【0015】
本発明で用いられる主光源としては特に限定されず、1つの光源であってもよいし、2種類以上の光源を組み合わせて使用してもよい。例えば、太陽光と人工光源とを組み合わせて使用しても構わない。主光源としては、太陽光、蛍光灯、メタハラなどを光源とする植物生育光を広く用いることができ、400nm〜700nmの範囲の植物の生育に有効な光質バランスを持つ光であれば特に限定されないが、白色光源であることが好ましく、中でも、白色蛍光灯及び/又は白色LEDが好適に使用される。本発明において、主光源による連続光の光量子束密度としては特に限定されないが、主光源として白色光源を用いる場合、50〜500μmol・m
−2・s
−1の範囲にあることが好ましい。白色光源による連続光の光量子束密度が50μmol・m
−2・s
−1未満の場合、植物の生育が悪くなるおそれがあり、70μmol・m
−2・s
−1以上であることがより好ましい。一方、白色光源による連続光の光量子束密度が500μmol・m
−2・s
−1を超える場合、植物の生育が悪くなるおそれがあり、300μmol・m
−2・s
−1以下であることがより好ましい。
【0019】
本発明において、青色光源からなる補助光源による光の光量子束密度としては特に限定されないが、1〜100μmol・m
−2・s
−1の範囲にあることが好ましい。青色光源からなる補助光源による光の光量子束密度が1μmol・m
−2・s
−1未満の場合、概日リズムを与えることが困難となるおそれがあり、5μmol・m
−2・s
−1以上であることがより好ましい。一方、青色光源からなる補助光源による光の光量子束密度が100μmol・m
−2・s
−1を超える場合にも特段の問題はないが、栽培における費用対効果の観点から80μmol・m
−2・s
−1以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0022】
実施例1
連続光感受性であるトマト品種(M82)の苗に対して、主光源として用いた白色蛍光灯による光を24時間照射(光量子束密度:100μmol・m
−2・s
−1)しながら、青色光源からなる補助光源として用いた青色LED(三洋電機(株)製/MIL−B18(A)/ピーク波長:470nm)による光を16時間連続照射(光量子束密度:30μmol・m
−2・s
−1)し、その後8時間青色LEDによる光を照射しないサイクルを1周期として、25℃で栽培を行った。7周期(発芽1週間後)、14周期(発芽2週間後)、21周期(発芽3週間後)、28周期(発芽4週間後)、35周期(発芽5週間後)ごとに、5個体のトマトの地上部生重量を計測して平均値を算出した。得られた結果を
図1に示す。また、42周期(発芽6週間後)栽培して得られたトマトの写真を
図2に示す。後述の比較例1と異なり、白色の連続光照射に加え、青色光を16時間明期、8時間暗期の条件で付加的に照射することで、植物は継続的に成長し、連続光障害が緩和されることが分かった。なお、青色光源として異なる青色LED((株)日本医化器械製作所/NK 3in1/ピーク波長:445nm)を用いた場合にも同様の効果が得られた。
【0023】
実施例2
実施例1において、主光源として用いた白色蛍光灯による連続光を24時間照射しながら、青色光源からなる補助光源として用いた青色LEDによる光を8時間連続照射し、その後16時間青色LEDによる光を照射しないサイクルを1周期とした以外は実施例1と同様にして、トマトの栽培を行った。7周期(発芽1週間後)、14周期(発芽2週間後)、21周期(発芽3週間後)、28周期(発芽4週間後)、35周期(発芽5週間後)ごとに、5個体のトマトの地上部生重量を計測して平均値を算出した。トマトの地上部生重量を計測して得られた結果を
図1に示す。実施例1と同様に、白色蛍光灯による連続光照射に加え、青色光を8時間明期、16時間暗期の条件で付加的に照射することで、植物は継続的に成長し、連続光障害が緩和されることが分かった。
【0024】
比較例1
実施例1において、青色光源からなる補助光源を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、主光源として用いた白色蛍光灯による連続光のみを24時間照射してトマトの栽培を行った。実施例1と同様に、発芽1週間後、発芽2週間後、発芽3週間後、発芽4週間後、発芽5週間後に、5個体のトマトの地上部生重量を計測して平均値を算出した。トマトの地上部生重量を計測して得られた結果を
図1に示す。また、播種6週間後に得られたトマトの写真を
図3に示す。主光源として白色蛍光灯による連続光のみを照射した場合では、
図3のように、植物は著しい連続光障害を呈した。すなわち、葉は黄変し、ネクロシスを起こし成長が抑制され、立ち枯れの様相を呈した。
【0025】
(葉内デンプンの蓄積と活性酸素種の蓄積の比較)
実施例1、実施例2及び比較例1で得られたトマトの葉をそれぞれ用い、葉内デンプンの蓄積と活性酸素種の蓄積を、それぞれヨウ素デンプン反応を用いた染色(ルゴール染色)とDAB(ジアミノベンジジンテトラハイドロクロライド)染色法を用いて観察した。ヨウ素デンプン反応は、慣例に従って行った。すなわち、栽培したトマトより葉を採取し、湯せんした70%エタノールでクロロフィルを脱色後、ヨウ素液(ヨウ素ヨウ化カリウム溶液)により葉内デンプンを検出した。また、活性酸素種の発生量の比較として、葉内ペルオキシダーゼのDAB染色を用いた。採取した葉にジアミノベンジジンテトラハイドロクロライド溶液を処理して葉内ペルオキシダーゼと反応・発色させ、湯せんした70%エタノールでクロロフィルを溶出させた後に観察を行った。また、活性酸素量の定量には、分光光度計で硫酸チタニウムの410nm吸収を測定し、計算を行った。葉内デンプンの蓄積を示した写真を
図4及び5に、活性酸素種の蓄積を示した写真を
図6に、活性酸素量の定量結果を
図7に示す。
【0026】
図4及び
図5に示すように、補助光源による青色光照射を行わなかった場合(LL)では、連続光障害の特徴であるデンプンの蓄積が観察されたが、16時間明期8時間暗期又は、8時間明期16時間暗期の補助光源による青色光照射を行った場合(LL+B−LED)には、デンプンの蓄積は観察されなかった。また、
図6及び
図7に示すように、補助光源による青色光照射を行わなかった場合(LL)では、連続光障害の特徴である活性酸素種の過剰発生が観察されたが、16時間明期8時間暗期の補助光源による青色光照射を行った場合(CL+B−LED)には、活性酸素種の過剰発生は殆ど観察されなかった。
【0027】
比較例2
実施例1において、青色光源からなる補助光源として用いた青色LEDの代わりに、赤色光源として赤色LED(ピーク波長:660nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、トマトの栽培を行った。42周期(発芽6週間後)栽培して得られたトマトの写真を
図8に示す。補助光源として赤色LEDを用いたときには、
図8に示されるように連続光障害の緩和は見られなかった。
【0028】
比較例3
実施例1において、青色光源からなる補助光源として用いた青色LEDの代わりに、近赤外光源として近赤外LED(ピーク波長:730nm)を用いた以外は実施例1と同様にして、トマトの栽培を行った。42周期(発芽6週間後)栽培して得られたトマトの写真を
図9に示す。補助光源として近赤外LEDを用いたときには、
図9に示されるように連続光障害の緩和は見られなかった。
【0029】
実施例3
ホウレンソウ(品種:西洋ホウレンソウ)の苗に対して、主光源として用いた白色蛍光灯による連続光を24時間照射(光量子束密度:100μmol・m
−2・s
−1)しながら、青色光源からなる補助光源として用いた青色LED(三洋電機(株)製/MIL−B18(A)/ピーク波長:470nm)による光を8時間連続照射(光量子束密度:30μmol・m
−2・s
−1)し、その後16時間青色LEDによる光を照射しないサイクルを1周期として、25℃で栽培を行った。また、実施例1に記した方法と同様にして、葉内デンプンの蓄積を観察した。28周期(発芽4週間後)後の西洋ホウレンソウの写真と葉内デンプンの蓄積を示した写真を
図10に示す。
【0030】
比較例4
実施例3において、青色光源からなる補助光源(青色LED)を使用しなかった以外は実施例3と同様にして、主光源として用いた白色蛍光灯による連続光のみを24時間照射して西洋ホウレンソウの栽培を行った。実施例1と同様に、葉内デンプンの蓄積を観察した。28周期(発芽4週間後)後の西洋ホウレンソウの写真と葉内デンプンの蓄積を示した写真を
図10に示す。