特許第6244785号(P6244785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244785
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】IT機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/32 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   G06F1/32 Z
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-203791(P2013-203791)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-69462(P2015-69462A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(72)【発明者】
【氏名】松田 諒慈
【審査官】 宮下 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−277350(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/008353(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0125436(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段階の消費電力動作モードのうちパラメータの値によって定まる一の前記消費電力動作モードで動作する複数のコンポーネントを有するIT機器であって、
前記コンポーネント毎の前記パラメータの値の組み合わせ候補を複数決定し、該決定した組み合わせ候補のそれぞれについて、前記組み合わせ候補の前記パラメータの値を使用して前記コンポーネントの前記消費電力動作モードを設定して自IT機器を起動し、自IT機器の性能と消費電力とを測定する測定手段と、
前記測定した性能が閾値を超えている前記パラメータの値の組み合わせ候補のうち、前記測定した消費電力が最も小さい前記パラメータの値の組み合わせ候補と前記測定した消費電力とを決定する決定手段と
前記性能が前記閾値を超え且つ前記消費電力が最小になる前記パラメータの値の組み合わせが既に決定している他のIT機器の前記コンポーネントの情報と前記パラメータの値の組み合わせとを記憶する記憶手段とを有し、
前記測定手段は、前記複数の組み合わせ候補の決定では、自IT機器の前記コンポーネントの情報と類似する前記コンポーネントの情報を有する前記他のIT機器の前記パラメータの値の組み合わせを前記記憶手段から取得し、該取得した前記パラメータの値の組み合わせに基づいて、前記複数の組み合わせ候補を決定する
IT機器。
【請求項2】
複数段階の消費電力動作モードのうちパラメータの値によって定まる一の前記消費電力動作モードで動作する複数のコンポーネントを有するIT機器であって、
前記コンポーネント毎の前記パラメータの値の組み合わせ候補を複数決定し、該決定した組み合わせ候補のそれぞれについて、前記組み合わせ候補の前記パラメータの値を使用して前記コンポーネントの前記消費電力動作モードを設定して自IT機器を起動し、自IT機器の性能と消費電力とを測定する測定手段と、
前記測定した性能が閾値を超えている前記パラメータの値の組み合わせ候補のうち、前記測定した消費電力が最も小さい前記パラメータの値の組み合わせ候補と前記測定した消費電力とを決定する決定手段とを有し、
前記性能が前記閾値を超え且つ前記消費電力が最小になる前記パラメータの値の組み合わせが既に決定している他のIT機器の前記コンポーネントの情報と前記パラメータの値の組み合わせとを記憶する管理サーバにネットワークを介して接続し、
前記測定手段は、前記複数の組み合わせ候補の決定では、自IT機器の前記コンポーネントの情報と類似する前記コンポーネントの情報を有する前記他のIT機器の前記パラメータの値の組み合わせを前記管理サーバから取得し、該取得した前記パラメータの値の組み合わせに基づいて、前記複数の組み合わせ候補を決定する
IT機器。
【請求項3】
複数段階の消費電力動作モードのうちパラメータの値によって定まる一の前記消費電力動作モードで動作する複数のコンポーネントを有するIT機器であって、
前記コンポーネント毎の前記パラメータの値の組み合わせ候補を複数決定し、該決定した組み合わせ候補のそれぞれについて、前記組み合わせ候補の前記パラメータの値を使用して前記コンポーネントの前記消費電力動作モードを設定して自IT機器を起動し、自IT機器の性能と消費電力とを測定する測定手段と、
前記測定した性能が閾値を超えている前記パラメータの値の組み合わせ候補のうち、前記測定した消費電力が最も小さい前記パラメータの値の組み合わせ候補と前記測定した消費電力とを決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された前記組み合わせ候補のパラメータ値を保持し、自IT機器に対する電力制限指示を受けたとき、前記保持する前記パラメータの値を使用して自IT機器の前記コンポーネントを前記保持する前記パラメータの値に応じた消費電力動作モードに設定する電力管理手段と
を有するIT機器。
【請求項4】
複数段階の消費電力動作モードのうちパラメータの値によって定まる一の前記消費電力動作モードで動作するコンポーネントを有するIT機器であって、
前記パラメータの値の候補を複数決定し、該決定した候補のそれぞれについて、前記候補の前記パラメータの値を使用して前記コンポーネントの前記消費電力動作モードを設定して自IT機器を起動し、自IT機器の性能と消費電力とを測定する測定手段と、
前記測定した性能が閾値を超えている前記パラメータの値の候補のうち、前記測定した消費電力が最も小さい前記パラメータの値の候補と前記測定した消費電力とを決定する決定手段と、
自IT機器の前回起動時点の前記コンポーネントの情報を保持し、自IT機器の電源投入時、自IT機器の前記コンポーネントの情報を取得して前記保持する前回起動時の前記コンポーネントの情報と比較し、差分を検出した場合に限定して前記測定手段および前記決定手段を有効にする有効化手段と
を有するIT機器。
【請求項5】
複数段階の消費電力動作モードのうちパラメータの値によって定まる一の前記消費電力動作モードで動作する複数のコンポーネントを有するIT機器の動作方法であって、
前記コンポーネント毎の前記パラメータの値の組み合わせ候補を複数決定し、該決定した組み合わせ候補のそれぞれについて、前記組み合わせ候補の前記パラメータの値を使用して前記コンポーネントの前記消費電力動作モードを設定して自IT機器を起動し、自IT機器の性能と消費電力とを測定し、
前記測定した性能が閾値を超えている前記パラメータの値の組み合わせ候補のうち、前記測定した消費電力が最も小さい前記パラメータの値の組み合わせ候補と前記測定した消費電力とを決定し、
前記決定された前記組み合わせ候補のパラメータ値を保持し、自IT機器に対する電力制限指示を受けたとき、前記保持する前記パラメータの値を使用して自IT機器の前記コンポーネントを前記保持する前記パラメータの値に応じた消費電力動作モードに設定する
IT機器の動作方法。
【請求項6】
複数段階の消費電力動作モードのうちパラメータの値によって定まる一の前記消費電力動作モードで動作する複数のコンポーネントを有するIT機器を構成するコンピュータを、
前記コンポーネント毎の前記パラメータの値の組み合わせ候補を複数決定し、該決定した組み合わせ候補のそれぞれについて、前記組み合わせ候補の前記パラメータの値を使用して前記コンポーネントの前記消費電力動作モードを設定して自IT機器を起動し、自IT機器の性能と消費電力とを測定する測定手段と、
前記測定した性能が閾値を超えている前記パラメータの値の組み合わせ候補のうち、前記測定した消費電力が最も小さい前記パラメータの値の組み合わせ候補と前記測定した消費電力とを決定する決定手段と
前記決定手段によって決定された前記組み合わせ候補のパラメータ値を保持し、自IT機器に対する電力制限指示を受けたとき、前記保持する前記パラメータの値を使用して自IT機器の前記コンポーネントを前記保持する前記パラメータの値に応じた消費電力動作モードに設定する電力管理手段と
して機能させるためのプログラム。
【請求項7】
複数段階の消費電力動作モードのうちパラメータの値によって定まる一の前記消費電力動作モードで動作する複数のコンポーネントを有するIT機器を1以上有し、
前記IT機器は、
前記コンポーネント毎の前記パラメータの値の組み合わせ候補を複数決定し、該決定した組み合わせ候補のそれぞれについて、前記組み合わせ候補の前記パラメータの値を使用して前記コンポーネントの前記消費電力動作モードを設定して自IT機器を起動し、自IT機器の性能と消費電力とを測定する測定手段と、
前記測定した性能が閾値を超えている前記パラメータの値の組み合わせ候補のうち、前記測定した消費電力が最も小さい前記パラメータの値の組み合わせ候補と前記測定した消費電力とを決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された前記組み合わせ候補のパラメータ値を保持し、自IT機器に対する電力制限指示を受けたとき、前記保持する前記パラメータの値を使用して自IT機器の前記コンポーネントを前記保持する前記パラメータの値に応じた消費電力動作モードに設定する電力管理手段と
を有する消費電力測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上のコンポーネントから構成されるIT機器、IT機器の動作方法、消費電力測定システム、消費電力測定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ装置や通信装置などのIT機器において、その最大消費電力が予め定めた値を超えないように制御することが行われている。
【0003】
例えば、冗長化された電源モジュールから電力の供給を受けて動作するサーバにおいて、何れか1つの電源モジュールから電源異常シグナルを受信すると、自サーバを最小消費電力で動作するモードに移行させることで、サーバダウン等の致命的な状態に陥らないようにすることが、本発明に関連する第1の関連技術として提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
上記第1の関連技術では、サーバの最小消費電力は、サーバを構成する各コンポーネント(CPUやデバイスなど)の最小消費電力値に基づいて算出している。さらに、各コンポーネントが、電源のオンとオフ状態だけでなく、多段階の消費電力動作モードを持つ場合、最小消費電力は、多段階の電源のオンの動作モードのなかで、最も電力消費を抑えて動作するときの消費電力に基づいて算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−108757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、IT機器を構成するコンポーネントが多段階の消費電力動作モードを持つ場合に、最も消費電力の少ない動作モードに基づいて算出した最小消費電力の下で、IT機器がどの程度の性能を発揮するかは不明である。このため、IT機器がダウンせずに動作を継続したものの、IT機器の利用者が期待する性能が得られず、運用に支障が生じる恐れがあった。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題、すなわち、IT機器を構成する各コンポーネントの最小消費電力を足し合わせて計算した電力を当該IT機器の最小消費電力に決定すると、IT機器を最小消費電力で動作させた際にIT機器の利用者が期待する最低限の性能を確保できない恐れがある、という課題を解決するIT機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係るIT機器は、
複数段階の消費電力動作モードのうちパラメータの値によって定まる一の前記消費電力動作モードで動作するコンポーネントを有するIT機器であって、
前記パラメータの値の候補を複数決定し、該決定した候補のそれぞれについて、前記候補の前記パラメータの値を使用して前記コンポーネントの前記消費電力動作モードを設定して自IT機器を起動し、自IT機器の性能と消費電力とを測定する測定手段と、
前記測定した性能が閾値を超えている前記パラメータの値の候補のうち、前記測定した消費電力が最も小さい前記パラメータの値の候補と前記測定した消費電力とを決定する決定手段と
を有する。
【0009】
本発明の第2の観点に係るIT機器の動作方法は、
複数段階の消費電力動作モードのうちパラメータの値によって定まる一の前記消費電力動作モードで動作するコンポーネントを有するIT機器の動作方法であって、
前記パラメータの値の候補を複数決定し、該決定した候補のそれぞれについて、前記候補の前記パラメータの値を使用して前記コンポーネントの前記消費電力動作モードを設定して自IT機器を起動し、自IT機器の性能と消費電力とを測定し、
前記測定した性能が閾値を超えている前記パラメータの値の候補のうち、前記測定した消費電力が最も小さい前記パラメータの値の候補と前記測定した消費電力とを決定する。
【0010】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
複数段階の消費電力動作モードのうちパラメータの値によって定まる一の前記消費電力動作モードで動作するコンポーネントを有するIT機器を構成するコンピュータを、
前記パラメータの値の候補を複数決定し、該決定した候補のそれぞれについて、前記候補の前記パラメータの値を使用して前記コンポーネントの前記消費電力動作モードを設定して自IT機器を起動し、自IT機器の性能と消費電力とを測定する測定手段と、
前記測定した性能が閾値を超えている前記パラメータの値の候補のうち、前記測定した消費電力が最も小さい前記パラメータの値の候補と前記測定した消費電力とを決定する決定手段と
して機能させる。
【0011】
本発明の第4の観点に係る消費電力測定システムは、
複数段階の消費電力動作モードのうちパラメータの値によって定まる一の前記消費電力動作モードで動作するコンポーネントを有するIT機器を1以上有し、
前記IT機器は、
前記パラメータの値の候補を複数決定し、該決定した候補のそれぞれについて、前記候補の前記パラメータの値を使用して前記コンポーネントの前記消費電力動作モードを設定して自IT機器を起動し、自IT機器の性能と消費電力とを測定する測定手段と、
前記測定した性能が閾値を超えている前記パラメータの値の候補のうち、前記測定した消費電力が最も小さい前記パラメータの値の候補と前記測定した消費電力とを決定する決定手段と
を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述した構成を有するため、IT機器の利用者が期待する最低限の性能を確保することができるIT機器の最小消費電力と、そのような最小消費電力でIT機器を動作させるために必要なパラメータの値とを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態のブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態において、IT機器の最小消費電力を測定する手順の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の第1の実施形態の動作例を示す概念図である。
図4】本発明の第2の実施形態のブロック図である。
図5】本発明の第2の実施形態におけるBIOSの動作の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態におけるBIOSの動作の一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施形態におけるBIOSの動作の一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の第2の実施形態におけるBIOSの動作の一例を示すフローチャートである。
図9】本発明の第2の実施形態におけるBMCの動作の一例を示すフローチャートである。
図10】本発明の第3の実施形態のブロック図である。
図11】本発明の第3の実施形態において、IT機器の最小消費電力を測定する手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態にかかる消費電力測定システムは、IT機器100の消費電力を測定するシステムである。
【0015】
IT機器100は、サーバ装置や通信装置などであってよい。IT機器100は、複数のコンポーネント110から構成される。コンポーネント110の1つは、CPUであってよい。コンポーネント110の他の1つは、メモリであってよい。コンポーネント110のさらに他の1つは、CPUおよびメモリ以外のハードディスクドライブや通信カードなどであってよい。あるいは、コンポーネント110の1つは、例えばCPUとメモリとが同一の半導体チップ上に集積されたSoC(System−on−a−chip)であってよい。
【0016】
複数のコンポーネント110のうち少なくとも1つのコンポーネント110は、複数段階の消費電力動作モードを有する。例えば、CPUに相当するコンポーネント110は、或るクロック周波数で動作する消費電力動作モード、それより低いクロック周波数で動作する消費電力動作モードを有していてよい。また、ハードディスクドライブに相当するコンポーネント110は、ディスクが或る回転数で回転する消費電力動作モード、それより低い回転数でディスクが回転する消費電力動作モードを有していてよい。コンポーネント110は、2段階の消費電力動作モードを有していてもよいし、3段階以上の消費電力動作モードを有していてもよい。
【0017】
複数段階の消費電力動作モードを有するコンポーネント110は、IT機器100に設定される自コンポーネントに対応するパラメータの値によって定まる一の消費電力動作モードで動作する。例えば、CPUに相当するコンポーネント110は、パラメータPcの値が1ならば、或るクロック周波数で動作する消費電力動作モードとなり、上記パラメータPcの値が2ならば、それより高いクロック周波数で動作する消費電力動作モードとなってよい。また、ハードディスクドライブに相当するコンポーネント110は、パラメータPdの値が1ならば、或る回転数でディスクが回転する消費電力動作モードとなり、上記パラメータPdの値が2ならば、それより高い回転数でディスクが回転する消費電力動作モードとなってよい。
【0018】
またIT機器100は、測定手段120と決定手段130とを有する。
【0019】
測定手段120は、IT機器100の性能と消費電力とを測定する機能を有する。測定手段120は、上記測定では、複数段階の消費電力動作モードを有するコンポーネント110毎のパラメータの値の組み合わせ候補を複数決定し、この決定した組み合わせ候補のそれぞれについて、組み合わせ候補のパラメータの値を使用して上記コンポーネント110の消費電力動作モードを設定してIT機器100を起動し、IT機器100の性能と消費電力とを測定する。
【0020】
測定手段120は、上記複数の組み合わせ候補の決定では、パラメータの値を網羅的に組み合わせた組み合わせ候補を決定してよい。或いは、測定手段120は、上記複数の組み合わせ候補の決定では、パラメータの値を網羅的に組み合わせた組み合わせ候補から、IT機器100の性能が閾値を超えないことが明らかな候補や、IT機器100の性能が閾値を超えるものの、同様に閾値を超える他の組み合わせ候補に比べて消費電力が明らかに大きくなる候補を除外した残りの組み合わせ候補を決定してよい。或いは、測定手段120は、上記複数の組み合わせ候補の決定では、IT機器100の性能が閾値を超え且つ消費電力が最小になる可能性のより高い一部の組み合わせ候補を決定してよい。
【0021】
例えば、IT機器100と比較してコンポーネント110の種類、型番、数などが類似する他のIT機器100について、性能が閾値を超え且つ消費電力が最小のパラメータの値の組み合わせが既に決定している場合、IT機器100の性能が閾値を超え且つ消費電力が最小になる組み合わせ候補は、構成の類似する上記他のIT機器について決定されたパラメータの値の組み合わせと同一か、或いは類似する。従って、性能が閾値を超え且つ消費電力が最小になるパラメータの値の組み合わせが既に決定している他のIT機器のコンポーネントの情報(種類、型番、数量)とパラメータの値の組み合わせとを記憶する記憶手段をIT機器100内あるいはIT機器100からアクセス可能な外部装置に配置し、測定手段120が、上記複数の組み合わせ候補の決定では、IT機器100のコンポーネント110の情報と類似するコンポーネントの情報を有する他のIT機器のパラメータの値の組み合わせを上記記憶手段から取得し、この取得したパラメータの値の組み合わせに基づいて、上記複数の組み合わせ候補を決定してよい。
【0022】
また測定手段120は、上記性能の測定では、IT機器100上で性能計測プログラムを起動し、その性能計測プログラムで計測された性能情報を取得してよい。性能計測プログラムが計測する性能情報は、IT機器100の性能を表すデータであれば、その内容は任意である。性能計測プログラムとしては、例えば市販のベンチマークプログラムを使用することができる。一例として、CPUやWebサーバなどの各種の性能計測が可能なSPEC(Standard Performance Evaluation Cororation)、トランザクションの性能計測が可能なTPC(Transaction Processing Performance Council)、ネットワークの性能計測が可能なnetperなどが利用可能である。また、IT機器100のために新規に作成したベンチマークプログラムであってもよい。その他任意の性能計測プログラムを使用することができる。
【0023】
また測定手段120は、上記消費電力の測定では、例えば、図示しない電源モジュールからIT機器100へ供給される電力を電力計を用いて計測してよい。
【0024】
決定手段130は、パラメータの値の組み合わせ候補毎に測定手段120で測定された性能と消費電力の測定結果に基づき、閾値を超える性能を発揮する上で最低限必要になるIT機器100の消費電力(最小消費電力)とパラメータ値の組み合わせとを決定する機能を有する。具体的には、決定手段130は、測定した性能が閾値を超えているパラメータの値の組み合わせ候補のうち、測定した消費電力が最も小さいパラメータの値の組み合わせ候補と測定した消費電力とを決定する。決定手段130は、測定した性能が閾値を超えているか否かは、性能情報と閾値とを比較して判定する。例えば、性能情報が所定の処理に要した時間である場合、決定手段130は、性能情報が示す時間が閾値の時間より短ければ、測定した性能が閾値を超えていると判断し、性能情報が示す時間が閾値の時間以上であれば、測定した性能が閾値を超えていないと判断してよい。また、性能情報が1秒に処理できる処理量(例えばトランザクション数)である場合、決定手段130は、性能情報が示す処理量が閾値の処理量より多ければ、測定した性能が閾値を超えていると判断し、性能情報が示す処理量が閾値の処理量以下であれば、測定した性能が閾値を超えていないと判断する。上記閾値は、IT機器100の利用者が期待する最低限の性能に基づいて予め定められていることが望ましい。
【0025】
測定手段120と決定手段130は、ハードウェアで実現することができる以外に、IT機器100を構成するコンピュータとそのコンピュータ上で動作するプログラムとによって実現することができる。プログラムは、半導体メモリや磁気ディスク等のコンピュータ読取可能な記録媒体に記録されて提供され、コンピュータの起動時などにコンピュータに読み取られ、そのコンピュータの動作を制御することにより、そのコンピュータ上に測定手段120、決定手段130を実現する。
【0026】
次に本実施形態に係る消費電力測定システムの動作を説明する。
【0027】
図2は、本実施形態に係る消費電力測定システムにおいて、IT機器の最小消費電力を測定する手順の一例を示すフローチャートである。所定の事象が発生すると、図2に示す処理がIT機器100の測定手段120および決定手段130により実行される。上記所定の事象としては、IT機器100の電源投入であってよく、あるいはユーザによる測定コマンドの投入といった他の事象であってよい。
【0028】
図2を参照すると、まず測定手段120は、IT機器100のコンポーネント110毎のパラメータの値の組み合わせ候補を複数決定する(ステップS101)。
【0029】
次に測定手段120は、上記複数の組み合わせ候補の中の1つの組み合わせ候補に注目する(ステップS102)。
【0030】
次に測定手段120は、注目中の組み合わせ候補のパラメータの値を使用して、コンポーネント110の消費電力動作モードを設定してIT機器100を起動する(ステップS103)。そして、測定手段120は、IT機器100の性能と消費電力とを測定し(ステップS104)、測定結果を注目中の組み合わせ候補に対応付けて図示しない記憶装置に保存する(ステップS105)。測定結果を保存する記憶装置は、IT機器100内に存在してもよいし、IT機器100からアクセス可能な外部装置に存在してもよい。IT機器100内に存在する記憶装置に測定結果を保存する場合、IT機器100を再起動しても記憶情報が失われない不揮発な記憶装置を使用することが望ましい。
【0031】
測定手段120は、注目中の組み合わせ候補について上述した処理を終えると、複数の組み合わせ候補中の次の1つの組み合わせ候補に注目を移す(ステップS106)。そして、新たに注目した組み合わせ候補について、先に注目した組み合わせ候補に対して行った処理と同じ処理を繰り返す(ステップS103〜S106)。以上の処理を最後の1つの組み合わせ候補に対して処理し終えると(ステップS107でYES)、制御が測定手段120から決定手段130へ移る。
【0032】
決定手段130は、測定手段120が保存した測定結果を参照し、測定した性能が閾値を超えているパラメータの値の組み合わせ候補のうち、測定した消費電力が最も小さい組み合わせ候補とその測定した消費電力とを最終結果として決定する(ステップS108)。
【0033】
図3は本実施形態に係る消費電力測定システムの動作例を示す概念図である。説明を簡略化するために、IT機器100は、コンポーネント110−1、110−2、110−3の3つのコンポーネントを有し、各コンポーネントは、対応するパラメータP1〜P3の値に応じて、3段階の消費電力動作モードのうちの何れかで動作するものとしている。また、四角形を縦に3つ重ねた図形を1つのコンポーネントに対応付け、3つの四角形のうち、黒く塗られた四角形の位置により、そのコンポーネントに設定されている消費電力動作モードを表現している。黒く塗られた四角形の位置が3つの四角形の一番下の四角形であるときは、消費電力が最も小さい消費電力動作モードであることを示し、真ん中の四角形であるときは、消費電力が2番目に小さい消費電力動作モードであることを示し、一番上の四角形であるときは、消費電力が最も大きい消費電力動作モードであることを示している。
【0034】
図3では、測定手段120は、8通りのパラメータP1〜P3の値の組み合わせ候補を決定している。同図(a)に示す1つ目の組み合わせ候補は、「P1=1、P2=1、P3=1」であり、3つ全てのコンポーネント110は消費電力が最小の消費電力動作モードに設定される。同図(b)に示す2つ目の組み合わせ候補は、「P1=1、P2=1、P3=2」であり、コンポーネント110−3のみ消費電力が最小の消費電力動作モードに設定され、残りのコンポーネント110は消費電力が2番目に小さな消費電力動作モードに設定される。同図(c)に示す3つ目の組み合わせ候補は、「P1=1、P2=2、P3=1」であり、コンポーネント110−2のみ消費電力が2番目に小さな消費電力動作モードに設定され、残りのコンポーネント110は消費電力が最小の消費電力動作モードに設定される。同図(d)に示す4つ目の組み合わせ候補は、「P1=1、P2=2、P3=2」であり、コンポーネント110−1のみ消費電力が最小の消費電力動作モードに設定され、残りのコンポーネント110は消費電力が2番目に小さな消費電力動作モードに設定される。同図(e)に示す5つ目の組み合わせ候補は、「P1=2、P2=1、P3=1」であり、コンポーネント110−1のみ消費電力が2番目に小さな消費電力動作モードに設定され、残りのコンポーネント110は消費電力が最小の消費電力動作モードに設定される。同図(f)に示す6つ目の組み合わせ候補は、「P1=2、P2=1、P3=2」であり、コンポーネント110−2のみ消費電力が最小の消費電力動作モードに設定され、残りのコンポーネント110は消費電力が2番目に小さな消費電力動作モードに設定される。同図(g)に示す7つ目の組み合わせ候補は、「P1=2、P2=2、P3=1」であり、コンポーネント110−3のみ消費電力が最小の消費電力動作モードに設定され、残りのコンポーネント110は消費電力が2番目に小さな消費電力動作モードに設定される。同図(h)に示す8つ目の組み合わせ候補は、「P1=2、P2=2、P3=2」であり、3つ全てのコンポーネント110は消費電力が2番目に小さな消費電力動作モードに設定される。
【0035】
測定手段120は、上記8つの組み合わせ候補のそれぞれについて、IT機器100の性能と消費電力とを測定し、その測定結果を保存する。図3の右側に記載される性能の値、消費電力の値が測定結果の一例である。ここで、性能の値は、値がより大きいほど性能がより高いことを示すものとする。また消費電力の値は、値がより小さいほど消費電力がより小さいことを示すものとする。
【0036】
決定手段130は、上記8つの組み合わせ候補の性能の値と消費電力の値とを参照して、性能の値が閾値を超えているパラメータの値の組み合わせ候補のうち、消費電力の値が最も小さい組み合わせ候補とその消費電力とを最終結果とする。例えば、性能の閾値を125とすると、性能の値が閾値を超えているパラメータの値の組み合わせ候補は、図3の(b)、(d)〜(h)の6つであり、そのうち消費電力の値が最小の組み合わせ候補は(d)である。従って、決定手段130は、パラメータの値の組み合わせ「P1=1、P2=1、P3=2」と最小消費電力「23」を最終結果とする。
【0037】
このように本実施形態によれば、IT機器100の利用者が期待する最低限の性能を確保できるIT機器100の最小消費電力を決定することができると共に、そのような最小消費電力でIT機器100を動作させるためのパラメータの値を決定することができる。
【0038】
その理由は、IT機器100のコンポーネント毎のパラメータの値の組み合わせ候補を複数決定し、その組み合わせ候補のそれぞれについて、その候補のパラメータの値に従ってコンポーネントの消費電力動作モードを設定してIT機器100を起動して性能と消費電力とを測定し、この測定した性能が閾値を超えているパラメータの値の組み合わせ候補のうち、測定した消費電力が最も小さいパラメータの値の組み合わせ候補と測定した消費電力とを決定するためである。
【0039】
なお、本実施形態は以下のような各種の付加変更が可能である。
【0040】
例えば、図1に破線で示すように、IT機器100は、IT機器100の最大消費電力を制御する電力管理手段140を有していてよい。電力管理手段140は、決定手段130によって決定された組み合わせ候補のパラメータ値を保持し、IT機器100に対する電力制限指示をIT機器100の外部あるいは内部から受けたとき、保持するパラメータの値を使用してIT機器100のコンポーネント110を上記保持するパラメータの値に応じた消費電力動作モードに設定する制御を実施する。
【0041】
また、図1に破線で示すように、IT機器100は、測定手段120と決定手段130とを有効化する有効化手段150を有していてよい。有効化手段150は、IT機器100の前回起動時点のコンポーネント110の情報(種類、型番、数量など)を保持し、IT機器100の電源投入時、IT機器100のコンポーネント110の情報を取得して上記保持する前回起動時のコンポーネント110の情報と比較し、差分を検出した場合(即ち、コンポーネントの追加、削除、変更を検出した場合)に限定して測定手段120および決定手段130を有効にする制御を実施する。
【0042】
[第2の実施形態]
次に本発明の第2の実施形態について詳細に説明する。
<本実施形態の特徴>
本実施形態の特徴は、電力制限制御を使用するサーバ装置で、自動的に電力制限に用いるファームウェアパラメータを最小消費電力になるように装置に設定することである。
【0043】
本実施形態は、装置購入後にITサービスの運用状況に合わせて電力制限値を校正したいとき、または、障害が発生したとき(電力不足)、または、機能強化のためのハードウェア増設時などでの利用を想定している。
【0044】
本実施形態では、消費電力を最小化するために、BIOS(Basic Input/Output System)が設定ポリシーに基づいて、性能測定プログラムである検証プログラムを実行する。これにより、ハードウェアの構成が変更された場合でも、最低限維持したい性能と安定稼働できる電力消費電力となるファームウェアパラメータを導きだせる。このファームウェアパラメータを装置に適用することで、システムダウンすることなく、電力制限したサーバ運用を実現することができる。また、出荷時に想定されていないデバイス(消費電力が不明なデバイス)が接続された場合でも、検証プログラムにより自動的に電力制限値を設定することができ、設計コストの低減や高効率なサーバ運用も可能となる。
【0045】
<本実施形態が解決しようとする課題>
電力制限機能を使用するサーバ装置では、最小消費電力値を各デバイスの最小消費電力とデバイスの有無、数量から計算により求めていた。しかし、このような計算の場合、ハードウェアの増設や各デバイスのファームウェアアップデート、同じデバイスでもハードウェアの実装変更によって消費電力の上昇があった場合、デバイスの最小消費電力情報の再計算とファームウェアへの格納を行ってから、電力制限制御をする必要があった。
【0046】
また、個々のデバイスの最小消費電力パラメータから足し合わせて装置の最小消費電力(電力制限値)を計算しているので、複数のデバイスが連動して動作するシステム上で安定してサーバを稼働させるためには、大きなマージンを考慮した設計が必要だった。このようなパラメータの再計算と適用には、多くの手間を必要としていた。
【0047】
電力制限制御は、電気的な安定性のみを考慮して電力(性能)を最小化していたため、電力制限制御下でも特定の機能に対してある一定以上の性能がほしいユーザがいた場合、対応することが難しかった。例えば、電力制限下でもCPUやMemoryの性能は下げても、データベースなどでHDDなどのI/Oの性能は確保したいユーザも存在する。
【0048】
上記のような電力制限制御手法では、最適化されたファームウェアパラメータ(最小消費電力)で効率よく安定したサーバ運用ができているとは言えない。
【0049】
<本実施形態による解決手段>
本実施形態では、サーバ装置に搭載されたBIOSが検証プログラムを実行することにより、未知のデバイスが接続されたとき、人手を介することなく最適化された最小消費電力値(電力制限値)を算出でき、そのファームウェアパラメータを装置に適用できる。
【0050】
また、検証プログラムは、実環境を考慮したベンチマークプログラムを実行することで、ユーザが期待する性能より下回ることのない電力制限値を算出することができる。
【0051】
BIOSが実行する検証プログラムや検証情報は、BMC(Baseboard Management Controller)を経由して管理サーバで管理する。これにより、複数台のサーバ装置が稼働する環境でも、効率よく安定稼働を保証するファームウェアパラメータを導き出せる。
【0052】
<本実施形態の構成>
図4は本実施形態のブロック図である。本実施形態では、最小消費電力値(電力制限値)を設定するサーバ装置(以下、対象サーバと記す)200と、最小電力を求めるために必要な検証情報を管理する管理サーバ300とを用いる。対象サーバ200と管理サーバ300とはネットワーク400により相互に通信可能に接続される。また、最小消費電力値(電力制限値)を求めるために、対象サーバ200のBIOS210とBMC220を利用する。
【0053】
対象サーバ200には、他に、CPU230、Memory240、HDD250、PCI Device260といった消費電力に影響するデバイスが存在している。装置全体の消費電力の測定は、電源ユニット270の制御基板に接続しているBMC220から行う。
【0054】
BIOS210は、検証プログラムを実行する機能、BMC220と検証情報を送受信する機能、検証情報リストを生成する機能、各種制御フラグ(校正済みフラグ、検証開始フラグ、検証情報リスト終了フラグ、検証プログラム実行完了フラグ)を設定する機能を有する。
【0055】
検証情報リストの個々の検証情報には、以下のような情報が含まれる。
(a)ハードウェア構成情報(各デバイスの種類、型番、数量)
(b)ファームウェアパラメータ(電力、性能にかかわるパラメータ)
(c)検証結果(検証済みの最小電力値設定情報、検証の成否)
(d)設定ポリシー(最低限維持したい性能のベンチマークスコアの最小値、運用上設定を変更したくないファームウェアパラメータ)
【0056】
また、検証情報リストの個々の検証情報には、検証プログラム実行完了フラグを関連付けて保存する。
【0057】
BMC220は、ManagementLAN280に接続されたネットワーク400を経由して管理サーバ300と接続されている。
【0058】
管理サーバ300は、複数の検証情報を格納しており、ネットワーク400に接続されている対象サーバ200のBMC220と検証情報の送受信を行う。
【0059】
<本実施形態の動作>
本実施形態の動作フローを図5図9に示す。このうち、図5図8はBIOS210の処理フロー、図9はBMC220の処理フローをそれぞれ示す。以下、図5図9を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0060】
対象サーバ200の電源が投入されると、BIOS210により図5に示す処理が開始される(ステップS200)。まず、BIOS210は、POST(Power On Self Test)の実行を開始する(ステップS201)。次に、BIOS210は、対象サーバ200のハードウェア構成を取得し、前回起動時のハードウェア構成と比較して変更の有無を検出する(ステップS203)。
【0061】
BIOS210は、ハードウェア構成に変更があった場合(ステップS203でYes)、最小消費電力値(電力制限値)の再設定が必要であるため、検証開始フラグを有効、校正済みフラグを無効にし(ステップS211)、最小消費電力値の再設定にかかる校正を開始する。
【0062】
校正を開始すると、まずBIOS210は、ステップS202で取得した対象サーバ200のハードウェア情報をBMC220に通知する(ステップS212)。BMC220は、BIOS210からハードウェア情報を受信すると(図9のステップS260、S261)、この受信したハードウェア情報をネットワーク400経由で管理サーバ300へ送信して、同一または類似するハードウェア情報を有する他のサーバ装置で実施済みの検証情報を問い合わせ、それに応じて管理サーバ300からネットワーク400経由で送信されてくる検証情報を取得する(ステップS262)。そして、BMC220は、取得した検証情報をBIOS210へ送信する(ステップS263)。但し、同一および類似するハードウェア情報を有する他のサーバ装置で実施済みの検証情報が存在しなければ、その旨をBMC220からBIOS210へ通知する。
【0063】
ここで、類似するハードウェアとは、対象サーバ200に対して、CPU(種別)、Memory(本数)、PCI Device(種類、型番、リビジョン)などの消費電力に影響する差分が少ない構成のハードウェアを意味する。例えば、CPU個数(80W/個)、CPU種別(種別に依存する電力差分、20−30W)、Memory本数(1本当たり数Wの差分)、PCIデバイスの個数(デバイス1つあたり数W-数10W)、ファームウェアパラメータ(クロック制御、デバイス有効、無効の設定で数W)の差分があるとする。このとき、管理サーバ300が持つ複数の検証情報に含まれるそれぞれハードウェア構成情報の中から、もっとも電力消費差分の小さいであろう検証情報を選択する。一例として、CPUの搭載個数の一致するもの、CPUの種別が一致するもの、PCIデバイスの個数が一致するもの、PCIデバイスの種類が一致するもの、Memoryの搭載本数が一致するもの、ファームウェアパラメータが一致する順に、検索をかけて類似のハードウェア情報を選択する。
【0064】
さて、BIOS210は、BMC220から受け取った検証情報をもとに一部のパラメータを電力最小化するように変更した複数の検証情報(検証情報リスト)を新たに生成し、これらの検証情報を集めて検証情報リストを生成する(ステップS214)。またBIOS210は、BMC220から検証情報を取得できなかった場合、対象サーバ200の現在のハードウェア構成情報およびデフォルトの電力/性能に関わるパラメータから複数の検証情報(検証情報リスト)を新たに生成し、これらの検証情報を集めて検証情報リストを生成する(ステップS214)。ここで、個々の検証情報はIDで管理され、識別できるようになっている。そして、BIOS210は、検証準備処理を実行する(ステップS206)。なお、全く同じハードウェア構成の場合、検証は行わず、受信した検証情報のパラメータを装置に設定して処理を終了する。
【0065】
他方、BIOS210は、ハードウェア構成に変更がなかった場合(ステップS203でNo)、校正済みフラグが有効であれば(ステップS204でYes)、図5の処理を終了する。また、校正済みフラグが無効であれば(ステップS204でNo)、検証開始フラグが有効のときは(ステップS205でYes)、ステップS206の検証準備処理へと進み、検証開始フラグが無効のときは(ステップS205でNo)、検証終了処理を実行する(ステップS216)。
【0066】
ステップS206の検証準備処理では、BIOS210は、概略以下のような処理を行う。まず、検証情報リストに含まれる次に適用すべき1つの検証情報を取り出して、ファームウェアパラメータを装置に適用する。このとき、設定ポリシーに従い、設定変更しないパラメータは除外する。また、検証準備処理で次に設定すべき検証情報がない場合、検証情報リスト終了フラグを有効にして、検証終了処理が実行されるように準備する(検証開始フラグを無効に設定する)。さらに、電力制限を実施したとき、POSTや検証プログラムが正常終了せず、途中で再起動、DC offすることが考えられる。そのため、実行した(適用した)検証情報のIDを予め保存しておき、次回起動時に検証情報リストから取得した検証情報のIDがすでに実行したIDと一致する場合、不正終了したものとして扱えるようにする。また、同じパラメータを再度適用しないように、不正終了の場合、このタイミングで検証結果の保存と検証プログラム実行完了フラグの有効化をして、次の検証情報を設定する。より具体的には、ステップS206の検証準備処理では、BIOS210は、以下のような処理を行う。
【0067】
BIOS210は、検証情報リストから取得した検証情報のIDが前回起動時に適用した検証情報IDと同じか否かを判定し(ステップS231)、同じ場合には不正終了したものとして、検証プログラム実行完了フラグを有効にし(ステップS232)、検証結果として失敗した旨を格納し(ステップS233)、検証情報リスト終了フラグが有効か否かを判定する(ステップS234)。検証情報リスト終了フラグが有効であれば、検証開始フラグを無効にし(ステップS237)、再起動する(ステップS238)。
【0068】
他方、BIOS210は、検証情報リストから取得した検証情報のIDが前回起動時に適用した検証情報IDと同じでない場合、および、ステップS234で検証情報リスト終了フラグが有効でないと判定した場合、検証情報の設定を行う(ステップS235)。この検証情報の設定では、BIOS210は、図7に示すように、検証情報リストに次の検証情報があるか否かを判定し(ステップS241)、なければ検証情報リスト終了フラグを有効にして(ステップS245)、ステップS242の処理へ進み、あればステップS245の処理をスキップしてステップS242の処理へ進む。ステップS242では、BIOS210は、検証情報リストから1つの検証情報を取得する。次にBIOS210は、取得した検証情報のIDを保存し(ステップS243)、その検証情報を装置に設定する(ステップS244)。
【0069】
再び図5を参照すると、BIOS210は、検証準備処理を終えると、電力制限を開始する(ステップS207)。すなわち、ステップS244で装置に設定された検証情報中のパラメータに従って、CPU230やHDD250等の対象サーバのコンポーネントの消費電力動作モードを設定し、消費電力を抑えるようにする。
【0070】
次に、専用の検証プログラムをBIOSがブートさせて検証を開始する。検証プログラムは、実環境でも安定稼働できる最小電力値を設定したいので、サーバを実環境で運用するのと同様にCPU、Memory、HDD、LAN等の複数のデバイスに負荷をかけるベンチマーク試験を行う。
【0071】
次にBIOS210は、検証プログラムが正常終了した場合(ステップS209でYes)、その検証結果を保存し(ステップS217)、検証プログラム実行完了フラグを有効にする(ステップS218)。次にBIOS210は、最後の検証プログラムが終了したか否かを確認するため、検証情報リスト終了フラグが有効か否かを確認する(ステップS219)。次にBIOS210は、検証情報リスト終了フラグが有効になっている場合(最後の検証が終了した場合)、検証開始フラグを無効に設定し(ステップS220)、再起動する(ステップS221)。また、検証情報リスト終了フラグが無効であれば(最後の検証が終了していない場合)、検証開始フラグを無効にすることなく、再起動する(ステップS221)。
【0072】
他方、電力制限の下では電力不足によって検証プログラムが正常終了せずに、強制終了して再起動/DC Offするケースが発生する(ステップS210)。DC Offで強制終了した場合、検証結果を保存することができないので、別のタイミングで保存する(図5のステップS233)。また強制終了の場合、電源を再投入しないといけないので、強制終了時はBMC220が装置をDC Onする(図9のステップS264、S266)。このため、校正済みフラグが無効の場合(検証中の場合)、BMC220は、電源の状態を監視して、強制終了(DC
Off)時に自動的に装置を立ち上げるようにしている。
【0073】
ステップS221、S210による再起動が行われると、BIOS210は、図5に示す処理を再び実行する。この結果、検証情報リストに検証すべき検証情報が存在する場合、既に処理した検証情報に対する処理と同様の処理が繰り返される。
【0074】
そして、検証情報リスト中のすべての検証情報の検証が終了して再起動すると、検証開始フラグが無効になっているので(ステップS205でNo)、BIOS210は、検証終了処理を実行する(ステップS216)。
【0075】
BIOS210は、検証終了処理では、ステップS217で保存した検証結果を参照して、装置稼働に問題がない最小消費電力の検証情報のパラメータを装置に設定する(ステップS251)。保存された検証結果には、ベンチマークのスコアが設定ポリシーに記載された最低限維持したい性能のベンチマークスコアの最小値を上回る検証情報、電力不足の設定が原因でベンチマークスコアの最小値を下回る検証情報が存在し得る。BIOS210は、ベンチマークスコアの最小値を上回る検証情報の中から、消費電力が一番小さな検証情報を決定し、この決定した検証情報のパラメータを装置に設定する。
【0076】
次にBIOS210は、最終的に決定した検証情報をBMC220に送信する(ステップS252)。BMC220は、BIOS210から検証情報を受信すると(ステップS265でYes)、管理サーバ300にその検証情報を送信する(ステップS267)。一方、BIOS210は、ブートデバイスの設定を戻して(ステップS253)、校正済みフラグを有効にして検証前の状態に戻す(ステップS254)。そして、再起動する(ステップS222)。
【0077】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、人手を介することなく最小消費電力(電力制限値)をサーバ装置に設定することができ、電力制限機能を使用するサーバを安定稼働させることができる。また、期待する性能を下回らないようにポリシーを利用したファームウェアパラメータの最適化が行える。
【0078】
また、未知のデバイスやファームウェア、ハードウェア設計の変更があっても検証プログラムにより容易にパラメータの最適化ができるので、予めデバイスの電力を計測したり、新しいパラメータでファームウェアを更新したりする必要がない。
【0079】
予め類似するサーバ構成から検証に利用する検証情報を取得するため、短い時間で最適なパラメータを求めることができる。
【0080】
[第3の実施形態]
図10を参照すると、本発明の第3の実施形態にかかる消費電力測定システムは、IT機器1000の消費電力を測定するシステムである。
【0081】
IT機器1000は、サーバ装置や通信装置などであってよい。IT機器1000は、1つのコンポーネント1100から構成される。コンポーネント1100は、例えばCPUとメモリとが同一の半導体チップ上に集積されたSoC(System−on−a−chip)であってよい。あるいはコンポーネント1100は、例えばCPUとメモリと通信デバイスが同一の半導体チップ上に集積されたSoCであってよい。コンポーネント1100は、複数段階の消費電力動作モードを有する。複数段階の消費電力動作モードを有するコンポーネント1100は、IT機器100に設定されるパラメータの値によって定まる一の消費電力動作モードで動作する。
【0082】
またIT機器1000は、測定手段1200と決定手段1300とを有する。
【0083】
測定手段1200は、IT機器1000の性能と消費電力とを測定する機能を有する。測定手段1200は、上記測定では、パラメータの値の候補を複数決定し、この決定した候補のそれぞれについて、候補のパラメータの値を使用して上記コンポーネント1100の消費電力動作モードを設定してIT機器1000を起動し、IT機器1000の性能と消費電力とを測定する。
【0084】
また測定手段1200は、上記性能の測定では、IT機器1000上で性能計測プログラムを起動し、その性能計測プログラムで計測された性能情報を取得してよい。
【0085】
また測定手段1200は、上記消費電力の測定では、例えば、図示しない電源モジュールからIT機器1000へ供給される電力を電力計を用いて計測してよい。
【0086】
決定手段1300は、パラメータの値の候補毎に測定手段1200で測定された性能と消費電力の測定結果に基づき、閾値を超える性能を発揮する上で最低限必要になるIT機器1000の消費電力(最小消費電力)とパラメータ値を決定する機能を有する。具体的には、決定手段1300は、測定した性能が閾値を超えているパラメータの値の候補のうち、測定した消費電力が最も小さいパラメータの値の候補と測定した消費電力とを決定する。決定手段1300は、測定した性能が閾値を超えているか否かは、性能情報と閾値とを比較して判定する。例えば、性能情報が所定の処理に要した時間である場合、決定手段1300は、性能情報が示す時間が閾値の時間より短ければ、測定した性能が閾値を超えていると判断し、性能情報が示す時間が閾値の時間以上であれば、測定した性能が閾値を超えていないと判断してよい。また、性能情報が1秒に処理できる処理量(例えばトランザクション数)である場合、決定手段1300は、性能情報が示す処理量が閾値の処理量より多ければ、測定した性能が閾値を超えていると判断し、性能情報が示す処理量が閾値の処理量以下であれば、測定した性能が閾値を超えていないと判断する。上記閾値は、IT機器1000の利用者が期待する最低限の性能に基づいて予め定められていることが望ましい。
【0087】
測定手段1200と決定手段1300は、ハードウェアで実現することができる以外に、IT機器1000を構成するコンピュータとそのコンピュータ上で動作するプログラムとによって実現することができる。プログラムは、半導体メモリや磁気ディスク等のコンピュータ読取可能な記録媒体に記録されて提供され、コンピュータの起動時などにコンピュータに読み取られ、そのコンピュータの動作を制御することにより、そのコンピュータ上に測定手段1200、決定手段1300を実現する。
【0088】
次に本実施形態に係る消費電力測定システムの動作を説明する。
【0089】
図11は、本実施形態に係る消費電力測定システムにおいて、IT機器の最小消費電力を測定する手順の一例を示すフローチャートである。所定の事象が発生すると、図11に示す処理がIT機器1000の測定手段1200および決定手段1300により実行される。上記所定の事象としては、IT機器1000の電源投入であってよく、あるいはユーザによる測定コマンドの投入といった他の事象であってよい。
【0090】
図11を参照すると、まず測定手段1200は、IT機器1000のコンポーネント1100のパラメータの値の候補を複数決定する(ステップS301)。
【0091】
次に測定手段1200は、上記複数の候補の中の1つの組み合わせ候補に注目する(ステップS302)。
【0092】
次に測定手段1200は、注目中の候補のパラメータの値を使用して、コンポーネント1100の消費電力動作モードを設定してIT機器1000を起動する(ステップS303)。そして、測定手段1200は、IT機器1000の性能と消費電力とを測定し(ステップS304)、測定結果を注目中の候補に対応付けて図示しない記憶装置に保存する(ステップS305)。測定結果を保存する記憶装置は、IT機器1000内に存在してもよいし、IT機器1000からアクセス可能な外部装置に存在してもよい。IT機器1000内に存在する記憶装置に測定結果を保存する場合、IT機器1000を再起動しても記憶情報が失われない不揮発な記憶装置を使用することが望ましい。
【0093】
測定手段1200は、注目中の候補について上述した処理を終えると、複数の候補中の次の1つの候補に注目を移す(ステップS306)。そして、新たに注目した候補について、先に注目した候補に対して行った処理と同じ処理を繰り返す(ステップS303〜S306)。以上の処理を最後の1つの候補に対して処理し終えると(ステップS307でYES)、制御が測定手段1200から決定手段1300へ移る。
【0094】
決定手段1300は、測定手段1200が保存した測定結果を参照し、測定した性能が閾値を超えているパラメータの値の候補のうち、測定した消費電力が最も小さい候補とその測定した消費電力とを最終結果として決定する(ステップS308)。
【0095】
このように本実施形態によれば、IT機器1000の利用者が期待する最低限の性能を確保できるIT機器1000の最小消費電力を決定することができると共に、そのような最小消費電力でIT機器1000を動作させるためのパラメータの値を決定することができる。
【0096】
その理由は、IT機器1000のコンポーネントのパラメータの値の候補を複数決定し、その候補のそれぞれについて、その候補のパラメータの値に従ってコンポーネントの消費電力動作モードを設定してIT機器1000を起動して性能と消費電力とを測定し、この測定した性能が閾値を超えているパラメータの値の候補のうち、測定した消費電力が最も小さいパラメータの値の候補と測定した消費電力とを決定するためである。
【0097】
なお、本実施形態は、第1の実施形態と同様な付加変更が可能である。すなわち、本実施形態に対して、図1に示される電力管理手段140、有効化手段150と同様の手段を付加することが可能である。
【0098】
[その他の実施形態]
第2の実施形態における管理サーバ300をブレードサーバなどに使われるEM(Enclosure Manager)に置き換えた実施の形態も本発明に含まれる。この場合、対象サーバ200のBMC220とEM間のデータのやり取りは、装置内部の信号線で行う。動作としては、第2の実施形態と同様のフローとなる。
【0099】
検証情報の管理は、ネットワークを介した外部サーバに限定するものではなく、対象サーバ200自体で管理するようにしてもよい。
【0100】
BIOSがブートする検証プログラムは、BIOSに依存しない任意の組み込みOS等でもよい。このとき、ファームウェアのパラメータは、組み込みOS側からBIOSにアクセスして変更する。動作としては、第2の実施形態と基本的に同じである。
【符号の説明】
【0101】
100…IT機器
110…コンポーネント
120…測定手段
130…決定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11