(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のセパレータの厚みを薄くした蓄電素子では、充放電を行った場合に、一時的に出力が低下する場合がある。特に、高レートサイクルで繰り返し充放電を行った場合、従来の蓄電素子では、一時的に出力が大きく低下してしまう場合がある。このような一時的な出力低下(以下、一過性の出力劣化という)は、蓄電素子の充放電を低レートサイクルに切り替えることや、一定時間充放電を行わないことで改善することが可能であるものの、高レートサイクルでの充放電条件以外の運転条件に変更する必要がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、セパレータの厚みを薄くした場合でも一過性の出力劣化を抑制することができる蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置されるセパレータと、非水電解質とを含む蓄電素子であって、前記負極は、負極活物質として難黒鉛化性炭素を含み、前記セパレータは、厚みが10〜30μmであって、透気度が10〜180秒/100ccである。ここで、数値範囲がA〜Bとは、A以上、B以下であることを示している。つまり、10〜30μmとは、10μm以上、30μm以下であることを示しており、10〜180秒/100ccとは、10秒/100cc以上、180秒/100cc以下であることを示している。以下においても同様である。
【0007】
これによれば、蓄電素子において、負極は負極活物質として難黒鉛化性炭素を含み、セパレータは厚みが10〜30μmであって透気度が10〜180秒/100ccである。ここで、セパレータの厚みを薄くすることにより、高レートサイクルでの充放電時に当該セパレータが負極の膨張収縮の影響を受けやすくなり、高レートサイクル後に一過性の出力劣化が生じる。そして、本願発明者らは、鋭意検討と実験の結果、セパレータの厚みを薄くした場合でも、上記の蓄電素子の構成において、一過性の出力劣化を抑制することができることを見出した。つまり、負極活物質として難黒鉛化性炭素を用い、セパレータの厚みを10〜30μmの範囲内、透気度を10〜180秒/100ccの範囲内とした場合に、セパレータが負極から受ける影響を低減し、蓄電素子における一過性の出力劣化を抑制することができることを見出した。これにより、セパレータの厚みを薄くした蓄電素子において、一過性の出力劣化を抑制することができる。
【0008】
また、前記難黒鉛化性炭素は、平均粒子径D50が2〜6μmであることにしてもよい。
【0009】
ここで、本願発明者らは、鋭意検討と実験の結果、セパレータの厚みを薄くした蓄電素子において、負極の難黒鉛化性炭素の平均粒子径D50が2μmよりも小さい場合に釘刺し時の温度が上昇し、平均粒子径D50が6μmよりも大きい場合に低温時の入力密度が低下することを見出した。このため、当該蓄電素子において、負極活物質として平均粒子径D50が2〜6μmの難黒鉛化性炭素を用いた場合に、一過性の出力劣化を抑制しつつ、釘刺し時の温度上昇を抑制し、低温時の入力密度の低下も抑制することができる。
【0010】
また、前記セパレータは、厚みが22μm以下であることにしてもよい。
【0011】
ここで、セパレータの厚みが厚くなると、電解液の量を多くする必要が生じ、容量密度や入出力密度が低下する。そして、本願発明者らは、鋭意検討と実験の結果、蓄電素子において、セパレータの厚みが22μmよりも大きい場合に、容量密度及び低温時の入力密度が低下することを見出した。このため、当該蓄電素子において、セパレータの厚みを22μm以下とすることで、一過性の出力劣化を抑制しつつ、容量密度及び低温時の入力密度を向上させることができる。
【0012】
また、前記セパレータは、厚みが20μm以上であることにしてもよい。
【0013】
ここで、本願発明者らは、鋭意検討と実験の結果、セパレータの厚みを薄くした蓄電素子において、セパレータの厚みが20μmよりも小さい場合に、釘刺し時の温度が上昇することを見出した。このため、当該蓄電素子において、セパレータの厚みを20μm以上とすることで、一過性の出力劣化を抑制しつつ、釘刺し時の温度上昇を抑制することができる。
【0014】
また、前記セパレータは、透気度が50秒/100cc以上であることにしてもよい。
【0015】
ここで、本願発明者らは、鋭意検討と実験の結果、セパレータの厚みを薄くした蓄電素子において、セパレータの透気度が50秒/100ccよりも小さい場合に、釘刺し時の温度が上昇し、また微小短絡が発生する傾向にあることを見出した。このため、当該蓄電素子において、セパレータの透気度を50秒/100cc以上とすることで、一過性の出力劣化を抑制しつつ、釘刺し時の温度上昇を抑制し、微小短絡の発生も抑制することができる。
【0016】
また、前記セパレータは、透気度が150秒/100cc以下であることにしてもよい。
【0017】
ここで、本願発明者らは、鋭意検討と実験の結果、セパレータの厚みを薄くした蓄電素子において、セパレータの透気度が150秒/100cc以下の場合に、さらに、一過性の出力劣化を抑制することができることを見出した。このため、当該蓄電素子において、セパレータの透気度を150秒/100cc以下とすることで、一過性の出力劣化を抑制することができる。
【0018】
また、前記セパレータは、基材層と無機フィラー層とを有することにしてもよい。
【0019】
ここで、本願発明者らは、鋭意検討と実験の結果、セパレータの厚みを薄くした蓄電素子において、セパレータが無機フィラー層を有する場合に、釘刺し時の温度を低下させることができることを見出した。このため、当該蓄電素子において、セパレータが無機フィラー層を有する構成とすることで、一過性の出力劣化を抑制しつつ、釘刺し時の温度を低下させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、セパレータの厚みを薄くした蓄電素子において、一過性の出力劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。なお、以下において、数値範囲がA〜Bとは、A以上、B以下であることを示す。
【0023】
まず、蓄電素子10の構成について、説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10の外観斜視図である。なお、同図は、容器内部を透視した図となっている。
図2は、本発明の実施の形態に係る電極体400の構成を示す斜視図である。なお、同図は、
図1に示した電極体400の捲回状態を一部展開した図である。
【0025】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。例えば、蓄電素子10は、高レートサイクルの充放電を行うハイブリッド電気自動車(Hybrid
Electric Vehicle、HEV)に使用される二次電池である。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0026】
これらの図に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子300とを備え、容器100は、上壁であるふた板110を備えている。また、容器100内方には、電極体400と、正極集電体120と、負極集電体130とが配置されている。なお、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。
【0027】
容器100は、金属からなる矩形筒状で底を備える筐体本体と、当該筐体本体の開口を閉塞する金属製のふた板110とで構成されている。また、容器100は、電極体400等を内部に収容後、ふた板110と筐体本体とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。
【0028】
電極体400は、正極と負極とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。具体的には、電極体400は、
図3に示すように、負極と正極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものを全体が長円形状となるように捲回されて形成されている。なお、同図では、電極体400の形状としては長円形状を示したが、円形状または楕円形状でもよい。また、電極体400の形状は捲回型に限らず、平板状極板を積層した形状でもよい。電極体400の詳細な構成については、後述する。
【0029】
正極端子200は、電極体400の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、電極体400の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体400に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体400に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。
【0030】
正極集電体120は、電極体400の正極と容器100の側壁との間に配置され、正極端子200と電極体400の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電体120は、電極体400の正極と同様、アルミニウムで形成されている。また、負極集電体130は、電極体400の負極と容器100の側壁との間に配置され、負極端子300と電極体400の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、負極集電体130は、電極体400の負極と同様、銅で形成されている。
【0031】
また、容器100の内部に封入される非水電解質(電解液)は、様々なものを選択することができる。例えば、非水電解質の有機溶媒として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、ジオキソラン、フルオロエチルメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールジプロピオネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルイソプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、アセトニトリル、フルオロアセトニトリル、エトキシペンタフルオロシクロトリホスファゼン、ジエトキシテトラフルオロシクロトリホスファゼン、フェノキシペンタフルオロシクロトリホスファゼンなどのアルコキシ及びハロゲン置換環状ホスファゼン類または鎖状ホスファゼン類、リン酸トリエチル、リン酸トリメチル、リン酸トリオクチルなどのリン酸エステル類、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチルなどのホウ酸エステル類、N−メチルオキサゾリジノン、N−エチルオキサゾリジノン等の非水溶媒が挙げられる。また、固体電解質を用いる場合は、高分子固体電解質として有孔性高分子固体電解質膜を用い、高分子固体電解質にさらに電解液を含有させることで良い。また、ゲル状の高分子固体電解質を用いる場合には、ゲルを構成する電解液と、細孔中等に含有されている電解液とは異なっていてもよい。但し、HEV用途のように高い出力が要求される場合は、固体電解質や高分子固体電解質を用いるよりも非水電解質を単独で用いるほうがより好ましい。
【0032】
また、非水電解質に含まれる電解質塩としては、特に制限はなく、LiClO
4、LiBF
4、LiAsF
6、LiPF
6、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)、LiSCN、LiBr、LiI、Li
2SO
4、Li
2B
10Cl
10、NaClO
4、NaI、NaSCN、NaBr、KClO
4、KSCN等のイオン性化合物及びそれらの2種類以上の混合物などが挙げられる。
【0033】
蓄電素子10においては、これらの有機溶媒と非水電解質とを組み合わせて、非水電解液として使用する。なお、これらの非水電解液の中では、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネートを混合して使用すると、リチウムイオンの伝導度が極大となるために好ましい。
【0034】
次に、電極体400の詳細な構成について、説明する。
【0035】
図3は、本発明の実施の形態に係る電極体400の構成を示す断面図である。具体的には、同図は、
図2に示された電極体400の捲回状態が展開された部分をA−A断面で切断した場合の断面を示す図である。
【0036】
同図に示すように、電極体400は、正極410と負極420と2つのセパレータ430とが積層されて形成されている。
【0037】
正極410は、アルミニウムからなる長尺帯状の正極基材シートの表面に、正極活物質を含む正極活物質層が形成されたものである。本実施の形態では、正極活物質層の面積は、0.3〜100m
2であるのが好ましい。
【0038】
なお、本発明に係る蓄電素子10に用いられる正極410は、特に従来用いられてきたものと異なるところはなく、通常用いられているものが使用できる。例えば、正極活物質としては、公知の化合物を特に限定なく使用できるが、その中でも、Li
aNi
bM1
cM2
dW
xNb
yZr
zO
2(ただし、式中、a、b、c、d、x、y、zは、0≦a≦1.2、0≦b≦1、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1、0≦z≦0.1、b+c+d=1を満たし、M1、M2は、Mn、Ti、Cr、Fe、Co、Cu、Zn、Al、Ge、Sn及びMgからなる群から選択される少なくとも一種の元素である)で表される化合物や、LiNi
xMn
yCo
zO
2(x+y+z=1、x<1、y<1、z<1)で表される化合物が用いられるのが好ましい。
【0039】
負極420は、銅からなる長尺帯状の負極基材シートの表面に、負極活物質を含む負極活物質層が形成されたものである。本実施の形態では、負極活物質として、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)が用いられる。そして、この難黒鉛化性炭素は、平均粒子径D50が2〜6μmであるのが好ましい。
【0040】
なお、平均粒子径D50(50%粒子径またはメディアン径とも呼ばれる)とは、粒子径の粒度分布において、体積累積頻度が50%に達する粒子径であり、より具体的には、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる場合の径である。
【0041】
セパレータ430は、正極410と負極420との間に配置される長尺帯状のセパレータである。このセパレータ430が、正極410及び負極420とともに長手方向(Y軸方向)に捲回され複数層積層されることで、電極体400が形成される。このセパレータ430の構成について、以下に詳細に説明する。
【0042】
図4は、本発明の実施の形態に係るセパレータ430の構成を示す断面図である。具体的には、同図は、
図3に示されたセパレータ430を拡大して示す図である。
【0043】
同図に示すように、セパレータ430は、基材層431及び無機フィラー層432を備えている。
【0044】
基材層431は、セパレータ430の本体であり、樹脂多孔膜全般が使用できる。例えば、基材層431としては、ポリマー、天然繊維、炭化水素繊維、ガラス繊維もしくはセラミック繊維の織物または不織繊維を有する樹脂多孔膜が用いられる。また、当該樹脂多孔膜は、好ましくは、織物または不織ポリマー繊維を有する。特に、当該樹脂多孔膜は、ポリマー織物またはフリースを有するかまたはこのような織物またはフリースであるのが好ましい。ポリマー繊維としては、好ましくは、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)及び/またはポリオレフィン(PO)、例えばポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)またはこのようなポリオレフィンの混合物や複合膜から選択したポリマーの非電導性繊維を有する。また、当該樹脂多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜、不織布、紙等であってもよく、好ましくはポリオレフィン微多孔膜である。なお、電池特性への影響を考慮すると、基材層431の厚みは5〜30μm程度であるのが好ましい。
【0045】
無機フィラー層432は、基材層431の少なくとも一面に配され、基材層431上に設けられた層である。なお、同図では、無機フィラー層432は、基材層431の上面に塗工されているが、基材層431の下面、または両側に塗工されていてもよい。また、無機フィラー層432は、基材層431上でなくとも正極410と負極420との間に配置されていればよいが、同図のように基材層431上に設けられるのが好ましい。
【0046】
具体的には、無機フィラー層432は、耐熱粒子として、耐熱性の無機粒子を含む耐熱塗工層である。当該無機粒子としては、合成品及び天然産物のいずれでも、特に限定なく用いることができる。例えば、当該無機粒子としては、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、オーディナイト、バーチェリン、アメサイト、ケリアイト、フレイポナイト、ブリンドリアイト、パイロフィライト、サポナイト、ソーコナイト、シンホルダイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、バーミキュライト、黒雲母、金雲母、鉄雲母、イーストナイト、シデロフィライトテトラフェリ鉄雲母、鱗雲母、ポリリシオナイト、白雲母、セラドン石、鉄セラドン石、鉄アルミノセラドン石、アルミノセラドン石、砥部雲母、ソーダ雲母、クリントナイト、木下、ビテ雲母、真珠雲母、クリノクロア、シャモサイト、ペナンタイト、ニマイト、ベイリクロア、ドンバサイト、クッケアイト、スドーアイトなどが挙げられる。
【0047】
また、無機フィラー層432は、無機粒子及びバインダを溶媒に分散させた溶液を基材層431に塗布することによって形成されることが望ましい。このバインダとしては、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンまたはポリカーボネートを挙げることができる。特に、本実施の形態で用いるバインダは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはスチレン−ブタジエンゴム(SBR)であるのが好ましい。なお、正極410または負極420において使用されるバインダについても、上記と同様のバインダが使用される。
【0048】
ここで、本実施の形態では、セパレータ430は、厚み(同図のZ軸方向の厚み)が10〜30μmの範囲内である薄肉化されたセパレータである。また、当該厚みは、26μm以下であるのが好ましく、22μm以下であるのがより好ましく、20μm以上であるのがさらに好ましい。
【0049】
また、セパレータ430の基材層431は、透気度が10〜180秒/100ccである。また、当該透気度は、50秒/100cc以上であるのが好ましい。ここで、透気度とは、一定面積の膜を空気100ccが通過するのに要する時間である。この透気度の測定方法については、後述する。
【0050】
なお、セパレータ430は、無機フィラー層432を備えていることが好ましいが、無機フィラー層432を備えていなくともよい。この場合、セパレータ430の透気度が10〜180秒/100ccであり、また、当該透気度が50秒/100cc以上であるのが好ましい。
【0051】
次に、上記の構成を有する蓄電素子10が、一過性の出力劣化の抑制等を行うことができることについて、詳細に説明する。
【0052】
[実施例]
まず、蓄電素子10の製造方法について説明する。具体的には、以下のようにして、後述する実施例1〜24及び比較例1〜5における蓄電素子としての電池の作製を行った。なお、実施例1〜24は、いずれも、上述した実施の形態に係る蓄電素子10に関するものである。
【0053】
(1−1)正極の作製
正極活物質として、LiCoO
2を用いた。また、導電助剤にはアセチレンブラック、バインダにはPVDFを用い、正極活物質が90質量%、導電助剤が5質量%、バインダが5質量%となるように配合した。また、箔には、厚さ20μmのアルミニウム箔を用い、正極活物質、導電助剤、バインダにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加え混練し箔状に塗布乾燥後、プレスを行った。なお、正極活物質層の面積が以下の表1〜5に示す値になるように正極を作製した。
【0054】
(1−2)負極の作製
負極活物質として、以下の表1〜5に示す種類及び粒子径の物質を用いた。また、バインダにはPVDFを用い、負極活物質が95質量%、バインダが5質量%となるように配合した。また、箔には、厚み15μmの銅箔を用い、負極活物質、バインダにNMPを加え混練し箔状に塗布乾燥後、プレスを行った。
【0055】
(1−3)セパレータの作製
基材層として、以下の表1〜5に示す厚み及び透気度のポリオレフィン製微多孔膜を使用した。また、実施例7〜9においては、無機粒子(アルミナ粒子)、バインダ(SBR)、増粘剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム、CMC)、溶剤(イオン交換水)及び界面活性剤を、アルミナ粒子とバインダの比率が97:3となるように混合し、コート剤を作製した。そして、コート剤を基材層上にグラビア法にてコートし塗工後、80℃で乾燥させることにより、以下の表1に示す厚みの無機フィラー層を備えた無機層含有セパレータを作製した。
【0056】
(1−4)非水電解質の生成
非水電解質には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒に、電解質塩としてLiPF
6を添加した。
【0057】
(1−5)電池の作製
正極、負極及びセパレータを積層して捲回後、容器に挿入し、非水電解質を注入して封口した。なお、実施例7〜9においては、正極、負極及びセパレータを、セパレータの無機フィラー層が正極に対向するように積層して捲回した。
【0058】
次に、以下の数値を求めて、電池の評価試験を行った。
【0059】
(2−1)容量密度
25℃にて、電池を4Aで4.1Vまで定電流充電したのち、総充電時間が3時間となるまで4.1Vで定電圧充電を行う。その後、2.4Vまで定電流放電し、そのときの放電容量をQ1とする。この放電容量Q1を電池質量で除することにより、容量密度を算出する。つまり、容量密度は、電池の単位質量当たりに蓄えられる電気量である。そして、実施例1における容量密度を100%とし、実施例2〜24及び比較例1〜5における容量密度を実施例1に対する百分率で表す。
【0060】
(2−2)一過性劣化率
上記の容量密度試験にて求めた放電容量Q1を1時間で放電するときの電流値を1CAとする。放電状態(SOC0%)の電池を、25℃にて0.5CAで1時間充電することにより、SOC50%に調整する。この電池を20CAで10秒間放電し、以下の式1により、サイクル前抵抗を求める。
【0061】
抵抗={(通電前電圧)−(10秒目の電圧)}/電流値 (式1)
【0062】
再度SOC50%に電池を調整する。25℃雰囲気で、10CAでの30秒間の連続放電及び30秒間の連続充電を含み1サイクル2分以内のサイクルを1000サイクル行う。サイクル終了後2時間以内に、サイクル後の電池を20CAで10秒間放電し、上記の式1によりサイクル後抵抗を求める。サイクル前抵抗をD1、サイクル後抵抗をD2とし、以下の式2により一過性劣化率を算出する。
【0063】
一過性劣化率(%)=D2/D1×100 (式2)
【0064】
つまり、一過性劣化率は、電池の一過性の出力劣化を示す指標である。そして、実施例1における一過性劣化率を100%とし、実施例2〜24及び比較例1〜5における一過性劣化率を実施例1に対する百分率で表す。
【0065】
(2−3)低温入力密度
放電状態(SOC0%)の電池を、25℃にて0.5CAで1.6時間充電することにより、SOC80%に調整する。−10℃雰囲気で、50CAで上限電圧4.3Vの定電圧充電を1秒間行う。1秒目の電流値が設定電流の上限値になっている場合は、設定電流の上限値を上げて実施する。以下の式3により、入力Wを算出する。
【0066】
W=(1秒目の電圧)×(1秒目の電流) (式3)
【0067】
この入力Wを電池質量で除することにより、入力密度を算出する。そして、実施例1における入力密度を100%とし、実施例2〜24及び比較例1〜5における入力密度を実施例1に対する百分率で表す。
【0068】
(2−4)微小短絡発生率
電池化成後に電池定格容量の20%まで充電し、25℃にて20日間保存した場合に、保存前の電池電圧と保存後の電池電圧との差(電池電圧低下)が0.1V以上であった電池の割合(%)を微小短絡発生率とする。なお、本実施例では、3.1Vの定電圧充電を3時間実施した後、5分経過後から12時間経過後までに電圧測定し、25℃にて20日間保存した後に再度電圧測定を行い、その差異を電池電圧低下とした。そして、1水準あたり50セルの試験を行い、当該割合を計算して微小短絡発生率とした。
【0069】
(2−5)釘刺し温度上昇率
放電状態(SOC0%)の電池を、25℃にて0.5CAで1.6時間充電することにより、SOC80%に調整する。1mm径のステンレス製の釘を、電池の長側面中央部に貫通させる。貫通後の電池表面温度の最大値を測定し、貫通前の電池表面温度との差を求めることにより温度上昇幅を算出する。そして、実施例1における温度上昇幅を100%とし、実施例2〜24及び比較例1〜5における温度上昇幅を実施例1に対する百分率で表す。
【0070】
次に、以下のようにして、セパレータ(基材層)の透気度の測定を行った。
【0071】
(3−1)前処理
セパレータを電池から取り出し、速やかにジメチルカーボネート(DMC)にて洗浄を行い、その後重量変化がなくなるまで乾燥させる。
【0072】
(3−2)セパレータ全体透気度試験
前処理後のセパレータについて、ガーレー法(JIS8119)規定面積あたり100ccの空気が透過する時間を計測することで、セパレータ全体の透気度(セパレータ全透気度)を取得する。セパレータが無機フィラー層を有していない(基材層のみ有している)場合には、このセパレータ全透気度がセパレータの基材層の透気度(セパレータ基材透気度)となる。
【0073】
(3−3)無機層含有セパレータの基材透気度取得方法
セパレータを水:エタノールが50:50(vol%)の溶液内に浸漬し、超音波洗浄を実施する。超音波洗浄後に無機フィラー層側を光学顕微鏡にて観察し、無機フィラー層の残存物がなくなるまで繰り返し超音波洗浄を行う。このとき、溶液の温度が35度を超えないようにして超音波洗浄を実施する。そして、無機フィラー層がなくなった超音波洗浄後のセパレータの透気度を測定し、セパレータ基材透気度とする。
【0074】
以上のようにして取得した電池の一過性劣化率、容量密度、低温入力密度、微小短絡発生率、釘刺し温度上昇率及びセパレータ基材透気度を、以下の表1〜表5に示す。つまり、以下の表1〜表5では、実施例1〜24及び比較例1〜5について、セパレータの厚みと、透気度と、正極活物質層の面積と、負極活物質の種類及び粒子径とを変化させた場合の、電池の一過性劣化率、容量密度、低温入力密度、微小短絡発生率及び釘刺し温度上昇率を比較している。
【0075】
まず、以下の表1を用いて、実施例1〜9及び比較例1について説明する。以下の表1に示すように、実施例1〜9及び比較例1は、セパレータの透気度と、正極活物質層の面積と、負極活物質の種類及び粒子径とを固定し、セパレータの厚みを変化させた場合の電池の一過性劣化率、容量密度、低温入力密度、微小短絡発生率及び釘刺し温度上昇率を示したものである。
【0076】
なお、表1における「セパレータ全厚み」はセパレータ全体の厚みを示し、「セパレータ無機層厚み」はセパレータの無機フィラー層の厚みを示し、「セパレータ基材層厚み」はセパレータの基材層の厚みを示している。つまり、「セパレータ全厚み」は「セパレータ無機層厚み」と「セパレータ基材層厚み」との合計値であり、「セパレータ無機層厚み」が「0」の場合には、セパレータは無機フィラー層を有していない。また、「セパレータ基材透気度」はセパレータの基材層の透気度を示しており、セパレータが無機フィラー層を有していない場合には、「セパレータ基材透気度」はセパレータの全体の透気度を示している。また、「負極種/D50粒径」は、負極活物質の種類と粒子径とを示しており、「HC/粒径5」は、負極活物質の種類が難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)であり、当該難黒鉛化性炭素の平均粒子径D50が5μmであることを示している。以下の表2〜表4においても同様である。
【0078】
また、
図5は、セパレータの厚みを変化させた場合の評価試験結果を示す図である。具体的には、同図は、表1における「セパレータ全厚み」を横軸とし、「一過性劣化率」、「容量密度」、「低温入力密度」及び「釘刺し温度上昇率」(いずれも実施例1に対する比率(%)を示す)を縦軸として、グラフ化したものである。
【0079】
上記の表1及び
図5に示すように、セパレータの厚み(セパレータ全厚み、またはセパレータ基材層厚み)が10〜30μmの場合に、一過性劣化率の増加や、微小短絡発生率及び釘刺し温度上昇率の増加を抑制することができている。また、セパレータの厚みが22μm以下の場合に、さらに容量密度及び低温入力密度の低下を抑制することができている。また、セパレータの厚みが20μm以上の場合に、釘刺し温度上昇率の増加をさらに抑制することができている。このため、本実施の形態では、セパレータ430の厚みは、10〜30μmであり、また、22μm以下であるのが好ましく、20μm以上であるのがさらに好ましい。
【0080】
また、実施例1と実施例7〜9とを比較すると、セパレータが無機フィラー層を有している方が、釘刺し温度上昇率を低下させることができている。このため、本実施の形態では、セパレータ430は、無機フィラー層432を有しているのが好ましい。
【0081】
次に、以下の表2を用いて、実施例1、10〜14及び比較例2、3について説明する。以下の表2に示すように、実施例1、10〜14及び比較例2、3は、セパレータの厚みと、正極活物質層の面積と、負極活物質の種類及び粒子径とを固定し、セパレータ基材透気度を変化させた場合の電池の一過性劣化率、容量密度、低温入力密度、微小短絡発生率及び釘刺し温度上昇率を示したものである。なお、いずれもセパレータが無機フィラー層を有していないため、表2における「セパレータ基材透気度」は、セパレータ全透気度を示している。
【0083】
また、
図6は、セパレータの透気度を変化させた場合の評価試験結果を示す図である。具体的には、同図は、表2における「セパレータ基材透気度」を横軸とし、「一過性劣化率」、「容量密度」、「低温入力密度」及び「釘刺し温度上昇率」(いずれも実施例1に対する比率(%)を示す)を縦軸として、グラフ化したものである。
【0084】
上記の表2及び
図6に示すように、セパレータ基材透気度(セパレータ全透気度)が180秒/100cc以下の場合に、一過性劣化率の増加を抑制することができている。また、セパレータの透気度が10秒/100ccよりも小さい場合には、取扱いが困難なため生産性が低下することなどから、セパレータ基材透気度(セパレータ全透気度)は、10秒/100cc以上が好ましい。
【0085】
また、セパレータ基材透気度(セパレータ全透気度)が150秒/100cc以下の場合に、さらに一過性劣化率の増加を抑制することができている。また、セパレータ基材透気度(セパレータ全透気度)が50秒/100cc以上の場合に、さらに微小短絡発生率及び釘刺し温度上昇率の増加を抑制することができている。
【0086】
このため、本実施の形態では、セパレータ430の基材層431(またはセパレータ430)の透気度が10〜180秒/100ccであり、また、当該透気度が50秒/100cc以上であるのが好ましく、さらに、当該透気度が150秒/100cc以下であるのが好ましい。
【0087】
次に、以下の表3を用いて、実施例1、15〜18について説明する。以下の表3に示すように、実施例1、15〜18は、セパレータの厚み及び透気度と、正極活物質層の面積と、負極活物質の種類とを固定し、負極活物質の粒子径を変化させた場合の電池の一過性劣化率、容量密度、低温入力密度、微小短絡発生率及び釘刺し温度上昇率を示したものである。
【0089】
また、
図7は、負極活物質の粒子径を変化させた場合の評価試験結果を示す図である。具体的には、同図は、表3における「D50粒径」を横軸とし、「一過性劣化率」、「容量密度」、「低温入力密度」及び「釘刺し温度上昇率」(いずれも実施例1に対する比率(%)を示す)を縦軸として、グラフ化したものである。
【0090】
上記の表3及び
図7に示すように、負極活物質の粒子径(平均粒子径D50)が2μm以上の場合に、釘刺し温度上昇率の増加を抑制することができている。また、負極活物質の粒子径(平均粒子径D50)が6μm以下の場合に、低温入力密度の低下を抑制することができ、また、一過性劣化率の増加を抑制することもできている。このため、本実施の形態では、負極活物質の平均粒子径D50は、2〜6μmであるのが好ましい。
【0091】
次に、以下の表4を用いて、実施例1、19〜24について説明する。以下の表4に示すように、実施例1、19〜24は、セパレータの厚み及び透気度と、負極活物質の種類及び粒子径とを固定し、正極活物質層の面積を変化させた場合の電池の一過性劣化率、容量密度、低温入力密度、微小短絡発生率及び釘刺し温度上昇率を示したものである。
【0093】
また、
図8A及び
図8Bは、正極活物質層の面積を変化させた場合の評価試験結果を示す図である。具体的には、これらの図は、表4における「正極活物質層総面積」を横軸とし、「一過性劣化率」、「容量密度」、「低温入力密度」及び「釘刺し温度上昇率」(いずれも実施例1に対する比率(%)を示す)を縦軸として、横軸のレンジを変えてグラフ化したものである。
【0094】
上記の表4及び
図8Aに示すように、正極活物質層の総面積が0.3m
2以上の場合に、容量密度及び低温入力密度の低下を抑制することができている。また、上記の表4及び
図8Bに示すように、正極活物質層の総面積が100m
2以下の場合に、一過性劣化率の増加を抑制することができている。なお、正極活物質層の総面積が0.3m
2よりも小さい場合には、一過性の出力劣化という本願発明の課題が起こりにくく、また、正極活物質層の総面積を100m
2よりも大きくすると、蓄電素子の生産性が低下するため、これらの観点からも、正極活物質層の総面積は0.3〜100m
2であるのが好ましい。一過性の出力劣化をさらに抑制する観点から、正極活物質層の総面積は0.3〜10m
2がさらに好ましい。
【0095】
次に、以下の表5を用いて、実施例1及び比較例4、5について説明する。以下の表5に示すように、実施例1及び比較例4、5は、セパレータの厚み及び透気度と、正極活物質層の面積と、負極活物質の粒子径とを固定し、負極活物質の種類を変化させた場合の電池の一過性劣化率、容量密度、低温入力密度、微小短絡発生率及び釘刺し温度上昇率を示したものである。
【0097】
また、
図9は、負極活物質の種類を変化させた場合の評価試験結果を示す図である。具体的には、同図は、表5における「負極種」を横軸とし、「一過性劣化率」、「容量密度」、「低温入力密度」及び「釘刺し温度上昇率」(いずれも実施例1に対する比率(%)を示す)を縦軸として、グラフ化したものである。
【0098】
上記の表5及び
図9に示すように、負極活物質の種類が難黒鉛化性炭素(「HC」)の場合に、一過性劣化率の増加、容量密度及び低温入力密度の低下、及び釘刺し温度上昇率の増加を抑制することができている。なお、比較例4における「SC」は易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)を示し、比較例5における「Gra」は黒鉛(グラファイト)を示している。これにより、本実施の形態では、負極活物質として、難黒鉛化性炭素が用いられる。
【0099】
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、負極420は負極活物質として難黒鉛化性炭素を含み、セパレータ430は厚みが10〜30μmであって透気度が10〜180秒/100ccである。ここで、セパレータ430の厚みを薄くすることにより、高レートサイクルでの充放電時にセパレータ430が負極420の膨張収縮の影響を受けやすくなり、高レートサイクル後に一過性の出力劣化が生じる。そして、本願発明者らは、鋭意検討と実験の結果、セパレータ430の厚みを薄くした場合でも、蓄電素子10の構成において、一過性の出力劣化を抑制することができることを見出した。つまり、負極活物質として難黒鉛化性炭素を用い、セパレータ430の厚みを10〜30μmの範囲内、透気度を10〜180秒/100ccの範囲内とした場合に、セパレータ430が負極420から受ける影響を低減し、蓄電素子10における一過性の出力劣化を抑制することができることを見出した。これにより、セパレータ430の厚みを薄くした蓄電素子10において、一過性の出力劣化を抑制することができる。
【0100】
また、本願発明者らは、蓄電素子10において、負極420の難黒鉛化性炭素の平均粒子径D50が2μmよりも小さい場合に釘刺し時の温度が上昇し、平均粒子径D50が6μmよりも大きい場合に低温時の入力密度が低下することを見出した。このため、蓄電素子10において、負極活物質として平均粒子径D50が2〜6μmの難黒鉛化性炭素を用いた場合に、一過性の出力劣化を抑制しつつ、釘刺し時の温度上昇を抑制し、低温時の入力密度の低下も抑制することができる。
【0101】
また、セパレータ430の厚みが厚くなると、電解液の量を多くする必要が生じ、容量密度や入出力密度が低下する。そして、本願発明者らは、蓄電素子10において、セパレータ430の厚みが22μmよりも大きい場合に、容量密度及び低温時の入力密度が低下することを見出した。このため、蓄電素子10において、セパレータ430の厚みを22μm以下とすることで、一過性の出力劣化を抑制しつつ、容量密度及び低温時の入力密度を向上させることができる。
【0102】
また、本願発明者らは、蓄電素子10において、セパレータ430の厚みが20μmよりも小さい場合に、釘刺し時の温度が上昇することを見出した。このため、蓄電素子10において、セパレータ430の厚みを20μm以上とすることで、一過性の出力劣化を抑制しつつ、釘刺し時の温度上昇を抑制することができる。
【0103】
また、本願発明者らは、蓄電素子10において、セパレータ430の透気度が50秒/100ccよりも小さい場合に、釘刺し時の温度が上昇し、また微小短絡が発生する傾向にあることを見出した。このため、蓄電素子10において、セパレータ430の透気度を50秒/100cc以上とすることで、一過性の出力劣化を抑制しつつ、釘刺し時の温度上昇を抑制し、微小短絡の発生も抑制することができる。
【0104】
また、本願発明者らは、蓄電素子10において、セパレータ430の透気度が150秒/100cc以下の場合に、さらに、一過性の出力劣化を抑制することができることを見出した。このため、蓄電素子10において、セパレータ430の透気度を150秒/100cc以下とすることで、一過性の出力劣化を抑制することができる。
【0105】
また、本願発明者らは、蓄電素子10において、セパレータ430が無機フィラー層432を有する場合に、釘刺し時の温度を低下させることができることを見出した。このため、蓄電素子10において、セパレータ430が無機フィラー層432を有する構成とすることで、一過性の出力劣化を抑制しつつ、釘刺し時の温度を低下させることができる。
【0106】
また、本願発明者らは、蓄電素子10において、正極410の正極活物質層の面積が0.3m
2よりも小さい場合に、容量密度及び低温時の入力密度が低下することを見出した。また、当該正極活物質層の面積が100m
2よりも大きい場合に、一過性の出力劣化が大きくなることも見出した。このため、蓄電素子10において、正極410の正極活物質層の面積が0.3〜100m
2とすることで、容量密度及び低温時の入力密度の低下を抑制し、かつ一過性の出力劣化を抑制することができる。
【0107】
以上、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0108】
つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。