特許第6244628号(P6244628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6244628-インクジェット印刷装置 図000002
  • 特許6244628-インクジェット印刷装置 図000003
  • 特許6244628-インクジェット印刷装置 図000004
  • 特許6244628-インクジェット印刷装置 図000005
  • 特許6244628-インクジェット印刷装置 図000006
  • 特許6244628-インクジェット印刷装置 図000007
  • 特許6244628-インクジェット印刷装置 図000008
  • 特許6244628-インクジェット印刷装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244628
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20171204BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B41J2/01 129
   B41J2/01 125
   B41J2/21
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-10923(P2013-10923)
(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公開番号】特開2014-141018(P2014-141018A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164633
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】小川 智弘
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−030139(JP,A)
【文献】 特開2013−010236(JP,A)
【文献】 特開2009−220423(JP,A)
【文献】 特開2012−183709(JP,A)
【文献】 特開2005−342970(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/099559(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1紫外線硬化型インクを液滴として吐出する第1吐出ヘッドと、
紫外線を照射する紫外線照射部と、
溶剤系インクを液滴として吐出する第2吐出ヘッドと、
顔料を含まない第2紫外線硬化型インクを液滴として吐出する第3吐出ヘッドと、
が搭載されたヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを記録媒体に対して第1方向に相対的に移動させながら、前記記録媒体に向けて前記第1紫外線硬化型インクを吐出し、前記記録媒体上に塗布された前記第1紫外線硬化型インクに前記紫外線を照射させて凹凸部を有する第1画像層を形成させた後、
前記記録媒体を前記第1方向と交差する第2方向に移動させた後、
前記記録媒体における前記第1画像層が形成された領域以外の領域に前記溶剤系インクを吐出させる制御部と、を備え、
前記第吐出ヘッドは前記第吐出ヘッドに対して第2方向側に配置され、
前記第3吐出ヘッドは、前記第2方向において前記第1吐出ヘッドと同位置、または前記第1吐出ヘッドと前記第2吐出ヘッドとの間に配置されていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置において、
前記制御部では、前記記録媒体に対して前記溶剤系インクを吐出させる前に、前記記録媒体における前記第1画像層が形成された領域以外の領域に前記第2紫外線硬化型インクを吐出させ、前記記録媒体上に塗布された前記第2紫外線硬化型インクに前記紫外線を照射させて下地層を形成し、前記下地層上に前記溶剤系インクを吐出させることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインクジェット印刷装置において、
前記記録媒体に塗布された前記溶剤系インクを加熱させる加熱部を備えたことを特徴とするインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶剤系のメタリックインク及びカラーインクを液滴として吐出する印刷ヘッドを備えた印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−101452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の印刷装置では、溶剤系インクを記録媒体に塗布し、塗布された溶剤系インクを加熱等して、溶剤系インクに含まれる溶剤成分が蒸発され、表面が平坦化された画像層を形成することができるものの、凹凸形状を有する画像層を形成することができない、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係るインクジェット印刷装置は、紫外線硬化型インクを液滴として吐出する第1吐出ヘッドと、紫外線を照射する紫外線照射部と、溶剤系インクを液滴として吐出する第2吐出ヘッドと、を備え、記録媒体に向けて前記紫外線硬化型インクを吐出し、前記記録媒体上に塗布された前記紫外線硬化型インクに前記紫外線を照射させて凹凸部を有する第1画像層を形成させ、前記記録媒体における前記第1画像層が形成された領域以外の領域に前記溶剤系インクを吐出させる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、記録媒体に対して紫外線硬化型インクを液滴として吐出し、記録媒体上に塗布された紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射することにより、当該紫外線硬化型インクに含まれる色剤としての顔料及び樹脂成分により記録媒体上に凹凸部を有する画像層を形成することができる。この場合、例えば、光輝性顔料を含む紫外線硬化型インクを吐出し、当該インクを硬化させることにより、記録媒体上に凹凸部の形成によってキラキラ感を有する画像層を形成することができる。さらに、記録媒体に対して溶剤系インクを液滴として吐出し、塗布された溶剤系インクに含まれる溶剤成分が蒸発または記録媒体に浸透することにより、記録媒体上に表面が平坦な平坦部を有する画像層を形成することができる。なお、当該平坦部は、紫外線硬化型インクによって形成される凹凸部に比べ表面が平坦な画像層である。そして、例えば、光輝性顔料を有する溶剤系インクを吐出し、当該インクを固化させることにより、記録媒体上に平坦部の形成によってピカピカ感を有する画像層を形成することができる。従って、同一の記録媒体上に凹凸部を有する画像層と平坦部を有する画像層を含んだ質感の異なる画像を形成することができる。これにより、意匠性の高い画像を形成することができる。なお、上記したキラキラ感は記録媒体上に粒状感がある状態であり、ピカピカ感は記録媒体上に粒状感がない状態であるとも言える。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係るインクジェット印刷装置では、顔料を含まない紫外線硬化型インクを液滴として吐出する第3吐出ヘッドをさらに備え、前記制御部では、前記記録媒体に対して前記溶剤系インクを吐出させる前に、前記記録媒体における前記第1画像層が形成された領域以外の領域に前記顔料を含まない紫外線硬化型インクを吐出させ、前記記録媒体上に塗布された前記顔料を含まない紫外線硬化型インクに前記紫外線を照射させて下地層を形成し、前記下地層上に前記溶剤系インクを吐出させることを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、記録媒体に対して色剤としての顔料を含まない紫外線硬化型インクを液滴として吐出し、記録媒体上に塗布された紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射することにより、記録媒体上に透明性を有する下地層を形成することができる。これにより、例えば、プラスチックフィルム等の非吸液性の記録媒体上に溶剤系インクによる画像層を形成する場合であっても、非吸液性の記録媒体上に確実に下地層を形成することができる。そして、当該画像層上に溶剤系インクを塗布すると、塗布された溶剤系インクが濡れ広がり、この状態で溶剤系インクに含まれる溶剤成分が蒸発して固化することにより、表面が平坦な平坦部を有する画像層を形成することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係るインクジェット印刷装置では、前記第1吐出ヘッドと、前記紫外線照射部と、前記第2吐出ヘッドとが搭載されたヘッドユニットを備え、前記ヘッドユニットと前記記録媒体とが相対的に移動する移動方向において、前記記録媒体に対して前記ヘッドユニットが移動する前記移動方向の上流側に前記第1吐出ヘッドが配置され、前記第1吐出ヘッドの下流側に前記紫外線照射部が配置され、前記紫外線照射部の下流側に前記第2吐出ヘッドが配置されたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、例えば、記録媒体に対してヘッドユニットを移動させながら、ヘッドユニットの移動方向に対して上流側に配置された第1吐出ヘッドから紫外線硬化型インクが吐出され、記録媒体に紫外線硬化型インクが塗布される。次いで、紫外線照射部から紫外線が照射され、塗布された紫外線硬化型インクが硬化される。これにより、記録媒体上に凹凸部を有する画像層が形成される。次いで、第2吐出ヘッドから溶剤系インクが吐出される。これにより、録媒体上に表面が平坦な平坦部を有する画像層を形成することができる。従って、ヘッドユニットの移動方向において、上流側から第1吐出ヘッド、紫外線照射部、第2吐出ヘッドの順に配置することにより、ヘッドユニットを移動方向に一回移動させる間に容易に凹凸部を有する画像層と平坦部を有する画像層とを形成することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係るインクジェット印刷装置では、前記ヘッドユニットにおける前記紫外線照射部と前記第2吐出ヘッドとの間に前記第3吐出ヘッドを配置するとともに、前記第3吐出ヘッドと前記第2吐出ヘッドとの間に、さらに、前記紫外線照射部を配置したことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、例えば、記録媒体に対してヘッドユニットを移動させながら、ヘッドユニットの移動方向に対して上流側に配置された第1吐出ヘッドから紫外線硬化型インクが吐出され、記録媒体に紫外線硬化型インクが塗布される。次いで、紫外線照射部から紫外線が照射され、塗布された紫外線硬化型インクが硬化される。これにより、記録媒体上に凹凸部を有する画像層が形成される。次いで、第3ヘッドから顔料を含まない紫外線硬化型インクが吐出される。次いで、紫外線照射部から紫外線が照射され、記録媒体上に透明性を有する下地層が形成される。次いで、下地層上に向けて第2吐出ヘッドから溶剤系インクが吐出される。これにより、録媒体上に表面が平坦な平坦部を有する画像層が形成される。従って、例えば、プラスチックフィルム等の非吸液性の記録媒体上に溶剤系インクによる画像層を形成する場合であっても、非吸液性の記録媒体上に確実に下地層を形成し、当該画像層上に溶剤系インクを塗布することにより、塗布された溶剤系インクが濡れ広がり、この状態で溶剤系インクに含まれる溶剤成分が蒸発して固化することにより、表面が平坦な平坦部を有する画像層を形成することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に係るインクジェット印刷装置では、前記第2吐出ヘッドの下流側に、さらに、前記紫外線照射部を配置し、前記第2吐出ヘッドの下流側に配置された前記紫外線照射部の下流側に、さらに、前記第3吐出ヘッドを配置し、前記紫外線照射部の下流側に配置された前記第3吐出ヘッドの下流側に、さらに、前記紫外線照射部を配置し、前記第3吐出ヘッドの下流側に配置された前記紫外線照射部の下流側に、さらに、前記第1吐出ヘッドを配置したことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ヘッドユニットが移動する往路及び復路において、容易に凹凸部を有する画像層と平坦部を有する画像層とを形成することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例に係るインクジェット印刷装置では、前記第1吐出ヘッドと、前記紫外線照射部と、前記第2吐出ヘッドとが搭載されたヘッドユニットを有し、前記ヘッドユニットが移動する第1移動方向と交差して前記ヘッドユニットと前記記録媒体とが相対的に移動する第2移動方向において、前記記録媒体に対して前記ヘッドユニットが移動する前記第2移動方向の上流側に前記第1吐出ヘッド及び前記紫外線照射部が配置され、前記第1吐出ヘッドの下流側に前記第2吐出ヘッドが配置されたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第2移動方向に対してヘッドユニットの上流側に配置された第1吐出ヘッドから紫外線硬化型インクが吐出され、記録媒体に紫外線硬化型インクが塗布される。次いで、紫外線照射部から紫外線が照射され、塗布された紫外線硬化型インクが硬化される。これにより、記録媒体上に凹凸部を有する画像層が形成される。次いで、第2吐出ヘッドから溶剤系インクが吐出される。これにより、録媒体上に表面が平坦な平坦部を有する画像層を形成することができる。従って、ヘッドユニットの第2移動方向において、上流側から第1吐出ヘッド、紫外線照射部、第2吐出ヘッドの順に配置することにより、ヘッドユニットを移動方向に一回移動させる間に容易に凹凸部を有する画像層と平坦部を有する画像層とを形成することができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例に係るインクジェット印刷装置では、前記第1移動方向に対して前記第1吐出ヘッドに並列、または、前記第2方向に対して前記第1吐出ヘッドと前記第2吐出ヘッドとの間に、さらに、前記第3吐出ヘッド及び前記紫外線照射部を配置したことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ヘッドユニットの第2移動方向におけるサイズを小型化させることができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例に係るインクジェット印刷装置では、前記記録媒体に塗布された前記溶剤系インクを加熱させる加熱部を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、記録媒体上に塗布された溶剤系インクが加熱されるので、効率よく平坦面を有する画像層が形成でき、印刷物の製造効率をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】インクジェット印刷装置の構成を示す概略図。
図2】第1実施形態に係るヘッドユニットの構成を示す概略図。
図3】吐出ヘッドの構成を示す断面図。
図4】第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の動作方法を示す工程図。
図5】第2実施形態に係るヘッドユニットの構成を示す概略図。
図6】第2実施形態に係るインクジェット印刷装置の動作方法を示す工程図。
図7】第1変形例に係るヘッドユニットの構成を示す概略図。
図8】第2変形例に係るヘッドユニットの構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1及び第2実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせて示している。
【0024】
(第1実施形態)
まず、インクジェット印刷装置の構成について説明する。図1は、インクジェット印刷装置の構成を示す概略図である。インクジェット印刷装置は、紫外線硬化型インクを液滴として吐出する第1吐出ヘッドと、紫外線を照射する紫外線照射部と、溶剤系インクを液滴として吐出する第2吐出ヘッドと、を備え、記録媒体に向けて紫外線硬化型インクを吐出し、記録媒体上に塗布された紫外線硬化型インクに紫外線を照射させて凹凸部を有する第1画像層を形成させ、記録媒体における第1画像層が形成された領域以外の領域に溶剤系インクを吐出させる制御部を備えた装置である。以下、具体的に説明する。
【0025】
図1に示すように、インクジェット印刷装置1には、直方体形状に形成される基台2が備えられている。本実施形態では、この基台2の長手方向をY軸方向とし、同Y軸方向と直交する方向をX軸方向とする。
【0026】
基台2の上面2aには、Y方向に延びる一対の案内レール3a、3bが同Y軸方向全幅にわたり凸設されている。その基台2の上側には、一対の案内レール3a、3bに対応する図示しない走査手段を備えたステージ4が取り付けられている。走査手段は、例えば、直動機構であり、当該直動機構は、例えば案内レール3a、3bに沿ってY方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するY軸モーター(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相対する駆動信号がY軸モーターに入力されると、Y軸モーターが正転又は逆転して、ステージ4が同ステップ数に相当する分だけ、Y軸方向に沿って所定の速度で往動又は、復動する(Y軸方向に走査する)ようになっている。
【0027】
そのステージ4の上面には、記録媒体7を載置する載置面6が形成されている。また、載置面6には、例えば、吸引式のワークチャック機構が設けられ、記録媒体7が所定の位置に固定されるように構成されている。なお、記録媒体7は、吸液性を有すものや非吸液性を有するものであってもよく、例えば、プラスチックフィルム(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)等)、各種印刷用紙、ダンボール、金属部材(アルミ箔や銅箔等)等である。また、これらの記録媒体7の表面(印刷面)には、例えば、受容層などのコーティング層が形成されていてもよい。さらに、各種プラスチックフィルムを貼り合わせたものでもよいし、金属部材の表面に蒸着膜が形成されたものであってもよい。
【0028】
基台2のX軸方向両側には、一対の支持台8a、8bが立設され、その一対の支持台8a、8bには、X軸方向に延びる案内部材9が架設されている。案内部材9は、ステージ4のX軸方向における幅よりも長く形成されている。その案内部材9の下側には、X軸方向に延びる案内レール10がX軸方向全幅にわたり凸設されている。
【0029】
そして、案内レール10に沿って移動可能とするヘッドユニット20が配置されている。そのヘッドユニット20の直動機構は、例えば、案内レール10に沿ってX軸方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するX軸モーター(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相当する駆動信号をX軸モーターに入力すると、X軸モーターが正転又は逆転して、ヘッドユニット20が同ステップ数に相当する分だけX軸方向に沿って往動又は復動する(X軸方向に走査する)。
【0030】
また、インクジェット印刷装置1には、ヘッドユニット20に搭載された吐出ヘッドに各種インクを供給するインクセット50が設けられている。インクセット50には、紫外線の照射によって硬化が促進される紫外線硬化型インクと溶剤系インク等とを含んでいる。なお、紫外線硬化型インクは色剤としての顔料や染料及び光硬化性の樹脂成分を含むインクであり、光硬化性の樹脂成分が固化することで記録媒体上に画像を形成するタイプのインクである。溶剤系インクは色剤としての顔料または染料及び溶剤成分を含むインクであり、溶剤成分が蒸発または記録媒体に浸透することで記録媒体上に画像を形成するタイプのインクである。溶剤成分としては水系、アルコール系、有機溶剤系等、特に限定されない。これらのインクはそれぞれインク容器51に貯留される。そして、複数のインク容器51は、収納ホルダー52に格納されている。また、各インク容器51と各インク容器51に対応する吐出ヘッドとは配管60によって接続され、インク容器51内のインクを吐出ヘッドに供給可能に構成されている。なお、インクセット50は、紫外線硬化型インク及び溶剤系インクに加え、他のインクも搭載可能であり、例えば、記録媒体7の種類や画像の形成方法等により適宜任意のインクを搭載することができる。
【0031】
また、インクジェット印刷装置1には、記録媒体7に塗布された溶剤系インクを加熱させる加熱部を備えている。なお、本実施形態では、ステージ4の内部に加熱部としてのヒーター19が配置されている。そして、ヒーター19を駆動させることにより、ステージ4の載置面6が加熱させれ、これにより、載置面6に載置された記録媒体7が加熱され、記録媒体7上に塗布された溶剤系インクが加熱されることにより、溶剤インクに含まれる溶剤成分の蒸発を促進することができる。
【0032】
次に、ヘッドユニットの構成について説明する。図2は、ヘッドユニットの構成を示す概略図である。図2に示すように、ヘッドユニット20には、紫外線硬化型インクを液滴として吐出する第1吐出ヘッド540と、紫外線を照射する紫外線照射部510と、溶剤系インクを液滴として吐出する第2吐出ヘッド550とが搭載されている。そして、ヘッドユニット20と記録媒体7とが相対的に移動する移動方向(本実施形態では+X軸方向)において、記録媒体7に対してヘッドユニット20が移動する移動方向の上流側に第1吐出ヘッド540が配置され、第1吐出ヘッド540の下流側に紫外線照射部510が配置され、紫外線照射部510の下流側に第2吐出ヘッド550が配置されている。
【0033】
紫外線照射部510は紫外線を発する光源を有している。光源としては、例えば、LED、LD、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の光源を適用することができる。そして、紫外線照射部510から照射された紫外線により、記録媒体7上に塗布された紫外線硬化型インクの硬化を促進させることができる。
【0034】
次に、吐出ヘッドの構成について説明する。図3は、吐出ヘッドの構成を示す断面図である。なお、本実施形態では、第1吐出ヘッド540の構成を例に挙げて説明する。図3に示すように、第1吐出ヘッド540は、ノズルプレート30を備えている。ノズルプレート30には、ノズル31が形成されている。ノズルプレート30の上側であってノズル31と相対する位置には、ノズル31と連通するキャビティ32が形成されている。そして、第1吐出ヘッド540のキャビティ32には、インクセット50から各インクが供給される。
【0035】
キャビティ32の上側には、上下方向(Z方向:縦振動)に振動して、キャビティ32内の容積を拡大縮小する振動板34と、上下方向に伸縮して振動板34を振動させる加圧手段としての圧電素子35が配設されている。そして、圧電素子35が駆動信号を受けると、圧電素子35が伸張して、振動板34がキャビティ32内の容積を縮小する。その結果、第1吐出ヘッド540のノズル31からは、縮小した容積分のインクが液滴Dとして吐出される。なお、本実施形態では、加圧手段として、縦振動型の圧電素子35を用いたが、特に、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子を用いてもよい。また、圧力発生手段として、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用してもよい。さらには、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によってインクを液滴として吐出させる構成を有する吐出ヘッドであってもよい。なお、第2吐出ヘッド550の構成も第1吐出ヘッド540の構成と同様なので説明を省略する。
【0036】
次に、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の動作方法について説明する。図4は、第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の動作方法を示す工程図である。なお、本実施形態では、インクセット50として、第1画像層を形成するための紫外線硬化型インクとしての紫外線硬化型メタリックインクと第2画像層を形成するための溶剤系インクとしての溶剤系メタリックインクを搭載した場合について説明する。また、吸液性を有する記録媒体7に対して画像を形成する場合について説明する。
【0037】
まず、図4(a)に示すように、記録媒体7上の所定の領域Ar1に紫外線硬化型メタリックインクを塗布する。具体的には、ヘッドユニット20をさらに+X軸方向に移動させながら、第1吐出ヘッド540から紫外線硬化型メタリックインクを液滴Dとして吐出させ、記録媒体7上に紫外線硬化型メタリックインクのインクドット110aを付着させる。
【0038】
次いで、図4(b)に示すように、記録媒体7上に塗布されたインクドット110aに対して紫外線を照射する。具体的には、ヘッドユニット20を+X軸方向に移動させ、+X軸方向において第1吐出ヘッド540の下流側に配置された紫外線照射部510からインクドット110aに向けて紫外線を照射させる。これにより、第1吐出ヘッド540から吐出され、記録媒体7に塗布されたインクドット110aに対して紫外線が照射され、効率よくインクドット110aを硬化させることができる。そして、紫外線硬化型メタリックインクに含まれる顔料及び樹脂成分により凹凸部101を有する第1画像層200が形成される。また、所定の領域Ar2では、+X軸方向に移動された第1吐出ヘッド540から紫外線硬化型メタリックインクを液滴Dとして吐出させ、記録媒体7上に紫外線硬化型メタリックインクのインクドット110aを付着させる。
【0039】
次いで、図4(c)に示すように、所定の領域Ar3に溶剤系インクを塗布する。具体的には、ヘッドユニット20をさらに+X軸方向に移動させ、+X軸方向において第1吐出ヘッド540の下流側に配置された紫外線照射部510から所定の領域Ar2に塗布されたインクドット110aに向けて紫外線を照射させ、凹凸部101を有する第1画像層200が形成するとともに、記録媒体7における第1画像層200が形成された領域Ar1,Ar2以外の領域Ar3に、+X軸方向において紫外線照射部510の下流側に配置された第2吐出ヘッド550から溶剤系メタリックインクを液滴Dとして吐出させ、記録媒体7上に溶剤系メタリックインク120aを塗布させる。記録媒体7上に塗布された溶剤系メタリックインク120aは第1画像層200によって区画された領域Ar3において濡れ広がる。
【0040】
次いで、図4(d)に示すように、記録媒体7上に塗布された溶剤系メタリックインク120aを加熱する。本実施形態では、記録媒体7を載置するステージ4に内蔵された加熱部としてのヒーター19を駆動させ、溶剤系メタリックインク120aを加熱させる。これにより、溶剤系メタリックインク120aに含まれる溶剤成分が蒸発され、平坦部151を有する第2画像層300が形成される。なお、詳細には当該第2画像層300は、第1画像層200に比べ表面が平坦な画像層である。これにより、記録媒体7と、記録媒体7上に紫外線硬化型メタリックインクによって形成された凹凸部101を有する第1画像層200と、記録媒体7上における第1画像層200が形成された領域Ar1,Ar2以外の領域Ar3に溶剤系メタリックインクによって形成された平坦部151を有する第2画像層300と、を含む印刷物1000が形成される。
【0041】
以上、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0042】
ヘッドユニット20では、記録媒体7に対して+X軸方向に移動させる移動方向において上流側に紫外線硬化型メタリックインクを吐出させる第1吐出ヘッド540が配置され、第1吐出ヘッド540の下流側に紫外線照射部510が配置され、さらに、紫外線照射部510の下流側に溶剤系メタリックインクを吐出させる第2吐出ヘッド550が配置されている。そして、ヘッドユニット20を+X軸方向に移動させながら、上流側から下流側に配置された第1吐出ヘッド540、紫外線照射部510、第2吐出ヘッド550の順に動作させることにより、容易に同一の記録媒体7上に凹凸部101を有するとともにキラキラ感を有する第1画像層200と平坦部151を有するとともにピカピカ感を有する第2画像層300を含む質感の異なる印刷物1000を形成することができる。
【0043】
なお、上記の第1実施形態では、紫外線硬化型インクとして紫外線硬化型メタリックインクを用いたが、これに限定されない。例えば、紫外線硬化型インクとして紫外線硬化型カラーインクであってもよい。また、溶剤系インクとして溶剤系メタリックインクを用いたが、これに限定されず、例えば、溶剤系インクとして溶剤系カラーインクであってもよい。されら、これらのインクを組み合わせてもよい。なお、上記の場合、所望するインクをインクセット50に搭載するとともに、各インクに対応する吐出ヘッドを備えればよい。このようにすれば、さらにカラーバリエーションに富んだ印刷物1000を形成することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。インクジェット印刷装置は、紫外線硬化型インクを液滴として吐出する第1吐出ヘッドと、紫外線を照射する紫外線照射部と、溶剤系インクを液滴として吐出する第2吐出ヘッドと、を備え、記録媒体に向けて紫外線硬化型インクを吐出し、記録媒体上に塗布された紫外線硬化型インクに紫外線を照射させて凹凸部を有する第1画像層を形成させ、記録媒体における第1画像層が形成された領域以外の領域に溶剤系インクを吐出させる制御部を備えた装置である。そして、さらに、顔料を含まない紫外線硬化型インクを液滴として吐出する第3吐出ヘッドをさらに備え、制御部では、記録媒体に対して溶剤系インクを吐出させる前に、記録媒体における第1画像層が形成された領域以外の領域に顔料を含まない紫外線硬化型インクを吐出させ、記録媒体上に塗布された顔料を含まない紫外線硬化型インクに紫外線を照射させて下地層を形成し、下地層上に溶剤系インクを吐出させる装置である。以下、具体的に説明する。
【0045】
なお、本実施形態に係るインクジェット印刷装置1の構成は、第1実施形態と同様なので説明を省略し、異なる部分、すなわち、ヘッドユニット構造について説明する。
【0046】
図5は、本実施形態に係るヘッドユニットの構成を示す概略図である。図5に示すように、本実施形態のヘッドユニット21には、紫外線硬化型インクを液滴として吐出する第1吐出ヘッド540と、紫外線を照射する紫外線照射部510a,510bと、溶剤系インクを液滴として吐出する第2吐出ヘッド550と、顔料を含まない紫外線硬化型インクを液滴として吐出する第3吐出ヘッド541が搭載されている。そして、ヘッドユニット21における第1吐出ヘッド540と第2吐出ヘッド550との間に第3吐出ヘッド541が配置されるとともに、第1吐出ヘッド540と第3吐出ヘッド541との間、及び、第3吐出ヘッド541と第2吐出ヘッド550との間に、それぞれ紫外線照射部510a,510bが配置されている。
【0047】
さらに、詳細には、ヘッドユニット21と記録媒体7とが相対的に移動する移動方向(本実施形態では+X軸方向)において、記録媒体7に対してヘッドユニット21が移動する移動方向の上流側に第1吐出ヘッド540が配置され、第1吐出ヘッド540の下流側に紫外線照射部510aが配置され、当該紫外線照射部510aの下流側に第3吐出ヘッド541が配置され、第3吐出ヘッド541の下流側に紫外線照射部510bが配置され、当該紫外線照射部510bの下流側に第2吐出ヘッド550が配置されている。
【0048】
紫外線照射部510a,510bは紫外線を発する光源を有している。光源としては、例えば、LED、LD、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の光源を適用することができる。そして、紫外線照射部510a,510bから照射された紫外線により、記録媒体7上に塗布された紫外線硬化型インクの硬化を促進させることができる。なお、第1吐出ヘッド540、第2吐出ヘッド550及び第3吐出ヘッド541の構成については第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0049】
次に、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の動作方法について説明する。図6は、第2実施形態に係るインクジェット印刷装置の動作方法を示す工程図である。なお、本実施形態では、インクセット50として、第1画像層を形成するための紫外線硬化型インクとしての紫外線硬化型メタリックインクと第2画像層を形成するための溶剤系インクとしての溶剤系メタリックインクと下地層を形成するための顔料を含まない紫外線硬化型インク(紫外線硬化型クリアインク)を搭載した場合について説明する。また、本実施形態では、第1実施形態と異なり、非吸液性の記録媒体7に対して印刷する場合について説明する。
【0050】
まず、図6(a)に示すように、記録媒体7上の所定の領域Ar1に紫外線硬化型メタリックインクを塗布する。具体的には、ヘッドユニット21を+X軸方向に移動させながら、第1吐出ヘッド540から紫外線硬化型メタリックインクを液滴Dとして吐出させ、記録媒体7上に紫外線硬化型メタリックインクのインクドット110aを付着させる。
【0051】
次いで、図6(b)に示すように、記録媒体7上に塗布されたインクドット110aに対して紫外線を照射する。具体的には、ヘッドユニット21をさらに+X軸方向に移動させ、+X軸方向において第1吐出ヘッド540の下流側に配置された紫外線照射部510aからインクドット110aに向けて紫外線を照射させる。これにより、第1吐出ヘッド540から吐出され、記録媒体7に塗布されたインクドット110aに対して紫外線が照射され、効率よくインクドット110aを硬化させ、紫外線硬化型メタリックインクに含まれる顔料及び樹脂成分により凹凸部101を有する第1画像層200が形成される。また、所定の領域Ar2では、+X軸方向に移動された第1吐出ヘッド540から紫外線硬化型メタリックインクを液滴Dとして吐出させ、記録媒体7上に紫外線硬化型メタリックインクのインクドット110aを付着させ、その後、さらにヘッドユニット21を+X軸方向に移動させ、+X軸方向において第1吐出ヘッド540の下流側に配置された紫外線照射部510aからインクドット110aに向けて紫外線を照射させる。これにより、凹凸部101を有する第1画像層200が形成される。
【0052】
次いで、図6(c)に示すように、記録媒体7上の所定の領域Ar3に顔料を含まない紫外線硬化型インクとしての紫外線硬化型クリアインクを塗布する。具体的には、ヘッドユニット21を、さらに+X軸方向に移動させながら、第3吐出ヘッド541から紫外線硬化型クリアインクを液滴Dとして吐出させ、記録媒体7上に紫外線硬化型クリアインク130aを塗布する。記録媒体7上に塗布された紫外線硬化型クリアインク130aは第1画像層200によって区画された領域Ar3において濡れ広がる。
【0053】
次いで、図6(d)に示すように、塗布された紫外線硬化型クリアインク130aに対して紫外線を照射する。具体的には、ヘッドユニット21を、さらに+X軸方向に移動させ、+X軸方向において第3吐出ヘッド541の下流側に配置された紫外線照射部510bから紫外線硬化型クリアインク130aに向けて紫外線を照射させる。これにより、紫外線硬化型クリアインク130aの硬化が促進され、紫外線硬化型クリアインクからなる透明性を有する下地層130が形成される。
【0054】
次いで、図6(e)に示すように、領域Ar3に形成された下地層130上に溶剤系インクを塗布する。具体的には、ヘッドユニット21を、さらに+X軸方向に移動させ、+X軸方向において紫外線照射部510bの下流側に配置された第2吐出ヘッド550から溶剤系メタリックインクを液滴Dとして吐出させ、下地層130上に溶剤系メタリックインク120aを塗布させる。この際、下地層130上に塗布された溶剤系メタリックインク120aは下地層130の表面に渡って濡れ広がる。
【0055】
次いで、図6(f)に示すように、記録媒体7上に塗布された溶剤系メタリックインク120aを加熱する。本実施形態では、記録媒体7を載置するステージ4に内蔵された加熱部としてのヒーター19を駆動させ、溶剤系メタリックインク120aを加熱させる。これにより、溶剤系メタリックインク120aに含まれる溶剤成分が蒸発され、平坦部151を有する第2画像層300が形成される。なお、詳細には当該第2画像層300は、第1画像層200に比べ表面が平坦な画像層である。これにより、非吸液性を有する記録媒体7と、当該記録媒体7上に紫外線硬化型メタリックインクによって形成された凹凸部101を有する第1画像層200と、記録媒体7上における第1画像層200が形成された領域Ar1,Ar2以外の領域Ar3に溶剤系メタリックインクによって形成された平坦部151を有する第2画像層300と、記録媒体7と第2画像層300との間に顔料を含まない紫外線硬化型インク(紫外線硬化型クリアインク)によって形成された透明性を有する下地層130と、を含む印刷物1100が形成される。
【0056】
以上、本実施形態によれば、第1実施形態の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0057】
ヘッドユニット21では、記録媒体7に対して+X軸方向に移動させる移動方向において上流側に紫外線硬化型メタリックインクを吐出させる第1吐出ヘッド540が配置され、第1吐出ヘッド540の下流側に紫外線照射部510aが配置され、さらに、紫外線照射部510aの下流側に紫外線硬化型クリアインクを吐出させる第3吐出ヘッド541が配置され、第3吐出ヘッド541の下流側に紫外線照射部510bが配置され、さらに、紫外線照射部510bの下流側に溶剤系メタリックインクを吐出させる第2吐出ヘッド550が配置されている。そして、ヘッドユニット21を+X軸方向に移動させながら、上流側から下流側に配置された第1吐出ヘッド540、紫外線照射部510a、第3吐出ヘッド541、紫外線照射部510b、そして、第2吐出ヘッド550の順に動作させることにより、容易に同一の記録媒体7上に凹凸部101を有するとともにキラキラ感を有する第1画像層200と平坦部151を有するとともにピカピカ感を有する第2画像層300を含む質感の異なる印刷物1100を形成することができる。
【0058】
そして、非吸液性の記録媒体7上に対して下地層130を形成し、当該下地層130上に第2画像層300を形成した。これにより、第2画像層300の材料となる溶剤系メタリックインクを弾かせることなく下地層130上に濡れ広がらせ、確実に第2画像層300を形成することができる。また、下地層130は、顔料を含まない紫外線硬化型クリアインクから形成されるため、記録媒体7の表面を弾くことなく形成される。これにより、下地層130上に平坦部151を有する第2画像層300を形成することができる。さらには、記録媒体7と第2画像層300との間に下地層130を介在させることにより、第2画像層300と記録媒体7との密着性を向上させることができるとともに、耐擦性を向上させることができる。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0060】
(変形例1)上記第1及び第2実施形態にかかるヘッドユニット20,21では、+X軸方向に移動させた場合における第1吐出ヘッド540、第2吐出ヘッド550、第3吐出ヘッド541、紫外線照射部510,510a,510bの配置について規定したが、これに限定されない。例えば、+X軸方向に加え、−X軸方向への移動も加味したヘッドユニットの構成であってもよい。図7は、変形性1にかかるヘッドユニットの構成を示す概略図である。
【0061】
図7に示すように、変形例1にかかるヘッドユニット22には、紫外線硬化型インクを液滴として吐出する2つの第1吐出ヘッド540a,540bと、紫外線を照射する紫外線照射部510a,510b,510c,510dと、溶剤系インクを液滴として吐出する第2吐出ヘッド550と、顔料を含まない紫外線硬化型インクを液滴として吐出する2つの第3吐出ヘッド541a,541bが搭載されている。
【0062】
さらに、詳細には、ヘッドユニット22と記録媒体7とが相対的に移動する移動方向(本実施形態では+X軸方向)において、記録媒体7に対してヘッドユニット22が移動する移動方向の上流側に第1吐出ヘッド540aが配置され、当該第1吐出ヘッド540aの下流側に紫外線照射部510aが配置され、当該紫外線照射部510aの下流側に第3吐出ヘッド541aが配置され、第3吐出ヘッド541aの下流側に紫外線照射部510bが配置され、当該紫外線照射部510bの下流側に第2吐出ヘッド550が配置されている。さらに、第2吐出ヘッド550の下流側に紫外線照射部510cが配置され、当該紫外線照射部510cの下流側に第3吐出ヘッド541bが配置され、当該第3吐出ヘッド541bの下流側に紫外線照射部510dが配置され、当該紫外線照射部510dの下流側には第1吐出ヘッド540bが配置されている。
【0063】
換言すれば、本変形例1にかかるヘッドユニット22では、ヘッドユニット22の移動方向(+X軸方向及び−X軸方向)において、第2吐出ヘッド550を中心に配置し、当該第2吐出ヘッド550を挟むように紫外線照射部510b,510cが配置され、当該紫外線照射部510b,510cを挟むように第3吐出ヘッド541a,541bが配置され、当該第3吐出ヘッド541a,541bを挟むように紫外線照射部510a,510dが配置され、当該紫外線照射部510a,510dを挟むように第1吐出ヘッド540a,540bが配置されている。
【0064】
そして、当該ヘッドユニット22を搭載したインクジェット印刷装置1の動作方法としては、例えば、+X軸方向に移動させる場合には、第1吐出ヘッド540a、紫外線照射部510a、第3吐出ヘッド541a、紫外線照射部510b、第2吐出ヘッド550を駆動させる。一方、−X軸方向に移動させる場合には、第1吐出ヘッド540b、紫外線照射部510d、第3吐出ヘッド541b、紫外線照射部510c、第2吐出ヘッド550を駆動させる。
【0065】
このようにすれば、ヘッドユニット22を+X軸方向と−X軸方向とをどちらに移動させた場合であっても、容易に同一の記録媒体7上に凹凸部101を有する第1画像層200と平坦部151を有する第2画像層300と、記録媒体7と第2画像層300との間に下地層130とを含む印刷物を形成することができる。なお、変形例1において、例えば、吸液性を有する記録媒体7に対して画像を形成する場合には、第3吐出ヘッド541a,541bを省略してもよいし、駆動させないように制御してもよい。
【0066】
(変形例2)上記第1及び第2実施形態にかかるヘッドユニット20,21では、ヘッドユニット20,21に移動させた場合における第1吐出ヘッド540、第2吐出ヘッド550、第3吐出ヘッド541、紫外線照射部510,510a,510bの配置について規定したが、これに限定されない。例えば、X軸方向に交差するY軸方向に対して第1吐出ヘッド540、第2吐出ヘッド550、第3吐出ヘッド541、紫外線照射部510,510a,510bを配置する構成であってもよい。
【0067】
図8は、変形性2にかかるヘッドユニットの構成を示す概略図(平面図)である。図8に示すように、第1吐出ヘッド540と、紫外線照射部510a,510bと、第2吐出ヘッド550とが搭載されたヘッドユニット23を有し、ヘッドユニット23が移動する第1移動方向(X軸方向)と交差してヘッドユニット23と記録媒体7とが相対的に移動する第2移動方向(Y軸方向)において、記録媒体7に対してヘッドユニット23が移動する第2移動方向としての−Y軸方向の上流側に第1吐出ヘッド540及び紫外線照射部510a,510bが配置され、第1吐出ヘッド540の下流側に第2吐出ヘッド550が配置されている。なお、本変形例では、第1移動方向(X軸方向)に対して第1吐出ヘッド540に並列、または、第2方向(Y軸方向)に対して第1吐出ヘッド540と第2吐出ヘッド550との間に、さらに、第3吐出ヘッド541及び紫外線照射部510bを配置してもよい。
【0068】
このようにしても、ヘッドユニット23を+X軸方向に移動させるとともに、Y軸方向に記録媒体7を移動させながら、第1吐出ヘッド540、紫外線照射部510a、第2吐出ヘッド550、さらに、第3吐出ヘッド541及び紫外線照射部510bを駆動させることにより、容易に同一の記録媒体7上に凹凸部101を有する第1画像層200と平坦部151を有する第2画像層300と、記録媒体7と第2画像層300との間に下地層130とを含む印刷物を形成することができる。なお、変形例1において、例えば、吸液性を有する記録媒体7に対して画像を形成する場合には、第3吐出ヘッド541a,541bを省略してもよいし、駆動させないように制御してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…インクジェット印刷装置、4…ステージ、19…加熱部としてのヒーター、20,21,22,23…ヘッドユニット、101…凹凸部、130…下地層、151…平坦部、200…第1画像層、300…第2画像層、510,510a,510b,510c,510d…紫外線照射部、540,540a,540b…第1吐出ヘッド、541,541a,541b…第3吐出ヘッド、550…第2吐出ヘッド、1000,1100…印刷物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8