特許第6244694号(P6244694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244694
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ブラシレスモータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/18 20160101AFI20171204BHJP
【FI】
   H02P6/18
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-139668(P2013-139668)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2015-15788(P2015-15788A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青木 保幸
(72)【発明者】
【氏名】宇田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】板倉 光宏
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−117188(JP,A)
【文献】 特開2002−125391(JP,A)
【文献】 特開2006−280088(JP,A)
【文献】 特開2000−270585(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0132075(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスモータの起動時に、前記ブラシレスモータのロータを回転させることで前記ロータの位置検出を可能とするべく、複数のモータコイルのうち何れかの組み合わせで通電する複数の通電パターン間で、通電パターンを予め定められた順序で切り替える強制転流を行うブラシレスモータの制御装置において、
前記強制転流において、一定時間に亘って前記通電パターンを切り替えることを1セットの通電動作とし、前記通電動作のセットは前記モータコイルの過熱を抑制可能な休止時間を挟んで連続的に実行され、当該1セットの通電動作中において時間経過とともに前記ブラシレスモータの出力トルクが増大するように前記ブラシレスモータへの印加電圧を高くするブラシレスモータの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシレスモータの制御装置において、
前記強制転流において、前記1セットの第1の通電動作中に前記ロータの位置の検出が可能とならなかった場合には前記1セットの第2の通電動作を実行し、
前記第2の通電動作では、前記第1の通電動作における前記ブラシレスモータへの印加電圧よりも前記ブラシレスモータへの印加電圧を高くするブラシレスモータの制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブラシレスモータの制御装置において、
前記各セットの通電動作において、初期値から時間経過とともに前記ブラシレスモータへの印加電圧を高くするとともに、前記初期値を前記通電動作の回数が増えるほど高く設定するブラシレスモータの制御装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のブラシレスモータの制御装置において、
前記各セットの通電動作において、初期値から時間経過とともに前記ブラシレスモータへの印加電圧を一定の割合で高くするとともに、前記通電動作の回数が増えるほどに前記印加電圧の増加率を大きく設定するブラシレスモータの制御装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のブラシレスモータの制御装置において、
前記各モータコイルへの印加電圧のデューティ比を増加させることで、前記ブラシレスモータへの印加電圧を高くするブラシレスモータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブラシレスモータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一時停車時にエンジンを自動停止する、いわゆるアイドルストップ機能を備えた車両では、電動ポンプを用いることにより、アイドルストップ時においてもトランスミッション等への油圧供給が確保される構成が採用されている。こうした電動ポンプの駆動源としては、一般にブラシレスモータが用いられるが、電動ポンプはエンジン室等の高温環境下に配置されるため、ホール素子等の回転センサの耐熱性を考慮してセンサレスタイプのものが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のブラシレスモータの制御装置は、モータ駆動時に各モータコイルに生じる誘起電圧(逆起電力)に基づいてロータの回転位置を検出する。ところが、ロータが停止している状態では誘起電圧が生じないため、ブラシレスモータの制御装置は、ブラシレスモータの起動時にロータの回転位置を検出することができない。そこで、ブラシレスモータの制御装置は、ロータの回転位置にかかわらず、各モータコイルへの複数の通電パターンを予め定められた順序で切り替える、いわゆる強制転流を行う。これにより、ロータを強制的に回転させてブラシレスモータを起動する。この各モータコイルへの通電時のPWMデューティ比は一定である。このため、ブラシレスモータへの印加電圧は一定である。そして、ブラシレスモータの制御装置は、ロータの回転速度が上昇し、モータコイルに生じる誘起電圧に基づいて安定して回転位置の検出が可能になると強制転流を終了して、ロータの回転位置に応じたセンサレス駆動を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−280088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブラシレスモータのロータの偏芯、電動ポンプ内での異物の噛み込み等によって、ロータの静止摩擦が大きくなることがある。このような場合にあって、上記特許文献1の構成では、ブラシレスモータへの印加電圧(デューティ比)は一定であるため、強制転流によってロータを回転させることができず、上記センサレス駆動ができないおそれがある。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、強制転流時に、より確実にロータを回転させることができるブラシレスモータの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
上記課題を解決するブラシレスモータの制御装置は、ブラシレスモータの起動時に、前記ブラシレスモータのロータを回転させることで前記ロータの位置検出を可能とするべく、複数のモータコイルのうち何れかの組み合わせで通電する複数の通電パターン間で、通電パターンを予め定められた順序で切り替える強制転流を行うブラシレスモータの制御装置において、前記強制転流において、一定時間に亘って前記通電パターンを切り替えることを1セットの通電動作とし、前記通電動作のセットは前記モータコイルの過熱を抑制可能な休止時間を挟んで連続的に実行され、当該1セットの通電動作中において時間経過とともに前記ブラシレスモータの出力トルクが増大するように前記ブラシレスモータへの印加電圧を高くする。
【0008】
この構成によれば、ブラシレスモータの制御装置は、強制転流において、1セットの通電動作内に時間経過とともにブラシレスモータの出力トルクが増大するようにブラシレスモータへの印加電圧を高くする。これにより、たとえ、ロータの偏芯等、ロータの静止摩擦が大きい場合であっても、ブラシレスモータへの印加電圧が高くなることで、より確実にブラシレスモータのロータを回転させることが可能となる。
【0009】
上記ブラシレスモータの制御装置について、前記強制転流において、前記1セットの第1の通電動作中にロータ位置の検出が可能とならなかった場合には前記1セットの第2の通電動作を実行し、前記第2の通電動作では、前記第1の通電動作における前記ブラシレスモータへの印加電圧よりも前記ブラシレスモータへの印加電圧を高くすることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ブラシレスモータの制御装置は通電動作毎にブラシレスモータへの印加電圧を高くしている。これにより、たとえ、ロータの静止摩擦が大きい場合であっても、ブラシレスモータへの印加電圧が高くなることで、より確実にブラシレスモータのロータを回転させることが可能となる。
【0011】
上記ブラシレスモータの制御装置について、前記各セットの通電動作において、初期値から時間経過とともに前記ブラシレスモータへの印加電圧を高くするとともに、前記初期値を前記通電動作の回数が増えるほど高く設定することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ブラシレスモータの制御装置は、初期値を通電動作のセット数が増えるほど高く設定する。これにより、簡易な設定変更のみで、静止摩擦が大きい場合であっても、ブラシレスモータへの印加電圧が高くなることで、より確実にブラシレスモータのロータを回転させることが可能となる。
【0013】
上記ブラシレスモータの制御装置について、前記各セットの通電動作において、初期値から時間経過とともに前記ブラシレスモータへの印加電圧を一定の割合で高くするとともに、前記通電動作の回数が増えるほどに前記印加電圧の増加率を大きく設定することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ブラシレスモータの制御装置は、通電動作のセット数が増えるほどにブラシレスモータへの印加電圧の増加率を大きく設定する。これにより、簡易な設定変更のみで、静止摩擦が大きい場合であっても、ブラシレスモータへの印加電圧が高くなることで、より確実にブラシレスモータのロータを回転させることが可能となる。
【0015】
上記ブラシレスモータの制御装置について、前記各モータコイルへの印加電圧のデューティ比を増加させることで、前記ブラシレスモータへの印加電圧を高くすることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、デューティ比を増加させることで、ブラシレスモータへの印加電圧を高くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、強制転流時に、より確実にロータを回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における電動ポンプの電気的構成を示すブロック図。
図2】本発明の一実施形態におけるモータコイルへの通電パターンを示す模式図。
図3】本発明の一実施形態における回転位置信号生成部の電気的構成を示すブロック図。
図4】本発明の一実施形態におけるモータコイルの端子電圧及び回転位置信号の波形図。
図5】本発明の一実施形態におけるデューティ比の変化態様を示すグラフ。
図6】本発明の一実施形態における図5の部分拡大図。
図7】本発明の一実施形態におけるマイコンの処理手順を示すフローチャート。
図8】他の実施形態におけるデューティ比の変化態様を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ブラシレスモータの制御装置を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電動ポンプ1は、一時停車時にエンジンを自動停止する、いわゆるアイドルストップ機能を備えた車両に搭載されるものであって、トランスミッション等に油圧を供給する。
【0020】
電動ポンプ1は、ポンプ本体2と、ブラシレスモータ3と、ECU4と、を備えている。
ブラシレスモータ3は、ポンプ本体2を駆動するものであって、モータコイル12u,12v,12wと、ロータ11と、を備える。本例では、ブラシレスモータ3として、ロータ11の回転位置を検出する回転センサが設けられていないセンサレスタイプのものが採用されている。
【0021】
ECU4(制御装置)は、ブラシレスモータ3を制御する。詳しくは、ECU4は、各モータコイル12u,12v,12wに電気的に接続されている。ECU4は、各相のモータコイル12u,12v,12wに対して、120度矩形波通電を行なうことにより、同ブラシレスモータ3に三相の駆動電力を供給する。
【0022】
詳しくは、ECU4は、駆動回路21と、マイコン22とを備えている。駆動回路21は、スイッチング素子としての複数のFET(電界効果型トランジスタ)23a〜23fが接続されて構成される。具体的には、駆動回路21は、FET23a,23d、FET23b,23e、及びFET23c,23fの各組の直列回路をそれぞれ並列に接続して構成される。また、FET23a,23d、FET23b,23e、FET23c,23fの各接続点24u,24v,24wは、それぞれモータコイル12u,12v,12wに接続されている。つまり、駆動回路21は、PWMインバータとして構成されている。
【0023】
そして、マイコン22は、各FET23a〜23fのゲート端子に接続されて、そのゲート端子にモータ制御信号を出力する。これにより、各FET23a〜23fのスイッチング状態を、オン/オフ状態間で切り替えることができる。
【0024】
マイコン22は、FET23a〜23fのうち所定の組み合わせでオン状態とすることで、各相のモータコイル12u,12v,12wへの通電パターンを切り替える。図2に示すように、通電パターン(1)ではモータコイル12uからモータコイル12vに電流が流され、通電パターン(2)ではモータコイル12uからモータコイル12wに電流が流される。また、通電パターン(3)ではモータコイル12vからモータコイル12wに電流が流され、通電パターン(4)ではモータコイル12vからモータコイル12uに電流が流される。さらに、通電パターン(5)ではモータコイル12wからモータコイル12uに電流が流され、通電パターン(6)ではモータコイル12wからモータコイル12vに電流が流される。マイコン22は通電パターンを上記(1)〜(6)の順で切り替える。これにより、車載電源(バッテリ)25の直流電圧が三相(U,V,W)の駆動電力に変換され、ブラシレスモータ3へと出力される。これにより、ブラシレスモータ3が駆動する。
【0025】
図1に示すように、マイコン22は、回転位置信号生成部27と、モータ制御信号生成部28とを備えている。
回転位置信号生成部27には電圧センサ26u,26v,26wが接続されている。電圧センサ26u,26v,26wはモータコイル12u,12v,12wの端子電圧Vu,Vv,Vwを検出し、その検出結果を回転位置信号生成部27に出力する。回転位置信号生成部27は端子電圧Vu,Vv,Vwに基づいてロータ11の回転位置を示す回転位置信号S1〜S3を生成し、その生成した回転位置信号S1〜S3をモータ制御信号生成部28に出力する。モータ制御信号生成部28は、メモリ42と、タイマ43と、カウンタ44とを備える。メモリ42には、後述するフローチャートに係る処理手順等が記憶されている。モータ制御信号生成部28は、入力された回転位置信号S1〜S3に基づいて、モータ制御信号を生成し、その生成したモータ制御信号を駆動回路21に出力する。
【0026】
図3に示すように、回転位置信号生成部27は、分圧回路31と、3つのコンパレータ32u,32v,32wとを備えている。
分圧回路31は抵抗値の等しい2つの抵抗R1,R2を直列接続してなる。また、3つのコンパレータ32u,32v,32wは、分圧回路31からの基準電圧V0(本実施形態では、車載電源25の1/2の電圧)と、端子電圧Vu,Vv,Vwとをそれぞれ比較
する。具体的には、各コンパレータ32u,32v,32wは、端子電圧Vu,Vv,Vwが基準電圧V0よりも大きい場合には、回転位置信号S1〜S3として「1(ハイレベル)」を出力し、端子電圧Vu,Vv,Vwが基準電圧V0以下である場合には、回転位置信号S1〜S3として「0(ローレベル)」を出力する。
【0027】
ここで、図4に示すように、端子電圧Vu,Vv,Vwは、位相が120度ずつ異なっており、電気角180度のうち、通電された120度の通電区間では電源電圧が検出され、通電が休止された60度の休止区間では各モータコイル12u,12v,12wに生じた誘起電圧が検出される。なお、各FET23a〜23fがオンからオフに切り替わる時には、同FET23a〜23fの寄生ダイオード(図示略)に起因したノイズが生じる。そして、回転位置信号S1〜S3は、端子電圧Vu,Vv,Vwが基準電圧V0となる時点(ゼロクロス点)で変化し、上記ノイズを除去することにより、ロータ11の回転位置に応じて規則的に変化する。これにより、モータ制御信号生成部28は、回転位置信号S1〜S3に基づいてモータコイル12u,12v,12wへの通電パターンをロータ11の回転位置に応じて切り替えるモータ制御信号を生成可能となっている。
【0028】
また、図1に示すように、マイコン22は、各FET23a〜23fのオン時間の割合であるデューティ比の変更を通じてモータコイル12u,12v,12wに通電する電流量、ひいてはブラシレスモータ3への印加電圧を擬似的に制御することができる。
【0029】
具体的には、マイコン22には、ブラシレスモータ3に通電される実電流値Iを検出するための電流センサ41及びトランスミッションの作動を制御する上位ECUが接続されている。そして、モータ制御信号生成部28には、回転位置信号S1〜S3に加えて、上位ECUが出力する電流指令値I*、及び電流センサ41により検出された実電流値Iが入力される。モータ制御信号生成部28は、電流指令値I*に実電流値Iを追従させるべくフィードバック制御を実行することにより、電流指令値I*と実電流値Iとの偏差に応じたデューティ比でパルス幅変調されたモータ制御信号を生成する。なお、上位ECUは、電動ポンプから供給される油圧やエンジン回転数等に基づいて電流指令値I*を演算する。
【0030】
次に、強制転流について説明する。
ブラシレスモータ3の停止時には、モータコイル12u,12v,12wに誘起電圧が発生していないため、当然に端子電圧Vu,Vv,Vwがゼロクロス点に到達せず、回転位置信号生成部27において回転位置信号S1〜S3が生成されない。そこで、マイコン22は、ブラシレスモータ3を駆動するにあたって、ロータ11の回転位置にかかわらず、通電パターンを予め定められた順序で切り替える。これにより、ロータ11が回転し、端子電圧Vu,Vv,Vwがゼロクロス点に到達することで、回転位置信号生成部27における回転位置信号S1〜S3の生成が可能となる。これを強制転流と呼ぶ。
【0031】
図5に示すように、マイコン22は、強制転流においては、複数セットの通電動作A1〜Anを実行する。各通電動作A1〜Anでは、マイコン22は、上記図2の通電パターン(1)〜(6)間で通電パターンを切り替える。通電動作A1〜Anは休止時間Trを挟んで連続的に実行される。各通電動作A1〜Anにてデューティ比は時間経過とともに増加する。通電動作A1〜An毎に異なるデューティ比の増加率P1〜Pnが設定されている。すなわち、1セット目の通電動作A1における増加率P1よりも2セット目の通電動作A2における増加率P2が大きく設定され、同様に、2セット目の通電動作A2における増加率P2より3セット目の通電動作A3における増加率P3が大きく設定される。このように、セット数(通電動作の回数)が大きくなるにつれてデューティ比の増加率が大きくなる。
【0032】
また、通電動作A1〜An毎に異なるデューティ比のデューティ初期値B1〜Bnが設定されている。すなわち、1セット目の通電動作A1におけるデューティ初期値B1より2セット目の通電動作A2におけるデューティ初期値B2が大きく設定され、同様に、2セット目の通電動作A2におけるデューティ初期値B2より3セット目の通電動作A3におけるデューティ初期値B3が大きく設定されている。このように、セット数(通電動作の回数)が大きくなるにつれてデューティ初期値B1〜Bnが大きく設定されている。
【0033】
次に、図7のフローチャートを参照しつつ、モータ制御信号生成部28によるブラシレスモータの起動方法(強制転流)について説明する。なお、本フローチャートの開始時には、カウンタ44を通じてカウントされるカウント値Cはゼロである。
【0034】
まず、モータ制御信号生成部28は、タイマ43を通じて強制転流継続時間Tzの計測を開始するとともに(S101)、デューティ初期値B1を設定する(S102)。このデューティ初期値B1は、以下の式(1)から算出される。
【0035】
デューティ初期値B1〜Bn=基本値E+カウント値C×かさ上げ値α・・・・(1)
この式(1)において、基本値Eは予め設定される基本となるデューティ比である。また、カウント値Cはゼロである。よって、デューティ初期値B1は基本値Eに設定される。
【0036】
モータ制御信号生成部28は、上記図2の通電パターン(1)〜(6)のうち、例えば(1)の通電パターンに切り替える(S103)。そして、モータ制御信号生成部28は、タイマ43を通じて相通電時間Tnの計測を開始する(S104)。そして、モータ制御信号生成部28は、計測した相通電時間Tnが、予め設定された一定時間Tx以上となるか否かを判断する(S105)。
【0037】
モータ制御信号生成部28は、計測した相通電時間Tnが一定時間Tx未満である旨判断すると(S105でNO)、強制転流継続時間Tzが、予め設定された一定時間Ty以上となるか否かを判断する(S106)。モータ制御信号生成部28は、計測した強制転流継続時間Tzが一定時間Ty未満である旨判断すると(S106でNO)、回転位置信号生成部27からの回転位置信号S1〜S3を通じて、ロータ11の回転位置を検出できるか否かを判断する(S107)。
【0038】
モータ制御信号生成部28はロータ11の回転位置を検出できない旨判断すると(107でNO)、デューティ比D2を再設定する(S108)。このデューティ比D2は、以下の式(2)から算出される。
【0039】
デューティ比D2=現在のデューティ比D1+加算値F+割増値β×カウント値C・・・(2)
現在のデューティ比D1は、上記ステップS102で設定されたデューティ比、すなわちデューティ初期値B1である。この時点では、カウント値Cがゼロであるため、デューティ比D2は、現在のデューティ比D1(初期値B1)に加算値Fを加えた値に設定される。これにより、図6に拡大して示すように、時刻t1においてデューティ比D1(デューティ初期値B1)からデューティ比D2に変更される。
【0040】
計測した相通電時間Tnが一定時間Txに達するまで上述したステップS105〜S108が繰り返される。このため、図5に示すように、相通電時間Tnが一定時間Txに達するまで、一定周期毎にデューティ比が加算値Fずつ増加していく。このように、1セット目の通電動作A1では、増加率P1でデューティ比が増加していく。図7に示すように、モータ制御信号生成部28は計測した相通電時間Tnが一定時間Txに達した旨判断すると(S105でYES)、計測した相通電時間Tnをリセットし(S109)、通電パターンを例えば図2の(1)から(2)に切り替える(S103)。そして、モータ制御信号生成部28は、上記同様に、相通電時間Tnが一定時間Txに達するまでステップS105〜S108を繰り返す。このように、ステップS105〜S108が繰り返され、相通電時間Tnが一定時間Txに達するとステップS109,S103が行われ、再びステップS105〜S108が繰り返される。これらの処理は、計測した強制転流継続時間Tzが一定時間Tyに達するまで継続される。この期間にも、ステップS108を通じて、増加率P1でデューティ比が増加していく。
【0041】
モータ制御信号生成部28は、計測した強制転流継続時間Tzが一定時間Tyに達する旨判断すると(S106でYES)、カウンタ44のカウント値Cに「1」を加算する。これにより、カウント値Cが「0」から「1」に切り替わる。この強制転流継続時間Tzは、モータコイル12u,12v,12w等の発熱の観点から設定されている。
【0042】
つぎに、モータ制御信号生成部28は、カウント値Cがしきい値Cth以上であるか否かを判断する(S111)。モータ制御信号生成部28は、カウント値Cがしきい値Cth未満である旨判断するとデューティ比をリセットする(S112)。以上で、1セット目の通電動作A1が完了となる。
【0043】
2セット目の通電動作A2においては、まず、モータ制御信号生成部28は、再び上記式(1)を利用してデューティ初期値B2を設定する(S102)。このとき、図5及び図7に示すように、カウント値Cが「1」であるため、デューティ初期値B2は、デューティ初期値B1と同一値の基本値Eに、かさ上げ値αが加えられた値に設定される。以下、モータ制御信号生成部28は、上記同様にステップS103〜S109を実行する。このとき、ステップS108においては、カウント値Cが「1」であるため、上記式(2)に示すように、現在のデューティ比D1に対して「加算値F+割増値β」だけ加算される。よって、カウント値Cが「1」のときのデューティ比の増加率P2は、上記カウント値Cが「0」のときのデューティ比の増加率P1に比べて大きくなる。
【0044】
カウント値Cが「1」において、モータ制御信号生成部28は、計測した強制転流継続時間Tzが一定時間Tyに達する旨判断すると(S106でYES)、カウンタ44のカウント値Cに「1」を加算して「2」とする(S110)。カウント値Cが「2」の場合、ステップS102,S108の式(1),(2)において設定されるデューティ比が大きくなる。その他は、カウント値Cが「0」,「1」の場合と同様に処理を行う。カウント値Cが「3」以降の場合も同様である。
【0045】
モータ制御信号生成部28は、何れかの通電動作A1〜Anにおいて、ロータ11の回転位置を検出できた旨判断すると(S107でYES)、回転位置信号S1〜S3及び電流指令値I*に基づいてブラシレスモータ3を駆動(センサレス駆動)する(S113)。以上で、モータ制御信号生成部28は、フローチャートに係る処理を終了する。
【0046】
また、モータ制御信号生成部28は、カウント値Cがしきい値Cthに達した旨判断すると(S111でYES)、センサレス駆動を行うことなく、フローチャートに係る処理を終了する。
【0047】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)マイコン22は、強制転流において、1セットの通電動作内に時間経過とともにブラシレスモータ3の出力トルクが増大するようにデューティ比(ブラシレスモータ3への印加電圧)を大きくする。これにより、たとえ、ロータ11の偏芯、ポンプ本体2内での異物の噛み込み等、ロータ11の静止摩擦が大きい場合であっても、デューティ比が大きくなることで、より確実にブラシレスモータ3のロータ11を回転させることが可能となる。
【0048】
また、マイコン22は、デューティ比を除々に上昇させている。このため、ロータ11の静止摩擦が小さい場合には、比較的に低いデューティ比で、ロータ11を回転させることができる。
【0049】
(2)マイコン22は、通電動作A1〜Anを休止時間Trを挟んで複数セットに亘って実行する。この休止時間Trを挟むことで、通電動作A1〜Anが連続的に行われて、モータコイル12u,12v,12w等が加熱することが抑制される。
【0050】
(3)マイコン22は、デューティ初期値B1〜Bnを通電動作A1〜Anのセット数が増えるほど大きく設定する。これにより、簡易な設定変更のみで、ロータ11の静止摩擦が大きい場合であっても、デューティ比が大きくなることで、より確実にブラシレスモータ3のロータ11を回転させることが可能となる。
【0051】
(4)マイコン22は、通電動作A1〜Anのセット数が増えるほどにデューティ比の増加率P1〜Pnを大きく設定する。これにより、簡易な設定変更のみで、ロータ11の静止摩擦が大きい場合であっても、デューティ比が大きくなることで、より確実にブラシレスモータ3のロータ11を回転させることが可能となる。
【0052】
(5)マイコン22は、デューティ比を、通電動作A1〜An毎に一定の増加率P1〜Pnで上昇させている。よって、デューティ比が急激に上がることで、ブラシレスモータ3が脱調することが抑制される。
【0053】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、強制転流においては、マイコン22は、複数セットの通電動作A1〜Anを実行していたが、1回のみの通電動作であってもよい。
【0054】
・上記実施形態においては、マイコン22は、通電動作A1〜Anのセット数が大きくなるにつれてデューティ比のデューティ初期値B1〜Bnを大きく設定するとともに、通電動作A1〜Anのセット数が大きくなるにつれてデューティ比の増加率P1〜Pnを大きく設定していた。しかし、これらの何れか一方、若しくは両方を省略してもよい。両方を省略した場合には、図8に示すように、通電動作A1〜An毎に、デューティ比の変化態様は同一となる。この場合であっても、上記背景技術のデューティ比が一定の構成と比較して、強制転流によって、より確実にブラシレスモータ3のロータ11を回転させることが可能となる。
【0055】
・上記実施形態においては、所定の通電動作におけるデューティ比の増加率は一定であったが、所定の通電動作において、デューティ比の増加率を除々に大きくしてもよい。これにより、より確実にブラシレスモータ3のロータ11を回転させることが可能となる。
【0056】
・上記実施形態におけるステップS111を省略してもよい。この場合、マイコン22は、例えば、デューティ比が所定値以上となったときに、図7のフローチャートに係る処理を終了してもよい。
【0057】
・上記実施形態においては、マイコン22は、デューティ比の増減を通じて、ブラシレスモータ3への印加電圧を擬似的に制御していたが、実際にブラシレスモータ3への印加電圧を制御してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…電動ポンプ、2…ポンプ本体、3…ブラシレスモータ、4…ECU、11…ロータ、12u,12v,12w…モータコイル、21…駆動回路、22…マイコン、23a〜23f…FET、27…回転位置信号生成部、28…モータ制御信号生成部、31…分圧回路、41…電流センサ、42…メモリ、43…タイマ、44…カウンタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8