりの熱交換量P´を示す。以上から、数式2の左辺及び右辺は、潜熱蓄熱材の蓄熱容量Qを単位時間当たりの熱交換量P´で除した値であって、潜熱蓄熱材の相変化が終了するまでの時間を示している。
【0086】
上記数式1又は数式2の条件を満足するために、本実施の形態の蓄熱手段2は、高融点蓄熱材1aとして、融点58℃の酢酸ナトリウム3水和物を用いた。また、中融点蓄熱材1bとして、融点32℃の硫酸ナトリウム10水和物を用いた。さらに、低融点蓄熱材1cとして、融点20℃の硫酸ナトリウム10水和物と添加剤との混合物を用いた。また、潜熱蓄熱材の総体積を1としたとき、高融点蓄熱材1a、中融点蓄熱材1b、低融点蓄熱材1cが占める体積割合を、それぞれ、38vol%、38vol%、24vol%とした。また、高融点蓄熱材1aの蓄熱容量Qaは約264kJ/kg、中融点蓄熱材1bの蓄熱容量Qbと低融点蓄熱材1cの蓄熱容量Qcは約251kJ/kgとした。
【0087】
図5は、上記蓄熱手段2を用いて蓄熱運転を行い、蓄熱完了後に放熱運転(第1加熱運転)に切り替えた場合の温度変化を示す。なお、蓄熱運転は、蓄熱手段2の高融点蓄熱材1aに流入する水の入口温度を90℃とし、低融点蓄熱材1cから流出する水の出口温度が60℃に達するまで行い、第一加熱運転は低融点蓄熱材1cに流入する水の入口温度を10℃とし、高融点蓄熱材1aから流出する水の温度が40℃になるまで行った。また、高融点蓄熱材1aに流入する水の入口温度を90℃とし、蓄熱運転の終了時に入口温度を80℃に低下させた。第一加熱運転は低融点蓄熱材1cに流入する水の入口温度を10℃とし、高融点蓄熱材1aから流出する水の温度が40℃になるまで行った。
【0088】
蓄熱時には、次のような温度変化を示す。まず、蓄熱運転時に最も上流側となる高融点蓄熱材1aが、湯水の流入とともに顕熱蓄熱しながら温度上昇するので高融点蓄熱材1aの出口温度も上昇していく。高融点蓄熱材1aが潜熱蓄熱領域に入ると温度上昇がなくなるので、高融点蓄熱材1aの上流側から潜熱領域に入り、やがて高融点蓄熱材1a全体が潜熱蓄熱領域に入ると温度変化がなくなるため、高融点蓄熱材1aの出口温度の上昇もな
くなる。このとき蓄熱が効率よく進んでいれば、高融点蓄熱材1aの出口温度は、ほぼ高融点蓄熱材1aの融点と同等になる。さらに蓄熱が進むと、高融点蓄熱材1aは、相変化が終了して(時刻Th1)、潜熱蓄熱領域から顕熱蓄熱領域に入り、上流側から再び温度上昇し始め、それに伴い高融点蓄熱材1aの出口温度も上昇する。
【0089】
中融点蓄熱材1bも、高融点蓄熱材1aと同様の過程を経るが、中融点蓄熱材1bに流入する熱媒体(水)は、高融点蓄熱材1aへの放熱後の水であるため、その温度(入口温度)は、高融点蓄熱材1aの出口温度に応じて徐々に上昇する。したがって、中融点蓄熱材1bが、潜熱領域に到達するのは、高融点蓄熱材1a全体が潜熱蓄熱領域に到達した後である。よって、その間、中融点蓄熱材1bの顕熱蓄熱領域での温度上昇速度は小さい。その後、中融点蓄熱材1bは、潜熱蓄熱領域へと移行し、出口温度が一定となる。その後、再び顕蓄熱領域に入り、温度上昇していくが、高融点蓄熱材1aよりも相変化が終了(時刻Tm1)する時間は遅い。
【0090】
低融点蓄熱材1cについても同様に、潜熱蓄熱領域へと移行するのは、中融点蓄熱材1bが潜熱蓄熱領域へと移行した後である。また、低融点蓄熱材1cの相変化が終了(時刻Tl1)するのは、中融点蓄熱材1bの相変化が終了するよりも後になる。
【0091】
その結果、低融点蓄熱材側1cの出口における熱媒体(水)の温度は、潜熱領域での蓄熱が完了する約90分まで低融点蓄熱材1cの融点程度の温度に保たれる。その後、低融点蓄熱材1cの相変化が終了すると低融点蓄熱材1cの出口の熱媒体(水)の温度が上昇し始め、低融点蓄熱材1cの出口の熱媒体の温度が60℃に到達して蓄熱が完了する。なお、低融点蓄熱材1cの出口温度が60℃以上となっているのは、ポンプ9を停止させて熱媒体回路4内の熱媒体(水)の循環を停止させても、多少量の熱媒体(水)がさらに循環し、また、低融点蓄熱材1cに設けられた熱媒体の流路内に熱媒体が残存するので、熱交換が行われるためである。
【0092】
蓄熱過程において、低融点蓄熱材1cより、中融点蓄熱材1bまたは高融点蓄熱材1aが融解(相変化)する時間が長ければ、蓄熱手段2の低融点蓄熱材1cの出口温度が低融点蓄熱材1cの融点と同等の温度から上昇した後、中融点蓄熱材1bまたは高融点蓄熱材1aの融点と同等の温度で温度上昇勾配が緩くなるという現象が見られるはずであり、この結果は、蓄熱手段低融点側出口温度が低融点蓄熱材1cの融点とほぼ同等の温度の状態を長く保つことができていることを示している。
【0093】
これにより、
図5に示すように、高融点蓄熱材1a、中融点蓄熱材1b、低融点蓄熱材1cの相変化が終了時刻Th1、Tm1、Tl1はこの順に並ぶ。
【0094】
一方、放熱時、すなわち、湯を生成する加熱運転時には、蓄熱運転時とは逆に低融点蓄熱材1c側から高融点蓄熱材1aへと順に熱媒体を流通させる。一般に温水使用時には需要に応じた流量で水を流通させるので、流量を蓄熱時の10倍としている。
【0095】
この時、まず低融点蓄熱材1cが急激に放熱して潜熱領域に入る。そのため、低融点蓄熱材1cの出口温度は急激に低下する。潜熱領域に入ると温度勾配が小さくなり、相変化が終了(時刻Tl2)すると、再び顕熱領域となって急激な温度低下が始まる。
【0096】
中融点蓄熱材1bには低融点蓄熱材1cの放熱によって加熱された水が流入するので、放熱による温度低下は低融点蓄熱材1cよりも緩やかとなる。その後、低融点蓄熱材1cより遅れて潜熱領域に入る。低融点蓄熱材1cによる水への放熱があるので、潜熱領域(相変化)の終了(時刻Tm2)も低融点蓄熱材1cの相変化よりも遅い。その後、再び顕熱領域となって温度が低下する。
【0097】
高融点蓄熱材1aには低融点蓄熱材1c及び中融点蓄熱材1bによる放熱によって温度上昇した水が流入するため、温度低下はさらに遅くなる。したがって、潜熱領域(相変化)の終了(時刻Th2)も、時刻Tm2よりも遅い。その後、再び顕熱領域となって温度が低下する。
【0098】
このように、蓄熱手段4の高融点蓄熱材1aの出口温度を、高融点蓄熱材1aの融点以上の温度に長く保つことができる。低融点蓄熱材1cの出口の熱媒体の温度が60℃に到達して蓄熱が完了する。
【0099】
以上のように、本発明の温水生成装置は、蓄熱手段2の水の流れ方向に対して、上流側の潜熱蓄熱材から順に相変化が終了するように構成される。
【0100】
したがって、蓄熱運転において、複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)のうち、最も融点の低い潜熱蓄熱材1cの相変化が最後に終了する。これにより、熱媒体の保有する熱によって蓄熱する蓄熱運転において、熱媒体が保有する熱を高温域から低温域まで無駄なく熱媒体に蓄熱することができる。その結果、融点の異なる複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)を有する蓄熱手段4を用いた温水生成装置において、蓄熱手段4に効率よく蓄熱することができる
また、蓄熱運転において、蓄熱手段2から流出する水の温度を低く保つことができる。よって、加熱手段(ヒートポンプ装置)8に流入する水の温度を低く保ちことができる。その結果、熱媒体熱交換器3におけるエンタルピー差を増大させることができ、COPが向上する。
【0101】
また、第1加熱運転において、複数の潜熱蓄熱材のうち、最も融点の高い潜熱蓄熱材1aの相変化が最後に終了する。これにより、低融点の潜熱蓄熱材(1b、1c)が保有する潜熱を使い切ることができる。よって、蓄熱手段2に蓄熱された熱量を効率よく利用することができる。その結果、熱利用端末に対して、最後まで温度の高い湯水を供給することができる。なお、第2加熱運転においても、第1加熱運転と同様に、複数の潜熱蓄熱材のうち、最も融点の高い潜熱蓄熱材1aの相変化が最後に終了するように構成されていることが好ましい。
【0102】
なお、本実施の形態においては、蓄熱運転及び第1加熱運転において、蓄熱手段2の水の流れ方向に対して、上流側から下流側に向かって順に相変化が終了するように構成している。しかしながら、少なくとも、最も下流側の潜熱蓄熱材の相変化が、最後に終了するように構成されていればよい。よって、融点が異なる3つ以上の潜熱蓄熱材を用いて蓄熱手段2を構成した場合には、少なくとも、最も下流側の2つの潜熱蓄熱材の間で、数式1の関係が満たされるように構成されていればよい。
【0103】
次に、蓄熱運転の制御について説明する。なお、実施の形態1における蓄熱運転の制御と同様の部分については説明を省略する。
【0104】
本実施の形態における蓄熱装置50は、融点の異なる複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)を有している。制御装置25は、蓄熱運転時に、まず、蓄熱対象となる潜熱蓄熱材を決定する。例えば、温水の使用量が相対的に多い冬季には、複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)の全てを蓄熱対象とし、温水の使用量が相対的に多い夏季には、融点の低い潜熱蓄熱材(1b、1c)を蓄熱対象として決定する。
【0105】
制御装置25は、蓄熱運転のうち、特に定常動作において、加熱手段8によって加熱される熱媒体の目標温度(加熱温度)Tgを、蓄熱対象とした潜熱蓄熱材(1a、1b、1
c)の融点のうち、もっとも高い融点(第1融点)よりも所定温度(例えば10から20℃)高い温度として設定する。ここで、第1融点よりも高い融点を有する潜熱蓄熱材があるときは、目標温度Tgは、第1融点と、第1融点よりも高い融点との間に設定されることが好ましい。これにより、蓄熱対象ではない潜熱蓄熱材が潜熱領域で熱交換することを抑制し、また、不必要な蓄熱が行われることを防止できる。
【0106】
また、制御装置25は、蓄熱運転中に、潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)の蓄熱状態に応じて、加熱温度を低下させる場合には、加熱温度Tgを、第1融点よりも高い温度の範囲で、低下させる期間を設けるようにする。これにより、融点が異なる複数の潜熱蓄熱材(1a、1b、1c)を用いて蓄熱手段2を構成した場合でも、蓄熱対象とする潜熱蓄熱材に、適切に蓄熱を行うことができる。
【0107】
例えば、中融点蓄熱材1bと低融点蓄熱材1cとを蓄熱対象として、高融点蓄熱材1aの融点より低く、中融点蓄熱材1bの融点より高い温度に熱媒体を加熱すると、蓄熱対象の潜熱蓄熱材(1b、1c)より上流側の蓄熱材(高融点蓄熱材1a)は、顕熱蓄熱しながら温度上昇し、蓄熱手段2に流入する熱媒体の温度で一定となる。このとき、熱媒体の温度は、高融点蓄熱材1aの融点より低いため、高融点蓄熱材1aは、潜熱領域とはならない。
【0108】
一方、蓄熱対象とする潜熱蓄熱材(1b、1c)は、融点よりも高い熱媒体と熱的に接触して熱交換が行われるので、上流側に配置されている中融点蓄熱材1bから順に、蓄熱される。このようにして、高融点蓄熱材1aは潜熱領域に達さず、中融点蓄熱材1b、及び、低融点蓄熱材1cを潜熱領域まで到達させ、蓄熱することができる。
【0109】
この場合においても、蓄熱手段2の熱媒体の出口温度は徐々に上昇するが、蓄熱運転中に蓄熱手段2に流入する熱媒体の温度を低下させることにより、また、蓄熱運転中に、蓄熱手段2に流入する熱媒体の流量を低下させることにより、蓄熱手段2の熱媒体の出口温度を低く維持することができる。その結果、エネルギー効率のよい蓄熱運転を実現して、省エネルギー性に優れた蓄熱装置50、温水生成装置100を提供することができる。