(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
白色の支持層と該支持層の少なくとも一の外面に、レーザビーム照射により黒色に発色するレーザ発色層を有するカード用基材の該レーザ発色層上に、透明なオフセットアンカー層を形成してから、オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を設け、該透明オーバープリント印刷面上からレーザビーム照射を行って、オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を除去して、前記支持層による白色の文字が覗き見えるようにするか、前記レーザ発色層面に灰色乃至黒色の文字印字を行ったことを特徴とするレーザ印字カード。
白色の支持層と該支持層の少なくとも一の外面に、レーザビーム照射により黒色に発色するレーザ発色層を有するカード用基材の該レーザ発色層上に、シルクスクリーン印刷による銀色印刷層と白色印刷層を形成してから、オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を設け、該透明オーバープリント印刷面上からレーザビーム照射を行って、オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を除去して、前記白色印刷層面に白色の文字を呈せしめるか、より深く銀色印刷層までに達するようにして、前記銀色印刷層面に銀色の文字を呈せしめるか、さらに白色印刷層と銀色印刷層をも消失させて、前記レーザ発色層面に灰色乃至黒色の文字印字を行ったことを特徴とするレーザ印字カード。
白色の支持層と該支持層の少なくとも一の面に、レーザビーム照射により黒色に発色するレーザ発色層を有するカード用基材の該レーザ発色層上に、透明なオフセットアンカー層を形成してから、オフセット印刷による灰色印刷層と絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を設け、該透明オーバープリント印刷面上からレーザビーム照射を行って、オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を除去して、前記灰色印刷層面に灰色の文字を呈せしめるか、さらに灰色印刷層を消失させて、前記支持層による白色の文字が覗き見えるようにするか、前記レーザ発色層面に灰色乃至黒色の文字印字を行ったことを特徴とするレーザ印字カード。
白色の支持層と該支持層の少なくとも一の面に、レーザビーム照射により黒色に発色するレーザ発色層を有するカード用基材の該レーザ発色層上に、シルクスクリーン印刷による銀色印刷層を形成してから、オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を設け、該透明オーバープリント印刷面上からレーザビーム照射を行って、オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を除去して、前記銀色印刷層に銀色の文字を呈せしめるか、さらに銀色印刷層を消失させて、前記支持層による白色の文字が覗き見えるようにするか、前記レーザ発色層面に灰色乃至黒色の文字印字を行ったことを特徴とするレーザ印字カード。
カード用基材のレーザ発色層の黒化濃度がレーザビームの照射密度により調整されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1の請求項記載のレーザ印字カード。
カード用基材の支持層がポリカーボネート樹脂からなり、レーザ発色層がポリカーボネートとPET−G樹脂のポリマーアロイ樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1の請求項記載のレーザ印字カード。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用ETCカードやSIMカードのように、装飾的要素が求められない特定用途の接触型ICカードにおいては、従来の多層構成のカードに代えて、簡易な単層構成のカードが試験的に使用されてきている。このような構成のカードにおいては、表面や裏面の色彩印刷や表示印刷は行うものの、利用者の氏名やカード番号、有効期限は、従来のように文字エンボスによる方法ではなく、カード基材の表層に有する発色層をレーザ照射して、黒色に印字することで代用することが行われている。
【0003】
しかし、カード基材の有する発色層は、黒色に発色させることを目的に製造されており、異なる発色にしたり、各種の発色を組み合わせすることはできない。そのため、簡易なカードといっても、カード表面の絵柄との関係で視認し難い表示となるか、単調な表示になり利用者に好まれない場合がある。
そこで、本発明は、カードにレーザ印字を行う際に、印刷に使用するインキ層をカード表面に設け、当該インキ層とレーザ印字条件を組み合せることで、印字の発色状態を変えることを意図するものである。
【0004】
レーザビームを照射することにより発色する発色層をカード基材自体に持たせることを記載する先行技術文献に特許文献1や特許文献2がある。
特許文献1は、支持層とレーザビーム照射により発色する発色層を少なくとも一の面に有するカード用シートについて記載している。発色前の発色層は可視光透過性を有し、ポリエステル系樹脂からなることを要件としている。発色剤については、光熱変換による発熱によって有色金属酸化物を形成する各種金属を挙げているが、特に限定してはいない。
特許文献2は、ポリカーボネート系樹脂、もしくはポリカーボネート系樹脂と実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂とのポリマーアロイを主成分とする発色層樹脂と接着層からなるカード用シートについて記載している。
【0005】
発色剤については、特許文献1と同様に、発熱によって有色金属酸化物を形成する各種金属や光吸収剤を挙げているが特には限定していない。ただし、実施例ではスズ系発色剤を使用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カードにレーザ印字を行う際に、印刷に使用するインキとレーザ印字条件を組み合わせることで意図的に印字の発色を変えることを課題とする。
通常は、レーザ発色基材を用いて印字を行うと黒発色となるが、印刷時にAl(アルミニューム)やTiO
2(酸化チタン)などの金属を含有するインク(シルクスクリーン印刷用の銀や白)で印刷を行い、レーザ印字条件やインキ層の金属含有量の調整によりレーザ発色層の発色度合いを変更し、グレイ文字や白色文字等の印字も可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨の第1は、白色の支持層と該支持層の少なくとも一の外面に、レーザビーム照射により黒色に発色するレーザ発色層を有するカード用基材の該レーザ発色層上に、透明なオフセットアンカー層を形成してから、オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を設け、該透明オーバープリント印刷面上からレーザビーム照射を行って、
オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を除去して、前記支持層による白色の文字が覗き見えるようにするか、前記レーザ発色層面に
灰色乃至黒色の文字印字を行ったことを特徴とするレーザ印字カード、にある。
【0009】
本発明の要旨の第2は、白色の支持層と該支持層の少なくとも一の外面に、レーザビーム照射により黒色に発色するレーザ発色層を有するカード用基材の該レーザ発色層上に、シルクスクリーン印刷による銀色印刷層と白色印刷層を形成してから、オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を設け、該透明オーバープリント印刷面上からレーザビーム照射を行って、
オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を除去して、前記白色印刷層面に白色の
文字を
呈せしめるか、
より深く銀色印刷層までに達するようにして、前記銀色印刷層面に銀色の文
字を呈せしめるか、
さらに白色印刷層と銀色印刷層をも消失させて、前記レーザ発色層面に
灰色乃至黒色の文字印字を行ったことを特徴とするレーザ印字カード、にある。
【0010】
本発明の要旨の第3は、白色の支持層と該支持層の少なくとも一の面に、レーザビーム照射により黒色に発色するレーザ発色層を有するカード用基材の該レーザ発色層上に、透明なオフセットアンカー層を形成してから、オフセット印刷による灰色印刷層と絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を設け、該透明オーバープリント印刷面上からレーザビーム照射を行って、
オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を除去して、前記灰色印刷層面に灰色の文字を
呈せしめるか、さらに
灰色印刷層を消失させて、前記支持層による白色の文字が覗き見えるようにするか、前記レーザ発色層面に
灰色乃至黒色の文字印字を行ったことを特徴とするレーザ印字カード、にある。
【0011】
本発明の要旨の第4は、白色の支持層と該支持層の少なくとも一の面に、レーザビーム照射により黒色に発色するレーザ発色層を有するカード用基材の該レーザ発色層上に、シルクスクリーン印刷による銀色印刷層を形成してから、オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を設け、該透明オーバープリント印刷面上からレーザビーム照射を行って、
オフセット印刷による絵柄印刷と透明オーバープリント印刷を除去して、前記銀色印刷層に銀色の文字
を呈せしめるか、さらに
銀色印刷層を消失させて、前記支持層による白色の文字が覗き見えるようにするか、前記レーザ発色層面に
灰色乃至黒色の文字印字を行ったことを特徴とするレーザ印字カード、にある。
【0012】
上記において、カード用基材のレーザ発色層の黒化濃度がレーザビームの照射密度により調整されているようにしてもよく、カード用基材の支持層がポリカーボネート樹脂からなり、レーザ発色層がポリカーボネートとPET−G樹脂のポリマーアロイ樹脂からなる、ようにすることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の適用されるカードの形態を示す平面図である。
本発明の適用されるカードは、代表的には接触型ICカード1であって、ISOで規定する所定位置に接触端子板11を有し、接触端子板11の下面には図示しないICチップが実装されている。接触型ICカード1の表面には、カード番号12や有効期限13、利用者氏名14等が印字されている。従来、このような印字は、カードの表裏から活字輪を押圧することで形成するエンボス文字が使用されてきたが、本発明では、このエンボスに代えて基材の発色層をレーザビーム印字する特徴がある。
従って、カード用基材には、表裏面(または少なくとも表面)にレーザ印字適性を有するものが使用される。単層基材の表裏に印刷後、裁断しICモジュールを装着し、レーザ印字してカードを完成する。従来のように、表裏のコアシートに印刷してからオーバーシートを積層して貼合し、プレスラミネートする工程を経ないで製造できる特徴がある。
【0015】
次に本発明に使用するカード用基材について説明する。
図6は、本発明で使用するカード用基材の断面図である。カード用基材100は、白色の支持層101と該支持層の少なくとも一の面に、レーザビーム照射により黒色に発色する発色層102を有している特徴がある。
図6では、支持層101の両面に発色層102を有する材料が図示されているが、裏面に印字を設けない場合は表面印字側にのみ発色層を有するものでも良い。
カード用基材100は、限定されるものではないが、本発明では、表裏の発色層102には、ポリカーボネート樹脂と非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂(PET−G樹脂)のポリマーアロイ樹脂を、支持層101にはポリカーボネート樹脂を使用し、この3層を共押し出しした材料が使用されている。成型されてシートとなった複数枚のシートをラミネートして使用しないで、1回の押し出し成型によるシートであるから、層構成としては3層であっても単層基材と言っている。
【0016】
支持層101には酸化チタン(TiO
2)等の白色顔料が配合されていて白色の反射光を生じるようにされている。発色層102は、本来的には従来のオーバーシートの機能をするもので、レーザビーム照射前においては可視光透過性にされている。従って、白色顔料や有色着色剤を含まない。レーザビーム照射後も、印字部分以外は透明であることはいうまでもない。ここで、「可視光透過性」とは、当該層の裏面に配置された層を視覚的に視認できるような透明性をいう。
発色層102中には、発色剤が分散されているが、発色層を形成する樹脂の屈折率と、混合する発色剤の屈折率との差は小さいことが好ましく、屈折率の差が小さくなるようにすることにより、発色層102の可視光透過性を高めることができる。
【0017】
発色剤としては、レーザビームによる発熱によって黒色の金属酸化物を形成する各種金属や金属化合物、黒色化する熱応答性染料等が挙げられる。発色層に、レーザビームの波長を吸収する光吸収剤を含有させてもよい。このような発色層にレーザビームを照射すると、光吸収剤等の周辺のバインダー樹脂が炭化し、この炭化した部分が黒色を呈する。あるいはまた、金属酸化物等の発色剤と光吸収剤とを併用してもよい。このように、その目的を果たすものであればよく、本発明では特にその材質を限定しない。
【0018】
支持層101と発色層102は、ほぼ同質の樹脂組成材料からなっていてもよいものである。支持層101と発色層102は、ポリカーボネート系樹脂、もしくはポリカーボネート系樹脂と実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂とのポリマーアロイを主成分とする樹脂組成物から形成することもできる。このような樹脂組成物を用いることにより、カードの耐熱性を向上させることができ、レーザビームを照射しても、発色層が膨れたり、変形することを防止することができる。
【0019】
本発明においてポリカーボネート系樹脂とは、主成分がポリカーボネートである樹脂組成物を意味する。ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールとアセトンから合成されるビスフェノールAから、界面重合法、エステル交換法、ピリジン法等によって製造されるもの、ビスフェノールAとジカルボン酸誘導体、例えばテレ(イソ)フタル酸ジクロリド等との共重合体により得られるポリエステルカーボネート、ビスフェノールAの誘導体、例えばテトラメチルビスフェノールA等の重合により得られるものを例示することができる。
【0020】
本発明において実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂とは、芳香族ジカルボン酸等成分とジオール成分との脱水縮合体をいい、その中でも結晶性が低く、プレス融着等の実用上頻繁に行われる熱加工を行っても、結晶化による白濁や融着不良を起さないものをいう。なお、本発明においては、非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂に類似するものには、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等も含まれる。
【0021】
支持層101と表裏の発色層102により所定のカードの厚みとするためには、カード用基材100の合計厚みが、0.8mm程度になるようにし、一方側の発色層102の厚みは65μm程度とする。従って、表裏両面に発色層を設ける場合、中心の支持層101は670μmとなる。
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図2は、第1の実施形態によるカードの模式断面図である。図中に示す孔B1は、レーザビームによる印字状態を説明するものである。ただし、実際には数μmの深さであり、微細な文字幅であっても視覚で孔と認識されるものではない。以降の各例も同様である。
第1の実施形態のカードは、白色の支持層101と該支持層の少なくとも一の面に、レーザビーム照射により黒色に発色する発色層102を有するカード用基材100の該レーザ発色層102上に、透明なオフセットアンカー層103を形成してから、オフセット印刷による絵柄印刷104とオフセット印刷による透明オーバープリント印刷105を設けた構成になっている。
そしてその透明オーバープリント印刷105面上からレーザビーム照射を行って、ビームにより、オーバープリント印刷105と絵柄印刷104とアンカー層103を除去し、レーザ発色層102面に白色乃至黒色の文字印字を行ったことを特徴としている。オフセット印刷による絵柄印刷104と透明オーバープリント印刷105は、きわめて薄い層であるため、レーザビームにより焼散するかガス化して消失し易いからである。
【0023】
白色乃至黒色とは、白色と黒色を含み、白色から黒色に至る中間において変化する各段階の灰色(グレイ)をも含む意味である。白色の場合は、発色層102上のオフセット印刷による絵柄印刷104と透明オーバープリント印刷105を除去すれば、支持層101の白色が覗き見えることにより白色を呈するので、発色層102自体が発色していることにはならないが、実質的に白印字したと同様な効果を示すのでこのように表現している。
請求項1において「レーザビーム照射により黒色に発色するレーザ発色層」とは、発色層102を完全に発色させた場合のことで、未照射の場合は透明状態である。
もっとも、オフセットアンカー層103も除去し、孔B1のように、ビームが発色層102までに達し、発色層102を僅かでも発色させれば薄い灰色になる。
発色層の濃淡は、照射するレーザビームの出力と照射密度dpi(インチ当たりのドット数)で変化するが、通常、出力(レーザパワー)は一定に維持し、主としてdpiで調整することになる。ドット数が多くなるに従い、黒化濃度が高くなるからである。
レーザ発色層102は厚みが50〜100μm(本例では65μm)はあるからレーザビーム照射して黒化しても焼失してしまうことはない。
【0024】
第1の実施形態において、オフセットアンカー層103は、基材に対してオフセット印刷インキの定着を良好にするための塗布材料であり、1〜2μm以下の薄層で印刷塗工される。通常紫外線(UV)硬化型のアクリル系透明インキが使用される。
オフセット印刷による絵柄印刷104と透明オーバープリント印刷105も同様なUV硬化型インキが使用される。絵柄印刷104は、各種の絵柄に対応するため各種の色彩が採用される。透明オーバープリント印刷を含め、厚みは、0.1〜3μm程度となる。
【0025】
図3は、第2の実施形態によるカードの断面図である。図中に示す孔B2,B3,B4は、レーザビームによる印字状態を説明するものである。
第2の実施形態のカードは、白色の支持層101と該支持層の少なくとも一の面に、レーザビーム照射により黒色に発色する発色層102を有するカード用基材100の該発色層上に、シルクスクリーン印刷による銀色印刷層106と白色印刷層107を形成してから、オフセット印刷による絵柄印刷104とオフセット印刷による透明オーバープリント印刷105を設けた構成になっている。
カード用基材100の構成は、第1実施形態と同様であり、レーザ発色層102上に、シルクスクリーン印刷による銀色印刷層106と白色印刷層107を形成しているところが第1実施形態と相違している。
【0026】
銀色印刷層106と白色印刷層107は、シルクスクリーン印刷によるので、オフセット印刷よりも厚盛りの印刷層となる。銀色印刷インキには、微粉鱗片状のアルミニューム箔が通常分散されている。その後、第1の実施形態と同様に、オフセット印刷による絵柄印刷104とオフセット印刷による透明オーバープリント印刷105を行う。
そしてその透明オーバープリント印刷105面上からレーザビーム照射を行って、ビームにより透明オーバープリント印刷105と絵柄印刷104を除去する。さらに、レーザ照射を行い、ビームが孔B2のように、シルクスクリーン印刷による白色印刷層107にまで達するようにすれば、印字は白色を呈し、孔B3のように、より深く銀色印刷層106まで達するようにすれば、印字は銀色を呈するようになる。
シルクスクリーン印刷による印刷層は、比較的に厚肉(2〜3μm)でありアルミニューム箔粉または酸化チタン(TiO
2)が入るため、銀色印刷層106と白色印刷層107は残存し易いからである。
孔B4のように、銀色印刷層106と白色印刷層107の両層を消失させる程度にレーザビームを照射すれば、発色層102が露出し、当該発色層102をビームが照射することになる。この段階では前記のように照射量に応じて、発色層102は、白色乃至黒色の文字印字を呈することになる。
【0027】
図4は、第3の実施形態によるカードの断面図である。図中に示す孔B5,B6は、レーザビームによる印字状態を説明するものである。
第3の実施形態のカードは、白色の支持層101と該支持層の少なくとも一の面に、レーザビーム照射により黒色に発色する発色層102を有するカード用基材100の該発色層上に、透明なオフセットアンカー層103を形成してから、オフセット印刷による灰色印刷層108と絵柄印刷104と透明オーバープリント印刷105を設けた構成になっている。オフセット印刷による灰色印刷層108は、白色インキと黒色インキの混色によるインキであり、白色の酸化チタン(TiO
2)が入るため、オフセット印刷であってもレーザビームによる消失はし難くなっている。
【0028】
孔B5のように、オフセット印刷による絵柄印刷104と透明オーバープリント印刷105を消失させる程度にレーザビームを照射し、灰色印刷層108を露出させれば、印字文字は灰色を呈し、さらにビームを照射して孔B6のようになれば、レーザ発色層102が露出し、当該発色層102をビームが照射すれば、照射量に応じて、発色層102は白色乃至黒色の文字印字を呈することになる。
【0029】
図5は、第4の実施形態によるカードの断面図である。図中に示す孔B7,B8は、レーザビームによる印字状態を説明するものである。
第4の実施形態のカードは、白色の支持層101と該支持層の少なくとも一の面に、レーザビーム照射により黒色に発色する発色層102を有するカード用基材100の該発色層上に、シルクスクリーン印刷による銀色印刷層106を形成してから、オフセット印刷による絵柄印刷104と透明オーバープリント印刷105を設けた構成になっている。
【0030】
孔B7のように、オフセット印刷による絵柄印刷104と透明オーバープリント印刷105を消失させる程度にレーザビームを照射し、シルクスクリーン印刷による銀色印刷層106を露出させれば、印字文字は銀色を呈し、さらにビームを照射して孔B8のようになれば、レーザ発色層102が露出し、当該発色層102をビームが照射すれば、照射量に応じて、発色層102は白色乃至黒色の文字印字を呈することになる。
【0031】
次に、カードへのレーザ印字について説明する。
カードへのレーザ印字は、カード発行機を用いて行う。カード発行機には各種モジュールの一つとして、レーザ印字機が備えられている機種を使用する。
レーザビームにはファイバーレーザ(発振波長1.06μm)が使用される。
パルスエナジーは、10mJであり、レーザビームで刻印される黒点1つあたりのサイズは20〜90μmの径である。
レーザ発色層102の黒化濃度は、レーザビームの出力と照射密度dpi(インチ当たりのドット数)で変化させ得るが、通常は出力を一定にして照射密度dpiで調整する。すなわち、dpiが小さければ白色に近い灰色になり、dpiの増加に伴い濃度を増して黒化する。従って、諧調印刷も可能になる。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
総厚が800μであって、中心の支持層101が厚み670μmの白色ポリカーボネート樹脂からなり、その両面に厚み65μmのPET−G樹脂からなりモリブデン化合物による黒色発色剤を含む透明なレーザ発色層102を全面に有する3層共押出ししたカード用基材(三菱樹脂株式会社製造)100を使用して、接触型ICカードを製造した。
まず、カード用基材100の表面側の発色層102面上に、アクリル系紫外線硬化型インキからなるオフセット用アンカーインキを印刷して透明なオフセットアンカー層103を形成し、続いて、いずれもアクリル系紫外線硬化型インキからなるオフセット印刷による絵柄印刷104と全面の透明オーバープリント印刷105を行った。それぞれのインキ膜厚は、何れも1μm未満のものである(
図2参照)。
なお、カード用基材100の裏面側発色層102に対しては、通常のオフセット印刷のみを行い、レーザ印字は行っていない。以降の各実施例も同様であり、記載を省略する。
【0033】
個々のカードサイズに裁断してから、ICモジュールを装着し、カード発行機(日本データカード株式会社製「MX6000」)によりエンコードを行ってから、同機のレーザモジュールによりレーザ印字を行った。レーザモジュールは、レーザパワー24Wのファイバーレーザを有し、解像度は200〜1000dpiで印字可能のものである。
まず、1行目のカードナンバー印字を透明オーバープリント印刷105面上から、レーザパワー24Wの300dpiでレーザビーム照射すると、オフセット印刷によるアンカー層103、絵柄印刷104と透明オーバープリント印刷105が消失し、発色層102がグレイに印字された文字列が得られた。次に、2行目の有効期限と3行目の利用者名を同様に、透明オーバープリント印刷面上から同一出力の500dpiでレーザビーム照射すると、カード用基材100の発色層102面に濃いグレイの文字列を有するレーザ印字カード1が得られた。
【0034】
(実施例2)
実施例1と同一のカード用基材100を使用して、接触型ICカードを製造した。
まず、カード用基材100の表面側の発色層102面上に、シルクスクリーン印刷インキ(アクリル系紫外線硬化型インキ)による銀色印刷層106と白色印刷層(アクリル系紫外線硬化型インキ)107を形成した。なお、銀色インキは鱗片状のアルミニューム箔粉を含み、白色インキは酸化チタン顔料を含むものである。また、インキ層の膜厚は、2〜3μmの範囲である。
その白色印刷層107の上からアクリル系紫外線硬化型インキからなるオフセット印刷による絵柄印刷104と全面の透明オーバープリント印刷105を行った。インキ膜厚は、いずれも1μm未満のものである(
図3参照)。
【0035】
個々のカードサイズに裁断してから、ICモジュールを装着し、実施例1と同一のカード発行機によりエンコードを行い、続いて、レーザモジュールによりレーザ印字を行った。
まず、1行目のカードナンバー印字を透明オーバープリント印刷面上から、出力24Wの300dpiでレーザビームを照射すると、オフセット印刷による透明オーバープリント印刷105と絵柄印刷104、前記白色印刷層107、銀色印刷層106が消失し、カード用基材100の発色層102が露出し、さらに発色層102が発色に至らないため、白色であるカード用基材100で形成された白色の文字列が得られた。次に2行目の有効期限と3行目の利用者名を同様に、透明オーバープリント印刷面上から同一出力の500dpiでレーザビームを照射するとカード用基材100の発色層102面にグレイの文字列を有するレーザ印字カード1が得られた。
【0036】
(実施例3)
実施例1と同一のカード用基材100を使用して、接触型ICカードを製造した。
まず、カード用基材100の表面側のレーザ発色層102面上に、アクリル系紫外線硬化型インキからなるオフセット用アンカーインキを印刷して透明なオフセットアンカー層を103形成した。続いて、いずれもアクリル系紫外線硬化型インキからなるオフセット印刷による灰色印刷層108と絵柄印刷104と、全面の透明オーバープリント印刷105を行った。それぞれのインキ膜厚は、何れも1μm未満のものである(
図4参照)。
【0037】
個々のカードサイズに裁断してから、ICモジュールを装着し、実施例1と同一のカード発行機によりエンコードを行い、続いて、レーザモジュールによりレーザ印字を行った。
まず、1行目のカードナンバー印字を透明オーバープリント印刷面上から、出力24Wの400dpiでレーザビームを照射すると、オフセット印刷による透明オーバープリント印刷105と絵柄印刷104が消失し、前記オフセット灰色印刷層108による灰色印刷が見え、灰色印字された文字列が得られた。さらに、2行目の有効期限と3行目の利用者名を同様に、透明オーバープリント印刷面上から同一出力(24W)の500dpiでレーザビームを照射するとカード用基材100の発色層102面に発色によるグレイの文字列を有するレーザ印字カード1が得られた。
【0038】
(実施例4)
実施例1と同一のカード用基材100を使用して、接触型ICカードを製造した。
まず、カード用基材100の表面側の発色層102面上に、シルクスクリーン印刷インキ(アクリル系紫外線硬化型インキ)による銀色印刷層106を形成した。なお、銀色インキは鱗片状のアルミニューム箔粉を含むものである。また、インキ層の膜厚は、2〜3μmの範囲である。
その銀色印刷層106の上からアクリル系紫外線硬化型インキからなるオフセット印刷による絵柄印刷104と全面の透明オーバープリント印刷105を行った。インキ膜厚は、いずれも1μm未満のものである(
図5参照)。
【0039】
個々のカードサイズに裁断してから、ICモジュールを装着し、実施例1と同一のカード発行機によりエンコードを行い、続いて、レーザモジュールによりレーザ印字を行った。
まず、1行目のカードナンバー印字を透明オーバープリント印刷面上から、出力24Wの300dpiでレーザビームを照射すると、オフセット印刷による透明オーバープリント印刷105と絵柄印刷104、前記銀色印刷層106が消失し、カード用基材100の発色層102が露出し、さらに発色層102が発色に至らないため、白色であるカード用基材100で形成された白色の文字列が得られた。2行目の有効期限と3行目の利用者名を透明オーバープリント印刷面上から同一出力の500dpiでレーザビームを照射するとカード用基材100の発色層102面に濃いグレイの文字列を有するレーザ印字カード1が得られた。
【0040】
実施例1乃至実施例4で得られた接触型ICカードは、ETCカードとしても通常のクレジットカード等の用途の接触型ICカードとしても十分な実用性があり、印字の視認性、耐久性も十分であった。また、耐熱性の要求にも耐えるものであった。