特許第6244703号(P6244703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244703
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/36 20060101AFI20171204BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20171204BHJP
   B65H 11/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B65H5/36
   B65H5/06 D
   B65H11/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-144266(P2013-144266)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-16948(P2015-16948A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164633
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】三澤 勇二
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−155725(JP,A)
【文献】 特開2013−112489(JP,A)
【文献】 特開平02−158548(JP,A)
【文献】 特開平10−279111(JP,A)
【文献】 特開昭60−258029(JP,A)
【文献】 特開平03−056332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
B65H 5/04
B65H 5/08− 5/20
B65H 5/24− 5/38
B65H 9/00− 9/20
B65H 11/00−11/00
B65H 13/00−15/02
B65H 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して記録を行う記録部と、
前記記録部に向けて延びる搬送経路と、
前記搬送経路に媒体を送り出す給送機構と、
前記搬送経路に対して交差するように延設方向を変化させて合流する手差し経路と、
前記搬送経路と前記手差し経路との合流部に配置される可動部と、を備え、
前記可動部は、前記手差し経路への媒体の挿入抵抗を低減する方向に動くとともに、媒体が前記給送機構によって送り出されたときには動かず、媒体が前記手差し経路に挿入されたときには前記合流部を拡げる方向に動くことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記可動部は、前記手差し経路に挿入された媒体に押されることによって回動する可動
部材の一端側に設けられ、前記可動部材の回動に伴って前記手差し経路の外側に向けて移
動することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記給送機構によって送り出されて前記合流部を通過した媒体を前記給送機構側に向け
て送り戻す駆動ローラーと、
前記可動部の移動を規制する規制部材と、を備え、
前記駆動ローラーによって送り戻された媒体は、前記規制部材によって移動が規制され
た前記可動部によって撓み変位が制限されることによって、斜行が矯正されることを特徴
とする請求項1または請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
媒体が前記手差し経路に挿入されたときに、前記規制部材は前記可動部に対する移動の
規制を解除することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記規制部材は、前記手差し経路に突出可能な係合突部を有し、前記手差し経路に挿入
された媒体が前記係合突部に当接した場合に、前記可動部に対する移動の規制を解除する
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記手差し経路は、媒体の挿入方向において前記合流部よりも上流側に配置される第1
経路形成部と、前記合流部に配置される第2経路形成部とで形成され、
前記第1経路形成部の延設方向は前記搬送経路に対して角度θ1で交差する一方で、前
記第2経路形成部の延設方向は前記搬送経路に対して前記角度θ1よりも小さい角度θ2で交差し、
前記可動部は、前記合流部に配置されたときに前記第2経路形成部よりも前記合流部の
内側に向けて突出し、かつ、前記手差し経路に媒体が挿入されたときに、前記第2経路形
成部よりも前記合流部の外側に移動することを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいず
れか一項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式プリンターなどの記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の一例であるインクジェット式のプリンターには、給紙カセットに収容された用紙が自動搬送されるカセット側搬送経路に加えて、手差しトレイに載置された用紙が搬送される手差し側搬送経路を備えるものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−116228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような2つの搬送経路が合流する合流部においては、少なくとも一方の搬送経路の延設方向が変化するので、その延設方向が変化する搬送経路を通じて合流部を通過する用紙は、その搬送経路の形状に沿って撓みつつ、進行方向が変化する。
【0005】
そのため、合流部で延設方向が変化する搬送経路に対しては、合流部で延設方向が変化せずに直線状に延びる搬送経路に用紙を送り出す場合よりも強い力で用紙を送り出す必要がある。その点、給紙カセットから給送機構を用いて用紙を給送する場合には、給送機構の駆動力等を調整することで、用紙を送り出す力を強くすることができる。
【0006】
これに対して、合流部で延設方向を変化させることなく直線状に延びるカセット側の搬送経路に対して、用紙を手差しで挿入する手差し経路が所定の角度で交差するように合流している場合には、手差し経路に挿入された用紙の先端側が合流部にさしかかったところで用紙が撓むので、用紙の挿入抵抗が大きくなる。そして、用紙の挿入抵抗が大きくなると、使用者が必要な位置までの用紙の挿入が完了したと誤認してそれ以上の挿入をやめてしまい、自動搬送が可能な位置まで用紙が挿入されない、という課題がある。
【0007】
こうした課題を解決するための方法として、手差し経路の方を合流部で延設方向を変化させることなく直線状に延びる形状にして、この手差し経路にカセット側の搬送経路を所定の角度で交差するように合流させることも考えられる。しかし、このようにカセット側の搬送経路の形状を変化させると、給送機構等の配置も変更しなければならないために、大幅な設計変更が必要になってしまう。そのため、カセット側の搬送経路の形状を大きく変化させることなく、手差し経路に対する用紙の挿入抵抗を低減するのが好ましい。
【0008】
なお、こうした課題は、用紙に対して印刷を行うインクジェット式プリンターに限らず、他の搬送経路との合流部において延設方向が変化する手差し経路を備える記録装置においては、概ね共通したものとなっている。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録部に向けて媒体が自動搬送される搬送経路の形状を大きく変更することなく、同搬送経路との合流部において延設方向が変化する手差し経路に対する媒体の挿入抵抗を低減することができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する記録装置は、媒体に対して記録を行う記録部と、前記記録部に向けて延びる搬送経路と、前記搬送経路に媒体を送り出す給送機構と、前記搬送経路に対して交差するように延設方向を変化させて合流する手差し経路と、前記搬送経路と前記手差し経路との合流部に配置される可動部と、を備え、前記可動部は、前記手差し経路への媒体の挿入抵抗を低減する方向に動く。
【0011】
上記構成によれば、合流部に配置された可動部が動くことによって、手差し経路に対する媒体の挿入抵抗が低減される。したがって、記録部に向けて媒体が自動搬送される搬送経路の形状を大きく変更することなく、同搬送経路との合流部において延設方向が変化する手差し経路に対する媒体の挿入抵抗を低減することができる。
【0012】
上記記録装置において、前記可動部は、媒体が前記給送機構によって送り出されたときには動かず、媒体が前記手差し経路に挿入されたときには前記合流部を拡げる方向に動く。
【0013】
この構成によれば、媒体が前記手差し経路に挿入されたときに可動部が合流部を拡げる方向に動くことによって、手差し経路に対する媒体の挿入抵抗を低減することができる。
上記記録装置において、前記可動部は、前記手差し経路に挿入された媒体に押されることによって回動する可動部材の一端側に設けられ、前記可動部材の回動に伴って前記手差し経路の外側に向けて移動する。
【0014】
この構成によれば、媒体が手差し経路に挿入されると可動部材が回動するので、この回動に伴って可動部材の一端側に設けられた可動部を合流部内から手差し経路の外側に向けて移動させることができる。これにより合流部が拡がるので、手差し経路に対する媒体の挿入抵抗を低減することができる。また、可動部材は手差し経路に挿入された媒体に押されることによって回動するので、手差し経路に対する媒体の挿入を検知するセンサーや可動部材を回動させるための駆動源を設けることなく、簡素な構成で可動部を動かすことができる。
【0015】
上記記録装置は、前記給送機構によって送り出されて前記合流部を通過した媒体を前記給送機構側に向けて送り戻す駆動ローラーと、前記可動部の移動を規制する規制部材とを備え、前記駆動ローラーによって送り戻された媒体は、前記規制部材によって移動が規制された前記可動部によって撓み変位が制限されることによって、斜行が矯正される。
【0016】
この構成によれば、駆動ローラーが媒体を給送機構側に向けて送り戻すと、合流部において媒体が撓み変位して、可動部に接触する。このとき、可動部は規制部材によって移動が規制されているので、撓み変位する媒体が可動部を押しても可動部は動かない。これにより、媒体の撓み変位が制限されて、搬送経路での媒体の斜行が矯正される。これに対して、可動部が合流部に配置されていない場合には、給送機構によって送り出された媒体の撓み変位が大きくなって、斜行を矯正する機能が低下するおそれがある。すなわち、規制部材が可動部の移動を規制することによって、給送機構による媒体の給送精度の低下を抑制することができる。
【0017】
上記記録装置において、媒体が前記手差し経路に挿入されたときに、前記規制部材は前記可動部に対する移動の規制を解除する。
この構成によれば、媒体が手差し経路に挿入されると、規制部材が可動部に対する移動の規制を解除するので、媒体が手差し経路に挿入されたときに可動部を移動させて、媒体の挿入抵抗を低減することができる。
【0018】
上記記録装置において、前記規制部材は、前記手差し経路に突出可能な係合突部を有し、前記手差し経路に挿入された媒体が前記係合突部に当接した場合に、前記可動部に対する移動の規制を解除する。
【0019】
この構成によれば、可動部に対する移動の規制は、手差し経路に挿入された媒体が係合突部に当接することによって解除されるので、手差し経路に挿入された媒体を検出するためのセンサー等を設けることなく、簡素な構成で媒体の進入経路を判別して、可動部の動きを制御することができる。
【0020】
上記記録装置において、前記手差し経路は、媒体の挿入方向において前記合流部よりも上流側に配置される第1経路形成部と、前記合流部に配置される第2経路形成部とで形成され、前記第1経路形成部の延設方向は前記搬送経路に対して角度θ1で交差する一方で、前記第2経路形成部の延設方向は前記搬送経路に対して前記角度θ1よりも小さい角度θ2で交差し、前記可動部は、前記合流部に配置されたときに前記第2経路形成部よりも前記合流部の内側に向けて突出し、かつ、前記手差し経路に媒体が挿入されたときに、前記第2経路形成部よりも前記合流部の外側に移動する。
【0021】
この構成によれば、媒体が給送機構によって送り出されたときには、第2経路形成部よりも合流部の内側に向けて突出した可動部によって、給送機構が送り出した媒体を案内することができる。一方、手差し経路に媒体が挿入されると、可動部が第2経路形成部よりも合流部の外側に移動するので、第1経路形成部によって合流部まで案内された媒体は、第2経路形成部に案内されながら合流部を通過する。このとき、第2経路形成部は搬送経路に対する交差角度が第1経路形成部よりも小さいので、合流部における媒体の進行方向の変化が緩やかになり、媒体の第2経路形成部への引っかかりを抑制することができる。すなわち、可動部を合流部から退避させて手差し経路の搬送経路に対する交差角度を小さくすることによって、手差し経路に対する媒体の挿入抵抗を低減することができる。
【0022】
上記記録装置において、前記可動部は一方向に回転可能な回転ローラーであって、前記回転ローラーは、前記手差し経路を通じて前記合流部に進入した媒体の移動に伴って前記一方向に回転する。
【0023】
この構成によれば、手差し経路に手差しによって挿入された媒体が合流部に進入すると、合流部において進行方向が変化する媒体の移動に伴って回転ローラーが回転するので、媒体の挿入抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態の記録装置を備える複合機の斜視図。
図2】同複合機の断面図。
図3】第1実施形態の可動機構の上面図。
図4】第1実施形態の可動機構の構成を示す断面図。
図5】第1実施形態の可動部材及び規制部材の斜視図。
図6】第1実施形態の規制部材の作用を説明する断面図。
図7】第1実施形態の可動部材の作用を説明する断面図。
図8】第1実施形態の可動機構の作用を説明する断面図。
図9】第2実施形態の可動部を示す断面図。
図10】第3実施形態の可動部が合流部に配置された状態を示す断面図。
図11】第3実施形態の可動部が合流部の外側に移動した状態を示す断面図。
図12】第4実施形態の可動部が合流部に配置された状態を示す断面図。
図13】第4実施形態の可動部が合流部の外側に移動した状態を示す断面図。
図14】変更例の記録装置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、記録装置の実施形態について、図を参照して説明する。記録装置は、例えば、媒体に液体の一例であるインクを噴射することによって記録(印刷)を行うプリンターである。
【0026】
(第1実施形態)
図1に示すように、複合機11は、本実施形態の記録装置12と、ヒンジ部13を介して記録装置12に対して開閉可能に取り付けられた画像読取装置14とを備えている。画像読取装置14は、原稿載置部14aにセットされた1または複数の原稿に記録された画像の読取りを行う。
【0027】
記録装置12は、開口部15が形成された筐体部16と、筐体部16内で媒体17に対して記録を行う記録部20とを備えている。なお、本実施形態では、筐体部16の開口部15が形成された側を前側、ヒンジ部13が設けられた側を後側ということがある。
【0028】
記録部20は、筐体部16の長手方向に沿って往復移動可能なキャリッジ21と、キャリッジ21の底面側に配置された記録ヘッド22とを備えている。キャリッジ21には、記録ヘッド22に供給される記録材であるインクを収容した収容体23が着脱可能に装着される。
【0029】
筐体部16において開口部15の上側には、複合機11を操作するための操作パネル24が前方に向けて突出するように設けられている。筐体部16の底面側には、媒体17を複数枚重ねて収容可能な給送カセット25が着脱可能に設けられている。筐体部16において開口部15と給送カセット25との間には、開口部15を通じて排出された媒体17を受けるための伸縮可能な排出トレイ26が配置されている。
【0030】
図2に示すように、筐体部16において画像読取装置14の後方(図2では右方)には、手差しガイド31が回動可能に取り付けられている。また、筐体部16において手差しガイド31が取り付けられた部分には、媒体17を筐体部16内に挿入するための挿入口32が形成されている。
【0031】
筐体部16内には、挿入口32を通じて挿入された媒体17を案内する挿入経路形成部材33が前下がりとなるように傾斜した状態で配置されている。さらに、挿入経路形成部材33と記録部20との間には、支持フレーム30に支持された手差し経路形成部材34が配置されている。挿入経路形成部材33及び手差し経路形成部材34は、挿入口32から記録部20に向けて延びる手差し経路を形成する。
【0032】
筐体部16の後部において手差しガイド31と給送カセット25との間には、給送カセット25に収容された媒体17を記録部20に向けて延びる搬送経路に送り出す給送機構35が配置されている。給送機構35は、図示しない駆動源の駆動力によって回転する中間ローラー36と、中間ローラー36との間に媒体17を挟持して、中間ローラー36の回転に基づき従動回転するリタードローラー37及びアシストローラー38とを備えている。
【0033】
中間ローラー36の前側であって、挿入経路形成部材33の下側となる位置には、前方に向けて延びる搬送経路形成部材39が配置されている。搬送経路形成部材39は、給送機構35から記録部20に向けてほぼ直線状に延びる搬送経路を形成する。そして、手差し経路は、搬送経路に対して鋭角をなして交差するように延設方向を変化させて、搬送経路に合流している。
【0034】
記録ヘッド22のすぐ後方には、搬送ローラー対40を構成する駆動ローラー40aと従動ローラー40bとが配置されている。駆動ローラー40aは手差し経路形成部材34及び記録部20と対向する位置に配置された支持部材42に支持されている一方、従動ローラー40bは手差し経路形成部材34の先端側(図2では左端側)に回動自在な状態で支持されている。そして、駆動ローラー40aは図示しない駆動源の駆動力によって回転する一方、従動ローラー40bは駆動ローラー40aの回転に基づいて従動回転する。
【0035】
支持部材42において手差し経路形成部材34と対向する位置には、搬送経路を形成する搬送経路形成面42aが設けられている。また、支持部材42において記録部20と対向する位置には、媒体17を支持するための媒体支持部42bが設けられている。
【0036】
図3に示すように、手差し経路形成部材34は、媒体17の幅方向(図3では左右方向)に並ぶように配置された一対の可動機構50を支持している。可動機構50は、手差し経路形成部材34の基端側(後端側)に回動可能に支持された可動部材51と、手差し経路形成部材34の前後方向における中央付近に回動可能に支持された規制部材52とを備えている。
【0037】
図4に示すように、手差し経路形成部材34は、搬送経路形成部材39と対向する位置に配置される第1経路形成部61と、搬送経路形成面42aと対向する位置に配置される第2経路形成部62とを有している。
【0038】
搬送経路形成部材39の前方の領域は、手差し経路と搬送経路とが合流する合流部63になっている。そして、第1経路形成部61は媒体17の挿入方向において合流部63よりも上流側に配置される一方、第2経路形成部62は合流部63に配置されている。また、第1経路形成部61の延設方向は搬送経路に対して角度θ1で交差している一方、第2経路形成部62の延設方向は搬送経路に対して角度θ1よりも小さい角度θ2で交差している。
【0039】
規制部材52は、手差し経路形成部材34の基端側(図4では右端側)に回動可能に支持される回動軸53と、回動軸53から前方(図4では左方)に延びて可動部材51に係合する規制部54と、手差し経路に突出可能な係合突部55とを有している。
【0040】
可動部材51は、手差し経路形成部材34に回動可能に支持される回動軸部56と、回動軸部56よりも先端側(図4では左端側)に配置された可動部57と、回動軸部56よりも基端側(図4では右端側)に配置された係合壁部58とを有している。規制部材52の規制部54は、図4に示すように可動部材51の係合壁部58の後方に配置されたときに、可動部材51の図4における時計方向への回動を規制する。
【0041】
可動部57は、合流部63に配置されたときの延設方向が第1経路形成部61の延設方向とほぼ平行をなす第1受圧部59と、合流部63に配置されたときの延設方向が搬送経路とほぼ平行をなす第2受圧部60とを有している。
【0042】
図5に示すように、可動部材51の先端側には、付勢部材65が取り付けられる突部66が幅方向に向けて突設されている。そして、可動部材51は、付勢部材65によって図4における反時計方向に付勢される。
【0043】
次に、以上のように構成された記録装置12の作用について説明する。
給送機構35による媒体17の給送や媒体17の手差し経路への挿入が行われる前には、規制部材52及び可動部材51は図2及び図4に示す非動作位置に配置されている。このとき、可動部材51は、付勢部材65の付勢力による回動(図2及び図4における反時計方向への回動)が支持フレーム30(図2参照)によって規制された状態になっている。
【0044】
可動部材51が非動作位置にあるとき、可動部57は合流部63に配置されて、第1受圧部59及び第2受圧部60が第2経路形成部62よりも合流部63の内側に向けて突出した状態になる。このとき、第2受圧部60は搬送経路形成面42aとともに搬送経路を形成する一方で、第1受圧部59は第1経路形成部61とともに搬送経路に対して角度θ1で交差する手差し経路を形成する。
【0045】
そして、給送カセット25に収容された媒体17に記録を行う場合には、給送機構35によって搬送経路に媒体17が送り出される。
図2に実線の媒体17で示すように、給送カセット25から送り出された媒体17は、中間ローラー36が図2における反時計方向に回転するのに伴って合流部63に進入する。このとき、搬送経路形成部材39は搬送経路形成面42aの上側にあるので、搬送経路形成部材39に案内された媒体17は搬送経路形成部材39から搬送経路形成面42aの上に落ちつつ、合流部63に進入する。
【0046】
そして、搬送経路形成面42aに沿って進む媒体17の先端が合流部63を通過すると、中間ローラー36の回転が一時停止されるとともに、駆動ローラー40aが図2における時計方向となる逆転方向に所定の回転角度だけ回転して、媒体17を給送機構35側に向けて送り戻す。
【0047】
すると、媒体17は先端側が送り戻されることによって上方に向けてふくらむように撓み変位して、図2に示すように可動部57の第2受圧部60に接触する。そして、さらに大きく撓み変位しようとする媒体17が可動部57の第2受圧部60を押すが、可動部57は、可動部材51の回動を規制部材52が規制することによって、移動が規制された状態になっている。
【0048】
そのため、媒体17はそれ以上の撓み変位が抑制されることによって押し戻されて、先端側が搬送ローラー対40に押しつけられる。その結果、媒体17の先端が幅方向に対して斜めになっていた場合には、その先端が幅方向と平行をなすように媒体17の向きが矯正される。すなわち、駆動ローラー40aによって送り戻された媒体17は、可動部57によって撓み変位が制限されることによって、斜行(スキュー)が矯正される。
【0049】
媒体17の斜行が矯正された後、駆動ローラー40a及び中間ローラー36が図2において反時計方向となる正転方向に回転すると、媒体17が搬送ローラー対40に挟持されて、記録部20に向けて搬送される。そして、搬送ローラー対40によって媒体支持部42b上に搬送された媒体17に対して記録ヘッド22からインクが噴射されることによって、記録(印刷)が行われる。
【0050】
一方、手差しガイド31を通じて筐体部16内に手差しによって挿入された媒体17に記録を行う場合には、媒体17が手差しによって手差し経路に挿入される。
図2に二点鎖線の媒体17で示すように、手差し経路に挿入された媒体17は、挿入経路形成部材33に案内されつつ、合流部63に向かって進む。
【0051】
そして、図6に示すように、媒体17の先端が規制部材52の係合突部55に当接すると、媒体17の押圧によって規制部材52が図6における時計方向に回動して、図7に示す位置に配置される。
【0052】
図7に示すように、規制部材52が回動して規制部54が上方に移動すると、規制部材52による可動部材51の回動の規制が解除される。すなわち、規制部材52は、媒体17が手差し経路に挿入されて係合突部55に当接した場合に、可動部57に対する移動の規制を解除する。
【0053】
そして、第1経路形成部61に案内されつつ手差し経路を進んだ媒体17の先端が合流部63に進入して可動部57の第1受圧部59を押すと、可動部材51が付勢部材65の付勢力に抗して図7における時計方向に回動する。
【0054】
すると、図8に示すように、可動部材51の回動に伴って可動部材51の一端側に設けられた可動部57が第2経路形成部62よりも合流部63の外側に移動する。これにより、合流部63に突出していた可動部57の分、合流部63が拡大する。すなわち、媒体17が手差し経路に挿入されたときには、可動部57が合流部63を拡げる方向、すなわち手差し経路の外側に向けて移動する。
【0055】
また、このように可動部57が合流部から退避する結果、合流部63において第2経路形成部62が手差し経路を形成する態様になるので、手差し経路の搬送経路に対する交差角度が角度θ1から、それよりも小さい角度θ2に変化する。
【0056】
これにより、媒体17は合流部63で搬送経路形成面42aにぶつかって撓み変位しつっつ進行方向が変化するものの、その変化の程度は可動部57が合流部63に突出していたときよりも緩やかになる。そのため、可動部57が合流部63に突出していたときと比較して、可動部57が合流部63から退避したときには、手差し経路への媒体17の挿入抵抗が小さくなる。すなわち、可動部57は、媒体17が給送機構35によって送り出されたときには動かず、媒体17が手差し経路に挿入されたときには手差し経路への媒体17の挿入抵抗を低減する方向に動く。
【0057】
合流部63において進行方向が変化した媒体17の先端が合流部63を通過して搬送ローラー対40に挟持されると、媒体17は搬送ローラー対40による自動搬送が可能な状態になるので、媒体17の手差しによる挿入が完了する。また、この状態で駆動ローラー40aが図8において反時計方向となる正転方向に回転すると、媒体17が記録部20に向けて搬送される。そして、搬送ローラー対40によって搬送される媒体17に記録ヘッド22からインクが噴射されることによって、記録(印刷)が行われる。
【0058】
なお、媒体17が手差し経路に挿入されたときに可動部57が動かずに合流部63に配置されていたとすると、媒体17が搬送経路形成面42aに沿って撓み変位しつつ進行方向が変化していく過程で、湾曲した媒体17の内側に位置する可動部57に媒体が接触することによって、媒体17の挿入抵抗が大きくなる。
【0059】
そのため、媒体17を挿入していた使用者は必要な位置までの挿入が完了したと誤認して、それ以上の挿入をやめてしまうおそれがある。すると、媒体17の先端が搬送ローラー対40に挟持されない状態で媒体17の挿入が中断されてしまうので、駆動ローラー40aが回転しても媒体17を記録部20に搬送することができないという搬送エラーが生じるおそれがある。したがって、媒体17が手差し経路に挿入されたときに、可動部57が移動することによって挿入抵抗を低減すると、手差し挿入の中断による搬送エラーの発生が抑制される。
【0060】
一方、給送機構35によって送り出された媒体17が駆動ローラー40aに送り戻されたときに、合流部63に可動部57が配置されていないと、撓み変位する媒体17を押さえることができない。そのため、媒体17が斜行したまま搬送されることによって記録部20への給送精度が低下して、印刷精度が悪くなるおそれがある。したがって、媒体17が給送機構35によって送り出されたときには、合流部63に配置された可動部57が動かないことによって、媒体17の給送精度が良好な状態に保たれる。
【0061】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)合流部63に配置された可動部57が動くことによって、手差し経路に対する媒体17の挿入抵抗が低減される。したがって、記録部20に向けて媒体17が自動搬送される搬送経路の形状を大きく変更することなく、同搬送経路との合流部63において延設方向が変化する手差し経路に対する媒体17の挿入抵抗を低減することができる。
【0062】
(2)媒体17が手差し経路に挿入されたときに可動部57が合流部63を拡げる方向に動くことによって、手差し経路に対する媒体17の挿入抵抗を低減することができる。
(3)媒体17が手差し経路に挿入されると可動部材51が回動するので、この回動に伴って可動部材51の一端側に設けられた可動部57を合流部63内から手差し経路の外側に向けて移動させることができる。これにより合流部63が拡がるので、手差し経路に対する媒体17の挿入抵抗を低減することができる。また、可動部材51は手差し経路に挿入された媒体17に押されることによって回動するので、手差し経路に対する媒体17の挿入を検知するセンサーや可動部材51を回動させるための駆動源を設けることなく、簡素な構成で可動部57を動かすことができる。
【0063】
(4)駆動ローラー40aが媒体17を給送機構35側に向けて送り戻すと、合流部63において媒体17が撓み変位して、可動部57に接触する。このとき、可動部57は規制部材52によって移動が規制されているので、撓み変位する媒体17が可動部57を押しても可動部57は動かない。これにより、媒体17の撓み変位が制限されて、搬送経路での媒体17の斜行が矯正される。これに対して、可動部57が合流部63に配置されていない場合には、給送機構35によって送り出された媒体17の撓み変位が大きくなって、斜行を矯正する機能が低下するおそれがある。すなわち、規制部材52が可動部57の移動を規制することによって、給送機構35による媒体17の給送精度の低下を抑制することができる。
【0064】
(5)媒体17が手差し経路に挿入されると、規制部材52が可動部57に対する移動の規制を解除するので、媒体17が手差し経路に挿入されたときに可動部57を移動させて、媒体17の挿入抵抗を低減することができる。
【0065】
(6)可動部57に対する移動の規制は、手差し経路に挿入された媒体17が係合突部55に当接することによって解除されるので、手差し経路に挿入された媒体17を検出するためのセンサー等を設けることなく、簡素な構成で媒体17の進入経路を判別して、可動部57の動きを制御することができる。
【0066】
(7)媒体17が給送機構35によって送り出されたときには、第2経路形成部62よりも合流部63の内側に向けて突出した可動部57によって、給送機構35が送り出した媒体17を案内することができる。一方、手差し経路に媒体17が挿入されると、可動部57が第2経路形成部62よりも合流部63の外側に移動するので、第1経路形成部61によって合流部63まで案内された媒体17は、第2経路形成部62に案内されながら合流部63を通過する。このとき、第2経路形成部62は搬送経路に対する交差角度が第1経路形成部61よりも小さいので、合流部63における媒体17の進行方向の変化が緩やかになり、媒体17の第2経路形成部62への引っかかりを抑制することができる。すなわち、可動部57を合流部63から退避させて手差し経路の搬送経路に対する交差角度を小さくすることによって、手差し経路に対する媒体17の挿入抵抗を低減することができる。
【0067】
(第2実施形態)
次に、記録装置の第2実施形態について、図9を参照して説明する。
第2実施形態の記録装置は、上記第1実施形態の可動機構に替えて、手差し経路形成部材34に回転可能に支持された回転ローラー70を可動部として備えている点が上記第1実施形態と異なっているが、その他の構成は概ね第1実施形態と同様である。なお、両実施形態において同じ符号を付した部材は同様の構成を備えるので説明を省略し、以下においては第1実施形態と異なる点を中心に説明を行う。
【0068】
図9に示すように、回転ローラー70は、周面の一部が合流部63に突出するとともに、合流部63に突出した周面が支持部材42との間に搬送経路を形成するように、支持部材42から離間した位置に配置されている。
【0069】
回転ローラー70は、図9に矢印で示す一方向(図9における時計方向)に回転可能である一方で、この一方向の逆方向(図9における反時計方向)への回転を規制する規制部材の一例であるワンウェイクラッチ71を有している。
【0070】
次に、本実施形態の記録装置の作用を説明する。
給送機構35(図2参照)が送り出した媒体17が駆動ローラー40aによって送り戻されると、撓み変位する媒体17が回転ローラー70を押すことによって、回転ローラー70に逆方向(図9における反時計方向)への回転力が付与されることがある。
【0071】
このとき、回転ローラー70はワンウェイクラッチ71の作用によって逆方向への回転が規制されるので、回転ローラー70は逆方向に回らない。そのため、撓み変位しようとする媒体が回転ローラー70の周面に押し返されることによって媒体17の撓み変位が制限され、搬送経路における媒体17の斜行が矯正される。
【0072】
一方、手差し経路に挿入された媒体17が合流部63に進入して回転ローラー70に接触すると、媒体17の移動に伴って回転ローラー70が一方向(図9における時計方向)に回転する。これにより、手差し経路への媒体17の挿入抵抗が低減される。
【0073】
以上説明した第2実施形態によれば、上記(1)の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(8)手差し経路に手差しによって挿入された媒体17が合流部63に進入すると、合流部63において進行方向が変化する媒体17の移動に伴って回転ローラー70が回転するので、媒体17の挿入抵抗を低減することができる。
【0074】
(第3実施形態)
次に、記録装置の第3実施形態について、図10及び図11を参照して説明する。
第3実施形態の記録装置は、可動機構の構成が上記第1実施形態と異なっているが、その他の構成は概ね第1実施形態と同様である。なお、両実施形態において同じ符号を付した部材は同様の構成を備えるので説明を省略し、以下においては第1実施形態と異なる点を中心に説明を行う。
【0075】
図10に示すように、本実施形態の可動部材51Aは、基端側(図10では右端側)に設けられた回動軸部56と、先端側(図10では左端側)の上面に設けられた係合壁部58Aと、先端側から幅方向に延びる支持軸部76と、回動軸部56と係合壁部58Aとの間に設けられた可動部57とを有している。
【0076】
手差し経路形成部材34には、支持軸部76を係止可能な係止部77が設けられている。そして、可動部材51Aに外力が作用していないときには、可動部材51Aは支持軸部76が係止部77に係止されることによって図10に示す非動作位置に配置される。また、可動部材51Aが非動作位置にあるとき、可動部57は合流部63に配置される。
【0077】
規制部材52Aは、図示しない歯車列を介して駆動ローラー40aの回転が伝達される回動軸53と、回動軸53から延びる規制部54Aとを備えている。規制部材52Aは、駆動ローラー40aが回転するときに、駆動ローラー40aと同じ方向に回転する。
【0078】
そして、規制部材52Aが図10における反時計方向に回動すると、規制部54Aは可動部材51Aから離間した待機位置(図10に二点鎖線で示す位置)に配置される。一方、規制部材52Aが図10における時計方向に回動すると、規制部54Aは図10に実線で示すように可動部材51Aの係合壁部58Aに係合する規制位置に移動して、可動部材51Aの回動(図10における時計方向への回動)を規制する。
【0079】
次に、第3実施形態の記録装置の作用を説明する。
媒体17を搬送するために駆動ローラー40aが正転方向(図10における反時計方向)に回転すると、規制部材52Aは図10における反時計方向に回動して、待機位置に配置される。そのため、先の記録動作が終了して、次の媒体17への記録が実行される前には、規制部材52Aは待機位置に配置されている。
【0080】
そして、給送機構35(図2参照)によって搬送経路に送り出された媒体17の先端が合流部63を通過すると、駆動ローラー40aが図10における時計方向となる逆転方向に回転して、媒体17を送り戻す。
【0081】
駆動ローラー40aが逆転方向に回転すると、規制部材52Aが図10における時計方向に回動することによって、規制部54Aが待機位置から規制位置に移動して、可動部材51Aの係合壁部58Aに当接する。これにより、可動部材51Aは図10における時計方向への回動が規制されるので、可動部57の移動が規制される。そのため、送り戻された媒体17が第2受圧部60を押しても可動部57は移動せず、媒体17は撓み変位が制限されることによって斜行が矯正される。
【0082】
媒体17の斜行が矯正された後、駆動ローラー40aが正転方向に回転すると、媒体17が搬送ローラー対40に挟持されて、記録部20に向けて搬送される。また、駆動ローラー40aの正転方向への回転に伴って、規制部材52Aは図10における反時計方向に回動する。これにより、規制部材52Aは規制位置から待機位置に戻るので、可動部材51Aの回動の規制が解除される。
【0083】
一方、先の記録動作が終了した後に、手差し経路に媒体17が挿入されると、合流部63に進入した媒体17が可動部57の第1受圧部59を押す。その結果、可動部材51Aが図10における時計方向に回動する。
【0084】
すると、図11に示すように、合流部63に配置されていた可動部57が可動部材51Aの回動に伴って合流部63の外側に向けて退避する。これにより、合流部63が拡がるので、手差し経路への媒体17の挿入抵抗が小さくなる。
【0085】
以上説明した第3実施形態によれば、上記(1)〜(4)及び(7)の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(9)規制部材52Aは、媒体17を送り戻す駆動ローラー40aの逆転方向への回転に伴って可動部57の移動を規制する一方、駆動ローラー40aの正転方向への回転に伴って可動部57に対する移動の規制を解除する。そのため、手差し経路に挿入された媒体17を検出するためのセンサー等を設けることなく、簡素な構成で可動部57の動きを制御することができる。
【0086】
(第4実施形態)
次に、記録装置の第4実施形態について、図12及び図13を参照して説明する。
第4実施形態の記録装置は、規制部材を備えず、手差し経路形成部材34に回動自在に支持された可動部材51Bを備えている点が上記第1実施形態と異なっているが、その他の構成は概ね第1実施形態と同様である。なお、両実施形態において同じ符号を付した部材は同様の構成を備えるので説明を省略し、以下においては第1実施形態と異なる点を中心に説明を行う。
【0087】
図12に示すように、可動部材51Bは、基端側(図12では右端側)に設けられた回動軸部56と、先端側(図12では左端側)に設けられた支持軸部76Bと、回動軸部56と支持軸部76との間に設けられた可動部57とを有している。
【0088】
手差し経路形成部材34には、支持軸部76Bを係止可能な係止部77Bが設けられている。そして、可動部材51Bに外力が作用していないときには、可動部材51Bは支持軸部76Bが係止部77Bに係止されることによって図12に示す非動作位置に配置される。また、可動部材51Bが非動作位置にあるとき、可動部57は合流部63に配置されている。
【0089】
可動部57は、合流部63に配置されたときの延設方向が第1経路形成部61の延設方向とほぼ平行をなす第1受圧部59と、第2経路形成部62の延設方向及び搬送経路の延設方向と交差する方向に延びる第2受圧部60Bとを有している。そして、回動軸部56は、駆動ローラー40aに送り戻されることによって撓み変位した媒体17が第2受圧部60Bを押圧するときの押圧方向の先に配置されている。
【0090】
次に、第4実施形態の記録装置の作用を説明する。
給送機構35(図2参照)によって搬送経路に送り出された媒体17の先端が合流部63を通過すると、駆動ローラー40aが図12における時計方向となる逆転方向に回転して媒体17を送り戻す。
【0091】
そして、送り戻された媒体17は撓み変位して第2受圧部60Bを押すが、可動部材51Bの回動軸部56は媒体17の押圧方向の先にあるために、可動部材51Bは回動しない。すなわち、可動部57は合流部63に配置されたままで移動しないので、媒体17は可動部57に押し戻されることによって撓み変位が制限されて斜行が矯正される。
【0092】
一方、手差し経路に媒体17が挿入されると、合流部63に進入した媒体17が可動部57の第1受圧部59を押すことによって、可動部材51Bが図12における時計方向に回動する。
【0093】
すると、図13に示すように、合流部63に配置されていた可動部57が可動部材51Bの回動に伴って合流部63の外側に向けて退避する。これにより、合流部63が拡がるので、手差し経路への媒体17の挿入抵抗が小さくなる。
【0094】
以上説明した第4実施形態によれば、上記(1)〜(3),(7)の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(10)駆動ローラー40aが媒体17を送り戻すと、合流部63において媒体17が撓み変位して、可動部57に接触する。このとき、可動部材51Bの回動軸部56は媒体17の押圧方向の先にあるために、可動部材51Bは回動しない。すなわち、可動部57は移動しないので、撓み変位する媒体17が可動部57を押しても可動部材51Bは回動しない。これにより、媒体17の撓み変位が制限されて、搬送経路での媒体17の斜行が矯正されるので、媒体17の給送精度の低下を抑制することができる。
【0095】
(11)可動部材51Bの回動を規制する部材を備えることなく、媒体17によって押される可動部57の移動を規制することができるので、簡素な構成で媒体17の給送精度の低下を抑制することができる。
【0096】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・駆動ローラー40aの回転に伴って移動する可動部を備え、駆動ローラー40aが逆転方向に回転すると可動部が合流部63に配置される一方で、駆動ローラー40aが正転方向に回転すると可動部が合流部63から退避するようにしてもよい。すなわち、媒体が手差し経路に挿入されたときには可動部が合流部63の外側に配置されて動かない一方、駆動ローラー40aが媒体17を送り戻したときに可動部が合流部63の内側に向けて移動するようにしてもよい。この構成によれば、手差し経路に挿入された媒体17を検出するためのセンサー等を設けることなく、簡素な構成で可動部の動きを制御することができる。
【0097】
・手差しガイド31が挿入口32を覆う閉位置にあるときには可動部が合流部63に配置される一方で、閉位置にある手差しガイド31が回動されて媒体17を手差し経路に挿入可能な状態になったときに、可動部が合流部63から退避するようにしてもよい。この構成によれば、手差し経路に挿入された媒体17を検出するためのセンサー等を設けることなく、簡素な構成で可動部の動きを制御することができる。また、媒体17が可動部を押さなくても可動部を動かすことができるので、手差し経路に対する媒体17の挿入抵抗をさらに低減することができる。
【0098】
図14に示す変更例のように、記録装置は、筐体部16に対して開閉可能に蓋部29が取り付けられた記録装置12Aであってもよい。すなわち、記録装置は画像読取機能を備える複合機に搭載されるものに限らず、印刷機能のみを備えるプリンターであってもよい。あるいは、ファクシミリ、複写装置、またはこれら装置を備える複合機に備えられる記録装置であってもよい。
【0099】
・記録部20がキャリッジ21を備えず、媒体17の幅全体と対応した長尺状の固定された記録ヘッドを備える、いわゆるフルラインタイプの記録装置に変更してもよい。この場合の記録ヘッドは、ノズルが形成された複数の単位ヘッド部を並列配置することによって記録範囲が媒体17の幅全体に亘るようにしてもよいし、単一の長尺ヘッドに媒体17の幅全体に亘るように多数のノズルを配置することによって、記録範囲が媒体17の幅全体に亘るようにしてもよい。
【0100】
・記録ヘッド22に供給される記録材を収容する収容体23は、キャリッジ21上に着脱可能に装着されるカートリッジに限らず、筐体部16内においてキャリッジ21以外の所定箇所に固定されるタンクであってもよい。
【0101】
・収容体23は、剛性を有するケースの中に、記録材を収容した可撓性を有するパックが収容された構成としてもよいし、剛性を有するケースの中に直接記録材を収容する構成としてもよい。
【0102】
・収容体23に記録材を注入可能な注入口を設けて、この注入口を通じて記録材を注入したり補充したりすることができるようにしてもよい。この構成によれば、収容体23を着脱することなく記録材を補充することができる。
【0103】
・収容体23を筐体部16の外側に配置して、この収容体23に収容された記録材をキャリッジ21に接続された供給チューブ等を介して記録ヘッド22に供給する構成にしてもよい。この場合には、収容体23を筐体部16の外面に固定してもよいし、収容体23を筐体部16から離間した位置に配置してもよい。この構成によれば、収容体23の大きさが筐体部16の容積に制限されないために、収容体23を大型化して、より多くの記録を連続して行うことができる。
【0104】
なお、筐体部16の外側から供給チューブを介して記録ヘッド22に記録材を供給する場合には、供給チューブを通すための孔や切り欠きを筐体部16に設けてもよい。この構成によれば、筐体部16の外側から記録ヘッド22に記録材を供給する供給チューブが剛性の低い材料によって構成されている場合にも、供給チューブの潰れを抑制して、筐体部16の外側に配置された収容体23から記録ヘッドへの流路を確保することができる。
【0105】
あるいは、筐体部16に対して開閉可能に設けられた画像読取装置14や蓋部29などの開閉体が完全に閉じないようにボスなどを立て、このボスによって筐体部16と開閉体との間に形成される隙間に供給チューブを通してもよい。この構成によれば、筐体部16に孔や切り欠きを設けることなく、供給チューブの潰れを抑制することができる。
【0106】
・記録に用いられる記録材は、インク以外の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して噴射できる固体を含む)ものであってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射して記録を行う構成にしてもよい。
【0107】
また、記録装置は、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体(粉粒体)を例とする固体を噴射する粉粒体噴射装置(例えばトナージェット式記録装置)であってもよい。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体、粉粒体(粒体、粉体を含む)などが含まれる。
【0108】
・記録装置は、インクなどの流体を噴射することで記録を行うプリンターに限らず、例えばレーザープリンター、LEDプリンター、熱転写プリンター(昇華型プリンターを含む)などのノンインパクトプリンターでもよいし、ドットインパクトプリンターなどのインパクトプリンターでもよい。
【符号の説明】
【0109】
12…記録装置、17…媒体、20…記録部、35…給送機構、40a…駆動ローラー、51,51A,51B…可動部材、52,52A…規制部材、55…係合突部、57…可動部、61…第1経路形成部、62…第2経路形成部、63…合流部、70…回転ローラー、71…規制部材の一例であるワンウェイクラッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14