(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6244561
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】パイプ抱持バンド取付具
(51)【国際特許分類】
F16L 3/14 20060101AFI20171204BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20171204BHJP
E04D 13/08 20060101ALI20171204BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20171204BHJP
F16B 35/06 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
F16L3/14 Z
F16B35/00 Y
E04D13/08 311J
F16B2/08 A
F16B35/06 G
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-161793(P2016-161793)
(22)【出願日】2016年8月22日
【審査請求日】2016年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌司
【審査官】
大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−058848(JP,A)
【文献】
実開昭52−130220(JP,U)
【文献】
実開昭51−062124(JP,U)
【文献】
特開2011−241564(JP,A)
【文献】
特開平10−332047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/14
E04D 13/08
F16B 2/08
F16B 35/00
F16B 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面に添設される基板部と、該基板部の板面の一方向に突出した、前記構造物に埋設されるボルト体と、前記基板部より該ボルト体とは反対方向に突出した、パイプ抱持バンドを固定するための取付固定部とを備えたパイプ抱持バンド取付具において、
前記パイプ抱持バンドは、前記取付固定部に固定される板状の取付片部を備えており、
前記取付固定部は、一対の板状片とされ、前記基板部の両側端のそれぞれにヒンジ結合されており、
前記取付固定部は、前記取付片部に重合して固定具で固定されるようになっている一方、両側へ回動により相互に遠ざかるように開くことで、前記基板部とともに平板に近い状態へ変形することを特徴とするパイプ抱持バンド取付具。
【請求項2】
請求項1において、
前記取付固定部は、前記基板部に一端がヒンジ結合された回動基部と、該回動基部の他端より折曲、延出した、前記取付片部に重合する重合固定部とを備えていることを特徴とするパイプ抱持バンド取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁などの構造物の表面に沿って上下方向等に配設される竪樋等のパイプを取り付けるためのパイプ抱持バンドを固定するパイプ抱持バンド取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、この種のパイプ抱持バンド取付具110は、パイプ135の配設方向(図例では上下方向)に沿って複数個所に取り付けられ、それらによってパイプ135を支持するようになっている。
【0003】
図5に示したパイプ抱持バンド取付具110は、特許文献1に示したものと同様、外壁3等の構造物の表面に添設される基板部111と、パイプ固定用のパイプ抱持バンドを取り付けるための長方形板状の取付固定部112と、外壁3に固定される軸状のボルト体113とを連結して構成されている。外壁3にはアンカー雌ねじ5が埋設されており、ボルト体113はそのアンカー雌ねじ5に螺合して埋設され、固定されるようになっている。
【0004】
このようなパイプ抱持バンド取付具110は、パイプ抱持バンド130と組み合わされてパイプ支持体120が構成され、そのパイプ支持体120をパイプ135の高さ方向の複数個所に設けることで、パイプ135を構造物にしっかりと固定できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−31269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のパイプ抱持バンド取付具110は施工後には風雨に晒されるため経年による錆の発生などにより劣化することがある。しかも、複数個所に設けられたパイプ支持体120(パイプ抱持バンド取付具110およびパイプ抱持バンド130)は、高さ位置により劣化の度合が異なる場合がある。
【0007】
このような場合、部材を効率よく使用するために、その劣化したパイプ支持体120以外のパイプ支持体120をそのままにして、劣化したパイプ支持体120のみを取り替えることが考えられる。しかしながら、パイプ135が起立した状態における取り替え作業であるため、劣化したパイプ支持体120を取り除くことはできたとしても、パイプ支持体120、特にパイプ抱持バンド取付具110は前後方向に長いため新たに取り付けることはきわめて困難とされる。そのため、従来では、交換されずにそのまま利用される他のパイプ支持体120のみでパイプ135を支持する、という事態になることがほとんどであった。
【0008】
したがって、パイプ135を支持するパイプ支持体120が徐々に少なくなり、パイプ135の起立状態が不安定になるおそれがある。そのため、パイプの起立状態が不安定になった場合、あるいは不安定になりそうな場合には、すべてのパイプ支持体120を取り除いてパイプ135を取り外した後に、一からパイプ135およびパイプ支持体120の施工をしなおす必要があった。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、パイプが構造物に固定された状態で新たに取り付けることができるパイプ抱持バンド取付具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のパイプ抱持バンド取付具は、構造物の表面に添設される基板部と、該基板部の板面の一方向に突出した、前記構造物に埋設されるボルト体と、前記基板部より該ボルト体とは反対方向に突出した、パイプ抱持バンドを固定するための取付固定部とを備えたパイプ抱持バンド取付具において、前記パイプ抱持バンドは、前記取付固定部に固定される板状の取付片部を備えており、前記取付固定部は、一対の板状片とされ、前記基板部の両側端のそれぞれにヒンジ結合されており
、前記取付固定部は、前記取付片部に重合して固定具で固定されるようになってい
る一方、両側へ回動により相互に遠ざかるように開くことで、前記基板部とともに平板に近い状態へ変形することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載のパイプ抱持バンド取付具は、前記取付固定部が、前記基板部に一端がヒンジ結合された回動基部と、該回動基部の他端より折曲、延出した、前記取付片部に重合する重合固定部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載のパイプ抱持バンド取付具によれば、上述した構成となっているため、パイプが構造物に固定された状態で新たにパイプ抱持バンド取付具を取り付けることができる。
【0013】
請求項2に記載のパイプ抱持バンド取付具によれば、上述した構成となっているため、パイプ抱持バンドの取付片部をパイプ抱持バンド取付具にしっかりと固定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパイプ抱持バンド取付具の説明図である。(a)(b)は、パイプ抱持バンド取付具の2種の変化状態を示す斜視図である。
【
図2】(a)(b)は、パイプ抱持バンド取付具の取付手順を示す説明図であり、(a)は平面図(一部横断面図)、(b)は側面図(一部縦断面図)である。
【
図3】パイプ抱持バンド取付具の取付状態(取り付けの途中の状態)を示す斜視図である。
【
図4】パイプ抱持バンド取付具の使用態様の一例を示す斜視図である。
【
図5】従来のパイプ抱持バンド取付具の取付例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面をもとに説明する。まず、パイプ抱持バンド取付具10の基本構成について説明する。
【0016】
パイプ抱持バンド取付具10は、構造物(たとえば外壁3)の表面に添設される基板部11と、基板部11の板面の一方向に突出した、構造物に埋設されるボルト体13と、基板部11よりボルト体13とは反対方向に突出した、パイプ抱持バンド30を固定するための取付固定部12とを備えた取付具である。
【0017】
パイプ抱持バンド30は取付固定部12に固定される板状の取付片部31を備えている。取付固定部12は、一対の板状片とされ、基板部11の両側端のそれぞれにヒンジ結合されており、取付片部31に重合して固定具で固定されるようになっている。
【0018】
この取付具によれば、パイプ支持体(パイプ抱持バンド取付具およびパイプ抱持バンド)が劣化した場合などに取り替えの必要のある一部のパイプ抱持バンド取付具を同じ位置に簡易に取り付けることができる。
【0019】
ついで、
図1〜
図4に示した取付具について詳述する。
【0020】
このパイプ抱持バンド取付具10は、基板部11、取付固定部12およびボルト体13の3種の部材よりなり、いずれもがたとえばステンレス等の金属よりなる。基板部と、一組(2枚)の取付固定部とは上述したように基板部の両端の2箇所において、ヒンジ結合により一体化されている。
【0021】
基板部11は、
図1(a)(b)に示すように矩形平板状とされ、その中央にボルト体13が挿通される挿通孔(不図示)が開設されている。基板部11は、その裏面(挿通孔にボルト体13の軸部13bが挿通されたときに軸部13bが突出した方の面)が外壁3などの構造物の表面に接するようにして添設される部材である。
【0022】
ボルト体13は、
図1(a)(b)に示すように、その軸部13bが基板部11の挿通孔に挿通した状態で、外壁3などの構造物に埋設されたアンカー雌ねじ5に螺合して埋設され、ボルト頭13aは基板部11の表面側に配される。
【0023】
取付固定部12は、
図1(a)(b)に示すように、平板状の回動基部12aと平板状の重合固定部12bとよりなり、平面視で折曲「く」字状とされ、折曲による突出部12dが相互に向き合うように基板部11に回動連結されている。重合固定部12bには、
図4で後述するようにパイプ抱持バンド30を取り付けるための2つのボルト挿通孔12cが開設されている。
【0024】
図1(a)に示すように、取付固定部12どうしが回動により最も近づいた状態では、重合固定部12bの開放端12e(
図1(a)参照)から突出部12d(
図1(a)参照)までの向き合う平面どうしが面接触する。また、そのとき、基板部11と2つの回動基部12aとで、平面視で三角形の空間が形成される。このとき、ボルト体13のボルト頭13aは、この空間内に配されている。
【0025】
このように、重合固定部12bが
図1(b)のように重合された状態で、その重合体を挟むように、パイプ抱持バンド30の取付片部31が取り付けられる。なお、パイプ抱持バンド30については、
図4の説明において詳述する。
【0026】
このようなパイプ抱持バンド取付具10は、
図2(a)(b)に示すような手順で外壁3に取り付けられる。なお、
図2(a)の2点鎖線で示した図は、パイプ抱持バンド取付具10が外壁3に取り付け、固定された状態を示す模式図である。この取付態様(取付手順)は、パイプ支持体20(パイプ抱持バンド取付具10およびパイプ抱持バンド30)の取り替えなどの際、
図2(a)に示すように、パイプ35が起立した状態で実施されるものであり、外壁3には、従前より用いられていた、旧パイプ抱持バンド取付具10用に設けられたアンカー雌ねじ5が埋設されており、これを再利用する態様である。
【0027】
取り替えのための新規のパイプ抱持バンド取付具10は、両取付固定部12を横方向に相互に遠ざかるように、地面に略水平になるように、かつ外壁3との間の間隔がほぼ均等になるように広げた状態にして、たとえば
図2(a)の白抜き矢印より壁面に平行に移動させていく。その後、パイプ抱持バンド取付具10を
図2(a)(b)に示す位置から後方に向けて移動させ、
図3に示すように、ボルト体13の軸部13bをアンカー雌ねじ5に螺合させていく。そして、基板部11が外壁3に添設されるようになるまで(
図2(a)の2点鎖線参照)螺進させていくことで、パイプ抱持バンド取付具10の取り付けが完了する。
【0028】
このように、基板部11と2枚の取付固定部12との連結体は回動により平板に近い状態に変形できるため、起立したパイプ35と外壁3との限られた間隔に差し入れることができる。つまり、パイプ35を取り外すことなく、また劣化したパイプ抱持バンド取付具10を取り外したままにしておくことなく、同じ部位に新たなパイプ支持体20(パイプ抱持バンド取付具10およびパイプ抱持バンド30)を取り付けることができる。
【0029】
また、ボルト体13の埋設作業は、
図2(b)および
図3に示すように、取付固定部12が両側に開いた状態となっているため、工具の回転操作がしやすく、効率的な取り付け作業を行うことができる。
【0030】
工具の回転操作をしやすくするためには、取付固定部12を、
図2(a)で示した状態よりもさらに後方に回動させ、基板部11と両方の回動基部12aとを平板状に変形させた状態で操作すればよい。またさらに、回動基部12a、重合固定部12b間もヒンジ結合により連結して、基板部11および2つの取付固定部12が略平板状に変形できるように形成してもよい。
【0031】
また、基板部11とボルト体13の溶接などで一体化したパイプ抱持バンド取付具10を用いれば、取付固定部12を手でハンドル代わりに持って回転させてボルト体13を埋設させることができる。したがって、そのような取付具であれば、工具を用いることなくパイプ抱持バンド取付具10を取り替えることができる。
【0032】
このようにパイプ抱持バンド取付具10を外壁3の所望の位置のアンカー雌ねじ5に取り付け、固定した後には、取付固定部12の重合固定部12bを
図1(b)示すように重ね合わせるように
図2(a)の2点鎖線の状態に変形することで、パイプ抱持バンド30が取り付けられるようになる。そして、重合固定部12bを重ね合わせた重合体をパイプ抱持バンド30の取付片部31で挟むようにしてパイプ抱持バンド30を取り付けることができる。
【0033】
パイプ抱持バンド30は、
図4に示すように、帯板よりなる環状のバンド部32と、バンド部32の後端部より後方に延びた平板状の取付片部31とを有しており、取付片部31には、パイプ抱持バンド取付具10の取付固定部12に設けたボルト挿通孔12cに孔間隔が合致するように、固定具(ボルト33、ナット34)で固定するための2つのボルト挿通孔31aが開設されている。
【0034】
このようなパイプ抱持バンド30は、バンド部32をパイプ35に巻きつけ抱持してから、取付片部31でパイプ抱持バンド取付具10の取付固定部12の重合固定部12bを挟み込むようにしてボルト33、ナット34で固定される。
【0035】
以上では、既設のパイプ35を支持した一部のパイプ支持体20を取り替える場合の取り替え態様、手順について説明したが、本パイプ抱持バンド取付具10はパイプ35を新設する場合でも使用することができることは言うまでもない。パイプ35を新設する場合には、パイプ抱持バンド取付具10を外壁3に上下方向に取り付けていき、その後、それらのパイプ抱持バンド取付具10に対して、パイプ抱持バンド30およびパイプ35を施工することができる。また、パイプ35の新設の場合は、パイプ35を取り付ける前にパイプ支持体20(パイプ抱持バンド取付具10およびパイプ抱持バンド30)を外壁3に取り付けておいても、取り付けることができる。
【0036】
以上の取付態様では、パイプ抱持バンド30の取付片部31でパイプ抱持バンド取付具10の重合固定部12bを挟み込むようになっているが、重合固定部12bで取付片部31を挟み込む態様にも対応でき、相互に交互に挟み込むような取付態様にも対応することができる。
【0037】
また、重合固定部12bのボルト挿通孔12c、取付片部31のボルト挿通孔31aのいずれか一方が長孔であってもよい。なお、重合固定部12bのボルト挿通孔12cを長孔とする場合には、重合の際に重合固定部12bの長孔どうしがずれないように、重合固定部12bの前端、板面などに位置決め部を設けた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 パイプ抱持バンド取付具
11 基板部
11a ボルト挿通孔
12 取付固定部
12a 回動基部
12b 重合固定部
12c ボルト挿通孔
12d 突出部
12e 開放端
13 ボルト体
13a ボルト頭
13b 軸部
20 パイプ支持体
30 パイプ抱持バンド
31 取付片部
31a ボルト挿通孔
32 バンド部
33 ボルト
34 ナット
35 パイプ
3 外壁(構造物)
5 アンカー雌ねじ
【要約】
【課題】パイプが構造物に固定された状態で新たに取り付けることができるパイプ抱持バンド取付具を提供する。
【解決手段】パイプ抱持バンド取付具10は、構造物の表面に添設される基板部11と、基板部11の板面の一方向に突出した、構造物に埋設されるボルト体13と、基板部11よりボルト体13とは反対方向に突出した、パイプ抱持バンド30を固定するための取付固定部12とを備えている。このパイプ抱持バンド30は、パイプ抱持バンド取付具10の取付固定部12に固定される板状の取付片部31を備えている。取付固定部12は、一対の板状片とされ、基板部11の両側端のそれぞれにヒンジ結合されており、取付片部31に重合して固定具で固定されるようになっている。
【選択図】
図1