(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244581
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】避難装置
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-134298(P2013-134298)
(22)【出願日】2013年6月10日
(65)【公開番号】特開2014-237996(P2014-237996A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】503018571
【氏名又は名称】有限会社フジカ
(72)【発明者】
【氏名】藤原 充弘
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−038597(JP,A)
【文献】
特開2012−225071(JP,A)
【文献】
特開平04−136357(JP,A)
【文献】
特開2003−105859(JP,A)
【文献】
特公昭59−000653(JP,B2)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0282829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
E04F 11/00−11/17
E02D 27/00−27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の側桁とそれら側桁間に一体に渡された階段やスロープなどの登降手段の本体とで構成された傾斜状登降手段の下側には、前記各側桁の下端から垂直下向きに一体に伸びた左右一対の基部と両基部の左右間を一体につなぐように渡されるつなぎ材および両基部の下端間をつなぐようにして設けられた水平板状のベースプレートとでなる下部が一体的に長く伸びて設けられ、前記下部は、基盤内に埋め込み固定された内部配筋入りの基礎ブロック内に前記ベースプレートをアンカーボルトに連結固定するようにして埋込固着されているとともに、前記つなぎ材は、その上下間に基礎ブロック自体が入り組む状態となるようにアングル材あるいは溝型鋼、四角パイプあるいは円形パイプなどにより上下複数段をなして配備されていることを特徴とする避難装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、津波や洪水などの非常事態発生時に利用される避難装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近隣住民を津波襲来から護るため、津波避難装置が各種提案されている。この避難装置は、複数本の支柱を有するが、それらの支柱が地盤に対してより確実に固定され津波の襲来から損害を受けないように例えば、特許公報1に記載されるものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】 特開2008−180055
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1には、各種の案が記載されているが、その一つとして
図13および
図14において地中梁構造による固定方式が記載されている。この方式は、地盤内の地業上に全体配筋87入りの基礎ブロック85を固設してそこから伸びるアンカーボルト89を介して支柱92の下フランジを締め付けることで支柱92を固定するようにしてある。
ところで、こうした避難装置には、屋上の避難ステージに登降するための階段が付属されるが、これまでの階段の基部支持構造は、特許公報1の前記と同様な露出型の柱脚固定構造を採っていたため、階段はあくまでも避難時の登降用としての機能のみしかなく、さらに支柱側である装置本体をも津波襲来から有効に対抗防護し得るまでには至らなかった。
【0005】
この発明は、このような問題を解決しようとするものであり、津波などの非常事態時における階段やスロープなどの登降手段が登降用のみに終始せず積極的に津波からの抵抗構造として機能するようにすることで登降手段それ自体はもとより装置本体までも津波流などからの被害に対し有効に護るようにした避難装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
左右の側桁とそれら側桁間に一体に渡された階段やスロープなどの登降手段の本体とで構成された傾斜状登降手段の下側には、前記各側桁の下端から垂直下向きに一体に伸びた左右一対の基部と両基部の左右間を一体につなぐように渡されるつなぎ材および両基部の下端間をつなぐようにして設けられた水平板状のベースプレートとでなる下部が一体的に長く伸びて設けられ、前記下部は、基盤内に埋め込み固定された内部配筋入りの基礎ブロック内に前記ベースプレートをアンカーボルトに連結固定するようにして埋込固着されているとともに、前記つなぎ材は、その上下間に基礎ブロック自体が入り組む状態となるようにアングル材あるいは溝型鋼、四角パイプあるいは円形パイプなどにより上下複数段をなして配備されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述したようにこの発明は、
左右の側桁とそれら側桁間に一体に渡された階段やスロープなどの登降手段の本体とで構成された傾斜状登降手段の下側には、前記各側桁の下端から垂直下向きに一体に伸びた左右一対の基部と両基部の左右間を一体につなぐように渡されるつなぎ材および両基部の下端間をつなぐようにして設けられた水平板状のベースプレートとでなる下部が一体的に長く伸びて設けられ、前記下部は、基盤内に埋め込み固定された内部配筋入りの基礎ブロック内に前記ベースプレートをアンカーボルトに連結固定するようにして埋込固着されているとともに、前記つなぎ材は、その上下間に基礎ブロック自体が入り組む状態となるようにアングル材あるいは溝型鋼、四角パイプあるいは円形パイプなどにより上下複数段をなして配備されていることを特徴とするので、津波などの非常事態時における階段やスロープなどの登降手段が登降用のみに終始せず積極的に津波からの抵抗構造として機能するようにすることで登降手段それ自体はもとより装置本体までも津波流などからの被害に対し有効に護るようにした避難装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】 この発明である津波避難装置の一実施形態を示す平面図。
【
図3】
図2のIII−III線に沿う拡大断面図。
【
図12】 他の実施形態を
図13のX−X線に沿って示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各実施形態で説明する各案は関係する他の実施形態においても適用することができる。
図1ないし
図4はこの発明に係る津波避難装置の一実施形態を示す。1は基盤(地盤)で、同基盤1の平面上の矩形枠上には9点をなすように支柱基礎ブロック2が固定されており、これら支柱基礎ブロック2を介して9本の支柱3が上方へ8ないし12m伸びるようにして垂直に立設固定されている。支柱基礎ブロック2は、内部配筋4を備えてその中央に支柱3の基部が通されるようにして一体固定する。5は中段梁、6は上段梁、7は中段避難ステージ、8は屋上避難ステージ、9は屋上手摺である。こうして屋上避難ステージ8を備えた3階建ての鉄骨構造の装置本体が立設されている。10は旋回ブームで、ウインチ11とシーブ12を備えて、ウインチ11に巻き込み・繰出し可能に巻かれた吊りロープ13の先端に取り付けたカーゴ14が昇降可能とされている。
【0010】
カーゴ14は地上と避難ステージ8を越える高さ間を屋上の別の避難者の操作により昇降可能とされるとともに、上昇限において旋回ブーム10を旋回させてカーゴ14を避難ステージ8側にもってくることにより避難者を避難ステージ8上に収容することができるものである。したがって、カーゴ14は装置本体外部を昇降する方式であるので登降手段20側が使えなくなっても降りることができるようになる。
尚、前記ウインチ11は、機械手動式と電動式とが可能であるが小型エンジンで駆動する場合もある。
【0011】
こうした装置本体の周りには、登降手段20が1階〜3階部分に対応するようにして設けられている。登降手段20は、左右一対の側桁21と、上部の踊り場側枠22、並びに両側桁21,21間の階段本体23と、踊り場側枠22内の踊り場面材24などを備えて登降手段本体を構成しているとともに、アングル材やフラット材などによる手摺受材26の複数本と、これら手摺受材26の上端を連結する上端手摺27およびつなぎ線条材28さらに子供用の中段手摺29などを備えて構成してある。つなぎ線条材28による方式としたのは津波流を通過しやすくして被害を軽減させるためである。尚、
図2に仮想線で示すように、下側の手摺受材26からサポート材30を立設して上端手摺27の上部との間に上端手摺27とは異なる角度をなす引張材31を張設しておけば登降手段の本体自体は補強される。
【0012】
こうした登降手段20の本体でもある側桁21は、
図3に示すように、溝を外向きにした溝形鋼を使用して強度のあるものとするとともに、1階の側桁21については溝形鋼のまま、
図2に示すように、垂直下向きに長く伸ばして基部33を形成してある。その長く伸びた寸法をHとすればそのHは側桁21の縦向きの幅W(380mm)の約4倍ないし5倍の長いものになっている。これらの基部33は左右一対設けられ、その両者間には階段本体23と同様なイナズマ形のつなぎ材34が溶接一体化されているとともに下端間にはベースプレート35が水平状に一体化されている。
【0013】
そして、これら34,35を備えた基部33は、前記Hよりも2W前後深く打設した基礎ブロック37内に大きく差し込まれた形で一体埋め込みされている。38は割栗や捨てコンクリートなどの地業、39はその上のベース配筋、40は主筋、41はフープ、42はこれら主筋40とフープ41である内部配筋、43はアンカーボルトである。44は土間コンクリートで、基礎ブロック37の上面仕上げ層として施工される。
【0014】
一方、登降手段20の2階の踊り場は、
図1に示すように、装置本体側に対する連結なしで基盤1側への独立支持方式で固定支持されている。尚、
図1に仮想線で示すように、2階踊り場と中段避難ステージ7間はいずれか一方が連結され他方がフリーな渡しステップ46によりつないで中段避難ステージ7への避難を可能にしてもよい。2階踊り場の底面にはベース47が固定されるとともにその下側には一本パイプ式の独立支柱48が設けられて前記したと同様の方式の基礎ブロック37内にその基部を埋め込み固定している。このように登降手段の地上から2階さらに3階へと至る部分が装置本体とは全く独立支持された形となって津波流や漂流物が襲来しても装置本体にまでその衝撃負荷を及ぼすことがなくなる。3階に対応する踊り場については
図1および
図2のように支柱3から伸びた受枠49側に取り付け支持されているとともに、屋上に対応する踊り場についても装置本体側に連結固定されている。
【0015】
尚、
図2に仮想線で示すように、独立支柱48と基部33との間は地中つなぎ材51でつなぎ、同つなぎ材51をそのまま地中に埋設するか図示のように配筋52を備えたコンクリート製地中梁53によりこれら48,33間を一体連結した形で埋設固定するようにしてもよい。このようにすれば登降手段20が非常に強固に固定される。
【0016】
この場合、地中つなぎ材51の
図2の右端は、独立支柱48に結合されるが、左端は側桁21間をつなぐように設けたパイプやアングルなどの横架材の中間に結合するようにする。地中つなぎ材51の両端は開いて部材に脱着可能にしてもよく、また前記登降手段もその中途において分離式とし現場でつなぐようにすれば運搬が簡易に行える。
また、
図2に破線で示すように、地業38は管杭Pを打ち込んだものにしておよい。
さらに、前記登降手段は階段式でなくスロープ式のものでもよい。
また、
図3の右欄に示すように、側桁21および基部33は溝を互いに対向させるタイプの溝形鋼にしてもよい。
【0017】
また、
図4に示すように、基部33やつなぎ材34の表面には、スタッドボルト55…を植設しておけば基部33の抜けなどを効果的に阻止することができ、その場合、
図4の右欄のようにスタッドボルト55のナット部は複数段にしておけばより安定度が高まる。
さらに、
図5に示すように、基部33も
図3の右欄のように溝を対向させる溝形鋼による構成とすることができる。
また、
図6に示すように、つなぎ材34は右欄のようなアングル材によりジグザグ状に形成してもよく、
図7に示すように上下に離間してアングルを配置してつなぎ材34とすることもできる。
さらに、
図8に示すように、つなぎ材34は、溝形鋼とすることができ、その場合その溝を上向きにしておけば抜けが防止されやすい。
また、
図9に示すように、つなぎ材34は四角や円形のパイプとしてもよく、その一方で基部33はIあるいはH形鋼とすることができる。このIあるいはH形鋼とすることは、他の全ての実施形態において適用することがある。
さらに、
図10に示すように、つなぎ材34として四角なパイプを使用する場合、同パイプを基部33の溝内に嵌まり込む関係にすることが強度上有利である。
また、
図11に示すように、つなぎ材34としてパイプを使用する場合、前後に複数本のパイプとして構成することがある。
【0018】
図12および
図13は他の実施形態を示す。60は基盤、61は複数本の支柱で、支柱61の下部対向位置には下部連結材62が固定して設けられ、また支柱61の上端同士は上からみて矩形をなすような上部連結材63で連結固定されている。そして、上部連結材63上には避難ステージ64が設けられるとともに屋上手摺65が設けられている。こうした津波避難装置には登降手段である階段が設けられている。
【0019】
こうした避難装置においては、
図12の上下間を横切る中央ラインをO−Oとし、それを境にして、線対称位置に第1の階段67が一対配備されている。第1の階段67,67は、その基部68が前記実施形態のような基礎ブロック69によって固定されて上端は下部連結材62から突設された受台70上にそれぞれ取り付け固定されている。そして、両第1階段67は平行で離間し、その間には、基礎72に立設された固定コラム73に固定支持されている。このように第1階段67が側面からみて立体交差する関係として基盤と装置本体間に固定されていると、津波流や漂流物などが襲来してきても強く抵抗する装置となる。
尚、74は第2階段、75は第3階段である。
【符号の説明】
【0020】
1…基盤 3…支柱 8…屋上避難ステージ 20…登降手段 21…側桁 33…基部 34…つなぎ材 37…基礎ブロック 42…内部配筋。