特許第6244753号(P6244753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6244753-インクジェット記録装置 図000005
  • 特許6244753-インクジェット記録装置 図000006
  • 特許6244753-インクジェット記録装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244753
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20171204BHJP
   B41J 2/15 20060101ALI20171204BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20171204BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B41J2/01 129
   B41J2/01 303
   B41J2/01 501
   B41J2/15
   B41J2/165 207
   B41J2/175 115
【請求項の数】13
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-181902(P2013-181902)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-47806(P2015-47806A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164633
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】市原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 敦
(72)【発明者】
【氏名】内山 政紀
(72)【発明者】
【氏名】井藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 光昭
【審査官】 道祖土 新吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−202418(JP,A)
【文献】 特開2012−188612(JP,A)
【文献】 特開2010−023285(JP,A)
【文献】 特開2012−228803(JP,A)
【文献】 特開2004−067991(JP,A)
【文献】 特開2009−190380(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0189770(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持する支持ユニットと、
紫外線硬化型インクを収容する収容体と収容体から供給された前記紫外線硬化型インクを吐出するヘッドを搭載し、前記紫外線硬化型インクを加温して粘度を低下させる加温手段を搭載しない、移動ユニットと、
を有し、
前記記録媒体に画像を記録する際に、前記ヘッドは第1方向における位置を変えつつ前記紫外線硬化型インクを吐出する主走査を行い、前記移動ユニットは前記第1方向と交差する第2方向に移動する副走査を行い、
前記移動ユニットは、前記第方向の一端に前記収容体を設け、他端に前記ヘッドのメンテナンス手段として前記ヘッドから排出したインクの受け部材を設けている、インクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記紫外線硬化型インクの20℃における粘度が、20mPa・s以下である、インクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記紫外線硬化型インク組成物は、40質量%以上90質量%以下の単官能(メタ)アクリレートと、5質量%以上45質量%以下の2官能以上の(メタ)アクリレートと、を含有する、インクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記紫外線硬化型インクは、非水系紫外線硬化型インクである、インクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記ヘッドから吐出される前記紫外線硬化型インクの温度が、35℃以下である、インクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記移動ユニットは、前記紫外線硬化型インクを硬化するための紫外線発光ダイオードを備えた照射手段を搭載する、インクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記照射手段は、350nm以上420nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する紫外線を照射して、記録媒体上に付着した前記紫外線硬化型インク組成物を200mJ/cm2以上1500mJ/cm2以下の照射エネルギーで硬化させるものである、インクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
前記紫外線硬化型インク組成物は、光重合開始剤を含有し、
前記光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド化合物を含む、インクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、
前記一方の端側に複数の前記収容体を設けている、
インクジェット記録装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、
前記移動ユニットは、記録媒体に記録する画像データを入力して、該画像データを記録に適したデータに変換するデータ処理部を搭載する、インクジェット記録装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、
同一組成のインクを収容する収容体を2つ以上備え、2つ以上の収容体の一つの収容体からヘッドへインクを供給し、前記一つの収容体のインク量が所定量以下となったら、2つ以上の収容体の他の収容体から該ヘッドへインクを供給する、インクジェット記録装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項において、
1つの収容体のインクの初期容量が500ml以上1750ml以下である、インクジェット記録装置。
【請求項13】
請求項6又は請求項7において、
前記照射手段の、前記記録媒体の紫外線硬化型インクへ行う照射の照射強度が700mW/cm以上である、インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット記録用のヘッドのノズルから吐出させた微小なインク滴によって、記録媒体に画像等を記録するインクジェット記録装置が知られている。このようなインクジェット記録装置は、使用する記録媒体の種類や大きさによって、多様な構造を有するものである。
【0003】
例えば、特許文献1には、いわゆるシリアル型のインクジェット記録装置が開示されている。このようなシリアル型のインクジェット記録装置は、第1方向(記録媒体の記録面の幅方向)に移動可能なヘッドを有しており、ヘッドを第1方向に往復動させながら記録媒体を第1方向に交差する第2方向に移動させることで画像を記録するものである。
【0004】
また、特許文献2および特許文献3には、フラットベッド型のインクジェット記録装置が開示されている。このようなフラットベッド型のインクジェット記録装置は、例えば、記録媒体を固定するパネルと、記録媒体の記録面の第1方向(記録媒体の幅方向)およびこれに交差する第2方向に移動可能なヘッドと、を有しており、固定された記録媒体に対してヘッドが第1方向および第2方向に移動することで画像を記録するものである。このようなフラットベッド型のインクジェット記録装置は、ガラス板、アクリル板、金属板等の硬質かつ重い記録媒体に対する記録に用いられることが多く、記録媒体のサイズも大型である場合が多い。
【0005】
上記の硬質かつ重い記録媒体に対するインクジェット記録には、耐候性および耐水性に優れていることから紫外線硬化型インクが広く用いられている。通常、紫外線硬化型インクを用いて画像を記録するインクジェット記録装置には、記録媒体に付着したインクを硬化させるための照射手段を搭載している。例えば、上記の特許文献3には、UVインク(紫外線硬化型インク)用のフラットベッド型のインクジェット記録装置が開示されており、紫外線照射装置が印刷ヘッドとともに移動部材(例えばキャリッジ)に搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−45909号公報
【特許文献2】特開2010−264624号公報
【特許文献3】特開2010−23285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した紫外線硬化型インクは、これに含まれる成分(例えば重合性化合物)に起因して粘度が高いので、記録ヘッドからの吐出が困難な場合がある。そのため、記録ヘッドから吐出する前に紫外線硬化型インクを加温して、吐出に適した粘度に低下させることが行われている。このような紫外線硬化型インクの加温は、例えば、ヒーター等を備えた加温手段によって行われ、当該加温手段は、記録ヘッド、紫外線硬化型インクを収容する収容体、記録ヘッドと収容体を接続するインク流路などに設けられる。
【0008】
一方、上記のようなフラットベッド型のインクジェット記録装置は、上述の第2方向(
記録媒体の記録面の幅方向に交差する方向)に移動可能な移動ユニットを有する場合があり、移動ユニットにヘッドを搭載することでヘッドの第2方向への移動を可能とする。この場合、移動ユニットを駆動するモーター等に対する負荷を低減するために、移動ユニットを軽量化することが好ましい。
【0009】
特に、紫外線硬化型インクを使用する場合、移動ユニットには、記録ヘッドに加えて、上述した紫外線照射装置やインクを収容する収容体等が搭載される場合があるので、移動ユニットの重量が増加する傾向にある。このような場合、さらに上記の加温手段が移動ユニット搭載されてしまうと、移動ユニットへの負荷が著しく増加する。
【0010】
本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、紫外線硬化型インクを用いた記録を行う場合であっても、移動ユニットの移動時の負荷が低減されたインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0012】
[適用例1]
本発明に係るインクジェット記録装置の一態様は、
記録媒体を支持する支持ユニットと、
紫外線硬化型インクを収容する収容体と、
前記収容体から供給された前記紫外線硬化型インクを吐出するヘッドを搭載し、前記紫外線硬化型インクを加温して粘度を低下させる加温手段を搭載しない、移動ユニットと、を有し、
前記記録媒体に画像を記録する際に、前記ヘッドは第1方向における位置を変えつつ前記紫外線硬化型インクを吐出する主走査を行い、前記移動ユニットは前記第1方向と交差する第2方向に移動する副走査を行う。
【0013】
[適用例2]
適用例1において、
前記紫外線硬化型インクの20℃における粘度が、20mPa・s以下であることができる。
【0014】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記紫外線硬化型インク組成物は、40質量%以上90質量%以下の単官能(メタ)アクリレートと、5質量%以上45質量%以下の2官能以上の(メタ)アクリレートと、を含有することができる。
【0015】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例において、
前記紫外線硬化型インクは、非水系紫外線硬化型インクであることができる。
【0016】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか1例において、
前記ヘッドから吐出される前記紫外線硬化型インクの温度が、35℃以下であることができる。
【0017】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例において、
前記移動ユニットは、前記紫外線硬化型インクを硬化するための紫外線発光ダイオードを備えた照射手段を搭載することができる。
【0018】
[適用例7]
適用例6において、
前記照射手段は、350nm以上420nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する紫外線を照射して、記録媒体上に付着した前記紫外線硬化型インク組成物を200mJ/cm2以上1500mJ/cm2以下の照射エネルギーで硬化させるものであることができる。
【0019】
[適用例8]
適用例1ないし適用例7のいずれか1例において、
前記紫外線硬化型インク組成物は、光重合開始剤を含有することができ、
前記光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド化合物を含むことができる。
【0020】
[適用例9]
適用例1ないし適用例8のいずれか1例において、
前記移動ユニットは、前記ヘッドを保守するための1つ以上のメンテナンス手段を搭載することができる。
【0021】
[適用例10]
適用例1ないし適用例9のいずれか1例において、
前記移動ユニットは、記録媒体に記録する画像データを入力して、該画像データを記録に適したデータに変換するデータ処理部を搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示すブロック図。
図2】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置を模式的に示す斜視図。
図3】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置において収容体からヘッドにインクを供給するための構成を説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の好適な実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0024】
1.インクジェット記録装置
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、記録媒体を支持する支持ユニットと、紫外線硬化型インクを収容する収容体と、前記収容体から供給された前記紫外線硬化型インクを吐出するヘッドを搭載し前記紫外線硬化型インクを加温して粘度を低下させる加温手段を搭載しない移動ユニットと、を有し、前記記録媒体に画像を記録する際に、前記ヘッドは第1方向における位置を変えつつ前記紫外線硬化型インクを吐出する主走査を行い、前記移動ユニットは前記第1方向と交差する第2方向に移動する副走査を行うことを特徴とする。
【0025】
以下、インクジェット記録装置の構成およびこれに用いるインクの順に詳細に説明する。
【0026】
1.1.装置構成
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、いわゆるフラットベッド型のインクジェット記録装置であり、ヘッドが第1方向(具体的には、記録媒体の記録面における幅方向)およびこれに交差する第2方向(具体的には、記録媒体の記録面において第1方向と直交する方向)に移動して、支持された記録媒体に画像を記録するものをいう。
【0027】
本実施形態に係るインクジェット記録装置の構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態に係るインクジェット記録装置の構造の理解を容易にするために、尺度を適宜変更している場合がある。
【0028】
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置1(以下「プリンター1」ともいう。)の構成を示すブロック図である。
【0029】
図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置1を模式的に示す斜視図である。図2における第1方向(主走査方向)は、パネル11に載置される記録媒体Pの記録面の幅方向であり、移動ユニット20が延びる方向に一致している。また、図2における第2方向(副走査方向)は、記録媒体Pの記録面において第1方向と交差する方向であり、記録時に移動ユニット20が移動する方向と一致している。
【0030】
図1に示すように、プリンター1は、支持ユニット10、移動ユニット20、検出器群100、コントローラー110を有する。画像データを入力する入力手段120から画像データを受信したプリンター1は、コントローラー110によって各ユニットを制御する。コントローラー110は、入力手段120から受信した画像データに基づいて各ユニットを制御して、記録媒体Pに画像を記録する。プリンター1内の状況は検出器群100によって監視されており、検出器群100は検出結果をコントローラー110に出力する。コントローラー110は、検出器群100から出力された検出結果に基づき各ユニットを制御する。プリンター1が入力手段120から受信した画像データは、図示しない他の装置から入力手段120に入力された画像データに対して、入力手段120がデータの変換などの加工を施した画像データであってもよい。
【0031】
より詳しくは、コントローラー110は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)であり、インターフェイス部112、CPU114、メモリー116およびユニット制御回路118を有する。インターフェイス部112は、入力手段120とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU114は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー116は、CPU114のプログラムを格納する領域や作業領域を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を備える。CPU114は、メモリー116に格納されているプログラムにしたがってユニット制御回路118を介して各ユニットを制御する。
【0032】
入力手段120は、記録媒体Pに記録すべき画像データを入力するための手段であり、例えばPCやタッチパネル式入力装置等があげられる。他の装置から入力された画像データにデータの変換を施す機能を備えていてもよい。なお、入力手段120は、請求項におけるデータ処理部の一例でもある。入力手段120は、例えばインクジェット記録装置を制御するプリンタドライバがインストールされたPCである。PCに入力された画像データは、データ処理前のデータ(例えばJPEG形式の画像データ)から、インクジェット記録装置が記録媒体に記録をおこなうために適したデータ(例えばドット形式の画像データ)に変換するデータ処理を行う。
【0033】
図2に示すように、入力手段120は、移動ユニット20に搭載されていてもよい。これにより、入力手段120と移動ユニット20を接続する配線コード類を短くできるという利点がある。したがって、移動ユニット20は、入力手段120を搭載可能とすること
が好ましい。具体的には、入力手段120を固定する固定部と入力手段120から出力する画像データを入力する端子を備えることが好ましい。また、入力手段120は移動ユニット20に予め搭載されていてもよく、このように予め搭載している形態も、入力手段120を搭載可能な形態である。
【0034】
<支持ユニット>
図2の例では、支持ユニット10は、記録媒体Pを支持するパネル12を備え、記録媒体Pを支持している。記録中、支持ユニット10のパネル12は、記録媒体Pのヘッド40に対向する方向の意図しない位置の変化が発生しないように、記録媒体Pのヘッド40に対する反対側から支持している。図2の例では、さらに、パネル12を支持する支持台14と、パネル12の下部に設置された吸引手段16(例えば真空ポンプ等)と、を有する。また、パネル12には吸引手段16と接続された吸引孔13が複数設けられている。吸引手段16を作動させることにより、パネル12に設置された記録媒体Pはパネル12上で、記録中、意図しない面方向の位置ずれが発生したりしない。図2の例では、記録媒体Pは、パネル12が有する複数の吸引孔13の全てを含む領域にまたがる大きさを有する透明な板状の媒体である。
【0035】
パネル12の記録媒体Pの意図しない面方向の位置ずれが発生しないようにする手段として、吸引手段16を用いる場合を示したがこれに限定されず、例えば粘着テープ等によって記録媒体Pをパネル12に貼り付けてもよいし、記録媒体Pの上方あるいは側方から記録媒体Pを押圧部材により押圧してもよいし、記録媒体Pの自重でパネル12上における意図しない面方向の位置ずれが発生しないものでもよく、記録媒体Pが記録中にパネル12上で意図しない面方向の位置ずれが発生しないものであればよい。支持ユニット10は、インクジェット記録装置が設置された場所に対して位置が移動しないことが好ましい。
【0036】
支持ユニット10は、記録媒体Pをパネル12上で搬送できるように、図示しない搬送機構(搬送ローラー等)を備えていてもよい。
【0037】
<移動ユニット>
図2の例では、移動ユニット20は、インクを収容する収容体30(インクカートリッジ)と、収容体30から供給されるインクを吐出するヘッド40と、ヘッド40の主走査方向の両側に設置された照射手段50と、ヘッド40の吐出面を覆うキャップ部材60と、ヘッド50のフラッシング動作時に排出されるインクを受けとめるインク受け部材65と、画像データを入力する入力手段120と、を搭載しており、後述する加温手段を搭載しない。キャップ部材60およびインク受け部材65は、後述するようにヘッドを保守するために使用されるメンテナンス手段の一態様である。
【0038】
移動ユニット20は、記録媒体Pに画像を記録する際において、第2方向に移動する副走査を行う。移動ユニット20の第2方向への移動は、例えばパネル12の端部に沿って設けられた駆動ベルトとモーター等を組み合わせた駆動手段(図示せず)によって行うことができるが、これに限定されず公知の駆動手段を用いて行うことができる。
【0039】
図2の例では、移動ユニット20自体が第2方向に移動する態様を示したが、これに限定されず、移動ユニット20自体が第2方向に加えて第1方向に移動するもの(すなわち、ヘッド40が移動ユニット20に対して相対的に移動しないもの)を用いてもよい。
【0040】
図2の例では、移動ユニット20は筐体22を備えており、ヘッド40、照射手段50、キャップ部材60、インク受け部材65は筐体22内に収容されている。インクとして後述する紫外線硬化型インクを用いた場合、筐体22にヘッド40が収容されていると、
ヘッド40のノズル面に付着したインクが外部の光により硬化することを抑制できるので、吐出不良等を低減できる点で好ましい。
【0041】
本実施形態に係るインクジェット記録装置において、移動ユニット20は、後述する加温手段を搭載していない。これにより、移動ユニットの軽量化を図ることができるので、移動ユニットの移動時における負担を低減できる。
【0042】
<収容体>
収容体30は、その内部に紫外線硬化型インクを収容するいわゆるインクカートリッジであり、図2の例では着脱可能な状態で移動ユニット20に搭載されている。
【0043】
収容体30とヘッド40は供給管(図示せず)を介して接続することができ、この場合には収容体30内のインクが供給管を介してヘッド40に供給される。供給管は、収容体30毎に設けられており、例えばチューブ状の可撓性の部材(例えばゴム、エラストマー等)を用いることができる。
【0044】
供給管の長さが長くなるにつれて、供給管内に空気が混入したり、インクに起因する沈降物が増加したり、洗浄に要する洗浄液量が増加するなどの傾向があるので、供給管の長さを短くすることが好ましい。すなわち、インクや洗浄液に起因する不具合を低減するという観点からは、収容体30は、ヘッド40の動作を制限しない程度にヘッド40の近くに設置することが好ましいので、図2に示すようにヘッド40とともに移動ユニット20に搭載されていることが好ましい。収容体30が移動ユニット20に搭載されている場合には、供給管の長さは、4m以下が好ましく、3.5m以下がより好ましく、3.0m以下がさらに好ましい。また、ヘッド40の移動距離を長くして記録可能な記録媒体の面積を大きくするために、1.0m以上が好ましく、1.5m以上がより好ましく、2m以上がさらに好ましい。
【0045】
これに対して、移動ユニット20の軽量化という観点からは、収容体30は、移動ユニットに搭載されていない方が好ましいが、上述した記録時における問題点を考慮して、収容体30の設置位置を決定すればよい。例えば、インクに含まれる成分が沈降しにくい場合などには、移動ユニット20の軽量化することを重視して、収容体30は、移動ユニット20を除くプリンター1の任意の位置に設置すればよい。
【0046】
図2の例では、収容体30は、移動ユニット20に設けられたカートリッジホルダー32に挿入することによって、移動ユニット20に搭載されている。図2の例では、収容体30が移動ユニット20の第1方向における端側に設けられた場合を示したがこれに限定されず、移動ユニット20のいずれの位置に設けてもよい。また、図2の例では、収容体30が第2方向に向けて挿入されているが、収容体30が第1方向に向けて挿入される位置にカートリッジホルダー32を設けてもよい。
【0047】
収容体30は、キャリッジ70(後述)に搭載されていてもよい。ただし、図2の例では、収容体30は、キャリッジ70(後述)に搭載されておらず、移動ユニット20に固定された状態で搭載されている。キャリッジ70(後述)以外の場所に搭載されている場合、収容体30の重量によりキャリッジ70の移動にかかる負荷を低減できるため、収容体30は、移動ユニット20において、ヘッド40を搭載し第1方向に往復動するキャリッジ70(後述)以外の場所に搭載されていることが好ましい。
【0048】
図2の例では、10個の収容体30が主走査方向に沿って一列に配置されている場合を示したが、各収容体30の配置は特に限定されるものではなく、搭載する個数も限定されるものではない。
【0049】
ここで、本実施形態に係るインクジェット記録装置は、同一組成のインクを収容する収容体を複数備えていてもよい。この場合、記録時において、同一組成のインクを収容する複数の収容体のいずれか1つからヘッドに供給されるようにすることが好ましい。こうすることで、同一組成のインクを収容する複数の収容体のうち、一の収容体に収容されるインクを使い切ったとしても、他の収容体に収容されているインクをヘッドに供給できるので、記録を中断して収容体の交換をすることなく記録を継続することができる。これにより、画像の記録を長時間、具体的には一の記録媒体への画像の記録が終了するまで継続して行うことができる。また、記録の再開前後で画像の色味が異なったり、インクカートリッジの交換時に移動ユニットの位置がずれてしまうことで生じる画像の位置ずれ等の不具合の発生を抑制できるので、良好な画像が得られる。
【0050】
本発明において、同一組成のインクとは、含まれる成分およびその含有量が同じインクのことをいう。なお、インク名が同じ場合も同一組成のインクとしてもよい。
【0051】
図3は、同一組成のインクを収容する複数の収容体(収容体30A,30B)を用いてヘッド40Aにインクを供給するための構成を説明する概略図である。図3に示すように、収容体30Aおよび30Bは、供給管34Aおよび供給管34Bを介してヘッド40Aと接続されている。供給管34A,34Bにはインクの流通を制限する連通弁35A,35Bが設けられている。供給管34Aおよび供給管35Bは、連通弁35A,35Bの設けられた地点の下流側(ヘッド40A側)で接続されており、これにより供給管34A,35Bの流路が合流する。また、各供給管の合流地点の下流側(ヘッド40A側)には、送液ポンプ36が設けられている。
【0052】
画像の記録を実行する際には、まず、連通弁35Aを開放した後、送液ポンプ36を作動させて収容体30A内のインクをヘッド40Aに供給する。このとき、連通弁35Bを閉じて、収容体30Bからインクが供給されないようにする。その後、画像の記録中に収容体30A内のインクの量が所定量以下(例えば、残量が2%以下)になったら、連通弁35Aを閉じつつ連通弁35Bを開放して、収容体30B内のインクをヘッド40Aに供給する。こうすることで、画像の記録中に一方の収容体のインク残量が少なくなっても、記録を中断することなく他方の収容体からインクを供給できる。
【0053】
なお、本明細書において、画像の記録中に一方の収容体のインク残量が少なくなった際に、記録を中断することなく他方の収容体からインクを供給できることを、ホットスワップ機能という場合がある。
【0054】
図3の例では、同一組成のインクを収容する収容体が2つの場合を示したが、これに限定されず、同一組成のインクを収容する収容体が3つ以上あっても同様に行うことができる。また、消費されやすい組成のインクのみ、同一組成のインクを収容する収容体を2つ以上備えるようにしてもよい。
【0055】
本発明のインクジェット記録装置において、上記のホットスワップ機能が不要である場合には、ホットスワップ機能を備えている必要はなく、一の組成のインクに対して、一のインク収容体を備える態様とすればよい。なお、ホットスワップ機能を有する場合には、移動ユニット20の重量が増加するので、加熱手段を移動ユニットに搭載しないという本発明の態様が特に有効になる。
【0056】
本発明に係るインクジェット記録装置は、記録面として0.1m2以上7m2以下の面積を有する記録媒体に対する画像の記録に用いられることが好ましく、面積は1m2以上7m2以下がより好ましく、2m2以上6m2以下がさらに好ましい。面積が上記範囲内であ
ると、記録物を表示などの用途に用いる場合に視認性に優れる。また、1枚の記録媒体の記録に必要なインク量が多いので、上述したホットスワップ機能が特に有用である。
【0057】
記録媒体の面積が上記範囲の場合に、同一組成のインクを収容する複数の収容体を備える場合において、各収容体のそれぞれひとつに収容されるインクの初期容量は500ml以上が好ましく、600ml以上がより好ましく、700ml以上がさらに好ましい。また、各収容体に収容されるインクの初期容量の合計を3500ml以下とすることが好ましく、3000ml以下とすることがより好ましく、2000ml以下とすることがさらに好ましい。各収容体に収容されるインクの初期容量を500ml以上とすることで、上記の面積の記録面を有する記録媒体を用いた場合であっても、記録を中断することなく一の記録媒体に対する画像の記録を終えることできる。また、各収容体に収容されるインクの合計量を3500ml以下とすることで、移動ユニットの重量を低減できるので、移動ユニットの移動時の負荷を低減できる。
【0058】
なお、各収容体の初期容量の上限は限られるものではないが、1750ml以下が好ましく、1500ml以下が好ましく、1000ml以下がさらに好ましい。また、各収容体の初期容量の合計の下限は、限られるものではないが1000ml以上が好ましく、1200ml以上がより好ましく、1400ml以上がさらに好ましい。本発明において初期容量とは、収容体を使用開始する前に、当該収容体に収容されているインクの容量のことをいう。
【0059】
<ヘッド>
ヘッド40は、記録媒体Pの記録面と対向する位置に設けられたノズル面(図示せず)を有し、当該ノズル面に設けられた複数のノズル(図示せず)から液滴状にしたインクを吐出して、記録媒体Pの記録面に付着させる。
【0060】
図2の例では、ヘッド40はキャリッジ70に搭載されている。キャリッジ70は、第1方向に架設された支持部材であるガイドロッド72に支持された状態で取り付けられたものであり、キャリッジ移動機構(図示せず)によりガイドロッド72に沿って第1方向に往復動するものである。このようなキャリッジ70の移動に伴い、キャリッジ70に搭載されたヘッド40も第1方向に往復動する。すなわち、記録媒体Pの第1方向における記録は、キャリッジ70の移動に伴うヘッド40のインクの吐出により行われる。
【0061】
図2の例では、ヘッド40を第1方向に移動させる方法として、キャリッジ70を利用する態様(すなわち、ヘッド40が移動ユニット20に対して相対的に移動する態様)を示したが、例えば、移動ユニット20自体が第2方向に加えて第1方向に移動するもの(すなわち、ヘッド40が移動ユニット20に対して相対的に移動しないもの)を用いてもよい。
【0062】
本実施形態に係るインクジェット記録装置がホットスワップ機能を備える場合として、図3において、同一組成のインクを収容する複数の収容体(収容体30A,30B)を用いて一のヘッド40Aにインクを供給する態様を示したが、これに限定されず、同一組成のインクを収容する複数の収容体毎にヘッドを設ける態様としてもよい。この場合には、収容体30Aに対応する第1のヘッドに対するインクの供給が終了した後に、収容体30Bに対応する第2のヘッドを使用して記録を継続することができる。
【0063】
ヘッド40のインクジェット記録方式としては、いずれの方式を用いてもよく、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に吐出させ、インクの液滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式またはインクの液滴を偏向することなく印刷情報信号に対応し
て吐出させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインクの液滴を吐出させる方式、インクに圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インクの液滴を吐出・記録させる方式(ピエゾ方式)、インクを印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を吐出・記録させる方式(サーマルジェット方式)等を用いることができる。
【0064】
<照射手段>
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、記録媒体に付着した紫外線硬化型インクを硬化させるための照射手段を有することが好ましい。
【0065】
照射手段50は、図2の例では、移動ユニット20に搭載されたキャリッジ70に設けられ、ヘッド40の第1方向の両端に設置されているが、これに限定されず、記録媒体Pの記録面に付着したインクに紫外線を照射できるのであればいずれの位置に設けてもよい。例えば、ヘッド40の第2方向側に記録媒体の幅方向(第1方向)に渡って照射可能に設けられてもよく、これを図2に示す位置に設けられた照射手段50と組み合わせて使用してもよい。
【0066】
照射手段50は、光源(図示せず)と、光源の発光および消灯を制御する光源制御回路(図示せず)とを備えている。光源としては、紫外線発光ダイオードを使用することが好ましい。これにより、光源として水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、その他のランプ類を使用した場合と比較して、光源の大型化や重量増を回避できるので、移動ユニット20の移動時における負担を低減できる。
【0067】
また、光源として紫外線発光ダイオードを使用する場合、出射される紫外線の発光ピーク波長を350以上420nm以下の範囲のいずれかとすればよい。
【0068】
照射手段の照射強度は、硬化速度を向上させるという観点や、硬化シワ抑制の観点や、消費電力を低減させるという観点から、500mW/cm2以上2000mW/cm2以下であることが好ましく、700mW/cm2以上2000mW/cm2以下であることがより好ましい。
【0069】
また、照射手段により照射を行ってインクを硬化させる際の照射エネルギーは、硬化を充分なものとし消費電力を低減させるという観点から、100mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下が好ましく、200mJ/cm2以上1500mJ/cm2以下がより好ましく、200mJ/cm2以上1000mJ/cm2以下がさらに好ましく、200mJ/cm2以上800mJ/cm2以下が特に好ましい。
【0070】
<メンテナンス手段>
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、メンテナンス手段を有することが好ましい。メンテナンス手段は、ヘッドの保守のために用いられる機構であって、ノズル詰まり等の不具合を防止することができる。メンテナンス手段は、移動ユニット20に搭載されていることが好ましく、これにより移動ユニット20の駆動時においてヘッドのメンテナンスを行うことができる。
【0071】
ヘッド40のメンテナンスとしては、記録動作以外でヘッド40をキャップ部材60でキャッピングしてインクの蒸発を抑制する保湿動作、ヘッド40のノズルからインクをインク受け部材65に排出させることで増粘インクによるノズルの目詰まり防止やノズルのメニスカスを調整してヘッド40から正常にインクを吐出させるフラッシング動作、キャップ部材60でヘッド40をキャッピングした後に吸引ポンプ(図示せず)を駆動させてノズルから粘性が高くなったインクや付着したゴミ等を強制吸引してメニスカスを調整し
、ヘッド40から正常にインクを吐出させる吸引動作(ヘッドクリーニング)、ヘッド40のノズル面をワイプ部材(図示せず)で払拭(ワイピング)することでノズル近傍に付着したインクや増粘したインク等を除去したり、ノズルのメニスカスを破壊してメニスカスを再調整させるパージ処理を行うワイピング動作などが挙げられる。
【0072】
図2に示すように、キャップ部材60は移動ユニット20の第1方向の一端に設けられており、インク受け部材65は第1方向の他端に設けられているが、これに限定されず、移動ユニット20に搭載されヘッド40の記録動作を妨げないのであれば、いずれの位置に設けられてもよい。
【0073】
移動ユニット20の移動における負担を低減するために、移動ユニット20に搭載されているメンテナンス手段の質量を低減することが好ましく、例えばメンテナンス手段の質量を5kg以下とすることが好ましく、3kg以下とすることがより好ましい。下限は限られるものではないが0.5kg以上が好ましく、1kg以上がより好ましい。
【0074】
また、移動ユニット20に搭載されるメンテナンス手段の質量よりも、各収容体の1つ当たりに収容されるインクの初期質量が小さいことが好ましい。こうすることで、メンテナンス手段の質量と比べて、収容体の数が増えることによる移動ユニット20の質量の増大の影響が少なくなる。そのため、移動ユニット20に搭載する収容体の数を増やすことが可能となる。なお、本実施形態においては、インクの比重を約1とし、例えば収容体のインクの初期容量が700mlの場合、初期質量を700gとするが、インクの比重が1以外の場合は、収容体のインクの初期容量にインクの比重を掛けたものをインクの初期質量とする。
【0075】
メンテナンス手段は、キャップ部材60、吸引ポンプ(図示せず)、インク受け部材65、ワイプ部材(図示せず)の何れか1つ以上とし、2つ以上有する場合は、メンテナンス手段の質量はそれらの合計の質量に相当する。
【0076】
<加温手段>
通常、紫外線硬化型インク(特に、後述する実質的に水を含有しない紫外線硬化型インク)を使用する場合には、その粘度が高いため、吐出時にインクの粘度を低下させておく必要がある。そのため、インクを加温して吐出に適した粘度に低下させる加温手段が、収容体30、供給管およびヘッド40等に設けられることがある。しかしながら、紫外線硬化型インク組成物を使用する場合に、プリンター1の移動ユニット20には、ヘッド40に加えて、上述した照射手段50やメンテナンス手段等が搭載されていることが多い。したがって、移動ユニット20の重量が増加する傾向にある。
【0077】
このような移動ユニット20の重量の増加を軽減するために、本発明に係るインクジェット記録装置の移動ユニット20には、インクを加温してインクの粘度を低下させる加温手段(例えば、電熱ヒーター等)を搭載しない。これにより、移動ユニット20の軽量化を図ることができる。
【0078】
本発明では、移動ユニット20を除くプリンター1の任意の箇所に加温手段を搭載することを妨げるものではないが、後述する好ましい組成の紫外線硬化型インクを用いれば、加温せずともインクの粘度が吐出に適した値になるので、プリンター1に加温手段を搭載することが不要となる。このように、プリンター1に加温手段を搭載しないことで、プリンター1の小型化や簡略化を図ることができるという利点がある。
【0079】
1.2.紫外線硬化型インク
本実施形態に係るインクジェット記録装置には、紫外線硬化型インクが用いられる。紫
外線硬化型インクは、ガラス、アクリル、金属等の記録媒体に良好に記録できる。
【0080】
以下、本実施形態に係るインクジェット記録装置に用いられる紫外線硬化型インクに含まれ得る成分について詳細に説明する。
【0081】
1.2.1.重合性化合物
本実施形態に係る紫外線硬化型インクは、重合性化合物を含有することが好ましい。重合性化合物は、単独で、又は後述する光重合開始剤の作用により、光照射時に重合されて、記録されたインクを硬化させることができる。
【0082】
以下、本実施形態に係る紫外線硬化型インクに使用可能な重合性化合物として、単官能(メタ)アクリレートと、単官能(メタ)アクリレート以外の重合性化合物(以下、「他の重合性化合物」ともいう。)と、に分けて説明する。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸というときは、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味し、(メタ)アクリレートというときは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。
【0083】
<単官能(メタ)アクリレート>
本実施形態に係る紫外線硬化型インクは、単官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。単官能(メタ)アクリレートを含有することで、紫外線硬化型インクを低粘度化することができる。そのため、上述したインクジェット記録装置に加温手段を設けることなく、紫外線硬化型インクを吐出することが可能となる。
【0084】
単官能(メタ)アクリレートの含有量は、インクの総重量(100質量%)に対し40質量%以上90質量%以下が好ましく、55質量%以上80質量%以下がより好ましく、60質量%以上80質量%以下がさらに好ましい。単官能(メタ)アクリレートの含有量が40質量%以上であることで、紫外線硬化型インクを低粘度化することが容易になるので、インクジェット記録装置の吐出に適した粘度にすることができる。また、単官能(メタ)アクリレートの含有量が90質量%以下であることで、紫外線硬化型インクの粘度が低下しすぎることで生じる画像の硬化シワ等の発生を抑制できる。
【0085】
以下、単官能(メタ)アクリレートとして、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートと、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート以外の単官能(メタ)アクリレート(以下、「他の単官能(メタ)アクリレート」ともいう。)と、に分けて説明する。
【0086】
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートとしては、具体的には、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0087】
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
【0088】
上記式(I)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2以上20以下の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1以上11以下の1価の有機残基である。
【0089】
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートを含有することにより、インクの硬化性を優れたものとすることができ、さらにインクを低粘度化することもできる。さらに言えば、ビニルエーテル基を有する化合物及び(メタ)アクリル基を有する化合物を別々に使用するよりも、ビニルエーテル基及び(メタ)アクリル基を一分子中に共に有する化合物を使用する方が、インクの硬化性を良好にする上で好ましい。
【0090】
上記の一般式(I)において、R2で表される炭素数2以上20以下の2価の有機残基
としては、炭素数2以上20以下の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する置換されていてもよい炭素数2以上20以下のアルキレン基、炭素数6以上11以下の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2以上6以下のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2以上9以下のアルキレン基が好適に用いられる。
【0091】
上記の一般式(I)において、R3で表される炭素数1以上11以下の1価の有機残基としては、炭素数1以上10以下の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキル基、炭素数6以上11以下の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1以上2以下のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6以上8以下の芳香族基が好適に用いられる。
【0092】
上記の各有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
【0093】
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2− ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル
、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
【0094】
これらの中でも、インクをより低粘度化でき、引火点が高く、かつ、インクの硬化性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、即ち、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルのうち少なくともいずれかが好ましく、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがより好ましい。特にアクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルは、何れも単純な構造であって分子量が小さいため、インクを顕著に低粘度化することができる。(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。なお、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルの方が、メタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルに比べて硬化性の面で優れている。
【0095】
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート(特に(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル)の含有量は、紫外線硬化型インクの総質量(100質量%)に対して、20質量%以上90質量%以下が好ましく、40質量%以上80質量%以下がより好ましく、50以上75質量%以下がさらに好ましい。当該含有量が上記の下限値以上であると、インクを低粘度化でき、かつ、インクの硬化性を一層優れたものとすることができる。一方、当該含有量が上記の上限値以下であると、インクの保存安定性を良好な状態に維持することができ、硬化シワの発生を一層効果的に防止することができる。
【0097】
上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートの製造方法としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法B)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸エステルと水酸基含有ビニルエーテルとをエステル交換する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法G)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法H)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとアルキルビニルエーテルとをエーテル交換する方法(製法I)が挙げられる。これらの中でも、本実施形態における所望の効果を一層発揮することができるため、製法Eが好ましい。
【0098】
本実施形態に係る紫外線硬化型インクは、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートに変えて、あるいは加えて、他の単官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。他の単官能(メタ)アクリレートを含有することにより、インクが低粘度となり、光重合開始剤その他の添加剤の溶解性に優れ、インクジェット記録時の吐出安定性が得られやすく
、さらに塗膜の強靭性、耐熱性、及び耐薬品性が増す。
【0099】
他の単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、アルコキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、が挙げられる。
【0100】
これらの他の単官能(メタ)アクリレートの中でも、硬化性、保存安定性、及び光重合開始剤の溶解性に一層優れるため、分子中に芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートが好ましい。他の単官能(メタ)アクリレートのうち、芳香環骨格を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、及びフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。これらの中でも、インクを低粘度化することができ、かつ、硬化性、耐擦性、密着性、及び光重合開始剤の溶解性のいずれも優れたものとすることができるため、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれかが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0101】
他の単官能(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
他の単官能(メタ)アクリレートの含有量は、紫外線硬化型インクの総質量(100質量%)に対し、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%40質量%以下がより好ましい。当該含有量が上記の下限値以上であると、硬化性に加えて光重合開始剤の溶解性も一層優れたものとなる。一方、当該含有量が上記の上限値以下であると、硬化性に加えて密着性も一層優れたものとなる。
【0103】
<他の重合性化合物>
本実施形態に係る紫外線硬化型インクは、上述した単官能(メタ)アクリレート以外の重合性化合物、すなわち「他の重合性化合物」を含有してもよい。
【0104】
他の重合性化合物としては、従来公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)ア
クリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0105】
他の重合性化合物の中でも、2官能以上の(メタ)アクリル酸のエステル、即ち2官能以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、2官能以上6官能以下の(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
【0106】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール− トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0107】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0108】
他の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
他の重合性化合物(特に、2官能以上の(メタ)アクリレート)が紫外線硬化型インクに含まれる場合、その含有量は、硬化性、硬化シワ抑制、光重合開始剤の溶解性などの点で、紫外線硬化型インクの総質量(100質量%)に対し、5質量%以上45質量%以下が好ましく、5質量%以上35質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。他の重合性化合物の中でも、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートがインクに含まれる場合、その含有量は、インクの総質量(100質量%)に対し、5質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好まく、5質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0110】
特に、40質量%以上90質量%以下の単官能(メタ)アクリレートと、5質量%以上45質量%以下の2官能以上の(メタ)アクリレートと、を含有する紫外線硬化型インクを用いることで、インクジェット記録に適した粘度(例えば、20℃において20mPa・s以下)にすることが容易になる。
【0111】
なお、本実施形態において、硬化シワは、インクの表面の硬化に比してインク内部の硬化が遅れた場合に、インク内部の硬化に伴いインク表面に変形が生じて発生すると推測し、紫外線硬化型インクが2官能以上の(メタ)アクリレートを含む場合、硬化シワの抑制の点で好ましい。
【0112】
なお、重合性化合物として光重合性の化合物を用いることにより、光重合開始剤の添加を省略することも可能であるが、光重合開始剤を用いた方が、重合の開始を容易に調整することができ、好適である。
【0113】
1.2.2.光重合開始剤
本実施形態に係る紫外線硬化型インクは、光重合開始剤を含有することが好ましい。当該光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、記録媒体の記録面に付着したインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。光線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。紫外線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、使用可能な光重合開始剤に制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0114】
上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。これらの中でも、特に紫外線発光ダイオードを用いた際にインクの硬化性を一層良好にすることができるため、アシルホスフィンオキサイド化合物が好ましい。
【0115】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、2,4− ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0116】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DA
ROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製、商品名)、KAYACURE DETX−S(2,4− ジエチルチオキサントン)(日本化薬社製、商品名)、Speedcure TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド)、Speedcure DETX(2,4− ジエチルチオキサンテン−9−オン)(以上、Lambson社製、商品名)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製、商品名)、及びユベクリルP36(UCB社製、商品名)などが挙げられる。
【0117】
光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化速度を向上させて硬化性を優れたものとすることができ、かつ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色を避けるため、紫外線硬化型インクの総質量(100質量%)に対して、20質量%以下であることが好ましい。特に、光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド化合物を含む場合、その含有量は、紫外線硬化型インクの総質量(100質量%)に対して、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上13質量%以下であることがさらに好ましい。含有量が上記の下限値以上であると、硬化性に一層優れる。より具体的に言えば、特に紫外線発光ダイオード(好ましい発光ピーク波長:350nm〜420nm)による硬化の際に十分な硬化速度が得られるため硬化性に一層優れる。一方、含有量が上記の上限値以下であると、光重合開始剤の溶解性に一層優れる。
【0119】
1.2.3.色材
本実施形態に係る紫外線硬化型インクは、色材を含んでもよい。色材としては、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
【0120】
色材として顔料を用いることにより、インクの耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0121】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0122】
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0123】
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0124】
上記の顔料を使用する場合、その平均粒子径は300nm以下が好ましく、50nm以上200nm以下がより好ましい。平均粒子径が上記の範囲内にあると、インクにおける吐出安定性や分散安定性などの信頼性に一層優れるとともに、優れた画質の画像を形成することができる。ここで、本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。
【0125】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0126】
1.2.4.分散剤
本実施形態に係る紫外線硬化型インクが顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ(商品名)、アビシア社(Avecia Co.)から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 32000,36000等〔以上、商品名〕)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ(商品名)、楠本化成社製のディスパロンシリーズ(商品名)が挙げられる。
【0127】
分散剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、分散剤の含有量は特に制限されず適宜好ましい量を添加すればよい。
【0128】
1.2.5.重合禁止剤
本実施形態に係るインクは、重合禁止剤を含んでもよい。インクが重合禁止剤を含有することにより、硬化前における上記重合性化合物の重合反応を防止できる。
【0129】
重合禁止剤としては、特に制限されないが、例えばフェノール系重合禁止剤が挙げられる。当該フェノール系重合禁止剤として、以下に限定されないが、例えば、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、ジ−t−ブチルパラクレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、及び4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)が挙げられる。
【0130】
フェノール系重合禁止剤の市販品としては、例えば、p−メトキシフェノール(東京化成工業社製、商品名、p−メトキシフェノール)、ノンフレックスMBP(精工化学社製、商品名、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール))、BHTスワノックス(精工化学社製、商品名、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)が挙げられる。
【0131】
重合禁止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、重合禁止剤の含有量は特に制限されず適宜好ましい量を添加すればよい。
【0132】
1.2.6.界面活性剤
本実施形態に係る紫外線硬化型インクは、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性
剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。スリップ剤の市販品としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500,3510,3530,3570(以上、BYK社製)を挙げることができる。
【0133】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、界面活性剤の含有量は特に制限されず適宜好ましい量を添加すればよい。
【0134】
1.2.7.その他の添加剤
本実施形態の紫外線硬化型インクは、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
【0135】
本実施形態の紫外線硬化型インクは、非水系紫外線硬化型インクであることが好ましい。「非水系紫外線硬化型インク」とは、水を意図的に含有させない紫外線硬化型インクのことをいう。具体的には、紫外線硬化型インク中の水の含有量が3質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましく0.05質量%未満であり、一層好ましくは0.01質量%未満、さらに一層好ましくは0.005質量%未満、最も好ましくは0.001質量%未満であることをいう。あるいは、実質的に水を含有しない紫外線硬化型インク組成物ということができる。
【0136】
1.2.8.紫外線硬化型インクの物性
<照射エネルギー>
上記のように説明した紫外線硬化型インクを用いる場合には、照射手段の消費電力を低減させるという観点から、1000mJ/cm2以下の照射エネルギーで硬化するものを用いることが好ましく、300mJ/cm2以下で硬化するものがより好ましく、200mJ/cm2以下で硬化するものがさらに好ましく、100mJ/cm2以下で硬化するものが特に好ましい。
【0137】
<粘度>
紫外線硬化型インクの20℃における粘度は、20mPa・s以下であることが好ましく、4mPa・s以上13mPa・s以下であることがより好ましく、7mPa・s以上13mPa・s以下であることがさらに好ましい。これにより、通常の環境下でインクジェット記録装置を使用する場合に、加温手段を設ける必要がなくなるので、インクジェット記録装置の小型化や簡略化を図ることができる。紫外線硬化型インクの粘度は、E型粘度計を用いて測定できる。
【0138】
ヘッドから吐出する際の紫外線硬化型インクの粘度は、20mPa・s以下であることが好ましく、4mPa・s以上13mPa・s以下であることがより好ましく、7mPa・s以上13mPa・s以下であることがさらに好ましい。吐出の際の紫外線硬化型インクの粘度が20mPa・s以下であることで、インクジェット記録装置のヘッドの吐出安定性が良好となる。また、吐出の際の紫外線硬化型インクの粘度が4mPa・s以上であることで、記録される画像の硬化シワ等の発生を低減できるので、良好な画像を得ることができる。紫外線硬化型インクの粘度は、E型粘度計を用いて測定できる。
【0139】
ヘッドから吐出する際の紫外線硬化型インクの温度は、35℃以下であることが好まし
く、30℃以下であることがより好ましい。また、下限値は、10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。この場合、紫外線硬化型インクの温度が上記範囲になるような環境下にインクジェット記録装置を設置すればよい。紫外線硬化型インクの温度が上記範囲にあれば、吐出の際の紫外線硬化型インクの粘度を上記の好ましい粘度範囲内に保つことが容易になる。
【0140】
また、紫外線硬化型インクの粘度を上記値にするためには、インクに含まれる成分の配合割合を適宜調整して行うことができ、例えば上述した紫外線硬化型インクを用いる場合には、各重合性化合物の配合割合によって調整できる。
【0141】
1.3.記録媒体
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、フラットベッド式のインクジェット記録装置に用いられるいずれの記録媒体(例えば、紙、織物、編み物、不織布、皮革、樹脂フィルム、樹脂板、ガラス、金属等)に用いることができる。特に、インクジェット記録装置が上述したホットスワップ機構を備えていると、これらのいずれの記録媒体を用いても、画像の位置ずれや色味の変化等の少ない、良好な画像の記録された記録物を得ることができる。したがって、記録を失敗した際に損害が大きい高価な記録媒体(金属、アクリル、ガラス等)に対する記録にも好ましく使用できる。
【0142】
また、フラットベッド式のインクジェット記録装置に用いられる記録媒体は、単票であり、例えば、支持ユニット10のパネル上に支持したときの第2方向における記録面の長さが4m以下のものが用いられ、3m以下の物が特に用いられる。また、0.5m以上の物が用いられ、1m以上の物が特に用いられる。
【0143】
2.実施例
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0144】
2.1.インクの評価
2.1.1.インクの調製
表1に示す各成分を表1の含有量となるように添加して、これを高速水冷式攪拌機で攪拌することにより、紫外線硬化型インク(以下、単に「インク」ともいう。)1〜11を得た。なお、表1に示す成分は、以下の通りである。
【0145】
<重合性化合物>
・VEEA(商品名、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社製、単官能(メタ)アクリレート、以下「VEEA」と記載した。)
・ビスコート#192(商品名、フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業社製、単官能(メタ)アクリレート、以下「PEA」と記載した。)
・V#160(商品名、ベンジルアクリレート、大阪有機化学工業社製、単官能(メタ)アクリレート、以下「BZA」と記載した。)
・IBXA(商品名、イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業社製、単官能(メタ)アクリレート、以下「IBX」と記載した。)
・SR508(商品名、ジプロピレングリコールジアクリレート、2官能(メタ)アクリレート、サートマー社製)
・A−DPH(商品名、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、6官能(メタ)アクリレート、新中村化学社製、以下「A−DPH」と記載した。)
<ポリマー>
・ビスコート#1000(商品名、大阪有機化学工業社製、ハイパーブランチポリマー、粘度273mPa・s、アクリル基数14、以下「V#1000」と記載した。)
なお、ビスコート#1000は、ジペンタエリスリトールをコアとして官能基が分岐したハイパーブランチポリマーであり、希釈モノマーとしてエチレングリコールジアクリレートを含有する。
<光重合開始剤>
・IRGACURE 819(商品名、BASF社製、固形分量100%、以下「819」と記載した。)
・DAROCUR TPO(商品名、Lambson社製、以下「TPO」と記載した。)
・IRGACURE 369(商品名、BASF社製、以下「369」と記載した。)
<界面活性剤>
・BYK−UV3500(商品名、BYK社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、以下「BYK3500」と記載した。)
<色材>
・C.I.ピグメントブラック7(三菱化学社製、ミツビシカーボンMA11、以下「PB−7」と記載した。)
<分散剤>
・Solsperse 32000(商品名、アビシア社製、以下「SOL32000」と記載した。)
<重合禁止剤>
・p−メトキシフェノール(商品名、東京化成工業社製、p−メトキシフェノール、以下「MEHQ」と記載した。)
【0146】
【表1】
【0147】
2.1.2.インクの評価試験
<粘度評価(20℃でのインクの粘度ランク)>
DVM−E型回転粘度計(東京計器社製)を用いて、上記で調製した各インクの20℃での粘度を測定した。ローターは、コーン角度1°34’、コーン半径2.4cmのDVM−E型用コーンを使用した。回転速度は10rpmとした。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表1に示す。
1:7mPa・s未満
2:7mPa・s以上13mPa・s以下
3:13mPa・s超過20以下
4:20mPa・s超過
【0148】
<保存安定性評価>
上記で調製した各インクを50cc容のガラス瓶に入れ、密栓した後に、これらのガラス瓶を60℃の恒温槽内に投入し7日間放置した。7日後に取り出し、十分に室温に戻ってから、上記「20℃でのインクの粘度ランク」と同様にして20℃で粘度を測定した。そして、初期(調製直後)の粘度に対する、7日間放置後の粘度の、粘度増加率を計算した。評価基準は以下のとおりである。評価結果を表1に示す。
A:+5%以下であった。
B:+5%を上回った。
【0149】
<インクの硬化性評価>
ルミラー#125−E20(商品名、東レ社製、PETフィルム)に、テスター産業社製のバーコーターで、上記の各インクを塗布した。塗膜の硬化後の膜厚は10μmであった。次に、波長395nmにピークを有するLED(Firefly〔商品名〕、Phoseon社製)から、照度1,000mW/cm2の紫外線を、塗布したインクに所定の時間、照射し、硬化したインク塗膜を得た。照射後、荷重130gの条件下で上記インク塗膜の表面をジョンソン&ジョンソン製の綿棒で20往復擦り、擦過痕がつかなくなるまでに要した照射エネルギーを測定した。評価基準は以下のとおりである。評価結果を表1に示す。
A:200mJ/cm2以下であった。
B:200mJ/cm2を超えて300mJ/cm2以下であった。
C:300mJ/cm2を上回った。
【0150】
2.1.3.インクの評価結果
以上のインクの評価結果を表1に併せて示す。
【0151】
表1に示すように、一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート、当該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート以外の単官能(メタ)アクリレート、アシルホスフィンオキサイド化合物を含有し、かつ、20℃における粘度が7mPa・s以上であるインク1、7、8、10および11は、保存安定性及び硬化性のいずれにも優れることがわかった。
【0152】
また、粘度評価の結果から、インク2および4の20℃における粘度は低く、インク10および11の20℃における粘度は高くなることが示された。このことから、インクの粘度は、各重合性化合物の配合割合によって変化することがわかった。
【0153】
インク1およびインク9の硬化性評価の結果から、LEDによる照射を行った場合に、光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物を用いることで、インクの硬化性が向上することがわかった。
【0154】
2.2.インクジェット記録装置の評価
2.2.1.記録装置の準備
記録装置の試験を行うにあたって、以下の記録装置1〜6を準備した。記録装置1〜3は、GS6000(商品名、セイコーエプソン株式会社製、ラージフォーマットプリンター)のスタンドや記録媒体の搬送装置を取り外した残りの部分に、後述する照射手段、車輪及び駆動手段を取り付けたものを移動ユニットとし、これを支持ユニットに移動可能に搭載する改造をしたものである。移動ユニットは駆動手段の駆動により、車輪で支持ユニット上を第2の方向に移動する。なお、移動ユニットは、ヘッド移動方向(第1方向)の一端にメンテナンス手段(ヘッドを密閉するキャップ部材、ヘッドのインクを吸引する吸引ポンプ、ヘッドのノズル面を拭くワイパ)を設け、他端にはフラッシングしたインクを受けるインク受け部材を備え、移動ユニットに搭載したメンテナンス手段の合計の質量は3kgであった(下記の記録装置5を除く)。また、印刷データを作成するノートPCを移動ユニットの筐体の上に搭載した(図2参照。ただし、下記の記録装置6を除く)。
【0155】
なお、インクカートリッジとヘッドを接続する供給管(インク供給管)の長さは、記録装置3では6mであり、これ以外の記録装置では3mであった。
【0156】
<記録装置1>
記録装置1では、移動ユニットにインクカートリッジを搭載した。また、記録装置1には、加温手段を搭載しなかった(すなわち、移動ユニットを含む記録装置1のいずれの位置にも加温手段を搭載していない)。
【0157】
<記録装置2>
記録装置2では、移動ユニットにインクカートリッジおよび加温手段を搭載した。具体的には、カートリッジからヘッドまでのインク供給管に隣接する位置に、加温手段としての保温液循環路往路及び復路を取り付けた。保温液循環路には、ジエチレングリコールを循環させた。保温液循環路中には保温液タンクがあり、ここにヒーターを取り付けて保温液を加温した。保温液循環路と接するインク供給管に流れるインクが保温液により加温されるようにし、ヘッドから吐出するインクの温度が表中の温度になるようヒーター調整機により調整した。これらの加温手段は、移動ユニット上のヘッド以外の部分に取り付けた。また、ヘッド内には、ヘッド用ヒーターを別途取り付けた。
【0158】
<記録装置3>
記録装置3では、支持ユニットにインクカートリッジを取り付けた(すなわち、移動ユニットとともにインクカートリッジは移動しない)。また、記録装置1には、加温手段を搭載しなかった(すなわち、移動ユニットを含む記録装置1のいずれの位置にも加温手段を搭載していない)。
【0159】
<記録装置4>
記録装置4は、上記のGS6000を、照射手段を搭載したこと以外は改造せずに用いた(すなわち、移動ユニット、支持ユニットを備えていない、通常のラージフォーマットプリンターである)。また、記録装置4には、加温手段を搭載しなかった。
【0160】
<記録装置5>
記録装置1において、メンテナンス手段を移動ユニットから取り外して、支持ユニットにおける第1方向の外側に取り付けた。
【0161】
<記録装置6>
記録装置1において、印刷(画像)データを作成するノートPCを移動ユニットに搭載せず、支持ユニットの横に設けた机の上に載せて、移動ユニットとノートPCを接続する
配線コード(USBケーブル)を記録装置1よりも長くして接続した。
【0162】
<照射手段>
上記の記録装置1〜6には、表2および表3の組み合わせになるように、以下の照射手段1〜3を選択して搭載した。
【0163】
照射手段1は、キャリッジにおいて、ヘッドの第1方向の両端に仮硬化用の照射手段Aとヘッドの第2方向側に記録媒体の幅方向に渡って照射可能な本硬化用の照射手段Bと、を設けた。照射手段AおよびBはいずれも、照射強度を1000mW/cm2とし、光源を紫外線発光ダイオードとした。
【0164】
照射手段2は、照射強度を500mW/cm2とした以外は、照射手段1と同様の構成とした。
【0165】
照射手段3は、紫外線発光ダイオードに代えてメタルハライドランプを用いた以外は、照射手段1と同様の構成とした。
【0166】
<インク>
上記のようにして調製した各インクをインクカートリッジに収容し、表2および表3に示すように各記録装置に搭載した。
【0167】
2.2.2.記録装置の評価
上記の記録装置を用いて、以下の各評価を行った。各評価試験は、所定の室温に調整した実験室に記録装置を設置して実施した。ただし、比較例3は、記録装置のヒーターを使用しインクの温度を調整した。ヘッドから吐出される際のインクの温度は、記録を始める直前のノズルプレートの温度を温度計(熱電対)により測定し当該インクの温度とした。
【0168】
また、粘度の測定温度を吐出時のインクの温度にした以外は、上述した「粘度評価」と同様にして、吐出時のインクの粘度を測定した。このようにして測定した吐出時のインクの粘度を上述の「粘度評価」と同様の評価基準によって分類し、その結果を表2および表3に示した。
【0169】
<吐出安定性>
各記録装置に搭載したインクカートリッジからヘッドにインクを供給した後、印刷を開始して、ヘッドの360個のノズルから5分間連続して吐出を行った。5分後、印刷を中止して、インクを吐出しなくなったノズル(不吐出ノズル)の数に基づいて、吐出安定性の評価を行った。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表2および表3に示す。
○:不吐出ノズルが5個以下
△:不吐出ノズルが6個以上10個以下
×:不吐出ノズルが11個以上
【0170】
<洗浄性>
各記録装置に搭載したインクカートリッジからヘッドにインクを供給して、ヘッドにインクを充填した後、カートリッジを抜き取り、ヘッドからインクを吸引してインク供給管を一旦、空にしたのち、洗浄液(ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート)を充填したカートリッジを装着し、ヘッドから洗浄液を吸引して排出した。ヘッドから排出される洗浄液について、排出量5cc毎にその透過率を測定し、排出洗浄液の透過率が洗浄前のカートリッジ内の洗浄液の透過率の98%以上になった時点の洗浄液の排出量を確認した。このようにして、洗浄性の評価を行った。なお、透過率の測定は、排出洗浄液に蒸留水を加えて1000倍に希釈した後、分光光度計(製品名「U−3300」、株式会社
日立製作所製)を用いて行った。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表2および表3に示す。
○:300cc以下
×:300cc超
【0171】
<ベタパターン画像埋まり性(埋まり評価)>
記録媒体(商品名「ルミラー125E20」、東レ社製、PETフィルム)上の各画素に11ng/画素のドットを形成し、硬化させることにより、記録解像度が720dpi×720dpi、大きさ(サイズ)が20cm×20cmのベタパターン画像を記録した。画素は記録解像度で規定される最小記録単位領域である。記録の際、ヘッドを搭載したキャリッジが第1方向に移動しつつインクをヘッドから吐出する主走査(パス)を1回行う際の記録媒体に付着したインクへの照射の照射エネルギーを50mJ/cm2とし、主走査後もキャリッジの第1の方向への移動をさらに行うことで複数回の照射を行い、記録媒体の単位面積当たりの合計の照射エネルギーを1000mJ/cm2とした。そして、当該ベタパターン画像の領域中にドットで隠れていない記録面が見えるか否かを、記録媒体から30cm離れた位置で目視により評価した。評価基準は以下の通りであり、評価結果を下記の表2および表3に示す。
なお、「ベタパターン画像」とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録し、通常、記録媒体の記録領域がインクで覆われ記録媒体の地が見えていないような画像であるべき画像パターンを意味する。
A:記録面が見えなかった。
B:記録面が見えた。
【0172】
<硬化シワ>
上記「ベタパターン画像の埋まり性評価」において得られた各ベタパターン画像を使用した。レーザー顕微鏡 VK−9700(KEYENCE社製)を用いて、各ベタパターン画像の二乗平均平方根高さ(Rq値)を測定した。さらに、目視で各ベタパターン画像の表面を観察した。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表2および表3に示す。
A:Rqが4以下であった。ベタパターン画像の表面に光沢が見られた。
B:Rqが4を超えて6以下であった。ベタパターン画像の表面に光沢が若干見られた。
C:Rqが6を上回った。ベタパターン画像の表面に光沢が見られなかった。
【0173】
<移動ユニットの軽量化>
実施例および比較例で使用した各記録装置の移動ユニットの質量について、実施例1で用いた記録装置1の移動ユニットの質量を基準として、移動ユニットの軽量化の評価を行った。具体的には、実施例1で用いた記録装置1の移動ユニットの質量をX(kg)とし、各実施例および比較例で使用した移動ユニットの質量をY(kg)として、両者の差[Y−X(kg)]を算出した。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表2および表3に示す。
◎:Y−X<−1
○:−1≦Y−X≦1
△:1<Y−X≦5
×:5<Y−X
【0174】
2.2.3.記録装置の評価結果
記録装置の評価試験の結果を表2および表3に示す。
【0175】
【表2】
【0176】
【表3】
【0177】
表2の評価結果の通り、実施例に係る記録装置は、移動ユニットに加温手段が搭載されていないので、移動ユニットの軽量化を図ることができた。
【0178】
実施例2で使用した記録装置3は、インクカートリッジを移動ユニットに搭載していないため、移動ユニットをより軽量化することができた。しかしながら、ヘッドとインクカートリッジを接続するインク供給管の長さが長くなり、洗浄液の使用量が増加した。
【0179】
実施例3および実施例5は、使用したインクの粘度が低かったため、画像の硬化シワが顕著に現れた。
【0180】
実施例10では、光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド化合物を含まないインク9を使用したため、LEDによる照射ではインクが硬化しなかった。そのため、埋まり性および硬化シワの評価を実施できなかった。
【0181】
実施例11では、メタルハライドランプを使用した照射手段3を搭載した記録装置1を使用した。メタルハライドランプやこれの冷却装置による重量増により、紫外線発光ダイオードに使用した場合よりも、移動ユニットの移動に負担が掛かることがわかった。
【0182】
実施例12では、使用したインクの粘度が高かったため、吐出安定性が低下する傾向にあった。
【0183】
実施例14では、照射強度が500mW/cm2である照射手段2を用いたため、画像の硬化シワが顕著に現れた。
【0184】
実施例15で使用した記録装置5は、メンテナンス手段を移動ユニットに搭載していないため、移動ユニットをより軽量化することができた。しかしながら、1枚の記録媒体に対する記録中にフラッシング動作を実施できなかった。また、メンテナンス手段が移動ユニットの筐体内になく、記録装置を設置した部屋の蛍光灯に常時照らされてしまうことから、キャップやインク受けに付着した排出インクが増粘してしまい、インクの汚れが落としにくかった。
【0185】
実施例16では、ノートPCが移動ユニットに搭載されていなかったため、移動ユニッ
トとノートPCを接続する配線コード(USBケーブル)が長くなり、作業をスムーズに行える配線位置を確保する必要性が生じた。
【0186】
比較例1で使用した記録装置4は、アクリル板のような硬質な記録媒体に対する印刷ができなかった。
【0187】
比較例2および比較例3では、移動ユニットに加温手段が搭載された記録装置2を使用した。そのため、実施例で使用した記録装置と比較して、移動ユニットの重量が著しく増加した。
【0188】
比較例2では、粘度の高いインク11を使用したが、加温手段による加温を行わなかったため、インクの吐出安定性が著しく低下した。
【0189】
比較例3では、粘度の高いインク11を加温して使用した。そのため、吐出安定性は良好であったが、吐出された後、記録媒体に着弾するまでにインクの温度が下がることでインクの粘度が上昇したことにより記録媒体上でインクが広がり難く、埋まり性が低下したものと考えられる。また、ヒーターを搭載したため移動ユニットの軽量化ができなかった。
【0190】
さらに、上記の各例では、記録装置は前述した同一組成のインクを収容する収容体を複数個備えないものであったが、複数個備える記録装置とする場合において移動ユニットに収容体を備える場合、画像の記録中に記録を中断することなく記録がおこなえる反面、移動ユニットが一層重くなることがわかった。しかしながら、本実施形態を採用することで、加温手段を移動ユニットに備える場合と比べて移動ユニットの軽量化が可能であり、本実施形態が特に有用であることがわかった。
【0191】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0192】
1…プリンター、10…支持ユニット、12…パネル、13…吸引孔、14…支持台、16…吸引手段、20…移動ユニット、22…筐体、30,30A,30B…収容体、34A,34B…供給管、35A,35B…連通弁、36…送液ポンプ、40,40A…ヘッド、50…照射手段、60…キャップ部材、65…インク受け部材、70…キャリッジ、72…ガイドロッド、100…検出器群、110…コントローラー、120…入力装置、112…インターフェイス部、114…CPU、116…メモリー、118…ユニット制御回路、P…記録媒体
図1
図2
図3