特許第6244612号(P6244612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244612超音波プローブ装置およびこれを用いた画像表示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6244612
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】超音波プローブ装置およびこれを用いた画像表示システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   A61B8/14
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-34150(P2017-34150)
(22)【出願日】2017年2月24日
【審査請求日】2017年2月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512169589
【氏名又は名称】レキオ・パワー・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】河村 哲
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−229245(JP,A)
【文献】 特表2016−509925(JP,A)
【文献】 特開2009−254779(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0276067(US,A1)
【文献】 甲子乃人,コンパクト超音波αシリーズ 超音波の基礎と装置,日本,株式会社ベクトル・コア,2014年 2月25日,四訂版第2刷,p.81, p.83
【文献】 社団法人 日本電子機械工業会,改訂 医用超音波機器ハンドブック,日本,株式会社コロナ社,1997年 1月20日,p.276-277
【文献】 甲子乃人,コンパクト超音波αシリーズ 超音波の基礎と装置,日本,株式会社ベクトル・コア,2014年 2月25日,四訂版第2刷,p.81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置に表皮の断層像を送信する表皮診断用の超音波プローブ装置において、
略筒形状を有する筐体と、
前記筐体の先端に配置され、外部に露出して皮膚との接触点をなし、中心周波数が15MHz以上であるシングル型の振動子と、
前記筐体の長手方向の内部において、前記振動子より照射される1本の超音波ビームの照射中心軸上に配置されていると共に、前記超音波の方向および自己の送信位置を検出する位置センサと
を有することを特徴とする超音波プローブ装置。
【請求項2】
前記位置センサは、前記筐体の長手方向において、前記筐体の先端に配置された前記振動子から離れて配置されていることを特徴とする請求項1に記載された超音波プローブ装置。
【請求項3】
前記筐体は、前記振動子が配置された先端に向かって窄まったペン形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載された超音波プローブ装置。
【請求項4】
前記超音波ビームの照射によって得られた一次元の画像情報と、前記位置センサによって検出された前記超音波ビームの方向および前記送信位置とを、前記画像表示装置に送信する送信回路をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された超音波プローブ装置。
【請求項5】
画像表示システムにおいて、
略筒形状を有する筐体と、前記筐体の先端に配置され、外部に露出して皮膚との接触点をなし、中心周波数が15MHz以上であるシングル型の振動子と、前記筐体の長手方向の内部において、前記振動子より照射される1本の超音波ビームの照射中心軸上に配置されていると共に、前記振動子より照射される超音波ビームの方向および自己の送信位置を検出する位置センサとを有する表皮診断用の超音波プローブ装置と、
前記超音波プローブ装置より受信した、前記超音波ビームの照射によって得られた表皮の断層像としての一次元の画像情報と、前記位置センサによって検出された前記超音波ビームの方向および前記送信位置とに基づいて、二次元画像または三次元画像を構築する画像表示装置と
を有することを特徴とする画像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブ装置、および、これを用いた画像表示システムに係り、特に、振動子の中心周波数が15MHz以上の高周波である表皮診断用の超音波プローブ装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発信した超音波のエコーを測定する超音波プローブ装置が知られている。例えば、特許文献1には、被測定物体を探針して内部構造や表面構造に関する探針データを生成する超音波プローブを備えた3次元画像取得装置が記載されている。このプローブには、3次元位置センサが内蔵されており、スキャニング中のプローブの空間的な位置および姿勢を測定する。これによっては、プローブの座標データが被測定物体の探針動作と同期して生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−126180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1には、3次元位置センサが内蔵された超音波プローブが機能的なブロックとして開示されているにすぎず、3次元位置センサのレイアウトを含めた具体的な構造については開示されていない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、超音波プローブ装置の小型化と操作性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、筐体と、シングル型の振動子と、位置センサとを有し、画像表示装置に表皮の断層像を送信する表皮診断用の超音波プローブ装置を提供する。筐体は、略筒形状を有する。振動子は、筐体の先端に配置され、外部に露出して皮膚との接触点をなし、その中心周波数が15MHz以上である。位置センサは、筐体の長手方向の内部において、シングル型の振動子より照射される1本の超音波ビームの照射中心軸上に配置されている。また、位置センサは、振動子より照射される超音波ビームの方向および自己の送信位置を検出する。
【0007】
ここで、第1の発明において、上記位置センサは、筐体の長手方向において、筐体の先端に配置された振動子から離れて配置されていることが好ましい。また、上記筐体は、振動子が配置された先端に向かって窄まったペン形状を有すること好ましい。また、上記超音波ビームの照射によって得られた一次元の画像情報と、位置センサによって検出された超音波ビームの方向および送信位置とを、画像表示装置に送信する送信回路をさらに設けてもよい。また、上記超音波ビームの中心周波数は、15MHz以上の高周波であることが好ましい。
【0008】
第2の発明は、表皮診断用の超音波プローブ装置と、画像表示装置とを有する画像表示システムを提供する。超音波プローブ装置は、筐体と、シングルの振動子と、位置センサとを有する。筐体は、略筒形状を有する。振動子は、筐体の先端に配置され、外部に露出して皮膚との接触点をなし、その中心周波数が15MHz以上である。位置センサは、筐体の長手方向の内部において、シングル型の振動子より照射される1本の超音波ビームの照射中心軸上に配置されている。また、位置センサは、振動子より照射される超音波ビームの方向および自己の送信位置を検出する。一方、画像表示装置は、超音波プローブ装置より受信した、超音波ビームの照射によって得られた表皮の断層像としての一次元の画像情報と、位置センサによって検出された超音波ビームの方向および送信位置とに基づいて、二次元画像または三次元画像を構築する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表皮診断用の超音波プローブ装置において、中心周波数が15MHz以上の振動子としてシングル型のものを用い、かつ、この振動子より照射される1本の超音波ビームの照射中心軸上に位置センサを配置することで、筐体の断面積の縮小でき、超音波プローブ装置の小型化を図ることが可能になる。また、1本の超音波ビームの照射中心軸上に位置センサを配置することで、全体的な重量バランスを最適化できるので、操作性に優れた超音波プローブ装置を実現できる。特に、筐体の長手方向において、先端の振動子(皮膚との接触点)から離れて位置センサを配置した場合には、超音波ビームの方向をより精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】超音波プローブ装置の外観斜視図
図2】画像表示システムのブロック図
図3】超音波プローブ装置の使用説明図
図4】二次元画像の表示例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る超音波プローブ装置の外観斜視図である。この超音波プローブ装置1は、例えば超音波診断用、特に、体内深度が比較的小さい生体部位(表皮)を診断するプローブとして用いることができ、自身が取得した情報を画像表示装置に送信する。超音波プローブ装置1は、筐体2と、シングルの振動子3と、位置センサとしての加速度センサ3とを主体に構成されている。筐体2は、略円筒形状を有し、本実施形態では、人間工学的な観点からペン形状を有している。ここで、「ペン形状」とは、筆記具のペンと同様の感覚でグリップできる程度に胴部が細身であり、かつ、先端に向かって窄まった先細の形状をいう。
【0012】
筐体2の先細の先端には、シングル型の振動子3が配置されている。ここで、「シングル型」とは、単一の振動素子で構成され、1本の超音波ビームを照射することで、一次元方向(照射中心軸Cの方向)で超音波情報を取得する。本実施形態では、振動子3として、超音波ビームの中心周波数が15MHz以上の高周波のものを用いている。振動子3は、スポット状の超音波ビームを体内に照射すると共に、体内より反射した反射波(エコー)を測定することによって、断層像(一次元の画像情報)を得る。一般に、シングル型の振動子は、その構成がシンプルであるがゆえに、アレイ型のものよりも安価であり、アレイ状のものよりもサイズが小さい。シングル型の振動子3として、筐体2の胴部(窄まっていない部分)の断面積よりも小さいものを用いることで、筐体2における振動子3の取付部位を肥大化させることなく、ペン形状に代表されるような使い勝手の良い優れたデザインを実現できる。
【0013】
加速度センサ4は、振動子より照射される超音波ビームの方向(換言すれば、超音波プローブ装置1の姿勢)と、超音波プローブ装置1の送信位置(三次元座標)とを検出する。この加速度センサ4は、筐体2の長手方向の内部(窄まっていない部分)において、シングル型の振動子3より照射される1本の超音波ビームの照射中心軸C上に配置されている。すなわち、加速度センサ4は、その中心が照射中心軸Cと略一致するように配置されている。照射中心軸Cは、シングル型の振動子3によって照射される超音波ビームが1本であるがゆえに観念できるものであり、複数の超音波ビームを並行して照射するアレイ型の振動子では観念できない点に留意すべきである。
【0014】
また、加速度センサ4は、振動子3より照射される超音波ビームの方向と、超音波プローブ装置1の送信位置とを検出する。加速度センサ4としては、XYZの三軸に3つの回転方向(ピッチ)等を検出可能なセンサを用いることが好ましい。さらに、加速度センサ3は、筐体2の長手方向において、筐体2の先端に配置された振動子3(皮膚との接触点)から離れて配置されている。両者の間隔が大きくなるほど、加速度センサ4は、超音波プローブ装置1の傾きに対して敏感に反応するので、超音波ビームの方向をより精度良く検出できる。
【0015】
なお、本実施形態では、位置センサとして加速度センサ4を用いているが、これに代えて、交番磁界を発生させて位置と角度とを測定する磁気センサなどを含めて、他の原理による任意の位置センサを用いてもよいし、複数種のセンサを組み合わせてもよい。この磁気センサについては、例えば、国際公開WO2007/064013号に詳細が記載されているので、必要ならば参照されたい。
【0016】
筐体2の後端には、ケーブル5が取り付けられている。超音波プローブ装置1によって取得された情報は、ケーブル5を介して、画像表示装置に送信される。なお、画像表示装置に対する情報の送信は、赤外線通信や近距離無線通信などで行ってもよい。
【0017】
図2は、画像表示システムのブロック図である。この画像表示システム8は、超音波プローブ装置1と、画像表示装置7とを有する。超音波プローブ装置1は、図3に示すようなイメージで使用される。超音波プローブ装置1が備える送受信回路6は、振動子3に対して超音波を送信すると共に、その反射波(エコー)を受信する。また、送受信装置6は、超音波ビームの照射によって得られた一次元の画像情報と、加速度センサ4によって検出された超音波ビームの方向および送信位置とを対応付けて、画像表示装置7に送信する。画像表示装置7は、超音波プローブ装置1より受信したこれらの情報に基づいて、二次元画像または三次元画像を構築する。これによって、画像表示装置7が備える表示画面には、図4に示すような二次元画像が表示される。
【0018】
このように、本実施形態によれば、振動子3としてシングル型のものを用い、かつ、シングル型の振動子3より照射される1本の超音波ビームの照射中心軸C上に、位置センサとしての加速度センサ4を配置する。これにより、照射中心軸Cに対して加速度センサ4をオフセットさせた場合と比較して、筐体2の断面積の縮小できるので、超音波プローブ装置1の小型化を図ることが可能になる。
【0019】
また、本実施形態によれば、シングル型の振動子3より照射される1本の超音波ビームの照射中心軸C上に加速度センサ4を配置することで、超音波プローブ装置1としての全体的な重量バランスを最適化できる。その結果、操作性(ユーザビリティ)、すなわち、使い易さと使い勝手に優れた超音波プローブ装置1を実現できる。また、シングル型の振動子3は比較的安価ゆえに、超音波プローブ装置1の製造コストを抑えることができる。
【0020】
また、本実施形態によれば、筐体2の長手方向において、先端の振動子3(皮膚との接触点)から離れて加速度センサ4を配置することで、超音波ビームの方向(超音波プローブ装置1の傾き)をより精度良く検出することができる。加速度センサ4を振動子3に隣接させるよりも離した方が、超音波プローブ装置1の傾きに対する変位量が大きくなるからである。このような観点でいえば、両者の間隔は大きい方が好ましい。
【0021】
さらに、本実施形態によれば、筐体2は先端に向かって窄まった略円筒形状(ペン形状)を有しており、軽量かつ細身の超音波プローブ装置1をペングリップにて手に馴染んだ状態で使用できるため、操作性に優れている。
【0022】
従来の超音波プローブ装置は、振動子(PZT:ジルコン酸チタン酸鉛)を非常に微細な短冊状に切断した素子を使用し、電子的に素子を順番に切り替えて送受信することで二次元画像を取得する(電子スキャン式)。しかしながら、超音波を発振するためには、振動子自体の固有振動が発振周波数に合っている必要があり、周波数が高くなると、それなりに薄く小さくしなければならない。このため、10MHzを越えるようになると、加工が困難になるという問題が顕在化するため、高周波帯域に対応可能な電子スキャン式のものは存在しない。また、送受信位置より近距離の診断などを行う場合は、方位分解能を上げるために、接触面を小さくする必要も生じる。高周波の振動子を使用する利点としては、周波数が高いほど距離分解能が向上することが挙げられる。3.5MHzでは波長が約0.4mm、30MHzになると波長は50μmになる。距離分解能は波長によって決定する。皮膚直下の脂肪状態、皮膚ガンなどの診断には、この高周波超音波画像表示装置が必要であり、これに代わるものは存在しない。本実施形態では、シングル型の振動子3の超音波ビームの方向と送信位置を、加速度センサ4により、1本目の走査線に対して相対角度、相対座標を得ることで、二次元断層像または三次元断層像を構築することを可能にした点において、新規なものである。
【0023】
なお、上述した実施形態に係る超音波プローブ装置1、および、これを用いた画像システム8は、超音波を用いて被験体を診断する用途に限定されるものではなく、様々な測定対象物の断層像を取得・表示する用途に対して、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 超音波プローブ装置
2 筐体
3 振動子
4 加速度センサ
5 ケーブル
6 送受信回路
7 画像表示装置
8 画像表示システム
【要約】
【課題】超音波プローブ装置の小型化と操作性の向上を図る。
【解決手段】画像表示装置に情報を送信する超音波プローブ装置1は、筐体2と、シングル型の振動子3と、位置センサ4とを有する。筐体2は、略筒形状を有する。振動子3は、筐体2の先端に配置されている。位置センサ4は、筐体2の長手方向の内部において、シングル型の振動子3より照射される1本の超音波ビームの照射中心軸C上に配置されている。また、位置センサ4は、振動子3より照射される超音波ビームの方向および自己の送信位置を検出する。超音波ビームの照射によって得られた一次元の画像情報と、位置センサによって検出された超音波ビームの方向および送信位置とは、ケーブル5を介して、画像表示装置に送信される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4