特許第6244573号(P6244573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244573切削工具仕上げ装置および切削工具仕上げ方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244573
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】切削工具仕上げ装置および切削工具仕上げ方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 3/34 20060101AFI20171204BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20171204BHJP
   B24B 37/34 20120101ALI20171204BHJP
   B23H 5/08 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B24B3/34
   B24B37/00 Z
   B24B37/34
   B23H5/08
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-4940(P2014-4940)
(22)【出願日】2014年1月15日
(65)【公開番号】特開2015-131376(P2015-131376A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】510269263
【氏名又は名称】株式会社小林機械製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】591108178
【氏名又は名称】秋田県
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】森 十九男
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 惠嗣
(72)【発明者】
【氏名】赤上 陽一
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−036754(JP,U)
【文献】 特開2004−249417(JP,A)
【文献】 特開2003−300131(JP,A)
【文献】 米国特許第03317416(US,A)
【文献】 特開昭60−085864(JP,A)
【文献】 特開昭48−102389(JP,A)
【文献】 特開2006−247781(JP,A)
【文献】 特許第3906165(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00−3/60
B24B37/00−37/34
B23H5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具把持具によって把持した切削工具の刃先を、仕上げパッドによって仕上げる切削工具仕上げ装置において、
前記工具把持具を回転させることで、前記仕上げパッドに対する前記刃先の接触面を前記仕上げパッドに沿わせて変化させると共に、前記工具把持具の回転に応じて前記仕上げパッドと前記刃先との相対的な位置を変化させることで前記仕上げパッドに対する前記刃先の沈み込み量を一定にする、
ことを特徴とする切削工具仕上げ装置。
【請求項2】
前記工具把持具に、
前記切削工具のすくい面の反対側の面が接触する工具支持台と、
前記切削工具を側面側から挟持する開閉可能な挟持片と、
が備えられた、
ことを特徴とする請求項1に記載された切削工具仕上げ装置。
【請求項3】
前記切削工具をすくい面側から支持する支持部材が備えられた、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された切削工具仕上げ装置。
【請求項4】
前記工具支持台の表面に溝が形成された、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された切削工具仕上げ装置。
【請求項5】
前記工具把持具に挿入されるロッド部材が備えられ、
前記挟持片に、開閉の支点となる軸部と、前記軸部より先端側に形成されて前記切削工具を側面側から挟持する挟持先端部と、前記軸部より後端側に形成されて前記ロッド部材が接触する後端部とが形成され、
前記後端部同士の間に前記ロッド部材が配置されることで、前記後端部同士が離されると共に前記挟持片が閉じられる、
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載された切削工具仕上げ装置。
【請求項6】
前記仕上げパッドと前記切削工具との間に、誘電性の仕上げ材が供給されると共に電圧が印加され、電界によって前記刃先に前記仕上げ材が寄せられる、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された切削工具仕上げ装置。
【請求項7】
前記挟持片のうち、互いが隣接する方向に前記刃先から近い側が金属製であり、互いが隣接する方向に前記刃先から遠い側が絶縁物製である、
ことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載された切削工具仕上げ装置。
【請求項8】
工具把持具によって把持された切削工具の刃先を、仕上げパッドで仕上げる切削工具仕上げ方法において、
前記工具把持具を回転させることで、前記仕上げパッドに対する前記刃先の接触面を前記仕上げパッドに沿わせて変化させる手順と、
前記工具把持具の回転に応じて前記仕上げパッドと前記刃先との相対的な位置を変化させることで前記仕上げパッドに対する前記刃先の沈み込み量を一定にする手順と、
誘電性の仕上げ材を供給する共に電圧を印加することで、電界によって前記刃先に前記仕上げ材を寄せる手順と、
を含む、
ことを特徴とする切削工具仕上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具仕上げ装置および切削工具仕上げ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切削加工は工具を用いて工作物を切り削る加工方法であり一種の塑性加工である。または除去加工とも知られている。切削工具の刃先によって工作物に切り込み、割り裂いて、工作物の一部を削り出し、加工屑として排除しながら加工圧を与える加工方法である。工具刃先は、押し進める部位と工作物の表面との間のせん断面によって加工力と熱を発生し、すくい面の上を滑りながら変形を起こして、工作物から加工屑として取り除かれる。
【0003】
図25に示すように、切削条件によって切りくずは工具の刃先先端部に溶着して構成刃先と呼ばれる現象を生じ成長しては刃先が脱落欠損を生じ、工具そのものの寿命を短命化することが知られ、さらに工作物の加工面を粗面化させる原因ともなる。加工屑である切りくずが連続的に生じることにより加工に発生する熱は、加工屑に転写し、工作物に熱歪を与える現象が抑制でき加工面が良好な仕上がり面を創成できる。一方、工具刃先寿命を低下させる原因の一つとして挙げられるのは、構成刃先の形成である。これにより刃物としての鋭利さが低下し、切削抵抗の上昇、さらに加工熱は上昇し、連続的に構成刃先は大きくなる現象を招く。このような構成刃先を生じさせ難くする方法としては、刃先を仕上げ滑らかすることで、工具の局部が工作物に衝突して熱の発生を抑制することがその形成原因を除去することになる。
【0004】
従来、切削工具の刃先仕上げ装置は、エンジン部品、トランスミッション部品、ステアリング部品などの金属加工に多用される例えばスローアウェイチップなどの切削工具(以下、「TA工具」と記す。)の刃先仕上げには、ブラシに砥粒を取り付けた特殊工具による仕上げ方法によって刃先を仕上げている。一方、金型創成に用いられるエンドミルなどの刃先を仕上げる際に用いられる。刃先を仕上げる方法として、例えば下記特許文献1に記載された電界砥粒による刃先研磨仕上げ方法がある。この方法によれば、仕上げパッド上に、砥粒が含まれた機能性流体が滴下されると共に電圧が印加される。与えられた電界により生じた吸引力に応じて砥粒が工具の刃先に集められ、相対運動を与えることで、工具の刃先を短時間で高品位に仕上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3906165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、TA工具は刃先の形状が様々であるため、特許文献1に記載された電界砥粒による刃先研磨仕上げ方法によると、電界によって発生する吸引力により、工具の刃先に砥粒が密に集まる効果が生じ、刃先が滑らかになるが、例えば、工具の刃先のR形状の精度制御は困難な場合がある。そこで、電界に応じて発生する力によって集まる砥粒を刃先の形状に合わせて配置制御する必要がある。すなわち従来の技術では仕上げパッドに対する工具の刃先の配置精度が低く、刃先の仕上げ量や形状を一定にすることが困難である。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、TA工具などの刃先を高精度、かつ均一に仕上げることができ、これによりTA工具の長寿命化を実現することができる切削工具仕上げ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る切削工具仕上げ装置は、工具把持具によって把持した切削工具の刃先を、仕上げパッドによって仕上げる切削工具仕上げ装置において、前記工具把持具を回転させることで、前記仕上げパッドに対する前記刃先の接触面を前記仕上げパッドに沿わせて変化させると共に、前記工具把持具の回転に応じて前記仕上げパッドと前記刃先との相対的な位置を変化させることで前記仕上げパッドに対する前記刃先の沈み込み量を一定にする、ことを特徴としている。
【0009】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、前記工具把持具に、前記切削工具のすくい面の反対側の面が接触する工具支持台と、前記切削工具を側面側から挟持する開閉可能な挟持片と、が備えられた、ことを特徴としている。
【0010】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、前記切削工具をすくい面側から支持する支持部材が備えられた、ことを特徴としている。
【0011】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、前記工具支持台の表面に溝が形成された、ことを特徴としている。
【0012】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、前記挟持片のうち、互いが隣接する方向に前記刃先から近い側が金属製であり、互いが隣接する方向に前記刃先から遠い側が絶縁物製である、ことを特徴としている。
【0013】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、前記工具把持具に挿入されるロッド部材が備えられ、前記挟持片に、開閉の支点となる軸部と、前記軸部より先端側に形成されて前記切削工具を側面から挟持する挟持先端部と、前記軸部より後端側に形成されて前記ロッド部材が接触する後端部とが形成され、前記後端部を互いに寄せる弾性部材が前記後端部に備えられ、前記後端部同士の間に前記ロッド部材が配置されることで、前記後端部同士が離されると共に前記挟持片が閉じられ、前記後端部同士の間の外側に前記ロッドが配置されることで、前記弾性部材の復元力により前記後端部同士が寄せられると共に前記挟持片が開く、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、前記仕上げパッドと前記切削工具との間に、誘電性の仕上げ材が供給されると共に電圧が印加され、電界によって前記刃先に前記仕上げ材が寄せられる、ことを特徴としている。
【0015】
本発明に係る切削工具仕上げ方法は、工具把持具によって把持された切削工具の刃先を、仕上げパッドで仕上げる切削工具仕上げ方法において、前記工具把持具を回転させることで、前記仕上げパッドに対する前記刃先の接触面を前記仕上げパッドに沿わせて変化させる手順と、前記工具把持具の回転に応じて前記仕上げパッドと前記刃先との相対的な位置を変化させることで前記仕上げパッドに対する前記刃先の沈み込み量を、例えば5〜500μmに一定にする手順と、を含む、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は上記した構成である。この構成により、刃先を高精度、かつ均一に仕上げることができ、これにより切削工具の長寿命化を実現することができる。また、刃先のアール形状を制御して任意に調節することができる。
【0017】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、工具把持具に、切削工具のすくい面の反対側の面が接触する工具支持台と、切削工具を側面側から挟持する開閉可能な挟持片とが備えられている。この構成により、開閉する挟持片の間隔が工具の形状に応じて調節される。したがって、様々な形状の工具を容易に挟持することができる。
【0018】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、切削工具をすくい面側から支持する支持部材が備えられている。この構成により、切削工具の脱落を防ぐことができる。
【0019】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、工具支持台の表面に溝が形成されている。この構成により、切削工具と接触する工具支持台の面積が適度に減少する。したがって、切削工具と工具支持台との密着状態が緩和され、切削工具を工具把持具から容易に取り外すことができる。
【0020】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、工具把持具に挿入されるロッド部材が備えられ、挟持片に、開閉の支点となる軸部と、軸部より先端側に形成されて切削工具を側面側から挟持する挟持先端部と、軸部より後端側に形成されてロッド部材が接触する後端部とが形成されている。この構成により、後端部同士の間に前記ロッド部材が配置されることで、後端部同士が離されると共に挟持片が閉じられる。したがって、切削工具を均一に把持し、また容易に着脱することができる。
【0021】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、仕上げパッドと切削工具との間に、誘電性の仕上げ材を誘電性の油内に分散させた、誘電性の仕上げ材の濃度は1.0から30wt%誘電性の仕上げ材が供給されると共に、0.5から10kV、周波数0.1から100Hz、波形が矩形波の電圧が印加され、電界によって刃先に仕上げ材が寄せられる。この構成により、切削工具の仕上げ面における仕上げ材の配置が制御される。すなわち、電界によって誘電性の仕上げ材が切削工具の刃先に寄せられる。したがって、切削工具を効率よく迅速に加工することができる。
【0022】
詳説すれば、工具把持具の回転に応じて発生する遠心力によって無電界時には、飛散する誘電性の仕上げ材は工具刃先に均一に引き寄せられず不均一の仕上げ加工となる。しかし、電界を供給することで、誘電性の仕上げ材は均一に寄せられ、均一仕上げが可能となる。また、電界を供給する効果としては、仕上げ加工の回転数を高速回転可能となり、前記仕上げ工具に与える加工圧を軽減させることが可能となる。これにより仕上げ後の工具刃先の加工ストレスは低減される。
【0023】
本発明に係る切削工具仕上げ装置は、挟持片のうち、互いが隣接する方向に刃先から近い側が金属製であり、互いが隣接する方向に刃先から遠い側が絶縁物製である。この構成により、刃先から近い側に電界が生じ、この電界によって誘電性の仕上げ材が切削工具の刃先に寄せられる。したがって、切削工具を効率よく迅速に加工することができる。また、刃先部分に電界が集中するような構造とすることで、刃先先端の表面を改質し、あるいは形状を変化させ、更なる仕上げの効率化、および刃先表面の強化を実現することができる。
【0024】
本発明に係る切削工具仕上げ方法は、工具把持具によって把持された切削工具の刃先を、仕上げパッドで仕上げる切削工具仕上げ方法において、工具把持具を回転させることで、仕上げパッドに対する刃先の接触面を仕上げパッドに沿わせて変化させる手順と、工具把持具の回転に応じて仕上げパッドと刃先との相対的な位置を変化させることで仕上げパッドに対する刃先の沈み込み量を一定にする手順と、誘電性の仕上げ材を供給する共に電圧を印加することで、電界によって前記刃先に前記仕上げ材を寄せる手順と、を含むものである。この構成により、刃先の先端の表面を改質し、あるいは形状を変化させることで、刃先を高精度、かつ均一に仕上げることができ、これにより長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る切削工具仕上げ装置を示し、(a)が平面図、(b)が正面図、(c)が側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る切削工具仕上げ装置の一部を拡大したものであり、(a)が切削工具が把持される前の状態の部分断面説明図、(b)が切削工具が把持された状態の部分断面説明図である。
図3】本発明の実施形態に係る切削工具仕上げ装置の工具把持具が示され、(a)が後端側から視した図、(b)(c)(d)が側面図、(e)が先端側から視した図である。
図4】本発明の実施形態に係る切削工具仕上げ装置の工具把持具の斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る切削工具仕上げ装置の側面A−A断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされる切削工具の状態を説明する説明概略図である。
図7】本発明の実施形態に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされる切削工具が示され、(a)が切削工具の斜視図、(b)が刃先の拡大図、(c)が刃先のB−B断面拡大図である。
図8】本発明の実施例1に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具の刃先を示す刃先拡大図である。
図9】本発明の実施例1に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具の刃先の状態を示す図である。
図10】本発明の実施例2に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具の刃先を示すグラフであり、(a)が表示倍率1000倍のグラフ、(b)が表示倍率2000倍のグラフである。
図11】本発明の実施例2に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具のすくい面側から視した刃先を示す刃先拡大図である。
図12】本発明の実施例2に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具のすくい面側から視した刃先を示す刃先拡大図である。
図13】本発明の実施例2に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具の逃げ面側から視した刃先を示す刃先拡大図である。
図14】本発明の実施例2に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具の切削抵抗値を示す図である。
図15】本発明の実施例2に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具の逃げ面摩耗量を示す図である。
図16】本発明の実施例3に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具の刃先を示すグラフであり、(a)が表示倍率1000倍のグラフ、(b)が表示倍率2000倍のグラフである。
図17】本発明の実施例3に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具のすくい面側から視した刃先を示す刃先拡大図である。
図18】本発明の実施例3に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具の逃げ面側から視した刃先を示す刃先拡大図である。
図19】本発明の実施例3に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具の刃先を示すグラフ(表示倍率1000倍)である。
図20】本発明の実施例3に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具のすくい面側から視した刃先を示す刃先拡大図である。
図21】本発明の実施例3に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされた切削工具の逃げ面側から視した刃先を示す刃先拡大図である。
図22】本発明の実施形態に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされる前の切削工具を示すグラフ(表示倍率1000倍)である。
図23】本発明の実施形態に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされる前の切削工具のすくい面側から視した刃先を示す刃先拡大図である。
図24】本発明の実施形態に係る切削工具仕上げ装置によって仕上げされる前の切削工具の逃げ面側から視した刃先を示す刃先拡大図である。
図25】一般的な切削加工の加工状態を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、「仕上げ」とは、切削工具の刃先の表面の特徴を発現させる工程をいい、例えば、研削、研磨、タンブリングなどを用いて、表面を平滑、改質、あるいは形状を変化させることをいう。
【0027】
図1は、本実施形態に係る切削工具仕上げ装置10の外観が示されている。図1に示されているとおり、切削工具仕上げ装置10は、仕上げパッド21が取り付けられた仕上げ定盤20、仕上げパッド21と対面して配置され、TA工具である切削工具としてのチップ1が把持される工具把持具30(図2および図3参照)、絶縁された状態で工具把持具30が取り付けられた駆動軸部50、この駆動軸部50および仕上げ定盤20を制御する制御部としてのNC制御盤(図示省略)、電界を発生させる電源部(図示省略)から構成されている。チップ1を仕上げる際は誘電性の仕上げ材107が用いられる(図6参照)。
【0028】
図2は、駆動軸部50の一部が拡大されて示されている。図2に示されているとおり、駆動軸部50は工具把持具30が本体部51の先端に取り付けられ、本体部51の内側に取り付けられたロッド部材52と、本体部51と並列して配置された支持部材53とが備えられている。
【0029】
ロッド部材52は先端が尖った棒状であり、先端が工具把持具30に挿入され、後端がエア式の挟持用シリンダー(図示省略)に取り付けられている。ロッド部材52は長手方向に前後(矢印104,105参照)に移動する。仕上げ定盤20に対して前進して近づく方向が前であり、後退して遠ざかる方向が後である。ロッド部材52の前後の移動は挟持用シリンダー(図示省略)によって実現され、工具把持具30の中を前方104へ前進、後方105へ後退する。挟持用シリンダーはロック用シリンダー(図示省略)が取り付けられ、動作が停止した状態がロック用シリンダーによって維持される。
【0030】
支持部材53は略L字状であり、この支持部材53を移動させる支持用シリンダー54が備えられている。支持部材53の先端は略ヘラ状の押さえ部55であり、支持部材53の先端から工具把持具30に至る長さに形成されている。支持部材53はロッド部材52と同様に前後に(矢印104,105参照)に移動する。支持部材53の前後の移動は支持用シリンダー54によって実現される。支持部材53はチップ1をすくい面3側から支持する。
【0031】
駆動軸部50は、駆動軸角度(矢印100参照)、Z軸(矢印101参照)、X軸(矢印102参照)、およびC軸(矢印103参照)がそれぞれ、NC制御盤による制御によって自在に変化する。図1および図2に示されているとおり、駆動軸角度100は正面視した駆動軸部50の傾き度合である。駆動軸角度100が変化することにより、仕上げパッド21に対するチップ1の角度(逃げ角108)が変化する。Z軸101は垂直方向である。Z軸101が変化することにより、仕上げパッド21対するチップ1の高さ方向の位置が変化する。X軸102は水平方向である。X軸102が変化することにより、仕上げパッド21の中心から円周に向けてチップ1に対する仕上げパッド21の接触面が変化する。C軸103は工具把持具30の回転軸である。C軸30が変化することにより、仕上げパッド21とのチップ1の接触面が仕上げパッドに沿って変化する。後に詳述する。
【0032】
なお、本実施形態において各軸101,102,103は駆動軸部50の位置が変化する際の軌道であるが、仕上げ定盤20の位置が変化する際の軌道であってもよい。すなわち、駆動軸部50と仕上げ定盤20との相対的な位置が変化する構成であればよく、例えば駆動軸部50が仕上げ定盤20に対して移動する場合や、仕上げ定盤20が駆動軸部50に対して移動する場合のいずれであってもよい。
【0033】
図3図4、および図5は、工具把持具30の外観が示されている。図3から図5に示されているとおり、工具把持具30は略筒状に形成された把持具本体31、この把持具本体31の一方の開口部に配置された挟持片37、この挟持片37の外周に取り付けられた弾性部材としてのバネ部材42から構成されている。
【0034】
略筒状の把持具本体31は、先端側の開口部である工具支持台32、後端側の開口部である着脱部34、工具支持台32と着脱部34との間の挟持片支持部33とから構成されている。工具支持台32は、挟持片支持部33に至って軸方向(C軸103方向)に複数の切欠き部35が形成されている。この切欠き部35は、挟持片37が取り付けられている。
【0035】
工具支持台32は平坦であり、切欠き部35によって複数に分割されている。分割された各工具支持台32の表面は溝部36が形成されている。工具支持台32は金属製であり、チップ1のすくい面3の反対側の面である裏面5が接触する(図2参照)。
【0036】
挟持片37は金属製であり、開閉の支点となる軸部38、この軸部38より先端側に形成されてチップ1を側面側から挟持する挟持先端部39と、軸部38より後端側に形成されてロッド部材52が接触する後端部40が形成されている。挟持先端部39は略平板状に形成されている。軸部38から後端部40までは、徐々に幅広に形成されている。挟持片37は、軸部38から後端部40が把持具本体31の切欠き部35に配置され、挟持先端部39が工具支持台32の側面に配置される。この状態で挟持片37は、軸部38が把持具本体31の挟持片支持部33と共に軸部材41によって貫通され、後端部40の外周に弾性部材としてのバネ部材42が取り付けられている。
【0037】
なお、本実施形態では工具支持台32の形状が略三角形であり、各辺に合わせて挟持片37が3個取り付けられているが、工具支持台32の形状が四角形その他の形状であってもよく、挟持片37の数が各辺の数に合わせて取り付けられていてもよい。
【0038】
工具把持具30の変形例として、工具支持台32が絶縁性であり、一方、挟持片37のうち、互いが隣接する方向に刃先から近い側が金属製であり、刃先から遠い側が絶縁物製であってもよい(図6参照)。詳説すれば、挟持片37が3個である場合、挟持片37は、チップ1のうち、刃先2の一部が形成された側面に接触する第一挟持片37aおよび第二挟持片37b、刃先2の背面側の側面に接触する第三挟持片37c、から構成されている。第一挟持片37aおよび第二挟持片37bは、後端部40および軸部38が金属製であるが、挟持先端部39のうち軸部38が連ねられた部分が金属製の金属先端部39aであり、他の部分が絶縁物製の絶縁先端部39bである。第三挟持片37cは全体(挟持先端部39、軸部38、および後端部40)が絶縁物製(絶縁先端部39b)である。隣接する第一挟持片37aおよび第二挟持片37bは、互いが隣接する方向に刃先から近い側が金属先端部39aであり、刃先から遠い側が絶縁先端部39bである。隣接する第一挟持片37aおよび第三挟持片37cは、互いが隣接する方向に刃先から遠い側が絶縁先端部39bである。同様に、隣接する第二挟持片37bおよび第三挟持片37cは、互いが隣接する方向に刃先から遠い側が絶縁先端部39bである。
【0039】
NC制御盤は、刃先2の形状に応じて工具把持具30を回転させることで、仕上げパッド21に対する刃先2の接触面を仕上げパッド21に沿わせてずらすと共に、工具把持具30の回転に応じて仕上げパッド21と刃先2との相対的な位置を変化させることで仕上げパッド21に対する刃先2の沈み込み量106を一定にするための制御を実現する。詳説すれば、仕上げされるチップ1のパラメータ、およびC軸103の値がNC制御盤に入力される。チップ1のパラメータは、例えば厚み6、ノーズR7、駆動軸角度100(逃げ角108)、ランド幅8などである(図7参照)。入力されたパラメータに基づいて、C軸103とZ軸101の関係が、仕上げパッド21への沈み込み量106が一定になるように算出される。なお、チップの形状は任意である。
【0040】
仕上げパッド21は例えばスエード、ポリウレタンなどである。仕上げ材107は、多結晶ダイヤモンドまたは化学処理などの形状加工処理が施された単結晶ダイヤモンドなどの誘電性の砥粒が仕上げ剤として用いられ、シリコンオイルなどの絶縁性の溶媒で、粘度が5cstから200cstの加工油が用いられる。砥粒径は約0.1μmから約100μmである。電源部は、周波数発振器および交流電源装置から構成されている。交流電圧は約500V以上であることが好ましく、また周波数は約1Hz以上、約30Hz以下であることが好ましい。
【0041】
以上のとおり、切削工具仕上げ装置10が構成されている。
【0042】
次に、切削工具仕上げ装置10の作用を図面に基づいて説明する。
【0043】
NC制御盤にチップ1のパラメータ(厚み6、ノーズR7、駆動軸角度(逃げ角108)100、ランド幅8)、およびC軸103の値を入力する。入力されたパラメータに基づいて、C軸103とZ軸101の関係が、仕上げパッド21への沈み込み量106が一定になるように算出される。入力された駆動軸角度100の値に基づいて駆動軸部50が傾斜する。駆動軸角度100は、約10度から60度であることが好ましい。
【0044】
図2に示されているとおり工具把持具10にチップ1を把持させる。その際、チップ1は刃先2を下に向けた状態で第一挟持片37aおよび第二挟持片37bの間に配置すると共に(図6参照)、裏面5を工具支持台32に接触させる。この状態で駆動軸部50を駆動させる。挟持用シリンダーが稼働してロッド部材52が前方104へ前進すると、挟持片37が閉じられてチップ1が側面側から挟持される。ロッド部材52はロック用シリンダーが稼働することで、動作が停止した状態が維持される。工具把持具30の動作について詳説すれば、工具把持具30の挟持片37は、ロッド部材52が前方104へ前進して挟持片37の後端部40同士の間に配置されることで、バネ部材42の弾性力に逆らって後端部40同士の間が押し広げられ、後端部40同士が軸部38を軸にして離されると共に挟持先端部39が寄せられる。すなわち、挟持片37が閉じられる。エア式の挟持用シリンダーにより、ロッド部材52が前進する程度が微調整されることで、チップ1を挟持する力は微調整されてチップ1に対して均一に緩やかに働く。
【0045】
チップ1が側面側から挟持された状態で支持部材53を駆動させる。支持用シリンダー54が稼働して挟持部材53が後方105へ後退し、押さえ部55が接触してチップ1がすくい面3側から支持される。
【0046】
図6は、図2の正面視右方側から視した図であり、仕上げパッド21に埋没したチップ1が示されている。図6に示されているとおり、仕上げ定盤20を駆動させて回転させ、X軸102、Z軸101、およびC軸103の値を変化させながらチップ1の刃先2を仕上げる。駆動軸部50の動作について詳説すれば、駆動軸部50がZ軸101において下降し、チップ1の刃先2が沈み込み量106分だけ仕上げパッド21に埋没する。工具把持具30がC軸103において回転することで、仕上げパッド21に対する刃先2の接触面をノーズR7の端から端まで仕上げパッド21に沿ってずれ、刃先2の全面が均一に仕上げされる。その際、Z軸101の値はC軸103の値が0.1度変化する度に算出されて、工具把持具30の回転に応じてZ軸101の値が変化し、仕上げパッド21に対する刃先2の沈み込み量106が一定となる。詳説すれば、刃先2は鋭角であり、ノーズR7のうち中央が最も突出しているため、端から中央まではチップ1がZ軸101を僅かに上昇しながら刃先2が仕上げされる。一方、中央から端まではチップ1がZ軸101を僅かに下降しながら刃先2が仕上げされる。なお、沈み込み量106は任意であるが、例えば5〜500μmである。
【0047】
一方、チップ1が仕上げパッド21に接触すると共に、駆動軸部50がX軸102を移動することで、チップ1に対する仕上げパッド21の接触面がずれる。すなわち、C軸103における工具把持具30が回転することでチップ1の刃先2がノーズR7の端から端まで仕上げパッド21に沿ってずれる間に、駆動軸部50がX軸102を移動することにより仕上げパッド21の中心から円周に向けてチップ1が移動する。
【0048】
刃先2が仕上げされる際、チップ1と仕上げパッド21との間に仕上げ材107が供給されると共に、電源部によって電圧が印加される。電圧によって仕上げパッド21とチップ1との間に電界が生じ、周波数に応じて砥粒が運動し、仕上げ材107がクーロン力の作用によってチップ1の刃先2に引き寄せられる。特に、第一挟持片37aおよび第二挟持片37bのうち、刃先2から近い側である金属先端部39aに電界が生じることから、仕上げ材107が刃先2に集中する。
【0049】
以上のとおり、切削工具仕上げ装置10によってチップ1の刃先2が仕上げされる。
【0050】
なお、工事把持具30からチップ1を取り外す場合は、挟持用シリンダーを後方105へ後退させて挟持片37を開く。工具把持具30の動作について詳説すれば、ロッド部材52が後方105へ後退して挟持片37の後端部40同士の間から離脱することで、バネ部材42の復元力によって後端部40同士が引き寄せされると共に軸部38を軸にして挟持先端部39が離される。すなわち、挟持片37が開く。チップ1は工具支持台32の溝部36を介して取り外される。
【0051】
次に、切削工具仕上げ装置10の効果を説明する。
【0052】
上記したとおり、切削工具仕上げ装置10および切削工具仕上げ方法によれば、NC制御盤に入力されたチップ1のパラメータにより、C軸103とZ軸101の関係が、仕上げパッド21への沈み込み量106が一定になるように算出される。駆動軸部50がZ軸101において下降し、チップ1の刃先2が沈み込み量106分だけ仕上げパッド21に埋没する。工具把持具30がC軸103において回転することで、仕上げパッド21に対する刃先2の接触面をノーズR7の端から端まで仕上げパッド21に沿ってずれ、刃先2の全面が均一に仕上げされる。その際、Z軸101の値はC軸103の値が0.1度変化する度に算出されて、工具把持具30の回転に応じてZ軸101の値が変化し、仕上げパッド21に対する刃先2の沈み込み量106が一定となる。
【0053】
したがって、湾曲した刃先2を高精度、かつ均一に仕上げることができる。また、刃先2のアール形状を制御して任意に調節することができる。これにより、使用に際しチップ1の逃げ面4の摩耗量を抑えることができ、長寿命化を実現することができる。詳説すれば、刃先2のアール形状のばらつきを抑え、そのアール形状を0.01から0.05Rに抑えることで、折損等の原因を軽減し120から150%程度の延命化を可能とする。また、刃先2のアール形状の寸法が、0.01から0.05Rまで調整可能であり、チップ1本来の特性である切れ味の確保や各種切削特性の要望に対応できる。すなわち、切削工具仕上げ装置10および切削工具仕上げ方法によって刃先2の研削砥石による微細加工痕の凸部が排除されることで、被削材と刃先2に残存していた微細凸部の当たり部が点から刃先面になることで、加工圧が分散し軽減することによって、チップ1の折損原因が抑制され、チップ1の本来の寿命が得られ、このことからチップ1のメンテナンス上の交換頻度は軽減することが期待され、顧客の生産能力向上が見込まれる。
【0054】
切削工具仕上げ装置10によれば、工具把持具30の挟持片37は、開閉の支点となる軸部38、この軸部38より先端側に形成されてチップ1を挟持する側面側から挟持先端部39と、軸部38より後端側に形成されてロッド部材52が接触する後端部40が形成されている。挟持先端部39は略平板状に形成されている。軸部38から後端部40までは、徐々に幅広に形成されている。挟持片37は、軸部38から後端部40が把持具本体31の切欠き部35に配置され、挟持先端部39が工具支持台32の側面に配置される。この状態で挟持片37は、軸部38が把持具本体31の挟持片支持部33と共に軸部材41によって貫通され、後端部40の外周にバネ部材42が取り付けられている。
【0055】
この構成により挟持片37は、ロッド部材52が前方104へ前進して挟持片37の後端部40同士の間に配置されることで、バネ部材42の弾性力に逆らって後端部40同士の間が押し広げられ、後端部40同士が軸部38を軸にして離されると共に挟持先端部39が寄せられる。すなわち、挟持片37が閉じられる。エア式の挟持用シリンダーにより、ロッド部材52が前進する程度が微調整されることで、チップ1を挟持する力は微調整されてチップ1に対して均一に緩やかに働き、開閉する挟持片37の間隔がチップ1の形状に応じて調節される。工事把持具30からチップ1を取り外す場合は、ロッド部材52が後方105へ後退して挟持片37の後端部40同士の間から離脱することで、バネ部材42の復元力によって後端部40同士が引き寄せされると共に軸部38を軸にして挟持先端部39が離される。すなわち、挟持片37が開く。チップ1は工具支持台32の溝部36を介して取り外される。
【0056】
したがって、様々な形状のチップを容易に挟持し、かつ均一に把持することができ、また容易に着脱することができる。また、エア式の挟持用シリンダーにより、ロッド部材52が前進する程度が微調整されることで、チップ1を挟持する力は微調整されてチップ1に対して均一に緩やかに働くため、逃げ面4が鋭いチップを挟持する場合であっても、チップが先端挟持部39から滑って脱落することが抑止される。
【0057】
切削工具仕上げ装置10によれば、支持部材53は略L字状であり、先端が略ヘラ状の押さえ部55である。押さえ部55は支持部材53の先端から工具把持具30に至る長さに形成されている。この構成により、支持部材53は前後に(矢印104,105参照)に移動し、後方105へ後退することで押さえ部55がチップ1をすくい面3側から支持する。したがって、チップ1の脱落を防ぐことができる。
【0058】
切削工具仕上げ装置10によれば、工具支持台32の表面は溝36が形成されている。この構成により、チップ1と接触する工具支持台32の面積が適度に減少する。したがって、チップ1と工具支持台32との密着状態が緩和され、チップ1を工具把持具30から容易に取り外すことができる。
【0059】
切削工具仕上げ装置10によれば、刃先2が仕上げされる際、チップ1と仕上げパッド21との間に仕上げ材107が供給されると共に、電源部によって電圧が印加され、電圧によって仕上げパッド21とチップ1との間に電界が生じ、仕上げ材107がクーロン力の作用によってチップ1の刃先2に引き寄せられる。この構成により、チップ1の仕上げ面における仕上げ材107の配置が制御される。すなわち、電界によって誘電性の仕上げ材107がチップ1の刃先2に引き寄せられる。したがって、チップ1を効率よく迅速に加工することができる。
【0060】
切削工具仕上げ装置10によれば、挟持片37は、チップ1のうち、刃先2の一部が形成された側面に接触する第一挟持片37aおよび第二挟持片37b、刃先2の背面側の側面に接触する第三挟持片37c、から構成されている。第一挟持片37aおよび第二挟持片37bは、後端部40および軸部38が金属製であるが、挟持先端部39のうち軸部38が連ねられた部分が金属製の金属先端部39aであり、他の部分が絶縁物製の絶縁先端部39bである。この構成により、刃先2から近い側である金属先端部39aに電界が生じ、この電界によって誘電性の仕上げ材107がチップ1の刃先2に寄せられる。したがって、チップ1を効率よく迅速に加工することができる。また、刃先2への電界集中度を安定的に高めることができ、刃先2の加工の高効率化させ、刃先2をより強固な表面へと変化させることができる。
【0061】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0062】
実施例で用いたチップ1は、超硬工具あるいはCBN(立方晶窒化ホウ素)(両者とも住友電工ハードメタル社製、TNMA160408−BN250)である。仕上げ定盤20は回転数が20から200rpm、仕上げパッド21がポリウレタン製である。仕上げ定盤20の回転数は、電界によって誘電性の仕上げ材107がチップ1の刃先2に引き寄せられる効果があるため、高速回転でも仕上げが可能である。仕上げ材107は砥粒平均径が1μmから20μm、砥粒濃度が1から30wt%である。印加電圧は交流電圧が0.5から10kVであり、周波数が0.5から100Hzである。また、研磨される被削材が良電気伝導性素材であると、加工屑が仕上げ工具刃先に取りつく可能性があるので、印加電界は与える時間と与えない時間を設け、印加電界を与えるDuty比を10から50%で調整する。電界を与えることで、砥粒に電子が供給され、工具刃先と接触することで、電子が供給され、工具刃先部材のボンディングフォースが弱まり仕上げが容易になるとともに、均一な面が得られることで、接触抵抗も低下し、工具折損も抑制される。また,電界の効果で刃先表面は、工具寿命が向上する強固な表面に変化していると考えられる。
【0063】
以下の各実施例によれば、各図のとおり湾曲した刃先2を高精度、かつ刃先2の全面を均一に仕上げることができた。また、刃先2のアール形状を制御して任意に調節することができた。これにより、切削に際しチップ1の逃げ面4の摩耗量を抑えることができ、長寿命化を実現することができた。考察すれば、切削の際の摩耗圧力が分散化、均一化され、また微小なクラックによる刃先の微細割れが軽減されるためであると考えられる。
【0064】
<実施例1>
実施例1は、チップ1が超硬工具であり、沈み込み量106が50μm、駆動軸角度100が35度、C軸103が0度から120度、加工回数(C軸103の往復回数)が3回である。印加電圧は1.5、4kV、周波数は8Hzである。仕上げされた刃先の状態を光学顕微鏡で観察した結果、電圧を印加し,仕上げ材107を引き付けて仕上げたチップ1で、仕上げ量が大きくなった。また、電圧が高い方が、仕上げ量(仕上げ幅)が大きく、高能率に仕上げが可能であった(図8図9)。
【0065】
<実施例2>
実施例2は、チップ1がCBN工具であり、沈み込み量106が100μm、駆動軸角度100が35度、C軸103が0度から120度、加工回数(C軸103の往復回数)が3回である。仕上げされた刃先の状態を光学顕微鏡(表示倍率1000倍、2000倍)で観察した結果、刃先はR=14μmから20μmであった(図10図11図12および図13参照)。また、図14はチップ1を使ったときの切削抵抗値を仕上げなしのチップと比較したものである。仕上げたチップ1の方が、切削抵抗値が小さい。また、チップの摩耗量(逃げ面)を、チップ1を使ったときの切削抵抗値を仕上げなしのチップと比較した結果を図15に示す。摩耗量は仕上げた方が小さい。
【0066】
<実施例3>
実施例3は、チップ1がCBN工具であり、沈み込み量106が100μm、駆動軸角度100が35度、C軸103が0度から120度、加工回数(C軸103の往復回数)が6回である。仕上げされた刃先の状態を光学顕微鏡(表示倍率1000倍、2000倍)で観察した結果、刃先はR=31μmであった(図16図17、および図18参照)。
【0067】
<実施例4>
実施例3は、チップ1がCBN工具であり、沈み込み量106が50μm、駆動軸角度100が54.5度、C軸103が0度から120度、加工回数(C軸103の往復回数)が35回である。仕上げされた刃先の状態を光学顕微鏡(表示倍率1000倍)で観察した結果、刃先はR=111μmであった(図19図20および図21参照)。
【0068】
<比較例>
比較例のチップは仕上げされる前の状態であり、刃先はネガランド角が略25度、ネガランド幅が略0.13mm、R=5μmである(図22図23および図24参照)。
【0069】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 チップ(切削工具)
2 刃先
3 すくい面
4 逃げ面
5 裏面
6 厚み
7 ノーズR
8 ランド幅
9 ランド角
10 切削工具仕上げ装置
20 仕上げ定盤
21 仕上げパッド
30 工具把持具
31 把持具本体
32 工具支持台
33 挟持片支持部
34 着脱部
35 切欠き部
36 溝部
37 挟持片
37a 第一挟持片
37b 第二挟持片
37c 第三挟持片
38 軸部
39 挟持先端部
39a 金属先端部
39b 絶縁先端部
40 後端部
41 軸部材
42 バネ部材(弾性部材)
50 駆動軸部
51 本体部
52 ロッド部材
53 支持部材
54 支持用シリンダー
55 押さえ部
100 駆動軸角度
101 Z軸
102 X軸
103 C軸
104 前方
105 後方
106 沈み込み量
107 仕上げ材
108 逃げ角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25