(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液体供給部は、前記圧力調整部より上流側に設けられ、前記液体供給源から下流側への液体の流動を許容する開弁状態と前記液体の前記流動を規制する閉弁状態とを切替え可能な開閉弁を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、液体を噴射可能な液体噴射装置の実施形態について、図を参照して説明する。
液体噴射装置は、例えば媒体に液体を噴射することによって印刷を行うプリンターである。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置11は、噴射される液体を受容する媒体12を支持可能な支持台13と、支持台13に対して相対移動可能な保持フレーム14と、保持フレーム14を移動方向Y(+Y,−Y)に移動させる移動機構15とを備えている。
【0022】
液体は、例えばインクである。特に、本実施形態の液体噴射装置11は、顔料インクや紫外線硬化型インク(UVインク)など、溶媒よりも比重が大きい顔料粒子などの溶質を含み、静置によって溶質が沈降して濃度に偏りが生じる溶液に対して有効である。また、媒体12は、例えば用紙、布帛、樹脂製のフィルム及び可撓性の低い板材などを採用することができる。
【0023】
移動機構15は、液体噴射装置11が液体の噴射を行わないときには、移動方向Yにおける支持台13の基端側に設定されたホーム位置(
図1にて実線で示す保持フレーム14の位置)に保持フレーム14を停止させる。
【0024】
また、移動機構15は、液体噴射装置11が液体の噴射が開始する前には、ホーム位置から移動方向Yにおける支持台の先端側に設定された基準位置(
図1にて二点鎖線で示す保持フレーム14の位置)に向けて、保持フレーム14を移動方向+Yに移動させる。このとき、液体噴射装置11は支持台13に載置された媒体12の位置を確認する。そして、液体噴射装置11が液体の噴射を行うときには、移動機構15が保持フレーム14を基準位置から移動方向−Yに移動させる。
【0025】
保持フレーム14は、液体供給源20と、液体を噴射可能な噴射ヘッド21と、液体供給源20から噴射ヘッド21に液体を供給するための液体供給部22と、キャリッジ23とを保持している。噴射ヘッド21は、支持台13に向けて開口する複数のノズル24を有している。キャリッジ23は、噴射ヘッド21を保持して、移動方向Yと交差(本実施形態では直交)する走査方向X(+X,−X)に走査可能な構成を有する。
【0026】
キャリッジ23は、走査方向Xにおける第1端側(
図1では左端側)を停止位置として、停止位置から走査方向+X(
図1では右方向)に移動する往路走査と走査方向−X(
図1では左方向)に移動する復路走査とを交互に行うことによって、走査方向Xに往復走査する。
【0027】
保持フレーム14は、移動方向Yが短手方向となる一方、移動方向Yと交差する走査方向Xが長手方向となる。保持フレーム14の長手方向における第1端側(
図1では左側)には、液体供給源20を保持可能な装着部25が配置されている。
【0028】
液体供給源20は、例えば液体を収容可能な収容容器であり、収容容器を交換することで液体を補給するカートリッジであってもよいし、装着部25に固定された収容タンクであってもよい。装着部25は、液体供給源20がカートリッジである場合には、液体供給源20を着脱可能に保持する。装着部25は、例えば収容する液体の種類や色が異なる複数の液体供給源20を保持可能な構成であってもよい。
【0029】
保持フレーム14において移動方向+Y側を前側、移動方向−Y側を後側とした場合に、保持フレーム14内の後側には長手方向に延びる固定壁26が配置されている。また、保持フレーム14内において固定壁26よりも前方には、走査方向Xに延びるガイド壁27が配置されている。
【0030】
キャリッジ23の後面側は、その後方に位置するガイド壁27に対して走査方向Xへの走査が可能な状態で連結されている。そして、ガイド壁27はキャリッジ23の走査方向Xに沿う往復走査を案内する。また、保持フレーム14内においてガイド壁27よりも前側の領域は、キャリッジ23の走査領域となっている。
【0031】
キャリッジ23は、支持台13と対向する位置(本実施形態では重力方向における下方)に噴射ヘッド21を保持している。また、キャリッジ23の走査領域の第1端側(
図1では左端側)であって、キャリッジ23の停止位置と対応する位置には、噴射ヘッド21のメンテナンスを行うためのメンテナンス装置28が配置されている。
【0032】
メンテナンス装置28は、噴射ヘッド21内の液体を吸引可能な吸引機構29を備えている。吸引機構29は、ノズル24を通じて噴射ヘッド21内の液体を吸引することで、噴射ヘッド21のクリーニングを行う。
【0033】
次に、液体供給部22の構成について詳述する。
液体供給部22は、装着部25の後部に配置された送出機構30と、キャリッジ23に保持された圧力調整部31と、送出機構30と圧力調整部31との間に配置された流路形成部32と、流路形成部32を揺動可能に保持する流路保持部33とを有している。
【0034】
送出機構30、圧力調整部31及び流路形成部32は、液体供給源20の設置数に応じて複数配置してもよい。なお、
図1においては、送出機構30、圧力調整部31及び流路形成部32は、複数の液体供給源20にそれぞれ対応するように複数図示している。
【0035】
流路形成部32は、液体供給源20と噴射ヘッド21とをつなぐ液体流路34を形成する。なお、
図1においては、流路形成部32は例えば白インクを収容した液体供給源20に接続される1つのみを図示して、その他の流路形成部32の図示を省略している。図示を省略したその他の流路形成部32は、図示した流路形成部32と同じ構成でもよいし、異なる構成でもよい。
【0036】
流路形成部32は、第1中継部材35と、第2中継部材36と、第1流路形成部37と、第2流路形成部38と、第3流路形成部39と、循環流路形成部40とを有している。第2流路形成部38と循環流路形成部40とは長さがほぼ等しい。また、第2流路形成部38及び循環流路形成部40は第1流路形成部37及び第3流路形成部39よりも長く、例えば可撓性を有するチューブからなる。
【0037】
第1流路形成部37は上流端が送出機構30に接続される一方で下流端が第1中継部材35に接続される。第3流路形成部39は上流端が第2中継部材36に接続される一方で下流端が圧力調整部31に接続される。
【0038】
第2流路形成部38は上流端が第1中継部材35に接続される一方で下流端が第2中継部材36に接続される。循環流路形成部40は上流端が第2中継部材36に接続される一方、下流端が第1中継部材35に接続される。そして、第1中継部材35、第2中継部材36、第2流路形成部38及び循環流路形成部40は、
図1に点線矢印で流れ方向を示す循環流路41を形成する。
【0039】
循環流路形成部40には、第1流路形成部37から供給された液体を
図1に点線矢印で示す流れ方向に循環させるための循環ポンプ42と、循環ポンプ42の下流側に配置された一方向弁43とが配置されている。循環ポンプ42は、液体噴射装置11が液体を噴射しないときに駆動して循環流路41内に液体を循環させることによって、溶質の沈降等による液体の性状の変化を抑制する。
【0040】
循環ポンプ42は、例えば循環流路形成部40であるチューブを一方向に押し潰すことで液体を流動させるチューブポンプを採用することができる。また、一方向弁43は、循環ポンプ42の駆動によって循環流路形成部40内を流動する液体が第2中継部材36側から第1中継部材35側に流れるのを許容する一方、第1中継部材35側から第2中継部材36側に逆流するのを抑制する。
【0041】
第1中継部材35は、送出機構30から後方に延びる流路形成部32の延設方向を走査方向+Xに変化させる。また、第2中継部材36は、走査方向−Xに延びる流路形成部32の延設方向をキャリッジ23側となる移動方向+Yに変化させる。
【0042】
流路保持部33は、第2流路形成部38及び循環流路形成部40を束ねて固定する複数(例えば3つ)の固定部材44(44A,44B,44C)を有している。複数の固定部材44は第2流路形成部38及び循環流路形成部40の延設方向となる走査方向Xに沿って、互いに間隔を有して配置されている。
【0043】
流路形成部32において、固定部材44Aは第1中継部材35と一方向弁43との間に配置される一方、固定部材44B,44Cは循環ポンプ42と第2中継部材36との間に配置される。また、走査方向Xにおいて、固定部材44Bはキャリッジ23の停止位置付近に配置される一方、固定部材44Cはキャリッジ23の走査領域の中央付近に配置される。
【0044】
そして、固定部材44B,44Cは、固定部材44Bと固定部材44Cとの間で第2流路形成部38及び循環流路形成部40が下方に撓むように長さに余裕を持たせた状態で固定壁26に対して固定することで、第2流路形成部38及び循環流路形成部40を揺動可能に保持する。一方、固定部材44Aは、第2流路形成部38及び循環流路形成部40を結束することで、保持フレーム14に固定された送出機構30と固定部材44Bとの間で、第2流路形成部38及び循環流路形成部40を揺動可能に保持する。
【0045】
第2流路形成部38及び循環流路形成部40は、固定部材44Cと第2中継部材36との間において延設方向が走査方向+Xから走査方向−Xに変化するように湾曲されている。そして、キャリッジ23が走査方向Xに往復走査するときには、固定部材44Cと第2中継部材36との間に位置する第2流路形成部38及び循環流路形成部40がキャリッジ23の走査に追従して撓み変位する。このとき、固定壁26及びガイド壁27によって第2流路形成部38及び循環流路形成部40の移動方向Yへの変位が規制される。
【0046】
図2に示すように、噴射ヘッド21は液体供給源20よりも重力方向における上方に配置される。また、固定部材44B,44Cは固定部材44Aよりも上方に配置されている。すなわち、第2流路形成部38及び循環流路形成部40は固定部材44Aと固定部材44Bとの間で、上方に向けて引き回されている。さらに、一方向弁43及び循環ポンプ42は重力方向において固定部材44Aと固定部材44Bとの間に配置されている。
【0047】
次に、送出機構30の構成について詳述する。
送出機構30は、液体供給源20から流路形成部32に液体を送出するために、液体供給源20に対する接続部50と、吸入弁51と、送出ポンプ52と、吐出弁53とを備えている。また、送出機構30はチョーク弁54を備えている。吸入弁51、送出ポンプ52、吐出弁53及びチョーク弁54は、液体流路34において接続部50側から第1流路形成部37側に向けて並ぶように配置されている。
【0048】
吸入弁51は、送出機構30内の液体流路34と連通する吸入弁室55と、吸入弁室55内に配置された移動方向Yに沿って撓み変位可能な膜部材56と、膜部材56を上流側となる移動方向+Yに向けて付勢する第1付勢部材57とを備えている。第1付勢部材57は、例えばコイルばねである。送出ポンプ52が駆動していないときには、吸入弁51は
図2に実線で示すように第1付勢部材57の付勢力によって閉弁状態になる。
【0049】
送出ポンプ52は、送出機構30内の液体流路34と連通するポンプ室58と、ポンプ室58内に配置された移動方向Yに沿って撓み変位可能な膜部材59と、膜部材59をポンプ室58の容積が増減する方向(移動方向Y)に移動させるアクチュエーター60とを備えている。
【0050】
吐出弁53は、送出機構30内の液体流路34と連通する吐出弁室61と、吐出弁室61内に配置された移動方向Yに沿って撓み変位可能な膜部材62と、膜部材62を上流側となる移動方向+Yに向けて付勢する第2付勢部材63とを備えている。第2付勢部材63は、例えばコイルばねである。送出ポンプ52が駆動していないときには、吐出弁53は
図2に実線で示すように第2付勢部材63の付勢力によって閉弁状態になる。
【0051】
液体供給源20から流路形成部32に液体を送出するときには、送出ポンプ52のアクチュエーター60が駆動して、膜部材59をポンプ室58の容積が減少する方向(移動方向+Y)に撓み変位させる。これにより、膜部材59が
図2に実線で示す位置から同図に二点鎖線で示す位置に変位して、ポンプ室58から流出した液体が吸入弁室55及び吐出弁室61に流入する。
【0052】
すると、吐出弁室61への液体の流入に伴って、吐出弁53の膜部材62が第2付勢部材63の付勢力に抗して移動方向−Yに撓み変位して、
図2に実線で示す閉弁状態から同図に二点鎖線で示す開弁状態に変化する。これにより、送出機構30内の液体が流路形成部32に向けて送出される。
【0053】
続いて、送出ポンプ52のアクチュエーター60が膜部材59をポンプ室58の容積が増加する方向(移動方向−Y)に撓み変位させる。すると、吸入弁室55及び吐出弁室61の液体がポンプ室58に吸引されるので、吐出弁53の膜部材62が移動方向+Yに撓み変位して、吐出弁53は閉弁状態となる。一方、吸入弁51は膜部材56が第1付勢部材57の付勢力に抗して移動方向−Yに撓み変位して、
図2に実線で示す閉弁状態から同図に二点鎖線で示す開弁状態に変化する。これにより、液体供給源20内の液体が送出機構30内に吸引される。
【0054】
送出ポンプ52は、膜部材59を移動方向+Yに変位させて流路形成部32側に液体を送出する吐出駆動と、膜部材59を移動方向−Yに変位させて液体供給源20から液体を吸引する吸引駆動とを交互に行うことで、液体供給源20内の液体を流路形成部32に向けて送出する。なお、送出ポンプ52は、液体供給源20よりも高い位置にある噴射ヘッド21に液体を送出するために、間欠的に駆動して液体流路34内を加圧状態に保持する。
【0055】
チョーク弁54は、送出機構30内の液体流路34と連通する弁室64と、弁室64内に配置された移動方向Yに沿って撓み変位可能な膜部材65とを備えている。チョーク弁54は、弁室64内の圧力が正圧のときには、
図2に実線で示す開弁状態になる。
【0056】
チョーク弁54は、噴射ヘッド21に対する吸引によって液体流路34内の液体が排出され、膜部材65よりも下流側が所定値より小さい負圧になった場合には、膜部材65が
図2に二点鎖線で示す閉弁状態になる。そして、この状態で送出ポンプ52が駆動して弁室64内に液体が流入すると、チョーク弁54が開弁状態となって下流側への液体の流動を許容する。
【0057】
なお、液体の吸引排出によるチョーク弁54の閉弁とそれに続く送出ポンプ52の駆動によるチョーク弁54の開弁とは、液体流路34、圧力調整部31及び噴射ヘッド21の中にある液体を排出するいわゆるチョーククリーニングとして実行されることがある。
【0058】
次に、圧力調整部31の構成について詳述する。
圧力調整部31は、流路形成部32と噴射ヘッド21との間に配置されたいわゆる自己封止弁であり、ノズル24の背圧となる噴射ヘッド21内の圧力を調整する。なお、圧力調整部31は噴射ヘッド21の上方に配置されるのが好ましい。
【0059】
図3に示すように、圧力調整部31は、第3流路形成部39と連通する供給室70と、ノズル24と連通する圧力室71と、走査方向Xに沿って撓み変位可能なダイヤフラム72と、弁体73と、供給室70に収容された第3付勢部材74とを備えている。第3付勢部材74は、例えばコイルばねである。
【0060】
供給室70と圧力室71とは連通孔75を通じて連通している。また、弁体73は、供給室70内において第3付勢部材74の走査方向+Xへの付勢力を受ける本体部76と、連通孔75を通じて先端が圧力室71側に突出する突部77とを有している。
【0061】
供給室70と、連通孔75と、圧力室71とは、走査方向Xに沿って並んでいる。そして、弁体73は第3付勢部材74の付勢力によって、
図3に示すように連通孔75を閉塞可能な構成となっている。
【0062】
ダイヤフラム72は圧力室71の壁面の一部を構成し、外面側(
図3では左面側)に大気圧を受ける一方で、内面側(
図3では右面側)に圧力室71内にある液体の圧力を受ける。したがって、ダイヤフラム72は圧力室71内の圧力変化に応じて走査方向Xに沿って撓み変位する。
【0063】
ここで、圧力室71内は、ノズル24内に液体の噴射に適した凹状のメニスカスを形成するために、一定範囲の負圧状態に保持される。なお、メニスカスとは、液体がノズル24と接するときに働く付着力と液体分子間の凝集力の大小関係で生じる湾曲した液体表面のことをいう。
【0064】
一方、供給室70は、
図3に点線矢印で示すように加圧されて送られてくる液体によって加圧状態に保持される。そして、噴射ヘッド21が液体を噴射しないときには、弁体73が第3付勢部材74の付勢力によって負圧状態の圧力室71と加圧状態の供給室70との連通を規制する。
【0065】
次に、圧力調整部31の作用を説明する。
図4には、噴射ヘッド21が液体を噴射したときの圧力調整部31を示している。噴射ヘッド21が液体を噴射すると、
図4に印で示すように圧力室71から液体が流出する。すると、圧力室71内の圧力が低下するので、走査方向−Xに撓み変位したダイヤフラム72が突部77に当接し、弁体73を第3付勢部材74の付勢力に抗して連通孔75から離間させる。これにより、加圧状態の供給室70から圧力室71内に液体が流入する。
【0066】
液体の流入により圧力室71内の圧力が上昇するにつれて、ダイヤフラム72が走査方向+Xに撓み変位する。すると、
図3に示すように弁体73が再び連通孔75に当接して圧力室71と供給室70との連通を規制する。このように、圧力調整部31の圧力調整機能によって、圧力室71内は液体の噴射に適した負圧状態が保持される。
【0067】
次に、以上のように構成された液体噴射装置11の作用について説明する。
液体噴射装置11が印刷を行う前には、移動機構15がホーム位置にある保持フレーム14を移動方向+Yに移動させる。すると、保持フレーム14の移動に伴って走査方向Xに延設された第2流路形成部38及び循環流路形成部40を含む流路形成部32が移動方向Yに揺動するので、液体流路34内の液体が流動する。
【0068】
また、液体噴射装置11が印刷を行うときには、移動機構15が基準位置から媒体12が置かれた位置まで保持フレーム14を移動方向−Yに移動させる。そして、噴射ヘッド21が媒体12と対向する位置に到達した後には、移動機構15が保持フレーム14を移動方向−Yに間欠的に移動させる。
【0069】
保持フレーム14の間欠移動の合間には、キャリッジ23が走査方向Xに往復走査し、その走査の間に噴射ヘッド21が媒体12に向けて液体を噴射することで印刷を行う。すなわち、液体の噴射を伴うキャリッジ23の走査の合間に移動機構15が保持フレーム14を移動させるので、その移動の都度、保持フレーム14に保持された流路形成部32が移動方向Yに揺動して液体流路34内の液体が流動する。
【0070】
以上説明したように、液体噴射装置11においては、液体を噴射しないときには循環ポンプ42の駆動によって循環流路41内で液体が流動する一方、循環ポンプ42が駆動しないときには保持フレーム14の移動に伴う流路形成部32の揺動によってその内部の液体が流動する。
【0071】
なお、流路保持部33は、上流側が保持フレーム14に固定された送出機構30に接続される一方、下流側が走査方向Xに走査するキャリッジ23に接続される。そのため、第2流路形成部38及び循環流路形成部40において、固定部材44Cと第2中継部材36の間の可動部分は、キャリッジ23の移動に追従して変位する。これにより、キャリッジ23の移動時には、第2流路形成部38及び循環流路形成部40の可動部分の内部で液体が流動する。
【0072】
一方、第2流路形成部38及び循環流路形成部40において、送出機構30と固定部材44Cとの間の部分は、長さに余裕を持たせるように撓んだ状態で流路保持部33によって保持されている。そのため、流路形成部32のうちでも特に固定部材44Aと固定部材44Bの間、及び、固定部材44Bと固定部材44Cの間の領域は、保持フレーム14の移動方向と交差する方向に延びるように配置されているので、保持フレーム14が間欠移動するたびに大きく揺動する。すなわち、流路形成部32は、保持フレーム14の移動方向と交差する走査方向Xに延びるように配置される領域を含み、流路保持部33は、流路形成部32の走査方向Xに延びる領域を保持する。
【0073】
さらに、送出機構30は液体を送出するときに移動方向Yに沿って撓み変位可能な膜部材56,59,62,65を備える。そのため、送出ポンプ52が駆動しているときに加えて、送出ポンプ52が駆動していないときでも、保持フレーム14の移動に伴って膜部材56,59,62,65が撓み変位することで、液体流路34内の液体が流動する。
【0074】
液体流路34内で液体が流動すると、液体が攪拌されて溶質の沈降による液体の性状の変化が抑制される。ただし、液体の流動によって生じる圧力変動が噴射ヘッド21に及ぶと、液体の噴射量や液滴の飛翔方向が変化する虞がある。
【0075】
その点、保持フレーム14は液体を噴射するときには移動しないので、保持フレーム14の移動に伴う液体の流動が液体の噴射に及ぼす影響は小さい。さらに、噴射ヘッド21に液体を供給する圧力調整部31のダイヤフラム72は移動方向Yへは撓み変位しにくいので、保持フレーム14の移動に伴う液体流路34内での液体の流動が液体の噴射に及ぼす影響はさらに小さくなる。
【0076】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)保持フレーム14が移動するときに、流路保持部33に揺動可能に保持された流路形成部32が揺動して、液体流路34内の液体が流動する。そして、保持フレーム14は噴射ヘッド21に加えて液体供給源20及び液体供給部22を保持した状態で移動するので、液体の噴射に際して装置内に存在する液体を流動させることができる。
【0077】
(2)保持フレーム14は噴射ヘッド21が液体の噴射を開始する前にホーム位置から基準位置に向けて移動するので、この移動に伴って流路形成部32が揺動する。したがって、液体を噴射する前に液体流路34内に存在する液体を流動させることができる。
【0078】
(3)流路保持部33は、流路形成部32の保持フレーム14の移動方向と交差する方向に延びるように配置される領域を保持するので、保持フレーム14の移動に伴って流路形成部32が容易に揺動し、液体を流動させることができる。
【0079】
(4)流路形成部32を固定する複数の固定部材44は互いに間隔を有して配置されるので、固定部材44と固定部材44との間の部分が保持フレーム14の移動に伴って揺動することで、液体を流動させることができる。
【0080】
(5)圧力調整部31が備えるダイヤフラム72はキャリッジ23の走査方向Xに沿って変位するので、保持フレーム14の移動に伴って液体が走査方向Xと交差する移動方向Yに流動したときに撓み変位しにくい。そのため、保持フレーム14の移動に伴って液体流路34内の液体が流動しても、噴射ヘッド21内に圧力変動の影響が及びにくい。
【0081】
(6)膜部材56,59,62,65は保持フレーム14の移動方向Yに沿って撓み変位可能なので、送出機構30が液体を送出しないときにも、保持フレーム14の移動に伴って撓み変位することによって液体流路34内の液体を流動させることができる。
【0082】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。また、上記実施形態及び下記変更例は、任意に組み合わせることができる。
・支持台13上に向けて媒体12を搬送する搬送機構をさらに備えてもよい。なお、上記実施形態においては、媒体12を移動させずに印刷を行うので、可撓性の低い板材、搬送しにくい形状の物体及び重力の大きい金属体なども媒体として採用することができる。
【0083】
・キャリッジ23を備えず、保持フレーム14が移動方向Yと交差する媒体12の幅方向に対応する長さを有するフルラインヘッド型の噴射ヘッド21を保持する構成としてもよい。
【0084】
・圧力調整部31を備えない構成としてもよいし、圧力調整部31が弁体73を備えない圧力ダンパーのような構成であってもよい。あるいは、圧力調整部31がダイヤフラム72を備えず、一時的に液体を貯留するサブタンクのような構成としてもよい。
【0085】
・圧力調整部31のダイヤフラム72が移動方向Yまたは重力方向に撓み変位可能な向きに配置されてもよい。この場合には、保持フレーム14の移動に伴ってダイヤフラム72が撓み変位することで、液体を流動させることができる。
【0086】
・固定部材44の設置数や配置は任意に変更することができる。
・流路保持部33が固定壁26と一体化された固定部材44を備えてもよい。
・流路保持部33が流路保持部33よりも直径の大きい筒状またはコイル状の保持部材を備え、この保持部材によって流路形成部32の少なくとも一部を揺動可能に保持するようにしてもよい。あるいは、流路形成部32の少なくとも一部をネット状の保持部材で固定壁26または保持フレーム14の天井部等に揺動可能に吊り下げるようにしてもよい。この構成によれば、流路形成部32の可能性が低い場合にも、保持フレーム14の移動に伴って流路形成部32を揺動させて、その内部に存在する液体を流動させることができる。
【0087】
・流路保持部33が第2流路形成部38と循環流路形成部40とを別々に保持する構成としてもよい。
・流路保持部33が第2流路形成部38または循環流路形成部40の何れか一方のみを揺動可能に保持する構成としてもよい。
【0088】
・流路保持部33が第2流路形成部38及び循環流路形成部40以外の流路形成部32を保持してもよい。
・流路形成部32が第1中継部材35、第2中継部材36及び循環流路形成部40のうちの何れかまたは全部を備えない構成としてもよい。
【0089】
・流路形成部32の全体が可撓性を有するチューブから形成されてもよいし、その一部分が可撓性を有するチューブから形成されてもよい。
・液体流路34内で液体を流動させるために、移動機構15が保持フレーム14を移動させてもよい。
【0090】
・チョーク弁54を備えない構成としてもよい。
・送出機構30が膜部材56,59,62,65の何れかまたは全てを備えない構成としてもよい。
【0091】
・吸入弁51が第1付勢部材57を備えない構成としてもよい。この構成によれば、保持フレーム14の移動に伴って膜部材56をより大きく撓み変位させることができる。
・吐出弁53が第2付勢部材63を備えない構成としてもよい。この構成によれば、保持フレーム14の移動に伴って膜部材62をより大きく撓み変位させることができる。
【0092】
・重力方向において、液体供給源20が噴射ヘッド21と同じ位置にあってもよいし、液体供給源20を噴射ヘッド21よりも高い位置に配置して、その水頭差によって液体供給源20から噴射ヘッド21に液体を供給するようにしてもよい。
【0093】
・移動機構15の構成や配置は任意に変更することができる。例えば、保持フレーム14側に保持フレーム14を移動させるための駆動源等を搭載してもよい。
・液体噴射装置11が噴射する液体は、溶質を含まない液体でもよい。この場合にも、液体を流動させることによって温度などの偏りを抑制することができる。
【0094】
・上記各実施形態において、液体噴射装置は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置であってもよい。なお、液体噴射装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体は、液体噴射装置から噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体を含むものとする。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置であってもよい。また、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置であってもよい。