(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板、該基板上に形成された主流路、該主流路から分岐し再び主流路に接続する分岐流路、及び該分岐流路に形成され分岐流路の幅より大きな微粒子の捕捉部位を含み、前記主流路が基板の中心から放射状に形成されていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップ。
前記捕捉部位で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路及び前記分岐流路の幅FはY<F<X、前記捕捉部位の幅Gは1X<G<10X、前記主流路、前記分岐流路及び前記捕捉部位の深さHは1X<H<10Xであることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
前記捕捉部位で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路の幅AはY<A<X、前記捕捉部位の幅Bは1X<B<10Xであり、前記捕捉部位の深さCは1X<C<10X、前記捕捉部位における主流路の深さDはY<Dであり、前記捕捉部位以外の主流路の深さEはE=C+Dであることを特徴とする請求項6に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
前記基板上に、放射状に伸びた前記主流路の先端部分を連結する円状の溝部が形成されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
前記捕捉部位で捕捉される微粒子がCTCで、除去される微粒子が血球細胞であることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
前記微粒子分離用マイクロ流路チップに形成されている捕捉部位に捕捉された微粒子を取り出す微粒子抽出手段及び微粒子を検出する検出手段を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の微粒子分離用システム。
前記微粒子分離用マイクロ流路チップの捕捉部位に磁場を発生させる磁場発生装置及び/又は電場を発生させる電場発生装置を更に含むことを特徴とする請求項15〜17の何れか一項に記載の微粒子分離用システム。
【背景技術】
【0002】
CTCはがん患者の末梢血流を循環する腫瘍細胞と定義され、原発腫瘍又は転移腫瘍から血管中へ浸潤した腫瘍細胞である。このCTCの検出は、転移性悪性腫瘍の早期発見の方法の一つとして近年注目されている。その理由は、X線写真や血清中の腫瘍マーカー検出よりも低侵襲かつ正確に転移性悪性腫瘍の診断を行え、患者の予後予測や治療効果の指標として利用できる点にある。
【0003】
CTCは非常に稀少な細胞であり、転移性がん患者の血液に含まれる10
8〜10
9個の血液細胞の内、わずか1細胞程度しか存在しないことが知られている。そのため、末梢血から稀少なCTCを正確に検出するための技術開発に多大な努力が注がれている。これまでに開発されてきた主要な検出方法には、免疫組織化学法、PCR法、フローサイトメトリー法などがある。しかしながら、前述したようにCTCは非常に稀少な細胞であるため、血液をそのままこれらの検出方法に供することは出来ないので、通常は前処理として、CTCの濃縮操作が必須であり、検出法に則したレベルまでCTC存在比を濃縮させる必要がある。
【0004】
CTCの濃縮方法として開発されてきた様々な手法の中で、最も広く利用されているのは、細胞表面の特異的抗原を標的とした腫瘍細胞の濃縮である。その多くは、上皮細胞接着分子(Epithelial cell adhesion molecule:EpCAM)に対するモノクローナル抗体を固定化した磁気微粒子を血液と混合した後、磁石を用いて腫瘍細胞を濃縮する方法をとっている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、EpCAMの発現量は腫瘍のタイプに依存し大きく変動することが知られている。
【0005】
その他の濃縮方法としては、細胞のサイズなどの形態を基準として濃縮する手法がある。白血球に比べてサイズが大きな上皮性腫瘍細胞をフィルトレーションによって選別する方法は、ISET法(Isolation by Size of Epithelial Tumor cells)と呼ばれている。ISETは、孔径8μmのポリカーボネートメンブレンフィルターを用いて血液をフィルトレーションするという簡便な手法であり、安価かつユーザーフレンドリーな手法である。ここで用いられているポリカーボネートメンブレンフィルターは、重イオンを照射した後、エッチングを行うトラックエッチングという手法によって、孔が形成されている。しかし、孔が比較的低密度であり、二つ又はそれ以上の孔が重なりあったりする問題があるため、CTCの捕捉に利用した場合、その捕捉効率は50〜60%とされており、濃縮法が簡便かつ効率も良い手法は未だ開発されていない。
【0006】
CTCの検出を効率的かつ正確なものにするためには、濃縮と検出といった技術を首尾一貫して行うことが必要である。多段階のハンドリング操作、例えば細胞の染色、洗浄、分離、分注などの操作はCTCのロスを引き起こすため、可能な限りこれらの操作を避け、一体の検出装置中で分析が一貫して行える形が好ましい。Cellsearch(VeridexTM,Warren,PA)はCTC検出装置として唯一FDAの認可を受けた装置である。この装置では、全血に対し抗EpCAM抗体固定化磁気微粒子によるCTCの濃縮を行い、腫瘍細胞に対して免疫染色を行った後、自動化蛍光顕微鏡を用いて腫瘍細胞の計数が行われる(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、当該装置を用いる場合、一般的に大型の装置導入と訓練されたオペレーターの確保が必要であり、ベッドサイドで短時間且つ正確に検査をすることは困難である。
【0007】
一方で、CTC検出のための小型のマイクロ流体デバイスも知られている。例えば、Tonerらが開発したCTC検出用マイクロ流体デバイスはCTC−chipと呼ばれ、フォトリソグラフィーによって形成されたシリコン製の流路内に、円筒状構造物(マイクロポスト)が78000個構成されている。このマイクロポストには、抗EpCAM抗体がコーティングされており、本流路に血液を送液すると、血液中のCTCがマイクロポスト上に捕捉される。捕捉されたCTCに対して、上皮細胞マーカー(cytokeratin)をターゲットとした蛍光免疫染色を行い、蛍光顕微鏡を用いて腫瘍細胞の計数が行われる。本装置は、手のひらに乗る小型デバイスでありながら、5mL以上の血液をそのまま分析に供することができるという大きな利点を持っている。実際に転移性がん患者血液からCTC検出を行っており、回収したCTCからチロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性を生む変異を検出することが出来る。しかしながら、CellsearchやCTC−chipを用いたCTC検出は、転移性がん患者血液などの実サンプルを用いた実験が精力的に行われ実績を挙げているが、これらの手法は抗EpCAM抗体でCTCを濃縮するという原理になっている。そのため、EpCAM陰性又は弱陽性の腫瘍細胞は検出できないという問題点が挙げられる。
【0008】
その他の方法としては、腫瘍細胞のサイズと形態を指標として、CTCを検出するマイクロ流体デバイスが開発されている。これらのデバイスでは、その流路構造内にメンブレンマイクロフィルター、三日月型の細胞捕捉ウェル(非特許文献3参照)、4段階の細さの流路(非特許文献4参照)を配して、血液中の血球細胞と腫瘍細胞をサイズによって選別し、腫瘍細胞を選択的に濃縮している。また、その流路を利用して、濃縮後の細胞に対して溶解などの操作を連続的に行うことが出来る。これらのデバイスを用いたモデル腫瘍細胞の回収効率の評価実験においては、80%以上のCTC回収効率を得ている。しかしながら、この評価はあくまでモデル細胞を用いた実験で行われており、実際にCTC検出時に必要となる細胞の染色操作や洗浄操作といった要素技術項目については検討されていない上、がん患者血液などの実サンプルを用いた実験は行われておらず、実際にCTC検出に利用できるかどうかは明らかにされていない。
【0009】
更に、抗EpCAM抗体を使用しない小型のデバイスとしては、マイクロ流路内にマイクロキャビティアレイ(微細貫通孔)を設け、CTCを捕捉することができるマイクロ流体デバイスが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、前記マイクロ流体デバイスは、微細貫通孔にCTCを捕捉するタイプであるので、CTCの目詰まりによる作業効率の低下、更には分離したCTCの回収が困難であるという問題がある。
【0010】
上記問題点を解決するため、本出願人らは、(1)主流路、及び該主流路の幅より大きな捕捉部位が形成された微粒子分離用マイクロ流路チップ、又は(2)主流路、該主流路から分岐し再び主流路に接続する分岐流路、及び該分岐流路に分岐流路の幅より大きな捕捉部位が形成されている微粒子分離用マイクロ流路チップ、を用いて気液界面のメニスカスで生じる力を利用して微粒子を沈降させ、目的とする微粒子のみを捕捉部位で捕捉することができ、特に、サンプルとして濃縮等の前処理をしていない全血を用いても、CTCのみを連続的に分離・回収ができることを新たに見出し、特許出願を行っている(特許文献2参照)。
【0011】
前記特許文献2に記載されている微粒子の分離方法は、微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル用薄板の間にサンプルを注入し、微粒子分離用マイクロ流路チップとシース液用薄板の間にシース液を注入し、微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル用薄板及びシース液用薄板を相対移動させることで発生するメニスカスにより、目的とする微粒子を前記微粒子分離用マイクロ流路チップに形成された捕捉部位に捕捉している。ところで、上記特許出願に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップとサンプル用薄板の間に注入できるサンプル量は100μl程度である。しかしながら、特にがん転移が初期の患者、又はがん治療後の患者の経過観察等、血液細胞に含まれるCTC細胞が非常に少ない患者のサンプルからCTCが含まれているか否かを正確に判断するには、5ml程度の血液サンプルを分析することが好ましく、前記特許文献2に記載されている方法ではサンプルの再導入が必要で、微粒子の分離操作が非常に煩雑になり且つ時間がかかるという問題がある。
【0012】
更に、分離した個々のCTC細胞を分析するためには、PCRで核酸増幅する必要があるが、血液サンプルからCTCを分離・回収し、自動分析を行えるシステムは知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされた発明であり、鋭意研究を行ったところ、(1)基板、該基板上に形成された主流路、該主流路から分岐し再び主流路に接続する分岐流路、及び該分岐流路に形成され分岐流路の幅より大きな捕捉部位を含み、前記主流路が基板の中心から放射状に形成されている微粒子分離用マイクロ流路チップ、又は(2)基板、該基板上に形成された主流路、及び該主流路の幅より大きく且つ主流路上に形成された捕捉部位を含み、前記主流路が基板の中心から放射状に形成されている微粒子分離用マイクロ流路チップ、を該微粒子分離用マイクロ流路チップを回転させる回転手段上に載置し、前記微粒子分離用マイクロ流路チップの表面に、シース液注入口、サンプル注入口、シース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を少なくとも含む移流集積ユニットを配置し、前記回転手段を回転させながら、前記シース液注入口からシース液を注入し、且つ前記サンプル注入口からサンプルを注入し、前記微粒子分離用マイクロ流路チップとシース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を相対移動させてメニスカスを発生させ、吸引手段によりシース液を吸引することで、目的とする微粒子を前記微粒子分離用マイクロ流路チップに形成された捕捉部位に捕捉し、除去される微粒子をシース液とともに微粒子分離用マイクロ流路チップから除去することで、サンプルを前記微粒子分離用マイクロ流路チップに連続的に供給することができ、目的とする微粒子を効率よく捕捉・分離できることを新たに見出した。更に、CTC等の核酸を含む生体材料を捕捉する場合、捕捉部位で捕捉された生体材料を微粒子抽出手段で取り出し、核酸を増幅するPCR手段に移すことで、サンプル中の生体材料の抽出・増幅を自動化できることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明は、微粒子分離用マイクロ流路チップ、移流集積ユニット、微粒子分離用システム及び微粒子分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、以下に示す、微粒子分離用マイクロ流路チップ、移流集積ユニット、微粒子分離用システム及び微粒子分離方法に関する。
【0018】
(1)基板、該基板上に形成された主流路、該主流路から分岐し再び主流路に接続する分岐流路、及び該分岐流路に形成され分岐流路の幅より大きな微粒子の捕捉部位を含み、前記主流路が基板の中心から放射状に形成されていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(2)前記捕捉部位で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路及び前記分岐流路の幅FはY<F<X、前記捕捉部位の幅Gは1X<G<10X、前記主流路、前記分岐流路及び前記捕捉部位の深さHは1X<H<10Xであることを特徴とする上記(1)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(3)前記幅Gが1X<G<2X、前記深さHが1X<H<2Xであることを特徴とする上記(2)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(4)前記幅FがY<F<0.8Xであることを特徴とする上記(2)又は(3)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(5)前記主流路、前記分岐流路及び前記捕捉部位の下方に、幅がF、深さJがY<Jの流路が更に形成されていることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(6)基板、該基板上に形成された主流路、及び該主流路の幅より大きく且つ主流路上に形成された捕捉部位を含み、前記主流路が基板の中心から放射状に形成されていることを特徴とする微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(7)前記捕捉部位で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路の幅AはY<A<X、前記捕捉部位の幅Bは1X<B<10Xであり、前記捕捉部位の深さCは1X<C<10X、前記捕捉部位における主流路の深さDはY<Dであり、前記捕捉部位以外の主流路の深さEはE=C+Dであることを特徴とする上記(6)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(8)前記幅Bが1X<B<2X、前記深さCが1X<C<2Xであることを特徴とする上記(7)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(9)前記幅AがY<A<0.8Xであることを特徴とする上記(7)又は(8)に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(10)前記基板上に、放射状に伸びた前記主流路の先端部分を連結する円状の溝部が形成されていることを特徴とする上記(1)〜(9)の何れか一に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(11)前記捕捉部位で捕捉される微粒子がCTCで、除去される微粒子が血球細胞であることを特徴とする上記(1)〜(10)の何れか一に記載の微粒子分離用マイクロ流路チップ。
(12)シース液注入口、サンプル注入口、シース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を少なくとも含む移流集積ユニット。
(13)シース液吸引パッドを装着する孔及びシース液吸引口を更に含むことを特徴とする上記(12)に記載の移流集積ユニット。
(14)シース液を毛管力で吸引する孔及びシース液吸引口を更に含むことを特徴とする上記(12)に記載の移流集積ユニット。
(15)上記(1)〜(11)の何れか一に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップ、
上記(12)〜(14)の何れか一に記載されている移流集積ユニット、
前記微粒子分離用マイクロ流路チップを回転させる回転手段、及び
シース液吸引手段、
を少なくとも含む微粒子分離用システム。
(16)前記微粒子分離用マイクロ流路チップに形成されている捕捉部位に捕捉された微粒子を取り出す微粒子抽出手段及び微粒子を検出する検出手段を更に含むことを特徴とする上記(15)に記載の微粒子分離用システム。
(17)核酸を増幅するPCR手段を更に含むことを特徴とする上記(16)に記載の微粒子分離用システム。
(18)前記微粒子分離用マイクロ流路チップの捕捉部位に磁場を発生させる磁場発生装置及び/又は電場を発生させる電場発生装置を更に含むことを特徴とする上記(15)〜(17)の何れか一に記載の微粒子分離用システム。
(19)上記(1)〜(11)の何れか一に記載されている微粒子分離用マイクロ流路チップを、
該微粒子分離用マイクロ流路チップを回転させる回転手段上に載置し、前記微粒子分離用マイクロ流路チップ上に、シース液注入口、サンプル注入口、シース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を少なくとも含む移流集積ユニットを配置し、
前記回転手段を回転させながら、前記シース液注入口からシース液を注入し、前記サンプル注入口からサンプルを注入することで前記微粒子分離用マイクロ流路チップとシース液移流集積用平面部及びサンプル移流集積用平面部を相対移動させ、相対移動により発生したメニスカスにより目的とする微粒子を前記微粒子分離用マイクロ流路チップに形成された捕捉部位に捕捉し、
シース液吸引手段によりシース液を吸引することで、除去される微粒子をシース液とともに微粒子分離用マイクロ流路チップから除去することを特徴とする微粒子分離方法。
(20)前記捕捉部位で捕捉される微粒子がCTCで、除去される微粒子が血球細胞であることを特徴とする上記(19)に記載の微粒子分離方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の微粒子分離用システムは、捕捉部位を有する主流路を基板の中心から放射状に設けた微粒子分離用マイクロ流路チップを回転させ、移流集積ユニットに形成されたサンプル注入口からサンプル及びシース液注入口からシース液を連続的に前記微粒子分離用マイクロ流路チップに投入することができる。したがって、例えば、赤血球、白血球等が混在している全血中から前処理なしに含有量の少ないCTCのみを短時間で高精度に分離することができる。そのため、例えば、がん転移が初期の患者又はがん治療後の患者の経過観察等、血液細胞に含まれるCTC細胞が非常に少ない患者のサンプルであっても効率よくCTCを分離することができ、簡便な操作によるベッドサイド型がん診断が可能となる。
【0020】
本発明の微粒子分離用システムに用いられる微粒子分離用マイクロ流路チップは抗EpCAM抗体を使用していないので、CTC陰性又は弱陽性の腫瘍細胞であっても確実に検出することができる。また、本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップは、赤血球、白血球等のサイズの小さい細胞はシース液によりチップの外に流し、CTC等のサイズが大きな細胞は流路に設けた捕捉部位で捕捉することができるので、従来のフィルタタイプのデバイスと異なり、デバイスの目詰まりが無く、連続的に処理することが可能となる。
【0021】
分離する微粒子がCTC等の核酸を含む生体材料の場合、捕捉部位で捕捉された生体材料を微粒子抽出手段で取り出し、核酸を増幅するPCR手段に移すことで、サンプル中の生体材料の抽出・増幅を自動化することができる。
【0022】
また、プレート上の細胞を抽出手段で自動的に抽出して、核酸を増幅するためのPCR手段に移植する公知の細胞ピッキングシステムに回転手段を取り付け、本発明の移流集積ユニット及び微粒子分離用マイクロ流路チップを用いることで、従来装置を微粒子分離用システムとして用いることができる。
【0023】
更に、本発明の微粒子分離用システムに用いられる微粒子分離用マイクロ流路チップは、半導体形成プロセスを用いて量産が可能であることから、CTC検査のコストを大幅に削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、微粒子分離用マイクロ流路チップ、移流集積ユニット、微粒子分離用システム及び微粒子分離方法について詳しく説明する。
【0026】
図1は、本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップ(以下、単に「チップ」と記載することもある。)の一例を示しており、チップ1は、基板10、該基板10の中心11から放射状に形成された主流路12、前記主流路12から分岐し再び主流路12に接続する分岐流路13、該分岐流路13に形成され目的とする微粒子を捕捉する捕捉部位14、を少なくとも含んでいる。また、主流路12の先端部分には、各々の主流路12の先端部分を連結する円状の溝部15が形成されてもよく、後述する移流集積ユニットから注入されたシース液及びサンプル中の除去すべき微粒子を溝部15に導き、シース液吸引手段のシース液に当接する部分18を介して、溝部15から吸引・除去できるようにしてもよい。
【0027】
なお、本発明において、「微粒子」とは、液体に分散できる粒子を意味し、粒子の形態は単独又は凝集状態のどちらでもよい。また、微粒子の大きさは、メニスカスの原理が適用できる範囲であれば特に制限はなく、約1mm以下の大きさであればよい。前記の条件を満たす微粒子であれば、非生体材料又は生体材料を問わず用いることができる。なお、
図1では、捕捉すべき微粒子がCTCで、除去すべき微粒子が血液細胞の例を示している。
【0028】
チップ1は、後述する微粒子分離用システムの回転手段に載置し回転することができれば形状等に特に制限は無いが、スペース及び取扱いの利便性から円形状が好ましい。また、回転手段上に載置した後はチップ1がずれないようにすることが好ましく、回転手段を形成する材料と密着性の高い材料で基板10を形成してもよいし、例えば、回転手段に凸部を形成し基板10に凹部を形成してもよい。基板10の材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、硬質ポリエチレン製等のプラスチック、ガラス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明のチップ1を用いて微粒子を分離する際には、後述する移流集積ユニットのシース液移流集積用平面部(以下、「シース液平面部」と記載することもある。)に対応するエリアでシース液にメニスカスを発生させ、そして、シース液にメニスカスを発生させるエリアより外周側であって、サンプル移流集積用平面部(以下、「サンプル平面部」と記載することもある。)に対応するエリアでサンプルにメニスカスを発生させる。したがって、主流路12は、捕捉部位14が形成されていない部分16及び捕捉部位14が形成されている部分17で形成されてもよいが、様々な形状の移流集積ユニットに対応するため、主流路12の全長に渡り捕捉部位14が形成されていてもよい。
【0030】
図2は、主流路12、該主流路12から分岐し再び主流路12に接続する分岐流路13、該分岐流路13に形成される捕捉部位14の拡大図である。なお、分岐流路13に形成される捕捉部位14は、分岐流路13の途中に形成されてもよいし、
図2の(1)〜(4)に示されるように、捕捉部位14の一部が主流路12と接触していてもよい。
図2(1)は捕捉部位14が円形状の例を示しており、該円形状の捕捉部位14の一部が主流路12と接触しており、(2)は主流路12の流れ方向の鉛直方向に、角が滑らかな略正方形の捕捉部位14が形成された例を示しており、該略正方形の捕捉部位14の一辺が主流路12と接触しており、(3)は主流路12の流れ方向に角を滑らかにした略正方形の捕捉部位14が形成されるとともに主流路12の流れ方向を約90度変化させた例を示しており、前記略正方形の捕捉部位14の一辺が主流路12と接触しており、(4)は分岐流路13に形成された捕捉部位14が略楕円形状の例を示しており、該楕円形状の捕捉部位14の一部が主流路12と接触している。なお、前記(1)〜(4)に記載されている捕捉部位14の形状は単なる例示に過ぎず、例えば、6角形又は8角形の多角形等、微粒子が捕捉できれば他の形状であってもよい。また、1本の分岐流路13に1個の捕捉部位14が形成されてもよいし、複数本の分岐流路に1個の捕捉部位14が形成されてもよい。更に、主流路12及び分岐流路13は、直線又は曲線でもよいし、直線の途中で方向を変える折れ線でもよい。
【0031】
主流路12、分岐流路13及び捕捉部位14の幅及び深さは、捕捉する微粒子の大きさに応じて適宜設定すればよいが、捕捉部位14で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路12及び分岐流路13の幅FはY<F<Xが好ましい。前記捕捉部位14の幅G(なお、捕捉部位14の幅Gとは、捕捉部位14の形状が円形の場合は直径、正方形の場合は1辺、6又は8角形等の多角形や楕円の場合は多角形や楕円の中心を通る最短となる長さを意味する。)は、1X<G<10Xが好ましい。また、前記主流路12、分岐流路13及び捕捉部位14の深さHは、1X<H<10Xの範囲で同じ深さとすることが好ましい。G及びHを10以上にすると、捕捉部位14の大きさに対する分岐流路13の幅が小さくなりすぎ、微粒子の分離・除去の処理能力が低下するので好ましくない。なお、捕捉部位14に連結する分岐流路13の数を複数本設ける場合、微粒子分離の処理能力が向上することから、G及びHは10X以上であってもよい。また、前記の数値は捕捉した微粒子の濃縮等、個々の捕捉部位14で複数個の微粒子を捕捉する場合の範囲であるが、捕捉した微粒子を分析等するために個々の捕捉部位14で捕捉する微粒子を1個とする場合は、1X<G<2X、1X<H<2Xとすることが好ましい。更に、捕捉部位14で捕捉される微粒子が生体細胞等、形状が変化し易い場合は、捕捉部位14で捕捉した生体細胞等が流体力により形状が変化し分岐流路13に流れ出ないようにするため、分岐流路13の幅Fを生体細胞の形状の変化割合に応じて適宜選択すればよく、例えば、CTCの場合は、Y<F<0.8Xとすることが好ましい。なお、主流路及び分岐流路の幅Fについては、前記Fの範囲内であれば同じでも異なっていてもよい。また、主流路12、分岐流路13及び捕捉部位14の深さHは、前記Hの範囲内であれば同じでも異なっていてもよい。更に、本発明では、捕捉部位14の下方に流路を形成してもよい。その場合、主流路12、分岐流路13及び捕捉部位14の下方に、幅がF、深さJがY<Jの流路を更に設ければよく、
図2(5)は更に流路を設けた際の捕捉部位14部分の断面図を表している。
【0032】
例えば、全血からCTCを捕捉し、CTC以外の赤血球、白血球等の細胞を除去する場合、主流路12及び分岐流路13の幅Fは、CTCの直径(15〜30μm)よりは小さく、血球細胞(約7μm)より大きくすればよく、8〜12μmが好ましい。一方、捕捉部位14は、CTCを捕捉する必要があることから、捕捉部位14の幅は、CTCの直径より大きい必要がある。例えば、
図2(1)に示す捕捉部位14が円形状の場合は、直径Gが16〜36μmであることが好ましく、
図2(2)及び(3)に示す捕捉部位14が略正方形の場合は、一辺Gが、16〜36μmであることが好ましく、
図2(4)に示す捕捉部位14が略楕円形状の場合は、短軸Gが16〜36μmであることが好ましい。なお、捕捉部位14の形状が多角形の場合は、上記のとおり、中心を通る最短となる線の長さが16〜36μmとすればよい。
【0033】
図2(1)〜(4)に示される捕捉部位を含むチップ1の場合、CTCは捕捉部位14にトラップされるが、後述するシース液は主流路12を流れるため、CTCはシース液の流体力を受けることがない。さらに、CTCより小さな血球細胞の多くは、後述するシース液と共に主流路12を流れ、捕捉部位14に流入してしまった血球細胞は、捕捉部位14から更に伸びている分岐流路13を通り再び主流路12に戻すことができる。したがって、
図2に示されるチップ1では、CTCとCTC以外の細胞の主要な流れが異なることから、捕捉部位14の下方に流路を形成することは必須ではない。下方に流路を設けない場合、主流路12、分岐流路13及び捕捉部位14の深さは16〜36μmが好ましい。捕捉部位14の下方に流路を設ける場合は、捕捉部位14の下方の流路の深さは8〜20μmが好ましく、捕捉部位14以外の主流路12及び分岐流路13については、捕捉部位14と流路の深さを合計した深さとすればよい。
【0034】
上記の例は、全血からCTCを分離する場合の大きさであるが、例えば、腹腔洗浄液において血球細胞または中皮細胞(約7〜15μm)から胃がん細胞塊(25〜50μm)を分離する場合は、主流路12及び分岐流路13の幅Fは8〜24μmとすればよく、主流路12、分岐流路13及び捕捉部位14の幅G及び深さHは26μm〜60μmとすればよい。
【0035】
図1の溝部15の幅及び深さは、主流路12からシース液が流入できれば特に制限は無いが、溝部15の幅は、シース液吸引手段のシース液に当接する部分18より大きくすることが望ましい。また、溝部15の深さは、シース液がスムーズに流れ込むようにするため、主流路12と同じ深さにすることが好ましい。
【0036】
図3は、本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップの他の実施形態を示す図で、溝部15は
図1に示す形状に限定されず、例えば、放射状に伸びた各主流路12の先端部分を連結する円形状の幅をシース液吸引手段のシース液に当接する部分18より小さくし、シース液吸引手段のシース液に当接する部分18の一部が溝部15に重なるように配置してもよい。また、溝部15を形成することは必須ではなく、例えば、
図4に示すように、主流路12の先端部分に、シース液吸引手段のシース液に当接する部分18を当接するようにしてもよい。
【0037】
図5(1)は、主流路20及び捕捉部位21の他の形態を示しており、本形態では、分岐流路を形成せず、主流路20上に捕捉部位21を配置している。捕捉部位21の形状は、前記捕捉部位14と同様、円形、略正方形、6角形や8角形等の多角形、楕円形等、目的とする微粒子を捕捉できるものであれば特に制限は無い。また、捕捉部位の幅の定義も捕捉部位14と同様である。
【0038】
図5(2)は、
図5(1)の主流路20上に捕捉部位21が形成されていない位置a−aの断面図、
図5(3)は主流路20上に捕捉部位21が形成されている位置b−bの断面図である。主流路20の幅及び深さ、捕捉部位21の幅及び深さは、捕捉する微粒子の大きさに応じて適宜設定すればよいが、本形態では、
図5(3)に示す下段部分の流路で除去すべき微粒子をシース液を用いて排出し、上段の捕捉部位21で目的とする微粒子を捕捉することから、前記捕捉部位21で捕捉される微粒子の大きさをX、分離・除去される微粒子の大きさをYとした場合、前記主流路20の幅AはY<A<X、前記捕捉部位21の幅Bは1X<B<10X、前記捕捉部位21の深さCは1X<C<10X、前記捕捉部位21における流路の深さDはY<Dとすることが好ましく、前記捕捉部位21以外の流路の深さEはE=C+Dとすることが好ましい。B及びCを10以上にすると、捕捉部位21の大きさに対する主流路20の幅Aが小さくなりすぎ、微粒子の分離・除去の処理能力が低下するので好ましくない。なお、前記の1X<B<10X、1X<C<10Xは、捕捉部位21の下段の主流路20が一本の例であるが、捕捉部位21の下段に複数本の主流路20を設けて微粒子分離の処理能力を上げれば、B及びCは10X以上であってもよい。
【0039】
また、前記捕捉部位14と同様、個々の捕捉部位21で捕捉する微粒子を1個とする場合は、1X<B<2X、1X<C<2Xとすればよく、目的の微粒子がCTCの場合は、前記主流路20の幅AをY<A<0.8Xとすることが好ましい。
【0040】
全血から、CTCを捕捉し、CTC以外の赤血球、白血球等の血球細胞を除去する場合も、前記と同様、主流路20の幅Aは8〜12μmが好ましく、捕捉部位21の幅B及び深さCは16〜36μmが好ましい。
【0041】
また、捕捉部位21においては、
図5(3)で示される上段部分でCTCを捕捉し、下段部分でシース液により血球細胞を除去することから、捕捉部位21が形成されている部分の主流路20の下段部分の深さDは、少なくとも血球細胞の直径より大きい必要があり、また、1以上の血球細胞を同時に除去できることが好ましいことから、深さDは、8〜20μmが好ましい。捕捉部位21が形成されていない主流路20の深さEはC+Dとすればよい。
【0042】
上記の例は、全血からCTCを分離する場合の大きさであるが、例えば、腹腔洗浄液において血球細胞または中皮細胞(約7〜15μm)から胃がん細胞塊(25〜50μm)を分離する場合は、主流路20の深さDは8〜24μmとすればよく、捕捉部位21の幅B及び深さCは26μm〜60μmとすればよい。
【0043】
チップ1に形成される主流路12、20の数は少なくとも2以上であって、隣の主流路に形成されている捕捉部位14、21に干渉しなければ、形成する主流路の数は特に制限は無い。また、各主流路12、20に形成される捕捉部位14、21の数は少なくとも1以上で、主流路12、20の長さ、形成する捕捉部位の幅等を考慮し適宜調整すればよい。また、主流路12,20の形状は直線でも良いし、
図1に示すように曲線であってもよい。本発明においては、チップ1と移流集積ユニットを相対移動することでメニスカスを発生させているが、チップ1は基板10の中心11を中心に回転していることから、シース液平面部及びサンプル平面部におけるメニスカスが発生するラインは直線ではなく曲線になる。したがって、メニスカスが発生するラインと主流路12、20のラインは一致した方が好ましく、また捕捉部位数を多く確保するためにも、主流路12、20は曲線の方が好ましい。曲線の曲がり具合は、チップ1の回転速度等を考慮しながら、適宜調整すればよい。
【0044】
前記チップ1は、フォトリソグラフィー技術を用いて作製することができる。
図6は作製手順の一例を示したフローチャートで、
図5に示すように捕捉部位21の下に流路が設けられている2段形状のチップを作製する場合の2段露光技術を用いた手順を示している。
【0045】
先ず、シリコン基板を超音波洗浄機により有機洗浄し、ベイクする。次いで、
図6に示す以下の手順で作製する。
1.ネガティブフォトレジスト(SU−8)をSiの基板上にスピンコートし、ホットプレート上でプリベイクする。
2.捕捉部位、捕捉部位以外の主流路部分及び溝部を形成するためのクロムマスク等のフォトマスクを用い露光する。
3.ホットプレート上でポストエクスポージャーベイクを行い、現像液(PMシンナー等)を用い現像した後、超純水を用いリンスし、スピンドライヤー等で水分をとばし乾燥させる。
4.2段目のSU−8のネガティブフォトレジストをスピンコートし、プリベイクする。
5.捕捉部位の下段の主流路、捕捉部位以外の主流路部分及び溝部を形成するためのクロムマスク等を用い露光する。
6.ポストエクスポージャーベイク、現像、リンスを行い、パターンを形成する。
7.形成されたパターンを、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に転写する。
8.形成されたパターンからPDMSを分離する。
9.PDMS表面を親水化する。
【0046】
有機洗浄は、アセトン、エタノール等、半導体製造分野で一般的に用いられている洗浄剤であれば特に制限はされない。また、上記の手順では、基板としてSiを用いた例を示したが、フォトリソグラフィー技術分野で一般的に用いられている材料であれば基板の材料は特に限定はされず、例えば、シリコンカーバイド、サファイア、リン化ガリウム、ヒ化ガリウム、リン化ガリウム、窒化ガリウム等が挙げられる。ネガティブフォトレジストもSU−8に限定されず、例えば、KMPR等、また、ポジティブフォトレジストであれば、例えば、PMER、AZ等一般的に使用されているレジストを用いることもできる。
【0047】
上記の手順は、捕捉部位21の下側に主流路20を形成する場合の手順であるが、
図2に示されるような主流路12、分岐流路13、捕捉部位14及び溝部15が同じ深さの場合は、それらの形状のマスクを用い、上記手順「4.〜6.」の2段目のレジスト層を設ける手順を省略する以外は、上記と同様の手順で作製することができる。
【0048】
チップ1の表面は親水化処理されることで、マイクロチップに液体を注入した際、溝に気泡が入ることを防止できる。親水化処理方法等しては、プラズマ処理、界面活性剤処理、PVP(ポリビニルピロリドン)処理、光触媒等が挙げられ、例えば、チップ表面を10〜30秒間プラズマ処理することで、チップ表面に水酸基を導入することができる。
【0049】
図7は、本発明の微粒子分離用システム(以下、単に「システム」と記載することもある。)30の概略を示す図で、チップ1を載置して回転させる回転手段40、移流集積ユニット50、図示しないシース液吸引手段を少なくとも含んでおり、捕捉部位で捕捉した微粒子を取り出す場合は微粒子抽出手段70を含んでもよい。更に、捕捉した微粒子が核酸を含む生体材料で、分離後にPCRを行う場合はPCR手段80を含んでいてもよく、
図7ではPCRに用いられるウェルを配置した例を示している。また、後述する移流集積ユニットのシース液注入口にシース液を送液するシース液インジェクション61及びサンプル注入口にサンプルを送液するサンプルインジェクション62を設けてもよい。シース液インジェクション61及びサンプルインジェクション62は、送液できるものであれば特に制限は無く、シリンジ等を用いて手動で送液してもよいし、市販の定流量ポンプ等を用いてもよい。また、送液に動力を使用せず、ボトル等から重量により滴下してもよく、その場合、点滴の流量調整に用いられるクレンメを設けて流量を調整してもよい。
【0050】
図8は、回転手段40によりチップ1と移流集積ユニット50を相対移動させた際に発生するメニスカスの原理を説明する図で、移流集積法と呼ばれる、気液界面に存在する微粒子間の毛管力(特に横毛管力:lateral capillary forceと呼ばれる。)を利用して、微粒子同士を細密充填構造に配列する手法を用いている。チップ1と移流集積ユニット50のシース液平面部53及びサンプル平面部54を相対移動すると、微粒子が溶液に分散した懸濁液のメニスカスがチップ1とシース液平面部53及びサンプル平面部54に間に形成され、メニスカスの先端において、
図8に示すように微粒子が溶液から頭を出す箇所が形成される。この頭が出ている箇所では、界面張力及び重力により下に押し付けられる力が微粒子に発生しながらメニスカスと共に移動し、微粒子はチップ1に押し付けられ、そして目的とする微粒子が主流路に形成された捕捉部位に捕捉される。
【0051】
回転手段40は、チップ1を載置して回転できるものであれば特に制限は無く、例えば、チップ1を載置できる回転可能な円盤の下にモーター等の駆動手段を設けて、円盤を回転するようにすればよい。なお、発生するメニスカスの大きさを一定にすることが好ましいことから、駆動手段は円盤を一定速度で回転制御できるものであることが好ましい。
【0052】
図9は、移流集積ユニット50の構成と、システム30に移流集積ユニット50とチップ1をセットした際の位置関係を示す写真である。移流集積ユニット50は、シース液注入口51、サンプル注入口52、シース液平面部53及びサンプル平面部54が少なくとも形成されている。また、本発明の移流集積ユニット50には、シース液吸引パッドを装着又はシース液を毛管力で吸引する孔55、該孔55に連通し図示しないシース液吸引装置と接続するためのシース液吸引口56が設けられていてもよい。シース液平面部53及びサンプル平面部54は、チップ1と相対移動することでメニスカスを発生させるため、チップ1に相対する面は平面形状であることが好ましい。また、シース液平面部53及びサンプル平面部54とチップ1との間でメニスカスが発生し、シース液平面部53及びサンプル平面部54以外ではメニスカスが発生する必要は無いことから、移流集積ユニットのシース液平面部53及びサンプル平面部54は、他の部分より厚くし段差を設ける必要がある。一方、孔55に関しては、孔55にシース液吸引パッドを装着する場合は、シース液吸引パッドがシース液に当接するように、シース液吸引パッドを装着する孔55からの突出量を調整すればよいので、孔55は前記他の部分と同じ面に形成してもよいし、シース液平面部53及びサンプル平面部54と同じ高さとなる位置に孔55を設ける平面部を形成し、該平面部に孔55を形成してもよいし、孔55は溝部15に対応して設けられることから、孔55を設ける平面部をシース液平面部53及びサンプル平面部54より厚くしてもよい。また、孔55をシース液を毛管力で吸引する孔として用いる場合には、孔55はチップ1と摩擦が発生しない程度でほぼ当接するように配置することが好ましい。後述するように、チップ1とシース液平面部53及びサンプル平面部54は、500〜1000μm離れた位置にセットされるので、シース液を毛管力で吸引する孔55を形成する平面部は、シース液平面部53及びサンプル平面部54より500〜1000μm程度、厚めに形成することが好ましい。
【0053】
また、
図9に示すように、シース液注入口51はシース液平面部53内に、サンプル注入口52はサンプル平面部54内に形成されてもよいし、移流集積ユニット50とチップ1を相対移動させる際に、シース液平面部53の上流側にシース液注入口51を、サンプル平面部54の上流側にサンプル注入口52を形成してもよい。システム30にチップ1と移流集積ユニット50をセットする際、チップ1に捕捉部位14が形成されていない部分16がある場合は、シース液平面部53は前記部分16に対応してセットされ、サンプル平面部54は捕捉部位が形成されている部分17に対応してセットされる。したがって、シース液平面部53は前記部分16と一部が対応していれば形状は特に制限は無いが、前記部分16と同心となる2つの円弧を含む形状に形成されることが好ましく、前記2つの円弧の幅を前記部分16と同じ幅R1とすることがより好ましい。円弧の長さは適宜調整すればよい。サンプル平面部54も同様に、前記部分17と一部が対応していれば形状は特に制限は無いが、前記部分17と同心となる2つの円弧を含む形状に形成されることが好ましく、前記2つの円弧の幅を前記部分17と同じ幅R2とすることがより好ましい。円弧の長さは適宜調整すればよい。本実施形態においては、シース液吸引パッドを装着する孔55は溝部15に対応するように配置されるので、該孔55はシース液吸引パッドを装着でき溝部15より小さければ孔55の幅及び形状に特に制限はないが、溝部15と同心となる円弧状の孔であることが好ましい。また、シース液吸引口56は前記孔55に連通していれば形成する個数、位置は特に制限は無く、適宜調整すればよい。
【0054】
図10はシステム30の移流集積ユニット50を斜め上から拡大撮影した写真で、移流集積ユニット50は、回転手段40に載置されたチップ1との間隔を保つための高さ調整手段57に取り付けられている。高さ調整手段57は、螺子等により移流集積ユニットの高さを調整できるものであれば特に制限は無い。また、移流集積ユニット50を使用する際には、シリコン等のチューブ58を介して、シース液注入口51はシース液インジェクション61、サンプル注入口52はサンプルインジェクション62、及びシース液吸引口56は図示しないシース液吸引装置に接続すればよい。
【0055】
シース液吸引手段は、チップ1の溝部15又は主流路12、20からシース液を吸引できるものであれば特に制限は無い。例えば、布、コットン、スポンジ、セーム皮等のシース液吸引パッドを直接又は移流集積ユニット50の孔55を介して溝部15又は主流路12、20に当接してシース液を吸引すればよい。
【0056】
また、孔55にシース液吸引パッドを挿入する代わりに、孔55の幅を毛管力が発生する幅に調整し、孔55を溝部15又は主流路12、20に当接することで、毛管力によりシース液を吸引してもよい。その場合、孔55の幅は、少なくともシース液と共に除去された微粒子を通過させる必要があることから、サンプルが全血の場合は少なくとも8μm以上、処理能力を上げるためには10μm以上とすることがより好ましい。一方、孔55の幅は毛管力が発生すれば特に上限は無く、吸引するシース液量や毛管力等を考慮して適宜調整すればよく、例えば、200μm程度の幅を設けてもよい。
【0057】
シース液吸引手段としては、上記に例示した他、吸引ポンプ等の吸引装置を用い、該吸引装置に接続する吸引口を溝部15又は主流路12、20に当接してシース液を吸引してもよい。なお、本発明においては、主流路12、20を流れるシース液の流速は、シース液吸引手段の吸引力で調整する。そのため、微粒子の分離に使用するシース液量及びサンプル量が多くなり、シース液吸引パッド又は毛管力を発生させる孔が、シース液で飽和状態になるとシース液の吸引速度が安定しなくなるおそれがある。そのため、シース液の流速をより安定に保てるよう、上記のシース液吸引手段を組合せて用いてもよい。例えば、コットン等のシース液吸引パッドの一端をシース液に接触させてシース液を吸収しつつ、吸引ポンプ等の吸引装置を用いて、シース液吸引パッドの他端からシース液吸引パッドに吸収されたシース液を吸引してもよい。また、シース液を毛管力で吸引できる孔55の一端から毛管力によりシース液を吸引しつつ、前記孔55に連通する吸引口から吸引装置でシース液を吸引してもよい。更に、移流集積ユニット50に前記孔55を設けず、シース液吸引ポンプ等の吸引装置に接続する吸引口を毛管力が発生する大きさ又は吸引口に吸引パッドを差し込み、前記吸引口を溝部15や主流路12、20に当接するようにしてもよい。
【0058】
図11は、移流集積ユニット50の側面からの写真で、孔55に、シース液吸引パッド59を装着し、シース液吸引口56にシリコン等のチューブ58を連結している状態を示す写真である。シース液吸引パッド59の下端はチップ1の溝部15のシース液に接触し、シース液吸引パッド59に吸引されたシース液は、シース液吸引口56に接続しているシリコン等のチューブ58を介して接続している吸引ポンプ等の吸引装置により吸引され、シース液吸引パッド59から排除される。
【0059】
移流集積ユニット50を構成する材料は、アクリル、ナイロン、テフロン(登録商標)等の樹脂、又はガラス等、サンプルやシース液と反応しないものであれば特に制限はない。移流集積ユニット50は、ドリル及びエンドミル等の切削工具を用いた切削加工、又は移流集積ユニット50の形状のモールドを作製し射出成形により作製することができる。なお、本発明における移流集積ユニット50は、シース液注入口51、サンプル注入口52、シース液平面部53及びサンプル平面部54、更に必要に応じて形成される孔55及びシース液吸引口56が含まれていれば、単一の部材で形成されていても、別々に作製した部材を組み合わせてもよい。
【0060】
微粒子抽出手段70は、捕捉部位14、21で捕捉された微粒子を抽出できるものであれば特に制限は無く、例えば、細胞吸引手段を備えたマニピュレータ等が挙げられる。前記微粒子抽出手段70は、捕捉部位14、21に捕捉された目的とする微粒子を検出する検出手段90と連動したマニピュレータにより自動的に回収できるようにすればよく、例えば、特開2010−29178号公報に記載されているような細胞ピッキングシステムを用いることができる。また、検出手段90としては、捕捉された微粒子がCTCの場合、FITCやPEで標識された抗EpCAM抗体等のCTC特異的な抗体を用いて蛍光染色したCTCを観察できる蛍光顕微鏡等を用いることができる。また、光学顕微鏡を用いて明視野観察を行う場合には、パパニコロウ染色やギムザ染色を行うことで細胞内の核、細胞質等の形態的特徴を指標としてCTC検出を行うことが出来る。
【0061】
微粒子抽出手段70で抽出した微粒子が核酸を含む生体材料で、抽出後にPCRを行う場合は、PCR手段80に抽出した生体材料を移せばよい。また、PCR手段は公知の装置を用いればよい。
【0062】
次に、システム30を用いた微粒子分離方法について説明する。
図12はシステム30の全体を示す写真で、回転手段40の上にチップ1が載置され、チップ1から500〜1000μm離れた位置に移流集積ユニット50のシース液平面部53及びサンプル平面部54が位置するように配置されている。チップ1と移流集積ユニット50のシース液平面部53及びサンプル平面部54との間隔が500μm以下であるとサンプル液の導入量が減少し処理能力が低下し、1000μm以上であるとメニスカス力が低下し十分な分離が得られない。
【0063】
シース液は、分離すべき微粒子に損傷等を与えないものであれば特に制限はなく、全血をサンプルとして用いる場合は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝液等各種緩衝液、疑似体液(SBF)、一般的な細胞培養液等、一般的に使用されているシース液であれば特に制限はない。
図12に示す例では、ボトル61に貯めたシース液を重力により滴下し、その際クレンメを用いて流量を調整している。サンプルはシリンジ62に入れ、重力により滴下している。サンプルは、全血の場合はそのまま注入してもよいし、非生物材料又は生物材料の混合物から目的とする微粒子を分離・抽出する場合は、上記シース液と同様の組成の溶液に懸濁してもよい。
【0064】
シース液平面部53とサンプル平面部54は半径方向の位置が異なるので、チップ1を回転させた場合の両者の相対速度は異なるが、何れも、チップ1との相対速度が50〜1500μm/sの範囲となるようチップ1を回転させることが好ましく、60〜1000μm/sがより好ましい。50μm/sより遅いと処理時間が長くなり処理能力が低下し、1500μm/sより速いと微粒子が捕捉されずに分離効率が低減する。なお、
図12に示すシステムでは、移流集積ユニット50を固定しチップ1を回転させているが、チップ1を固定して移流集積ユニット50を回転させてもよい。
【0065】
注入するサンプル量は、1.0〜10.0μl/sが好ましい。1.0μlより少ないと処理時間が長くなり処理能力が低下し、10.0μlより多いと移流集積ユニットのサンプル平面部とチップの間にサンプルを保持できなくなり好ましくない。主流路12を流れるシース液の流速は、主流路の深さ及び幅や捕捉部位の形状及び大きさ等により異なるものの、10〜1000μm/sが好ましく、100〜700μm/sがより好ましくい。10μm/sより遅いと血球細胞を洗浄する能力の低下により分離効率が低減し、1000μm/sより速いと捕捉されたCTCが吸引され分離効率が低減する。シース液の流速は、シース液吸引手段の吸引力により調整すればよい。また、シース液は、吸引されるシース液の量と同じになるように注入すればよい。
【0066】
図13は、本システムを用いて微粒子を分離した後に、捕捉部位で捕捉した微粒子を取り出す様子を示している。微粒子の取り出しの際には、微粒子抽出手段70が移動し易くするため、移流集積ユニット50を取り付けている高さ調整手段57をX,Y,Z軸方向に移動できるようにしておき、チップ1から離間できるようにしてもよい。検出手段90により検出された目的の微粒子は、微粒子抽出手段70で吸引され、PCR手段80のウェルに移される。
【0067】
本発明のシステム30は、微粒子の捕捉効率を上げるための磁場発生装置及び/又は電場発生装置等を設けてもよい。例えば、チップ1の捕捉部位が形成されている部分17に対応する回転手段40の円盤部分を永久磁石等で形成してもよいし、前記部分17に対応する円盤部分の下側に磁場発生装置として永久磁石又は電磁石を設置して磁場ポテンシャル場を発生させてもよい。EpCAM抗体等を標識した磁性粒子を特異的に吸着させたCTC、又は磁性粒子を非特異的に吸着させたCTC(エンドサイトーシスから取り込む)等、捕捉したい粒子に磁性を帯びさせた上で、本発明の微粒子分離用システムを用いると、磁性標識されていない他の微粒子から精度よく目的とする微粒子を分離することが可能である。
【0068】
また、捕捉部位に対応する円盤部分又は当該円盤部分の下側に、電場発生装置として電極を設けて電場ポテンシャル場(不均一電場中)を発生させ、CTCと周囲媒質の分極と電場の勾配により生じる静電気力(クーロン力)を用いてCTCの捕捉をアシストすることも可能である。
【0069】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
【実施例】
【0070】
〔微粒子分離用マイクロ流路チップの作製〕
<実施例1>
先ず、シリコン基板をアセトン・エタノール・超純水の順に、45kHzで5分間ずつ超音波洗浄機により有機洗浄し、145℃で20分間ベイクした。次に、シリコン基板上にSU−8をスピンコートし、ホットプレート上で95℃で30分間、プリベイクした。次に、捕捉部位14が
図2(4)の形状で、溝部15が
図1に示す形状のクロムマスクを用い露光後、ホットプレート上で95℃で2分間、ポストエクスポージャーベイクを行い、PMシンナーを用い現像した。現像後は、超純水を用いリンスし、スピンドライヤー等で水分をとばし乾燥させた。形成されたパターンを、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に転写し、転写後、両者を分離し、PDMS表面をプラズマ処理(周波数50kHz,出力700W、30秒間)により親水化した。
【0071】
図14(1)は実施例1で得られたチップの外観を示す写真で、チップの中心11は直径5mmの孔、主流路に捕捉部位が形成されていない部分16の幅は10mm、主流路に捕捉部位が形成されている部分17の幅は10mm、溝部15の幅は10mmであった。また、主流路、捕捉部位、溝部の深さは約30μmであった。
図14(2)は、主流路、分岐流路、捕捉部位を拡大した写真で、主流路及び分岐流路の幅Fは約8μm、捕捉部位の中心を通る最短となる線の長さGは約30μmであった。また、主流路の中心と隣の主流路の中心の距離は約66μmで、形成した主流路の数は736本、捕捉部位の数は62652個であった。
【0072】
<実施例2>
図4に示されているように、溝部を形成せず主流路を伸ばした以外は、上記実施例1と同様の手順でチップを作製した。
【0073】
〔移流集積ユニットの作製〕
<実施例3>
移流集積ユニットは、アクリルを材料にして、切削工具(三菱マテリアル社製のドリル及びエンドミル)を用いた切削加工により作製した。
図15は実施例2で作製した移流集積ユニットをチップ1に対面する方向から撮影した写真で、シース液注入口51、サンプル注入口52、及びシース液吸引口56の孔のサイズは直径2mmであった。また、シース液平面部53の2つの円弧の幅は8mm、短い円弧の長さは4.1mmで、サンプル平面部54の2つの円弧の幅は10mm、短い円弧の長さは9.2mmであった。更に、孔55の幅は4mm、孔55の円弧の長さは46mmであった。
<実施例4>
シース液を毛管力で吸引する孔55の幅を150μm、前記孔55を設ける平面部をシース液平面部及びサンプル平面部より約500μm厚くした以外は、上記実施例3と同様の手順で移流集積ユニットを作製した。
図16は、実施例4で作製した移流集積ユニットのシース液を毛管力で吸引する孔55部分の拡大写真である。
【0074】
〔血液サンプルの作製〕
採取したヒト血液20μlに、10×10
5個の緑色蛍光タンパク質(GFP)導入MKN−45(人胃がん)細胞を添加して、がん患者の血液を模した血液サンプル(CTCを含む全血)を作製した。なお、がん細胞の平均粒径は25μmであった。
【0075】
<実施例5>
〔血液サンプルからのCTC分離実験〕
実施例1で作製した微粒子分離用マイクロ流路チップをシステム30の回転手段40の上に載置し、実施例2で作製した移流集積ユニットを前記微粒子分離用マイクロ流路チップとの間隔が約500μmとなるようにセットした。また、移流集積ユニットの孔55には、微粒子分離用マイクロ流路チップの溝部15に均一に当接するようにコットンを挿入した。回転手段40を0.3rpmで回転しながら、主流路を流れるシース液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS))の速度が600μm/sとなるようにシース液を貯めたボトルからクレンメを用いてシース液を供給する一方、シース液吸引口56にシリコンチューブ(アズワン社製)の一端を接続し、他端をマイクロシリング(KD Scientific社製)に接続してシース液を吸引した。また、サンプルは8.3μl/sとなるように供給した。捕捉されたCTCは、蛍光顕微鏡により確認した。
【0076】
上記実施例5の結果を表1に示す。なお、表1中、「1視野あたりの細胞数」とは、上記〔血液サンプルの作製〕で作製したサンプルのみをチップ1上にメニスカスを発生させずに塗布し、チップ1上で選択した任意の4か所(表1中のa〜d)に含まれるCTC細胞の数を表す。「捕捉された細胞数」とは、実施例5によりメニスカスを発生させ且つシース液を流すことで血液細胞を除去しながら前記任意の4か所(a〜d)の捕捉部位で捕捉されたCTCの数を表す。表1に示すように、実施例5においては、サンプル中の約60%のCTCを捕捉することができた。従来の抗EpCAM抗体を用いたCTCの捕捉の場合、血中のCTCの100乃至1000分の1程度しか捕捉することができないといわれているが、本発明の微粒子分離用マイクロ流路チップを用いると、非常に効率よくCTCを捕捉できることが明らかとなった。
【0077】
【表1】
【0078】
<実施例6>
〔主流路を流れるシース液の速度変化実験〕
実施例2で作製したチップ及び実施例4で作製した移流集積ユニットを用い、チップと移流集積ユニットのシース液平面部及びサンプル平面部の間隔が約500μm、チップと移流集積ユニットの孔55がほぼ当接するようにセットした以外は、実施例5と同様の条件で実験を行った。実験中、任意の間隔で主流路を流れるシース液の流速をビデオ撮影により測定したところ、シース液が移流集積ユニットの孔から毛管力により吸引が開始された以降は、シース液がほぼ一定の流速で主流路を流れたことを確認できた。