特許第6244669号(P6244669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244669画像読取装置および読取画像補正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244669
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】画像読取装置および読取画像補正プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/19 20060101AFI20171204BHJP
   H04N 1/401 20060101ALI20171204BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   H04N1/04 103E
   H04N1/40 101A
   G06T1/00 460D
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-116066(P2013-116066)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-236335(P2014-236335A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松海 崇史
【審査官】 橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−068228(JP,A)
【文献】 特開2003−060862(JP,A)
【文献】 特開2003−037717(JP,A)
【文献】 特開平01−095669(JP,A)
【文献】 特開2007−201892(JP,A)
【文献】 特開2010−119055(JP,A)
【文献】 特開2007−208878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/024− 1/207
H04N 1/40 − 1/409
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に沿った読取領域で画像を読み取り、当該読取領域には原稿読取領域、及び、当該原稿読取領域の側方に位置する側方領域が含まれる読取部と、
原稿シートおよび前記読取部の少なくとも一方を移動させて、前記原稿読取領域内に前記原稿シートを通過させる移動部と、
白基準部材と、
一定の変調周期で周波数が変動するスペクトラム拡散クロックを生成するクロック生成部を有する、制御部と、備え、
前記制御部は、
前記読取部に、前記スペクトラム拡散クロックに応じた読取周期で前記白基準部材を読み取らせ、前記読取部の出力がAD変換された前記原稿読取領域の読取データである白基準データを取得し、前記読取部の出力がAD変換された前記側方領域の読取データである第1側方データを取得する白基準読取処理と、
白色を示す値を前記白基準データで除算した値である基礎シェーディング補正データを算出する基礎シェーディング補正データ算出処理と、
前記読取部に、前記スペクトラム拡散クロックに応じた読取周期で、前記原稿シートを一ラインずつ読み取らせ、各ラインごとに、前記読取部の出力がAD変換された前記原稿読取領域の読取データである原稿読取データおよび前記読取部の出力がAD変換された前記側方領域の読取データである第2側方データを取得する原稿読取処理と、
前記原稿読取処理によって各ラインごとに取得された前記第2側方データによって前記第1側方データが示す値を除算し、その除算した値に基礎シェーディング補正データを乗算することで、各ラインごとにシェーディング補正データを取得するシェーディング補正データ取得処理と、
各ラインごとに取得された前記原稿読取データを、該ラインの前記シェーディング補正データを用いて補正するシェーディング補正処理と、
を実行する構成を有する、画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
原稿台を備え、
前記移動部は、前記読取部を移動させることにより、前記読取位置を、前記原稿台に配置された原稿シートに対して移動させる構成を含み、
前記原稿台のうち、前記側方領域に対応する部分の光反射特性は、前記白基準部材と同じである、画像読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像読取装置であって、
前記原稿台に配置された原稿シートを押さえ、主走査方向の幅が当該原稿シートよりも広い押さえ部材と、を備え、
前記白基準部材の前記主走査方向の幅は、前記読取領域の前記主走査方向の幅以上であり、
前記押さえ部材のうち、少なくとも前記側方領域に対応する部分の光反射特性は、前記白基準部材と同じである、画像読取装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の画像読取装置であって、
前記原稿台の側方位置に非配置部が設けられ、
前記白基準部材の前記主走査方向の幅は、前記読取領域の前記主走査方向の幅以上であり、
前記非配置部のうち、少なくとも前記側方領域に対応する部分の光反射特性は、前記白基準部材と同じである、画像読取装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像読取装置であって、
前記移動部は、前記原稿シートを、前記読取位置に向けて搬送する構成を含み、
前記白基準部材は、前記読取領域において、前記読取部に対して対向配置される対向部材であり、
前記対向部材の前記主走査方向の幅は、前記読取領域の前記主走査方向の幅以上である、画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
白基準部材を読み取って得た白基準データを用いて、原稿シートを読み取って得た原稿読取データを補正するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像読取装置では、EMI(電磁波干渉)対策の一環として、一定の変調周期で周波数が変動するスペクトラム拡散クロックを使用することが提案されている。ところが、このスペクトラム拡散クロックの変動周期に基づいて、画像読取装置における光源の点灯期間や読取部の読取期間を設定すると、当該スペクトラム拡散クロックの周波数の変動によって上記点灯期間や上記読取期間が変動する。これに対して、原稿シートは読取部に対して一定速度で相対移動するので、上記点灯期間や上記読取期間が変動すると原稿シートの画像を正確に読み取れない。
【0003】
そこで、上記点灯期間や上記読取期間を、スペクトラム拡散クロックの上記変調周期の整数倍に設定することで、上記点灯期間や上記読取期間がスペクトラム拡散クロックの周波数の変動によらず一定となるようにすることが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
ところが、光源の点灯期間や読取期間をスペクトラム拡散クロックの周波数の変動によらず一定とするには、スペクトラム拡散クロックの変調周期の整数倍に設定する必要があるため、その点灯期間や読取期間を所望の期間長に自由に設定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−332924号公報
【特許文献2】特開2002−281252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像読取装置では、予め読取部によって白基準部材を読み取ってシェーディング補正データ等の補正データを取得しておき、読取部によって原稿シートを読み取って得た原稿読取データを、上記補正データを用いて補正する。画像読取装置が、上述したスペクトラム拡散クロックを使用する構成である場合、スペクトラム拡散クロックの周波数の変動により、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで、光源の点灯期間や読取部の読取期間等の読取周期が相違することがある。そうすると、上記補正データをそのまま用いても、原稿読取データを正常に補正できず、読取画像の画質が低下してしまうおそれがある。なお、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することは、スペクトラム拡散クロックの周波数の変動に限られず、例えば周囲温度の変化など、様々な要因が考えられる。
【0007】
本明細書では、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することで、補正データを用いて補正した読取画像の画質が低下することを抑制するための技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書によって開示される、画像読取装置は、主走査方向に沿った読取領域で画像を読み取り、当該読取領域には原稿読取領域、及び、当該原稿読取領域の側方に位置する側方領域が含まれる読取部と、原稿シートおよび前記読取部の少なくとも一方を移動させて、前記原稿読取領域内に前記原稿シートを通過させる移動部と、白基準部材と、制御部と、備え、前記制御部は、前記読取部に、前記白基準部材を読み取らせ、前記原稿読取領域の読取データである白基準データを取得し、前記側方領域の読取データである第1側方データを取得する白基準読取処理と、前記読取部に、前記原稿シートを読み取らせ、前記原稿読取領域の読取データである原稿読取データを取得し、前記側方領域の読取データである第2側方データを取得する原稿読取処理と、前記第1側方データが示す値と前記第2側方データが示す値との相対比、および、前記白基準データを用いて白補正データを生成する白補正データ生成処理と、前記原稿読取データを、前記白補正データを用いて補正する白補正処理と、を実行する構成を有する。
【0009】
白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することがある。しかし、この相違は、白基準部材の読取時に取得した第1側方データが示す値と、原稿シートの読取時に取得した第2側方データが示す値との相対比と相関関係がある。そこで、この画像読取装置によれば、白基準データに加えて、上記相対比を用いて、白補正データを生成し、その補正データを用いて、原稿画像データを補正する。これにより、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することで、補正データを用いて補正した読取画像の画質が低下することを抑制することが可能である。
【0010】
上記画像読取装置では、前記制御部は、一定の変調周期で周波数が変動するスペクトラム拡散クロックを生成するクロック生成部、を有し、前記白基準読取処理では、前記読取部に、前記スペクトラム拡散クロックに応じた読取周期で前記白基準部材を読み取らせ、前記原稿読取処理では、前記読取部に、前記スペクトラム拡散クロックに応じた読取周期で前記原稿シートを読み取らせてもよい。
【0011】
スペクトラム拡散クロックの周波数の変動により、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することがある。しかし、この相違は、白基準部材の読取時に取得した第1側方データが示す値と、原稿シートの読取時に取得した第2側方データが示す値との相対比と相関関係がある。そこで、この画像読取装置によれば、白基準データに加えて、上記相対比を用いて、白補正データを生成し、その補正データを用いて、原稿画像データを補正する。これにより、読取周期の設定が制約されることを抑制しつつ、補正データを用いて補正した読取画像の画質が、スペクトラム拡散クロックの周波数の変動により低下することを抑制することが可能である。
【0012】
上記画像読取装置では、前記制御部は、前記原稿読取処理では、前記原稿シートを一ラインずつ読み取らせ、各ラインごとに、前記原稿読取データおよび前記第2側方データを取得し、前記白補正データ生成処理では、前記各ラインごとに、前記相対比、および、前記白基準データを用いて白補正データを生成し、前記白補正処理では、前記各ラインごとに、前記原稿読取データを、前記白補正データを用いて補正してもよい。
【0013】
この画像読取装置によれば、1ラインごとに、原稿読取処理、白補正データ生成処理および白補正処理を行うことにより、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することで、補正データを用いて補正した読取画像の画質が低下することを、より確実に抑制することが可能である。
する
【0014】
上記画像読取装置では、原稿台を備え、前記移動部は、前記読取部を移動させることにより、前記読取位置を、前記原稿台に配置された原稿シートに対して移動させる構成を含み、前記原稿台のうち、前記側方領域に対応する部分の光反射特性は、前記白基準部材と同じでもよい。
【0015】
この画像読取装置によれば、側方領域に対応する部分の光反射特性が、白基準部材とは異なる構成に比べて、より正確な白補正データを生成することができる。このため、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することで、補正データを用いて補正した読取画像の画質が低下することを、より確実に抑制することが可能である。
【0016】
上記画像読取装置では、前記原稿台に配置された原稿シートを押さえ、主走査方向の幅が当該原稿シートよりも広い押さえ部材と、を備え、前記白基準部材の前記主走査方向の幅は、前記読取領域の前記主走査方向の幅以上であり、前記押さえ部材のうち、少なくとも前記側方領域に対応する部分の光反射特性は、前記白基準部材と同じである。
【0017】
この画像読取装置によれば、押さえ部材を読み取ることにより、白基準部材と同じ光反射特性に基づく第2側方データを取得することができる。
【0018】
上記画像読取装置では、前記原稿台の側方位置に非配置部が設けられ、前記白基準部材の前記主走査方向の幅は、前記読取領域の前記主走査方向の幅以上であり、前記非配置部のうち、少なくとも前記側方領域に対応する部分の光反射特性は、前記白基準部材と同じでもよい。
【0019】
この画像読取装置によれば、非配置部分を読み取ることにより、白基準部材と同じ光反射特性に基づく第2側方データを取得することができる。
【0020】
上記画像読取装置では、前記移動部は、前記原稿シートを、前記読取位置に向けて搬送する構成を含み、前記白基準部材は、前記読取領域において、前記読取部に対して対向配置される対向部材であり、前記対向部材の前記主走査方向の幅は、前記読取領域の前記主走査方向の幅以上でもよい。
【0021】
この画像読取装置によれば、共通の白基準部材を読み取ることにより、白基準データ、第1側方データおよび第2測定データを取得することができる。
【0022】
なお、この発明は、画像処理装置、読取画像補正方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本明細書によって開示される発明によれば、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することで、補正データを用いて補正した読取画像の画質が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態に係る複合機の外観構成を示す斜視図
図2】カバー部および装置本体の一部分の内部構成を示す断面図
図3】複合機の電気的構成を示すブロック図
図4】第1読取部および第1ADF用対向部材を前方から見た模式図
図5】装置本体の上面図、および、第1読取部およびFB用押さえ部材を前方から見た模式図
図6】白基準データとスペクトラム周波数との関係を示すグラフ
図7】読取制御処理を示すフローチャート(ADF読取時)
図8】読取制御処理を示すフローチャート(FB読取時)
【発明を実施するための形態】
【0025】
<一実施形態>
一実施形態について図1図8を参照しつつ説明する。本実施形態の複合機1は、画像処理装置の一例であり、スキャンモードに加えて、コピーモード、印刷モードなど、複数のモードを実行可能である。以下の説明では、図1の紙面右下側を複合機1の前側(F)とし、紙面左下側を複合機1の左側(L)とし、紙面上側を複合機1の上側(U)とする。
【0026】
(複合機の機械的構成)
図1に示すように、複合機1は、カバー部2と装置本体3とを備える。装置本体3の上面の後端側には図示しない支持部材が設けられており、この支持部材に、カバー部2の後端側が、左右方向に沿った回転軸を中心に回動可能に連結されている。これにより、カバー部2は、装置本体3の上面を覆う閉姿勢と、装置本体3の上面を開放させた開姿勢(図1参照)とに変位可能である。
【0027】
図2には、カバー部2および装置本体3の一部分の内部構成が簡略化して示されている。同図において、点線Dから上側の部分がカバー部2である。カバー部2は、供給トレイ11、フロントセンサ12、排出トレイ13、原稿自動搬送装置(Auto Document Feeder 以下、「ADF」という)14、第1ADF用対向部材15、FB用押さえ部材16、および、第2読取部17、リアセンサ18等を備える。また、カバー部2内には、図示しない原稿シートを、供給トレイ11からU字状に折り返して排出トレイ13に搬送するための搬送経路Rが形成されている。原稿シートは、シートの一例であり、紙製に限らず、プラスチック製などでもよい。
【0028】
供給トレイ11には、画像読取前の原稿シートが複数枚配置可能である。フロントセンサ12は、供給トレイ11の先端側(左端側)の検知位置RFで、供給トレイ11上の原稿シートの有無を検知する原稿有無センサであり、その検知結果を上記制御部30に送信する。リアセンサ18は、搬送経路Rにおいて検知位置RFよりも下流側の検知位置RRで、原稿シートの有無を検知する原稿有無センサであり、その検知結果を上記制御部30に送信する。排出トレイ13は、供給トレイ11の上方に設けられ、画像読取後の原稿シートが排出される。なお、搬送経路Rの最下流の位置を、排出位置REという。
【0029】
ADF14は、移動部の一例であり、供給トレイ11上の複数枚の原稿シートを1枚ずつ分離し、搬送経路Rに沿って搬送し、排出トレイ13に順次排出する搬送動作を実行する。具体的には、ADF14は、供給ローラ14A、分離ローラ14B、分離パッド14C、複数の搬送ローラ14D、各搬送ローラ14Dに圧接して従動する複数の従動ローラ14E、原稿シートを案内する複数のガイド部材14F等を有する。
【0030】
供給ローラ14A、分離ローラ14B、および、搬送ローラ14Dは、後述するステッピングモータ14Gによって回転駆動される。これにより、供給ローラ14Aは、供給トレイ11に積載される複数枚の原稿シートを搬送経路R側へと搬送し、分離ローラ14Bと分離パッド14Cとは、その複数枚の原稿シートを1枚ずつ分離して搬送経路R内に送り出す。搬送ローラ14Dは、その分離された原稿シートを、搬送経路Rに沿って搬送し、排出トレイ13上に排出する。
【0031】
第1ADF用対向部材15は、対向部材、白基準部材の一例であり、カバー部2が閉姿勢のとき、ADF用ガラス21Aを介して、第1読取部25に対向する。以下、第1ADF用対向部材15と第1読取部25との対向位置を、第1読取位置R1という。第1ADF用対向部材15のうち、第1読取部25との対向面15Aは、光反射率が概ね均一な白色であり、第1ADF用対向部材15は、後述する白基準データを取得するための白基準部材として利用される。
【0032】
FB用押さえ部材16は、押さえ部材の一例であり、カバー部2の下面側に設けられており、カバー部2が閉姿勢のとき、後述するFB用ガラス21Bをほぼ全体的に覆う。このFB用押さえ部材16のうちFB用ガラス21Bとの対向面16Aの光反射特性は、後述する白基準板22Aと同じである。第2読取部17は、上記第1ADF用対向部材15に対して、搬送経路Rの下流側に設けられている。第2読取部17の具体的な構成は、後述する第1読取部25と同様であるものとし、詳細な説明は省略する。
【0033】
図1に示すように、装置本体3は、全体として、左右方向に長い箱状に形成されており、その上面部分は、例えば樹脂製の枠体3Aの開口部にプラテンガラス21が配置された構成になっている。プラテンガラス21の上面には、左寄りの位置に仕切り部材22が設けられている。プラテンガラス21は、この仕切り部材22により、2つの部分に分けられており、以下、左側の部分を、ADF用ガラス21Aといい、右側の部分を、FB(Flat Bed)用ガラス21Bという。FB用ガラス21Bは、原稿台の一例である。
【0034】
また、仕切り部材22の下面には白基準板22Aが設けられており(図2参照)、この白基準板22Aは、白基準部材の一例であり、第1読取部25と対向する対向の光反射率が概ね均一な白色の部材である。また、仕切り部材22の下面のうち、白基準板22Aに隣接する部分は、黒色である。
【0035】
装置本体3には、操作部23および表示部24等が設けられている。図2に示すように、装置本体3内には、第1読取部25、デバイス移動機構26(図3参照)および第2ADF用対向部材27等が設けられている。
【0036】
第1読取部25は、カバー部2が閉姿勢のとき、上記第1読取位置R1を介して、第1ADF用対向部材15に対向する。第1読取部25は、CIS(Contact Image Sensor)を有する読取デバイスであり、例えば発光部25Aおよび受光部25Bを有する。発光部25Aは、赤、緑、青の3色の発光素子(発光ダイオードなど)で構成されている。
【0037】
受光部25Bは、受光レンズ25Cおよび受光基板25Dを有する(図4参照)。受光レンズ25Cは、第1読取位置X1側からの光を受光基板25Dに導く光学部材である。受光基板25Dは、複数の受光素子25Eが、左右方向、換言すれば主走査方向に沿って並んで配置された構成である。なお、第1読取部25は、CISに限らず、例えばCCD(Charge Coupled Drive Image Sensor)を有する構成でもよい。
【0038】
デバイス移動機構26は、移動部の一例であり、第1読取部25を、ADF用ガラス21A、仕切り部材22およびFB用ガラス21Bの下側において、左右方向、換言すれば副走査方向に沿って移動させることが可能である。以下、第1読取部25がADF用ガラス21Aと対向する位置を、ADF位置XAという。第1読取部25が、仕切り部材22と対向する位置は、基準位置の一例であり、以下、ホーム位置X0という。第1読取部25が、FB用ガラス21Bと対向する位置は、第2対向位置の一例であり、以下、FB位置XFという。更に、装置本体3内には、後述する制御部30および印刷部28等が設けられている(図3参照)。
【0039】
(複合機の電気的構成)
図3に示すように、複合機1は、制御部30を有し、この制御部30に、第1読取部25、第2読取部17、ADF14、デバイス移動機構26、フロントセンサ12、リアセンサ18、操作部23、表示部24および印刷部28がデータ通信可能に接続されている。
【0040】
制御部30は、中央処理装置(以下、CPU)31、ROM32、RAM33、画像処理回路34およびクロック生成部35を有する。ROM32には、後述する読取制御処理を実行するためのプログラム(読取画像補正プログラムの一例)や、この複合機1の各種の動作を実行するためのプログラムが記憶されている。CPU31は、ROM32から読み出したプログラムに従って、複合機1の各部を制御する。なお、上記各種のプログラムが記憶される記憶媒体は、ROM32やRAM33以外に、CD−ROM、ハードディスク装置、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリでもよい。
【0041】
画像処理回路34は、画像処理専用のハード回路である。クロック生成部35は、一定の変調周期で周波数が変動するスペクトラム拡散クロックに応じた制御信号を生成し出力する。具体的には、クロック生成部35は、基準クロック生成回路35A、スペクトラム拡散クロック生成部35B、クロック生成回路35Cを有する。基準クロック生成回路35Aは、一定周波数の基準クロックSCLKを出力する。
【0042】
スペクトラム拡散クロック生成部35Bは、基準クロックSCLKを周波数変調させてスペクトラム拡散クロックSSCG_CLKを生成して出力する。クロック生成回路35Cは、スペクトラム拡散クロックSSCG_CLKを基準として、第1読取部25および第2読取部17の光源の点灯期間や読取期間等を定める制御信号を、第1読取部25および第2読取部17に与える。これにより、第1読取部25および第2読取部17は、スペクトラム拡散クロックSSCSSCG_CLKの変調周波数(以下、単にスペクトラム周波数という)に応じた読取周期で1ラインずつ画像の読取動作を実行し、1ラインごとの読取画像に応じた画素列の読取データを順次出力する。この読取データは、図示しないAD変換部によりAD変換されて、RAM33に記憶される。
【0043】
ADF14は、ステッピングモータ14Gおよびモータ駆動回路14Hを有し、ステッピングモータ14Gを回転させることにより、前述した各ローラ14A,14B,14Dを回転駆動する。
【0044】
また、モータ駆動回路14Hは、CPU31からクロック信号が入力される。そして、モータ駆動回路14Hは、そのクロック信号の1パルス毎に信号を更新し、その信号に基づいてコイルに電流を供給することで、ステッピングモータ14Gを1ステップ(所定角度)ずつ回転させる。
【0045】
上述の構成により、複合機1は、ADF読取とFB読取とを実行することができる。ADF読取は、第1読取部25を上記ADF位置XAに静止させ、ADF14により搬送される原稿シート上の画像を読み取る動作である。更に、ADF読取では、第1読取部25のみを利用して原稿シートの片面のみを読み取る片面読取と、第1読取部および第2読取部17を利用して原稿シートの両面を読み取る両面読取とを実行可能である。FB読取は、デバイス移動機構26により、第1読取部25をFB用ガラス21Bに沿って移動させつつ、当該FB用ガラス21B上に配置された原稿シートの画像を読み取る動作である。
【0046】
操作部23は、複数のボタンを有し、上述した各モードの指定など、ユーザにより各種の入力操作が可能である。表示部24は、液晶ディスプレイやランプ等を有し、各種の設定画面や装置の動作状態等を表示することが可能である。印刷部28は、上記読取データなどの画像データに基づく画像を、例えば電子写真方式やインクジェット方式により図示しない印刷用シートに印刷する。
【0047】
(読取部の読取領域について)
(1)第1読取部がADF位置XAに位置するときの側方領域
図4には、ADF位置XAに位置する第1読取部25および第1ADF用対向部材15を前方から見た模式図が示されている。このときの第1読取部25の読取領域EAは、第1読取位置X1において、左右方向に沿って延び、且つ、その左右方向の幅が、受光基板25Dに配置された全受光素子25Eの全長と略同一であるものとする。なお、読取領域EAの左右方向の幅は、全受光素子25Eのうち、画像読み取りに利用される有効画素に対応する有効受光素子列の全長と略同一でもよい。
【0048】
読取領域EAには、左右方向に並んだ通過領域E1Aおよび側方領域E2Aが含まれる。通過領域E1Aは、原稿読取領域の一例であり、搬送経路R内に位置し、原稿シートが通過する領域である。即ち、通過領域E1Aは、原稿シートの画像を読み取ることができる原稿読取可能領域である。側方領域E2Aは、前後方向から見て通過領域E1Aの側方に位置し、原稿シートが通過しない領域である。即ち、側方領域E2Aは、原稿シートの画像を読み取ることができない原稿読取不可領域である。
【0049】
一方、第1ADF用対向部材15は、対向面15Aを有し、当該対向面15Aは、カバー部2が閉姿勢のときに第1読取部25と対向する(図1参照)。この対向面15Aは、上記白基準板22Aと反射特性が略同一である。また、対向面15Aの左右方向の幅は上記読取領域EAの幅以上であり、対向面15Aは、当該読取領域EAの全長に亘って第1読取部25と対向する。このため、第1読取部25は、通過領域E1A内の画像だけでなく、側方領域E2A内の画像も読み取ることができる。
【0050】
つまり、第1読取部25は、第1読取位置X1に原稿シートが無いときだけでなく原稿シートが有るときにも、側方領域E2A内において、第1ADF用対向部材15の対向面15Aの画像を読み取ることができる。以下、第1読取部25が、読取領域EA内で読み取った1ライン全体分の読取データを、全体読取データといい、当該全体読取データのうち、通過領域E1A内で読み取った部分の読取データを、通過読取データといい、側方領域E2A内で読み取った部分の読取データを、側方データという。
【0051】
(2)第1読取部がFB位置XFに位置するときの読取領域
図5の上段には、装置本体3の上面部分が示されており、下段にはFB位置XFに位置する第1読取部25およびFB用押さえ部材16を前方から見た模式図が示されている。このときの第1読取部25の読取領域EFは、その左右方向の幅が、受光基板25Dに配置された全受光素子25Eの全長と略同一であるものとする。なお、読取領域EFの左右方向の幅は、全受光素子25Eのうち、画像読み取りに利用される有効画素に対応する有効受光素子列の全長と略同一でもよい。
【0052】
読取領域EFには、左右方向に並んだ配置領域E1Fおよび側方領域E2F、E3Fが含まれる。配置領域E1Fは、原稿読取領域の一例であり、同図の上段に示すように、FB用ガラス21Bのうち原稿シートが配置される部分に対応する領域である。以下、この原稿シートが配置される部分を、原稿配置部分という。原稿配置部分の左右方向の幅は、例えば複合機1で読取可能な原稿シートの最大サイズの幅よりやや大きい幅である。なお、複合機1では、FB用ガラス21Bの一頂点W(図5で右上の頂点)に、原稿シートの角を合わせるようにして、原稿シートがFB用ガラス21B上に配置される。
【0053】
側方領域E2Fは、同図下段に示すように、前後方向から見て配置領域E1Fの右側に位置し、枠体3Aに対応し、原稿シートが配置されない領域である。なお、枠体3Aは非配置部の一例である。上記枠体3Aの下面には、白色であり、シール3Bが、原稿配置部分の右側に、当該原稿配置部分の左右方向の略全長に亘って枠体3Aに貼られている。このシール3Bの下面は、光反射率等の光反射特性が白基準板22Aと同じである。従って、第1読取部25は、配置領域E1Fに原稿シートが配置されていないときだけでなく原稿シートが配置されているときにも、側方領域E2A内において、シール3Bの下面の画像を読み取ることができる。
【0054】
側方領域E3Fは、前後方向から見て配置領域E1Fの左側に位置し、FB用ガラス21Bのうち原稿シートが配置されない非配置部分に対応する領域である。一方、前述したように、FB用押さえ部材16は、FB用ガラス21Bをほぼ全体的に覆う。従って、第1読取部25は、配置領域E1Fに原稿シートが配置されていないときだけでなく原稿シートが配置されているときにも、側方領域E3A内において、FB用押さえ部材16の下面16Aの画像を読み取ることができる。以下、第1読取部25が、読取領域EF内で読み取った1ライン全体分の読取データを、全体読取データといい、当該全体読取データのうち、配置領域E1F内で読み取った部分の読取データを、配置読取データといい側方領域E2Fまたは側方領域E3F内で読み取った部分の読取データを、側方データという。
【0055】
(白基準データとスペクトラム周波数との関係)
例えば上記複数の受光素子25Eそれぞれの受光特性の相違等により、読取データに基づく画像に濃度差が生じることがある。シェーディング補正データは、白補正データの一例であり、この濃度差を抑制するための補正データであり、このシェーディング補正データには、複数の白補正値Fが含まれる。複数の白補正値Fは、通過読取データに含まれる各画素の画素値を、白色を示す画素値にそれぞれ補正するための補正係数である。
【0056】
ここで、後述するように、シェーディング補正データは、白基準データを用いて生成され、この白基準データは、第1ADF用対向部材15等の白基準部材に対する読取動作によって取得される。そして、この白基準データを用いて、原稿読取データを精度よく白補正するためには、白基準データの取得のための読取動作時と原稿読取データの取得のための読取動作時とで、スペクトラム周波数が一致することが好ましい。
【0057】
しかし、上述したように、制御部30は、第1読取部25に、スペクトラム周波数に応じた読取周期で1ラインずつ画像の読取動作を実行させる。従って、図6に示すように、白基準データは、白基準部材に対する読取動作時のスペクトラム周波数に応じて変動する。また、後述するように、白基準データの取得のための読取動作と、原稿読取データの取得のための読取動作とは時期が相違する。このため、白基準データの取得のための読取動作時と原稿読取データの取得のための読取動作時とでは、スペクトラム周波数が相違することがある。このような場合、原稿読取データを、白基準データを用いて精度よく補正することができないおそれがある。
【0058】
具体的には、同図において、実線で示す白基準データWD0は、スペクトラム周波数がFG0のときの白基準データであり、点線で示す白基準データWDNは、スペクトラム周波数がFGNのときの白基準データであるとする。そして、スペクトラム周波数がFG0のときに、白基準データの取得のための読取動作が実行され、スペクトラム周波数がFGNのときに、原稿読取データの取得のための読取動作が実行されたとする。この場合、原稿読取データと白基準データWD0とは、スペクトラム周波数が互いに異なる時期に実行された読取動作で得られたデータである。このため、原稿読取データを、白基準データWD0に基づき白補正する場合、白基準データWDNに基づき白補正する場合に比べて、白補正の精度が低下する。
【0059】
(読取制御処理)
例えばユーザが操作部23にてスキャンモード、コピーモードおよびファクシミリモードのいずれかの実行を指示する操作を行うと、制御部30は、図7、8に示す読取制御処理を実行する。なお、制御部30は、フロントセンサ12の検知結果に基づき、供給トレイ24上に原稿シートが有ると判断した場合、ADF読取を実行し、供給トレイ24上に原稿シートが無いと判断した場合、FB読取を実行する。
【0060】
この読取制御処理では、白基準板22Aの読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することに起因して、シェーディング補正データを用いて補正した読取画像の画質が低下することが抑制される。なお、読取制御処理の開始時には、第1読取部25は白基準板22Aの直下のホーム位置X0に待機する。以下、ADF読取且つ片面読取の実行時と、FB読取の実行時とに分けて説明する。
【0061】
(1)ADF読取時
図7に示すように、CPU31は、まず、デバイス移動機構26により、第1読取部25をホーム位置X0からADF位置XAに移動させ(S1)、ADF14に搬送動作を開始させる(S2)。これにより、原稿シートが1枚ずつ供給トレイ11から搬送経路Rに沿って搬送される。
【0062】
CPU31は、搬送動作の開始後、原稿シートが第1読取位置X1に到達する前に、第1ADF用対向部材15に対して、第1読取部25に1ライン全体分だけ読取動作を実行させ(S3)、全体読取データを取得する。また、CPU31は、ライン番号Nを0に初期化する(S3)。CPU31は、S3で取得した全体読取データのうち通過読取データを、白基準データとして取得して、RAM33に記憶する(S4)。
【0063】
また、CPU31は、S3で取得した全体読取データのうち側方データから、当該側方データに基づく画像の画素値を取得する(S5)。以下、このときの側方データを、第1側方データといい、以下、上記画素値を、第1画素値G(0)という。なお、側方データに基づく画像の画素値は、側方データに含まれる1つの画素の画素値でもよいし、複数の画素の画素値の平均値や、複数の画素の画素値のうち最大値と最小値との中心値などでもよい。S3〜S5の処理は、白基準読取処理の一例である。なお、S4の処理とS5の処理とは順番が逆でもよい。
【0064】
次に、CPU31は、S4で取得した上記白基準データから、上記シェーディング補正データを生成する(S6)。以下、このときのシェーディング補正データを、特に基礎シェーディング補正データといい、当該基礎シェーディング補正データに含まれる白補正値Fを、基礎白補正値F(0)という。なお、この基礎白補正値F(0)は、例えば次の式で示されるものとする。
F(0)=白色を示す画素値/白基準データの各画素の画素値
画素値が示す値が0〜255である場合、白色を示す画素値は例えば255である。
【0065】
CPU31は、基礎シェーディング補正データを生成した後、原稿シートの搬送方向における先端が第1読取位置R1に到達したか否かを判断する(S7)。CPU31は、原稿シートの先端が第1読取位置R1に到達していないと判断している間は待機し(S7:NO)、原稿シートの先端が第1読取位置R1に到達したと判断した場合(S7:YES)、S8に進む。具体的には、CPU31は、リアセンサ18の検知結果に基づき、原稿シートを検知位置RRで検知したかどうかを判断し、原稿シートを検知していないと判断している間は待機する。一方、CPU31は、原稿シートを検知したと判断した場合、原稿シートの先端が検知位置RRに到達したとし、原稿シートを検知したと判断した時点から、原稿シートを第1距離だけ搬送したかどうかを判断する。
【0066】
第1距離は、検知位置RRから第1読取位置R1までの距離である。CPU31は、ADF4を回転駆動させる駆動モータ(ステッピングモータ)のステップ数をカウントすることで搬送距離を測定する。なお、CPU31は、内蔵タイマにより、原稿シートを検知したと判断した時点からカウントした時間、および、上記搬送速度V2から、原稿シートの搬送距離を測定してもよい。
【0067】
CPU31は、原稿シートを第1距離だけ搬送していないと判断している間は待機し、原稿シートを第1距離だけ搬送したと判断した場合、原稿シートの先端が第1読取位置R1に到達したと判断する(S7:YES)。すると、CPU31は、第1読取部25に1ライン全体分だけ読取動作を実行させ、全体読取データを取得する(S8)。また、CPU31は、ライン番号Nに1を加算する(S8)。
【0068】
S8の読取動作の実行時には、通過領域E1Aを、原稿シートが通過している。従って、CPU31は、S8で取得した全体読取データのうち通過読取データを、原稿読取データとして取得して、RAM33に記憶する(S9)。また、CPU31は、S8で取得した全体読取データのうち側方データから、当該側方データに基づく画像の画素値を取得する(S10)。以下、このときの側方データを第2側方データといい、以下、上記画素値を、第2画素値G(N)という。S8〜S10の処理は、原稿読取処理の一例である。
【0069】
次に、CPU31は、第1画素値G(0)と第2画素値G(N)との相対比、および、上記S6で生成した基礎シェーディング補正データを用いて、シェーディング補正データを生成する(S11)。このS6,S11の処理は白補正データ生成処理の一例である。具体的には、CPU31は、基礎シェーディング補正データに含まれる各基礎白補正値F(0)を、次の式により補正して、各白補正値F(N)を算出する。
F(N)=F(0)×(G(0)/G(N))
【0070】
次に、CPU31は、原稿読取データを、S11で生成したシェーディング補正データを用いて補正する(S12)。このS12の処理は白補正処理の一例である。具体的には、CPU31は、原稿読取データに含まれる各画素の画素値に、それぞれに対応する各白補正値F(N)を乗算する。これにより、白基準データの取得のための読取動作時と原稿読取データの取得のための読取動作時とでは、スペクトラム周波数が相違しても、原稿読取データを、実質的に、当該原稿読取データとスペクトラム周波数が同じ時期に取得した白基準データを用いて補正することができる。
【0071】
上述した図6の例において、スペクトラム周波数がFG0のときに、S3の白基準データの取得のための読取動作が実行され、スペクトラム周波数がFGNのときに、S8の原稿読取データの取得のための読取動作が実行されたとする。この場合、S4で取得した白基準データはWD0であり、原稿読取データとスペクトラム周波数が同じ時期に取得した白基準データはWDNである。そして、スペクトラム周波数の相違による両白基準データWD0,WDNの各画素値の比は、第1側方データおよび第2側方データに基づく上記相対比(=G(N)/G(0))として把握することができる。従って、白基準データに加えて、相対比を用いることにより、原稿読取データを、実質的に、白基準データはWDNを用いて補正することと同等の白補正処理を行うことができる。
【0072】
CPU31は、白補正処理の実行後、原稿シートの搬送方向における後端が第1読取位置R1を通過したか否かを判断する(S13)。CPU31は、原稿シートの後端が第1読取位置R1を通過していないと判断した場合(S13:NO)、S8に戻り、次の順位のラインについてS8〜S12の処理を実行する。一方、CPU31は、原稿シートの後端が第1読取位置R1を通過したと判断した場合(S13:YES)、第1読取部25の読取動作を停止させ、原稿シートを排出トレイ13に排出した後、ADF14に搬送動作を停止させ、本読取制御処理を終了する。
【0073】
具体的には、CPU31は、リアセンサ18の検知結果に基づき、原稿シートを検知位置RRで検知したかどうかを判断し、原稿シートを検知していると判断している間は待機する。一方、CPU31は、原稿シートを検知しなくなったと判断した場合、原稿シートの後端が検知位置RRを通過したとし、原稿シートを検知しなくなったと判断した時点から、原稿シートを第2距離だけ搬送したかどうかを判断する。第2距離は、第1読取位置R1から排出位置REまでの距離である。CPU31は、ADF4を回転駆動させる駆動モータのステップ数をカウントすることで搬送距離を測定する。
【0074】
(2)FB読取時
図8に示すように、CPU31は、まず、ホーム位置X0で、白基準板22Aに対して、第1読取部25に1ライン全体分だけ読取動作を実行させ(S21)、全体読取データを取得する。また、CPU31は、ライン番号Nを0に初期化する(S21)。CPU31は、上記S4と同様、S21で取得した全体読取データのうち配置読取データを、白基準データとして取得して、RAM33に記憶する(S22)。
【0075】
また、CPU31は、上記S5と同様、S21で取得した全体読取データのうち第1側方データから、当該第1側方データに基づく第1画素値G(0)を取得する(S23)。S21〜S23の処理は、白基準読取処理の一例である。なお、S22の処理とS23の処理とは順番が逆でもよい。次に、CPU31は、上記S46同様、S22で取得した上記白基準データから、基礎シェーディング補正データを生成する(S24)。
【0076】
CPU31は、基礎シェーディング補正データを生成した後、デバイス移動機構26により、第1読取部25をホーム位置X0からFB位置XFに向けて移動を開始させる(S25)。そして、CPU31は、例えばデバイス移動機構26による第1読取部25の移動量から、第1読取部25が、例えばFB用ガラス21Bの左端の読取開始位置に到達したか否かを判断する(S26)。CPU31は、第1読取部25が読取開始位置に到達していないと判断している間は待機し(S26:NO)、第1読取部25が読取開始位置に到達したと判断した場合(S26:YES)、第1読取部25に1ライン全体分だけ読取動作を実行させ、全体読取データを取得する(S27)。また、CPU31は、ライン番号Nに1を加算する(S27)。
【0077】
S27の読取動作の実行時には、配置領域E1Fを、原稿シートが通過している。従って、CPU31は、S27で取得した全体読取データのうち配置読取データを、原稿読取データとして取得して、RAM33に記憶する(S28)。また、CPU31は、上記S10と同様、S27で取得した全体読取データのうち第2側方データから、当該第2側方データに基づく第2画素値G(N)を取得する(S29)。S27〜S29の処理は、原稿読取処理の一例である。
【0078】
次に、CPU31は、上記S11と同様、第1画素値G(0)と第2画素値G(N)との相対比、および、上記S24で生成した基礎シェーディング補正データを用いて、シェーディング補正データを生成する(S30)。このS24,S30の処理は白補正データ生成処理の一例である。次に、CPU31は、上記S22と同様、原稿読取データを、S30で生成したシェーディング補正データを用いて補正する(S31)。このS31の処理は白補正処理の一例である。
【0079】
CPU31は、白補正処理の実行後、デバイス移動機構26による第1読取部25の移動量から、第1読取部25が、例えばFB用ガラス21Bの右端寄りの読取終了位置に到達したか否かを判断する(S32)。CPU31は、第1読取部25が読取終了位置に到達していないと判断した場合(S32:NO)、S27に戻り、次の順位のラインについてS27〜S31の処理を実行する。一方、CPU31は、第1読取部25が読取終了位置に到達したと判断した場合(S32:YES)、デバイス移動機構26に第1読取部25の移動動作を停止させ、本読取制御処理を終了する。
【0080】
(本実施形態の効果)
白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することがある。しかし、この相違は、白基準部材の読取時に取得した第1側方データが示す値と、原稿シートの読取時に取得した第2側方データが示す値との相対比と相関関係がある。そこで、本実施形態によれば、白基準データに加えて、上記相対比を用いて、白補正データを生成し、その補正データを用いて、原稿画像データを補正する。これにより、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することで、補正データを用いて補正した読取画像の画質が低下することを抑制することが可能である。
【0081】
また、この複合機1によれば、1ラインごとに、原稿読取処理、白補正データ生成処理および白補正処理を行うことにより、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することで、補正データを用いて補正した読取画像の画質が低下することを、より確実に抑制することが可能である。
【0082】
ADF読取では、第1ADF用対向部材15を白基準部材として利用し、第1側方データおよび第2側方データを、この共通の第1ADF用対向部材15に対する読取動作によって取得する。このため、第1側方データおよび第2側方データを、互いに異なる部材に対する読取動作によって取得する構成に比べて、精度の高い白補正値を算出することができる。
【0083】
また、FB用押さえ部材16の対向面16Aの光反射特性は、白基準板22Aと同じである。従って、両者の光反射特性が互いに相違する構成に比べて、FB読取において、より正確な白補正データを生成することができる。このため、白補正した読取画像の画質が、スペクトラム拡散クロックの周波数の変動により低下することを、より確実に抑制することが可能である。
【0084】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0085】
「画像処理装置」は、上記複合機1に限らず、スキャナ機能のみ有するスキャナ装置単体、印刷機能のみ有する印刷装置、ファクシミリ装置、コピー装置などでもよい。また、「画像処理装置」は、ADF読取、FB読取のいずれか一方のみ実行可能な構成でもよく、片面読取のみ可能な構成でもよい。
【0086】
上記実施形態では、制御部30は、1つのCPU31によって読取制御処理を実行する構成であった。しかし、これに限らず、制御部30は、CPUと画像処理回路34等のハード回路とにより読取制御処理を実行する構成、1または複数のCPUのみにより読取制御処理を実行する構成や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハード回路のみにより読取制御処理を実行する構成でもよい。例えば、制御部30は、原稿読取処理、白補正データ生成処理および白補正処理の一部または全部を、画像処理回路34に実行させる構成でもよい。
【0087】
クロック生成部35は、スペクトラム拡散クロック生成部35Bを有さず、一定周波数の基準クロックSCLKをそのまま出力する構成でもよい。即ち、制御部30は、基準クロックSCLKの一定周波数を基準として、第1読取部25および第2読取部17の光源の点灯期間や読取期間等を制御する構成でもよい。このような構成でも、例えば温度変化による基準クロックSCLKの周波数変動等により、やはり、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時との時期のずれにより画質に影響を与えることがある。これに対し、制御部30は、図6の読取制御処理を実行することにより、上記画質に与える影響を抑制することができる。
【0088】
「対向部材」は、第1ADF用対向部材15に限らず、少なくとも側方領域E2Aにおいて第1読取部25と対向する対向面を有する構成であればよい。
【0089】
FB用押さえ部材16の対向面16Aの光反射特性は、白基準板22Aとは異なってもよい。この場合、例えば対向面16Aと白基準板22Aとの光反射率の比率を用いて、基礎シェーディング補正データを更に補正することが好ましい。
【0090】
シール3Bの下面は、光反射率等の光反射特性が白基準板22Aとは異なってもよい。この場合、例えばシール3Bの下面と白基準板22Aとの光反射率の比率を用いて、基礎シェーディング補正データを更に補正することが好ましい。
【0091】
制御部30は、複数ライン単位で、原稿読取処理、白補正データ生成処理および白補正処理を行う構成でもよい。例えば複数ラインのうちの一ラインの側方データから白補正データを生成し、この白補正データを用いて、複数ライン分の読取データを補正する。このような構成でも、白基準部材の読取時と原稿シートの読取時とで読取周期が相違することで、補正データを用いて補正した読取画像の画質が低下することを、より確実に抑制することが可能である。
【0092】
制御部30は、図7,8の読取制御処理において、白基準データの取得時には、基礎シェーディング補正データを生成せずに、原稿読取データの取得時に、白基準データおよび上記相対比を用いてシェーディング補正データを生成してもよい。具体的には、CPU31は、図7のS5の処理の実行後、S6の基礎白補正値F(0)を算出せずに、S7に進み、S11において、白基準データの各画素の画素値に、上記相対比を乗算して補正し、その補正後の白基準データからシェーディング補正データを生成してもよい。また、CPU31は、図8のS23の処理の実行後、S24の基礎白補正値F(0)を算出せずに、S25に進み、S30において、白基準データの各画素の画素値に、上記相対比を乗算して補正し、その補正後の白基準データからシェーディング補正データを生成してもよい。
【0093】
制御部30は、図7,8の読取制御処理のS11、S30において、白補正値F(N)を、基礎補正値G(0)、第1画素値G(0)およびN番目のラインの第2画素値GN)から算出した。しかし、これに限らず、制御部30は、次の式に示すように、白補正値F(N)を、直前のN−1番号のラインの白補正値F(N)、N−1番目のラインの第2画素値G(N−1)、および、N番目のラインの第2画素値GN)から算出してもよい。
F(N)=F(N−1)×(G(N−1)/G(N))
【0094】
制御部30は、ADF読取において、第1側方データおよび第2側方データを、互いに異なる部材に対する読取動作によって取得する構成でもよい。例えば、制御部30は、白基準板22Aに対する読取動作によって第1側方データを取得し、第1ADF用対向部材15に対する読取動作によって第2側方データを取得してもよい。このとき、第1ADF用対向部材15の対向面15Aの光反射特性は、白基準板22Aと同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。光反射特性が異なる場合、例えば第1ADF用対向部材15と白基準板22Aとの光反射率の比率を用いて、基礎シェーディング補正データを更に補正することが好ましい。
【0095】
制御部30は、両面印刷時において、第2読取部17の読取に対して図7に示す読取制御処理を実行してもよい。この場合、第2ADF用対向部材27が白基準部材として利用されることが好ましい。
【符号の説明】
【0096】
1:複合機 14:ADF 15:第1ADF用対向部材 16:FB用押さえ部材 22A:白基準板 17:第1読取部 25:第2読取部 26:デバイス移動機構 E1:通過領域 E2:側方領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8