(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
最表面に、重合性化合物を重合させることによって形成された硬化樹脂よりなる表面層が形成されてなる有機感光体について、当該表面層における未硬化の重合性化合物の残存量を検査する有機感光体の検査方法であって、
前記有機感光体は、クリーニングブレードによるクリーニング手段が備えられた画像形成装置に搭載されるものであり、
前記有機感光体を未硬化の重合性化合物を溶解させることができる抽出溶媒に浸漬して被検査液を得、この被検査液について分析装置を用いて重合性化合物を定量するもので、
前記抽出溶媒が、アルコール系溶媒またはアセトンのいずれかであり、
前記有機感光体における前記表面層が形成されてなる領域のうち、非画像形成領域を前記抽出溶媒に浸漬するものであり、
前記非画像形成領域のうち、前記クリーニングブレードが接触しない領域を前記抽出溶媒に浸漬することを特徴とする有機感光体の検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0011】
本発明の有機感光体の検査方法は、最表面に、重合性化合物を重合させることによって形成された硬化樹脂よりなる表面層が形成されてなる有機感光体について、当該表面層における未硬化の重合性化合物(以下、「未硬化物」ともいう。)の残存量を検査する方法であって、有機感光体を当該未硬化物を溶解させることができる抽出溶媒に浸漬して被検査液を得、この被検査液について分析装置を用いて重合性化合物を定量することを特徴とする。
【0012】
ここに、未硬化の重合性化合物とは、表面層を形成するための塗布液に含有させた未反応の重合性化合物そのものや、当該重合性化合物による重合度の低い生成物をいう。
【0013】
本発明の有機感光体の検査方法は、具体的には、
(1)抽出溶媒に被検査体とされる有機感光体を浸漬する浸漬工程
(2)浸漬工程を経て得られる被検査液について分析を行う分析工程
からなる。
【0014】
〔浸漬工程〕
浸漬工程においては、被検査体とされる有機感光体における表面層が形成されてなる領域のうち、非画像形成領域を抽出溶媒に浸漬することが好ましく、特に、当該有機感光体がクリーニングブレードによるクリーニング手段が備えられた画像形成装置に搭載されるものである場合は、有機感光体における非画像形成領域のうち、クリーニングブレードが接触しない領域を抽出溶媒に浸漬することが好ましい。
具体的には、有機感光体のサイズによっても異なるが、例えば外径100mm、長さ360mmである円筒状の有機感光体については、両端部のいずれか一方の端部の縁から10mmを浸漬することが好ましい。
【0015】
(抽出溶媒)
抽出溶媒としては、表面層を構成する硬化樹脂は溶解させず、かつ、当該硬化樹脂を形成するための重合性化合物は溶解させ、さらに、浸漬工程および分析工程に係る温度範囲において揮発しないものを用いることができ、具体的には、後述する表面層形成用塗布液を調製するための溶媒を用いることができる。
【0016】
抽出溶媒としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、メチレンクロライド、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
抽出溶媒としては、アルコール系溶媒を用いることが好ましい。
これらの抽出溶媒は、水などの希釈溶媒によって希釈して用いてもよい。
【0017】
抽出溶媒の使用量としては、未硬化物の検出量、分析工程において用いる分析装置の検出限界によっても異なるが、基本的に抽出溶媒の使用量は少量であるほど好ましく、具体的には、有機感光体の抽出溶媒に浸漬する浸漬面積1cm
2 当たり100mLとなる量以下であることが好ましく、より好ましくは1cm
2 当たり2mLとなる量以下である。
【0018】
(抽出温度および抽出時間)
有機感光体の浸漬に係る温度(抽出温度)は、用いる抽出溶媒が大きく揮発しない範囲であればよく、抽出温度が高いほど抽出時間の短縮化を図ることができる。
また、有機感光体の浸漬に係る時間(抽出時間)は、特に限定されず、有機感光体に未硬化物が存在する場合には当該未硬化物がすべて抽出される時間であればよい。
抽出温度および抽出時間の一例としては、用いる抽出溶媒が100質量%アルコール系溶媒である場合に、20℃で20分間浸漬させることができる。
【0019】
浸漬工程においては、抽出溶媒に有機感光体を浸漬した状態において、超音波を与えてもよい。
【0020】
〔分析工程〕
分析工程における被検査液の分析には、ガスクロマトグラフ分析装置を用いることができる。
具体的には、ガスクロマトグラフ分析装置として「Agilent 7890A」(アジレント・テクノロジー社製)、分離カラムとして「J&W123−1033 DB−1(0.32mmi.d./1μm膜厚)」(アジレント・テクノロジー社製)を使用し、注入ガス:ヘリウム、恒温槽:300℃、昇温速度:10℃/min、流速:1.5ml/minの条件で測定することができる。検出器にはFIDを用いた。
ガスクロマトグラフ分析装置による測定結果から、各種の未硬化物に係る検量線を用いて、被検査液における未硬化物を定量することができる。
【0021】
各種の未硬化物に係る検量線は、具体的には、以下の通りに得られる。
まず、抽出溶媒に、未硬化物、例えば1種の未反応の重合性化合物を、既知の各濃度で溶解させて各標準液を得る。この各標準液を、ガスクロマトグラフ分析装置を用いて分析して、ピーク位置(保持時間)およびピーク面積を測定する。そして、各濃度のピーク面積から未反応の重合性化合物についての検量線を作成することができる。
想定される各種の未硬化物のぞれぞれについて、上記の通りに検量線を作成することができる。
【0022】
〔品質保証の基準〕
本発明の有機感光体の検査方法によって得られた未硬化物の残存量は、有機感光体の品質保証の観点からは、50μg/mL以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の有機感光体の検査方法によれば、非破壊で未硬化物の残存量を検査することができ、その結果、作業者の安全性を確保することができる。また、有機感光体について、長期間にわたって使用した場合にも異常摩耗の発生が抑止される品質を保証をすることができる。また、非破壊検査であって、有機感光体の表面層を剥離する工程を要さないので、短い作業時間で簡単に検査することができる。
【0024】
〔有機感光体〕
本発明において被検査体とされる有機感光体は、最表面に硬化樹脂の表面層が形成されてなるものであって、例えば、導電性支持体上に、有機感光層および表面層がこの順に積層されてなるものとされる。具体的には下記(1)および(2)の層構成が挙げられる。
(1)導電性支持体上に、中間層、有機感光層として電荷発生層および電荷輸送層、並びに表面層がこの順に積層されてなる層構成。
(2)導電性支持体上に、中間層、有機感光層として電荷発生物質および電荷輸送物質を含む単層、並びに表面層がこの順に積層されてなる層構成。
【0025】
本発明において、有機感光体とは、有機感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能および電荷輸送機能の少なくとも一方の機能が有機化合物により発揮されて構成されるものをいい、公知の有機電荷発生物質または有機電荷輸送物質から構成される感光層を有する有機感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能とが高分子錯体により構成される感光層を有する有機感光体など公知の有機感光体全てを含むものをいう。
【0026】
導電性支持体としては、公知の種々のものを使用することができる。また、中間層、有機感光層(電荷発生層、電荷輸送層)としても、公知の種々の構成のものとすることができる。
【0027】
〔表面層〕
表面層は、硬化樹脂を含有し、必要に応じて金属酸化物微粒子や滑剤粒子、酸化防止剤あるいは硬化樹脂以外の樹脂をさらに含有するものとされている。
表面層の層厚は、例えば0.2〜10μmであり、好ましくは0.5〜5μmである。
【0028】
〔表面層の形成方法〕
表面層は、硬化樹脂を形成する重合性化合物、重合開始剤、および必要に応じて金属酸化物微粒子や滑剤粒子、酸化防止剤あるいは硬化樹脂以外の樹脂を公知の溶媒に添加して表面層形成用塗布液を調製し、この表面層形成用塗布液を有機感光層(電荷輸送層)の外周面に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜に光などのエネルギー線を照射して硬化処理を行うことにより、形成される。硬化処理を行うときは、酸素ガスによる硬化阻害が生じることを抑制するために、照射箇所すなわち硬化箇所の酸素ガス濃度を例えば500ppm以下とするよう、窒素ガスを供給しながら、光などのエネルギー線を照射することが好ましい。
【0029】
(重合性化合物)
硬化樹脂を形成するための重合性化合物としては、例えば、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタアクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、N−ビニルピロリドン系モノマーなどが挙げられる。これらの重合性化合物は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
重合性化合物は、少ない光量または短い時間での硬化が可能であることから、アクリロイル基(CH
2 =CHCO−)またはメタクリロイル基(CH
2 =CCH
3 CO−)の反応性基を有する化合物よりなることが好ましい。
【0031】
重合性化合物として、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有する化合物の具体例としては、下記例示化合物(1)〜(44)に示すものが挙げられる。また、以下に示す基数は、アクリロイル基またはメタクリロイル基の数である。
【0039】
上記例示化合物(1)〜(44)において、Rはアクリロイル基であり、R´はメタクリロイル基である。
【0040】
重合性化合物は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を2つ以上有する化合物よりなることがより好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基を3つ以上有する化合物よりなることが特に好ましい。
また、重合性化合物は、2種以上を組み合わせて用いることができるが、この場合においても、アクリロイル基またはメタクリロイル基を3つ以上有する化合物を50質量%以上用いることが好ましい。
【0041】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、硬化処理に用いるエネルギー線の種類に従って選択したものを用いればよく、例えば光重合開始剤などが挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(「イルガキュアー369」:BASFジャパン社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤;2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。
【0042】
その他の光重合開始剤としては、例えば、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(「イルガキュアー819」:BASFジャパン社製)、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。また、光重合促進効果を有する光重合促進剤を単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。光重合促進剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0043】
光重合開始剤としては、アルキルフェノン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物を用いることが好ましく、さらに好ましくはα−ヒドロキシアセトフェノン構造、あるいはアシルフォスフィンオキサイド構造を有するものである。
【0044】
(溶媒)
表面層形成用塗布液を作製するために用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
〔被検査体の作製例1〕
(1)導電性支持体の作製
ドラム状のアルミニウム支持体(外径100mm、長さ360mm)の表面を切削加工し、表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体〔1〕を作製した。
【0048】
(2)中間層形成工程
下記原料を分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式により10時間の分散を行い、中間層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・バインダー樹脂:ポリアミド樹脂「X1010」(ダイセル・エボニック社製)
1質量部
・溶媒:エタノール 20質量部
・金属酸化物微粒子:数平均一次粒径0.035μmの酸化チタン微粒子「SMT500SAS」(テイカ社製) 1.1質量部
上記導電性支持体〔1〕上に、この中間層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を110℃で20分間乾燥し、層厚2μmの中間層〔1〕を形成した。
【0049】
(3)有機感光層形成工程
(電荷発生層形成工程)
下記原料を分散機としてサンドミルを用いて、10時間の分散を行い、電荷発生層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・電荷発生物質:チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で5少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有するもの) 20質量部
・バインダー樹脂:ポリビニルブチラール樹脂「#6000−C」(電気化学工業社製)
10質量部
・溶媒:酢酸t−ブチル 700質量部
・溶媒:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300質量部
上記中間層〔1〕の上に、この電荷発生層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法によりで塗布して塗布膜を形成し、層厚0.3μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
【0050】
(電荷輸送層形成工程)
下記原料を混合して溶解し、電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・電荷輸送物質:下記式(A)に示す化合物 150質量部
・バインダー樹脂:ポリカーボネート樹脂「Z300」(三菱ガス化学社製)
300質量部
・溶媒:トルエン/テトラヒドロフラン=1/9体積% 2000質量部
・酸化防止剤:「Irganox1010」(日本チバガイギー社製) 6質量部
・レベリング剤:シリコーンオイル「KF−54」(信越化学社製) 1質量部
上記電荷発生層〔1〕上に、この電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を浸漬塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を120℃で70分間乾燥し、層厚20μmの電荷輸送層〔1〕を形成した。
【0051】
【化8】
【0052】
(4)表面層形成工程
下記重合性化合物、溶媒および金属酸化物微粒子を遮光下で、分散機としてサンドミルを用いて10時間分散した後、下記の光重合開始剤を加え、遮光下で混合、撹拌して溶解させて、表面層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・重合性化合物:例示化合物(42) 100質量部
・溶媒:sec−ブタノール 400質量部
・溶媒:メチルイソプロピルケトン 100質量部
・金属酸化物微粒子:表面処理剤(CH
2 =C(CH
3 )COO(CH
2 )
2 Si(OCH
3 )
3 )によって表面処理された数平均一次粒径20nmの酸化スズ微粒子 100質量部
・光重合開始剤:「イルガキュアー819」(BASFジャパン社製) 10質量部
この表面層形成用塗布液〔1〕を上記電荷輸送層〔1〕上に、円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布して塗布膜を形成した。この塗布膜を室温で20分間乾燥した後、窒素流量が13.5L/minの窒素気流下において、光源としてキセノンランプを用い、当該光源と塗布膜の表面との離間距離を5mmとして、ランプ出力4kWで波長365nmの光(強度:4000mW/cm
2 、塗布膜における光の照射強度:1800mW/cm
2)を18秒間照射することにより、層厚3.5μmの表面層〔1〕を形成して有機感光体を作製した。これを被検査体〔1〕とする。
【0053】
〔被検査体の作製例2a〜2d〕
被検査体の作製例1において、窒素流量を2.0L/minとして紫外線を照射したことの他は同様にして、有機感光体を作製した。これを4本作製した。各々を被検査体〔2a〕〜〔2d〕とする。
【0054】
<実施例1>
以上のようにして得られた被検査体〔1〕の下端10mmを、抽出溶媒に20℃で20分間浸漬させて被検査液を得た。
抽出溶媒は、100質量%エタノール溶液を浸漬面積1cm
2 当たり2mLになるように用いた。
この被検査液についてガスクロマトグラフ分析を行い、未硬化物の残存の有無またはその残存量を検査した。結果を表1に示す。
【0055】
<実施例2>
以上のようにして得られた被検査体〔2a〕の下端10mmを、抽出溶媒に20℃で20分間浸漬させて被検査液を得た。
抽出溶媒は、100質量%エタノール溶液を浸漬面積1cm
2 当たり2mLになるように用いた。
この被検査液についてガスクロマトグラフ分析を行い、未硬化物の残存の有無またはその残存量を検査した。結果を表1に示す。
【0056】
<実施例3>
以上のようにして得られた被検査体〔2b〕の下端10mmを、抽出溶媒に60℃で20分間浸漬させて被検査液を得た。
抽出溶媒は、20質量%エタノール水溶液を浸漬面積1cm
2 当たり2mLになるように用いた。
この被検査液についてガスクロマトグラフ分析を行い、未硬化物の残存の有無またはその残存量を検査した。結果を表1に示す。
【0057】
<実施例4>
以上のようにして得られた被検査体〔2c〕の下端10mmを、抽出溶媒に20℃で20分間浸漬させて被検査液を得た。
抽出溶媒は、100質量%イソプロパノール溶液を浸漬面積1cm
2 当たり2mLになるように用いた。
この被検査液についてガスクロマトグラフ分析を行い、未硬化物の残存の有無またはその残存量を検査した。結果を表1に示す。
【0058】
<実施例5>
以上のようにして得られた被検査体〔2d〕の下端10mmを、抽出溶媒に20℃で20分間浸漬させて被検査液を得た。
抽出溶媒は、100質量%アセトン溶液を浸漬面積1cm
2 当たり2mLになるように用いた。
この被検査液についてガスクロマトグラフ分析を行い、未硬化物の残存の有無またはその残存量を検査した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の結果から明らかなように、本発明に係る検査方法によれば、非破壊で未硬化物の残存の有無またはその残存量を検査することができる。
表1において、「作業時間」とは、被検査体である有機感光体を抽出溶媒に浸漬させ始めてから、被検査液のガスクロマトグラフ分析が終了するまでの時間をいう。なお、表面層を剥離してから未硬化物を抽出して分析する場合には、90分間以上の作業時間を要する。