特許第6244574号(P6244574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244574連続光障害を発生する植物に対する植物栽培方法及び植物栽培装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244574
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】連続光障害を発生する植物に対する植物栽培方法及び植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   A01G7/00 601A
   A01G7/00 601C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-46986(P2014-46986)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-167544(P2015-167544A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】591060980
【氏名又は名称】岡山県
(74)【代理人】
【識別番号】100113181
【弁理士】
【氏名又は名称】中務 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180600
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 弘爾
(72)【発明者】
【氏名】田村 勝徳
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−158262(JP,A)
【文献】 特開2005−151850(JP,A)
【文献】 特開平11−196671(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0162147(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0302004(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 9/00
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続光障害を発生する植物に対して24時間を1周期とする概日リズムを与える植物栽培方法であって、
前記概日リズムが、前記植物に対して主光源による連続光を24時間照射しながら更に青色光源からなる補助光源による光を1〜23時間連続照射し、その後前記補助光源による光を照射しないものであることを特徴とする植物栽培方法。
【請求項2】
前記補助光源による光が、400〜490nmの範囲に発光ピーク波長を有する光である請求項1記載の植物栽培方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の植物栽培方法に用いられる植物栽培装置であって、
連続光障害を発生する植物に対して連続光を照射する主光源と、
24時間を1周期として、1〜23時間連続照射しその後照射しないように制御された青色光源からなる補助光源とを備えたことを特徴とする植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続光障害を発生する植物に対する植物栽培方法及び植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続光栽培により、植物の成長促進、新鮮重の増大、果実成熟の促進、糖度の増大等の効果が得られることが知られているが、連続光を与え続けることにより、連続光障害と呼ばれる生理障害が発生する植物が知られている。ここで、連続光障害とは、生育不良(重量低下)だけでなく、デンプンの過剰蓄積、葉の黄変(クロロシス)、細胞死(ネクロシス)、活性酸素種の発生、光合成速度の低下等の生理障害のことをいう。
【0003】
特許文献1には、人工的に制御された明暗サイクル下で栽培光を照射して植物を栽培するための栽培光制御方法であって、前記明暗サイクルは、栽培光が照射される明期と、当該明期における光量よりも少ない光量が照射されるか又は光量のない時期を有し、前記明暗サイクルの周期は、前記植物が有する固有のフリーラン周期と異なる周期であり、前記時期が光合成活性の低い時間帯に設定されるか又は前記明期が光合成活性の高い時間帯に設定された栽培光制御方法について記載されている。これによれば、光合成活性の低い時間帯に時期が設定されることにより、同じ照射時間で栽培した場合に比べて光合成の総量が増大し、これによって出荷可能な大きさになるまでの栽培期間が短くなり、投下エネルギー当たりのコストパフォーマンスをあげることができるとされている。
【0004】
一方、特許文献2には、植物を収容する栽培用の容器と、前記容器に設けられた複数の発光ダイオード素子からなる光源とを備え、栽培する植物の種類及び栽培時期に応じて前記光源の光照射時間を変化させる植物栽培装置が記載されている。これによれば、園芸植物をその鑑賞的価値を損なうことなく、かつ設置場所を選ばずに簡単に栽培することができるとされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2のいずれにも、連続光障害を発生する植物に対して主光源として白色光源による連続光を照射しながら、該主光源とは別の補助光源を照射することによって概日リズムを与えることについての記載はなく、植物栽培方法の更なる改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2012/102372
【特許文献2】特開平10−178899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、連続光障害を発生する植物に対して連続光を与え続けても、連続光障害を発生することなく、生産量を増大させることのできる植物栽培方法及び植物栽培装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、連続光障害を発生する植物に対して24時間を1周期とする概日リズムを与える植物栽培方法であって、前記概日リズムが、前記植物に対して主光源による連続光を24時間照射しながら更に青色光源からなる補助光源による光を1〜23時間連続照射し、その後前記補助光源による光を照射しないものであることを特徴とする植物栽培方法を提供することによって解決される。
【0009】
このとき、前記補助光源による光が、400〜490nmの範囲に発光ピーク波長を有する光であることが好適である。
【0010】
また、上記課題は、前記植物栽培方法に用いられる植物栽培装置であって、連続光障害を発生する植物に対して連続光を照射する主光源と、24時間を1周期として、1〜23時間連続照射しその後照射しないように制御された青色光源からなる補助光源とを備えたことを特徴とする植物栽培装置を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、連続光障害を発生する植物に対して連続光を与え続けても、連続光障害を発生することなく、生産量を増大させることのできる植物栽培方法及び植物栽培装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】栽培日数(週)とトマトの地上部生重量との関係を示したグラフである。
図2】実施例1で得られたトマトの写真である(スケールバー:50mm)。
図3】比較例1で得られたトマトの写真である(スケールバー:50mm)。
図4】実施例1と比較例1における葉内デンプンの蓄積を示した写真である。
図5】実施例2と比較例1における葉内デンプンの蓄積を示した写真である。
図6】実施例1と比較例1における活性酸素種の蓄積を示した写真である。
図7】活性酸素量の定量結果を示したグラフである。
図8】比較例2で得られたトマトの写真である(スケールバー:50mm)。
図9】比較例3で得られたトマトの写真である(スケールバー:50mm)。
図10】実施例3と比較例4における西洋ホウレンソウの写真、及び葉内デンプンの蓄積を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、連続光障害を発生する植物に対して24時間を1周期とする概日リズムを与える植物栽培方法であって、前記概日リズムが、前記植物に対して主光源による連続光を24時間照射しながら更に青色光源からなる補助光源による光を1〜23時間連続照射し、その後前記補助光源による光を照射しないものであることを特徴とする植物栽培方法である。本発明の植物栽培方法ように、連続光障害を発生する植物に対して24時間を1周期とする概日リズムを与えることにより、連続光障害を緩和することが可能となった。すなわち、連続光障害を発生する植物に対して主光源による連続光を24時間照射しながら更に青色光源からなる補助光源による光を1〜23時間連続照射し、その後前記補助光源による光を照射しないサイクルを1周期とすることにより、連続光を与え続けても連続光障害を発生することなく、生産量を増大させることが可能となった。後述する実施例と比較例との対比から明らかなように、主光源として白色光源による連続光のみを24時間照射した場合には、生育不良が観察されるとともに、葉内デンプンの蓄積及び活性酸素種の蓄積が観察された。これに対し、主光源として白色光源による連続光を24時間照射しながら更に青色光源からなる補助光源による光を1〜23時間連続照射し、その後前記補助光源による光を照射しないサイクルを1周期とする概日リズムを与えた場合、生産量が増大するとともに、葉内デンプンの蓄積及び活性酸素種の蓄積は観察されなかった。したがって、連続光障害を発生する植物に対して上記概日リズムを与える構成を採用する意義が大きい。
【0014】
本発明の植物栽培方法に用いられる連続光障害を発生する植物としては特に限定されず、トマト、ナス、ジャガイモ、タバコ等のナス科植物;カボチャ、キュウリ、メロン等のウリ科植物;ホウレンソウ、テーブルビート等のアカザ科植物;キャベツ、ナタネ、カリフラワー、ブロッコリー等のアブラナ科植物;タマネギ、アスパラガス等のユリ科植物;サツマイモ、アサガオ等のヒルガオ科植物;リンゴ、オウトウ、イチゴ、モモ等のバラ科植物;バジル、コリウス等のシソ科;ソバ等のタデ科植物;ネギ等のネギ科;インゲンマメ、ダイズ等のマメ科植物;オオムギ、イネ等のイネ科植物;ゴマ等のゴマ科植物などが挙げられる。中でも、本発明の植物栽培方法は、ナス科植物、ウリ科植物、アカザ科植物に対して好適に使用される。
【0015】
本発明で用いられる主光源としては特に限定されず、1つの光源であってもよいし、2種類以上の光源を組み合わせて使用してもよい。例えば、太陽光と人工光源とを組み合わせて使用しても構わない。主光源としては、太陽光、蛍光灯、メタハラなどを光源とする植物生育光を広く用いることができ、400nm〜700nmの範囲の植物の生育に有効な光質バランスを持つ光であれば特に限定されないが、白色光源であることが好ましく、中でも、白色蛍光灯及び/又は白色LEDが好適に使用される。本発明において、主光源による連続光の光量子束密度としては特に限定されないが、主光源として白色光源を用いる場合、50〜500μmol・m−2・s−1の範囲にあることが好ましい。白色光源による連続光の光量子束密度が50μmol・m−2・s−1未満の場合、植物の生育が悪くなるおそれがあり、70μmol・m−2・s−1以上であることがより好ましい。一方、白色光源による連続光の光量子束密度が500μmol・m−2・s−1を超える場合、植物の生育が悪くなるおそれがあり、300μmol・m−2・s−1以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明の植物栽培方法は、連続光障害を発生する植物に対して主光源による連続光を24時間照射しながら更に青色光源からなる補助光源による光を1〜23時間連続照射し、その後前記補助光源による光を照射しないといった概日リズムを与えることを特徴とする。本発明で用いられる青色光源からなる補助光源としては特に限定されない。補助光源による光が、400〜490nmの範囲に発光ピーク波長を有する光であることが好ましい。青色光源としては、青色LEDが好適に使用される。後述する実施例と比較例との対比から分かるように、青色光源の代わりに赤色光源(600〜700nmの範囲に発光ピーク波長を有する光)や近赤外光源(710〜750nmの範囲に発光ピーク波長を有する光)を使用すると、連続光障害を緩和することができなかった。したがって、本発明のように、青色光源からなる補助光源による光を用いて概日リズムを与えることが重要であることが分かる。
【0017】
本発明における概日リズムは、24時間を1周期として、連続光障害を発生する植物に対して主光源による連続光を24時間照射しながら更に青色光源からなる補助光源による光を1〜23時間連続照射し、その後前記補助光源による光を照射しないものである。このような概日リズムを与えることにより、連続光障害を緩和することが可能となった。青色光源からなる補助光源による光を1〜23時間連続照射し、その後前記補助光源による光を照射しない概日リズムとは、例えば、青色光源からなる補助光源による光を16時間連続照射した場合には、24時間から16時間の照射時間を引いた残りの8時間は前記補助光源による光を照射しないサイクルを1周期とするものである。ここで、本発明者は、連続光障害を発生する植物に対して主光源として白色光源による連続光を24時間照射しながら、青色光源からなる補助光源による光を8時間照射し、その後前記補助光源による光を8時間照射せず、再度前記補助光源による光を8時間照射するといったサイクルで青色光源による光を照射すると、連続光障害の緩和が困難であることを確認している。したがって、青色光源からなる補助光源による光を一定時間連続照射した後は、再度前記補助光源による光を照射することなく、残りの時間は前記補助光源による光を照射しないサイクルを1周期とすることが重要である。
【0018】
本発明において、青色光源からなる補助光源による光の連続照射時間が1時間未満の場合、植物に概日リズムを与えることが困難となり、2時間以上であることが好ましく、4時間以上であることがより好ましく、6時間以上であることが更に好ましい。一方、青色光源からなる補助光源による光の連続照射時間が23時間を超える場合、植物に概日リズムを与えることが困難となり、22時間以下であることが好ましく、20時間以下であることがより好ましく、18時間以下であることが更に好ましい。
【0019】
本発明において、青色光源からなる補助光源による光の光量子束密度としては特に限定されないが、1〜100μmol・m−2・s−1の範囲にあることが好ましい。青色光源からなる補助光源による光の光量子束密度が1μmol・m−2・s−1未満の場合、概日リズムを与えることが困難となるおそれがあり、5μmol・m−2・s−1以上であることがより好ましい。一方、青色光源からなる補助光源による光の光量子束密度が100μmol・m−2・s−1を超える場合にも特段の問題はないが、栽培における費用対効果の観点から80μmol・m−2・s−1以下であることがより好ましい。
【0020】
本発明の植物栽培方法により、連続光障害を緩和することが可能となるため、植物栽培に必要な総光量が不足しがちな人工光型植物工場において好適に採用される。すなわち、上記説明した植物栽培方法に用いられる植物栽培装置であって、連続光障害を発生する植物に対して連続光を照射する主光源と、24時間を1周期として、1〜23時間連続照射しその後照射しないように制御された青色光源からなる補助光源とを備えた植物栽培装置が本発明の好適な実施態様である。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0022】
実施例1
連続光感受性であるトマト品種(M82)の苗に対して、主光源として用いた白色蛍光灯による光を24時間照射(光量子束密度:100μmol・m−2・s−1)しながら、青色光源からなる補助光源として用いた青色LED(三洋電機(株)製/MIL−B18(A)/ピーク波長:470nm)による光を16時間連続照射(光量子束密度:30μmol・m−2・s−1)し、その後8時間青色LEDによる光を照射しないサイクルを1周期として、25℃で栽培を行った。7周期(発芽1週間後)、14周期(発芽2週間後)、21周期(発芽3週間後)、28周期(発芽4週間後)、35周期(発芽5週間後)ごとに、5個体のトマトの地上部生重量を計測して平均値を算出した。得られた結果を図1に示す。また、42周期(発芽6週間後)栽培して得られたトマトの写真を図2に示す。後述の比較例1と異なり、白色の連続光照射に加え、青色光を16時間明期、8時間暗期の条件で付加的に照射することで、植物は継続的に成長し、連続光障害が緩和されることが分かった。なお、青色光源として異なる青色LED((株)日本医化器械製作所/NK 3in1/ピーク波長:445nm)を用いた場合にも同様の効果が得られた。
【0023】
実施例2
実施例1において、主光源として用いた白色蛍光灯による連続光を24時間照射しながら、青色光源からなる補助光源として用いた青色LEDによる光を8時間連続照射し、その後16時間青色LEDによる光を照射しないサイクルを1周期とした以外は実施例1と同様にして、トマトの栽培を行った。7周期(発芽1週間後)、14周期(発芽2週間後)、21周期(発芽3週間後)、28周期(発芽4週間後)、35周期(発芽5週間後)ごとに、5個体のトマトの地上部生重量を計測して平均値を算出した。トマトの地上部生重量を計測して得られた結果を図1に示す。実施例1と同様に、白色蛍光灯による連続光照射に加え、青色光を8時間明期、16時間暗期の条件で付加的に照射することで、植物は継続的に成長し、連続光障害が緩和されることが分かった。
【0024】
比較例1
実施例1において、青色光源からなる補助光源を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、主光源として用いた白色蛍光灯による連続光のみを24時間照射してトマトの栽培を行った。実施例1と同様に、発芽1週間後、発芽2週間後、発芽3週間後、発芽4週間後、発芽5週間後に、5個体のトマトの地上部生重量を計測して平均値を算出した。トマトの地上部生重量を計測して得られた結果を図1に示す。また、播種6週間後に得られたトマトの写真を図3に示す。主光源として白色蛍光灯による連続光のみを照射した場合では、図3のように、植物は著しい連続光障害を呈した。すなわち、葉は黄変し、ネクロシスを起こし成長が抑制され、立ち枯れの様相を呈した。
【0025】
(葉内デンプンの蓄積と活性酸素種の蓄積の比較)
実施例1、実施例2及び比較例1で得られたトマトの葉をそれぞれ用い、葉内デンプンの蓄積と活性酸素種の蓄積を、それぞれヨウ素デンプン反応を用いた染色(ルゴール染色)とDAB(ジアミノベンジジンテトラハイドロクロライド)染色法を用いて観察した。ヨウ素デンプン反応は、慣例に従って行った。すなわち、栽培したトマトより葉を採取し、湯せんした70%エタノールでクロロフィルを脱色後、ヨウ素液(ヨウ素ヨウ化カリウム溶液)により葉内デンプンを検出した。また、活性酸素種の発生量の比較として、葉内ペルオキシダーゼのDAB染色を用いた。採取した葉にジアミノベンジジンテトラハイドロクロライド溶液を処理して葉内ペルオキシダーゼと反応・発色させ、湯せんした70%エタノールでクロロフィルを溶出させた後に観察を行った。また、活性酸素量の定量には、分光光度計で硫酸チタニウムの410nm吸収を測定し、計算を行った。葉内デンプンの蓄積を示した写真を図4及び5に、活性酸素種の蓄積を示した写真を図6に、活性酸素量の定量結果を図7に示す。
【0026】
図4及び図5に示すように、補助光源による青色光照射を行わなかった場合(LL)では、連続光障害の特徴であるデンプンの蓄積が観察されたが、16時間明期8時間暗期又は、8時間明期16時間暗期の補助光源による青色光照射を行った場合(LL+B−LED)には、デンプンの蓄積は観察されなかった。また、図6及び図7に示すように、補助光源による青色光照射を行わなかった場合(LL)では、連続光障害の特徴である活性酸素種の過剰発生が観察されたが、16時間明期8時間暗期の補助光源による青色光照射を行った場合(CL+B−LED)には、活性酸素種の過剰発生は殆ど観察されなかった。
【0027】
比較例2
実施例1において、青色光源からなる補助光源として用いた青色LEDの代わりに、赤色光源として赤色LED(ピーク波長:660nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、トマトの栽培を行った。42周期(発芽6週間後)栽培して得られたトマトの写真を図8に示す。補助光源として赤色LEDを用いたときには、図8に示されるように連続光障害の緩和は見られなかった。
【0028】
比較例3
実施例1において、青色光源からなる補助光源として用いた青色LEDの代わりに、近赤外光源として近赤外LED(ピーク波長:730nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、トマトの栽培を行った。42周期(発芽6週間後)栽培して得られたトマトの写真を図9に示す。補助光源として近赤外LEDを用いたときには、図9に示されるように連続光障害の緩和は見られなかった。
【0029】
実施例3
ホウレンソウ(品種:西洋ホウレンソウ)の苗に対して、主光源として用いた白色蛍光灯による連続光を24時間照射(光量子束密度:100μmol・m−2・s−1)しながら、青色光源からなる補助光源として用いた青色LED(三洋電機(株)製/MIL−B18(A)/ピーク波長:470nm)による光を8時間連続照射(光量子束密度:30μmol・m−2・s−1)し、その後16時間青色LEDによる光を照射しないサイクルを1周期として、25℃で栽培を行った。また、実施例1に記した方法と同様にして、葉内デンプンの蓄積を観察した。28周期(発芽4週間後)後の西洋ホウレンソウの写真と葉内デンプンの蓄積を示した写真を図10に示す。
【0030】
比較例4
実施例3において、青色光源からなる補助光源(青色LED)を使用しなかった以外は実施例3と同様にして、主光源として用いた白色蛍光灯による連続光のみを24時間照射して西洋ホウレンソウの栽培を行った。実施例1と同様に、葉内デンプンの蓄積を観察した。28周期(発芽4週間後)後の西洋ホウレンソウの写真と葉内デンプンの蓄積を示した写真を図10に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10