特許第6244583号(P6244583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンパワー コーポレイションの特許一覧

特許6244583太陽光発電システムのための自動電圧調整
<>
  • 特許6244583-太陽光発電システムのための自動電圧調整 図000002
  • 特許6244583-太陽光発電システムのための自動電圧調整 図000003
  • 特許6244583-太陽光発電システムのための自動電圧調整 図000004
  • 特許6244583-太陽光発電システムのための自動電圧調整 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244583
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】太陽光発電システムのための自動電圧調整
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20171204BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20171204BHJP
   H02S 40/32 20140101ALI20171204BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
   H01L31/04 500
   H02S40/32
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-558026(P2013-558026)
(86)(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公表番号】特表2014-517663(P2014-517663A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】US2012026791
(87)【国際公開番号】WO2012125278
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2015年2月20日
【審判番号】不服2017-3478(P2017-3478/J1)
【審判請求日】2017年3月8日
(31)【優先権主張番号】13/047,005
(32)【優先日】2011年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505379467
【氏名又は名称】サンパワー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、ラーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、ロバート
【合議体】
【審判長】 和田 志郎
【審判官】 稲葉 和生
【審判官】 山田 正文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−352682(JP,A)
【文献】 特開平8−317567(JP,A)
【文献】 特開2006−191780(JP,A)
【文献】 特開2006−60961(JP,A)
【文献】 特開2007−124797(JP,A)
【文献】 特開2003−259567(JP,A)
【文献】 特開2009−183117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電システムにより生成された電圧を自動的に調節する方法であって、
前記太陽光発電システムにより供給された電圧を電力グリッドとの相互接続点(POI)において測定し、測定グリッド電圧を生成する工程と、
前記測定グリッド電圧を、前記POIに関する設定点電圧を示す基準電圧と比較する工程と、
前記測定グリッド電圧と前記基準電圧との前記比較に基づいて、前記電力グリッドへ供給するために太陽電池により生成された直流を交流に変換する複数の太陽光発電インバータの個々のインバータ基準電圧を生成する工程と、
前記複数の太陽光発電インバータの位置において前記個々のインバータ基準電圧を前記複数の太陽光発電インバータに提示する工程と、
前記測定グリッド電圧の過渡的変化に応答して前記個々インバータ基準電圧を調節する工程と、
前記複数の太陽光発電インバータのうちの特定の太陽光発電インバータが、前記複数の太陽光発電インバータの他の太陽光発電インバータより多くの無効電力を生成している場合、前記特定の太陽光発電インバータのインバータ基準電圧を制限する工程と、備える方法。
【請求項2】
前記個々インバータ基準電圧が、制御スキームに従って、補償器により生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御スキームが比例−積分補償器を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記個々のインバータ基準電圧の変化率を制限する工程を更に備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記太陽電池が、太陽電池パネル内に搭載された裏面コンタクト型太陽電池を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記個々のインバータ基準電圧が、データ通信ネットワークを通じて送信されるレジスタにより、前記複数の太陽光発電インバータのそれぞれに提供される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記グリッド電圧が閾値電圧よりも高いことを前記測定グリッド電圧が示す場合、前記個々インバータ基準電圧を調節し、前記複数の太陽光発電インバータに無効電力を吸収させる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記グリッド電圧が閾値電圧よりも低いことを前記測定グリッド電圧が示す場合、前記個々のインバータ基準電圧を調節し、前記複数の太陽光発電インバータに無効電力を生成させる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実施するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載する主題の実施形態は、概して太陽光発電システムに関する。より具体的には、主題の実施形態は、太陽光発電システムのための自動電圧調整に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムは、太陽光輻射から電気を生成する。太陽光発電システムは、太陽電池パネルのアレイからなってもよく、それぞれの太陽電池パネルは、相互接続された太陽電池を備える。太陽電池には、P型及びN型拡散領域が含まれる。太陽電池に太陽光が輻射すると電子及び正孔が生成され、これらの電子及び正孔が拡散領域に移動することにより、拡散領域間に電位差が生じる。裏面コンタクト型太陽電池においては、拡散領域及びこれらの拡散領域に結合した金属コンタクトフィンガーが、共に太陽電池の裏面にある。このコンタクトフィンガーによって、外部電気回路は太陽電池に結合され、太陽電池から電力供給されることが可能となる。
【0003】
太陽光発電インバータは、太陽電池により生成された直流を、相互接続点(POI)において、電力グリッドに結合するのに適した交流に変換する。POIにおけるグリッド電圧は、必要条件に適合する特定の値の範囲内に調整される。本発明の実施形態は、太陽光発電システムによって電力グリッドに供給される電圧を自動的に調整する方法及びシステムに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、太陽光発電システムにより生成された電圧を自動的に調整する方法は、太陽光発電システムにより供給された電圧を電力グリッドとの相互接続点(POI)で測定することを含む。測定グリッド電圧は、設定点電圧と比較される。インバータ基準電圧は、測定グリッド電圧の設定点電圧との比較に基づいて生成される。インバータ基準電圧は、太陽光発電インバータの位置において太陽光発電インバータに提示される。インバータ基準電圧は、急速に変化するグリッド電圧に応答して調節される。
【0005】
別の実施形態では、太陽光発電システムは、複数の太陽電池、複数の太陽光発電インバータ、及びプラント制御装置を備える。プラント制御装置は、太陽光発電システムの電力グリッドとの相互接続点(POI)において測定された測定電圧に基づいてインバータ基準電圧を調節し、かつインバータ基準電圧を複数の太陽光発電インバータの内の1つの太陽光発電インバータに提供することにより、1つの太陽光発電インバータの無効電力出力を調節し、POIにおいて変化するグリッド電圧に応答する。
【0006】
別の実施形態では、太陽光発電システムにより生成された電圧を自動的に調整する方法は、太陽光発電システムにより電力グリッドに提供された電圧を測定することを含む。太陽光発電インバータの動作を制御するための制御信号は、測定電圧に基づいて生成される。制御信号は、測定電圧の変化に応答して太陽光発電インバータの無効電力出力を調節するように調節される。
【0007】
本発明のこれら及びその他の特徴は、添付の図面及び特許請求の範囲を含む本開示の全体を読むことにより、当業者には容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
より完全な主題の理解は、以下の添付図面と併せて詳細な説明を参照することにより導き出すことができ、図面では同様の参照番号は図面全体を通して類似の要素を指す。
図1】本発明の実施形態による、太陽光発電システムの構成要素を概略的に示す。
図2】本発明の実施形態による、図1の太陽光発電システムの追加的な構成要素を概略的に示す。
図3】本発明の実施形態による、太陽光発電システムのための自動電圧調整の方法の流れ図を示す。
図4】本発明の実施形態による、図2の太陽光発電システムの更なる詳細を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示では、本発明の実施形態を十分に理解いただけるよう、装置、構成要素及び方法の例など、多数の具体的な詳細を提供している。しかしながら、当業者であれば、本発明はこれらの具体的な詳細のうちの1つ以上を欠いても実施できることは理解されよう。他の例では、本発明の態様を不明瞭にすることを避けるため、周知の詳細については図示又は記述していない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態による、太陽光発電システム200の構成要素を概略的に示す。図1の例に示される太陽光発電システムの構成要素は、複数のコンバイナボックス112、複数の太陽電池パネル114、及び太陽光発電インバータ110を含む。太陽光発電システムは、複数のインバータを含んでもよいが、図示の明瞭化のために、図1には1つのみが示される。太陽電池パネル114は、同一のフレーム上に搭載され、電気的に接続された太陽電池を備える。一実施形態では、それぞれの太陽電池パネル114は、複数の直列に接続された裏面コンタクト型太陽電池115を備える。前面コンタクト型太陽電池も採用できる。図1では、いくつかの裏面コンタクト型太陽電池115のみに符号が付されている。
【0011】
太陽光発電ストリングは、図1のように、複数の直列に接続された太陽電池パネル114を備える。一群の太陽電池パネル114が、コンバイナボックス112に電気的に接続され、ここで太陽電池パネル114は直列に接続される。コンバイナボックス112は、太陽光発電ストリング内のすべての太陽電池パネル114が直列に接続されるように電気的に接続される。太陽光発電ストリングの出力は、太陽電池115により生成された直流(DC)を、例えば、商用電力グリッドへの供給に適した交流(AC)に変換するインバータ110に電気的に接続される。
【0012】
図2は、本発明の実施形態による太陽光発電システム200の追加的な構成要素を概略的に示す。図2は、図1と関連して記述されるインバータ110を示す。太陽電池パネル114は、図示の明瞭化のために図2には示されない。図2の例では、太陽光発電システム200の構成要素は、太陽光発電サブステーション210及びインバータパッド220内に設置される。
【0013】
インバータパッド220は、インバータが設置される一般的な領域である。インバータパッド220は、典型的にはサブステーション210から離れて、電力グリッドとの相互接続点(POI)204から遠くに設置される。通信モジュール201は、インバータ110とサブステーション210内に設置された構成要素との間のデータ通信を可能にする。インバータパッド220は、インバータ110の動作を支援するための、アナログデジタル変換器、デジタルアナログ変換器、及び他の構成要素などの、図2には具体的には示されない追加的な構成要素も含んでもよい。
【0014】
一実施形態では、太陽光発電システム200の動作は、中央制御コンピュータとして機能するプラント制御装置202により、監視制御データ収集システム(SCADA)を使用して制御される。一実施形態では、インバータ110、プラント制御装置202、及びサブステーションコンピュータ203は、Modbus TCP/IP通信プロトコルによって通信する。この実施形態では、通信モジュール201は、太陽光発電システム200の構成要素の間にデータ通信リンクを提供するイーサネット(登録商標)スイッチを備える。監視及び制御は、信号に対して個別の配線を提供するなどにより、アナログ信号方式により実行されてもよい。
【0015】
図2の例では、インバータパッド220内の昇圧変圧器が、インバータ110のAC電圧出力を、サブステーション210への配電のためのより高い電圧に昇圧する。
【0016】
サブステーション210内の発電機昇圧(GSU)変圧器は、インバータパッド220から受電したAC電圧を、電力グリッド(図示せず)への配電のためにPOI204に結合される前に更に昇圧する。サブステーションコンピュータ203は、サブステーション210の制御及び監視を可能にする。サブステーションコンピュータ203は、保護回路を制御し、かつPOI204においてメーター205により電圧を読み取ることができる。
【0017】
サブステーション210内のプラント制御装置202は、POI204における(又はその近傍での)電圧の制御を容易にする、専用又は汎用のコンピュータを備えてもよい。以下でより明白になるように、プラント制御装置202は、インバータ基準電圧の形式で制御信号を操作することにより、POI204における電圧の制御を容易にすることができる。
【0018】
相互接続点における電圧は、自動電圧調整(AVR)により制御することができる。一般的に言って、AVRは、グリッドへの配電、送電、又は他の電気的接続の相互接続点における電圧を制御するために、インバータにおける無効(又は力率)設定点を操作することにより、太陽光発電システムから送出され/太陽光発電システムへ送入される無効電力の操作を伴ってもよい。AVRは、太陽光発電システムの動作を、静的VAR補償器及び容量性バンクなどの無効電力源と調整させるために採用できる。
【0019】
AVRは、変化するグリッド電圧にそれ自体適合することができるが、いくつかの状況では、反応が遅すぎる場合がある。例えば、AVR制御装置が大量の無効電力を吸収することにより、グリッド電圧(例えば、グリッドが1.03puで、かつAVR設定点が1.02pu)を減少させようとする際に、インバータ端子電圧は、発電所内のAC収集サブシステムのインピーダンスに起因してより低い値(例えば、0.96pu)である場合がある。このことにより、インバータ端子電圧は、相互接続点における電圧よりも7%も低くなり得るグリッド電圧がAVR制御装置の応答時間よりも早く、例えば0.97puへ急激に電圧低下し、かつインバータがなお無効電力を吸収している場合、インバータ端子電圧は、非常に低くまで、例えば0.90puまで下がり、インバータが典型的には±10%であり得る狭い動作ウィンドウを有するので、結果としてインバータはトリップして停止することがある。典型的なAVR実装の遅い応答時間に対処するために、本発明の実施形態では、変化するグリッド条件にインバータが急速に適合できるように、制御信号が生成及び操作される。
【0020】
図3は、本発明の実施形態による、太陽光発電システムのための自動電圧調整の方法の流れ図を示す。図3の方法は、図示の目的で図2の構成要素を使用して説明される。
【0021】
図3の例では、プラント制御装置202は、AVR制御装置として機能する。プラント制御装置202は、基準電圧VREFの形式で設定点電圧を受電する。基準電圧VREFを、例えば、SCADA源又はデータ処理ゲートウェイから受電してもよい。基準電圧VREFは、POI204における、所定の、所望される調整された電圧レベルに対応する。
【0022】
一実施形態では、インバータ110は、インバータパッド220のインバータ110の端子において提示されるインバータ基準電圧の関数として、無効電力を生成又は吸収する。この能力を有する市販のインバータの例としては、ドイツのSMA Solar Technology AGのものが挙げられる。他の適切なインバータも使用してもよい。POI204における電圧が高過ぎる(例えば、閾値電圧より高い)ことに応答してインバータ基準電圧が調節される場合、インバータ110は、POI204における電圧を下げるために無効電力を吸収することができる。同様に、POI204における電圧が低過ぎる(例えば、閾値電圧未満である)ことに応答してインバータ基準電圧が調節される場合、インバータ110は、POI204における電圧を上げるために無効電力を生成させることができる。インバータ電子機器はこの機能に特に適しており、いくつかの市販のインバータ110は、1つ、または僅かなACサイクルと同じぐらい速い応答時間を有する。インバータ110の速い応答時間により、インバータ端子電圧は、過渡的なグリッド電圧変化に応答して動作ウィンドウ内に留まることができ、商用電力グリッドがこれを最も必要とする場合に、インバータ110に緊急無効電力を更に生成させることができる。
【0023】
AC収集システム内のインピーダンスのために、POI204における電圧とインバータ110の端子における電圧との間に大きな差がある場合がある。すなわち、インバータパッド220のインバータ110の端子における電圧は、必ずしもPOI204における電圧と同じではない。
【0024】
一実施形態によると、プラント制御装置202は、POI204における電圧の読み取り値をメーター205から受信する。プラント制御装置202は、POI204における所望される電圧(Vref)とPOI204における実際の電圧(VMETER)との間の差を示す誤差信号VERRを生成する。誤差信号が補償器403に提供され、補償器403が誤差信号に基づいてインバータ基準電圧VINV_REFの形式の制御信号を生成する。補償器403は、POI204における所望される電圧と実際の電圧との間の誤差を最小化するように、インバータ基準電圧VINV_REFを調節する。補償器403は、インバータ基準電圧VINV_REFを、最小値(「Min」)と最大値(「Max」)との間に調節する。一実施形態では、補償器403は、比例−積分(PI)制御スキームを使用して、インバータ基準電圧VINV_REFを生成する。使用できる他の制御スキームとしては、比例、積分、微分、比例−積分、積分−微分、比例−微分、及び比例−積分−微分が挙げられる。
【0025】
インバータ基準電圧VINV_REFは、インバータ100により受電され、次いでインバータ100はインバータ基準電圧VINV_REFの値に基づいて無効電力を生成又は吸収する。フィードバックサイクルは継続され、基準電圧VREFにより示される設定点電圧により規定される調整された電圧以内にPOI204における電圧を維持する。
【0026】
図4は、本発明の実施形態による、太陽光発電システム200の更なる詳細を概略的に示す。
【0027】
図4の例では、機能ブロック401〜408及び410〜413は、プラント制御装置202により実行される。明らかなように、これらの機能はソフトウェア、ハードウエア、又はハードウエア/ソフトウェアの組み合わせで実施することができる。例えば、プラント制御装置202は、アナログ入力の直接測定及び制御、データ通信(例えば、イーサネット(登録商標)ネットワークアダプタ)、データ収集(例えば、信号を受信すること)及び制御(例えば、制御信号を送信すること)、並びに関連するドライバソフトウェアのためのハードウエアインターフェースを有するコンピュータを備えてもよい。プラント制御装置202は、その機能を実行するために、アプリケーションソフトウェアと組み合わせて、専用のプロセッサ又はコプロセッサを利用してもよい。プラント制御装置202は、静的なVAR補償器及び容量性のバンクなどの無効電力源と太陽光発電システム200の動作を、調整するために、他の制御装置とマスタースレーブ構成で使用されてもよい。
【0028】
図4を参照すると、プラント制御装置202は、POI204における電圧を設定するための設定点電圧として採用される基準電圧VREFを受電する。加算器401は、基準電圧VREFにより示されるPOI204における所望される電圧と、メーター205により測定されるPOI204における電圧(VMETER)との差に基づいて、誤差信号VERRを生成する。
【0029】
一実施形態では、基準電圧VREF及びメーター電圧の読み取り値VMETERは、プラント制御装置202でデジタル信号として処理される。これらの電圧は、アナログデジタル変換器(ADC)を使用してデジタルに変換され、次いで、データ通信ネットワークを通じてプラント制御装置202に提供され得る。特定の例として、基準電圧VREF及びメーター電圧の読み取り値VMETERは、ModbusTCPレジスタによりプラント制御装置202に提供されてもよい。プラント制御装置202により受信されたコマンド及び入力(基準電圧VREF及びメーター電圧の読み取り値VMETERを含む)について境界検査が行われ得る。
【0030】
基準電圧VREF、メーター電圧の読み取り値VMETER、及び太陽光発電システムの他の電圧/電流は、太陽光発電システム200の他の構成に適切な変更を加えることにより他のタイプの信号により示されてもよい。例えば、電圧信号は、電流信号により示されてもよく、また逆でもよい。別の例として、太陽光発電システムの電圧及び電流は、RMS(実効値)で示されてもよい。
【0031】
不感帯機能(ブロック402)のアンロードは、用途により有効とされても、されなくてもよい。不感帯機能のアンロードは、インバータ110への制御信号を調節せずに、誤差電圧VERRがある範囲内で変化することを可能にする。より具体的には、不感帯機能のアンロードは、グリッド電圧(すなわち、POI204における電圧)が境界(典型的には公称値の±1%)内にある場合に、補償器403への入力が上下に変化するのを可能にし、インバータ110を基準電圧設定に保持し、これによりインバータ110は高力率を送出する。換言すれば、グリッド電圧が、例えば±1%以内の場合、補償器403への入力は、実際にはちょうどグリッド電圧である。グリッド電圧が不感帯限界以内である場合、これは、インバータ110の力率を1に近づけさせる。
【0032】
一実施形態では、補償器403はPI補償器を備える。PI補償器403は、絶対的であることができ、これはインバータ基準電圧VINV_REFが、誤差信号VERR及びPI補償器403の比例ゲイン(Kp)及び積分ゲイン(Ki)に基づいて上下バイアスをかけることを意味する。しかしながら、インバータ基準電圧VINV_REFは、基準電圧VREFにより固定されたままであってもよい。補償器403は、インクリメンタルであってもよい。補償器403は、積分飽和現象(integral windup)保護及び飽和限界を有してもよい。補償器403は、グリッド外乱が発生したときにトリガされるステートマシンロジックにより有効化されても、無効化されてもよい。
【0033】
電圧限界選択機能(voltage limit select function)(ブロック404)は、力率リミッタ(サブループ431)及び無効電力リミッタ(サブループ432)サブループからの入力に基づいて、補償器403のインバータ基準電圧VINV_REF出力を低下又は上昇させる。電圧限界選択機能は、インバータ基準電圧VINV_REFを調節し、これによりインバータ110は、力率限界(PF限界)及び無効電力限界(Q限界)を超える出力を生成しない。
【0034】
POI204においてメーター205により測定された力率が、力率限界(PF限界)に近い、その値である、又は超える場合に、力率リミッタサブループ(サブループ431)がインバータ基準電圧VINV_REFを制限する。メーター205からの力率の読み取り値が、力率フィルタ(PFフィルタ)によりフィルタ処理され、次いで力率限界と比較(ブロック413)される。POI204における力率は、プラントのAC収集システムを通して流れる実際の電力のインピーダンスの変化に起因して、インバータ端子における力率とは必ずしも同一ではないので、力率リミッタサブループは、自身の補償器410を有する。補償器409は、PI又は他の制御スキームを採用してもよい。
【0035】
POI204においてメーター205により測定された無効電力が、無効電力限界(Q限界)に近い、その値である、又は超える場合に、無効電力リミッタサブループ(サブループ432)は、インバータ110の無効電力出力を制限する。メーター205からの無効電力の読み取り値は、無効電力フィルタ(Qフィルタ)によりフィルタ処理され、次いで無効電力限界と比較(ブロック412)される。POI204における無効電力係数は、プラントのAC収集システムを通して流れる実際の電力のインピーダンスの変化に起因して、インバータ端子における無効電力と必ずしも同一ではないので、無効電力サブループは、自身の補償器411を有する。補償器410は、PI又は他の制御スキームを採用してもよい。
【0036】
全体的な比率限界機能(rate limit function)(ブロック405)は、インバータ基準電圧VINV_REFの変化率を制限する。これは、インバータ基準電圧VINV_REFの急速かつ急激な変化に対して保護する。
【0037】
インバータバイアス機能(ブロック406)は、個々のインバータ基準電圧を必要に応じて変更することにより、インバータ機能の停止を補償する。インバータバイアス機能は、個々のインバータ基準電圧を、無効電力のバランサー機能(ブロック408)により計算されたインバータバイアス値に基づいて、上下バイアスをかけてもよい。無効電力のバランサー機能は、プラント制御装置202が通信するすべてのインバータ110からの無効電力出力を検査する。特定のインバータ110が他のインバータ110よりも多くの無効電力を送出/吸収する場合、特定のインバータ110のための個々のインバータ基準電圧VINV_REFは、適宜上下に調節される。無効電力バランサー機能は、インバータ端子から直接インバータ無効電力出力を読み取ってもよい。複数の無効電力フィルタ(Qフィルタ)及び無効電力バランサー408への無効電力入力があるが、図示の明瞭化のために図4には1セットのみが示される。
【0038】
インバータバイアス機能は、インバータ機能の停止を検出するために、ハートビート信号をそれぞれのインバータ110から定期的に受信してもよい。個々の比率制限機能(ブロック407)は、対応するインバータ110に提供される前に、それぞれの個々のインバータ基準電圧VINV_REFに適用される。一実施形態では、インバータ基準電圧VINV_REFは、対応するインバータ110に、ModbusTCPレジスタにより提供される。インバータ基準電圧VINV_REFは、レジスタから読み取られ、アナログ電圧信号に変換され、これは次いで、インバータ110が設置されたインバータパッド220においてインバータ110の端子に提示される。
【0039】
太陽光発電システムのための改善された自動電圧調整技法が開示されてきた。本発明の具体的な実施形態を提供したが、これらの実施形態は説明を目的としたものであり、限定的なものでないことは理解されよう。多くの追加的な実施形態が、本開示を読んだ当業者にとっては明らかとなろう。
【0040】
(項目1)
太陽光発電システムにより生成された電圧を自動的に調整する方法であって、
上記太陽光発電システムにより供給された電圧を電力グリッドとの相互接続点(POI)において測定し、測定グリッド電圧を生成する工程と、
上記測定グリッド電圧を、上記POIに関する設定点電圧を示す基準電圧と比較する工程と、
上記測定グリッド電圧の上記基準電圧との上記比較に基づいてインバータ基準電圧を生成する工程と、
上記電力グリッドへ供給するために、上記インバータ基準電圧を、太陽電池により生成された交流を直流に変換する太陽光発電インバータの位置において上記太陽光発電インバータに提示する工程と、
上記測定グリッド電圧の過渡的変化に応答して上記インバータ基準電圧を調節する工程と
を備える方法。
【0041】
(項目2)
上記インバータ基準電圧が、制御スキームに従って補償器により生成される、項目1に記載の方法。
【0042】
(項目3)
上記制御スキームが比例−積分補償器を含む、項目2に記載の方法。
【0043】
(項目4)
上記インバータ基準電圧の変化率を制限する工程を更に備える、項目1に記載の方法。
【0044】
(項目5)
上記太陽光発電インバータにより生成された無効電力の、上記太陽光発電システム内の他の太陽光発電インバータにより生成された無効電力との比較に基づいて、上記インバータ基準電圧を制限する工程を更に備える、項目1に記載の方法。
【0045】
(項目6)
上記太陽電池が、太陽電池パネル内に搭載された裏面コンタクト型太陽電池を備える、項目1に記載の方法。
【0046】
(項目7)
上記インバータ基準電圧が、データ通信ネットワークを通じて送信されるレジスタにより、上記太陽光発電インバータに提供される、項目1に記載の方法。
【0047】
(項目8)
上記グリッド電圧が閾値電圧よりも高いことを上記測定電圧が示す場合、上記インバータ基準電圧を調節し、上記太陽光発電インバータに無効電力を吸収させる、項目1に記載の方法。
【0048】
(項目9)
上記グリッド電圧が閾値電圧よりも低いことを上記測定電圧が示す場合、上記インバータ基準電圧を調節し、上記太陽光発電インバータに無効電力を生成させる、項目1に記載の方法。
【0049】
(項目10)
太陽光発電システムであって、
複数の太陽電池と、
上記複数の太陽電池により生成された直流を交流に変換する複数の太陽光発電インバータと、
上記太陽光発電システムと電力グリッドとの相互接続点(POI)において測定された測定電圧に基づいてインバータ基準電圧を調節し、かつ上記インバータ基準電圧を上記複数の太陽光発電インバータ内の1つの太陽光発電インバータに提供することにより、上記1つの太陽光発電インバータの無効電力出力を調節し、上記POIにおいて変化するグリッド電圧に応答するプラント制御装置と
を備える、太陽光発電システム。
【0050】
(項目11)
上記POIにおいて上記測定電圧を測定するメーターを更に備える、項目10に記載の太陽光発電システム。
【0051】
(項目12)
上記プラント制御装置と上記複数の太陽光発電インバータとの間のデータ通信リンクを提供する複数のスイッチを更に備える、項目10に記載の太陽光発電システム。
【0052】
(項目13)
上記プラント制御装置が、上記インバータ基準電圧の変化率を制限する、項目10に記載の太陽光発電システム。
【0053】
(項目14)
上記プラント制御装置が、上記インバータ基準電圧をデジタル形式でデータ通信ネットワークを通じて上記1つの太陽光発電インバータに提供する、項目10に記載の太陽光発電システム。
【0054】
(項目15)
上記プラント制御装置が、上記1つの太陽光発電インバータにより生成された無効電力と上記複数の太陽光発電インバータ内の他の太陽光発電インバータにより生成された無効電力との比較に基づいて上記インバータ基準電圧を制限する、項目10に記載の太陽光発電システム。
【0055】
(項目16)
太陽光発電システムにより生成された電圧を自動的に調整する方法であって、
上記太陽光発電システムにより電力グリッドへ提供された電圧を測定し、測定電圧を生成する工程と、
上記測定電圧に基づいて制御信号を生成し、太陽光発電インバータの動作を制御する工程と、
上記測定電圧の変化に応答して上記制御信号を調節し、上記太陽光発電インバータの無効電力出力を調節する工程と
を含む方法。
【0056】
(項目17)
上記制御信号を調節する工程が、
上記測定電圧と基準電圧との間の差に基づいて上記制御信号を調節し、上記太陽光発電インバータに無効電力を吸収させる又は送出させる工程を有する、項目16に記載の方法。
【0057】
(項目18)
上記制御信号が、上記太陽光発電インバータの位置において上記太陽光発電インバータに提供される電圧信号を含む、項目16に記載の方法。
【0058】
(項目19)
上記測定電圧が、上記太陽光発電システムの上記電力グリッドとの相互接続点において測定される、項目16に記載の方法。
【0059】
(項目20)
上記太陽光発電インバータが、裏面コンタクト型太陽電池により生成された直流を交流に変換する、項目16に記載の方法。
図1
図2
図3
図4