特許第6244594号(P6244594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6244594-老化抑制剤 図000009
  • 特許6244594-老化抑制剤 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244594
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】老化抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/122 20060101AFI20171204BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20171204BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A61K31/122
   A61K36/185
   A61P17/00
   A61P17/16
   A61P43/00 107
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-190429(P2013-190429)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-17081(P2015-17081A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年4月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-49645(P2013-49645)
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-122120(P2013-122120)
(32)【優先日】2013年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載開始年月日(販売開始年月日):平成25年3月15日 掲載アドレス:http://a−kazoku.emotent.jp/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載開始年月日(販売開始年月日):平成25年3月15日 掲載アドレス:http://a−kazoku.emotent.jp/item/coq10/index.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載開始年月日(販売開始年月日):平成25年3月15日 掲載アドレス:https://a−kazoku.emotent.jp/voice/index.html#02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載開始年月日(販売開始年月日):平成25年3月15日 掲載アドレス:https://www.emotent.jp/user/shopping.php
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載開始年月日(販売開始年月日):平成25年3月15日 掲載アドレス:https://www.emotent.jp/user/routineup.php?itcode=KBC023&catalog=3
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載開始年月日(販売開始年月日):平成25年3月15日 掲載アドレス:http://a−kazoku.emotent.jp/campaign/coq10/coq001−a/
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(73)【特許権者】
【識別番号】504245033
【氏名又は名称】株式会社エモテント
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
(72)【発明者】
【氏名】草場 宣廷
(72)【発明者】
【氏名】古賀 裕章
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 英司
(72)【発明者】
【氏名】古庄 愛
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/116450(WO,A1)
【文献】 特開2008−127341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/122
A61K 36/185
A61P 17/00
A61P 17/16
A61P 43/00
A61K 8/9789
A61K 8/35
A61Q 19/00
A61Q 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元型コエンザイムQ10とザクロ果実エキスとを含む経口用の皮膚の老化抑制剤。
【請求項2】
還元型コエンザイムQ10とザクロ果実エキスとを含む経口用の皮膚のハリ改善剤。
【請求項3】
還元型コエンザイムQ10とザクロ果実エキスとを含む、経口用の皮膚のたるみ改善剤。
【請求項4】
還元型コエンザイムQ10とザクロ果実エキスとを含む、経口用のシワ改善剤。
【請求項5】
還元型コエンザイムQ10とザクロ果実エキスとを含む、経口用の保湿剤。
【請求項6】
還元型コエンザイムQ10とザクロ果実エキスとを含む、経口用の線維芽細胞増殖促進剤。
【請求項7】
還元型コエンザイムQ10の1質量部に対して、ザクロ果実エキスを乾燥質量で0.1質量部以上10質量部以下含む経口用の粉末状の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコエンザイムQ10とザクロ加工物とを含む老化抑制剤及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療技術の発達がめまぐるしく、種々の疾患に対する治療技術の開発には枚挙にいとまがないが、その一方で、疾患の治療よりも、疾患の予防、すなわち健康管理が重視されてきており、健常な身体状態の維持に有効となる様々な内用剤、外用剤が開発されている。
【0003】
健常な身体状態を維持する上で、最もやっかいな問題になるのが老化現象である。老化現象は、体内の皮膚、筋肉、血管、毛髪、骨等身体の各組織において、加齢に伴う機能低下や疲労等が起こることを指す。また、これらの各組織における、前記の機能低下等に伴う疾患や障害等も、老化現象に含まれる。
【0004】
例えば、皮膚の老化現象としては、皮膚の真皮中に存在する線維芽細胞の増殖能の低下や細胞死の増加等を挙げることができる。線維芽細胞は真皮を構成する成分であるコラーゲン及びエラスチン等の線維タンパク質や、ヒアルロン酸等の多糖類等を作り出す細胞である。
皮膚は外側から角層、表皮、基底膜及び真皮より構成されている。真皮はその中でも最も領域の広い部分であり、表皮ほど細胞が密に詰まっておらず、むしろ細胞外空間が多く、「細胞外マトリックス」と呼ばれる巨大分子の網目構造によって満たされている。コラーゲンは、この皮膚真皮細胞外マトリックスにおいて、網目状の線維束を形成することにより組織形態を維持している。コラーゲンは、成熟し増殖して架橋形成が進行すると太く直線的な線維束となり、若い皮膚での適度なハリを与えている。エラスチンも皮膚真皮細胞外マトリックスにおいて、コラーゲン同士を架橋してバネのように支え、伸び縮みの原動力となり皮膚の弾力性を維持している。ヒアルロン酸は、皮膚真皮細胞外マトリックスにおける水分の保持、組織内にゼリー状のマトリックスを形成することに基づく細胞の保持、組織の潤滑性と柔軟性の保持等の役割を果たしている。
【0005】
しかし、老化した皮膚では、線維芽細胞の増殖能の低下や細胞死の増加等により、真皮細胞外マトリックスのコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等が著しく減少してしまう。その結果、皮膚のハリや弾力性の消失、それによる皮膚のたるみやシワの形成、皮膚の潤いの低下、くすみやしみの発生等が起きやすくなる。線維芽細胞の増殖能の低下等の皮膚の老化現象は、加齢だけでなく皮膚の紫外線への暴露によっても起こることが知られている。
【0006】
また、筋肉の老化現象としては、加齢に伴う筋肉の萎縮・衰退等を挙げることができる。このような筋肉の萎縮・衰退は、体力低減、疲労しやすさ、倦怠しやすさ、敏捷性の低下等に繋がる。
【0007】
老化現象の要因については、いまだ十分に解明されていないが、老化現象には生体内において、活性酸素種、活性窒素種、フリーラジカル等が引き起こす酸化ストレスが関連しており、老化現象の抑制には、抗酸化作用を示す成分等の摂取が有効であると考えられている。
【0008】
これまでに、老化現象を抑制する成分として、各種のものが報告されている。その一つとして、コエンザイムQ10が挙げられる。特許文献1には、コエンザイムQ10とムコ多糖類等を含む経口用皮膚老化予防・改善剤が記載されている。
【0009】
また、老化現象を抑制する成分として、ザクロ加工物も報告されている。特許文献2には、ザクロの種子のエッセンスからなる老化抑制剤により、皮膚のシワの防止又は改善が図られると記載されている。
【0010】
そのほかにも、カテキン類を有効成分とする老化抑制剤(特許文献3参照)や、マイコスポリン様アミノ酸を含む溶液をpH6.5以上の所定の温度条件で加熱して得られる抗酸化成分(特許文献4参照)、ニンジン葉部からの抽出物を有効成分とする抗老化剤(特許文献5参照)、マンネンタケの溶媒抽出物を含む細胞老化抑制剤(特許文献6)等、様々な老化抑制剤が提案されている。
【0011】
また、内用剤の製造中又は製造後に、内用剤又はその原料が、大気中や高温下で保管された場合の品質劣化が問題となっている。大気中保管時とは、例えば、内用剤の製造中、使用前の原料や袋詰め前の内用剤が大気に接触する状態で保管されている場合のほか、内用剤の製造後、消費者が、内用剤の包装を開封して一部を摂取した後、封をせずに残りを保管しておいた場合が挙げられる。また、高温環境下の保管時とは、例えば、内用剤の製造後、夏場に、商品を輸送する金属製コンテナの温度が直射日光の影響により高くなってしまう場合や、消費者が誤って高温の車内に内用剤を置いておいた場合等が該当する。
【0012】
前記の大気中で保管された場合の品質劣化の例としては、色や臭い、味等の変化を挙げることができる。特に、内用剤又はその原料が固形状である場合、保管環境下によっては吸湿が起こり、これと共に色や臭い、味の変化が起こる場合がある。ここで吸湿とは、水分の吸収による、粘着性の増加、凝集の発生、潮解等の変化を指す。一方、大気と遮断された密封状態で保管された場合、内用剤又はその原料が大気中の水分を吸収しないため、吸湿は起こらない。しかし、密封状態の保管であっても、高温環境下においては化学反応が活発化する等の理由により、大気中保管時と同様、色や臭い、味等の品質劣化が問題となる。また、内用剤又はその原料が粉末状である場合には、固結の現象が起こる場合もある。
ここで固結とは、吸湿や化学反応、加熱等の影響により、粉体が団子のように固まる現象を指す。
【0013】
このような製造中又は製造後の内用剤又はその原料の品質劣化を防止する技術について、これまでに種々のものが知られている。
例えば、特許文献7には、有機酸塩又は無機酸塩の水和物等である粉末原料の吸湿を、油脂及び炭酸カルシウムの配合により防止することが記載されている。特許文献8には、有機酸やその塩等を含有する粉末製剤の固結を、ショ糖脂肪酸エステルの添加により防止することが記載されている。特許文献9には、カルニチン等の粉末原料の吸湿をセサミン類の添加により防止することが記載されている。特許文献10には、ハチミツの加熱や長期保存に伴う褐変化を、パラチノース類の添加により防止することが記載されている。特許文献11には、内用剤における異味異臭の発生を、フェルラ酸と茶抽出物を組み合わせて添加することにより防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−143671号公報
【特許文献2】特開2000−143491号公報
【特許文献3】特開2008−063318号公報
【特許文献4】特開2008−247901号公報
【特許文献5】特開2004−051580号公報
【特許文献6】特開2003−012539号公報
【特許文献7】特開2001−244319号公報
【特許文献8】特開2004−121175号公報
【特許文献9】特開2007−244270号公報
【特許文献10】特許第4379751号公報
【特許文献11】特開2003−038144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記特許文献1〜6に示されるように種々の老化抑制剤が研究されているが、これらによる老化現象の抑制効果は、必ずしも十分であるとはいえない。そのため、より高い効果を発揮でき、しかも安価に提供できる老化抑制剤の開発が求められている。
【0016】
一方、単独の老化抑制剤を多量に連続摂取すると体内バランスを崩してしまう場合があることや、複数の老化防止用組成物を組み合わせると好ましい効果が得られる場合があることが知られている。
【0017】
しかしながら、具体的にどのような老化抑制剤同士を組み合わせれば高い効果が発揮されるかについては、有効な指針となるものは提案されていないし、組み合わせによっては、かえって体内への吸収性の低下を引き起こしたり、各々の成分の劣化の原因ともなることが指摘されている。
【0018】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の課題は、老化現象の抑制に高い効果を発揮する老化抑制剤を提供することにある。また本発明の課題は、この老化抑制剤の具体的な用途として、有用な筋肉の老化防止剤、皮膚のハリ改善剤、皮膚のたるみ改善剤、シワ改善剤、保湿剤、ヒアルロン酸産生促進剤、美白剤、紫外線防御剤、細胞死抑制剤、皮膚の弾力性改善剤、コラーゲン又はエラスチン産生促進剤、及び線維芽細胞増殖促進剤を提供することにもある。
【0019】
また、前記の特許文献7〜11のような従来の種々の品質劣化防止の技術についても、十分に効果が高いものとはいえない。
【0020】
例えば、製造中又は製造後の品質劣化が問題となる内用剤又はその原料の一つとして、ザクロ加工物が挙げられる。ザクロ加工物は、これを大気中で保管した場合に、吸湿や、味や臭い、色等の変化が起こる場合がある。
【0021】
また例えば、製造中又は製造後の品質劣化が問題となる内用剤又はその原料の一つとして、コエンザイムQ10も挙げられる。コエンザイムQ10は、密封状態であっても、これを高温下で保管した場合に、固結や、味や臭い、色等の変化が起こる場合がある。
【0022】
しかしながら、前記の特許文献7〜11のような従来の種々の品質劣化防止の技術を、ザクロ加工物の品質の劣化防止のために適用した場合、その効果は、十分なものとはいえない。また、前記の特許文献7〜11のような従来の種々の品質劣化防止の技術を、コエンザイムQ10の品質の劣化防止のために適用した場合も、その効果は、十分なものとはいえない。
【0023】
本発明の課題は、内用剤又はその原料としてのザクロ加工物の品質劣化を有効に防止すると共に、コエンザイムQ10の品質劣化を有効に防止した組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、驚くべきことに、コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含む剤には、顕著な老化抑制の相乗効果、特に筋肉及び皮膚の老化抑制の相乗効果が得られることを見いだし、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(13)の剤を提供するものである。
(1)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有する老化抑制剤。
(2)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有する筋肉の老化防止剤。
(3)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有する皮膚のハリ改善剤。
(4)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有する皮膚のたるみ改善剤。
(5)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有するシワ改善剤。
(6)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有する保湿剤。
(7)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有するヒアルロン酸産生促進剤。
(8)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有する美白剤。
(9)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有する紫外線防御剤。
(10)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有する細胞死抑制剤。
(11)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有する皮膚の弾力性改善剤。
(12)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有するコラーゲン又はエラスチン産生促進剤。
(13)コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有する線維芽細胞増殖促進剤。
【0025】
また、本発明者らは、驚くべきことに、ザクロ加工物に対し、コエンザイムQ10を特定比以上で添加した場合に、ザクロ加工物の品質劣化が顕著に防止されることを見いだすと共に、コエンザイムQ10に対し、ザクロ加工物を特定比以上で添加した場合に、コエンザイムQ10の品質劣化が顕著に防止されることを見いだして、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、コエンザイムQ10の1質量部に対して、ザクロ加工物を乾燥質量で0.1質量部以上10質量部以下含む組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の老化抑制剤はこれを摂取することによって老化現象の抑制に優れた効果を発揮する。また、本発明は、この老化抑制剤の具体的な用途として、有用な筋肉の老化防止剤、皮膚のハリ改善剤、皮膚のたるみ改善剤、シワ改善剤、保湿剤、ヒアルロン酸産生促進剤、美白剤、紫外線防御剤、細胞死抑制剤、皮膚の弾力性改善剤、コラーゲン又はエラスチン産生促進剤、及び線維芽細胞増殖促進剤を提供することができる。
【0027】
また本発明の組成物は、大気中に保管した場合のザクロ加工物の品質劣化を有効に防止でき、且つ高温下で保管した場合のコエンザイムQ10の品質劣化を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、線維芽細胞増殖試験についての実施例及び比較例の評価結果を示すグラフである。
図2図2は、安定性試験後の実施例及び比較例の組成物を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の剤及び組成物は、コエンザイムQ10とザクロ加工物とを含有することを特徴の一つとしている。以下、これらの成分についてそれぞれ説明する。以下では、まず、本発明の剤を説明する。
【0030】
本発明において、コエンザイムQ10は、酸化型コエンザイムQ10と還元型コエンザイムQ10の両方を含む呼称である。酸化型コエンザイムQ10は、一般名はユビデカレノンといい、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1,4−ベンゾキノンの側鎖のイソプレン単位が10である化合物である。還元型コエンザイムQ10は、酸化型コエンザイムQ10の1,4−ベンゾキノンの2つのカルボニル基をOH基に還元したヒドロキノン体である。還元型コエンザイムQ10は、ユビデカレノールともいわれる。
【0031】
コエンザイムQ10は、体内の細胞中におけるミトコンドリアの電子伝達系構成成分として存在する生理学的成分であり、生体内において酸化と還元を繰り返すことで電子伝達系における伝達成分としての機能を担い、ATPの産生に関与する。コエンザイムQ10は、体内の多量のエネルギーを必要とする心臓、肝臓、血管、筋肉等に存在し、補酵素として生物活性をもつだけでなく、酸素利用効率を改善させる作用を有するビタミン様作用物質として知られている。また、酸化型コエンザイムQ10が生体内で還元型に変換されることによって、生体内で抗酸化能を発揮することも知られている。このようなコエンザイムQ10は、血管梗塞、高血圧の治療や、更に活性化作用により美容・若返りにも効果があるとされている。しかし、コエンザイムQ10は老化とともに生体内の濃度が減少することが知られている。
【0032】
本発明においてコエンザイムQ10の入手方法としては、従来公知の製造方法で製造されたものを特に限定なく使用することができる。コエンザイムQ10は、近年では内用剤の原料又は化粧品原料として市販品を入手可能であり、本発明ではこのような市販品を使用することができる。また、本発明では、前記の酸化型及び還元型のいずれも用いることができ、還元型を用いることが好ましい。
【0033】
本発明の剤におけるコエンザイムQ10の含有量は、該剤の用途に応じた適切な範囲が適宜選択されるが、一般には、本発明の老化抑制効果を一層高める観点等から、本発明の剤におけるコエンザイムQ10の含有量は、好ましくは0.000001質量%以上99.9質量%以下、更に好ましくは0.00001質量%以上90質量%以下であり、一層好ましくは0.0001質量%以上80質量%以下である。
【0034】
ザクロ(石榴)は、学名プニカ・グラナタム(Punica granatum L.)であり、ザクロ科に属する落葉高木である。ザクロは、その種子部に女性ホルモンの一つであるエストロゲンを含むことが知られている。また、ザクロの果実部では、抗酸化作用等を有するエラグ酸(4,4',5,5',6,6'-ヘキサヒドロキシジフェン酸2,6,2',6'-ジラクトン)が生成され、これがエラギタンニンというタンニンに変換されること、このタンニンがザクロの経口摂取時に加水分解されるとエラグ酸が再生成されること等も知られている。本発明において使用し得るザクロの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、種子部、果肉部、果皮部、花部、地上部、根部、根皮又はこれらの部位の混合物等が挙げられる。これらのうち、種子部、果肉部及び果皮部から選ばれる一種以上を用いることが好ましく、種子部、果肉部及び果皮部を全て含む構成部位である果実部を用いることが特に好ましい。
【0035】
本発明で用いるザクロ加工物とは、ザクロの植物体又はその一部になんらかの加工処理を施したものである。加工処理としては、乾燥処理、細分化処理、粉末化処理、加熱処理、搾汁処理、抽出処理、粗精製処理、精製処理等を挙げることができる。これらの各処理は、ザクロや同種の植物体について従来行われている方法を特に制限なく用いることができる。例えば、前記乾燥処理は、天日によるものでもよいし、公知の乾燥機によるものでもよい。前記細分化処理は、粉砕、細切、裁断、圧搾、破断等の処理を含む。本発明では加工処理が、抽出処理を含むことが好ましい。
【0036】
例えば、抽出処理は、植物の前記構成部位を生のまま、又は前記の乾燥、細分化、粉末化、加熱及び搾汁の各処理のうちの1種若しくは2種以上を施した後に、抽出溶媒による抽出に供することによって行うことができる。ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。
【0037】
抽出溶媒としては、水、エタノール、メタノール等の低級アルコール、酢酸エチル、酢酸メチル等の低級エステル、アセトン等の低級ケトン、又はこれらと水との混合物(含水有機溶媒)が挙げられる。なお、ここでいう低級とは炭素数が1〜4であることを意味する。
【0038】
抽出処理により得られる抽出物は、そのまま又は濃縮若しくは希釈して、液状物、濃縮物又はペースト状で用いることができる。あるいは抽出物は、更にこれらを乾燥した乾燥物の形状で用いることもできる。乾燥は、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、流動乾燥等の当業者が通常用いる方法により行われる。抽出物は、当業者が通常用いる精製方法により更に精製してもよい。
本発明においては、ザクロ加工物が、ザクロの植物体に元来含まれている2種類以上の化合物の混合物からなることが好ましい。このような化合物としては有機化合物及び無機化合物の両方を挙げることができる。特に、ザクロ加工物は、このような化合物として、基本骨格が異なる2種類以上の有機化合物を含んでいることが好ましい。ここでいう基本骨格が異なるとは、例えば、糖・脂質・アミノ酸・タンニン等が結合したり、メチル化、アセチル化、エステル化、イオン化しているに過ぎない差異を除く趣旨である。ザクロ加工物が2種類以上の化合物を含んでいることは、ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS)又は液体クロマトグラフィー−質量分析装置(LC−MS)を用いる等、混合物の定性及び定量を行うために従来用いられている手法により特定することができる。
【0039】
本発明の剤におけるザクロ加工物の含有量は、該剤の用途に応じた適切な範囲が適宜選択されるが、一般には、本発明の老化抑制効果を一層高める観点等から、ザクロ加工物の乾燥質量が、コエンザイムQ10の1質量部に対して、好ましくは0.00001質量部以上100000質量部以下、更に好ましくは0.01質量部以上100質量部以下であり、一層好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。
【0040】
本発明の剤は、コエンザイムQ10及びザクロ加工物のみからなるものであってもよいが、老化抑制効果を一層高める点、又は老化抑制効果に加えて他の効果も発現させる点から、これら以外のその他の成分を1又は2以上含んでいてもよい。その他の成分としては、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、本発明の剤の剤形や求められる老化抑制効果のレベルや内容等に応じて適宜選択することができる。その他の成分の使用量は、本発明の剤の老化抑制効果が十分に発現するように適宜調整される。
【0041】
後述するように、本発明の剤を内用剤とする場合、前記その他の成分としては、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、pH調整剤、防腐剤、着色料、調味料、栄養剤、機能性成分、動植物成分、香料等を挙げることができる。また、後述するように本発明の剤を外用剤とする場合、前記その他の成分としては、例えば、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、水、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、機能性成分、動植物成分、酸化防止剤、キレート剤等を挙げることができる。
【0042】
本発明の剤は、老化抑制作用の対象とする体内組織の種類等に応じて、内用剤として用いられてもよいし、外用剤として用いられても良い。本発明の剤を内用剤とする場合、その剤形としては、アンプル状、カプセル状、粉末状、顆粒状、丸剤、錠剤状、固形状、ペースト状、ゲル状、液状、シート状等の種々の剤形を挙げることができる。これらは、医薬品又は医薬部外品類、飲食品等とすることができる。本明細書において、内用剤とは、経口摂取する医薬品及び医薬部外品並びに飲食品の全般を指し、例えば、医薬品及び医薬部外品類、栄養補助食品、健康食品、食事療法用食品、サプリメント、飲料、調味料等を含む。
【0043】
本発明の剤を外用剤とする場合、その剤形としては、ローション、乳剤、ゲル、クリーム、軟膏剤、粉末、顆粒等を挙げることができる。これらは、医薬品又は医薬部外品類、皮膚又は頭髪用化粧品類、浴用剤等とすることができる。
【0044】
前記の皮膚・頭髪用化粧品類としては、柔軟性化粧水、収れん性化粧水、洗浄用化粧水等の化粧水類、エモリエントクリーム、モイスチュアクリーム、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、メイクアップクリーム等のクリーム類、エモリエント乳液、モイスチュア乳液、ナリシング乳液、クレンジング乳液等の乳液類、ゼリー状パック、ピールオフパック、洗い流しパック、粉末パック等のパック類、美容液、洗顔料、養毛剤、育毛剤、パック、口紅、リップクリーム、ファンデーション、ションプー、リンス、トリートメント等を挙げることができる。
【0045】
本発明の剤の投与又は摂取の量は、投与又は摂取の方法、期間、投与又は摂取の対象者の年齢、性別、体重、該剤の具体的な用途等に応じて適宜選択され、特に限定されない。本発明の剤を投与又は摂取する時期は、食前、食間及び食後のいずれでもよく、1日数回に分けて投与してもよい。
【0046】
本発明の剤は、経口又は経皮等により摂取することにより、皮膚、筋肉、血管、毛髪、骨等の各種の組織における、加齢に伴う機能低下、疲労、疾患等の老化現象を、効果的に予防又は改善することが可能である。従って、本発明の組成物は、老化抑制剤として有用である。特に、本発明の組成物は、加齢に伴う皮膚及び筋肉の老化現象の予防又は改善に効果的である。老化抑制作用の対象となる皮膚の部位としては、顔、腕、脚、背、胸、腹等の全身の各部位を挙げることができる。老化抑制作用の対象となる筋肉の部位としては、首、肩、腕、背、腰、尻、脚等の身体の各部位を挙げることができる。
【0047】
後述する実施例の評価から明らかなように、本発明の剤は、皮膚の老化抑制作用の一つとして、線維芽細胞の増殖促進作用を奏する。このため本発明の剤は、線維芽細胞増殖促進剤として有用である。このような本発明の剤は、線維芽細胞による真皮中のコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸等の産生を増強することができ、コラーゲン又はエラスチン産生促進剤及びヒアルロン酸産生促進剤として好適に使用されうる。更に、本発明の剤は、これら真皮構成成分の産生を促進することによって、皮膚のターンオーバーを促して皮膚のハリ及び弾力性を改善すると共に潤いを与え、皮膚のたるみ、かさつき、くすみ(黄くすみ)、肌荒れ、シワ、シミ、ソバカス等の皮膚トラブルを改善する効果を奏する。従って、本発明の剤は、皮膚のハリ改善剤、皮膚の弾力性改善剤、皮膚のたるみ改善剤、シワ改善剤、保湿剤、美白剤として好適に使用されうる。また、本発明の剤は、皮膚の紫外線への暴露による線維芽細胞の増殖能の低下を防ぐことが可能であるため、皮膚を紫外線から防御する紫外線防御剤として好適に使用されうる。更に、本発明の剤は、線維芽細胞に対し増殖促進という活性化作用を奏するため、線維芽細胞等の細胞死の抑制剤として有用でありうる。
【0048】
また、本発明の剤による筋肉の老化抑制作用の例としては、体の疲労感や倦怠感の解消、敏捷性の向上等を挙げることができる。このような本発明の剤は、筋肉の老化防止剤として有用である。
これらの老化抑制作用は、コエンザイムQ10とザクロ加工物との相乗作用によるものである。
【0049】
続いて、本発明の組成物について説明する。本発明の組成物は、本発明の剤と同様に、老化抑制の用途に用いることができるが、内用剤として、老化抑制の用途以外にも広く用いることができる。
【0050】
本発明の組成物に含まれるコエンザイムQ10の例としては、本発明の剤に含まれるコエンザイムQ10の例として前記で挙げたものと同様のものを挙げることができる。酸化型と還元型のコエンザイムQ10のうち体内で作用するのは還元型コエンザイムQ10であるため、生理活性作用の観点から、コエンザイムQ10は、還元型コエンザイムQ10であることが好ましい。なお、還元型コエンザイムQ10は酸化型コエンザイムQ10に比べて不安定であるが、本発明によれば、還元型コエンザイムQ10であっても品質劣化を防止することが可能である。
【0051】
また、本発明の組成物に含まれるザクロ加工物の例としては、本発明の剤に含まれるザクロ加工物の例として上記で挙げたものと同様のものを挙げることができる。上述した品質劣化防止効果のうち、特に吸湿防止の効果をより有効なものとする観点から、本発明の組成物に含まれるザクロ加工物は、前記の抽出処理を含む加工処理により得られることが好ましく、抽出溶媒として極性溶媒を用いた抽出処理を経て得られることがより好ましい。極性溶媒としては、前述した各溶媒のうち、水、低級アルコール、低級ケトン、又はこれらと水との混合物(含水有機溶媒)等を用いることができる。また、ザクロ果実部には有効成分が多く含まれるため、生理活性作用の観点から、ザクロ加工物は、前記のザクロ果実部の加工物を含むことが好ましい。
【0052】
本発明の組成物に含まれるコエンザイムQ10及びザクロ加工物は、液状やゼリー状等の状態であっても品質劣化防止の効果を十分に発揮するが、吸湿防止の効果を一層有効にする観点からいずれも固形状であることがより好ましい。更に、本発明の組成物に含まれるコエンザイムQ10及びザクロ加工物は、吸湿防止及び固結防止の効果を一層有効にする観点からいずれも粉末状であることが一層好ましい。
【0053】
本発明の組成物は、コエンザイムQ10の1質量部に対して、ザクロ加工物を乾燥質量で0.1質量部以上10質量部以下含有する。コエンザイムQ10の1質量部に対して、ザクロ加工物を乾燥質量で0.1質量部以上含有することにより、本発明の組成物は、高温下での保管時におけるコエンザイムQ10の品質劣化を防止し、固形状、特に粉体状の場合にはさらに固結も効果的に防止することができる。また、コエンザイムQ10の1質量部に対して、ザクロ加工物の乾燥質量が10質量部以下であること、すなわち、ザクロ加工物の乾燥質量に対してコエンザイムQ10の質量が1割以上を占めることにより、本発明の組成物は、大気中での保管時におけるザクロ加工物の品質劣化を防止し、固形状の場合にはさらに吸湿も効果的に防止することができる。さらに、本発明の組成物を摂取することにより、皮膚や筋肉の老化抑制効果等も発揮される。これらの観点から、コエンザイムQ10の1質量部に対しザクロ加工物の乾燥質量の割合は、0.15質量部以上8質量部以下であることが好ましく、0.25質量部以上4質量部以下であることがより好ましい。
【0054】
また、本発明の組成物中のコエンザイムQ10の含有量は、該組成物の用途に応じた適切な範囲が適宜選択されるが、一般には、本発明の効果を一層高める観点等から、本発明の組成物中のコエンザイムQ10の割合が好ましくは0.000001質量%以上99.9質量%以下、更に好ましくは0.00001質量%以上90質量%以下であり、一層好ましくは0.0001質量%以上80質量%以下である。
【0055】
本発明の組成物中のザクロ加工物の割合は、該組成物の用途に応じた適切な範囲が適宜選択されるが、一般には、本発明の効果を一層高める観点等から、本発明の組成物中、ザクロ加工物は乾燥質量として、好ましくは0.00001質量%以上99.9質量%以下、更に好ましくは0.00001質量%以上90質量%以下であり、一層好ましくは0.0001質量%以上80質量%以下である。
【0056】
本発明の組成物は、コエンザイムQ10及びザクロ加工物のみからなるものであってもよいが、品質劣化防止の効果を一層高める点、又は品質劣化の防止に加えて他の効果も発現させる点から、これら以外のその他の成分を1又は2以上含んでいてもよい。その他の成分としては、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、本発明の組成物の剤形や求められる品質劣化防止の効果のレベルや内容等に応じて適宜選択することができる。その他の成分の使用量は、本発明の組成物の品質劣化防止の効果が十分に発現するように適宜調整される。
【0057】
前記その他の成分としては、賦形剤、崩壊剤、増量剤、結合剤、増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、pH調整剤、防腐剤、着色料、調味料、栄養剤、機能性成分、動植物成分、香料等を挙げることができる。
【0058】
本発明の組成物は、ザクロ加工物及びコエンザイムQ10、並びに必要に応じて添加されるその他の成分を、混合することにより、得ることができる。混合の手法は何ら制限されず、均質に混合されるのであればどのような手法を用いてもよい。一般的に知られている混合機、例えば、水平円筒型混合機、V型混合機、二重円錐型混合機、立方体型混合機、スクリュー型混合機、リボン型混合機、媒体攪拌型ミル、高速回転摩砕・衝撃ミル、ジェットミル等の空気力学的粉砕器等を用いた混合、乳鉢やボールミル等での粉砕混合、ポリエチレン(PE)製、ナイロン製あるいはそれに準じる性質からなる袋を利用した攪拌混合等を用いることができる。ザクロ加工物及びコエンザイムQ10の混合の度合が高い場合、より高い品質劣化の防止効果が得られる。
【0059】
本発明の組成物はそのまま内用剤として用いることもできるし、当業者に公知の手法を用いて飲食用に適した形態、例えば、粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状などに成形して内用剤として提供することができる。特にソフトカプセル状に成形した場合、ゼラチン、デンプン、グリセリン等からなるカプセル皮膜により、カプセル内容物であるザクロ加工物及びコエンザイムQ10を、気密性が高い状態に維持でき、ザクロ加工物及びコエンザイムQ10の安定性を高めることができるため好ましい。
【0060】
後述する実施例の結果からも明らかな通り、本発明の組成物は、ザクロ加工物及びコエンザイムQ10を特定の割合で含有することによって、ザクロ加工物を大気中で保管する場合の吸湿や味や臭い、色の変化を効果的に防止できるとともに、コエンザイムQ10を高温下で保管する場合の固結や味や臭い、色の変化を効果的に防止できる。従って、本発明の組成物及びこれを用いた内用剤は、製造中又は製造後の品質劣化が効果的に防止され、大気中及び高温下においても、安定性に優れたものとして有用である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はかかる実施例に限定されない。以下の実施例1−1〜1−6は、本発明の剤を製造し、その老化抑制効果を評価したものであり、以下の実施例2−1〜2−3は、本発明の組成物を製造し、その品質劣化防止の効果を確認したものである。
【0062】
〔実施例1−1〕
コエンザイムQ10として、還元型コエンザイムQ10である酵母由来の市販品を使用した。ザクロ加工物として、ザクロ果実部の乾燥エキスを使用した。そして、常法により、ザクロ加工物とコエンザイムQ10とを含有するソフトカプセル状の組成物からなる剤を製造した。上記の乾燥エキスは、ザクロの果実部を、エタノールを60%(v/v)含む水とエタノールとの混合物で抽出処理し、得られた抽出物を乾燥粉末としたものである。
【0063】
〔評価〕
実施例1−1の剤について、以下の試験方法により、老化抑制効果を評価した。
<試験方法>
被験者として、健常な成人6名(女性3名及び男性3名)を無作為に選出した。被験者の平均年齢は33.3歳であった。
【0064】
6日間の試験期間を設定し、この試験期間において、各被験者に、1日2粒ずつ、実施例1−1の剤を摂取させた。1日目の最初の摂取の直前(以下、摂取前ともいう)と、6日目の最後の摂取の後(以下、摂取後ともいう)とに、VAS(Visual analogue scale)によるアンケートに記入させ、下記の7つの評価項目について被験者の状態を評価した。
【0065】
評価項目は、「疲労感」「倦怠感」「体の動きの軽快さ」「肌のハリ」「肌の潤い」「顔のくすみ、明るさ」「化粧のり」の7項目とした。「化粧のり」については、被験者のうち女性3名にのみ回答させた。
【0066】
アンケートでは、10cmの直線の左端を「最悪の感覚」、右端を「最良の感覚」として、各評価項目について、各被験者に、現在の状態が直線上のどの位置に当てはまるかを記入させた。記入した位置の左端からの距離をVAS測定値とした。摂取前及び摂取後のそれぞれにおけるVAS測定値の平均値を表1に示す。各平均値は、大きいほど状態が良いことを示す。また、摂取前のVAS測定値と摂取後のVAS測定値について対応のあるt検定による比較を行って得られたp値も、表1に併せて示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1の結果に示す通り、実施例1−1の剤を摂取することにより、「疲労感」「倦怠感」「体の動きの軽快さ」「肌のハリ」「肌の潤い」「顔のくすみ、明るさ」「化粧のり」の各項目において有意な著しい状態の改善がみられた。
以上より、本発明の剤を摂取することで、コエンザイムQ10とザクロ加工物の組み合わせによる相乗効果によって、皮膚や筋肉の老化現象が著しく改善され、同様に、線維芽細胞の増殖も著しく促進されることが示唆された。
【0069】
〔実施例1−2〜1−5、比較例1−1〜1−3〕
コエンザイムQ10及びザクロ加工物として実施例1−1で用いたものとそれぞれ同じものを用い、老化抑制効果等に影響しない原料であるデキストリンと混合した。これらを以下の表2に示す配合で用い、常法により、コエンザイムQ10及びザクロ加工物並びにデキストリンを含む粉末状の剤を製造した。
【0070】
【表2】
【0071】
〔評価〕
実施例1−2〜1−5及び比較例1−1〜1−3の剤について、以下の試験方法により、老化抑制効果を評価した。
<試験方法>
被験者として、健常な成人21名(男性8名及び女性1名)を、無作為に選定した。被験者の平均年齢は33.1歳であった。被験者21人を、無作為に3名ずつ振り分け、実施例1−2〜1−5及び比較例1−1〜1−3の剤それぞれの摂取群とした。各被験者に、該当する剤を摂取させた。これらの点以外は、実施例1−1の剤を評価したのと同様の試験方法により、各被験者について摂取前及び摂取後のそれぞれにおけるVAS測定値を得た。但し、評価項目は、実施例1−1の剤を評価した前記の7つの項目に、新たに「しわ・たるみ」を加えて8項目とした。
得られた被験者についての摂取前及び摂取後のVAS測定値から、下記式により、摂取前後のVAS測定値の変化値を求め、以下の表3に示した。表3に示す変化値が大きいほど、状態改善の程度が大きいことを示す。
摂取前後のVAS測定値の変化値=3人の被験者それぞれについて求めた摂取前後のVAS測定値の差を平均した値
【0072】
【表3】
【0073】
表3の結果に示す通り、ザクロ加工物及びコエンザイムQ10を含む各実施例の剤を摂取することにより、「疲労感」「倦怠感」「体の動きの軽快さ」「肌のハリ」「肌の潤い」「顔のくすみ、明るさ」「しわ・たるみ」「化粧のり」の全項目において39.3点以上という高い変化値が得られ、著しい状態の改善がみられた。
これに対し、ザクロ加工物を含みコエンザイムQ10を含まない比較例1−1の剤では変化値が10.0点以下、コエンザイムQ10を含みザクロ加工物を含まない比較例1−2の剤では9.0点以下と、状態の改善は低い程度でしかみられなかった。また、ザクロ加工物及びコエンザイムQ10の両方を含まない比較例1−3の剤では、変化値が0.7点以下と、状態の改善はほとんどみられなかった。
以上より、本発明の剤による皮膚や筋肉の老化抑制効果が、コエンザイムQ10とザクロ加工物の組み合わせによる顕著な相乗効果であることが一層明確に示された。
【0074】
〔実施例1−6、比較例1−4〜1−6〕
コエンザイムQ10、ザクロ加工物、エラグ酸を以下の表4に示す濃度で含むサンプル含有培地を以下の調製方法に従い作製した。コエンザイムQ10としては、実施例1−1と同様、還元型コエンザイムQ10である酵母由来の市販品を使用した。ザクロ加工物としては、実施例1−1で用いたものと同様のザクロ果実部の乾燥エキスを使用した。またエラグ酸としては、エラグ酸の水和物を使用した。
【0075】
【表4】
【0076】
<サンプル含有培地の調製方法>
ザクロ加工物、コエンザイムQ10及びエラグ酸をそれぞれ、ジメチルスルホキシド(以下「DMSO」ともいう。)に濃度が0.4mg/mLとなるように溶解又は懸濁した調製液を作製した。
5%の牛胎児血清を含有するHam−F12培地(以下「5%血清含有培地」ともいう。)に、上記の調製液をDMSOの終濃度が0.1%となるように添加した。実施例1−6及び比較例1−6では、ザクロ加工物又はエラグ酸を含む調製液と、コエンザイムQ10を含む調製液とを1:1の容積比で合わせて用いた。
【0077】
前記のようにして得られた実施例1−6及び比較例1−4〜1−6のサンプル含有培地について、以下の(A)ないし(D)の手順で<線維芽細胞増殖試験>を実施した。
【0078】
<線維芽細胞増殖試験>
(A)15%の牛胎児血清を含有するHam−F12培地で継代していた正常ヒト線維芽細胞HFSKF−II(PIKEN CELL BANK)を、2.0x104 cells/ウェルで、96ウェルプレートに播種した。
(B)播種後のプレートを24時間、37℃で前培養した後、ウェル中の培地を除去し、前記で調整したサンプル含有培地200μLで置換した。
(C)培地置換後のプレートを24時間、37℃で本培養した後、ウェル中の細胞を、無血清Ham−F12培地で洗浄した。ついで、同培地で30倍希釈したWST−8(同仁化学)を各ウェルに150μLずつ添加した。
(D)WST−8添加後のプレートを37℃で1〜2時間インキュベーションし、450nmの吸光度をマイクロプレートリーダ(サーモ)で測定した。
【0079】
参考例1として、サンプル含有培地の代わりに、5%血清含有培地を用いたコントロールについて、前記と同様の線維芽細胞増殖試験を行った。実施例1−6及び比較例1−4〜1−6並びに参考例1について、上記の線維芽細胞増殖試験を行った。
実施例1−6及び比較例1−4〜1−6で得られた吸光度の平均値について、参考例1で得られた吸光度の平均値を100としたときの該吸光度に対する比(%)として図1に示す。
【0080】
図1の結果に示す通り、ザクロ加工物及びコエンザイムQ10を含有する実施例1−6の培地により、線維芽細胞が顕著に増加することが判る。これに対し、コエンザイムQ10を含まずザクロ加工物を含む比較例1−5の培地を用いた場合、線維芽細胞の増殖は劣ることが判る。また、コエンザイムQ10を含みザクロ加工物を含まない比較例1−4の培地及びコエンザイムQ10及びエラグ酸を含む比較例1−6の培地を用いた場合、線維芽細胞の増加はコントロールと同程度であることが判る。
以上より、本発明の剤が、コエンザイムQ10とザクロ加工物の組み合わせによる相乗効果によって、線維芽細胞の増殖を顕著に促進することが示された。
【0081】
〔実施例2−1〜2−3〕
コエンザイムQ10として、還元型コエンザイムQ10の乾燥粉末である酵母由来の市販品を用いた。ザクロ加工物として、実施例1−1で用いたものと同様のザクロ果実部の乾燥エキスを用いた。
以下の表5(及び表6)に示す配合比で、ザクロ加工物とコエンザイムQ10とを、ポリエチレン製の袋を利用した攪拌混合により粉体を混合して粉末状の組成物を得た。
【0082】
〔比較例2−1〕
実施例2−1〜2−3で用いたコエンザイムQ10をそのまま、比較例2−1の組成物とした。
【0083】
〔比較例2−2〕
実施例2−1〜2−3で用いたザクロ加工物をそのまま、比較例2−1の組成物とした。
【0084】
〔評価〕
実施例2−1〜2−3及び比較例2−1の組成物について、以下の<安定性試験1>によって、ザクロ加工物の劣化防止の程度を評価した。また、実施例2−1〜2−3及び比較例2−2の組成物について、以下の<安定性試験2>によって、コエンザイムQ10の劣化防止の程度を評価した。
【0085】
<安定性試験1>
組成物3gを、プラスチック製シャーレに入れ、シャーレに蓋をしない状態で、室温(27℃)、50%RHの環境下で2日間静置した。静置後の組成物について、水分量(質量%)を常圧加熱乾燥法で測定したほか、吸湿の程度、味の変化、臭いの変化及び色の変化について、以下の表6に示す評価基準で5段階の評価を行った。その結果を以下の表5に示す。また、静置後の組成物の写真を図2に示す。
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
<安定性試験2>
組成物3gを、密閉容器(アルミニウムパウチ)に入れ、加熱圧着により袋の口をシールして、容器を密閉した。組成物が入った密閉容器を50℃で7日間静置した。静置後の組成物について、固結の程度、味の変化、臭いの変化及び色の変化について、前記の表6に示す評価基準で5段階の評価を行った。その結果を表7に示す。また、静置後の組成物の写真を図2に示す。
【0089】
【表7】
【0090】
表5及び図2に示す結果から明らかな通り、ザクロ加工物の乾燥質量1質量部に対し、コエンザイムQ10を0.1質量部以上含む組成物、すなわちコエンザイムQ10の1質量部に対し、ザクロ加工物を乾燥質量で10質量部以下含む本発明の組成物は、大気中で保管された後のザクロ加工物の吸湿や味、臭い、色の変化が効果的に防止されていることが判る。また、表7及び図2に示す結果から明らかな通り、コエンザイムQ10の1質量部に対してザクロ加工物を乾燥質量で0.1質量部以上含有する本発明の組成物は、高温下で保管された後のコエンザイムQ10の固結や味、臭い、色の変化が効果的に防止されていることが判る。
以上、ザクロ加工物にコエンザイムQ10を添加することにより大気中で保管された場合におけるザクロ加工物の品質劣化が著しく抑制されること、及びコエンザイムQ10にザクロ加工物を添加することにより密封状態にて高温環境下で保管された場合におけるコエンザイムQ10の品質劣化が著しく抑制されることが確認できた。
図1
図2