(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244645
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】筐体ユニット収納ラック
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
H05K7/20 U
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-89207(P2013-89207)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-212286(P2014-212286A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112003
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145344
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和徳
(72)【発明者】
【氏名】石井 紀好
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 訓
【審査官】
石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−062574(JP,A)
【文献】
実開昭54−053310(JP,U)
【文献】
実開昭63−155692(JP,U)
【文献】
特開2011−040608(JP,A)
【文献】
特開2011−133950(JP,A)
【文献】
実開昭63−128786(JP,U)
【文献】
特開2012−104653(JP,A)
【文献】
特開平09−307038(JP,A)
【文献】
特開2009−140421(JP,A)
【文献】
特開2007−272293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
7/14
7/18−7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の筐体ユニットを積み重ねてラック本体に収納した筐体ユニット収納ラックであって、
前記ラック本体は、前記各筐体ユニットの後端部を持ち上げて前記各筐体ユニットをそれぞれ斜めに装着する複数の装着部材を備え、
前記各筐体ユニットは、該筐体ユニットの後端上縁部から後方に向けて張り出した庇状の熱遮蔽体をそれぞれ備えることを特徴とする筐体ユニット収納ラック。
【請求項2】
前記装着部材は、前記筐体ユニットの側部に装着されて該筐体ユニットを前記ラック本体の側部構造体に該ラック本体の前面側から固定される取り付け面を備えたL字状の取付部材からなる請求項1に記載の筐体ユニット収納ラック。
【請求項3】
前記L字状の取付部材は、前記ラック本体の側部構造体への取り付け面を、前記筐体ユニットに対して斜めに傾けて設けたものである請求項2に記載の筐体ユニット収納ラック。
【請求項4】
前記熱遮蔽体は、前記筐体ユニットの背面から排出される温排風の、該筐体ユニットの上段側に収納された他の筐体ユニットへの回り込みを阻止するものである請求項1に記載の筐体ユニット収納ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の筐体ユニットを上下方向に積み重ねて収納した筐体ユニット収納ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば無停電電源装置等の電力設備においては、その基本単位である電力変換ユニット等の複数の筐体ユニットを上下に積み重ねて筐体ユニット収納ラックに収納して構築することが多い。またこの種の筐体ユニット(電力変換ユニット)における本体部(スイッチング素子を含む電気機器)は、一般的にはその動作に伴って大量の熱を発する。この為、前記筐体ユニット収納ラックの上段側に収納された筐体ユニットは、その下段側に収納された筐体ユニットからの熱の影響を受け易い。
【0003】
そこで従来では、上下に積み重ねてラックに収納される複数の筐体ユニット間に熱遮蔽体を設け、前記筐体ユニット間での熱の回り込みを防ぐことが提唱されている(例えば特許文献1を参照)。また複数の回路基板(回路ユニット)等を横並びに収納してラックに装着されるサブラックの底面に熱誘導体を設けて、下段側からの熱を該サブラックの背面側に導くことも提唱されている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−196277号公報
【特許文献2】特開2012−4361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の一般的な筐体ユニット収納ラック、例えばEIA規格に準拠した筐体ユニット収納ラック1は、
図5にその概略構成を示すようにラック本体2の前面側から複数の筐体ユニット3をそれぞれ水平にして装着するように構成されている。ちなみに前記各筐体ユニット3は、その前面側から導入した空気にて該筐体ユニット3の内部を冷却し、該筐体ユニット3の背面側から温排風を排出する。そして前記ラック本体2は、前記各筐体ユニット3からそれぞれ排出された温排風を、その奥部空間を通して該ラック本体2の上面に開口された排熱口4から外部に放出するように構成されている。
【0006】
しかし前記筐体ユニット収納ラック1が排気ファンを備えていない場合、前記筐体ユニット3の背面側から排出された温排風が前記ラック本体2の背面板にぶつかって下方側にも回り込むので前記温排風の流れに乱れが生じ易い。この結果、前記ラック本体2の奥部空間に熱が溜まり易いと言う問題がある。しかも前記各筐体ユニット3の上面から放出される熱が上下に積み重ねられた複数の筐体ユニット3間の隙間に溜まり易く、その上段に設けられた筐体ユニット3に伝わり易いと言う問題もある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、上下に積み重ねてラック本体に収納される複数の筐体ユニットの背面からそれぞれ排出される温排風を、効率的に外部に放出することのできる簡易な構成の筐体ユニット収納ラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するべく第1の発明に係る筐体ユニット収納ラックは、複数の筐体ユニットを上下に積み重ねてラック本体に収納したものであって、
前記ラック本体は、前記各筐体ユニットの後端部を持ち上げて前記各筐体ユニットをそれぞれ斜めに装着する複数の装着部材を備え、前記各筐体ユニットは、該筐体ユニットの後端上縁部から後方に向けて張り出した庇状の熱遮蔽体をそれぞれ備えることを特徴としている。
【0009】
具体的には前記装着部材は、前記筐体ユニットの側部に装着されて該筐体ユニットを前記ラック本体の側部構造体に該ラック本体の前面側から固定される取り付け面を備えたL字状の取付部材からなる。好ましくは前記L字状の取付部材は、例えば前記ラック本体の側部構造体への取り付け面を、前記筐体ユニットに対して斜めに傾けて設けた構成を有する。
【0010】
また第2の発明に係る筐体ユニット収納ラックは、複数の筐体ユニットを上下に積み重ねてラック本体に収納したものであって、 前記ラック本体は、前記各筐体ユニットの後端部を持ち上げて前記各筐体ユニットをそれぞれ斜めに装着する複数の装着部材を備えると共に、前記ラック本体に収納した前記各筐体ユニットの後端部よりも該ラック本体の奥部に向けて張り出した庇状の熱遮蔽体を備
えることを特徴としている。
【0011】
具体的には前記装着部材は、前記ラック本体の奥部側の取り付け高さ位置を高くして該ラック本体の側部構造体に固定されて、その上面に前記筐体ユニットを載置する棚板からなる。そして前記棚板は、前記筐体ユニットの奥行き長よりも長く、該棚板に載置して前記ラック本体に固定される前記筐体ユニットの後端部から該ラック本体の奥部に向けて張り出した部位を前記熱遮蔽体としたものである。
【0012】
ちなみに前記各熱遮蔽体は、前記筐体ユニットの背面から排出される温排風の、該筐体ユニットの上段側に収納された他の筐体ユニットへの回り込みを阻止する役割を担う。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の筐体ユニット収納ラックによれば、複数の筐体ユニットの後端部をそれぞれ持ち上げて、つまり前記各筐体ユニットを斜めにして上下に積み重ねてラック本体に収納するので、前記各筐体ユニットの背面部からそれぞれ排出される温排風は、前記ラック本体の奥部空間の斜め上方に向けて吹き出される。この結果、前記ラック本体の奥部空間に排出された温排風は、その上方に向かう空気の流れ(気流)を効率的に形成し、前記奥部空間に溜まることなく前記ラック本体の上方に設けられた排熱口を介して放出される。
【0014】
しかも前記各筐体ユニットの後端部に位置して熱遮蔽体が設けられ、前記筐体ユニットの背面部から排出された温排風の上段側への回り込みが阻止されている。従って前記各筐体ユニットは、その下段側に設けられた筐体ユニットからの熱排風の影響を受けることがない。更には前記各筐体ユニットがそれぞれ斜めに設けられるので、これらの筐体ユニット間に形成される斜めの隙間に放出された熱は、当該斜めの隙間を通して上方へと流れ出る。従って前記隙間に放出された熱についても効果的に排出することが可能となり、下段側の筐体ユニットが発する熱が、その上段の筐体ユニットに及ぼす影響を低減することが可能となる。従って簡易にして効果的にラック本体内の熱を放出し、前記各筐体ユニットの動作安定化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る筐体ユニット収納ラックにおける複数の筐体ユニットの収納構造を示す図。
【
図2】筐体ユニット収納ラックに収納される筐体ユニットとその装着部材の例を示す外観斜視図。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る筐体ユニット収納ラックの要部概略構成図。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係る筐体ユニット収納ラックにおける筐体ユニットの収納構造を示す図。
【
図5】従来の筐体ユニット収納ラックにおける複数の筐体ユニットの収納構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る筐体ユニット収納ラックについて説明する。
【0017】
図1は本発明の第1の実施形態に係る筐体ユニット収納ラック1における複数の筐体ユニット3の収納構造を示す図である。尚、
図5に示す従来一般的な筐体ユニット収納ラック1と同一部分には同一符号を付して示してある。この筐体ユニット収納ラック1が特徴とするところは、上下に積み重ねてラック本体2に装着される複数の筐体ユニット3のそれぞれを、その後端部を持ち上げた状態で斜めにして前記ラック本体2に装着した点にある。そして更に前記各筐体ユニット3の後端上縁部に、庇状の熱遮蔽体5をそれぞれ設けたことを特徴としている。これらの熱遮蔽体5は、前記各筐体ユニット3の後端上縁部から後方に向けて所定長だけ張り出した板体からなる。
【0018】
前記ラック本体2への前記筐体ユニット3の取り付けは、例えば
図2に示すような取付部材6を用いて行われる。この取付部材6は、
図2に示すように前記筐体ユニット3の側部前面側に装着されて該筐体ユニット3を前記ラック本体2の側部構造体(図示せず)に固定する為の、いわゆるL字型のアングル部材からなる。特にこの取付部材(アングル部材)6は、前記ラック本体2の側部構造体への取り付け面6aを、前記筐体ユニット3の高さ方向に対して所定の角度θだけ斜めに傾けた構造を有する。
【0019】
尚、
図2において3aは前記筐体ユニット3の前面部に設けられて該筐体ユニット3の内部に空気を通流させる送風ファンである。また前記筐体ユニット3の背面部には、特に図示しないが排熱口が設けられている。この排熱口は、例えば前記筐体ユニット3の背面板に穿たれた複数本のスリット孔やメッシュ状に排列形成された丸孔、或いは網目体にて覆われた開口部からなる。前記排熱口は、前記筐体ユニット3に搭載された、例えば電力変換器等の電気機器(図示せず)を冷却し、これによって暖められた空気を、前記送風ファン3aによって形成される空気流によって温排風として排出する役割を担う。また5は前記筐体ユニット3の後端上縁部に装着された前記熱遮蔽体を示している。
【0020】
このような取付部材(アングル部材)6を用いて前記ラック本体2の側部構造体に前面側から固定される前記筐体ユニット3は、前記取付部材6の取り付け面6aが角度θだけ傾いているので、
図1に示すようにその後端部を持ち上げた状態、つまり傾いた状態で前記ラック本体2に装着される。この結果、前記ラック本体2に上下に積み重ねて収納される前記複数の筐体ユニット3のそれぞれは、上述した如く傾いた状態で、その前端縁を沿直方向に揃えた状態で平行に配置される。そして前記各筐体ユニット3の背面上縁部に装着された前記熱遮蔽体5は、その上段に配置された前記筐体ユニット3の背面側下面に対向する領域にそれぞれ位置付けられる。
【0021】
従って上述した収納構造の筐体ユニット収納ラック1によれば、前記各筐体ユニット3の背面からそれぞれ排出される温排風は、前記ラック本体2の奥部空間における斜め上方奥部に向けて吹き出される。この結果、前記ラック本体2の奥部空間の下方に向けて流れ込む温排風が少なくなり、前記ラック本体2の上面板に設けられた排熱口4に向かって流れる温排風の上昇気流が生じ易くなる。即ち、前記各筐体ユニット3から排出された温排風の上昇気流が効果的に生成されて前記奥部空間に熱が溜まり難くなり、前記温排風の外部への放出が促進されて、その排熱を効率的に行うことが可能となる。
【0022】
また前記各筐体ユニット3の背面からそれぞれ排出された温排風は、前記熱遮蔽体5によってその上段に収納された前記筐体ユニット3への回り込みが阻止される。従って下段側の筐体ユニット3から排出された温排風によって、その上段の筐体ユニット3が熱的な影響を不本意に受けることがなくなる。更には上記装着構造によれば、上下に積み重ねて収納された前記複数の筐体ユニット3間の隙間も斜めに形成されることになる。この結果、上記隙間に放出された熱は、当該斜めの隙間を通して上方へと流れ出る空気流を形成し易くなる。従って前記隙間に放出された熱についても温排風として前記ラック本体2の奥部空間に効果的に排出することが可能となる。これ故、この点でも下段側の筐体ユニット3が発する熱が、その上段の筐体ユニット3に及ぼす影響を低減することが可能となる。従って本構造によれば、簡易にして効果的にラック本体2内の熱を放出し、前記各筐体ユニット3の動作安定化を図ることが可能となる。
【0023】
図3は、本発明の第2の実施形態を示している。この第2の実施形態は、前述した取り付け面6aを角度θだけ傾けた前記取付部材(アングル部材)6に代えて、
図3に示すように前記ラック本体2の側部構造体8の前端面を角度θだけ傾けて階段状に形成したことを特徴としている。そして前記側部構造体8の斜めに傾いた前端面に前記各筐体ユニット3をそれぞれ固定するようにしたものである。
【0024】
このような側部構造体8を採用したラック本体2を用いても、
図1に示すように前記複数の筐体ユニット3をそれぞれ斜めに傾けて該ラック本体2に装着することができる。尚、この場合、前記筐体ユニット3をラック本体2に固定する取付部材6としては、その取り付け面6aが筐体ユニット3の前端面と平行な標準的なL字状の取付部材(アングル部材)が用いられることは言うまでもない。従ってこの実施形態の装着構造を採用した場合であっても、先の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0025】
図4は、本発明の第3の実施形態を示している。この第3の実施形態は、前記ラック本体2の側部構造体に固定されてその上面に前記筐体ユニット3を載置する棚板9を、奥部側の取り付け高さ位置を高くして、
図4に示すように前記ラック本体2に斜めに傾斜させて設けたことを特徴としている。また同時に前記棚板9の奥行き長を前記筐体ユニット3の奥行き長よりも長く設定し、その後端部が該棚板9に載置して前記ラック本体2に固定される前記筐体ユニット3の背面部よりも突出するようにしている。そして前記棚板9の後端部の前記ラック本体2の奥部に向けて張り出した部位を前記熱遮蔽体5として利用することを特徴としている。
【0026】
このようにして前記ラック本体2に斜めに設けた棚板9に前記各筐体ユニット3を載置して前記ラック本体2に固定する構造を採用した場合でも、前記複数の筐体ユニット3がそれぞれ斜めに傾斜した状態で上下に積み重ねられる。従ってこの実施形態においても前述した各実施形態と同様な効果が奏せられることは言うまでもない。また前記棚板9の後端部が前述した熱遮蔽体5として機能するので、この点でも前述した各実施形態と同様な効果が奏せられる。
【0027】
尚、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。例えばラック本体2に積み重ねて収納する前記筐体ユニット3の数は、特に限定されない。また前記各筐体ユニット3の大きさ、具体的にはその高さサイズについても限定されず、高さの異なる複数種の筐体ユニット3を積み重ねて収納する場合にも同様に適用可能である。更には複数の筐体ユニット3を積み重ねて収納する際の前述した傾きの角度θについては、例えば前記各筐体ユニット3の放熱仕様等、具体的には温排風の温度やその風量等に応じて決定すれば十分である。
【0028】
また前記排熱口4に排気ファンを備えれば、前述した効果が更に顕著となることも今更説明するまでもない。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 筐体ユニット収納ラック
2 ラック本体
3 筐体ユニット
3a 送風ファン
4 排熱口
5 熱遮蔽体
6 取付部材
6a 取り付け面
8 側部構造体
9 棚板