【文献】
Antonio Fernandez-Mato et al. ,Novel naphthyridine-based compounds in small molecular non-doped OLEDs:synthesis, properties and their versatile applications for organic light-emtitting diodes,New Journal of Chemistry,2012年,36巻/8号,p1634-1640
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は下記一般式(I)、あるいは下記一般式(II)、あるいは下記一般式(III)で表される芳香族化合物である。
【0022】
【化7】
(一般式(I)におけるX
1〜X
14、一般式(II)におけるX
1〜X
16、一般式(III)におけるX
1〜X
18は少なくとも一つがシアノ基で置換されたアリール基、あるいは少なくとも一つがシアノ基で置換された複素環基である。残りのXは水素原子、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環基、置換または無置換のアルキル基、アルコキシ基、芳香族アミノ基、シリル基、ハロゲン原子の何れかを表す。)
【0023】
シアノ基で置換されたアリール基におけるアリール基の例としては特に限定される事は無いがフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基およびo−、m−またはp−ビフェニル基等を用いる事が出来る。合成が容易である点からはフェニル基が好ましい。ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基等はシアノ基の個数に対する芳香環の大きさが大きいために電子受容性が弱く、単体での使用では特性が得られない場合があるが、複数箇所をシアノ基で置換することで、より有効に使用することが出来る。またこれらのアリール基は、さらにシアノ基以外の置換基によって置換されていてもよい。
【0024】
シアノ基で置換された複素環基における複素環基の例としては特に限定される事は無いがピラゾール、ピラゾリン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キノキサリン、アクリジン、フェナントロリン、イミダゾピリジン、イミダゾピリミジン等の含窒素複素環の他、フランやチオフェンを用いる事が出来る。合成が容易である点からはピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジンが好ましい。ドーピング材料として使用する場合は、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、イミダゾピリジン、イミダゾピリミジン、キノキサリンが好ましく、電子輸送材料として使用する場合には、イミダゾピリジン、イミダゾピリミジン、キノキサリンが好ましい。キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントロリンは芳香環の大きさに対して窒素数が少ないため電子受容性が弱く、単体での使用では特性が得られない場合があるが、他の含窒素複素環基と組み合わせて使用することが出来る。またこれらの複素環は、さらにシアノ基以外の置換基によって置換されていてもよい。
【0025】
シアノで置換されたアリール基、あるいはシアノ基で置換された複素環基の置換位置として、一般式(I)においてはX
3、X
4、X
9、X
10、X
11、X
12の何れかが好ましく、特にX
3、X
4、X
9、X
12の何れかが好ましい。一般式(II)においては、X
3、X
4、X
9、X
11、X
12、X
14の何れかが好ましい。一般式(III)においては、X
3、X
4、X
9、X
10、X
12、X
13、X
15、X
16の何れかが好ましい。また一般式(I)のX
9、X
12、一般式(II)のX
9、X
14、一般式(III)のX
9、X
16において、自身がシアノ基で置換されたアリール基、あるいはシアノ基で置換された複素環基で置換されている場合以外はアリール基で置換されている事が好ましく、特にフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基が好ましい。その他のX
nは水素原子であることが好ましい。これらの化合物は合成が容易である。より強い電子受容性が必要な場合はX
nの複数箇所をシアノで置換されたアリール基、あるいはシアノ基で置換された複素環基にて置換することが可能である。置換数に制限は無いが、通常は多くとも4箇所までが好ましい。その他のX
nは水素原子であることが好ましい。5箇所以上となると、合成が困難になる。
【0026】
一般式(I)、および一般式(II)、および一般式(III)において、X
nがシアノ基になることは無い。アリーレン基や複素環を介さずに、シアノ基が直接、一般式(I)、あるいは一般式(II)、あるいは一般式(III)の母骨格に結合すると、発光波長が極端に長波長化してしまい、目的の発光波長が得られないためである。
【0027】
一般式(I)、および一般式(II)、および一般式(III)における置換または無置換のアリール基としては、単環もしくは多環のものであってよく、縮合環や環集合も含まれる。このようなアリール基としては、総炭素数6〜20のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基およびo−、m−またはp−ビフェニル基等が挙げられ、特に好ましくはフェニル基が挙げられる。これらの置換基は合成が容易である。これらのアリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、シリル基等が挙げられる。
【0028】
一般式(I)、および一般式(II)、および一般式(III)における置換または無置換の複素環基としては、ヘテロ原子としてO,N,Sを含有する5員または6員環の芳香族複素環基、および炭素数2〜20の縮合多環芳香族複素環基等が挙げられる。芳香族複素環基および縮合多環芳香族複素環基としては、例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基等が挙げられる。これらの複素環基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、シリル基等が挙げられる。
【0029】
一般式(I)、および一般式(II)、および一般式(III)におけるアルキル基としては、直鎖状でも分岐を有するものであってもよく、炭素数1〜10のものが好ましく、置換基を有していても良い。この場の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、シリル基等が挙げられる。このような置換基としては、メチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、(n−,i−,s−,t−)ブチル基等が挙げられる。
【0030】
一般式(I)、および一般式(II)、および一般式(III)におけるアルコキシ基としては、直鎖状でも分岐を有するものであってもよく、炭素数1〜10のものが好ましく、置換基を有していても良い。この場の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、シリル基等が挙げられる。このような置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0031】
一般式(I)、および一般式(II)、および一般式(III)における芳香族アミノ基としては、無置換でも置換を有するものであってもよいが、置換基を有するものが好ましく、具体的には、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−トリルアミノ基、N−フェニル−N−ナフチルアミノ基、N−フェニル−N−ビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−アントリルアミノ基、N−フェニル−N−ピレニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジアントリルアミノ基、ジピレニルアミノ基等が挙げられる。
【0032】
一般式(I)、および一般式(II)、および一般式(III)は直接、または、適当な連結基を介して2量体、3量体を形成してもよい。連結基としては置換または無置換のアリーレン基、置換または無置換の複素環基、置換または無置換のアルキレン基、芳香族アミノ基、シリル基等が挙げられるが、無置換のアリーレン基であることが好ましい。無置換のアリーレン基はフェニレン基であることが好ましい。これらのアリーレン基は合成が容易である点が優れている。
【0033】
前記化合物の分子量については特に限定は無いが、蒸着プロセスを用いて成膜する事を考慮すると、1000以下であることが好ましい。分子量が1000を超えてくると、蒸着温度が400度以上の高温になる事が多く、材料の分解を生じる事がある為である。
【0034】
以下に、一般式(I)で表される本発明の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
以下に、一般式(II)で表される本発明の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
以下に、一般式(III)で表される本発明の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
また、本発明は、前記一般式(I)、あるいは前記一般式(II)、あるいは前記一般式(III)の化合物を含むことを特徴とする電界発光素子である。
【0057】
高い発光輝度の電界発光素子を作成するためには、正孔と電子の両キャリアの再結合が、発光層中で高い確率で起きる必要がある。その為には発光層中に高い確率でキャリアを閉じ込める必要性があるが、その手法の一つとして、発光材料自身のキャリアトラップ性を高めることが有力な手法となる。
【0058】
キャリアトラップ性の低い材料を用いて電界発光素子を作成した場合、電子、正孔の両キャリアが、発光層中に閉じ込められることなく通過してしまう。このために再結合が殆ど起こらず、材料の蛍光強度がいくら強くても、殆ど発光しない素子となってしまう。一方で、強い蛍光強度と高い電子受容性を併せ持つ本発明の芳香族化合物を用いて電界発光素子を作成すると、キャリアのトラップと再結合が効果的に本発明の芳香族化合物上で起こり、高効率な電界発光素子の作製が可能となる。
【0059】
本発明の実施の形態による電界発光素子について
図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、電界発光素子1は、基板2上に、陽極3、正孔注入輸4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極9を順次有する。
【0060】
基板2は、透明または半透明の材料から形成されていることが好ましく、例えば、ガラス板、透明プラスチックシート、半透明プラスチックシート、石英、透明セラミックスあるいはこれらを組み合わせた複合シートがある。なお、基板2は、不透明な材料から形成されていてもよい。この場合、電界発光素子1の陰極9は、発光を取り出すため透明な材料から形成されればよい。さらに、基板2に、例えば、カラーフィルター膜、色変換膜、誘電体反射膜等を組み合わせることにより、発光色をコントロールしてもよい。
【0061】
陽極3は、比較的仕事関数の大きい金属、合金または電気電導性化合物を電極物質として使用することが好ましい。陽極3に使用する電極物質としては、例えば、金、白金、銀、銅、コバルト、ニッケル、パラジウム、バナジウム、タングステン、酸化錫、酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)、ポリチオフェン、ポリピロールなどがある。これらの電極物質は、単独で使用してもよく、複数併用してもよい。陽極3は、これらの電極物質を、例えば、蒸着法、スパッタリング法等の気相成長法により、基板2の上に形成することができる。また、陽極3は、一層構成であっても、多層構成であってもよい。
【0062】
正孔注入層4は、陽極3からの正孔(ホール)の注入を容易にする機能を有する化合物を含有する層である。また、陽極3との密着性も材料選択時の重要な因子である。具体的には、フタロシアニン誘導体、トリアリールメタン誘導体、トリアリールアミン誘導体などを少なくとも1種用いて形成することができる。さらに、これらの有機化合物中に、キャリアを発生させる目的で、金属化合物、金属酸化物、有機化合物等の電子受容性化合物をドーピングして用いても良い。
【0063】
正孔輸送層5は、注入された正孔を輸送する機能、および発光層中の電子が正孔輸送層に注入されるのを妨げる機能を有する化合物を含有する層である。正孔輸送層5は、トリアリールメタン誘導体、トリアリールアミン誘導体、オキサゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール誘導体、もしくはアントラセン誘導体などの炭化水素化合物などを少なくとも1種用いて形成することができる。また、これらの有機化合物中に、キャリアを発生させる目的で、金属化合物、金属酸化物、有機化合物等の電子受容性化合物をドーピングして用いても良い。
【0064】
なお、正孔注入層と正孔輸送層の機能を併せ持つ材料であれば、正孔注入輸送層として、単層で二層分の機能を果たす事が可能である。一方で、正孔注入層や正孔輸送層を、さらに複数の層に機能分離して使用することも可能である。
【0065】
発光層6は、注入された正孔(ホール)および電子の輸送機能、正孔と電子の再結合により励起子を生成させる機能を有する化合物を含有する層である。通常はホスト材料と発光ドーピング材料とからなるが、さらにキャリア濃度の調整等の目的でキャリア輸送材料を含む場合もある。本発明における下記一般式(I)、あるいは一般式(II)、あるいは一般式(III)で表される化合物は発光層6に用いられ、通常は発光ドーピング材料として用いられる。
【0066】
一般式(I)、あるいは一般式(II)、あるいは一般式(III)の化合物を発光ドーパントとして用いる場合、ホスト化合物に対する含有量は通常0.01〜20wt%、さらには0.1〜15wt%であることが好ましい。
【0067】
ホスト材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の有機金属錯体、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ピレン、ペリレン等の炭化水素化合物誘導体の他、複素環誘導体やトリアリールアミン誘導体等を用いる事も出来る。本発明の一般式(I)、あるいは一般式(II)、あるいは一般式(III)の化合物を発光ドーピング材料に用いる場合は、下記式(IV)で示される芳香族化合物を用いる事が特に好ましい。
【0068】
【化27】
(一般式(IV)におけるX
1〜X
12は水素原子、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環基、置換または無置換のアルキル基、アルコキシ基、芳香族アミノ基、シリル基、ハロゲン原子の何れかを表す。)
【0069】
一般式(IV)で示される芳香族化合物は正孔輸送層からの正孔注入障壁が低く、電子受容性発光ドーパントに適したホスト材料である。正孔注入障壁が大きいと、正孔は正孔輸送層/発光層界面に、電子は発光層中の電子受容性発光ドーパントに分かれてトラップされることとなり、再結合することが出来ない。本発明の本芳香族化合物は電子受容性であるので、発光ドーパントとして用いる場合には、一般式(IV)で示される芳香族化合物をホスト材料とすることで最大限の効果を生むことが可能となる。
【0070】
一般式(IV)における置換または無置換のアリール基としては、単環もしくは多環のものであってよく、縮合環や環集合も含まれる。このようなアリール基としては、総炭素数6〜20のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基およびo−、m−またはp−ビフェニル基等が挙げられる。材料の溶解性を考慮した場合、o−またはm−ビフェニル基誘導体が好ましい。溶解性の向上により合成が容易となる為である。これらのアリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、シリル基等が挙げられる。
【0071】
一般式(IV)における置換または無置換の複素環基としては、ヘテロ原子としてO,N,Sを含有する5員または6員環の芳香族複素環基、および炭素数2〜20の縮合多環芳香族複素環基等が挙げられる。芳香族複素環基および縮合多環芳香族複素環基としては、例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基等が挙げられる。これらの複素環基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、シリル基等が挙げられる。
【0072】
一般式(IV)におけるアルキル基としては、直鎖状でも分岐を有するものであってもよく、炭素数1〜10のものが好ましく、置換基を有していても良い。この場の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、シリル基等が挙げられる。このような置換基としては、メチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、(n−,i−,s−,t−)ブチル基等が挙げられる。
【0073】
一般式(IV)におけるアルコキシ基としては、直鎖状でも分岐を有するものであってもよく、炭素数1〜10のものが好ましく、置換基を有していても良い。この場合の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、シリル基等が挙げられる。このような置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0074】
一般式(IV)における芳香族アミノ基としては、無置換でも置換を有するものであってもよいが、置換基を有するものが好ましく、具体的には、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−トリルアミノ基、N−フェニル−N−ナフチルアミノ基、N−フェニル−N−ビフェニリルアミノ基、N−フェニル−N−アントリルアミノ基、N−フェニル−N−ピレニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジアントリルアミノ基、ジピレニルアミノ基等が挙げられる。
【0075】
一般式(IV)の置換位置については、X
5、X
6、X
11、X
12のうちの少なくとも1箇所が置換されている事が好ましく、少なくとも2箇所以上置換されている事がより好ましい。この場合の置換基としては、置換または無置換のアリール基が好ましい。残りの置換基は水素原子であることが好ましい。
【0076】
以下に、一般式(IV)で表される本発明の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
発光層6には、さらにその他の化合物を含有させても良い。他の化合物を混ぜる事でキャリアの輸送を調節したり、蛍光色素を混ぜる事で発光色を変換させて使用することが出来る。このような化合物としては、例えば、キナクリドン、ルブレン、スチリル系色素等の色素化合物、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8キノリノールないしその誘導体を配位子とする金属錯体色素などのキノリン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体、フェニルアントラセン誘導体、テトラアリールエテン誘導体、トリフェニルアミン誘導体等が挙げられる。
【0088】
電子輸送層7は、注入された電子を輸送する機能および発光層6から正孔が注入されるのを妨げる機能を有するものである。電子輸送層7は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、イミダゾピリジン誘導体、イミダゾピリミジン誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素環化合物、アントラセンやナフタセン、フルオランテン、アセナフトフルオランテン等の炭化水素誘導体などを少なくとも1種用いて形成することができる。
【0089】
電子注入層8は、陰極9からの電子の注入を容易にする機能の他、陰極との密着性を高める機能を有するものである。電子注入層8は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、チオピランジオキサイド誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、イミダゾピリジン誘導体、イミダゾピリミジン誘導体、フェナントロリン誘導体などを少なくとも1種用いて形成することができる。本発明の一般式(I)あるいは一般式(II)、あるいは一般式(III)で表される化合物を発光ドーパントとして用いる場合には、イミダゾピリジン誘導体、イミダゾピリミジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体などのより電子注入能力が高い材料を使用することが特に好ましい。具体的には、特開2001−6877、特開2004−2297などに開示されている材料郡が好ましい。電子トラップ型の素子では、より電子注入量が多い条件で、より高効率となる為である。また、電子注入層と電子輸送層の機能を併せ持つ材料を用いる事で、電子注入輸送層として単層で二層分の機能を果たす事が出来る。素子構成によっては電子注入層や電子輸送層を更に機能分離した形態で使用することも可能である。
【0090】
陰極9は、比較的仕事関数の小さい金属、合金または電気電導性化合物を電極物質として使用することが好ましい。陰極に使用する電極物質としては、例えば、リチウム、リチウム−インジウム合金、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、カルシウム、マグネシウム、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、インジウム、ルテニウム、チタニウム、マンガン、イットリウム、アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−カルシウム合金、アルミニウム−マグネシウム合金、グラファイト薄膜等を挙げることができる。これらの電極物質は、単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。陰極は、これらの電極物質を、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオン化蒸着法、イオンプレーティング法、クラスターイオンビーム法等の方法により、電子注入輸送層の上に形成することができる。また、陰極は一層構造であっても、多層構造であってもよい。なお、電界発光素子の発光を効率よく取り出すために、陽極3または陰極9の少なくとも一方の電極が、透明ないし半透明であることが好ましく、一般に、発光光の透過率が80%以上となるように陽極3または陰極9の材料、厚みを設定することがより好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、本発明の具体的な実施例を比較例とともに示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0092】
(合成例1)・・・例示化合物b−1の合成
【0093】
【化38】
【0094】
2.7g(10mmol)の1,3−ジフェニルイソベンゾフランと2.3g(10mmol)の5−ブロモアセナフチレンをキシレン100mlに懸濁し、還流温度にて24時間反応させた。次いでカラムクロマトグラフィーを用いて精製を行い、2.9g(5.79mmol)の中間体2Aを得た。収率は57.9%であった。
【0095】
中間体2Aを100mlの酢酸に溶解し、還流温度下で少量の臭化水素酸を加え、12時間反応させた。反応物を抽出した後、カラムクロマトグラフィーを用いて精製を行い、2.46g(5.09mmol)の中間体2Bを得た。収率は87.9%であった。
【0096】
2.46g(5.09mmol)の中間体2Bと0.88g(5.12mmol)の1−ナフタレンボロン酸と触媒としてのテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム150mgをトルエン60ml、エタノール15mlの混合溶媒に溶解した。ここに2Mの炭酸ナトリウム水溶液30mlを加え90℃にて12時間反応した。反応終了後に有機層を分離し、カラムクロマトグラフィーによる精製を行い、1.77g(3.34mmol)の中間体2Cを得た。収率は65.6%であった。
【0097】
1.77g(3.34mmol)の中間体2C、200mlのトリフルオロ酢酸、10mlのトリフルオロボロン・エチルエーテル複合体を窒素下で混合し、ここに2.27gのDDQを加えた。室温で一時間攪拌した後に1.87gのフェロセンを加え、さらに一時間攪拌した後に700mlのメタノールを加え、反応物を析出させた。析出物をろ取後、カラムクロマトグラフィーによる精製を行い、0.96g(1.82mmol)の中間体2Dを得た。収率は54.5%であった。
【0098】
0.96g(1.82mmol)の中間体2DをmlのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、0.36g(2mmol)のN−ブロモコハク酸イミドを加え、室温で6時間攪拌した。次いで、蒸留水を加えて析出した固体をろ取し、カラムクロマトグラフィーによる精製を行い、0.9g(1.48mmol)の中間体2Eを得た。収率は81.3%であった。
【0099】
0.9g(1.48mmol)の中間体2Eと0.22g(1.52mmol)の4−シアノフェニルボロン酸、触媒としてのテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム50mgをトルエン40ml、エタノール10mlの混合溶媒に溶解した。ここに2Mの炭酸ナトリウム水溶液20mlを加え90℃にて12時間反応した。反応終了後に有機層を分離し、カラムクロマトグラフィーによる精製を行い、0.43g(0.68mmol)の例示化合物b−1を得た。収率は45.9%であった。LC−MSを用いて測定したところ、化合物b−1に相当するマススペクトルが得られた。蛍光は橙色であり、
図2にトルエン溶液中における蛍光スペクトルを示す。
【0100】
(実施例1)
ガラス基板上にRFスパッタ法で、ITO透明電極薄膜を100nmの厚さに成膜し、パターニングした。このITO透明電極付きガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、煮沸エタノール中から引き上げて乾燥した。透明電極表面をUV/O
3洗浄した後、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、槽内を1×10
−4Pa以下まで減圧した。
【0101】
次に、減圧状態を保ったまま、下記構造の化39を蒸着速度0.1nm/sec で30nmの膜厚に蒸着し、正孔注入層とした。
【0102】
【化39】
【0103】
次いで、下記構造の化40を蒸着速度0.1nm/secで10nmの厚さに蒸着し、正孔輸送層とした。
【0104】
【化40】
【0105】
さらに、減圧状態を保ったまま、ホスト材料としての例示化合物d−2と、発光ドーパントとしての例示化合物a−1とを、体積比97:3で、全体の蒸着速度0.1nm/secとして40nmの厚さに蒸着し、発光層とした。
【0106】
次に、減圧状態を保ったまま、電子輸送層として例示化合物d−2を50nm、続けて電子注入層としてトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)を4nm、蒸着速度0.1nm/secで蒸着した。
【0107】
次いで、LiFを蒸着速度0.1nm/secで0.5nmの厚さに蒸着して電子注入電極とし、保護電極としてAlを100nm蒸着し、最後にガラス封止して電界発光素子を得た。
【0108】
この電界発光素子に直流電圧を印加し、初期には10mA/cm
2の電流密度で、駆動電圧が4.0V、1400cd/m
2の黄色発光が得られた。
【0109】
(実施例2)
ホスト材料および電子輸送層として例示化合物d−4を、発光ドーパントとして例示化合物a−9を用いた以外は実施例1と同様にして、電界発光素子を得た。
【0110】
この電界発光素子に直流電圧を印加し、初期には10mA/cm
2の電流密度で、駆動電圧が4.1V、1380cd/m
2の黄色発光が得られた。
【0111】
(実施例3)
ホスト材料および電子輸送層として例示化合物d−5を、発光ドーパントとして例示化合物b−1を用いた以外は実施例1と同様にして、電界発光素子を得た。
【0112】
この電界発光素子に直流電圧を印加し、初期には10mA/cm
2の電流密度で、駆動電圧が4.0V、1830cd/m
2の橙色発光が得られた。
【0113】
(実施例4)
ホスト材料として例示化合物d−5を、発光ドーパントとして例示化合物b−1を、電子輸送層として下記構造の化41を用いた以外は実施例1と同様にして、電界発光素子を得た。
【0114】
【化41】
【0115】
この電界発光素子に直流電圧を印加し、初期には10mA/cm
2の電流密度で、駆動電圧が3.9V、2060cd/m
2の橙色発光が得られた。
【0116】
(実施例5)
ホスト材料として例示化合物d−5を、発光ドーパントとして例示化合物b−1を、電子輸送層として下記構造の化42を用いた以外は実施例1と同様にして、電界発光素子を得た。
【0117】
【化42】
【0118】
この電界発光素子に直流電圧を印加し、初期には10mA/cm
2の電流密度で、駆動電圧が3.8V、2190cd/m
2の橙色発光が得られた。
【0119】
(実施例6)
ホスト材料として例示化合物d−5を、発光ドーパントとして例示化合物b−1を、電子輸送層として化42を、さらに電子注入層として下記構造の化43を用いた以外は実施例1と同様にして、電界発光素子を得た。
【0120】
【化43】
【0121】
この電界発光素子に直流電圧を印加し、初期には10mA/cm
2の電流密度で、駆動電圧が3.5V、2330cd/m
2の橙色発光が得られた。
【0122】
(実施例7)
電子注入層として下記構造の化44を用いた以外は実施例6と同様にして、電界発光素子を得た。
【0123】
【化44】
【0124】
この電界発光素子に直流電圧を印加し、初期には10mA/cm
2の電流密度で、駆動電圧が3.6V、2220cd/m
2の橙色発光が得られた。
【0125】
(実施例8)
発光ドーパントとして例示化合物b−3を用いた以外は実施例6と同様にして、電界発光素子を得た。
【0126】
この電界発光素子に直流電圧を印加し、初期には10mA/cm
2の電流密度で、駆動電圧が3.6V、2070cd/m
2の橙色発光が得られた。
【0127】
(実施例9)
発光ドーパントとして例示化合物C−3を用いた以外は実施例1と同様にして、電界発光素子を得た。
【0128】
この電界発光素子に直流電圧を印加し、初期には10mA/cm
2の電流密度で、駆動電圧が4.1V、680cd/m
2の赤色発光が得られた。
【0129】
(比較例1)
発光ドーパントとして下記構造の化45を用いた以外は実施例1と同様にして、電界発光素子を得た。
【0130】
【化45】
【0131】
この電界発光素子に直流電圧を印加し、初期には10mA/cm
2の電流密度で、駆動電圧が3.9V、660cd/m
2の黄色発光が得られた。同じ黄色発光である実施例1、実施例2の素子に比べて低い値となった。
【0132】
(比較例2)
発光ドーパントとして下記構造の化46を用いた以外は実施例1と同様にして、電界発光素子を得た。
【0133】
【化46】
【0134】
この電界発光素子に直流電圧を印加し、初期には10mA/cm
2の電流密度で、駆動電圧が4.1V、960cd/m
2の橙色発光が得られた。同じ橙色発光である実施例3〜実施例8の素子に比べて低い値となった。