(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のカーボン導電構造を適用した電子デバイスとして、半導体装置のMOSトランジスタを例示する。本発明のカーボン導電構造は、半導体メモリ等の他の半導体装置や、導電用又は放熱用TSV、太陽電池や燃料電池の電極、冷陰極電子源等に適用することができる。
【0014】
(第1の実施形態)
図1〜
図4は、第1の実施形態による半導体装置の製造方法を工程順に示す概略断面図である。本実施形態では、カーボン導電構造となる配線構造の形成にシングルダマシン的な方法を適用する。
【0015】
先ず、
図1(a)に示すように、半導体基板11上にMOSトランジスタ1を形成する。
MOSトランジスタ1は、半導体基板11上にゲート絶縁膜12を介して形成されたゲート電極13と、その両側のソース/ドレイン領域14とを備えて構成される。
【0016】
ゲート電極13は、例えばSi基板である半導体基板11上において、素子分離構造16(例えばSTI(Shallow Trench Isolation))により画定された活性領域に、多結晶シリコン等を材料としてゲート絶縁膜12を介して形成されている。ゲート電極13の両側には、例えばエッチバック法により絶縁材料のサイドウォール15が形成されている。
ソース/ドレイン領域14は、ゲート電極13の両側の活性領域にP型の不純物(ホウ素等)又はN型の不純物(リン、砒素等)が導入されてなるものである。
【0017】
続いて、
図1(b)に示すように、プラグの形成位置に開口23を有する触媒金属膜21及び不活性化膜22を形成する。なお、
図1(b)〜
図4(b)の各図では、MOSトランジスタ1の一部の図示を省略する。
詳細には、先ず、ゲート絶縁膜12、ゲート電極13、及びサイドウォール15を例えばSiN等の保護膜で覆う。
次に、半導体基板11上にグラフェン形成の触媒となる金属であるCo,Ni,Fe,Pt等、例えばCoをスパッタ法等により、例えば厚み300nm程度に堆積する。以上により、半導体基板11上に触媒金属膜21が形成される。
次に、触媒金属膜21上にグラフェン形成を阻害する材料であるTi,TiN,SiO
2等、ここではSiO
2をスパッタ法等により、例えば厚み30nm程度に堆積する。以上により、触媒金属膜21上に不活性化膜22が形成される。
次に、リソグラフィー及びドライエッチングにより、触媒金属膜21及び不活性化膜22のプラグの形成位置を開口する。以上により、触媒金属膜21及び不活性化膜22に開口23が形成される。
【0018】
ここで、開口23の水平方向の断面形状を例えば矩形状に形成する場合、開口23について、
図1(b)に表れた一対の側面で触媒金属膜21を露出させ、他の一対の側面には不活性化膜を形成することが望ましい。
【0019】
続いて、
図1(c)に示すように、多層グラフェン24を形成する。
詳細には、CVD法により、開口23内にカーボンを堆積する。CVD条件としては、メタンやアセチレン等の希釈ガスで、処理温度を600℃程度〜1200℃程度、ここでは600℃程度とする。このときカーボンは、触媒金属膜21の表面には不活性化膜22が形成されているために堆積されず、不活性化膜22のない開口23内の一対の側面のみに堆積される。この場合、一対の側面に沿って(平行に)シート状のグラフェン24aが複数層に積層されてゆき、開口23内を埋め込む多層グラフェン24が形成される。即ち多層グラフェン24は、触媒金属膜21の接触面(一対の側面)に沿ってグラフェン24aが縦方向成長してゆき、開口23内で複数層にグラフェン24aが積層し充填した状態に形成される。
【0020】
続いて、
図2(a)に示すように、触媒金属膜21及び不活性化膜22を除去する。
詳細には、触媒金属膜21及び不活性化膜22を、例えばFeCl
3水溶液、HCl希釈水溶液等を用いて酸処理する。または、RIE等を用いてドライエッチング処理する。これらを組み合わせても良い。これにより、触媒金属膜21及び不活性化膜22が除去される。
【0021】
続いて、
図2(b)に示すように、多層グラフェン24の側面を覆う層間絶縁膜25を形成する。
詳細には、先ず、半導体基板11上に多層グラフェン24を覆うように絶縁材料、例えばシリコン酸化物をCVD法等やSOG等により堆積する。
次に、例えば化学機械研磨(Chemical-Mechanical Polishing:CMP)により、多層グラフェン24の上面を研磨ストッパーとしてシリコン酸化物を研磨して、シリコン酸化物を平坦化する。この平坦化により、多層グラフェン24の側面を覆う層間絶縁膜25が形成される。多層グラフェン24を、層間絶縁膜25内に埋め込まれたグラフェンプラグ26とする。グラフェンプラグ26は、縦方向に積層されたグラフェン24aの主面と層間絶縁膜25の主面(表面)とが交差するように、本実施形態では略直交するように形成される。
【0022】
図2(b)の状態で、グラフェンプラグ26に、異種分子のインターカレーションを行っても良い。インターカレーションする異種分子は、特に限定するものではないが、FeCl
3,K,Rb,Cs,Li,HNO
3,SbCl
5,SbF
5,Br
2,AlCl
3,NiCl
2,AsF
5及びAuCl
3から選択された少なくとも1種を用いることが望ましい。ここでは、例えばFeCl
3を用いる。このインターカレーションにより、グラフェンプラグ26の電気抵抗及び熱抵抗を大きく低下させることが可能になる。
【0023】
グラフェンプラグ26は、層間絶縁膜25内で密着性が保持される。そのため、グラフェンプラグ26は、層間絶縁膜25内でバリアメタル等を介することなく形成される。この構成を採ることにより、電気抵抗及び熱抵抗の上昇を招く他の構成物(バリアメタル等)を有することなく多層グラフェン24(及びインターカラント)のみでグラフェンプラグ26が形成され、グラフェンプラグ26の更なる低電気抵抗化及び低熱抵抗化が可能となる。
【0024】
続いて、
図2(c)に示すように、配線の形成位置に開口29を有する触媒金属膜27及び不活性化膜28を形成する。
詳細には、先ず、層間絶縁膜25にグラフェン形成の触媒となる金属であるCo,Ni,Fe,Pt等、例えばCoをスパッタ法等により、例えば厚み300nm程度に堆積する。以上により、層間絶縁膜25上に触媒金属膜27が形成される。
次に、触媒金属膜27上にグラフェン形成を阻害する材料であるTi,TiN,SiO
2等、ここではSiO
2をスパッタ法等により、例えば厚み30nm程度に堆積する。以上により、触媒金属膜27上に不活性化膜28が形成される。
次に、リソグラフィー及びドライエッチングにより、触媒金属膜27及び不活性化膜28の配線の形成位置を開口する。以上により、触媒金属膜27及び不活性化膜28に開口29が形成される。
【0025】
ここで、開口29を例えば矩形状に形成する場合、開口29について、
図2(c)に表れた一対の側面で触媒金属膜27を露出させ、他の一対の側面には不活性化膜28を形成することが望ましい。
【0026】
続いて、
図3(a)に示すように、多層グラフェン31を形成する。
詳細には、CVD法により、開口29内にカーボンを堆積する。CVD条件としては、メタンやアセチレン等の希釈ガスで、処理温度を600℃程度〜1200℃程度、ここでは600℃程度とする。このときカーボンは、触媒金属膜27の表面には不活性化膜28が形成されているために堆積されず、不活性化膜28のない開口29内の一対の側面のみに堆積される。この場合、一対の側面に沿って(平行に)シート状のグラフェン31aが複数層に積層されてゆき、開口29内を埋め込む多層グラフェン31が形成される。即ち多層グラフェン31は、触媒金属膜27の接触面(一対の側面)に沿ってグラフェン31aが縦方向成長してゆき、開口29内で複数層にグラフェン31aが積層し充填した状態に形成される。
【0027】
続いて、
図3(b)に示すように、触媒金属膜27及び不活性化膜28を除去する。
詳細には、触媒金属膜27及び不活性化膜28を、例えばFeCl
3水溶液、HCl希釈水溶液等を用いて酸処理する。または、RIE等を用いてドライエッチング処理する。これらを組み合わせても良い。これにより、触媒金属膜27及び不活性化膜28が除去される。
【0028】
続いて、
図4(a)に示すように、多層グラフェン31の側面を覆う層間絶縁膜32を形成する。
詳細には、先ず、層間絶縁膜25上に多層グラフェン31を覆うように絶縁材料、例えばシリコン酸化物をCVD法等やSOG等により堆積する。
次に、例えばCMPにより、多層グラフェン31の上面を研磨ストッパーとしてシリコン酸化物を研磨して、シリコン酸化物を平坦化する。この平坦化により、多層グラフェン31の側面を覆う層間絶縁膜32が形成される。多層グラフェン31を、層間絶縁膜32内に埋め込まれたグラフェン配線33とする。グラフェン配線33は、縦方向に積層されたグラフェン31aの主面と層間絶縁膜32の主面(表面)とが交差するように、本実施形態では略直交するように形成される。
【0029】
図4(a)の状態で、グラフェン配線33に、異種分子のインターカレーションを行っても良い。インターカレーションする異種分子は、特に限定するものではないが、FeCl
3,K,Rb,Cs,Li,HNO
3,SbCl
5,SbF
5,Br
2,AlCl
3,NiCl
2,AsF
5及びAuCl
3から選択された少なくとも1種を用いることが望ましい。ここでは、例えばFeCl
3を用いる。このインターカレーションにより、グラフェン配線33の電気抵抗及び熱抵抗を大きく低下させることが可能になる。
【0030】
グラフェン配線33は、層間絶縁膜32内で密着性が保持される。そのため、グラフェン配線33は、層間絶縁膜32内でバリアメタル等を介することなく形成される。この構成を採ることにより、電気抵抗及び熱抵抗の上昇を招く他の構成物(バリアメタル等)を有することなく多層グラフェン31(及びインターカラント)のみでグラフェン配線33が形成され、グラフェン配線33の更なる低電気抵抗化及び低熱抵抗化が可能となる。
【0031】
グラフェンプラグ26及びこれと接続されたグラフェン配線33により、配線構造2が形成される。
配線構造2においては、グラフェンプラグ26のグラフェン24aの縁部と、グラフェン配線33のグラフェン31aの縁部とが接触し、電気的に接続される。このように、グラフェン24aとグラフェン31aとが縁部(エッジ部)同士で接合することにより、当該接合に起因する配線構造2の電気抵抗及び熱抵抗の上昇を可及的に抑止し、信頼性の高い配線構造が実現する。
【0032】
配線構造2では、グラフェン24aとグラフェン31aとの接続部分において、グラフェン24aの縁部の延在方向とグラフェン31aの縁部の延在方向とが略平行とされている。ここで、グラフェン24aの縁部の延在方向とグラフェン31aの縁部の延在方向とが交差、例えば略直交するようにグラフェン31aを縦方向に積層し、グラフェン配線33を形成するようにしても良い。
【0033】
続いて、
図4(b)に示すように、配線構造2上にこれと接続される配線構造3を形成する。
配線構造3は、配線構造2と略同様に形成される。
即ち、層間絶縁膜32上に、シート状の複数層のグラフェン34aが縦方向に積層された多層グラフェン34が形成され、多層グラフェン34の側面を覆う層間絶縁膜35が形成される。以上により、多層グラフェン34が層間絶縁膜35内に埋め込まれてなるグラフェンビア36が形成される。グラフェンビア36に異種分子のインターカレーションを施しても良い。
【0034】
層間絶縁膜35上に、シート状の複数層のグラフェン37aが縦方向に積層された多層グラフェン37が形成され、多層グラフェン37の側面を覆う層間絶縁膜38が形成される。以上により、多層グラフェン37が層間絶縁膜38内に埋め込まれてなるグラフェン配線39が形成される。グラフェン配線39に異種分子のインターカレーションを施しても良い。
【0035】
グラフェンビア36及びこれと接続されたグラフェン配線39により、配線構造3が形成される。
図5は、配線構造2,3の形成状況について、配線構造2,3を構成する多層グラフェン24,31,34,37のみを模式的に示す概略斜視図である。
【0036】
配線構造3においては、グラフェンビア36のグラフェン34aの縁部と、グラフェン配線39のグラフェン37aの縁部とが接触し、電気的に接続される。このように、グラフェン34aとグラフェン37aとが縁部(エッジ部)同士で接合することにより、当該接合に起因する配線構造3の電気抵抗及び熱抵抗の上昇を可及的に抑止し、信頼性の高い配線構造が実現する。
【0037】
配線構造3では、グラフェン34aとグラフェン37aとの接続部分において、グラフェン34aの縁部の延在方向とグラフェン37aの縁部の延在方向とが交差、例えば略直交している。ここで、グラフェン34aの縁部の延在方向とグラフェン37aの縁部の延在方向とが略平行となるようにグラフェン37aを縦方向に積層し、グラフェン配線39を形成するようにしても良い。
【0038】
配線構造2と配線構造3とは、グラフェン配線33とグラフェンビア36とが接合して、電気的に接続される。この場合、グラフェン配線33のグラフェン31aの縁部とグラフェンビア36のグラフェン34aの縁部とが接触し、電気的に接続される。このように、グラフェン31aとグラフェン34aとが縁部(エッジ部)同士で接合することにより、当該接合に起因する配線構造2,3の電気抵抗及び熱抵抗の上昇が可及的に抑止される。
【0039】
以下、配線構造3と同様に、配線構造3上にこれと接続される配線構造が必要な数だけ順次形成され、多層配線構造とされる。以上により、半導体装置が形成される。
【0040】
なお、本実施形態では、MOSトランジスタ上に直接的に多層配線構造を形成する場合を例示したが、予めこの多層配線構造を形成しておき、MOSトランジスタが形成された基板に転写等により接続することも可能である。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、シート状のグラフェンの優れた低電気抵抗及び低熱抵抗を十分に発揮することのできる簡素な配線を容易且つ確実に得ることが可能となり、信頼性の高い多層配線構造が実現する。
【0042】
なお、上記の製造方法では、多層グラフェンをCVD法で形成する場合について例示したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、CVD法に代わってスパッタ法や蒸着法で多層グラフェンを形成するようにしても良い。以下、スパッタ法を用いる場合について説明する。
図6は、第1の実施形態において、スパッタ法によりグラフェンプラグ26の多層グラフェンを形成する場合を示す概略断面図である。
【0043】
この場合には、
図1(a)〜
図1(b)の諸工程を経た後、
図6(a)に示すように、カーボン41を堆積する。
詳細には、指向性スパッタ法により開口23内を含む全面にカーボン41を例えば300nm程度の厚みに堆積する。なお、スパッタ法の代わりに蒸着法を用いても良い。
【0044】
続いて、
図6(b)に示すように、多層グラフェン41Aを形成する。
詳細には、処理温度を600℃以上、ここでは1200℃程度とし、処理温度に依存して処理時間を1秒間程度〜1時間程度、ここでは10秒間程度として、カーボン41を熱処理する。これにより、カーボン41のうち、不活性化膜のない開口23内の一対の側面と接触する部位でシート状のグラフェン41aの積層構造となってゆき、開口23内を埋め込む多層グラフェン41Aが形成される。即ち多層グラフェン41Aは、触媒金属膜21の接触面(一対の側面)に沿ってグラフェン41aが縦方向に生成してゆき、開口23内で複数層にグラフェン41aが充填した状態に形成される。
【0045】
続いて、
図6(c)に示すように、カーボン41及び不活性化膜22を除去する。
詳細には、例えばCMPにより、多層グラフェン41A上で未反応のカーボン41及び不活性化膜22を触媒金属膜21の表面を研磨ストッパーとして研磨する。この研磨により、接続孔23内に多層グラフェン41Aが残存する。
【0046】
続いて、
図6(d)に示すように、触媒金属膜21を除去する。
詳細には、例えばFeCl
3水溶液、HCl希釈水溶液を用いて触媒金属21をウェットエッチングする。これにより、触媒金属膜21が除去される。しかる後、
図2(b)以降の諸工程を行う。
【0047】
なお、グラフェン配線33、配線構造3、及びその上の配線構造の多層グラフェンについても、それぞれ上記と同様にスパッタ法又は蒸着法で形成するようにしても良い。
【0048】
−変形例−
以下、第1の実施形態の諸変形例について説明する。
第1の実施形態では、配線構造2を構成するグラフェンプラグ26及びグラフェン配線33、配線構造3を構成するグラフェンビア36及びグラフェン配線39の各々について、シングルダマシン的な方法により多層グラフェンで形成する旨を説明した。以下の変形例では、配線構造2のグラフェンプラグ26、配線構造3のグラフェンビア36を、他の導電材料で形成する場合を例示する。
【0049】
(変形例1)
本例では、配線構造のプラグやビアを金属材料で形成する場合について例示する。
図7は、第1の実施形態の変形例1による半導体装置の構成を示す概略断面図であり、第1の実施形態の
図4(b)に対応する。なお、第1の実施形態と同様の構成部材等については、同符号を付して詳しい説明を省略する。また、MOSトランジスタ1の一部の図示を省略する。
【0050】
本例による半導体装置では、Wプラグ42及びグラフェン配線33を有して構成される配線構造4と、Cuビア43及びグラフェン配線39を有して構成される配線構造5とが形成される。
【0051】
Wプラグ42を形成するには、先ず、層間絶縁膜25に接続孔25aを形成し、接続孔25a内を、バリアメタル42aである例えばTiNを介して、例えばスパッタ法やCVD法等によりタングステン(W)42bを堆積する。そして、層間絶縁膜25上のバリアメタル42a及びW42bをCMP等で平坦化する。以上により、層間絶縁膜25の接続孔25a内をバリアメタル42aを介してW42bで充填してなるWプラグ42が形成される。
【0052】
Cuビア43を形成するには、先ず、層間絶縁膜35に接続孔35aを形成し、接続孔35a内を、バリアメタル43aである例えばTaNを介して、例えばメッキ法等によりCu43bを成長する。そして、層間絶縁膜35上のバリアメタル43a及びCu43bをCMP等で平坦化する。以上により、層間絶縁膜35の接続孔35a内をバリアメタル43aを介してCu43bで充填してなるCuビア43が形成される。
【0053】
本例によれば、シート状のグラフェンの優れた低電気抵抗及び低熱抵抗を十分に発揮することのできる簡素な配線を容易且つ確実に得ることが可能となり、信頼性の高い多層配線構造が実現する。
【0054】
(変形例2)
本例では、配線構造のプラグやビアをカーボンナノチューブ(CNT)で形成する場合について例示する。
図8は、第1の実施形態の変形例2による半導体装置の構成を示す概略断面図であり、第1の実施形態の
図4(b)に対応する。なお、第1の実施形態と同様の構成部材等については、同符号を付して詳しい説明を省略する。また、MOSトランジスタ1の一部の図示を省略する。
【0055】
本例による半導体装置では、CNTプラグ44及びグラフェン配線33を有して構成される配線構造6と、CNTビア45及びグラフェン配線39を有して構成される配線構造7とが形成される。
図9は、本例の各配線構造の形成状況について、各配線構造6,7を構成するCNT及び多層グラフェンのみを模式的に示す概略斜視図である。
【0056】
CNTプラグ44を形成するには、先ず、真空蒸着法等により、層間絶縁膜25の接続孔25a内に触媒材料としてCo等の触媒微粒子44aを堆積する。そして、例えば熱CVD法により、電界の印加方向を基板表面に垂直な方向として、CNTの成長処理を実行する。これにより、接続孔25aの底面に存する触媒微粒子44aから起立するようにCNT44bが形成される。CNT44bの先端部位はCMP等により平坦化される。以上により、接続孔25a内で触媒微粒子44aから起立するCNT44bが形成されてなる、CNTプラグ44が形成される。
【0057】
CNTビア45を形成するには、先ず、真空蒸着法等により、層間絶縁膜35の接続孔35a内に触媒材料としてCo等の触媒微粒子45aを堆積する。そして、例えば熱CVD法により、電界の印加方向を基板表面に垂直な方向として、CNTの成長処理を実行する。これにより、接続孔35aの底面に存する触媒微粒子45aから起立するようにCNT45bが形成される。CNT45bの先端部位はCMP等により平坦化される。以上により、接続孔35a内で触媒微粒子45aから起立するCNT45bが形成されてなる、CNTビア45が形成される。
【0058】
なお、上記のようにCNT44b,45bを成長形成する代わりに、CNT44b,45bを植え込みで形成するようにしても良い。
即ち、表面に酸化膜が形成されたSi基板等を用いて当該Si基板上にCNTを成長形成し、CNTの上端を平坦化し、平坦化された部位に転写支持膜を形成し、Si基板を除去する。転写支持膜のCNTを、層間絶縁膜25(35)の接続孔25a(35a)と対向させ、対向させた両者間に揮発性溶媒を付与する。塗布された揮発性溶媒が乾燥すると、層間絶縁膜25(35)とCNTとが密着する。CNTの先端部分が接続孔25a(35a)内に挿入され、接続孔25a(35a)の底面に接続される。転写支持膜及び不要なCNTを研磨等により除去する。
【0059】
本例では、CNTプラグ44のCNT44bの上端部と、グラフェン配線33のグラフェン31aの縁部とが接触し、電気的に接続される。このように、CNT44bとグラフェン31aとがエッジ部同士で接合することにより、当該接合に起因する配線構造の電気抵抗及び熱抵抗の上昇を可及的に抑止し、信頼性の高い配線構造が実現する。
【0060】
本例では、CNTビア45のCNT45bの上端部と、グラフェン配線39のグラフェン37aの縁部とが接触し、電気的に接続される。このように、CNT45bとグラフェン37aとがエッジ部同士で接合することにより、当該接合に起因する配線構造の電気抵抗及び熱抵抗の上昇を可及的に抑止し、信頼性の高い配線構造が実現する。
【0061】
更に、配線構造6,7において、グラフェン配線33のグラフェン31aの縁部と、CNTビア45のCNT45bの下端部とが触媒微粒子45aを介して電気的に接続される。このように、グラフェン31aとCNT45bとがエッジ部同士で接合することにより、当該接合に起因する配線構造の電気抵抗及び熱抵抗の上昇が可及的に抑止される。
【0062】
本例によれば、シート状のグラフェン及び線状のCNTの優れた低電気抵抗及び低熱抵抗を十分に発揮することのできる簡素な配線を容易且つ確実に得ることが可能となり、信頼性の高い多層配線構造が実現する。
【0063】
(第2の実施形態)
図10〜
図11は、第2の実施形態による半導体装置の製造方法を工程順に示す概略断面図である。本実施形態では、カーボン導電構造となる配線構造の形成にデュアルダマシン的な方法を適用する。なお、第1の実施形態と同様の構成部材等については、同符号を付して詳しい説明を省略する。
【0064】
先ず、第1の実施形態の
図1(a)と同様に、半導体基板11上にMOSトランジスタ1を形成する。
【0065】
続いて、
図10(a)に示すように、触媒金属膜51、エッチングストッパ膜52、触媒金属膜53、及び不活性化膜54を形成する。なお、
図10〜
図11では、MOSトランジスタ1の一部の図示を省略する。
詳細には、先ず、ゲート絶縁膜12、ゲート電極13、及びサイドウォール15を例えばSiN等の保護膜で覆う。
次に、半導体基板11上にグラフェン形成の触媒となる金属であるCo,Ni,Fe,Pt等、例えばCoをスパッタ法等により、例えば厚み300nm程度に堆積する。以上により、半導体基板11上に触媒金属膜51が形成される。
【0066】
次に、触媒金属膜51上に例えばシリコンカーバイドを、例えば厚み30nm程度に堆積する。これにより、触媒金属膜51上にエッチングストッパ膜52が形成される。
次に、エッチングストッパ膜52をリソグラフィー及びドライエッチングにより開口する。これにより、エッチングストッパ膜52に、触媒金属膜51に接続孔を形成するための開口52aが形成される。
次に、エッチングストッパ膜52上にグラフェン形成の触媒となる金属であるCo,Ni,Pt等、例えばCoをスパッタ法等により、例えば厚み300nm程度に堆積する。これにより、エッチングストッパ膜52上に触媒金属膜53が形成される。
次に、触媒金属膜53上にグラフェン形成を阻害する材料であるTi,TiN,SiO
2等、ここではSiO
2をスパッタ法等により、例えば厚み30nm程度に堆積する。以上により、触媒金属膜53上に不活性化膜54が形成される。
【0067】
続いて、
図10(b)に示すように、触媒金属膜51、エッチングストッパ膜52、触媒金属膜53、及び不活性化膜54に、配線構造溝55を形成する。
詳細には、不活性化膜54上に配線形状の開口を有するレジストマスクを形成する。このレジストマスクを用いて、不活性化膜54及び触媒金属膜51,53をドライエッチングする。このとき先ず、触媒金属膜53及び不活性化膜54に配線溝53a,54aが形成される。引き続きドライエッチングを行うと、エッチングストッパ膜52がハードマスクとして機能し、触媒金属膜51にエッチングストッパ膜52の開口52aに倣った接続孔51aが形成される。レジストマスクはアッシング処理等により除去される。以上により、触媒金属膜51、エッチングストッパ膜52、触媒金属膜53、及び不活性化膜54には、接続孔51a、開口52a、及び配線溝53a,54aが一体となった配線構造溝55が形成される。
【0068】
ここで、配線構造溝55の水平方向の断面形状を例えば矩形状に形成する場合、配線構造溝55について、
図10(b)に表れた一対の側面で触媒金属膜51,53を露出させ、他の一対の側面には不活性化膜を形成することが望ましい。
【0069】
続いて、
図10(c)に示すように、多層グラフェン56を形成する。
詳細には、CVD法により、配線構造溝55内にカーボンを堆積する。CVD条件としては、メタンやアセチレン等の希釈ガスで、処理温度を600℃程度〜1200℃程度、ここでは600℃程度とする。このときカーボンは、触媒金属膜51の表面には不活性化膜54が形成されているために堆積されず、不活性化膜54のない配線構造溝55内の一対の側面のみに堆積される。この場合、一対の側面に沿って(平行に)シート状のグラフェン56aが複数層に積層されてゆき、配線構造溝55内を埋め込む多層グラフェン56が形成される。即ち多層グラフェン56は、触媒金属膜51,53の接触面(一対の側面)に沿ってグラフェン56aが縦方向成長してゆき、配線構造溝55内で複数層にグラフェン56aが積層し充填した状態に形成される。
【0070】
続いて、
図11(a)に示すように、触媒金属膜51、エッチングストッパ膜52、触媒金属膜53、及び不活性化膜54を除去する。
詳細には、触媒金属膜51、エッチングストッパ膜52、触媒金属膜53、及び不活性化膜54を、例えばFeCl
3水溶液、HCl希釈水溶液等を用いて酸処理する。または、RIE等を用いてドライエッチング処理する。これらを組み合わせても良い。これにより、エッチングストッパ膜52、触媒金属膜53、及び不活性化膜54が除去される。
【0071】
続いて、
図11(b)に示すように、多層グラフェン56の側面を覆う層間絶縁膜57を形成する。
詳細には、先ず、半導体基板11上に多層グラフェン56を覆うように絶縁材料、例えばシリコン酸化物をCVD法等やSOG等により堆積する。
次に、例えばCMPにより、多層グラフェン56の上面を研磨ストッパーとしてシリコン酸化物を研磨して、シリコン酸化物を平坦化する。この平坦化により、多層グラフェン56の側面を覆う層間絶縁膜57が形成される。多層グラフェン56は、層間絶縁膜57内に埋め込まれた配線構造8となる。配線構造8は、縦方向に積層されたグラフェン56aの主面と層間絶縁膜57の主面(表面)とが交差するように、本実施形態では略直交するように形成される。
【0072】
図11(b)の状態で、配線構造8に、異種分子のインターカレーションを行っても良い。インターカレーションする異種分子は、特に限定するものではないが、FeCl
3,K,Rb,Cs,Li,HNO
3,SbCl
5,SbF
5,Br
2,AlCl
3,NiCl
2,AsF
5及びAuCl
3から選択された少なくとも1種を用いることが望ましい。ここでは、例えばFeCl
3を用いる。このインターカレーションにより、配線構造8の電気抵抗及び熱抵抗を大きく低下させることが可能になる。
【0073】
配線構造8は、層間絶縁膜57内で密着性が保持される。そのため、配線構造8は、層間絶縁膜57内でバリアメタル等を介することなく形成される。この構成を採ることにより、電気抵抗及び熱抵抗の上昇を招く他の構成物(バリアメタル等)を有することなく多層グラフェン56(及びインターカラント)のみで配線構造8が形成され、配線構造8の更なる低電気抵抗化及び低熱抵抗化が可能となる。
【0074】
続いて、
図11(c)に示すように、配線構造8上にこれと接続される配線構造9を形成する。
配線構造9は、配線構造8と略同様に形成される。
即ち、層間絶縁膜57上に、シート状の複数層のグラフェン58aが縦方向に積層された多層グラフェン58が形成され、多層グラフェン58の側面を覆う層間絶縁膜59が形成される。以上により、多層グラフェン58が層間絶縁膜59内に埋め込まれてなる配線構造9が形成される。配線構造9に異種分子のインターカレーションを施しても良い。
【0075】
配線構造8と配線構造9とは、多層グラフェン56,58が接合して、電気的に接続される。この場合、多層グラフェン56のグラフェン56aの縁部と多層グラフェン58のグラフェン58aの縁部とが接触し、電気的に接続される。このように、グラフェン56aとグラフェン58aとが縁部(エッジ部)同士で接合することにより、当該接合に起因する配線構造8,9の電気抵抗及び熱抵抗の上昇が可及的に抑止される。
【0076】
以下、配線構造9と同様に、配線構造9上にこれと接続される配線構造が必要な数だけ順次形成され、多層配線構造とされる。以上により、半導体装置が形成される。
【0077】
なお、本実施形態では、MOSトランジスタ上に直接的に多層配線構造を形成する場合を例示したが、予めこの多層配線構造を形成しておき、MOSトランジスタが形成された基板に転写等により接続することも可能である。
【0078】
以上説明したように、本実施形態によれば、シート状のグラフェンの優れた低電気抵抗及び低熱抵抗を十分に発揮することのできる簡素な配線を容易且つ確実に得ることが可能となり、信頼性の高い多層配線構造が実現する。
【0079】
なお、上記の製造方法では、多層グラフェンをCVD法で形成する場合について例示したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、CVD法に代わってスパッタ法や蒸着法で多層グラフェンを形成するようにしても良い。以下、スパッタ法を用いる場合について説明する。
図12は、第2の実施形態において、スパッタ法により配線構造8の多層グラフェンを形成する場合を示す概略断面図である。
【0080】
この場合には、
図10(a)〜
図11(b)の諸工程を経た後、
図12(a)に示すように、カーボン61を堆積する。
詳細には、指向性スパッタ法等により配線構造溝55内を含む全面に例えば600nm程度の厚みにカーボン61を堆積する。なお、スパッタ法の代わりに蒸着法を用いても良い。
【0081】
続いて、
図12(b)に示すように、多層グラフェン61Aを形成する。
詳細には、処理温度を600℃以上、ここでは1200℃程度とし、処理温度に依存して処理時間を1秒間程度〜1時間程度、ここでは20秒間程度として、カーボン61を熱処理する。これにより、カーボン61のうち、不活性化膜のない配線構造溝55内の一対の側面と接触する部位でシート状のグラフェン61aの積層構造となってゆき、配線構造溝55内を埋め込む多層グラフェン61Aが形成される。即ち多層グラフェン61Aは、触媒金属膜51,53の接触面(一対の側面)に沿ってグラフェン61aが縦方向に生成してゆき、配線構造溝55内で複数層にグラフェン61aが充填した状態に形成される。
【0082】
続いて、
図12(c)に示すように、カーボン61及び不活性化膜54を除去する。
詳細には、例えばCMPにより、多層グラフェン61A上で未反応のカーボン61及び不活性化膜54を触媒金属膜51の表面を研磨ストッパーとして研磨する。この研磨により、配線構造溝55内に多層グラフェン61Aが残存する。
【0083】
続いて、
図12(d)に示すように、触媒金属膜51、エッチングストッパ膜52、及び触媒金属膜53を除去する。
詳細には、触媒金属膜51、エッチングストッパ膜52、及び触媒金属膜53を、例えばFeCl
3水溶液、HCl希釈水溶液等を用いて酸処理する。または、RIE等を用いてドライエッチング処理する。これらを組み合わせても良い。これにより、触媒金属膜51、エッチングストッパ膜52、及び触媒金属膜53が除去される。しかる後、
図11(b)以降の諸工程を行う。
【0084】
なお、配線構造9及びその上の配線構造の多層グラフェンについても、それぞれ上記と同様にスパッタ法又は蒸着法で形成するようにしても良い。
【0085】
(第3の実施形態)
図13〜
図14は、第3の実施形態による半導体装置の製造方法を工程順に示す概略断面図である。本実施形態では、カーボン導電構造となる配線構造の多層グラフェンを縦横一体構造で形成する。なお、第1の実施形態と同様の構成部材等については、同符号を付して詳しい説明を省略する。
【0086】
先ず、第1の実施形態の
図1(a)と同様に、半導体基板11上にMOSトランジスタ1を形成する。
【0087】
続いて、
図13(a)に示すように、MOSトランジスタ1との接続位置に開口71aを有する触媒金属膜71を形成する。なお、
図13〜
図14では、MOSトランジスタ1の一部の図示を省略する。
詳細には、先ず、ゲート絶縁膜12、ゲート電極13、及びサイドウォール15を例えばSiN等の保護膜で覆う。
次に、半導体基板11上にグラフェン形成の触媒となる金属であるCo,Ni,Fe,Pt等、例えばCoをスパッタ法等により、例えば厚み300nm程度に堆積する。以上により、半導体基板11上に触媒金属膜71が形成される。
次に、リソグラフィー及びドライエッチングにより、触媒金属膜71のプラグの形成位置を開口する。以上により、触媒金属膜71に開口71aが形成される。
【0088】
ここで、開口71aの水平方向の断面形状を例えば矩形状に形成する場合、開口71aについて、
図13(a)に表れた一対の側面で触媒金属膜71を露出させ、他の一対の側面にはグラフェン形成を阻害する不活性化膜を形成することが望ましい。
【0089】
続いて、
図13(b)に示すように、多層グラフェン72を形成する。
詳細には、CVD法により、開口71a内を含む全面にカーボンを堆積する。CVD条件としては、メタンやアセチレン等の希釈ガスで、処理温度を600℃程度〜1200℃程度、ここでは600℃程度とする。このときカーボンは、触媒金属膜71の露出表面、即ち開口71aの一対の側面から触媒金属膜71の上面に架けて堆積される。この場合、開口71a内では一対の側面に沿って(平行に)シート状のグラフェン72aが複数層に積層され、開口71a内を埋め込むと共に、触媒金属膜71の上面上では当該上面に沿って(平行に)シート状のグラフェン72aが複数層に積層されて、多層グラフェン72が形成される。即ち多層グラフェン72は、触媒金属膜71の接触面(開口71aの一対の側面及び触媒金属膜71の上面)に沿って、開口71a内では縦方向成長し、触媒金属膜21の上面上では横方向成長してグラフェン72aが一体形成してゆき、開口71a内から触媒金属膜71の上面に架けて複数層にグラフェン72aが積層した状態に形成される。
【0090】
続いて、
図13(c)に示すように、多層グラフェン72を適宜加工する。
詳細には、多層グラフェン72の触媒金属膜71の上面上の所定部分を、リソグラフィー及びドライエッチングにより除去し、所期の配線状態に加工する。
【0091】
続いて、
図14(a)に示すように、触媒金属膜71を除去する。
詳細には、触媒金属膜71を、例えばFeCl
3水溶液、HCl希釈水溶液等を用いて酸処理する。これにより、触媒金属膜71が除去される。
【0092】
続いて、
図14(b)に示すように、多層グラフェン72の側面を覆う層間絶縁膜73を形成する。
詳細には、先ず、半導体基板11上に多層グラフェン72を覆うように絶縁材料、例えばシリコン酸化物をCVD法等やSOG等により堆積する。
次に、例えばCMPにより、多層グラフェン72の上面を研磨ストッパーとしてシリコン酸化物を研磨して、シリコン酸化物を平坦化する。この平坦化により、多層グラフェン72の側面を覆う層間絶縁膜73が形成される。多層グラフェン72は、層間絶縁膜73内に埋め込まれた配線構造81となる。配線構造81は、開口71a内では縦方向に、触媒金属膜71の上面上では横方向に一体的に成長したグラフェン72aが積層されて形成される。
【0093】
図14(b)の状態で、配線構造81に、異種分子のインターカレーションを行っても良い。インターカレーションする異種分子は、特に限定するものではないが、FeCl
3,K,Rb,Cs,Li,HNO
3,SbCl
5,SbF
5,Br
2,AlCl
3,NiCl
2,AsF
5及びAuCl
3から選択された少なくとも1種を用いることが望ましい。ここでは、例えばFeCl
3を用いる。このインターカレーションにより、配線構造81の電気抵抗及び熱抵抗を大きく低下させることが可能になる。
【0094】
配線構造81は、層間絶縁膜73内で密着性が保持される。そのため、配線構造81は、層間絶縁膜73内でバリアメタル等を介することなく形成される。この構成を採ることにより、電気抵抗及び熱抵抗の上昇を招く他の構成物(バリアメタル等)を有することなく多層グラフェン72(及びインターカラント)のみで配線構造81が形成され、配線構造81の更なる低電気抵抗化及び低熱抵抗化が可能となる。
【0095】
続いて、
図14(c)に示すように、配線構造81上にこれと接続される配線構造82を形成する。
配線構造82は、配線構造81と略同様に形成される。
即ち、層間絶縁膜73上に、プラグ部分で縦方向に、配線部分で横方向に一体形成されたシート状の複数層のグラフェン74aが積層された多層グラフェン74が形成され、多層グラフェン74の側面を覆う層間絶縁膜75が形成される。以上により、多層グラフェン74が層間絶縁膜75内に埋め込まれてなる配線構造82が形成される。配線構造82に異種分子のインターカレーションを施しても良い。
配線構造81と配線構造82とは、多層グラフェン72,74が接合して、電気的に接続される。
【0096】
以下、配線構造82と同様に、配線構造82上にこれと接続される配線構造が必要な数だけ順次形成され、多層配線構造とされる。以上により、半導体装置が形成される。
【0097】
なお、本実施形態では、MOSトランジスタ上に直接的に多層配線構造を形成する場合を例示したが、予めこの多層配線構造を形成しておき、MOSトランジスタが形成された基板に転写等により接続することも可能である。
【0098】
以上説明したように、本実施形態によれば、シート状のグラフェンの優れた低電気抵抗及び低熱抵抗を十分に発揮することのできる簡素な配線を容易且つ確実に得ることが可能となり、信頼性の高い多層配線構造が実現する。
【0099】
なお、上記の製造方法では、多層グラフェンをCVD法で形成する場合について例示したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、CVD法に代わってスパッタ法や蒸着法で多層グラフェンを形成するようにしても良い。以下、スパッタ法を用いる場合について説明する。
図15は、第3の実施形態において、スパッタ法により配線構造81の多層グラフェンを形成する場合を示す概略断面図である。
【0100】
この場合には、
図13(a)の工程を経た後、
図15(a)に示すように、カーボン76を堆積する。
詳細には、指向性スパッタ法等により開口71a内を含む全面にカーボン76を例えば300nm程度の厚みに堆積する。なお、スパッタ法の代わりに蒸着法を用いても良い。
【0101】
続いて、
図15(b)に示すように、多層グラフェン76Aを形成する。
詳細には、処理温度を600℃以上、ここでは1200℃程度とし、処理温度に依存して処理時間を1秒間程度〜1時間程度、ここでは10秒間程度として、カーボン76を熱処理する。これにより、これにより、カーボン76は、触媒金属膜71の接触面(開口71aの一対の側面及び触媒金属膜21の上面)に沿って、開口71a内では縦方向成長し、触媒金属膜71の上面上では横方向成長してグラフェン76aが一体形成してゆき、開口71a内から触媒金属膜71の上面に架けて複数層にグラフェン76aが積層した状態に形成される。
しかる後、
図13(c)以降の諸工程を行う。
【0102】
なお、配線構造82及びその上の配線構造の多層グラフェンについても、それぞれ上記と同様にスパッタ法又は蒸着法で形成するようにしても良い。
【0103】
以下、配線構造の製造方法及び配線構造の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0104】
(付記1)複数層に積層された第1のグラフェンと、
複数層に積層された第2のグラフェンと
を含み、
前記第1のグラフェンの縁部と前記第2のグラフェンの縁部とが電気的に接続されていることを特徴とするカーボン導電構造。
【0105】
(付記2)前記第1のグラフェンと前記第2のグラフェンとの接続部分において、前記第1のグラフェンの縁部の延在方向と前記第2のグラフェンの縁部の延在方向とが平行であることを特徴とする付記1に記載のカーボン導電構造。
【0106】
(付記3)前記第1のグラフェンと前記第2のグラフェンとの接続部分において、前記第1のグラフェンの縁部の延在方向と前記第2のグラフェンの縁部の延在方向とが交差することを特徴とする付記1に記載のカーボン導電構造。
【0107】
(付記4)前記第1のグラフェンが埋め込み形成された第1の絶縁膜と、
前記第2のグラフェンが埋め込み形成された第2の絶縁膜と
を更に含み、
前記第1のグラフェンの主面と前記第1の絶縁膜の主面とが交差し、前記第2のグラフェンの主面と前記第2の絶縁膜の主面とが交差することを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載のカーボン導電構造。
【0108】
(付記5)前記第1のグラフェンと前記第2のグラフェンとが一体形成されていることを特徴とする付記1に記載のカーボン導電構造。
【0109】
(付記6)前記第1のグラフェンが埋め込み形成された第1の絶縁膜と、
前記第2のグラフェンが埋め込み形成された第2の絶縁膜と
を更に含み、
前記第1のグラフェンの主面と前記第1の絶縁膜の主面とが交差し、前記第2のグラフェンの主面と前記第2の絶縁膜の主面とが平行であることを特徴とする付記5に記載のカーボン導電構造。
【0110】
(付記7)複数本で束状に並列する線状のカーボンナノ材料と、
複数層に積層されたグラフェンと
を含み、
前記カーボンナノ材料の端部と前記グラフェンの縁部とが電気的に接続されていることを特徴とするカーボン導電構造。
【0111】
(付記8)前記カーボンナノ材料の長手方向と前記グラフェンの主面とが平行であることを特徴とする付記7に記載のカーボン導電構造。
【0112】
(付記9)前記カーボンナノ材料が埋め込み形成された第1の絶縁膜と、
前記グラフェンが埋め込み形成された第2の絶縁膜と
を更に含み、
前記グラフェンの主面と前記第2の絶縁膜の主面とが交差することを特徴とする付記7又は8に記載のカーボン導電構造。
【0113】
(付記10)第1のグラフェンを複数層に積層する工程と、
第2のグラフェンを複数層に積層する工程と
を含み、
前記第1のグラフェンの縁部と前記第2のグラフェンの縁部とが電気的に接続されることを特徴とするカーボン導電構造の製造方法。
【0114】
(付記11)前記第1のグラフェンと前記第2のグラフェンとの接続部分において、前記第1のグラフェンの縁部の延在方向と前記第2のグラフェンの縁部の延在方向とが平行であることを特徴とする付記10に記載のカーボン導電構造の製造方法。
【0115】
(付記12)前記第1のグラフェンと前記第2のグラフェンとの接続部分において、前記第1のグラフェンの縁部の延在方向と前記第2のグラフェンの縁部の延在方向とが交差することを特徴とする付記10に記載のカーボン導電構造の製造方法。
【0116】
(付記13)第1の絶縁膜内に前記第1のグラフェンを埋め込み形成し、
第2の絶縁膜内に前記第2のグラフェンを埋め込み形成し、
前記第1のグラフェンの主面と前記第1の絶縁膜の主面とが交差し、前記第2のグラフェンの主面と前記第2の絶縁膜の主面とが交差することを特徴とする付記10〜12のいずれか1項に記載のカーボン導電構造の製造方法。
【0117】
(付記14)前記第1のグラフェンと前記第2のグラフェンとを一体形成することを特徴とする付記10に記載のカーボン導電構造の製造方法。
【0118】
(付記15)第1の絶縁膜内に前記第1のグラフェンを埋め込み形成し、
第2の絶縁膜内に前記第2のグラフェンを埋め込み形成し、
前記第1のグラフェンの主面と前記第1の絶縁膜の主面とが交差し、前記第2のグラフェンの主面と前記第2の絶縁膜の主面とが平行であることを特徴とする付記14に記載のカーボン導電構造の製造方法。
【0119】
(付記16)複数本の線状のカーボンナノ材料を束状に並列するように形成する工程と、
グラフェンを複数層に積層する工程と
を含み、
前記カーボンナノ材料の端部と前記グラフェンの縁部とが電気的に接続されることを特徴とするカーボン導電構造の製造方法。
【0120】
(付記17)前記カーボンナノ材料の長手方向と前記グラフェンの主面とが平行であることを特徴とする付記16に記載のカーボン導電構造の製造方法。
【0121】
(付記18)第1の絶縁膜内に前記カーボンナノ材料を埋め込み形成し、
第2の絶縁膜内に前記グラフェンを埋め込み形成し、
前記グラフェンの主面と前記第2の絶縁膜の主面とが交差することを特徴とする付記16又は17に記載のカーボン導電構造の製造方法。