特許第6244616号(P6244616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244616波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器、および波長可変干渉フィルターの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244616
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器、および波長可変干渉フィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20171204BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20171204BHJP
   G01J 3/26 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
   G02B26/00
   B81B3/00
   !G01J3/26
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-189626(P2012-189626)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-48366(P2014-48366A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164633
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】廣久保 望
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02487519(EP,A1)
【文献】 特開2011−053510(JP,A)
【文献】 特開2009−282540(JP,A)
【文献】 特開2011−227172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00
G01J 3/26
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する第一基板と、
前記第一基板に対向し、前記第一基板に接合され透光性を有する第二基板と、
前記第二基板の前記第一基板が設けられる側とは反対側に対向して、前記第二基板に接合され透光性を有する第三基板と、
前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対向する可動面を有する可動部と、
前記第二基板に設けられ、前記可動部を前記第二基板の厚み方向に移動可能に保持する保持部と、
前記可動部の前記可動面および前記第一基板の前記第二基板側の面に、所定のミラー間ギャップを介して対向配置される一対のミラーと、
前記第一基板および前記第二基板の互いに対向する面に、それぞれ互いに対向する2つの変位用電極を有し、前記変位用電極に所定の電圧が印加されることで、静電引力により前記可動部を基板厚み方向に変位させる静電アクチュエーターと、
を備え、
前記第一基板と前記第二基板の間、および前記第二基板と前記第三基板の間には、それぞれ接合層が配置され、前記第一基板と前記第二基板とにより挟まれた第一内部空間および前記第二基板と前記第三基板とに挟まれた第二内部空間を有し、前記第一基板と前記第二基板との間、および前記第二基板と前記第三基板との間にはそれぞれ封止材が配置され、前記接合層および前記封止材により前記第一内部空間および前記第二内部空間が密封されていることを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第一内部空間および前記第二内部空間が外部に対して減圧状態であることを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項1または2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第一内部空間と前記第二内部空間とを連通する貫通孔が前記第二基板に設けられていることを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第一基板は前記変位用電極の引出電極を備え、基板厚み方向から見た平面視で前記第二基板の前記引出電極と重なる領域に前記第二基板の一部が除去された第一貫通部を備え、前記平面視で前記第三基板の前記引出電極と重なる領域に前記第三基板の一部が除去された第二貫通部を備え、
前記第一基板と前記第二基板間の一間隙の外周部に前記第一貫通部および前記第二貫通部と連通した第一封止溝を備え、前記第二基板と前記第三基板間の二間隙の外周部に前記第一貫通部および前記第二貫通部と連通した第二封止溝を備え、前記第一間隙と前記第二間隙が前記封止材で密封されていることを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記封止材は、合成樹脂であることを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項6】
請求項5に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記合成樹脂は、パラキシリレン系ポリマーであることを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記封止材が、無機薄膜であることを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の波長可変干渉フィルターと、
光を検出する検出部と、
を具備し、
前記一対のミラーにより光干渉領域が構成され、前記検出部は、前記光干渉領域により取り出された光を検出することを特徴とする光学モジュール。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の波長可変干渉フィルターと、
光を検出する検出部と、
前記静電アクチュエーターを制御する制御部と、
を具備し、
前記一対のミラーにより光干渉領域が構成され、前記検出部は、前記光干渉領域により取り出された光を検出することを特徴とする電子機器。
【請求項10】
第一基板と、
前記第一基板に対向して配置され、可動部と前記可動部を前記第一基板の厚み方向に変位可能に保持する保持部と、を有する第二基板と、
前記第二基板の前記第一基板が配置される面とは反対の面に前記第二基板に対向して配置された第三基板と、
前記可動部の前記第一基板に対向する面に配置された第一ミラーと、
前記第一基板に設けられ、前記第一ミラーとギャップを介して対向配置される第二ミラーと、
前記ギャップを変位させるアクチュエーターと、
を備え、
前記第一基板と前記第二基板、前記第二基板と前記第三基板は、接合層により接合され、
前記第一基板と前記第二基板との間には、第一凹部が形成され、
前記第二基板と前記第三基板との間には、第二凹部が形成され、
前記第一凹部によって第一内部空間が形成され、
前記第二凹部によって第二内部空間が形成され、
前記第一基板と前記第二基板との間、および前記第二基板と前記第三基板との間には封止材が配置され
前記接合層および前記封止材により前記第一内部空間および前記第二内部空間が密封されていることを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項11】
第一凹部を有する第一基板に対向して第二基板を配置し、前記第一基板と前記第二基板との間に、前記第一凹部によって形成される第一内部空間と、前記第一内部空間と外部とを連通する第一間隙とを形成する工程と、
前記第二基板の前記第一基板を配置した面とは反対の面に、第二凹部を有する第三基板を前記第二基板に対向して配置し、前記第二基板と前記第三基板との間に前記第二凹部によって形成される第二内部空間と、前記第二内部空間と外部とを連通する第二間隙とを形成する工程と、
前記第一基板と前記第二基板、および前記第二基板と前記第三基板を、接合層を介して接合して接合体を得る工程と、
前記第一間隙および前記第二間隙を封止材で封止する工程と、
を有することを特徴とする波長可変干渉フィルターの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の波長可変干渉フィルターの製造方法において、
前記第一内部空間と前記第二内部空間を減圧状態とする工程を有することを特徴とする波長可変干渉フィルターの製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の波長可変干渉フィルターの製造方法において、
前記接合体は、複数の波長可変干渉フィルターがアレイ状に配置されてなり、
前記第二基板に前記第一間隙と連通する第一貫通部を形成する工程と、
前記第三基板に前記第二間隙と連通する第二貫通部を形成する工程と、
前記第一基板に前記第一間隙と前記第一貫通部を連通する第一封止溝を形成する工程と、
前記第三基板に前記第二間隙と前記第二貫通部を連通する第二封止溝を形成する工程と、
前記接合体を個片に切断する工程を有することを特徴とする波長可変干渉フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から所望の目的波長の光を選択して射出する波長可変干渉フィルター、この波長可変干渉フィルターを備えた光学モジュール、この光学モジュールを備えた電子機器、波長可変干渉フィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の反射ミラー間で光を反射させ、特定波長の光を透過させて、その他の波長の光を干渉により打ち消し合わせることで、入射光から特定波長の光を取得する分光フィルターが知られている。また、このような分光フィルターとして、ミラー間の距離を調整することで、射出させる光を選択して射出させる波長可変干渉フィルターが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の波長可変干渉フィルターは、透光性基板に形成された固定ミラーと、固定ミラーに対向配置された可動ミラーとを備えている。この波長可変干渉フィルターは、静電引力により可動ミラーを駆動することで、ミラー間の距離を調整し、射出させる光を選択する。
【0004】
このような波長可変干渉フィルターは、湿度や異物等の環境要因により駆動特性や光学特性が劣化し、信頼性が低下する懸念がある。そこで、波長可変干渉フィルターの信頼性を向上させるために、波長可変干渉フィルターをパッケージ内に密封する方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に記載のパッケージは、ヘッダーと、複数の導電性ピンと、光学的な窓を有したキャップを備え、その内部に波長可変干渉フィルターを内包し、キャップとヘッダーにより密封された内部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−257032号公報
【特許文献2】特表2005−510756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載のパッケージでは、波長可変干渉フィルターとは別にパッケージを用意し、それぞれを組み立てる必要がある。よって、波長可変干渉フィルターの信頼性を確保するために、別体のパッケージと、その組み立てに多くのコストと時間が必要となる。また、別体のパッケージは、波長可変干渉フィルターを収め、その周囲を密封するための隔壁を持つため、パッケージを含めた波長可変干渉フィルターのサイズが大きくなるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、小型、低コストな構造で信頼性を確保できる波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
本発明の一態様の波長可変干渉フィルターは、透光性を有する第一基板と、前記第一基板に対向し、前記第一基板に接合され透光性を有する第二基板と、前記第二基板の前記第一基板が設けられる側とは反対側に対向して、前記第二基板に接合され透光性を有する第三基板と、前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対向する可動面を有する可動部と、前記第二基板に設けられ、前記可動部を前記第二基板の厚み方向に移動可能に保持する保持部と、前記可動部の前記可動面および前記第一基板の前記第二基板側の面に、所定のミラー間ギャップを介して対向配置される一対のミラーと、前記第一基板および前記第二基板の互いに対向する面に、それぞれ互いに対向する2つの変位用電極を有し、前記変位用電極に所定の電圧が印加されることで、静電引力により前記可動部を基板厚み方向に変位させる静電アクチュエーターと、を備え、前記第一基板と前記第二基板の間、および前記第二基板と前記第三基板の間には、それぞれ接合層が配置され、前記第一基板と前記第二基板とにより挟まれた第一内部空間および前記第二基板と前記第三基板とに挟まれた第二内部空間を有し、前記第一基板と前記第二基板との間、および前記第二基板と前記第三基板との間にはそれぞれ封止材が配置され、前記接合層および前記封止材により前記第一内部空間および前記第二内部空間が密封されていることを特徴とする。
【0010】
[適用例1]本適用例にかかる波長可変干渉フィルターは、透光性を有する第一基板と、前記第一基板に対向し、前記第一基板に接合され透光性を有する第二基板と、前記第二基板の前記第一基板が設けられる側とは反対側に対向して、前記第二基板に接合され透光性を有する第三基板と、前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対向する可動面を有する可動部と、前記第二基板に設けられ、前記可動部を前記第二基板の厚み方向に移動可能に保持する保持部と、前記可動部の前記可動面および前記第一基板の前記第二基板側の面に、所定のミラー間ギャップを介して対向配置される2つのミラーと、前記第一基板および前記第二基板の互いに対向する面に、それぞれ互いに対向する2つの変位用電極を有し、これらの前記変位用電極に所定の電圧が印加されることで、静電引力により前記可動部を基板厚み方向に変位させる静電アクチュエーターとを備え、前記第一基板と前記第二基板、前記第二基板と前記第三基板間は、それぞれ接合層により接合され、前記第一基板と前記第二基板とにより挟まれた第一内部空間および前記第二基板と前記第三基板とに挟まれた第二内部空間を有し、前記第一基板と前記第二基板間に、前記第一内部空間と外部を連通した第一間隙を有し、前記第二基板と前記第二基板間に、前記第二内部空間と外部を連通した第二間隙を有し、前記第一間隙および前記第二間隙は、前記第一内部空間および前記第二内部空間を密封する封止材により密封されていることを特徴とする。
【0011】
この適用例では、第一基板と第二基板とにより挟まれた第一内部空間および第二基板と第三基板とに挟まれた第二内部空間を、第一基板と第二基板間に、第一内部空間と外部を連通した第一間隙を、封止材により密封することで、各内部空間を密封する。この場合、ミラーが設けられた可動部が密封された内部空間内に配置され、外部の湿度や異物による駆動特性や光学特性の劣化を防ぐことができる。従って、波長可変干渉フィルターの信頼性を確保することができる。また、別体のパッケージを用いることなく、ミラーが設けられた可動部を密封された空間に配置することができるため、小型化と、低コスト化ができる。また、接合層の周囲を封止材で密封するため、接合方法によらず、封止材により封止品質を確保できる。また、基板の接合を大気圧雰囲気下と減圧環境下のどちらでも行うことができるため、プラズマ重合膜や金属膜などを用いた様々な接合方法を採用でき、各基板間の接合品質を確保できる。
【0012】
[適用例2]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターでは、前記第一間隙と前記第二間隙が、前記第一内部空間と前記第二内部空間が外部に対して減圧状態で、前記封止材で密封されていることが好ましい。
【0013】
この適用例では、前記第一間隙と前記第二間隙が、第一内部空間と第二内部空間が減圧状態で、封止材により密封される。この場合、ミラーが設けられた可動部が減圧状態の内部空間内に配置され、駆動時に可動ミラーに空気抵抗が働くことを防ぐことができ、可動ミラーの応答性を向上させ、可動ミラーの応答性を十分に確保することができる。
【0014】
[適用例3]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターでは、前記第一内部空間と前記第二内部空間が連通する貫通孔を備え、前記第一間隙と前記第二間隙が前記封止材で密封されていることが好ましい。
【0015】
この適用例では、第二基板に第一内部空間と第二内部空間とを連通する貫通孔を有し、各内部空間が減圧状態で、各基板間の間隙を封止材で密封される。この場合、第一内部空間と第二内部空間が第一貫通孔で連通しているため、第一内部空間と第二内部空間内を減圧状態で、且つ、均一な圧力にできる。このため、第一内部空間と第二内部空間の圧力差による可動ミラーの変位を抑制することができる。従って、可動ミラーの応答性を向上し、且つ、精度よく可動ミラーを駆動することができる。
【0016】
[適用例4]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターでは、前記第一基板は前記変位用電極の引出電極を備え、前記第二基板の厚み方向から見た平面視で前記第二基板の前記引出電極と重なる領域に第一貫通部を備え、前記平面視で前記第三基板の前記引出電極と重なる領域に第二貫通部を備え、前記第一基板と前記第二基板間の前記第一間隙の外周部に前記第一貫通部および前記第二貫通部と連通した第一封止溝を備え、前記第二基板と前記第三基板間の前記第二間隙の外周部に前記第一貫通部および前記第二貫通部と連通した第二封止溝を備え、前記第一間隙と前記第二間隙が前記封止材で密封されていることが望ましい。
【0017】
この適用例では、第一基板に変位用電極の引出電極の引出電極が形成され、第二基板の引出電極と基板厚み方向に見た平面視で重なる領域に第一貫通部が形成され、第三基板の引出電極と基板厚み方向に見た平面視で重なる領域に第二貫通部が形成されている。また、各間隙の外周に第一貫通部および第二貫通部と連通した第一封止溝、第二封止溝を備え、第一内部空間と、第二内部空間は、第一間隙、第一封止溝、第一貫通部、第二間隙、第二封止溝、第一貫通部を介して外部と連通している。そして、封止材は第一貫通部と第二貫通部および第一封止溝、第二封止溝を介して、各基板間の第一間隙と第二間隙を密封することで各内部空間を減圧状態に密封できる。このため、第一貫通部、第二貫通部、第一封止溝、第二封止溝を介して封止材を間隙に効率的に浸透させることができ、封止品質を確保することができる。また、素子がアレイ状に複数並んだ状態であっても、各貫通部と各封止溝を介して、各素子の各間隙を効率的に一括で密封することができる。従って、製造効率を向上させることができる。
【0018】
[適用例5]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターでは、前記封止材は、合成樹脂であることが好ましい。
【0019】
この適用例では、封止材に、石油等を原料として製造された接着剤等の合成樹脂を用い、各基板の接合工程の後に、各基板間の第一間隙および第二間隙を密封する。このとき、封止材に合成樹脂を用いることで、様々な雰囲気下で封止工程を行うことができる。このため、ミラーや可動部の劣化を防ぐための乾燥空気や窒素等のガスを封入することができる。また、封止工程を常温で行うことができるため、残留応力を低減することができ、可動ミラーの駆動精度を確保することができる。従って、波長可変干渉フィルターの信頼性を確保することができる。
【0020】
[適用例6]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターでは、前記封止材は、パラキシリレン系ポリマーであることが好ましい。
【0021】
この適用例では、封止材に、パラキシリレン系ポリマー(パリレン)を用い、各基板の接合工程の後に、減圧状態で各基板間の各間隙にパリレンを成膜することで各内部空間を減圧状態で密封する。このため、接合方法によらず、各内部空間を減圧状態で密封することができる。従って、ミラーが設けられた可動部が減圧状態の内部空間内に配置され、駆動時に可動ミラーに空気抵抗が働くことを防ぐことができ、可動ミラーの応答性を向上させ、可動ミラーの応答性を十分に確保することができる。また、封止材にパリレンを用いるため、微細な間隙の内部へ封止材を形成することができ、封止距離を確保することができる。よって、高い封止品質を確保できる。さらに、複数の素子を一括して密封することができるため、生産性を向上させることができる。また、パリレンを用いた封止材は室温で形成できるため、熱によって波長可変干渉フィルターに加わる応力やミラーの劣化を抑制することができる。
【0022】
[適用例7]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターでは、前記封止材が、無機薄膜であることが好ましい。
【0023】
この適用例では、基板間の間隙に封止性が高い無機薄膜の封止材を形成することで、各内部空間を密封する。このため、高い封止品質を確保することができる。
【0024】
[適用例8]本適用例にかかる光学モジュールは、透光性を有する第一基板と、前記第一基板に対向し、前記第一基板に接合され透光性を有する第二基板と、前記第二基板の前記第一基板が設けられる側とは反対側に対向して、前記第二基板に接合され透光性を有する第三基板と、前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対向する可動面を有する可動部と、前記第二基板に設けられ、前記可動部を前記第二基板の厚み方向に移動可能に保持する保持部と、前記可動部の前記可動面および前記第一基板の前記第二基板側の面に、所定のミラー間ギャップを介して対向配置される2つのミラーと、前記第一基板および前記第二基板の互いに対向する面に、それぞれ互いに対向する2つの変位用電極を有し、これらの前記変位用電極に所定の電圧が印加されることで、静電引力により前記可動部を基板厚み方向に変位させる静電アクチュエーターと、光を検出する検出部と、を具備し、前記第一基板と前記第二基板、前記第二基板と前記第三基板間は、それぞれ接合層により接合され、前記第一基板と前記第二基板とにより挟まれた第一内部空間および前記第二基板と前記第三基板とに挟まれた第二内部空間を有し、前記第一基板と前記第二基板間に、前記第一内部空間と外部を連通した第一間隙を有し、前記第二基板と前記第二基板間に、前記第二内部空間と外部を連通した第二間隙を有し、前記第一間隙および前記第二間隙に、第一内部空間と第二内部空間を密閉する封止材を有し、前記一対のミラーにより光干渉領域が構成され、前記検出部は、前記光干渉領域により取り出された光を検出することを特徴とする。
【0025】
この適用例では、ミラーが設けられた可動部が密封された内部空間内に配置され、外部の湿度や異物による駆動特性や光学特性の劣化を防ぐことができる。従って、波長可変干渉フィルターの信頼性を確保することができる。従って、光モジュールにおいても安定して被測定対象の光の検出を行うことができる。
【0026】
[適用例9]本適用例にかかる電子機器は、透光性を有する第一基板と、前記第一基板に対向し、前記第一基板に接合され透光性を有する第二基板と、前記第二基板の前記第一基板が設けられる側とは反対側に対向して、前記第二基板に接合され透光性を有する第三基板と、前記第二基板に設けられ、前記第一基板に対向する可動面を有する可動部と、前記第二基板に設けられ、前記可動部を前記第二基板の厚み方向に移動可能に保持する保持部と、前記可動部の前記可動面および前記第一基板の前記第二基板側の面に、所定のミラー間ギャップを介して対向配置される2つのミラーと、前記第一基板および前記第二基板の互いに対向する面に、それぞれ互いに対向する2つの変位用電極を有し、これらの前記変位用電極に所定の電圧が印加されることで、静電引力により前記可動部を基板厚み方向に変位させる静電アクチュエーターと、前記第一基板と前記第二基板とにより挟まれた第一内部空間と、前記第二基板と前記第三基板とに挟まれた第二内部空間と、前記第一基板と前記第二基板間の前記第一内部空間と外部を連通した第一間隙と、前記第二基板と前記第二基板間の前記第二内部空間と外部を連通した第二間隙と、前記第一間隙および前記第二間隙を密封する封止材と、光を検出する検出部と、前記静電アクチュエーターを制御する制御部と、を具備したことを特徴とする。
【0027】
この適用例では、ミラーが設けられた可動部が密封された内部空間内に配置され、外部の湿度や異物による駆動特性や光学特性の劣化を防ぐことができる。従って、波長可変干渉フィルターの信頼性を確保することができる。従って、電子機器においても、制御部により静電アクチュエーターを制御することで可動ミラーを安定的に動かすことができ、検査対象光の成分強度を安定的に分析することができる。
【0028】
[適用例10]本適用例にかかる波長可変干渉フィルターは、第一基板と、前記第一基板に対向して配置され、可動部と前記可動部を前記第一基板の厚み方向に変位可能に保持する保持部と有する第二基板と、前記第二基板の前記第一基板が配置される面とは反対の面に前記第二基板に対向して配置された第三基板と、前記可動部の前記第一基板に対向する面に配置された第一ミラーと、前記第一基板に設けられ、前記第一反射膜とギャップを介して対向配置される第二ミラーと、前記ギャップを変位させるアクチュエーターと、を備え、前記第一基板と前記第二基板、前記第二基板と前記第三基板は、接合層により接合され、前記第一基板と前記第二基板との間には、第一凹部が形成され、前記第二基板と前記第三基板との間には、第二凹部が形成され、前記第一凹部と外部とを連通する第一間隙、第二凹部と外部とを連通する第二間隙には封止材が配置されていることを特徴とする。
【0029】
この適用例では、第一基板と第二基板とにより挟まれた第一内部空間および第二基板と第三基板とに挟まれた第二内部空間を、第一基板と第二基板間に、第一内部空間と外部を連通した第一間隙に、封止材を配置することで、各内部空間を密封する。この場合、ミラーが設けられた可動部が密封された内部空間内に配置され、外部の湿度や異物による駆動特性や光学特性の劣化を防ぐことができる。従って、波長可変干渉フィルターの信頼性を確保することができる。また、別体のパッケージを用いることなく、ミラーが設けられた可動部を密封された空間に配置することができるため、小型化と、低コスト化ができる。
【0030】
[適用例11]本適用例にかかる波長可変干渉フィルターの製造方法は、第一凹部を有する第一基板に対向して第二基板を配置し、前一基板と前記第二基板との間に、前記第一凹部によって形成される前記第一内部空間と、前記第一内部空間と外部とを連通する第一間隙とを形成する工程と、前記第二基板の前記第一基板を配置した面とは反対の面に、第二凹部を有する第三基板を前記第二基板に対向して配置し、前記第二基板と前記第三の基板との間に前記第二凹部によって形成される第二内部空間と、前記第二内部空間と外部とを連通する第二間隙とを形成する工程と、前記第一基板と前記第二基板、および前記第二基板と前記第三基板を、接合層を介して接合して接合体を得る工程と、前記第一間隙および前記第二間隙を封止材で封止する工程とを有していることを特徴とする。
【0031】
この適用例では、第一凹部を有する第一基板に対向して第二基板を配置することで、第一基板と第二基板の間に、第一凹部によって第一内部空間と、第一内部空間と外部を連通する第一間隙が形成され、第二基板の第一基板を配置した面とは反対の面に、第二凹部を有する第三基板を第二基板に対向して配置することで、第二基板と第三基板との間に第二凹部によって第二内部空間と、第二内部空間と外部を連通する第二間隙が形成され、第一基板と第二基板、および第二基板と第三基板を、接合層を介して接合することで接合体を得る。そして、第一間隙と第二間隙を封止材で封止することで各内部空間が密封された波長可変干渉フィルターを製造することができる。各基板を接合する工程と、各内部空間を密封する工程が異なるため、各基板の接合方法によらず、各内部空間を密封することができる。すなわち、接合方法が限定されないため、プラズマ重合膜や金属膜などを用いた様々な接合方法を採用でき、各基板間の接合品質を確保できる。
【0032】
[適用例12]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターの製造方法では、前記第一内部空間と前記第二内部空間を減圧状態とする工程を有していることが好ましい。
【0033】
この適用例では、第一内部空間と第二内部空間が減圧状態で、封止材により密封される。この場合、ミラーが設けられた可動部が減圧状態の内部空間内に配置され、駆動時に可動ミラーに空気抵抗が働くことを防ぐことができ、可動ミラーの応答性を向上させ、可動ミラーの応答性を十分に確保することができる。
【0034】
[適用例13]上記適用例にかかる波長可変干渉フィルターの製造方法では、前記接合体は、複数の波長可変干渉フィルターがアレイ状に配置されてなり、前記第二基板に前記第一間隙と連通する第一貫通部を形成する工程と、前記第三基板に前記第二間隙と連通する第二貫通部を形成する工程と、前記第一基板に前記第一間隙と前記第一貫通部を連通する第一封止溝を形成する工程と、前記第三基板に前記第二間隙と前記第二貫通部を連通する第二封止溝を形成する工程と、前記接合体を個片に切断する工程を有していることが好ましい。
【0035】
この適用例では、波長可変干渉フィルターがアレイ状に配置された状態で、第二基板に第一間隙と連通する第一貫通部を形成し、第三基板に第二間隙と連通する第二貫通部を形成し、第一基板に第一間隙と第一貫通部を連通する第一封止溝を形成し、第三基板に第二間隙と第二貫通部を連通する第二封止溝を形成し、第一基板と第二基板、第二基板と第三基板を接合層を介して接合する。そして、第一貫通部と第二貫通部、第一封止溝、第二封止溝を介して、第一間隙及び第二間隙に封止材を形成し、接合体を個片へ切断することで各内部空間が密封された波長可変干渉フィルターを製造することができる。アレイ状態で一括して製造できるため製造効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第一実施形態の分光測定装置の概略構成を示すブロック図。
図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図。
図3図2の波長可変干渉フィルターのA−A’線での断面図。
図4図2の波長可変干渉フィルターのB−B’線での断面図。
図5】第一実施形態の第一基板を第二基板側から見た平面図。
図6】第一実施形態の第二基板を第一基板側から見た平面図。
図7】第一実施形態の第三基板を第二基板側から見た平面図。
図8】第一実施形態の接合工程後の製造工程を示す図。
図9】第二実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図。
図10図9の波長可変干渉フィルターのA−A’線での断面図。
図11図9の波長可変干渉フィルターのB−B’線での断面図。
図12】第二実施形態の第二基板を第一基板側から見た平面図。
図13】本発明の波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置(電子機器)を示す概略図。
図14図13のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図。
図15】本発明の波長可変干渉フィルターを備えた食物分析装置(電子機器)の概略構成を示す図。
図16】本発明の波長可変干渉フィルターを備えた分光カメラ(電子機器)の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0038】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態について、図面に基づいて説明する。
[分光測定装置の構成]
図1は、第一実施形態の分光測定装置の概略構成を示すブロック図である。
分光測定装置1は、例えば測定対象Xで反射した測定対象光における各波長の光強度を分析し、分光スペクトルを測定する装置である。なお、本実施形態では、測定対象Xで反射した測定対象光を測定する例を示すが、測定対象Xとして、例えば液晶パネル等の発光体を用いる場合、当該発光体から発光された光を測定対象光としてもよい。
そして、この分光測定装置1は、図1に示すように、光学モジュール10と、光学モジュール10から出力された信号を処理する制御部20と、を備えている。
【0039】
[光学モジュールの構成]
光学モジュール10は、波長可変干渉フィルター5と、検出部11と、I−V変換器12と、アンプ13と、A/D変換器14と、電圧制御部15とを備える。
この光学モジュール10は、測定対象Xで反射された測定対象光を、入射光学系(図示略)を通して、波長可変干渉フィルター5に導き、波長可変干渉フィルター5を透過した光を検出部11で受光する。そして、検出部11から出力された検出信号は、I−V変換器12、アンプ13、及びA/D変換器14を介して制御部20に出力される。
【0040】
[波長可変干渉フィルターの構成]
次に、光学モジュールに組み込まれる波長可変干渉フィルターについて説明する。
図2は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す平面図である。図3は、図2の波長可変干渉フィルターのA−A’線での断面図である。図4は、図2の波長可変干渉フィルターのB−B’線での断面図である。
【0041】
波長可変干渉フィルター5は、図2に示すように、平面正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。この波長可変干渉フィルター5は、図3図4に示すように、第一基板51、第二基板52、および第三基板53を備えている。これらの3枚の基板51,52,53は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。これらの中でも、各基板51,52,53の構成材料としては、例えばナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属を含有したガラスが好ましく、このようなガラスにより3枚の基板51,52,53を形成することで、後述する固定ミラー55、可動ミラー56や各電極の密着性、基板同士の接合強度を向上させることが可能となる。そして、これらの3枚の基板51,52,53は、基板厚み方向から見た平面視において接合領域57A、57B、57C、57Dの接合面513,524,525,532が接合層571,572により接合されることで、一体に構成されている。
【0042】
そして、第一基板51と、第二基板52との間には、本発明の一対のミラーを構成する固定ミラー55および可動ミラー56が設けられる。ここで、固定ミラー55は、第一基板51の第二基板52に対向する面に固定され、可動ミラー56は、第二基板52の第一基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定ミラー55および可動ミラー56は、ミラー間ギャップGを介して対向配置されている。さらに、第一基板51と第二基板52との間には、固定ミラー55および可動ミラー56の間のミラー間ギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター54が設けられている。
【0043】
[第一基板の構成]
図5は、第一基板51を第二基板52側から見た平面図である。
第一基板51は、厚みが例えば1mmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。具体的には、図2および図3図4に示すように、第一基板51には、エッチングによりミラー固定部511および電極形成溝512が形成される。
ミラー固定部511は、第一基板51の基板厚み方向から第一基板51を見た平面視において、平面中心点を中心とした円形に形成されている。電極形成溝512は、前記平面視において、電極形成溝512と同心円で電極形成溝512よりも径寸法が大きい円形に形成されている。
【0044】
ミラー固定部511は、第一基板51の表面からエッチングされ、深さが、例えば500nmに形成されている。ミラー固定部511の深さ寸法は、ミラー固定部511の表面(ミラー固定面511A)に固定される固定ミラー55、および第二基板52に形成される可動ミラー56の間のミラー間ギャップGの寸法、固定ミラー55や可動ミラー56の厚み寸法により適宜設定される。また、ミラー固定部511は、波長可変干渉フィルター5を透過させる波長域をも考慮して、深さが設計されることが好ましい。
【0045】
そして、ミラー固定面511Aには、円形状に形成される固定ミラー55が固定されている。この固定ミラー55は、高反射率が得られるAg合金やAl合金等の金属合金膜であり、スパッタリングなどの手法によりミラー固定部511に形成される。
なお、本実施形態では、固定ミラー55としてはAg合金やAl合金等の金属合金膜を用いるが、これに限定されず、例えば、SiO2−TiO2系膜誘電体多層膜や、AgC単層の固定ミラーを用いる構成としてもよい。
【0046】
電極形成溝512は、第一基板51の表面からエッチングされ、深さが、例えば1μmに形成されている。電極形成溝512には、ミラー固定部511の外周縁から電極形成溝512の内周壁面まで間に、リング状の電極固定底面512Cが形成され、この電極固定底面512Cに第一変位用電極541が形成される。また、第一基板51には、溝深さがそれぞれ電極固定底面512Cと同一深さ寸法である第一電極配線溝512Aおよび第二電極配線溝512Bが形成されている。第一電極配線溝512Aおよび第二電極配線溝512Bは、電極形成溝512の外周縁から第一基板51の平面中心点から第一電極引出部585Aおよび第二電極引出部585Bに対して延出して形成される。
【0047】
第一電極配線溝512Aおよび第一電極引出部585Aには、第一変位用電極541の外周縁の一部から延出する第一変位用電極配線542Aおよび第一変位用引出電極546Aが形成される。第一変位用電極541および第一変位用電極配線542Aおよび第一変位用引出電極546Aは、Au/Cr膜(クロム膜を下地とし、その上に金膜を形成した膜)を用いて形成され、スパッタリングなどの手法により、例えば100nmの厚さに形成される。
なお、本実施形態では、第一変位用電極541および第一変位用電極引出部542してはAu/Cr膜を用いるが、これに限定されず、他の金属やITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用いてもよい。
【0048】
第二電極配線溝512Bには、第二変位用電極544の外周縁の一部から延出する第二変位用電極上部配線545と対向する位置にポリイミド等の樹脂をコアとして、コアのまわりを金等でメッキしたバンプ電極516が形成され、バンプ電極516から第二電極引出部585Bへ延出する第二変位用電極下部配線542Bが形成される。そして、第二電極引出部585Bには、第二変位用引出電極546Bが形成される。
第二変位用電極544および第二変位用電極上部配線545および第二変位用電極下部配線542Bおよび第二変位用引出電極546Bは、Au/Cr膜(クロム膜を下地とし、その上に金膜を形成した膜)を用いて形成され、スパッタリングなどの手法により、例えば100nmの厚さに形成される。
なお、本実施形態では、第二変位用電極544および第二変位用電極上部配線545および第二変位用電極下部配線542Bおよび第二変位用引出電極546BとしてAu/Cr膜を用いるが、これに限定されず、他の金属やITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を用いてもよい。また、本実施形態ではバンプ電極516としてポリイミド等の樹脂をコアとして金等をメッキしたバンプ電極を用いるが、これに限定されず、メッキ等で凸形状に形成された他の金属を用いてもよい。
【0049】
さらに、第一基板51には、第一電極引出部585Aと第二電極引出部585Bを繋ぐ第一封止溝(本発明の第一封止溝)517が形成されている。
【0050】
[第二基板の構成]
図6は、第二基板52を第一基板51側から見た平面図である。
第二基板52は、厚みが例えば600μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
具体的には、図2および図3図4に示すように、第二基板52には、エッチングにより変位部521が形成される。この変位部521は、第二基板52の基板厚み方向から第二基板52を見た平面視において、平面中心点を中心とした円形の可動部522と、可動部522と同軸であり可動部522を保持する保持部523とを備えている。
【0051】
第二基板52は、第一電極引出部585Aと第二電極引出部585Bと平面視で重なる領域に第二基板52の一部が除去された第一貫通部583がエッチングやレーザー等により形成される。
【0052】
可動部522は、保持部523よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、第二基板52の厚み寸法と同一寸法である600μmに形成されている。また、可動部522は、ミラー固定部511の径寸法と略同一径寸法の円柱状に形成されている。また、可動部522は、ミラー固定部511に平行な可動面522Aを備え、この可動面522Aに可動ミラー56が固定されている。ここで、この可動ミラー56と、上記した固定ミラー55とにより、本発明の一対のミラーが構成される。
【0053】
可動ミラー56は、固定ミラー55と同様に円形状に形成されている。また、可動ミラー56は、固定ミラー55と同一の薄膜が用いられ、本実施形態では、Ag合金やAl合金等の金属合金膜が用いられる。
【0054】
保持部523は、可動部522の周囲を囲うダイヤフラムであり、例えば厚み寸法が30μmに形成されている。そして、保持部523の第一基板51に対向する面には、第一変位用電極541と静電ギャップを介して対向するリング状の第二変位用電極544が形成されている。ここで、静電ギャップは、第一基板51の電極形成溝512の深さ寸法、各変位用電極541,544の厚み、および接合層571の厚みにより決定される。また、第二変位用電極544および前述した第一変位用電極541は、本発明の一対の変位用電極であり、本発明の静電アクチュエーター54を構成する。
【0055】
また、第二変位用電極544の外周縁の一部からは、第二変位用電極上部配線545が、平面正方形状の第二基板52の2つの頂点に向かって、より具体的には、図2に示す平面視において左上の頂点と右下の頂点とに向かって延出して形成されている。
なお、本実施形態では、第二変位用電極544および第二変位用電極上部配線545は、第一変位用電極541および第一変位用電極引出部542と同様に、Au/Cr膜を用いて形成されるが、これに限定されず、他の金属やITOを用いてもよい。
【0056】
このような第二基板52と第一基板51との接合時には、第一基板51に形成されたバンプ電極516に第二変位用電極上部配線545が当接し、この当接状態が維持される。つまり、第二変位用電極上部配線545は、バンプ電極516および第二変位用電極下部配線542Bを介して、第二変位用引出電極546Bに接続される。これにより、第二変位用電極上部配線545から第二変位用引出電極546Bへの導通が確保される。第二変位用引出電極546Bおよび前述の第一変位用引出電極546Aは、例えば光学モジュール10の電圧制御部15に接続され、電圧制御部15により第一変位用電極541および第二変位用電極544間に所定の電圧が印加される。これにより、静電引力により、これらの第一変位用電極541および第二変位用電極544が引っ張られ、保持部523が撓んで、可動部522が第一基板51側に変位する。この第一変位用電極541および第二変位用電極544間に印加する電圧を制御することで、可動部522の可動ミラー56と、第一基板51の固定ミラー55との間のミラー間ギャップGが調整され、ミラー間ギャップGに応じた波長の光が分光可能となる。
【0057】
[第三基板の構成]
図7は、第三基板53を第二基板52側から見た平面図である。
第三基板53は、上記第一基板51および第二基板52と同様に、厚みが例えば1mmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。具体的には、第三基板53には、第二基板52の変位部521に対向して、この変位部521と同一径寸法のギャップ形成溝531が形成されている。
【0058】
また、第三基板53には、第一電極引出部585Aと第二電極引出部585Bと平面視で重なる領域、つまり波長可変干渉フィルター5の平面正方形状の4つの頂点にそれぞれ第三基板53の一部が除去されて第二貫通部584がダイヤモンドドリルやサンドブラスト等により形成されている。また、第三基板53には、第二貫通部584を繋ぐ本発明の第二封止溝534が形成されている。
【0059】
また、第三基板53の両面には、特定範囲外の波長の光を反射または吸収する光学膜533が、固定ミラー55および可動ミラー56と同心円状に形成されている。光学モジュール10に入射した検査対象光は、この光学膜533を通って第二基板52の可動部522に入射する。
【0060】
上述したような第一基板51、第二基板52、および第三基板53は、図3に示すように、変位部521の外周側に形成される接合領域57A、57B、57C、57Dの接合面513,524,525,532を接合することで、一体構成として形成される。このとき、接合面513、524の間、および接合面525、532の間に未接合の第一間隙591、第二間隙592が形成される。第一間隙591と、第二間隙592は、第一基板51と第二基板52との間の第一内部空間581、第二基板52と第三基板53との間の第二内部空間582が減圧状態で、封止材518により封止される。封止材518としては、パラキシリレン系ポリマー(パリレン)のパリレンC、パリレンN、パリレンD、パリレンHT、ALD法やCVD法等で成膜される無機薄膜のSiO2、SiN、Al23,エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ナイロン、エチレンビニルアルコール等の樹脂が用いられる。
【0061】
[検出部の構成]
次に、図1に戻り、光学モジュール10の検出部11について説明する。
検出部11は、波長可変干渉フィルター5の光干渉領域Ar0を透過した光を受光(検出)し、受光量に基づいた検出信号を出力する。
【0062】
[I−V変換器、アンプ、A/D変換器、及び電圧制御部の構成]
I−V変換器12は、検出部11から入力された検出信号を電圧値に変換し、アンプ13に出力する。
アンプ13は、I−V変換器12から入力された検出信号に応じた電圧(検出電圧)を増幅する。
A/D変換器14は、アンプ13から入力された検出電圧(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、制御部20に出力する。
電圧制御部15は、制御部20の制御に基づいて、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター54に対して電圧を印加する。これにより、静電アクチュエーター54の第一変位用電極541及び第二変位用電極544間で静電引力が発生し、可動部522が第一基板51側に変位して、ミラー間ギャップGが所定値に設定される。
【0063】
[制御部の構成]
次に、分光測定装置1の制御部20について説明する。
制御部20は、例えばCPUやメモリー等が組み合わされることで構成され、分光測定装置1の全体動作を制御する。この制御部20は、図1に示すように、波長設定部21と、光量取得部22と、分光測定部23と、を備える。
また、制御部20は、各種データを記憶する記憶部30を備え、記憶部30には、静電アクチュエーター54を制御するためのV−λデータが記憶される。このV−λデータは、静電アクチュエーター54に印加する電圧に対する、波長可変干渉フィルター5を透過する光のピーク波長が記録されている。
【0064】
光量取得部22は、検出部11により検出された光量を取得し記憶部30に記憶する。
分光測定部23は、光量取得部22により取得され記憶部30に記憶された各波長に対する光量に基づいて、測定対象光の分光スペクトルを測定する。
【0065】
[波長可変干渉フィルターの製造方法]
次に、上述したような波長可変干渉フィルターに製造方法について説明する。
先ず、上述した各基板51,52,53を形成する。なお、第一基板51および第三基板53は、第一内部空間581および第二内部空間582を減圧状態とした際に、撓まない程度の剛性が確保できる厚さに形成する。
【0066】
次に、各基板51,52,53を接合する。ここで、接合面513,524,525,532を接合する接合層571,572には、例えばプラズマ重合膜が用いられる。具体的には、各基板51,52,53は、各基板51,52,53の接合面513,524,525,532に、平面視において接合領域57A、57B、57C、57Dの領域にプラズマ重合法などによりプラズマ重合膜を形成し、プラズマ重合膜に紫外線の照射、またはプラズマ処理をした後に、各基板51,52,53を重ね合わせることで接合される。プラズマ重合膜は、ポリオルガノシロキサンを主材料として用いるのが好ましく、その平均厚みは、約10nmから約100nmである。
【0067】
このようには、シロキサンによるプラズマ重合膜を用いた活性化接合を実施することで、温度によらず、紫外線照射またはプラズマ処理により、容易にプラズマ重合膜を接合させることができる。また、シロキサンによるプラズマ重合膜を用いれば、各基板51,52,53として、いかなる素材の基板を用いた場合でも、良好な密着性を示し、強い接合強度を得ることができる。
なお、各基板51,52,53の接合では、上記接合方法以外にも、例えば、粘着性薄膜(接着剤)による接合方法や、金属膜による接合方法などを利用することもできる。
【0068】
[封止工程]
図8は、各基板51,52,53を接合した後の封止およびチップ形成工程を示す図である。ここでは、各基板51,52,53を一枚の基材にそれぞれ形成し、この基材をそれぞれ接合して、最後に個別の波長可変干渉フィルターに個片化する製造方法について説明する。
図8(A)は各基板51,52,53を接合した状態を示している。各基板51,52,53を接合した後は、第一および第二間隙591,592から第一内部空間581および第二内部空間582内の空気を真空ポンプ等の吸引装置で吸引し、第一内部空間581および第二内部空間582を大気圧より減圧状態とする。そして、第一内部空間581および第二内部空間582が減圧された状態で、第一および第二間隙591,592を封止材518により密封する(図8(B))。このとき、封止材518には、例えばパラキシリレン系ポリマー(パリレン)が用いられる。パリレンは、波長可変干渉フィルター5を真空チャンバに入れ、パリレンのモノマーガスを導入することで波長可変干渉フィルター5の表面に均一なパリレン薄膜が室温で成膜される。パリレンは微細な間隙にも成膜されるため、第一貫通部583、第一封止溝517、第二貫通部584、第二封止溝534を介して第一および第二間隙591,592の内部にもパリレンが成膜され、封止材518を形成する。これにより、第一および第二間隙591,592が封止される。このとき、パリレンの成膜は減圧状態で行われるため、波長可変干渉フィルター5の内部の第一内部空間581、第二内部空間582は減圧状態で封止される。パリレンは、塩素を置換基として有するパリレンCを用いるのが好ましく、その平均膜厚は、約10nmから約100μmである。
なお、本実施形態では、第一内部空間581、第二内部空間582が減圧状態で密封されるが、これに限定されず、接着剤等を用いて大気圧状態で密封してもよい。
【0069】
封止材518により封止を行った後は、反応性イオンエッチング(RIE)等のプラズマ処理により、基板の厚み方向に異方性のエッチングを行い、波長可変干渉フィルター5の周囲の基板厚み方向と垂直な面上に成膜された封止材518および、第一変位用引出電極546A、第二変位用引出電極546B、光学膜533に成膜された封止材518を除去する(図8(C))。例えば、封止材518にパリレンを用いた場合は、O2ガスを用いたプラズマ処理により除去することができる。
【0070】
第一変位用引出電極546A、第二変位用引出電極546B、光学膜533上の封止材518を除去した後、図8(D)の破線にて示されるような切断ラインL1,L2に沿って切断することにより個片化され、チップが形成される(図8(E))。このとき、個片化には、ダイシングやレーザー、スクライブ等を用いることができる。
【0071】
[第一実施形態の作用効果]
上述したように、上記第一実施形態の波長可変干渉フィルター5では、接合面513、524の間、および接合面525、532の間に未接合の第一間隙591、第二間隙592が形成されている。また、各間隙は、波長可変干渉フィルター5の第一基板51と第二基板52との間の第一内部空間581、第二基板52と第三基板53との間の第二内部空間582と外部とに連通している。よって、第一間隙591、第二間隙592を封止材518により封止することで、第一内部空間581、第二内部空間582を密閉することができる。これにより、固定ミラー55、可動ミラー56および可動部522が、密封された第一内部空間581と第二内部空間582に配置されるため、外部の湿度や異物による駆動特性や光学特性の劣化を防ぐことができる。従って、波長可変干渉フィルター5の信頼性を確保することができる。また、別体のパッケージを用いないため、小型化と低コスト化ができる。また、このような波長可変干渉フィルター5を用いた光学モジュール10および分光測定装置1では、波長可変干渉フィルター5の信頼性を確保することができるので、検査対象光を安定的に受光し、検査対象光の各成分の強度を安定的に分析することができる。
【0072】
また、第一間隙591、第二間隙592を介して、第一内部空間581、第二内部空間582を大気圧より減圧状態とすることができるので、各基板51,52,53の接合後に第一内部空間581および第二内部空間582を減圧した状態で密封することできる。従って、可動ミラー56の設けられた可動部522が、それぞれ減圧状態の第一内部空間581および第二内部空間582の間に配置されるため、駆動時に可動ミラー56に空気抵抗が働くことを防ぐことができる。従って、可動ミラー56の応答性を向上でき、可動ミラー56の応答性を十分に確保することができる。
【0073】
さらに、基板51、52、53の接合を大気圧雰囲気下で行うことができるので、プラズマ重合膜や金属膜などを用いた接合方法を採用でき、各基板51,52,53間の接合品質を確保できる。特に、接合層571,572の一例であるプラズマ重合膜は、基板51,52,53表面の凹凸などを吸収できるため、基板51,52,53同士を接合でき、接合品質が良好である。
【0074】
また、封止工程にパリレンやSiO2、SiN、Al23などの薄膜成膜工程を用いることができ、複数の波長可変干渉フィルター5をウェハ状態で一括して密封することができる。従って、製造効率を向上させることができ、低コスト化が可能である。
また、封止材518の一例であるパリレンは、微細な間隙に成膜でき、間隙の奥深くまで封止材を形成することができる。よって、封止距離を長くすることができ、良好な封止品質が得られる。さらに、パリレンCは、良好がガスバリア性を有するため、さらに封止品質を向上できる。また、パリレンは室温で成膜することができ、熱によって波長可変干渉フィルターに加わる応力やミラーの劣化を抑制することができる。
【0075】
[第二実施形態]
次に、本発明に係る第二実施形態の波長可変干渉フィルターについて説明する。
図9は、第二実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図である。図10は、図9の波長可変干渉フィルターのA−A’線での断面図である。図11は、図9の波長可変干渉フィルターのB−B’線での断面図である。なお、第二実施形態以降の説明にあたり、第一実施形態と同様の構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
【0076】
第二実施形態の分光測定装置は、第一実施形態と略同様の構成を有し、光学モジュール10と、制御部20とを備えて構成されており、第一実施形態とは、光学モジュール10に設けられる波長可変干渉フィルター5の構成が異なる。
すなわち、第一実施形態の波長可変干渉フィルター5では、第二基板52に貫通孔が設けられていない例を示したが、第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、第二基板52Aには貫通孔526が形成される。
【0077】
具体的には、図12に示すように、第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、第二基板52Aの保持部523に、貫通孔526が形成される。貫通孔526は、第一基板51および第二基板52の間の第一内部空間581と、第二基板52および第三基板53の間の第二内部空間582とを連通する。この貫通孔526は、エッチング、レーザー加工等により形成される。
【0078】
このような波長可変干渉フィルター5Aは、第一実施形態と同様の製造方法により形成することができる。すなわち、各基板51,52,53同士を接合した後に、各基板51、52,53間の第一および第二間隙591,592は、波長可変干渉フィルター5の第一基板51と第二基板52Aとの間の第一内部空間581、第二基板52Aと第三基板53との間の第二内部空間582が減圧状態、あるいは、乾燥空気や窒素雰囲気の状態で、封止材518により密封されて、波長可変干渉フィルター5Aが形成される。
【0079】
[第二実施形態の作用効果]
第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、次のような作用効果を奏することができる。
すなわち、第一内部空間581と、第二内部空間582とを連通する貫通孔526が第二基板52Aに形成されている。このため、第一内部空間581および第二内部空間582内を減圧状態、あるいは、乾燥空気や窒素雰囲気の状態で密封した際に、第一内部空間581と第二内部空間582の圧力を均一にできる。従って、各内部空間の圧力差による可動ミラー56の変動を抑制することができ、精度よく可動ミラー56を駆動することができる。
また、このような波長可変干渉フィルター5Aを用いた光学モジュール10および分光測定装置1では、波長可変干渉フィルター5Aの可動ミラー56の駆動精度を向上することができるので、検査対象光を高精度に受光し、検査対象光の各色成分の強度を高精度に分析することができる。
【0080】
[その他の実施形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0081】
本発明の電子機器として、上記各実施形態では、分光測定装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の波長可変干渉フィルターの駆動方法、光学モジュール、及び電子機器を適用することができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、本発明の波長可変干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器等のガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0082】
図13は、波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図14は、図13のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図13に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、及び排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、波長可変干渉フィルター5、及び受光素子137(検出部)等を含む検出装置(光学モジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138(処理部)、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
また、図14に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
更に、ガス検出装置100の制御部138は、図14に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、波長可変干渉フィルター5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、及び排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0083】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0084】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。なお、吸引口120Aには、除塵フィルター120A1が設けられ、比較的大きい粉塵や一部の水蒸気などが除去される。
【0085】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、及びレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が波長可変干渉フィルター5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146に対して制御信号を出力する。これにより、電圧制御部146は、上記第一実施形態に示すように、バイアス駆動部151、ギャップ検出器152、フィードバック制御部153、及びマイコン154により構成され、第一実施形態と同様の駆動方法により、波長可変干渉フィルター5を駆動させ、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。この場合、波長可変干渉フィルター5から目的とするラマン散乱光を精度よく取り出すことができる。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0086】
なお、上記図13及び図14において、ラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光学モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0087】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0088】
図15は、波長可変干渉フィルター5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
この食物分析装置200は、図15に示すように、検出器210(光学モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する波長可変干渉フィルター5と、分光された光を検出する撮像部213(検出部)と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、波長可変干渉フィルター5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0089】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って波長可変干渉フィルター5に入射する。波長可変干渉フィルター5は電圧制御部222の制御により、波長可変干渉フィルター5は、上記第一実施形態に示すような駆動方法で駆動される。これにより、波長可変干渉フィルター5から精度よく目的波長の光を取り出すことができる。そして、取り出された光は、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御して波長可変干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0090】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、及びその含有量を求める。また、得られた食物成分及び含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。更に、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、更には、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにして得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0091】
また、図15において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
更には、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0092】
更には、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光学モジュールに設けられた波長可変干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光学モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0093】
また、電子機器としては、本発明の波長可変干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、波長可変干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図16は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図13に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330(検出部)とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図16に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、及びこれらのレンズ間に設けられた波長可変干渉フィルター5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、波長可変干渉フィルター5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。この時、各波長に対して、電圧制御部(図示略)が上記第一実施形態に示すような本発明の駆動方法により波長可変干渉フィルター5を駆動させることで、精度よく目的波長の分光画像の画像光を取り出すことができる。
【0094】
更には、本発明の波長可変干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを波長可変干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明の波長可変干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0095】
更には、光学モジュール及び電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、波長可変干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0096】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、及び電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明の波長可変干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光学モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0097】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。
【符号の説明】
【0098】
51…第一基板、52…第二基板、53…第三基板、522…可動部、522A…可動面、523…保持部、54…静電アクチュエーター、55…固定ミラー、56…可動ミラー、541…第一変位用電極、544…第二変位用電極、571,572…接合層、581…第一内部空間、582…第二内部空間、591…第一間隙、592…第二間隙、518…封止材、526…貫通孔、583…第一貫通部、584…第二貫通部、517…第一封止溝、534…第二封止溝。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16