特許第6244578号(P6244578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244578
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】水溶性ローヤルゼリー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 21/20 20160101AFI20171204BHJP
【FI】
   A23L21/20
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-75577(P2012-75577)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-201996(P2013-201996A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504127706
【氏名又は名称】太邦株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511302471
【氏名又は名称】株式会社医食同源ドットコム
(74)【代理人】
【識別番号】100102912
【弁理士】
【氏名又は名称】野上 敦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 稔
(72)【発明者】
【氏名】隅田 始
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−123119(JP,A)
【文献】 特開平08−104645(JP,A)
【文献】 特開2008−056645(JP,A)
【文献】 特表2002−509855(JP,A)
【文献】 特開平03−151838(JP,A)
【文献】 特開2003−334003(JP,A)
【文献】 特開平08−059499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 21/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ローヤルゼリーに、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のエンド型酸性プロテアーゼ及びバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)由来のエンド型中性プロテアーゼを含む至適pH値の異なる少なくとも2種のエンド型プロテアーゼと、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)由来のα−アミラーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のセルラーゼ又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来のペクチナーゼのうちの少なくとも1種と、を反応させる工程を有することを特徴とする、水溶性ローヤルゼリーの製造方法。
【請求項2】
前記反応させる工程で得られた反応液を固液分離する工程と、前記固液分離する工程で得られた濾液を乾燥粉末化させる工程と、を更に有する、請求項に記載の水溶性ローヤルゼリーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明で安定性に優れるとともに10−HDAを高含有した水溶性ローヤルゼリーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ローヤルゼリー(Royal jelly)は、雌の働き蜂の喉頭腺から分泌される物質で、女王蜂となる幼虫や成虫となった女王蜂、更には若齢幼虫の働き蜂に給餌される食物である。ローヤルゼリーは、タンパク質、炭水化物、脂質の3大栄養素をはじめ、人の健康に不可欠なさまざまな必須アミノ酸、ミネラル、ビタミン類等の50種類以上もの栄養素をバランス良く含むため、完全栄養食品ともいわれている。また、ローヤルゼリーだけに含まれ、その品質基準ともなっている10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10-Hydroxy-25-decenoic Acid、10−HDA)は、コレステロール低下、抗炎症、外傷治癒、抗菌作用等の活性を示すことが知られている。このため、ローヤルゼリーは、健康食品ばかりでなく、医薬品や化粧品等の成分として広範な利用が期待されている。
【0003】
しかし、生ローヤルゼリーは、乳白色を帯びた強い酸味のある粘稠物質であり、水に難溶性の原料であるため製剤化が難しいという問題があり、これまで様々な方法による水溶化、製剤化が試みられてきた。例えば、特許文献1には、ローヤルゼリーに水を加えて遠心分離し、得られる上清を限外濾過又はゲル濾過して低分子物質を採取する方法が開示されている。また、特許文献2には、ローヤルゼリーに含まれるタンパク質を酸性プロテアーゼを用いて酵素分解して低分子化することが開示されており、更に、特許文献3にはアルカリプロテアーゼとSOD酵素、特許文献4にはプロテアーゼとカルボキシペプチダーゼ、及び特許文献5には基質に対する作用部位の異なる二種類以上のプロテアーゼを、それぞれ組み合わせて用いることにより、酵素の分解効率を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2004/021803号公報
【特許文献2】特開2003−334003号公報
【特許文献3】特開2006−42788号公報
【特許文献4】特開平3−151838号公報
【特許文献5】特開平5−123119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、ローヤルゼリーに水を加えて遠心分離した場合、活性成分の10−HDAは上清に存在するため限外濾過等で低分子タンパク質を除去することは実用的でなく、10−HDAの回収率も大幅に低下するという問題があった。また、特許文献2のように、ローヤルゼリーに含まれるタンパク質を酸性プロテアーゼにより酵素分解して低分子化しようとする場合、プロテアーゼのみではその特性上分解効率が極めて悪く、固液分離工程に多大な時間を要するうえに10−HDAの回収率も悪いので実用に堪えなかった。また、特許文献3のように、アルカリプロテアーゼを利用した場合、一旦pHを約10に調整して酵素処理した後更に酸を用いてpHを5付近に調整する必要があり、かかるpH調整により塩類が多量に発生し、ローヤルゼリー本来の味覚が失われて商品価値が低下するという問題があった。また、特許文献4のカルボキシペプチダーゼのようなエキソ型のプロテアーゼを用いる場合、タンパク質がアミノ酸単位まで分解されることによる苦味が発生し、ローヤルゼリー本来の風味を悪化させてしまうという問題があった。さらに、特許文献5のように、作用部位の異なる2種類以上のプロテアーゼを用いればタンパク質の分解効率は向上するが、ローヤルゼリー中に約20質量%も含まれる炭水化物が依然水溶化を妨害するため、透明な水溶性ローヤルゼリーを製造することは未だ困難であった。
【0006】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、透明で安定性に優れた水溶性ローヤルゼリーを高い生産効率で製造する方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、10−HDAを高含有した水溶性ローヤルゼリーを製造する方法を提供することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、原料ローヤルゼリー本来の味覚が損なわれることなく高い商品価値を有する水溶性ローヤルゼリーを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0010】
(1)即ち、本発明は、原料ローヤルゼリーに、至適pH値の異なる少なくとも2種のエンド型プロテアーゼと、アミラーゼ、セルラーゼ又はペクチナーゼのうちの少なくとも1種と、を反応させる工程を有することを特徴とする、水溶性ローヤルゼリーの製造方法である。
【0011】
(2)本発明はまた、前記至適pH値の異なる少なくとも2種のエンド型プロテアーゼは、エンド型酸性プロテアーゼ及びエンド型中性プロテアーゼである、(1)に記載の水溶性ローヤルゼリーの製造方法である。
【0012】
(3)本発明はまた、前記エンド型酸性プロテアーゼ及び中性プロテアーゼは、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、モナスカス・ピロサス(Monascus pilosus)、ムコール・サーシネロイデス(Mucor circinelloides)、ムコール・ジャバニカス(Mucor javanicus)、ムコール・ミーハイ(Mucor miehei)、ムコール・ルキシー(Mucor rouxii)、ペニシリウム・シトリウム(Penicillium citrinum)、リゾムコール・ミーハイ(Rhizomucor miehei)、リゾプス・キネンシス(Rhizopus chinensis)、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)、ピクノポーラス・コッシネウス(Pycnoporus coccineus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)j4、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ポリミキサ(Bacillus polymixa)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・サーモプロテオリティカス(Bacillus thermoproteolyticus)、シュードモナス・パウシモビリス(Pseudomonas paucimobilis)又はサッカロマイセス(Sacchaomyces)の培養液から得られるものである、(2)に記載の水溶性ローヤルゼリーの製造方法である。
【0013】
(4)本発明はまた、前記アミラーゼは、アスペルギルス・アウレウス(Aspergillus aureus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アルカリゲネス・レータス(Alcaligenes latus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、スルホロブス・ソルファタリカス(Slufolobus solfataricus)又はサーモモノスポラ・ビリディス(Thermomonospora viridis)の培養液から得られるものである、(1)〜(3)の何れか1つに記載の水溶性ローヤルゼリーの製造方法である。
【0014】
(5)本発明はまた、前記セルラーゼは、アスペルギルス・セルロリティカス(Aspergillus cellulolyticus)、アスペルギルス・アキュレータス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、ヒューミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、トリコデルマ・コニンギー(Tricoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Tricoderma longibrackiatumn)、トリコデルマ・リーゼイ(Tricoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Tricoderma viride)、コルチシウム(Corticium)、イルベックス(Irpex)、ピクノポーラス・コッシネウス(Pycnoporus coccineus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)又はバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)の培養液から得られるものである、(1)〜(4)の何れか1つに記載の水溶性ローヤルゼリーの製造方法である。
【0015】
(6)本発明はまた、前記ペクチナーゼは、アスペルギルス・アキュレータス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アリアセウス(Aspergillus alliaceus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・プルベルレンタス(Aspergillus pulverulentus)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)、トリコデルマ(Tricoderma)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis))、コルチシウム(Corticium)又はトリコスポロン(Trichosporon)の培養液から得られるものである、(1)〜(5)の何れか1つに記載の水溶性ローヤルゼリーの製造方法である。
【0016】
(7)本発明はまた、前記反応させる工程で得られた反応液を固液分離する工程と、前記固液分離する工程で得られた濾液を乾燥粉末化させる工程と、を更に有する、(1)〜(6)の何れか1つに記載の水溶性ローヤルゼリーの製造方法である。
【0017】
(8)更に、本発明は、原料ローヤルゼリーに、至適pH値の異なる少なくとも2種のエンド型プロテアーゼと、アミラーゼ、セルラーゼ又はペクチナーゼのうちの少なくとも1種と、を反応させて得られることを特徴とする、水溶性ローヤルゼリーである。
【0018】
(9)本発明はまた、前記至適pH値の異なる少なくとも2種のエンド型プロテアーゼは、エンド型酸性プロテアーゼ及びエンド型中性プロテアーゼである、(8)に記載の水溶性ローヤルゼリーである。
【0019】
(10)本発明はまた、分子量500以下のペプチド類を90%以上含有する、(8)又は(9)に記載の水溶性ローヤルゼリーである。
【0020】
(11)本発明はまた、3%水溶液の450nmにおける吸光度が0.1以下である、(8)〜(10)の何れか1つに記載の水溶性ローヤルゼリーである。
【0021】
(12)本発明はまた、3%水溶液に3倍量のエタノールを添加したときの600nmにおける吸光度が0.3以下である、(8)〜(11)の何れか1つに記載の水溶性ローヤルゼリーである。
【0022】
(13)更に、本発明は、(8)〜(12)の何れか1つに記載の水溶性ローヤルゼリーを粉末化して得られる水溶性ローヤルゼリー粉末であって、10−ヒドロキシデセン酸(10-Hydroxy-2-decenoicAcid)の含有量が2.2質量%以上である、水溶性ローヤルゼリー粉末である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の水溶性ローヤルゼリーの製造方法によれば、原料ローヤルゼリーに、至適pH値の異なる少なくとも2種のエンド型プロテアーゼと、アミラーゼ、セルラーゼ及びペクチナーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素と、を反応させるので、原料ローヤルゼリーに含まれる水溶化の妨げとなる糖タンパク質や炭水化物を有効に分解して低分子化することができ、透明で安定性に優れるとともに10−HDAを高含有した水溶性ローヤルゼリーを高い生産効率で製造することができる。
【0024】
特に、少なくとも2種のエンド型プロテアーゼとして、エンド型酸性プロテアーゼとエンド型中性プロテアーゼとを用いることにより、酵素処理において反応液を適正pHに調整することができ、味覚に多大な影響を与えるpH調整剤を使用する必要がなく原料ローヤルゼリー本来の味覚が損なわれることがないので、商品価値が高く、かつ分解効率が高いので極めて透明性に優れた水溶性ローヤルゼリーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1で得られた水溶性ローヤルゼリー粉末中の10−HDA含有量を測定した結果を示す液体クロマトグラフィーのクロマトグラムである。
図2】実施例1で得られた水溶性ローヤルゼリー粉末の分子量分布を測定した結果を示す液体クロマトグラフィーのクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の水溶性ローヤルゼリーの製造方法を、実施形態を示して詳細に説明する。
【0027】
本発明で利用される原料ローヤルゼリーは、分泌する蜂の種類や産地等に特に限定されず、また、生のものに限らず冷凍したものや凍結乾燥したものであってもよい。生ローヤルゼリーの場合、通常、水分60〜70質量%、タンパク質12〜15質量%、糖分10〜16質量%、脂質3〜6質量%、その他ビタミン類、塩類、アミノ酸等の低分子等から構成されており、更に、主たる活性成分である10−HDAを1〜3質量%含んでいる。
【0028】
本発明の水溶性ローヤルゼリーの製造方法では、まず、原料ローヤルゼリーに水を加えて懸濁液を調製する。懸濁液中のローヤルゼリーの濃度は、1.0〜50.0質量%、好ましくは5.0〜20.0質量%であり、懸濁液のpHは、2.0〜6.0、好ましくは3.0〜5.0である。
【0029】
次に、得られたローヤルゼリー懸濁液に、エンド型プロテアーゼと、アミラーゼ、セルラーゼ又はペクチナーゼと、を添加して反応させる。
【0030】
本発明では、原料ローヤルゼリーに含まれる水溶性の妨げとなっているアピシン(Apisin、分子量35,000)を主体とする糖タンパク質を有効に分解して低分子化するために、エンド型プロテアーゼを用いて原料ローヤルゼリーを酵素処理する。エキソ型プロテアーゼを用いた場合、糖タンパク質がアミノ酸単位にまで細分解され、苦味が発生してしまい、商品価値が低下するので好ましくない。
【0031】
また、本発明では、エンド型プロテアーゼとして、pH値の異なる少なくとも2種のエンド型プロテアーゼを組み合わせて使用することが好ましく、特にエンド型酸性プロテアーゼとエンド型中性プロテアーゼとを組み合わせて使用するのが好ましい。エンド型酸性プロテアーゼとエンド型中性プロテアーゼの2種のプロテアーゼを組み合わせて使用することにより、酵素処理において、味覚に多大な影響を与えるpH調整剤を使用することなく反応液を適正pHに調整することができる。
【0032】
ここで、エンド型酸性プロテアーゼとは、酸性領域に至適pHを持つエンド型プロテアーゼであり、例えば、ニューラーゼF3G、ニューラーゼA(以上、天野エンザイム社製)、スミチームAP(新日本化学工業社製)、デナプシン2P(ナガセケムテックス社製)、オリエンターゼ20A(エイチビィアイ社製)、ブリューワーズクラレックス、バリダーゼAFP(ディー・エス・エム・ジャパン社製)、プロテアーゼYP−SS(ヤクルト薬品工業社製)等が挙げられる。また、エンド型中性プロテアーゼとは、中性領域に至適pHを持つエンド型プロテアーゼであり、例えば、プロテアーゼA「アマノ」G、プロテアーゼN「アマノ」G、プロテアーゼS「アマノ」G、パパインW−40、プロメラインF、プロチンSD−NY10、プロチンSD−PC10F(以上、天野エンザイム社製)、スミチームLP、スミチームFP、スミチームLPL(以上、新日本化学工業社製)、バリダーゼFP60、ブリューワーズプロテアーゼ(以上、ディー・エス・エム・ジャパン社製)、精製パパイン(三菱化学フーズ社製)、食品用精製パパイン、デナチームAP(以上、ナガセケムテックス社製)、PTN、ニュートラーゼ(以上、ノボザイムズジャパン社製)、ヌクレイシン、オリエンターゼ10NL、オリエンターゼ90N、オリエンターゼONS(以上、エイチビィアイ社製)、PapainF、TRYPSIN4.0T、COROLASEN、VERONL10、COROLASEL10、パンチダーゼP、アロアーゼAP−10、アロアーゼNP−10、アロアーゼNS(ヤクルト薬品工業社製)、エンチロンNBS(洛東化成工業社製)、パパイン、プロテックス7L、プロテックス14L(ジェネンコア協和社製)等が挙げられる。これらのエンド型酸性プロテアーゼ及びエンド型中性プロテアーゼとしては、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、モナスカス・ピロサス(Monascus pilosus)、ムコール・サーシネロイデス(Mucor circinelloides)、ムコール・ジャバニカス(Mucor javanicus)、ムコール・ミーハイ(Mucor miehei)、ムコール・ルキシー(Mucor rouxii)、ペニシリウム・シトリウム (Penicillium citrinum)、リゾムコール・ミーハイ(Rhizomucor miehei)、リゾプス・キネンシス(Rhizopus chinensis)、リゾプス・デレマー(Rhizopus delemar)、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)等の糸状菌、ピクノポーラス・コッシネウス(Pycnoporus coccineus)等の担子菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)等の放線菌、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)j4、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ポリミキサ(Bacillus polymixa)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・サーモプロテオリティカス(Bacillus thermoproteolyticus)、シュードモナス・パウシモビリス(Pseudomonas paucimobilis)等の細菌、サッカロマイセス(Sacchaomyces)等の酵母等の培養液から得られるものが特に好適に利用される。
【0033】
また、本発明では、原料ローヤルゼリーに含まれる水溶性の妨げとなっている炭水化物を有効に分解して低分子化するために、アミラーゼ、セルラーゼ又はペクチナーゼのうちの少なくとも1つを用いて原料ローヤルゼリーを酵素処理する。
【0034】
本発明で利用されるアミラーゼとしてはα−アミラーゼ、ビオザイムA、クライスターゼSD8、コクゲンL、コクゲンSD−A((以上、天野エンザイム社製)、コクラーゼ(三菱化学フーズ社製)、スミチームL(新日本化学工業社製)、ビオテックスL#3000、ビオテックスTS、スピターゼHS、スピターゼCP−40FG、ネオスピターゼPK−2、スピターゼXP−404(以上、ナガセケムテックス社製)、ブリューワーズファーメックスMG、マイコラーゼLV(ディー・エス・エム・ジャパン社製)、グリンドアミルA、グリンドアミルEB77(以上、ダニスコジャパン社製)、BAN、ファンガミル、ターマミル、ノバミル、マルトゲナーゼ、リコザイムスープラ、ステインザイム、デュラミル(以上、ノボザイムズジャパン社製)、リクィファーゼL45、フクタミラーゼ30、フクタミラーゼ50、フクタミラーゼ10L、液化酵素6T、液化酵素T(以上、エイチビィアイ社製)、VERONAX、VERONM4、VeronSoft(以上、樋口商会社製)、ユニアーゼBM−8(ヤクルト薬品工業社製)、ラクターゼSR、ラクトーゼRCS、SVA、マグナックスJW−121(以上、洛東化成工業社製)、スミチームA−10、スミチームAS(以上、新日本化学工業社製)、スペザイムAA、スペザイムFRED、ピュラスターOxAm、ピュラスターST(以上、ダニスコジャパン社製)、ベイクザイムP500(DKSHジャパン社製)、ベイクザイムAN301、MATLクラシック、DEXLO(r)CL(以上、ディー・エス・エム・ジャパン社製)、クライスターゼT10S、コクゲンSD−T、コクゲンSD−TC3(以上、天野エンザイム社製)等が挙げられ、アスペルギルス・アウレウス(Aspergillus aureus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)等の糸状菌、アルカリゲネス・レータス(Alcaligenes latus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、スルホロブス・ソルファタリカス(Slufolobus solfataricus)等の細菌、サーモモノスポラ・ビリディス(Thermomonospora viridis)等の放線菌等の培養液から得られたものが特に好適に利用される。
【0035】
また、本発明で利用されるセルラーゼとしては、セルラーゼA「アマノ」3、セルラーゼT「アマノ」4(以上、天野エンザイム社製)、β−グルカナーゼ、スペザイムCP、マルチフェクト、マルチフェクトGCエクストラ、オプチフローRC、プリマファースト、インディエイジニュートラフレックス、アクセルレース、オプチマーゼCX、ピュラダックスHA(以上、ダニスコジャパン社製)、GODO−TCF、GODO−TCL、GODOTCD−H3、ベッセレックス(以上、合同酒精社製)、超耐熱性セルラーゼ(社製耐熱性酵素研究所)、セルライザーCL、セルライザーACE、セルレースナガセ、セルチームC、セルラーゼSS、セルラーゼXL−531(以上、ナガセケムテックス社製)、シトラーゼCL(ディー・エス・エムジャパン社製)、バリダーゼTRL、バリダーゼANC40(以上、ディー・エス・エムジャパン社製)、セルソフト、CellicCTec(以上、ノボザイムズジャパン社製)、セルロシンAC40、セルロシンAL、セルロシンTF(以上、エイチビィアイ社製)、セルラーゼ「オノズカ」3S、セルラーゼY−NC、パンセラーゼbr(以上、ヤクルト薬品工業社製)、CellSEBTs(樋口商会社製)、スミチームAC、スミチームC(以上、新日本化学工業社製)、スクラーゼC(三菱化学フーズ社製)、エンチロンCM、エンチロンMCH、バイオヒット、セルラーゼES(以上、洛東化成工業社製)、フィニザイム、ウルトラフロ、ビスコザイム(以上、ノボザイムズジャパン社製)、フィルトラーゼL、フィルトラーゼNLCL、フィルトラーゼNL、フィルトラーゼPuremiumL(以上、ディー・エス・エム・ジャパン社製)、スミチームBGA(新日本化学社製)等が挙げられ、アスペルギルス・セルロリティカス(Aspergillus cellulolyticus)、アスペルギルス・アキュレータス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ニガー、ヒューミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、トリコデルマ・コニンギー(Tricoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Tricoderma longibrackiatumn)、トリコデルマ・リーゼイ(Tricoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Tricoderma viride)等の糸状菌、コルチシウム(Corticium)、イルベックス(Irpex)、ピクノポーラス・コッシネウス等の担子菌、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・サブティリス等の細菌等の培養液から得られるものが特に好適に利用される。
【0036】
また、本発明で利用されるペクチナーゼとしては、ぺクチナーゼG「アマノ」、ぺクチナーゼPL「アマノ」(以上、天野エンザイム社製)、Pectinase−GODO(合同酒精社製)、スクラーゼA、スクラーゼN、スクラーゼS(以上、三菱化学フーズ社製)、ラピダーゼ(ディー・エス・エム・ジャパン社製)、マルチフェクトペクチナーゼFE(ダニスコジャパン社製)、スミチームAP−2、液状スミチームAP−2、スミチームSPC、スミチームSPG、スミチームPME、スミチームMC(以上、新日本化学工業社製)、ペクチナーゼXP−534NEO、ペクチネックス、ペクチネックスウルトラSP−L、ウルトラザイム、ビノザイム(以上、ノボザイムズジャパン社製)、セルロシンPE60、セルロシンPEL、可溶性ペクチナーゼT(以上、エイチビィアイ社製)、ペクチナーゼSS、ペクチナーゼHL(以上、ヤクルト薬品工業社製)、スミチームPX(新日本化学工業社製)、ラピダーゼPROL、ラピダーゼGLUCALEES、ラピダーゼFC、ラピダーゼADEX、マキソリヴァ(以上、ディー・エス・エム・ジャパン社製)等が挙げられ、アスペルギルス・アキュレータス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アリアセウス(Aspergillus alliaceus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・プルベルレンタス(Aspergillus pulverulentus)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)、トリコデルマ(Tricoderma)等の糸状菌、バチルス・サブティリス(Bacillus sublilis)等の細菌、コルチシウム(Corticium)等の担子菌、トリコスポロン(Trichosporon)等の酵母等の培養液から得られるものが特に好適に利用される。
【0037】
本発明における上記各酵素の添加量は、エンド型酸性プロテアーゼが原料ローヤルゼリーに対して0.05〜1.5質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%、エンド型中性プロテアーゼが原料ローヤルゼリーに対して0.01〜0.4質量%、好ましくは0.05〜0.2質量%、アミラーゼ、セルラーゼ又はペクチナーゼが原料ローヤルゼリーに対して0.01〜0.4質量%、好ましくは0.05〜0.3質量%がよい。
【0038】
また、酵素処理の条件は、原料ローヤルゼリーの成分及び使用する酵素の種類や添加量によって適宜設計されるが、通常は、30〜70℃の処理温度で2〜24時間処理することが好ましい。酵素処理を終了するには、70〜90℃の温度で0.2〜2.0時間撹拌することにより酵素を失活させる。
【0039】
次に、得られた反応液を、既知の方法、例えば有孔壁遠心分離機、無孔壁遠心分離機、加圧濾過機等を用いて固液分離し、濾液を例えば減圧濃縮機等により減圧濃縮した後、必要により、デキストリン、でんぷん等の賦形剤等を添加して、例えば凍結乾燥機、スプレードライヤー等により乾燥して、本発明の水溶性ローヤルゼリー粉末を得る。但し、本発明の水溶性ロイヤルゼリーは、必ずしも粉末化する必要はなく、減圧濃縮した濾液をそのまま製品に利用しても構わない。
【0040】
本発明の水溶性ローヤルゼリーは、粉末又は水溶液として単体で、又は適宜他の成分と混合して製剤し、健康食品や医薬品、化粧品等として利用することができる。
【0041】
本発明の水溶性ロイヤルゼリーは、好適には分子量500以下のペプチド類を90%以上含有するものであり、原料ローヤルゼリーに含まれるタンパク質が高度に分解され低分子化されていることから、水に対する溶解性が高く、透明で安定な水溶液とすることができる。
【0042】
また、本発明の水溶性ロイヤルゼリーは、好適には3%水溶液としたときの450nmにおける吸光度が0.1以下であり、極めて高い透明性を有するものである。
【0043】
また、本発明の水溶性ロイヤルゼリーは、好適には3%水溶液に3倍量のエタノールを添加したときの600nmにおける吸光度が0.3以下であり、残存するタンパク質や高分子領域の糖質が極めて少ない。
【0044】
更に、本発明の水溶性ローヤルゼリーを粉末化して得られる水溶性ローヤルゼリー粉末は、好適には10−HDAの含有量が2.2質量%以上であり、コレステロール低下、抗炎症、外傷治癒、抗菌作用等に対する有効性に優れ、健康食品、医薬品、化粧品等の原料として極めて有用である。
【0045】
次に、本発明の水溶性ローヤルゼリー粉末及びその製造方法を、実施例により更に詳細に説明するが、本発明は係る実施例に限定されるものではない。
[原料]
【0046】
生ローヤルゼリーの栄養成分値及び10−HDA含有量
【0047】
使用した生ローヤルゼリーの栄養成分値及び10−HDAの含有量を表1に示した。
【表1】
【実施例1】
【0048】
エンド型酸性プロテアーゼ、エンド型中性プロテアーゼ及びα−アミラーゼを用いた水溶性ローヤルゼリー粉末の製造
【0049】
室温下で上記の生ローヤルゼリー100gを水900gに加えて撹拌し、均一に分散させた。得られた懸濁液に、エンド型酸性プロテアーゼ(エイチビィアイ株式会社製「オリエンターゼ20A」(アスペルギルス・ニガー由来))0.3g(生ローヤルゼリーに対して0.3質量%)、エンド型中性プロテアーゼ(エイチビィアイ株式会社製「オリエンターゼ90N」(バチルス・サブティリス由来))0.06g(生ローヤルゼリーに対して0.06質量%)及びα−アミラーゼ(エイチビィアイ株式会社製「フクタミラーゼ50」(バチルス・サブティリス由来))0.05g(生ローヤルゼリーに対して0.05質量%)を添加し、55℃に加熱して15時間撹拌した。得られた反応液を90℃に加熱し、30分間撹拌して酵素を失活させた後室温まで冷却した。これを加圧濾過機により固液分離して、濾液を減圧濃縮し、デキストリン(松谷化学工業社製「マックス1000」)70gを添加して、凍結乾燥機を用いて乾燥して、目的の水溶性ローヤルゼリー粉末を得た。
【実施例2】
【0050】
エンド型酸性プロテアーゼ、エンド型中性プロテアーゼ及びセルラーゼを用いた水溶性ローヤルゼリー粉末の製造
【0051】
実施例1において、α−アミラーゼに替えてセルラーゼ(エイチビィアイ社製「セルロシンAC40」(アスペルギルス・ニガー由来))0.05g(生ローヤルゼリーに対して0.05質量%)を添加した以外はほぼ同様に処理して、目的の水溶性ローヤルゼリー粉末を得た。
【実施例3】
【0052】
エンド型酸性プロテアーゼ、エンド型中性プロテアーゼ及びペクチナーゼを用いた水溶性ローヤルゼリー粉末の製造
【0053】
実施例1において、α−アミラーゼに替えてペクチナーゼ(エイチビィアイ社製「セルロシンPE60」(アスペルギルス・ニガー由来))0.05g(生ローヤルゼリーに対して0.05質量%)を添加した以外はほぼ同様に処理して、目的の水溶性ローヤルゼリー粉末を得た。
[比較例1]
【0054】
エンド型酸性プロテアーゼのみを用いた水溶性ローヤルゼリー粉末の製造
【0055】
実施例1において、酵素としてエンド型酸性プロテアーゼ(エイチビィアイ社製「オリエンターゼ20A」)0.3g(生ローヤルゼリーに対して0.3質量%)のみを添加した以外はほぼ同様に処理して、目的の水溶性ローヤルゼリー粉末を得た。
[比較例2]
【0056】
エンド型中性プロテアーゼのみを用いた水溶性ローヤルゼリー粉末の製造
【0057】
実施例1において、酵素としてエンド型中性プロテアーゼ(エイチビィアイ社製「オリエンターゼ90N」)0.3g(生ローヤルゼリーに対して0.3質量%)のみを添加した以外はほぼ同様に処理して、目的の水溶性ローヤルゼリー粉末を得た。
[比較例3]
【0058】
エンド型アルカリ性プロテアーゼのみを用いた水溶性ローヤルゼリー粉末の製造
【0059】
実施例1において、酵素としてエンド型アルカリ性プロテアーゼ(エイチビィアイ社製「オリエンターゼ22BF」(バチルス・サブティリス由来)」)0.3g(生ローヤルゼリーに対して0.3質量%)のみを添加した以外はほぼ同様に処理して、目的の水溶性ローヤルゼリー粉末を得た。
[比較例4]
【0060】
エンド型酸性プロテアーゼ及びエンド型中性プロテアーゼのみを用いた水溶性ローヤルゼリー粉末の製造
【0061】
実施例1において、酵素としてエンド型酸性プロテアーゼ(「オリエンターゼ20A」エイチビィアイ株式会社製)0.3g(生ローヤルゼリーに対して0.3質量%)及びエンド型中性プロテアーゼ(「オリエンターゼ90N」エイチビィアイ株式会社製)0.06g(生ローヤルゼリーに対して0.06質量%)のみを添加した以外はほぼ同様に処理して、目的の水溶性ローヤルゼリー粉末を得た。
[比較例5]
【0062】
α−アミラーゼ、セルラーゼ及びペクチナーゼのみを用いた水溶性ローヤルゼリー粉末の製造
【0063】
実施例1において、酵素としてα−アミラーゼ(エイチビィアイ株式会社製「フクタミラーゼ50」(バチルス・サブティリス由来))0.05g(生ローヤルゼリーに対して0.05質量%)、セルラーゼ(エイチビィアイ社製「セルロシンAC40」(アスペルギルス・ニガー由来))0.05g(生ローヤルゼリーに対して0.05質量%)及びペクチナーゼ(エイチビィアイ社製「セルロシンPE60」(アスペルギルス・ニガー由来))0.05g(生ローヤルゼリーに対して0.05質量%)を添加した以外はほぼ同様に処理して、目的の水溶性ローヤルゼリー粉末を得た。
[評価1]
【0064】
水溶性ローヤルゼリー粉末の収量及び10−HDA含有量
【0065】
実施例1〜3及び比較例1〜5で得られた濾液の液量、pH及び固形分濃度、並びに水溶性ローヤルゼリー粉末の収量及び10−HDA濃度を測定した。なお、水溶性ローヤルゼリー粉末の10−HDA濃度は、液体クロマトグラフィー(移動相:リン酸水溶液(1→1000)/MeOH(50/50)混液、カラム温度:40℃、カラム:symmrtryC18 4.6×150mm 5μm(waters社製)、流速:内標準物質(安息香酸)が約6分に溶出するように調節、検出器:紫外分光光度計(215nm)(島津製作所社製「SPD−20A」))により測定した。結果を表2に示した。また、実施例1で得られた水溶性ローヤルゼリー粉末中の10−HDA濃度の測定結果のクロマトグラムを図1に示した。
【表2】
【0066】
表2の結果から明らかなとおり、2種(酸性及び中性)のエンド型プロテアーゼを用い、更にアミラーゼ、セルラーゼ又はペクチナーゼを組み合わせて用いることにより(実施例1〜3)、1種又は2種のエンド型プロテアーゼのみを用いた場合(比較例1〜4)及びアミラーゼ、セルラーゼ及びペクチナーゼのみを用いた場合(比較例5)と比較して、濾液の固形分濃度が増加し、水溶性ローヤルゼリー粉末の収量及び10−HDA濃度が顕著に増大した。また、濾過速度が向上し、固液分離工程にかかる時間が大幅に短縮され生産効率が顕著に改善された。
[評価2]
【0067】
水溶性ローヤルゼリー粉末の分子量分布の測定
【0068】
実施例1で得られた水溶性ローヤルゼリー粉末の分子量分布を液体クロマトグラフィー(移動相:水/MeCN/TFA混液(55:45:0.1)、カラム温度:40℃、カラム:TSKgel G2500PW 7.8×300mm (昭和電工株式会社製)、検出器:紫外分光光度計(220nm)(島津製作所社製「SPD−20A」))により測定した。結果を図2及び表3に示した。
【表3】
【0069】
表3の結果から明らかなとおり、実施例1で得られた水溶性ローヤルゼリー粉末は、分子量が500以下のペプチド類を90%以上含有するものであり、本発明の方法は、ローヤルゼリー中のタンパク質に対する分解効率が非常に優れていることがわかった。
[評価3]
【0070】
水溶性ローヤルゼリー粉末の水溶液の透明度の評価
【0071】
実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた水溶性ローヤルゼリー粉末を3%水溶液に調製し、水溶液の着色度を、紫外分光光度計(島津製作所社製「UV−1200」)により吸光度(測定波長:450nm付近)を測定して評価した。結果を表4に示した。
【表4】
【0072】
表4の結果から明らかなとおり、実施例1〜3で得られた水溶性ローヤルゼリー粉末では、比較例1〜4で得られたものと比較して、極めて透明性の高い水溶液が得られた。
[評価4]
【0073】
水溶性ローヤルゼリー粉末の水溶液のエタノール沈殿により残存するタンパク質量の評価
【0074】
実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた水溶性ローヤルゼリー粉末を3%水溶液に調製し、3倍量のエタノールを加えて白濁の度合いを、紫外分光光度計(島津製作所社製「UV−1200」)により吸光度(測定波長:600nm付近)を測定して評価した。結果を表5に示した。
【表5】
【0075】
表5の結果から明らかなとおり、実施例1〜3で得られた水溶性ローヤルゼリー粉末では、比較例1〜4で得られたものと比較して、吸光度が低く残存するタンパク質や高分子領域の糖質が極めて少なかった。
[評価5]
【0076】
水溶性ローヤルゼリー粉末の水溶液の冷蔵保存による経時変化の評価
【0077】
実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた水溶性ローヤルゼリー粉末を3%水溶液に調製し、5℃で冷蔵保存して、経時的に発生する沈殿物の量を肉眼で観察することにより評価した。結果を表6に示した。
【表6】
【0078】
表6の結果から明らかなとおり、実施例1〜3で得られた水溶性ローヤルゼリー粉末では、比較例1〜4で得られたものと比較して、水溶液の冷蔵保存による経時的な沈殿物の発生が少なく極めて安定性が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
上述したように、本発明の水溶性ローヤルゼリーの製造方法は、原料ローヤルゼリー本来の味覚を保持しつつ、透明で安定性に優れるとともに10−HDAを高含有した水溶性ローヤルゼリーを高い生産効率で製造することができるので極めて有用である。
図1
図2