(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハードコート層の屈折率をnHC、膜厚をdHC、前記中屈折率層の屈折率をnM、膜厚をdM、前記高屈折率層の屈折率をnH、膜厚をdH、前記低屈折率層の屈折率をnL、膜厚をdLとした場合、下記(1)〜(4)が成り立つことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の反射防止フィルム。
nM-nHC≧0.05・・・(1)
450nm/4nM<dM<560nm/4nM・・・(2)
450nm/2nH<dH<560nm/2nH・・・(3)
450nm/4nL<dL<560nm/4nL・・・(4)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の反射防止フィルムは、透明基材フィルム上に、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、及び低屈折率層が、透明基材フィルム側からこの順で順次形成されている。以下に、この反射防止フィルムの構成要素について順に説明する。
【0016】
〔透明基材フィルム〕
透明基材フィルムは、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ノルボルネン系樹脂、又はシクロオレフィン樹脂等の透明樹脂からなるフィルムを使用できる。ポリエステル樹脂からなるフィルムとしては東レ株式会社製PETフィルム(ルミラーU−403)、ポリカーボネート樹脂からなるフィルムとしては帝人化成株式会社製ポリカーボネートフィルム(PC−2151)、トリアセチルセルロース樹脂からなるフィルムとしては富士フィルム株式会社製トリアセチルセルロースフィルム(フジタック)、ノルボルネン系樹脂からなるフィルムとしてはJSR株式会社製アートンフィルム、シクロオレフィン樹脂からなるフィルムとしては日本ゼオン株式会社製ゼオノアフィルム(ZF14,ZF16)等が挙げられる。
【0017】
透明基材フィルムの膜厚は、通常25〜400μm程度、好ましくは25〜200μm程度である。また、これらの透明基材フィルムには、ハードコート層と透明基材フィルムとの密着力を高めるため、易接着層と呼ばれる層を設けることもできる。透明基材フィルムには、各種の添加剤が含有されていてもよい。そのような添加剤として、例えば紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤等が挙げられる。
【0018】
〔ハードコート層〕
ハードコート層は、反射防止フィルムの表面強度を担保するための層である。ハードコート層の屈折率は、1.50〜1.56の範囲内のものが好ましい。ハードコートの屈折率が1.50未満の場合、或いは1.56を超える場合には、透明基材フィルムとハードコート層の屈折率差から生じる干渉により、干渉ムラが顕著に表れるため好ましくない。
【0019】
また、ハードコート層の膜厚は、1〜10μmが好ましい。ハードコート層の膜厚が1μm未満の場合には、十分な表面強度が得られないため好ましくない。その一方、膜厚が10μmを超える場合には、耐屈曲性の低下等の問題が生じるため好ましくない。
【0020】
〔ハードコート層用樹脂組成物〕
ハードコート層の材料としては、従来より反射防止フィルム等に用いられている公知のものであれば、特に制限されない。例えば、テトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物や、活性エネルギー線硬化型樹脂を用いることができ、これらを混合してもよい。そして、これらに光重合開始剤を加えて調製したハードコート層用塗液に紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射して硬化させてハードコート層を形成することができる。
【0021】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。単官能(メタ)アクリレートとして具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール基含有(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。多官能(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン変性アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。なお、本明細書では、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを指す。また、同様に、後述の「(メタ)アクリル単量体」は、アクリル単量体及びメタクリル単量体を指し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基を指す。
【0022】
これらのうち生産性及び硬度を両立させる観点より、鉛筆硬度(評価法:JIS−K5600−5−4)がH以上となる活性エネルギー線硬化型樹脂を含む組成物の硬化物であることが好ましい。そのような活性エネルギー線硬化型樹脂を含む組成物としては特に限定されるものではないが、例えば、公知の活性エネルギー線硬化型樹脂、又は公知の活性エネルギー線硬化型樹脂を2種類以上混合して調製したもの、紫外線硬化性ハードコート材として市販されているものを用いることができる。
【0023】
光重合開始剤は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線によりハードコート層用塗液を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。光重合開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。
【0024】
塗液の溶媒は、この種の反射防止フィルム等において各層形成用の塗液に従来から使用されている公知のものであれば特に制限は無く、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系の溶媒が適時選択できる。
【0025】
更に、ハードコート層は、その他添加剤を含有していても良い。その他の添加剤としては、屈折率調整用の無機粒子、帯電防止剤、表面調整剤等が挙げられる。帯電防止剤としては、ATO微粒子、ITO微粒子などのような導電性金属酸化物微粒子や、PEDOTのような導電性ポリマーや、4級アンモニウム塩などの界面活性剤を使用することができる。表面調整剤としては、ポリジメチルシロキサンなどのシリコン系レベリング剤や、アクリル系レベリング剤を使用することができる。
【0026】
〔中屈折率層〕
次に、中屈折率層について説明する。中屈折率層は、後述する高屈折率層との有意な屈折率差及び後述の低屈折率層との有意な屈折率差により、反射防止効果を発現させるための層である。中屈折率層の屈折率は、ハードコート層及び低屈折率層よりも高く、かつ、高屈折率層よりも低く設定される。中屈折率層の屈折率は、1.57〜1.63の範囲内のものが好ましい。中屈折率層の屈折率が1.57未満の場合、或いは1.63を超える場合には、中屈折率層と他の層との屈折率差から生じる干渉のバランスが悪くなり、反射スペクトルをフラットにすることが困難となる。
【0027】
また、ハードコート層の屈折率をnHC、膜厚をdHC、中屈折率層の屈折率をnM、膜厚をdMとした場合、下記(1)及び(2)が成り立つように設定される。
nM-nHC≧0.05・・・(1)
450nm/4nM<dM<560nm/4nM・・・(2)
nM-nHC<0.05となる場合、ハードコート層との屈折率差が小さくなることで、ハードコート層と中屈折率層界面での反射光と中屈折率層と高屈折率層界面での反射光の強め合うような干渉が弱くなるため、反射防止性能が十分に発揮されない。また、反射スペクトルがフラットにならず(W字型になってしまう)、反射色の色ムラが目立ってしまう。また、dMを450nm/4nM以下とすると、ハードコート層と中屈折率層界面での反射光と中屈折率層と高屈折率層界面での反射光の最もの強め合う波長(最大反射率波長)域が380nm以下となってしまうため、中屈折率層上へ高屈折率層及び低屈折率層を設けた際に、反射率を効果的に下げることが困難となる。また、dMが560nm/4nM以上の場合、ハードコート層と中屈折率層界面での反射光と中屈折率層と高屈折率層界面での反射光の最も強め合う波長(最大反射率波長)域が780nm以上となってしまうため、中屈折率層上へ高屈折率層及び低屈折率層を設けた際に、反射率を効果的に下げることが困難となる。
【0028】
〔中屈折率層形成用組成物〕
中屈折率層は、前記中屈折率層の屈折率の範囲において、従来より反射防止フィルム等に用いられる公知のものであれば特に制限されず、ベースとなる有機材料に、屈折率調整用の無機材料を適宜添加したものを用いることができる。
【0029】
例えば、重合硬化したものの屈折率が1.6〜1.8の重合性単量体を含む組成物に、屈折率調整用の無機材料として、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化シラン、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化錫、ITO等の微粒子を添加すればよい。中でも、導電性や帯電防止能の観点より、酸化錫、酸化アンチモン及びITO等の微粒子が好ましい。重合硬化した後の屈折率が1.6〜1.8となる重合性単量体としては、2−ビニルナフタレン、4−ブロモスチレン、9−ビニルアントラセン等が挙げられる。
【0030】
また、多官能ウレタンアクリレートまたは多官能(メタ)アクリレートと金属酸化物微粒子とを含む混合物も好適に使用される。多官能ウレタンアクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどが挙げられる。このような材料における市販されているものとしては、日本合成化学工業(株)製の紫光UV7600B、UV7630、UV7640Bが挙げられる。
【0031】
多官能(メタ)アクリレートとしては、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することにより硬化反応を生じる樹脂を使用でき、その種類は特に制限されない。この多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン等の多官能アルコール(メタ)アクリル誘導体や、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、さらに紫外線硬化性ハードコート材として市販されているもの等が挙げられる。
【0032】
中屈折率層を構成する材料は、その上にオーバーコートされる高屈折率層と同じ材料で配合されることが、中屈折率層と高屈折率層の層間の密着性を高めることができるため、好ましい。例えば、高屈折率層が酸化チタン及びウレタンアクリレートの組成物で形成される場合、中屈折率層に使用される組成物も酸化チタンとウレタンアクリレートの混合物で形成される方が好ましい。
【0033】
中屈折率層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として各種添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、光重合開始剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。
【0034】
光重合開始剤としては、紫外線照射による重合開始能を有するものであれば何れでもよい。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独又は混合物として用いることができる。
【0035】
〔高屈折率層〕
次に、高屈折率層について説明する。高屈折率層は、前述した中屈折率層との有意な屈折率差及び後述の低屈折率層との有意な屈折率差により、反射防止効果を発現させるための層である。高屈折率層の屈折率は、ハードコート層及び中屈折率層及び低屈折率層のいずれの層よりも高く設定される。
【0036】
高屈折率層の屈折率は、1.77〜1.83の範囲内のものが好ましい。高屈折率層の屈折率が1.77未満の場合、或いは1.83を超える場合には、中屈折率層と他の層との屈折率差から生じる干渉のバランスが悪くなり、反射スペクトルをフラットにすることが困難となる。
【0037】
また、高屈折率層の屈折率をnH、膜厚をdHとした場合、下記(3)が成り立つように設定される。
450nm/2nH<dH<560nm/2nH・・・(3)
dHを450nm/2nM以下とすると、高屈折率層を設けた際に最小反射率波長(反射率が最小となる光の波長)が380nm以下となってしまい、低屈折率層を設けた際に可視光領域の反射率が単調増加になるような反射スペクトルとなってしまうため、反射スペクトルをフラットにすることが困難となる。一方、dHが560nm/2nM以上の場合、高屈折率層を設けた際に最小反射率波長(反射率が最小となる光の波長)が650nm以上となってしまい、低屈折率層を設けた際に可視光領域の反射率が単調減少になるような反射スペクトルとなってしまうため、反射スペクトルをフラットにすることが困難となる。
【0038】
〔高屈折率層形成用組成物〕
高屈折率層は、前記高屈折率層の屈折率の範囲において、従来より反射防止フィルム等に用いられる公知のものであれば特に制限されず、ベースとなる有機材料に、屈折率調整用の無機材料を適宜添加したものを用いることができる。ベースとなる有機材料や屈折率調整用の無機材料としては、中屈折率層と同様のものを使用でき、これらの材料の組み合わせや配合バランスにより、求める屈折率に調整すればよい。
【0039】
高屈折率層を構成する材料は、その下地としてコートされる中屈折率層と同じ材料で配合されることが、中屈折率層と高屈折率層の層間の密着性を高めることができるため、好ましい。例えば、中屈折率層が酸化チタン及びウレタンアクリレートの組成物で形成される場合、高屈折率層に使用される組成物も酸化チタンとウレタンアクリレートの混合物で形成される方が好ましい。
【0040】
高屈折率層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として各種添加剤を添加することができる。そのような添加剤としては、例えば、中屈折率層と同様の光重合開始剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。
【0041】
〔低屈折率層〕
次に、低屈折率層について説明する。低屈折率層の屈折率は、ハードコート層、中屈折率層、及び高屈折率層の屈折率より低く設定されることを要件とし、その屈折率は1.29〜1.37の範囲である。該屈折率が1.29未満の場合には十分に硬い層を形成することが困難である。その一方、屈折率が1.37を超える場合には十分な視感度反射率を得ることが難しい。
【0042】
〔低屈折率層用樹脂組成物〕
低屈折率層用樹脂組成物は、(a)C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートと、(b)アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンと、(c)(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物と、(d)中空シリカ微粒子と、(e)光重合開始剤とからなる。なお、(b)成分の含有量は(a)成分の含有量より少ない。
【0043】
〔(a)成分〕
C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートは、防汚性機能を発現するためのものであり、低屈折率層表面を触った際の指紋の付着性を弱めることができる。C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートとしては、具体的には、ダイキン工業(株)製オプツールDAC−HP,DIC(株)製メガファックRS−75等が挙げられる。
【0044】
C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートは、低屈折率層用樹脂組成物中に5.0〜15.0質量%含まれる。含有量が5.0質量%未満では、低屈折率層表面を触った際の指紋の付着性を効果的に弱めることが出来ない。一方、15.0質量%を超えると、指紋の拭取り性が悪化する。
【0045】
〔(b)成分〕
アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンは、低屈折率層表面に付着した指紋の拭取り性を良好とすることが出来る。アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンとしては、具体的には、ビックケミー・ジャパン(株)製BYK−UV 3500,BYK−UV 3530,BYK−UV 3570等が挙げられる。
【0046】
アクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はアクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサンは、低屈折率層用樹脂組成物中に、2.0〜8.0質量%含まれる。含有量が2.0質量%未満では、低屈折率層表面に付着した指紋の拭取り性が向上しない。一方、8.0質量%を越えると、低屈折率層表面を触った際の指紋の付着性を弱めることが出来ない。
【0047】
〔(c)成分〕
(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物は、低屈折率層へ硬度を付与する事が出来る。(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物は、低屈折率層用樹脂組成物中に9.0〜70.0質量%含まれる。含有量が9.0質量%未満では、低屈折率層の硬度不足や、透過率の低下が生じる。一方、70.0質量%を越えると、指紋の拭取り性が向上しない。
【0048】
(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば含フッ素単官能(メタ)アクリレート、含フッ素多官能(メタ)アクリレート、含フッ素イタコン酸エステル、含フッ素マレイン酸エステル等の単量体、それらの重合体、及び重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマー等が挙げられる。
【0049】
含フッ素単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1−(メタ)アクリロイロキシ−1−パーフルオロアルキルメタン、1−(メタ)アクリロイロキシ−2−パーフルオロアルキルエタン等が挙げられる。パーフルオロアルキル基は炭素数1〜8の直鎖状、分枝状又は環状のものが挙げられる。
【0050】
含フッ素多官能(メタ)アクリレートとしては、含フッ素2官能(メタ)アクリレート、含フッ素3官能(メタ)アクリレート及び含フッ素4官能(メタ)アクリレートが好ましい。含フッ素2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,2−ジ(メタ)アクリロイルオキシ−3−パーフルオロアルキルブタン、2−ヒドロキシ−1H,1H,2H,3H,3H−パーフルオロアルキル−2’,2’−ビス{(メタ)アクリロイルオキシメチル}プロピオナート、α,ω−ジ(メタ)アクリロイルオキシメチルパーフルオロアルカン等が挙げられる。パーフルオロアルキル基は炭素数1〜11の直鎖状、分枝状又は環状のものが、パーフルオロアルカン基は直鎖状のものが好ましい。これらの含フッ素2官能(メタ)アクリレートは、使用に際して単独又は混合物として用いることができる。
【0051】
含フッ素3官能(メタ)アクリレートの例としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1H,1H,2H,3H,3H−パーフルオロアルキル−2’,2’−ビス{(メタ)アクリロイルオキシメチル}プロピオナート等が挙げられる。パーフルオロアルキル基は炭素数1〜11の直鎖状、分枝状又は環状のものが好ましい。
【0052】
含フッ素4官能(メタ)アクリレートの例としては、α,β,ψ,ω−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−αH,αH,βH,γH,γH,χH,χH,ψH,ωH,ωH−パーフルオロアルカン等が好ましい。パーフルオロアルカン基は炭素数1〜14の直鎖状のものが好ましい。使用に際しては、含フッ素4官能(メタ)アクリレートは、単独又は混合物として用いることができる。
【0053】
また、重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーとしては、含フッ素エチレン性モノマーに由来する主鎖を有し、架橋硬化のための反応性基をもつものである。反応性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、α−フルオロアクリロイルオキシ基、エポキシ基等が挙げられる。このような溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは高分子量であるため、フッ素を含有しながらも成膜性が良好で、成膜後に反応性基を利用して架橋硬化することで硬化層を得ることができる。
【0054】
係る重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは、重合性二重結合をもつ基の含有率が通常1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%であり、また質量(重量)平均分子量が通常1,000〜500,000、好ましくは3,000〜200,000である。具体的な含フッ素反応性ポリマーとしては、下記一般式(1)で示されるパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)を、下記一般式(2)で示される過酸化物で重合させて得られるホモポリマーに、α−フルオロアクリル酸フルオライド:CH2=CFCOFを反応させて水酸基をフルオロアクリレートに置換した生成物が挙げられる。
【化1】
【化2】
【0055】
〔(d)成分〕
中空シリカ微粒子は、屈折率を積極的に低くするために配合されるものである。中空シリカ微粒子の屈折率は製法によって異なるが、1.25〜1.37であることが好ましい。中空シリカ微粒子としては、屈折率を低くするものであれば特に限定されず、公知の中空シリカ微粒子を使用できる。具体的には、日揮触媒化成(株)製アクリル修飾中空シリカ微粒子スルーリア4320等が挙げられる。
【0056】
中空シリカ微粒子は、低屈折率層中に22.0〜83.0質量%含まれることが好ましい。シリカ微粒子の含有量が22.0質量%未満では、低屈折率層の屈折率を後述の範囲とすることが出来ない。一方、シリカ微粒子の含有量が83.0質量%より多いと、塗膜強度が弱くなるため好ましくない。
【0057】
〔(e)成分〕
光重合開始剤は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線により低屈折率層用塗液を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。光開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。
【0058】
光重合開始剤は、低屈折率層用樹脂組成物中に1.0〜10.0質量%含まれる。光重合開始剤の含有量が1.0質量%未満では、低屈折率層の硬化が不十分となる。一方、光重合開始剤の含有量が10.0質量%を超えると、光重合開始剤が不必要に多くなり好ましくない。なお、上記(a)〜(e)成分の合計含有量は100質量%である。
【0059】
〔ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層の形成〕
ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層の形成方法は特に制限されず、例えばドライコーティング法、ウェットコーティング法等の塗布方法により各塗液を透明基材フィルム上に順に塗布し、硬化させる方法を採用することができる。塗布方法としては、生産性や生産コストの面より、特にウェットコーティング法が好ましい。ウェットコーティング法は公知の方法でよく、例えばロールコート法、ダイコート法、スピンコート法、そしてディップコート法等が代表的なものとして挙げられる。これらの中では、ロールコート法等、連続的に塗膜を形成できる方法が生産性の点より好ましい。形成された塗膜は、加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射によって硬化反応を行うことにより硬化被膜を形成することができる。
【0060】
<反射防止フィルムの利用>
本実施形態の反射防止フィルムは、高い防汚性、かつ、高い反射防止効果を求められる用途に好適に用いることができる。特に、電子画像表示装置の表面に使用することができる。電子画像表示装置としては、例えばタッチネル、電子黒板、プラズマディスプレイ、液晶表示装置、有機ELディスプレイ等が挙げられる。そして、その画面表面に直接、又は画面の前面に配置される板に接着層を介して密着させて用いることができる。
【実施例】
【0061】
(ハードコート層用塗液α1の調製)
ハードコート層塗液は、紫外線硬化型樹脂として日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕を100質量部、帯電防止剤としてジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル(CH
2=C(H)CONH(CH
2)
kN
+(CH3)
3・Cl
−)60質量部とブチルメタクリレート40質量部よりなる4級アンモニウム塩系共重合体を5質量部、光重合開始剤としてBASFジャパン(株)製、イルガキュア907を5質量部混合し、固形分濃度が40質量部となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)を混合してハードコート層用塗液を得た。
【0062】
(ハードコート層用塗液α2〜α5の調製)
α1と同じ材料を、表1に示す配合(質量部)にてα1と同様に調整した。なお、製造例α2〜α3には、シリカ微粒子(分散液)として日産化学工業(株)製、MIBK−ST(固形分濃度30%、粒子径15nm)、酸化チタン微粒子(分散液)としてCIKナノテック(株)製、RTTMIBK15WT%−N24をそれぞれ使用した。
【0063】
【表1】
【0064】
(中屈折率層用塗液β1の調製)
紫外線硬化型樹脂としてウレタンアクリレート〔分子量1400、60℃における粘度が2500〜4500Pa・s、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕76質量部、酸化チタン微粒子(分散液)〔CIKナノテック(株)製、RTTMEK25WT%−F02〕を固形分換算で24質量部、光重合開始剤〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア907〕を5質量部、及びメチルエチルケトン500質量部を混合し、中屈折率層用塗液(含酸化チタン微粒子硬化性塗液)を得た。
【0065】
(中屈折率層用塗液β2〜β5の調製)
β1と同じ材料を、表2に示す配合(質量部)にてβ1と同様に調整した。
【表2】
【0066】
(高屈折率層用塗液γ1〜γ6の調製)
β1と同じ材料を、表3に示す配合(質量部)にてβ1と同様に調整した。なお、DPHAは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである。
【表3】
【0067】
((c)含フッ素化合物δ1の製造)
四つ口フラスコにパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビスフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)104部とビス(2,2,3,3,4,45,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイドの8質量%パーフルオロヘキサン溶液11部を入れた。そして、その中空部を窒素置換した後、窒素気流下20℃で24時間撹拌して高粘度の固体を得た。得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離後に真空乾燥させて無色透明なポリマーを得た。
【0068】
このポリマーを19F−NMR(核磁気共鳴スペクトル)、1H−NMR、IR(赤外線吸収スペクトル)により分析したところ、上記アリルエーテルの構造単位からなる側鎖末端に水酸基を有する含フッ素ポリマーであった。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により測定した数平均分子量は72,000、質量平均分子量は118,000あった。
【0069】
得られたヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルポリマー5部とメチルエチルケトン(MEK)43部、ピリジン1部を四つ口フラスコ中に仕込み、5℃以下に氷冷した。そして、窒素気流下で撹拌しながらα−フルオロアクリル酸フルオライド1部をMEK9部に溶解したものを10分間かけて滴下した。これにより、(a)成分及び(b)成分と共重合可能な重合性二重結合をもつ含フッ素化合物δ1の溶液を得た。
【0070】
(低屈折率層用組成物LL1−1の調製)
低屈折率層用組成物LL1-1は、イソプロピルアルコール(IPA)を溶媒として、固形分濃度が5質量%となるように、(a)C2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレート〔信越化学工業(株)製、DAC−HP〕5.0質量%と、(b)アクリル基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン〔ビックケミー・ジャパン(株)製、BYKUV−3570〕4.0質量%と、(c)溶媒可溶性の含フッ素反応性ポリマー(δ1)を固形分換算で43質量%と、(d)粒子径が60nmの中空シリカ微粒子〔日輝触媒化成工業株式会社製、スルーリア4320〕43質量%と、(e)光重合開始剤〔BASFジャパン株式会社製、イルガキュア907(I−907)〕5質量%とを混合して得た。
【0071】
(低屈折率層用組成物LL1−2〜LL1−13(実施例用)の調製)
表4に示す配合(質量%)にて、LL1−1と同様に調整した。なお、(a)成分である「RS−75」は、DIC(株)製のC2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートである。また、(b)成分であるBYKUV−3500及びBYKUV−3530は、ビックケミー・ジャパン(株)製のアクリル基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンである。また、(e)成分であるI−184は、BASFジャパン株式会社製のイルガキュア184である。
【表4】
【0072】
(低屈折率層用組成物LL2−1〜LL2−12(比較例用)の調製)
表5に示す配合(質量%)にて、LL1−1と同様に調整した。なお、(a)成分である「F−558」は、DIC(株)製のC2〜C7のパーフルオロアルキル鎖を含有する(メタ)アクリレートである。また、(b)成分であるBYKUV331は、ビックケミー・ジャパン(株)製のアクリル基を有さないポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンである。
【表5】
【0073】
(実施例1−1)
ハードコート層形成用組成物〔α1〕を、透明基材フィルムとして厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム上にロールコーターにて乾燥膜厚が4μmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。なお、上記乾燥膜厚が実質的にハードコート層の膜厚である。その後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量300mJ/cm2)、ハードコート層形成用組成物を硬化させてハードコート層を形成した。このハードコート層の屈折率は1.53であった。
【0074】
次いで、このハードコート層上に製造例β1で製造された高屈折率層形成用組成物を、乾燥時の厚さが86nmとなるように塗布した後、窒素雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて300mJの紫外線を照射し、高屈折率層形成用組成物を硬化させて高屈折率層を形成した。この高屈折率層の屈折率は1.60であった。
【0075】
さらに、この中屈折率層上に製造例γ1で製造された高屈折率層形成用組成物を、乾燥時の厚さが142nmとなるように塗布した後、窒素雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて300mJの紫外線を照射し、高屈折率層形成用組成物を硬化させて高屈折率層を形成した。この高屈折率層の屈折率は1.80であった。
【0076】
最後に、この高屈折率層上に上記低屈折率層用組成物を乾燥時の厚さが99nmとなるように塗布した後、窒素雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて300mJの紫外線を照射し、低屈折率層用組成物を硬化させて低屈折率層を形成した。この低屈折率層の屈折率は1.34であった。
【0077】
(実施例1-2〜1-19)
表6に示す構成にて、実施例1-1と同様に作製した。
【表6】
【0078】
(比較例1−1〜1−17)
表7に示す構成にて、実施例1-1と同様に作製した。
【表7】
【0079】
得られた各実施例及び比較例の反射防止フィルムにおいて、指紋拭き取り性、反射する光の着色抑制効果、反射防止特性、物理的特性(カール性)を測定し評価した。その結果も表6及び表7に示す。なお、各項目の測定方法は次の通りである。
【0080】
<膜厚>
膜厚の測定は、光学積層体の断面をTEM写真で観察することにより行った。
【0081】
<屈折率>
一方の面に易接着層が付与されている屈折率1.65のPETフィルム〔商品名:「A4100」、東洋紡(株)製〕を基材として、易接着層が付与されていない面上に測定したい被膜を100nm程度の膜厚で形成し、反射分光膜厚計(大塚電子(株)製「FE3000」を持いてフィルム上に形成された被膜について270〜1040nmの範囲で絶対反射率を測定した。得られた絶対反射率のスペクトルの実測値から、代表的な波長分散の近似式としてn-Cauchyの分散式を引用し、未知のパラメーターを絶対反射率のスペクトル非線形最小二乗法によって求めて、波長589nmにおける屈折率を算出した。
【0082】
<指紋拭取り性>
人工指脂液(尿素1g、乳酸4.6g、ピロリン酸ナトリウム8g、食塩7g、エタノール20mLを蒸留水で1Lに希釈したもの)を1滴反射防止フィルム表面に滴下する。その後、日本製紙クレシア(株)製キムワイプを用い、人工指脂液を馴染ませる。続いて、東レ(株)製トレシーを用いて5往復拭取りを実施した後、表面の跡を目視で観察し下記の3段階で評価した。
○:人工指脂液の跡が無い場合
△:人工指脂液の跡が一部残る場合
×:人工指脂液の跡が残る場合
【0083】
<視感度反射率>
測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best560〕により、光の波長380nm〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られる光の波長380nm〜780nmの分光反射率と、CIE標準イルミナントD65の相対分光分布を用いて、JIS Z8701で想定されているXYZ表色系における、反射による物体色の三刺激値Yを視感度反射率(%)とした。
【0084】
<反射色abクロマ及び彩度Cab*>
測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best560〕により、光の波長380nm〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られる光の波長380nm〜780nmの分光反射率と、CIE標準イルミナントD65の相対分光分布を用いて、JISZ8720に規定される色空間CIE1976L*a*b*表色系を計算し、求めたa*、b*値から彩度Cab*={(a*)
2+(b*)
2}
1/2を計算した。
【0085】
<450〜650nmの領域における反射率の最大値と最小値の差>
測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best560〕により、光の波長380nm〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られる光の波長380nm〜780nmの分光反射率の450〜650NMの領域における反射率の最大値と最小値の差を読み取った。
【0086】
<着色抑制効果>
10cm×10cmサイズのガラス板の片面にアクリル系粘着シートを使用して反射防止フィルムを貼り合せ、もう片方の面に黒色フィルムを貼り合せたサンプルを作製した。このサンプルを、三波長蛍光灯管の下で観察し、裏面の黒色フィルムの黒色が、自然な黒色に見える場合を○、黒色が白茶けたり、反射防止フィルムの着色がきつく、黒っぽく見えない場合を× として評価した。
【0087】
<耐擦傷性>
反射防止フィルム表面を#0000のスチールウールに250gfの荷重をかけて、ストローク幅25mm、速度30mm/secで10往復摩擦したあとの表面を目視で観察し、以下の○、×で評価した。※スチールウールは約10mmφにまとめ、表面が均一になるようにカット、摩擦して均したものを使用した。
◎:傷が0〜10本 ○:傷が11本から20本 ×:傷が21本以上
【0088】
<カール性試験>
10cm×10cmのサイズの反射防止フィルムを作成し、反射防止フィルムを水平面に置いた際の4隅のカール高さを測定し、下記の基準により判定する。
○:カール高さが20mm未満
△:カール高さが20mm以上50mm未満
×:カール高さが50mm以上
【0089】
<表面抵抗率>
JIS K 6911−1995に準拠して、デジタル絶縁計〔東亜ディーケーケー(株)製、SM−8220〕を用いて測定した。
【0090】
表6の結果より、各実施例の反射防止フィルムは、指紋拭き取り性が良好で、JISZ8720に基づくCIE標準イルミナントD65に対するJISZ8701に基づく視感度反射率Yが0.5%以下であり、光の波長500〜650nmの領域における反射率の最大値と最小値の差が1%以下であり、かつJISZ8720に基づくCIE標準イルミナントD65に対するJISZ8729に基づくabクロマCab*={(a*)2+(b*)2}1/2が10以下であったため、着色抑制効果が良好であり、さらに、耐擦傷性も良好であった。また、表面抵抗率が10
12Ω/□未満であるために、埃が付着しにくく、また、カール性も良好であった。
【0091】
これに対し表7の結果より、比較例1−1〜1−9は、それぞれ下記の理由により指紋拭き取り性が悪い。
比較例1-1:(a)成分の含有量が少ない。
比較例1-2:(a)成分の含有量が多い。
比較例1-3:(b)成分がない。
比較例1-4:(b)成分の含有量が少ない。
比較例1-5:(b)成分の含有量が多い。
比較例1-6:(b)成分の含有量が多く、かつ、(b)>(a)。
比較例1-7:(a)成分の含有量と(b成分の含有量が同じ((a)>(b)ではない)。
比較例1-8:(a)成分の含有量が(b)成分の含有量より少ない。
比較例1-9:(a)成分の含有量と(b成分の含有量が同じ((a)>(b)ではない)。
【0092】
比較例1-10〜1-13は、それぞれ下記の理由により耐擦傷性が弱い。
比較例1-10:(e)が入っていない。
比較例1-11:重合性基のない(a)を使用している。
比較例1-12:重合性基のない(b)を使用している。
【0093】
比較例1-13〜1-17は、それぞれ下記の理由により着色抑制効果が小さい。
比較例1-13:中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の膜厚が薄い。
比較例1-14:中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の膜厚が厚い。
比較例1-15:ハードコート層と中屈折率層の屈折率差が0.05より小さい。
比較例1-16:ハードコ-ト層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の屈折率が低い。
比較例1-17:ハードコ-ト層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の屈折率が高い。