(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244732
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ハイブリッドシステム及びハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60K 6/36 20071001AFI20171204BHJP
B60K 6/543 20071001ALI20171204BHJP
B60K 6/54 20071001ALI20171204BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20171204BHJP
B60W 20/50 20160101ALI20171204BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20171204BHJP
【FI】
B60K6/36ZHV
B60K6/543
B60K6/54
B60W10/10 900
B60W20/50
B60K6/485
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-166564(P2013-166564)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-33969(P2015-33969A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】阿曽 充宏
(72)【発明者】
【氏名】岩田 憲仁
【審査官】
増子 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−266012(JP,A)
【文献】
特開昭62−265041(JP,A)
【文献】
特開2007−331632(JP,A)
【文献】
特開2009−126404(JP,A)
【文献】
特開2013−075540(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/108143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/50
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60K 17/00 − 17/08
F16H 9/00 − 9/26
F16H 59/00 − 61/12
F16H 61/16 − 61/24
F16H 61/66 − 61/70
F16H 63/40 − 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と電動発電機を有するハイブリッドシステムにおいて、
前記内燃機関から電動発電機に動力を伝達する動力伝達機構を設け、
前記動力伝達機構は、前記内燃機関のクランク軸に直結する無段変速機で構成され、
前記無段変速機は、前記クランク軸に直結する第1プーリーと、前記電動発電機に連結する第2プーリーと、前記第1プーリー及び前記第2プーリーに掛けられた無端状の動力伝達部と、前記第1プーリーの有効直径を変更する無段変速機駆動用モータと、前記2プーリーをその有効直径が拡大する方向に付勢する付勢手段と、を有し、
前記第1プーリー及び前記第2プーリーのうち、一方のプーリーの有効直径が拡大するほど前記動力伝達部の一方のプーリーに接する位置は一方のプーリーの外側に変位し、この結果、前記動力伝達部の他方のプーリーに接する位置が他方のプーリーの内側に変位することで他方のプーリーの有効直径は縮小し、
前記付勢手段の付勢力の大きさは、前記無段変速機駆動用モータが作動不良になったときに、前記第2プーリーの有効直径が最大になるように設定されていることを特徴とするハイブリッドシステム。
【請求項2】
内燃機関と電動発電機を有するハイブリッドシステムにおいて、
前記内燃機関から電動発電機に動力を伝達する動力伝達機構を設け、
前記動力伝達機構は、前記内燃機関のクランク軸に直結する無段変速機で構成され、
前記無段変速機は、前記クランク軸に直結する第1プーリーと、前記電動発電機に連結する第2プーリーと、前記第1プーリー及び前記第2プーリーに掛けられた無端状の動力伝達部と、前記第1プーリーの有効直径を変更する無段変速機駆動用モータと、前記2プーリーをその有効直径が拡大する方向に付勢する付勢手段と、を有し、
前記第1プーリー及び前記第2プーリーのうち、一方のプーリーの有効直径が拡大するほど前記動力伝達部の一方のプーリーに接する位置は一方のプーリーの外側に変位し、この結果、前記動力伝達部の他方のプーリーに接する位置が他方のプーリーの内側に変位することで他方のプーリーの有効直径は縮小し、
前記無段変速機駆動用モータを制御するハイブリッド制御装置が、前記電動発電機が作動不良であることを検出したときに、前記第1プーリーの有効直径が最小になるように前記無段変速機駆動用モータを駆動することを特徴とするハイブリッドシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッドシステムを搭載したことを特徴とするハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と電動発電機の間に設けられた無段変速機構を備えたハイブリッドシステム及びハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関と電動発電機の両方を搭載するハイブリッド車両(HEV)では、内燃機関の出力により電動発電機を駆動して発電して、この発電した電力をバッテリに充電したり、このバッテリに充電した電力で電動発電機を駆動して内燃機関の出力をアシストしたりしている。この内燃機関で電動発電機を駆動する場合には、内燃機関の駆動力を電動発電機に伝達する必要がある。
【0003】
この動力伝達に関しては、いくつかの方法が提案されており、例えば、エンジン(内燃機関)と変速機との間に電動モータ(電動発電機)を設けて、この電動モータをエンジンの駆動軸(クランク軸)に連結したハイブリッド車両が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、無段変速機構の回転数比が大きい状態で、電動発電機の回転数を制御できなくなる等の作動不良になった場合には、内燃機関の回転数が増加すると電動発電機の回転数が著しく高くなって、電動発電機に過回転による損傷及び寿命低下が発生する可能が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−075540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、その目的は、ハイブリッドシステムが作動不良になったときに、電動発電機の損傷及び寿命低下を回避することができる、ハイブリッドシステム及びハイブリッド車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明のハイブリッドシステムは、内燃機関と電動発電機を有するハイブリッドシステムにおいて、前記内燃機関から電動発電機に動力を伝達する動力伝達機構を設け、
前記動力伝達機構は、前記内燃機関のクランク軸に直結する無段変速機で構成され、前記無段変速機は、前記クランク軸に直結する第1プーリーと、前記電動発電機に連結する第2プーリーと、前記第1プーリー及び前記第2プーリーに掛けられた無端状の動力伝達部と、前記第1プーリーの有効直径を変更する無段変速機駆動用モータと、前記2プーリーをその有効直径が拡大する方向に付勢する付勢手段と、を有し、前記第1プーリー及び前記第2プーリーのうち、一方のプーリーの有効直径が拡大するほど前記動力伝達部の一方のプーリーに接する位置は一方のプーリーの外側に変位し、この結果、前記動力伝達部の他方のプーリーに接する位置が他方のプーリーの内側に変位することで他方のプーリーの有効直径は縮小し、前記付勢手段の付勢力の大きさは、前記無段変速機駆動用モータが作動不良になったときに、前記第2プーリーの有効直径が最大になるように設定されていることを特徴とする。
【0008】
また、上記の目的を達成するための本発明のハイブリッドシステムは、内燃機関と電動発電機を有するハイブリッドシステムにおいて、前記内燃機関から電動発電機に動力を伝達する動力伝達機構を設け、前記動力伝達機構は、前記内燃機関のクランク軸に直結する無段変速機で構成され、前記無段変速機は、前記クランク軸に直結する第1プーリーと、前記電動発電機に連結する第2プーリーと、前記第1プーリー及び前記第2プーリーに掛けられた無端状の動力伝達部と、前記第1プーリーの有効直径を変更する無段変速機駆動用モータと、前記2プーリーをその有効直径が拡大する方向に付勢する付勢手段と、を有し、前記第1プーリー及び前記第2プーリーのうち、一方のプーリーの有効直径が拡大するほど前記動力伝達部の一方のプーリーに接する位置は一方のプーリーの外側に変位し、この結果、前記動力伝達部の他方のプーリーに接する位置が他方のプーリーの内側に変位することで他方のプーリーの有効直径は縮小し、前記無段変速機駆動用モータを制御するハイブリッド制御装置が、前記電動発電機が作動不良であることを検出したときに、前記第1プーリーの有効直径が最小になるように前記無段変速機駆動用モータを駆動することを特徴とする。
【0009】
また、上記の目的を達成するための本発明のハイブリッド車両は、上記のハイブリッドシステムを搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハイブリッドシステム及びハイブリッド車両によれば、ハイブリッドシステムが差動不良になったような失陥時には、
「動力伝達機構における、クランク軸側の回転数に対する電動発電機側の回転数との比である回転数比」を小さいものとすることができる。これにより、電動発電機側の回転数が異常な高回転数、即ち、過回転にならないようにして、過回転に起因する電動発電機の損傷及び寿命低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態のハイブリッドシステム及びハイブリッド車両の構成を示す図である。
【
図2】CVTと電動発電機の構成を示す図であり、CVT駆動用モータが正常に作動している状態を示す図である。
【
図3】CVTと電動発電機の構成を示す図であり、CVT駆動用モータに失陥が生じた状態とCVTにおける損傷回避状態を示す図である。
【
図4】CVTと電動発電機の構成を示す図であり、電動発電機に失陥が生じた状態とCVTにおける損傷回避状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態のハイブリッドシステム及びハイブリッド車両について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に示すように、この実施の形態のハイブリッドシステム2は、エンジン(内燃機関)10と電動発電機(M/G)21を有するハイブリッドシステムである。なお、ここでは、このハイブリッドシステム2はハイブリッド車両(HEV:以下車両とする)1に搭載されるものとして説明するが、必ずしも、車両に搭載されるものに限定されない。
【0021】
図1に示すように、この実施例の形態のハイブリッドシステム2は、エンジン本体(ENG)11と排気通路12とターボ過給器13と、排気通路12に設けられた排気ガス浄化装置(後処理装置)14を備えている。
【0022】
このエンジン10のクランク軸15にCVT(動力伝達機構:無段変速機構:レシオ可変機構)16を介して間接に電動発電機21を連結している。つまり、エンジン10のクランク軸15に直結してCVT16を設け、このCVT16に電動発電機21を連結する。つまり、エンジン10のクランク軸15にCVT16の第1プーリー(第1動力伝達部)16aを設けると共に、電動発電機21にCVT16の第2プーリー(第2動力伝達部)16bを設けて構成し、第1プーリー16aと第2プーリー16bを介してクランク軸15と電動発電機21との間の動力伝達を行うように構成する。この第1プーリー16aと第2プーリー16bとの間には無端状のベルト又はチェーン(第3動力伝達部:以下ベルト)16cが掛けられており、クランク軸15から第1プーリー16aとベルト16cと第2プーリー16bを経由して電動発電機21に、また逆に、電動発電機21から第2プーリー16bとベルト16cと第1プーリー16aを経由してクランク軸15に、動力が伝達される。
【0023】
このCVT16では、2個一組の第1プーリー16aと第2プーリー16bにベルト16cをかけ、個々のプーリー16a、16bの幅を変えることにより、プーリー16a、16bとベルト16cの接する位置を変えるようにしており、幅が拡げられてベルト16cの接する位置が内側に(軸に近く)なれば有効直径が小さくなり、逆に幅が狭められてベルト16cの接する位置が外側なれば(外周側に移動すれば)有効直径が大きくなるように構成されている。そして、電子制御による油圧又は電動機構(図示しない)で2個のプーリー16a、16bの幅の拡縮が互いに逆になるように変化させる制御をすることにより、ベルト16cをたるませることなく、変速を連続的に行うことができる。
【0024】
そして、
図2〜
図4に示すように、CVT駆動用モータ(無段変速機用モータ)16dが矢印R1方向(又はR2方向)に回転駆動し、このCVT駆動用モータ16dの回転軸に固定されているアクチュエータギア16eを回転させると、これに噛み合うスライダーギア16fが回転し、このスライダーギア16fが設けられている第1プーリー可動部16gが矢印X1方向(又はX2方向)に移動する。この第1プーリー可動部16gが、
図2の矢印X1方向に移動すると第1プーリー16aは拡径し、矢印X2方向に移動させると第1プーリー16aは縮径する。
【0025】
また、電動発電機21側の回転軸に固定されたスプリング止め16hに一端が係止され、他端が第2プーリー16bの第2プーリー稼動部16jを押圧して付勢しているリターンスプリング16iが設けられており、第1プーリー16aの拡径(X1方向移動)及び縮径(X2方向移動)に応じて、ベルト16cが巻回している第2プーリー16bも、リターンスプリング16iのバネ力を利用して縮径(X1方向移動)したり、逆に、バネ力に抗して拡径(X2方向移動)したりする。
【0026】
このCVT駆動用モータ16dの制御により、第1プーリー16aと第2プーリー16bの幅の拡縮が互いに逆になるように変化させることにより、ベルト16cをたるませることなく、変速を連続的に行うことができる。このCVT駆動用モータ16dは、ハイブリッド制御装置41によって制御される。
【0027】
つまり、
図2〜
図3に示すように、CVT16のクランク軸15に直結する第1プーリー16aと電動発電機21に連結する第2プーリー16bの内の一方のプーリー(
図2では第1プーリー)16aをCVT駆動用モータ16dで拡径及び縮径して、それに応じて他方のプーリー(
図2では第2プーリー)16bを縮径及び拡径するように構成する。
【0028】
このCVT16を、エンジン10において、クランク軸15の一方に変速機31が接続されており、クランク軸15の他方にCVT16が接続されているように構成すると、CVT16が、エンジン10に関して、変速機31とは反対側のクランク軸15に設けられていることになるので、これにより、エンジン10と変速機31の間にCVT16を設ける必要がなくなる。そのため、ハイブリッドシステムを考慮していない、既存のエンジンと変速機との組み合わせ(パワートレイン)に対しても、電動発電機を容易に設けることができ、ハイブリッドシステムを適用できるパワートレインの種類を拡大することが容易にできる。
【0029】
なお、この場合、従来技術では、エンジンに関して、変速機とは反対側には、クランク軸から駆動力を得ている冷却ファンや冷却水ポンプや潤滑油ポンプ等の補機が配置されているので、これらの補機は電動化して、クランク軸から直接駆動力を得ることなく、電動発電機で発電した電力で駆動されるようにすることが好ましい。これにより、補機類のレイアウトに関して自由性が増し、更には状況に応じて補機による負荷損失のないエンジン出力を駆動力に活用できるというメリットが生じる。
【0030】
そして、電力システム20の一部である電動発電機21は、発電機として、エンジン10の駆動力を受けて発電をしたり、又は、車両1のブレーキ力等の回生力発生による回生発電をしたりすると共に、モータとして駆動して、その駆動力をエンジン10のクランク軸15に伝達して、エンジン10の駆動力(出力:トルク)をアシストしたりする。
【0031】
なお、発電して得た電力は、配線22を経由してインバータ(INV)23で変換して第1バッテリ(充電器:B1)24Aに充電される。また、電動発電機21を駆動するときは、第1バッテリ24Aに充電された電力をインバータ23で変換して電動発電機21に供給する。
【0032】
図1の構成では、更に、DC−DCコンバータ(CON)25と第2バッテリ(B2)24Bを第1バッテリ24Aに直列に設けて、第1バッテリ24Aの、例えば、一般的な12Vや24V以上の高い電圧の電力を、DC−DCコンバータ25で、例えば、12Vに電圧降下させて、第2バッテリ24Bに充電して、この第2バッテリ24Bから補機の冷却ファン26A、冷却水ポンプ26B、潤滑油ポンプ26C等に電力を供給するように構成している。
【0033】
このハイブリッドシステム2を搭載したハイブリッド車両(以下車両)1においては、エンジン10の動力は、動力伝達システム30の変速機(トランスミッション)31に伝達され、さらに、変速機31より推進軸(プロペラシャフト)32を介して作動装置(デファレンシャルギア)33に伝達され、作動装置33より駆動軸(ドライブシャフト)34を介して車輪35に伝達される。これにより、エンジン10の動力が車輪35に伝達され、車両1が走行する。
【0034】
尚、エンジン10の搭載方式によっては、エンジン11から車輪35の動力の伝達経路は異なってもよい。
【0035】
一方、電動発電機21の動力に関しては、第1バッテリ24Aに充電された電力がインバータ23を介して電動発電機21に供給され、この電力により電動発電機21が駆動され動力を発生する。この電動発電機21の動力は、CVT16を介してクランク軸15に伝達されて、エンジン10の動力伝達経路を伝達して、車輪35に伝達される。
【0036】
これにより、電動発電機21の動力がエンジン10の動力と共に車輪35に伝達され、車両1が走行する。なお、回生時には、逆の経路で、車輪35の回生力、又はエンジン10の回生力が電動発電機21に伝達されて、電動発電機21で発電が可能となる。
【0037】
また、ハイブリッドシステム用制御装置41が設けられ、エンジン10の回転数Neや負荷Q等の運転状態や電動発電機21の回転数Na等の運転状態や第1バッテリ24A,第2バッテリ24Bの充電量(SOC)の状態をモニターしながら、ベルト式CVT16、電動発電機21、インバータ23、DC−DCコンバータ25等を制御する。このハイブリッドシステム用制御装置41は、通常は、エンジン10や車両1を制御する全体制御装置40に組み込まれて構成される。この全体制御装置40は、エンジン10の制御では、シリンダ内燃焼やターボ過給器13や排気ガス浄化装置14や補機の冷却ファン26A、冷却水ポンプ26B、潤滑油ポンプ26Cなどを制御している。
【0038】
そして、本発明においては、ハイブリッドシステム2が作動不良になったときに、電動発電機21側の回転数Naが異常な高回転数、即ち、過回転にならないようにして、過回転に起因する電動発電機21の損傷及び寿命低下を回避できるように、CVT16における、クランク軸16側の回転数Neに対する電動発電機21側の回転数Naとの比である回転数比Rn(=Na/Ne)が最小になるように構成する。
【0039】
図3に示すように、CVT16のCVT駆動用モータ16dが電源線16daの断線などの電源喪失等により作動不良になり、モータトルクが失われるような欠陥が発生した場合に、CVT駆動用モータ16dの駆動による一方のプーリー(
図2〜4では第1プーリー、以下第1プーリー)16aの拡径及び縮径ができなくなるが、他方のプーリー(
図2〜
図4では第2プーリー、以下第2プーリー)16bを拡径方向に付勢するリターンスプリング16iの付勢力(ばね力)により、第2プーリー16bの有効直径Daを最大にして回転数比Rnを最小にするように、リターンスプリング16iの付勢力の大きさを設定して構成する。
【0040】
つまり、リターンスプリング16iのバネ力をCVT駆動用モータ16dの停止時の摩擦トルクを上回るように構成し、CVT駆動用モータ16dが作動不良になったときには、電動発電機21側の第2のプーリー16dの有効直径Daを最大にするようにCVT16の第2プーリー稼動部16jを動かし、これにより、順次、ベルト16c、第1プーリー16a、スライダーギア16f、第1プーリー可動部16g、アクチュエータギア16e、CVT駆動用モータ16dの回転軸等を動かして、第1プーリー可動部16gの移動により第1プーリー16aを縮径して、この有効直径Deを最小にするように構成する。
【0041】
これにより、CVT駆動用モータ16dの電源喪失等により、CVT駆動用モータ16dが機能を発揮できず、回転数比Rnの制御ができなくなるような失陥が発生した場合に、リターンスプリング16iの付勢力により、CVT駆動用モータ16d側の摩擦トルクに打ち勝ちながら、第2プーリー16b側を拡径して第1プーリー側16aを縮径させることができ、これにより、回転数比Rnを最小にすることができる。
【0042】
従って、CVT16が作動不良になったような失陥時には、リターンスプリング16iの付勢力でCVT16の機構を動かして回転数比Rnを最小にして、電動発電機21側の回転数Naが異常な高回転数にならないようにすることができる。
【0043】
また、
図4に示すように、CVT駆動用モータ16dを制御するハイブリッド制御装置41を、電動発電機21が作動不良であることを検出したときに、CVT駆動用モータ16dを駆動して、第2プーリー16bの有効直径Daを最大にして回転数比Rnを最小にする制御を行うように構成する。
【0044】
これにより、電動発電機21の回転を検出して回転加速度を出力するレゾルバ21aの失陥等により、電動発電機21の回転速度を検出できなくなって、電動発電機21を制御することができなくなった場合に、この作動不良を検出して、第1プーリー稼動部16gがX1方向に移動するようにCVT駆動用モータ16dを駆動して、第1プーリー16aの有効直径Deを最小に、かつ、第2プーリー16bの有効直径Daを最大にして回転数比Rnを最小にするように駆動制御する。
【0045】
これにより、電動発電機21が作動不良になったような失陥時には、CVT駆動用モータ16dの制御でCVT16の機構を動かして回転数比Rnを最小にすることができ、電動発電機21側の回転数Naが異常な高回転数にならないようにすることができる。
【0046】
このとき、CVT駆動用モータ16iの回転位置は一方のプーリー16aに配設されたポジションセンサ(図示しない)やCVT駆動用モータ16dに取り付けた回転センサ(図示しない)等で検出して、予め設定した位置まで駆動するように構成してもよく、また、リミッター(図示しない)に当たるまでCVT駆動用モータ16dを駆動するように構成にしてもよい。
【0047】
そして、この実施の形態におけるハイブリッドシステム2の動力伝達方法は、エンジン10と電動発電機21を有するハイブリッドシステム2の動力伝達方法であり、ハイブリッドシステム2が作動不良になったときに、CVT16における、クランク軸16側の回転数Neに対する電動発電機21側の回転数Naとの比である回転数比Rn(=Na/Ne)が最小になるようすることを特徴とする方法である。
【0048】
本発明の実施の形態のハイブリッドシステム2及びハイブリッド車両1によれば、ハイブリッドシステム2が差動不良になったような失陥時には、回転数比Rnを最小にすることで、電動発電機21側の回転数Naが異常な高回転数、即ち、過回転にならないようにして、過回転に起因する電動発電機21の損傷及び寿命低下を回避することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 車両(ハイブリッド車両:HEV)
2 ハイブリッドシステム
10 エンジン(内燃機関)
11 エンジン本体
12 排気通路
13 ターボ過給器
14 排気ガス浄化装置
15 クランク軸
16 CVT(動力伝達機構:無段変速機構)
16a 第1プーリー
16b 第2プーリー
16c ベルト(又はチェーン)
16d CVT駆動用モータ
16da 電源線
16e アクチュエータギア
16f スライダーギア
16g 第1プーリー可動部
16h スプリング止め
16i リターンスプリング
16j 第2プーリー稼動部
20 電力システム
21 電動発電機(M/G)
21a レゾルバ
22 配線
23 インバータ(INV)
24A 第1バッテリ(B1)
24B 第2バッテリ(B2)
25 DC−DCコンバータ(CON)
26A 冷却ファン(補機)
26B 冷却水ポンプ(補機)
26C 潤滑油ポンプ(補機)
30 動力伝達システム
31 変速機(トランスミッション)
32 推進軸(プロペラシャフト)
33 差動装置(デファレンシャルギア)
34 駆動軸(ドライブシャフト)
35 車輪
40 全体制御装置
41 ハイブリッドシステム用制御装置
Da 第1プーリーの有効直径
De 第2プーリーの有効直径
Na 電動発電機側の回転数
Ne エンジン(内燃機関)側の回転数
Rn 回転数比