(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態の眼鏡レンズ加工装置1(以下、加工装置1と略す)の概略構成図であり、加工装置1を正面からみたときの図である。
【0010】
加工装置1の上部には、レンズ加工部100が設けられている。レンズ加工部100には、レンズチャックユニット(レンズ回転ユニット)200と、加工具を回転するためのスピンドル保持ユニット(加工具回転ユニット)300と、位置調整ユニット110と、レンズ形状測定ユニット500と、が備えられている。なお、実施形態においては、加工装置1を正面から見たときの上下方向をY軸方向、前後方向をX軸方向、左右方向をZ軸方向として説明する。
【0011】
<レンズチャックユニット>
図2は、レンズチャックユニット200の概略構成図である。レンズチャックユニット200は、眼鏡レンズ(以下、レンズと略す)LEを狭持(保持)して回転させるための、対のレンズチャック軸(シャフト)222F、222Rと、キャリッジ221と、を備える。なお、レンズチャック軸222Fとレンズチャック軸222Rとは、同軸の関係に配置されている。キャリッジ221は、レンズチャック軸222Fを回転可能に保持する保持アーム229Fと、レンズチャック軸222Rを回転可能に保持する保持アーム229Rと、を備える。保持アーム229Fはキャリッジ221の表側に固定されている。保持アーム229Rは、レンズチャック軸222Rが延びる軸方向に移動可能にキャリッジ221に保持されている。例えば、キャリッジ221には、レンズチャック軸222R及び222Fと平行に延びるレール(図示を略す)が設けられ、レールに沿って保持アーム229Rに移動可能に設けられている。キャリッジ221には、保持アーム229Rは移動するための駆動源230(
図7参照)が配置されている。駆動源230は、例えば、エアシリンダ、モータ等で構成される。駆動源230の駆動によってレンズチャック軸222Rがレンズチャック軸222F側に移動されることにより、レンズLEがレンズチャック軸222Fとレンズチャック軸222Rとによって保持(狭持)される。
【0012】
なお、キャリッジ221には、レンズチャック軸222Rを回転させるためのモータ(駆動源)220Rと、レンズチャック軸222Fを回転させるためのモータ(駆動源)220Fと、が配置されている。モータ220R及び220Fは、例えば、キャリッジ221の裏側に設けられている。モータ220Rの駆動によって、例えば、タイミングベルト、プーリー等の回転機構を介してレンズチャック軸222Rが回転される。モータ220Fの駆動によって、例えば、タイミングベルト、プーリー等の回転機構を介してレンズチャック軸222Fが回転される。モータ220R及び220Fが、同期して駆動されることにより、レンズチャック軸222R及び222Fが同期して回転される。なお、レンズチャック軸222R及び222Fは一つのモータによって同期して回転されることでも良い。
【0013】
<スピンドル保持ユニット>
図1において、スピンドル保持ユニット300は、レンズLEの周縁等を加工するための複数の加工具を有する。本実施形態では、
図1の左側に配置された移動支基302Lには、スピンドル310a,310b及び310cが備えられている。
図1の右側に配置された移動支基302Rには、スピンドル310d,310e及び310fが備えられている。本実施形態では、各スピンドルは、スピンドルの先端が下方(重力方向)に向かって傾斜して配置されている。各スピンドルの傾斜角度度は、例えば、Z軸方向(水平方向)から下方に45°傾斜するように配置されている。これにより、複数のスピンドルを配置する際に、装置を小型化できる。
【0014】
スピンドル310aの加工具回転軸(回転シャフト)312aには、未加工のレンズLEの周縁を粗加工するための粗加工具320aが取り付けられている。粗加工具320aは、例えば、エンドミル、カッター、粗砥石、等が使用される。
【0015】
スピンドル310bの加工具回転軸(回転シャフト)312bには、レンズLEの周縁を溝掘り加工するための溝加工具320bが取り付けられている。溝加工具320bは、例えば、カッター、砥石、等が使用される。
【0016】
スピンドル310cの加工具回転軸(回転シャフト)312cには、レンズLEの屈折面に穴加工するための穴加工具320cが取り付けられている。穴加工具320cは、例えば、エンドミル等が使用される。
【0017】
スピンドル310eの加工具回転軸312eには、粗加工されたレンズLEの周縁を仕上げ加工するための仕上げ加工具330が取り付けられている。仕上げ加工具330は、例えば、カッター、砥石が使用される。
図3は、ヤゲン加工具を持つ仕上げ加工具330の例を示す図である。
図3の右に、仕上げ加工具330の側面図を示し、
図3の左に、側面図におけるA3−A3の断面図を示す。
【0018】
仕上げ加工具330は、レンズの周縁にヤゲンを形成するためのV溝331を持つヤゲン加工具332と、レンズの周縁を平仕上げ加工するための平仕上げ加工具334と、を有する。実施形態では、V溝331は低カーブレンズ(5カーブ以下のレンズ)のヤゲン加工に使用される。ヤゲン加工具332に平加工面YSに対するV溝331の深さ距離は、レンズLEの厚みより小さい(例えば、0.9mmである)。
【0019】
また、実施形態では、ヤゲン加工具332及び平仕上げ加工具334が一つの加工具回転軸312eに同軸に取り付けられている。また、実施形態では、ヤゲン加工具332及び平仕上げ加工具334が一体的に形成されている。しかし、ヤゲン加工具332及び平仕上げ加工具334は、別々の加工具回転軸に取り付けられていても良い。また、平仕上げ加工具334は、レンズの前屈折面及び後屈折面を面取りするための面取り加工具を兼ねることもできる。
図3は仕上げ加工具330としてのカッターの例である。なお、
図3の例では、カッターの刃335が円周の180度の間隔で2カ所に設けられている。しかし、カッターの刃335は一つ以上あれば良い。
【0020】
また、実施形態では、加工具回転軸312eの軸中心312eCに対する仕上げ加工具330の外径については、加工具の先端に行くにしたがって中心軸312eCからの距離が徐々に短くなるように形成されている。これにより、レンズLEの屈折面のカーブがきつい場合でもヤゲンが小さくなることを抑えることができる。
【0021】
スピンドル310fの加工具回転軸312fには、平仕上げ加工又はヤゲン加工されたレンズLEの周縁に、ステップ(段付き)加工を行うためのステップ加工具340が取り付けられている。
図4は、ステップ加工具の例を示す図であり、ステップ加工具340としてカッターの例である。
図4の例では、カッターの刃345は90度間隔で4箇所に設けられている。しかし、刃345は一つ以上あれば良い。ステップ加工具340の加工面の幅340Wは、レンズLEのコバ厚より広い幅を持つ。
【0022】
スピンドル310dの加工具回転軸312dには、仕上げ加工されたレンズLEの周縁に、鏡面加工を行うための鏡面加工具320dが取り付けられている。鏡面加工具320dは、例えば、砥石である。鏡面加工具320dは、仕上げ加工具330と同じように、V溝331を持つ鏡面ヤゲン加工具と、鏡面平仕上げ加工具と、を有する。
【0023】
なお、
図1における各加工具(320a−320d、330、340)の配置位置は、単に例示に過ぎず、入れ替わっていても良い。また、複数の加工具が一つの加工具回転軸に配置されていても良い。例えば、溝加工具320bと穴加工具320cは、一つの加工具回転軸に取り付けることができる。また、
図1の実施形態の加工装置1では、各加工具がそれぞれ加工具回転軸312a−312fに取り付けられる構成としたが、各加工具が一つの加工具回転軸に付け替えられる加工具交換タイプ(ツールチェンジ)の装置であっても良い。
【0024】
<位置調整ユニット>
位置調整ユニット110の構成を
図2、
図5、
図6を使用して説明する。位置調整ユニット110は、各加工具(320a−320d、330、340)に対するレンズチャック軸222F、222Rに保持されたレンズLEの相対的な位置関係を調整するために設けられている。位置調整ユニット110は、レンズチャック軸角度調整機構120(以下、角度調整機構と略す)と、X軸移動機構130と、Z軸移動機構140と、Y軸移動機構150と、を有する。
【0025】
図2には、角度調整機構120の概略構成が図示されている。角度調整機構120は、加工具回転軸312a−312fに対するレンズチャック軸222F、222Rの相対的な角度を調整(変更)するために用いられる。
図2おいて、キャリッジ221は、キャリッジ221の中心を通り、且つX軸方向(前後方向)に平行に延びるA軸を中心に回転可能に、キャリッジベース112(
図1、
図5参照)に保持されている。キャリッジ221の外周にはプーリー127が取り付けられている。角度調整機構120は、A軸を中心にキャリッジ221を回転するためのモータ126を有する。モータ126はキャリッジベース112に取り付けられている。モータ126の回転は、回転伝達機構の例であるタイミングベルト128、プール127を介してキャリッジ221に伝達される。これにより、A軸の軸回りにレンズチャック軸222F、222Rが回転され、加工具回転軸312a−312fに対するレンズチャック軸222F、222Rの相対的な角度がそれぞれ調整(変更)される。
【0026】
図5は、X軸移動機構130及びZ軸移動機構140の構成例を説明するための概略図である。X軸移動機構130は、加工具回転軸312a−312fに対するレンズチャック軸222F、222Rの相対的なX軸方向の位置を調整(移動)するために用いられる。
図5において、キャリッジベース112はX軸方向へ移動可能に、Z軸移動ベース131に保持されている。Z軸移動ベース131上にはモータ135が配置されている。モータ135の回転は、例えば、回転運動を直動に変換するための変換機構136(ボールネジ、ナット等の周知の部材で構成される)によってX軸方向への直線運動に変換される。モータ135の回転により、変換機構136を介してキャリッジベース112がX軸方向へ移動される。これにより、各加工具に対するレンズチャック軸222F、222Rに保持されたレンズLEの相対的なX軸方向の位置が調整(移動)される。
【0027】
Z軸移動機構140は、加工具回転軸312a−312fに対するレンズチャック軸222F、222Rの相対的なX軸方向の位置を調整(移動)するために用いられる。
図5において、Z軸移動ベース131はZ軸方向へ移動可能に、加工装置1の本体ベース部10に搭載されている。本体ベース10部にはモータ145が配置されている。モータ145の回転は、回転運動を直動に変換するための変換機構146(ボールネジ、ナット等の周知の部材で構成される)によってZ軸方向への直線運動に変換される。モータ145の回転により、変換機構146を介してZ軸移動ベース131がZ軸方向へ移動される。これにより、各加工具に対するレンズチャック軸222F、222Rに保持されたレンズLEのZ軸方向の相対的な位置が調整(移動)される。
【0028】
図6は、Y軸移動機構150の構成例を説明するための概略図である。
図6は、スピンドル保持ユニット300を加工装置1の裏側から見た図として示されている。Y軸移動機構150は、加工具回転軸312a−312fに対するレンズチャック軸222F、222Rの相対的なY軸方向の位置を調整(移動)するために用いられる。実施形態のY軸移動機構150は、加工具回転軸312a−312fを有するスピンドル保持ユニット300を加工装置1のベース10に対してY軸方向へ移動させるように構成されている。
【0029】
図6において、移動支基302L及び302RはY軸方向へ一体的に移動可能に、本体ベース部10に保持されている。Y軸移動機構150は、体ベース10部に配置されたモータ155を備える。モータ155の回転は、回転運動を直動に変換するための変換機構156によってY軸方向への直線運動に変換される。モータ155の回転により、変換機構156を介して移動支基302L及び302Rが一体的にY軸方向へ移動される。これにより、各加工具に対するレンズチャック軸222F、222Rに保持されたY軸方向の想定的な位置が調整される。
【0030】
<レンズ形状測定ユニット>
図1において、キャリッジ221の上方には、レンズ形状測定ユニット(以下、測定ユニットと略す)500は配置されている。測定ユニット500は、移動支基302L及び302Rと一緒にY軸方向へ移動可能に設けられている。
【0031】
測定ユニット500は、レンズLEの前屈折面に接触させる測定子511Fと、レンズLEの後屈折面に接触させる測定子511Rと、を有する。また、測定ユニット500は、測定子511Fの支持部514Fと、測定子511Rの支持部514Rと、をそれぞれ個別にZ軸方向へ移動させる駆動部516を有する。また、測定ユニット500は、測定子511FのZ軸方向の移動位置を検知する検知器(センサ)520Fと、定子511RのZ軸方向の移動位置を検知する検知器(センサ)520Rと、を有する(
図7参照)。
【0032】
レンズLEの前屈折面及び後屈折面の測定時には、角度調整機構120によってレンズチャック軸222F、222RがZ軸方向に平行に位置され、また、Z軸移動機構140によってZ軸方向の位置が所定の測定位置に調整される。そして、玉型に基づいてY軸移動機構150によってレンズLEのY軸位置が変えられ、測定ユニット500によって、レンズチャック軸方向であるZ軸方向におけるレンズLEの前屈折面及び後屈折面の位置が測定される。
【0033】
<電気系の概略構成>
図7は、実施形態の装置における電気系の概略構成ブロック図である。制御ユニット50は、加工装置1における各駆動機構、データの取得等の制御を行う。制御ユニット50にはレンズチャックユニット200の各モータ等(230,220F,220R)、位置調整ユニット110の各モータ(126,135,145,155)、レンズ形状測定ユニット500の駆動部516、検知器520F及び520Rが接続されている。また、制御ユニット50にはタッチパネル機能を持つディスプレイ(入力ユニット)20、メモリ51、ホストコンピュータ1000が接続されている。ディスプレイ20は加工装置1に指令信号を入力するためのスイッチを有する。外部入力装置の例であるホストコンピュータ1000からは玉型データ(動径角及び動径長のデータを含む)、玉型に対するレンズLEの光学中心のレイアウトデータ、レンズLEの周縁にステップ(段付き)を加工するためのステップ形成データ、ステップ加工後に残されるレンズ周縁の突出部分の前側及び後側の両角部を面取りするための面取りデータ、等の少なくとも一つの加工条件データが入力される。これらの加工条件データは装置1によって受信され、制御ユニット50によって取得される。制御ユニット50は、位置調整ユニット110を制御してレンズLEの周縁を加工する加工制御ユニットとして機能する。また、制御ユニット50は、ステップ形成情報取得ユニット、面取りデータ取得ユニット、レンズLEの屈折面のカーブデータ取得ユニットの例として機能する。
【0034】
次に、以上のような構成を備える装置の動作を説明する。以下では、高カーブフレームである眼鏡フレームに備えられていたサングラスレンズに代えて、度付きレンズ(屈折力を持つレンズ)をサングラスフレームに取り付けるために、レンズLEに平仕上げ加工及びステップ加工を行う場合を中心に説明する。
【0035】
図8は、レンズ交換タイプの眼鏡フレームSFと、この眼鏡フレームSFに備えられているデモレンズSLの例を示す図である。眼鏡フレームSFのリムには、点線で示される凹溝(窪み溝)Gが形成されている。眼鏡フレームSFに備えられていたデモレンズSLは一定の厚さFWで凹溝Gに嵌め込まれている。凹溝Gの深さは、眼鏡フレームSFのリムの縁FCから距離FDとなっている。
【0036】
図8における眼鏡フレームSFに備えられているデモレンズSLに代えて、屈折力を持つレンズLEを眼鏡フレームSFに取り付ける場合、レンズLEの厚さはデモレンズSLの厚さFWより厚くなる。このため、
図9に示すように、レンズLEの周縁をステップ加工具340によってステップ加工(段付き加工)を行い、眼鏡フレームSFの凹溝Gに嵌め込むための突出部分LS1を形成する必要がある。突出部分LS1の径方向の距離(高さ)は、凹溝Gの深さ距離FDに一致させた切込み距離LSDで形成される。
【0037】
ここで、通常、凹溝GはU字状である場合が多い。突出部分LS1の厚みが周縁端まで同じ厚さのままであると、突出部分LS1の周縁端が凹溝Gの奥まで入らず、レンズLEの段付き部分の縁(突出部分LS1の裾野面)LC1がリムの縁FCに合わずに、リムに対するレンズLEの嵌り具合及び見栄えが悪くなる。このため、突出部分LS1の前側角部Cf及び後側角部Crに面取り加工が必要とされる。
【0038】
図9に示されるレンズLEの突出部分LS1のステップ加工と、前側角部Cf及び後側角部Crの面取り加工の動作を以下に説明する。
図10は、実施形態におけるステッフ加工に関連した動作フローチャートである。
【0039】
制御ユニット50によって、玉型データTD及びステップ形成情報TSDが取得される(S1)。玉型データTD及びステップ形成情報TSDは、例えば、次のように得られる。
【0040】
眼鏡フレームSFにデモレンズSLが取り付けられた状態で、操作者は、デモレンズSLのレンズ面上でリムの内側境界に沿ってペン等によってマークを付す。眼鏡フレームSFからデモレンズSLを取り外した後、そのデモレンズSLの輪郭及びマークが付された内側境界を周知の輪郭読み取り装置(例えば、特開2012−185490号公報参照)で読み取る。そして、
図11に示されるように、画像処理によってデモレンズSLの外形形状である玉型データTDと、突出部分LS1を形成するための輪郭情報TSD1がステップ形成情報TSDの一つとして得られる。また、ステップ形成情報TSDの一つである突出部分LS1の厚み情報LSWは、デモレンズSLの厚みFW(
図8(b)参照)を計測することによって得られる。また、ステップ形成情報TSDの一つである突出部分LS1の切込み距離LSDは、眼鏡フレームSFの凹溝Gの深さ距離FDを計測することによって得られる。
【0041】
このように得られた玉型データTD及びステップ形成情報TSD(輪郭情報TSD1、厚み情報LSW、切込み距離LSD)は、ホストコンピュータ1000を介して加工装置1に入力され、制御ユニット50によって取得される。取得された玉型データTD及びステップ形成情報TSDはメモリ51に記憶される。
【0042】
次に、制御ユニット50は、突出部分LS1の前側角部Cf及び後側角部Crに面取り加工を行うための面取りデータCWDを取得する(S2)。面取りデータCWDは、例えば、
図9に示されるように、前側角部Cfの前側面取り距離Cfw(突出部分LS1の前側からの距離)及び後側角部Crの後側面取り距離Crw(突出部分LS1の後側からの距離)が一定距離として予め設定され、メモリ51に記憶されている。距離Cfw及びCrwは、例えば、0.2mmに設定されている。操作者は、距離Cfw及びCrwをメモリ51から呼び出し、ディスプレイ(入力ユニット)20によって設定値を任意に変更することもできる。また、面取りデータCWDは、デモレンズSLの周縁の面取り部分を計測することによって得ることもできる。この場合は、面取りデータCWDは、ホストコンピュータ1000を介して加工装置1に入力され、制御ユニット50によって取得される。
【0043】
次に、制御ユニット50は、玉型データTDに対するレンズLEのレイアウトデータ(玉型に対するレンズLEの光学中心の位置関係データを取得する(S3)。これは、例えば、ディスプレイ(入力ユニット)20に表示されるレイアウトデータ設定画面によって操作者が入力して設定することができる。また、別の装置で設定されている場合は、レイアウトデータはホストコンピュータ1000を介して加工装置1に入力され、制御ユニット50によって取得される。
【0044】
以上のようにレンズ加工に必要な条件データが取得されたら、レンズLEのレンズ形状測定工程に移行する(S4)。制御ユニット50は、位置調整ユニット110の各機構を制御すると共に測定ユニット500の駆動部16の駆動を制御し、レンズチャック軸222F、222Rに保持されたレンズLEの前側屈折面及び後側屈折面における玉型に対応する位置(レンズチャック軸方向の位置)の情報を得る。このとき、制御ユニット50は、測定ユニット500によって得られたデータから前側屈折面のカーブ情報(傾斜情報)を得る。前側屈折面のカーブ情報は、例えば、玉型に対応する前側屈折面データの内の少なくとも4点を使用することによって数学的に得ることができる。また、玉型に対応する位置付近で、レンズチャック中心から動径角毎における異なる距離での位置情報を得ることによって数学的に得ることができる。
【0045】
レンズ形状測定工程が終了すると、レンズLEの周縁を粗加工する工程に移行される(S5)。制御ユニット50は、位置調整ユニット110の各機構の駆動を制御し、粗加工具320a(加工具回転軸312a)に対するレンズLE(レンズチャック軸222R,222F)の相対的な位置関係を調整し、玉型に基づいてレンズLEの周縁を粗加工具320aによって粗加工させる。粗加工の形状データは、玉型に対して一定の仕上げ代を確保するように求められる。
【0046】
なお、平仕上げ加工においては、レンズLEの平仕上げ後のコバ面(被加工面)の方向が、動径角毎(レンズ回転角毎)の玉型に対応した位置で、レンズ前屈折面に対して一定角度(例えば、法線方向)に設定される。こうすると、ステップ加工後に残された突出部分LS1が眼鏡フレームSFの凹溝Gの奥まで入り、突出部分LS1の裾野面が眼鏡フレームSFのリムとフィットし易くなる。このため、粗加工においても、制御ユニット50は、動径角毎(レンズ回転角毎)の玉型に対応して位置で、粗加工のコバ面が法線方向となるように、角度調整機構120を制御し、加工具回転軸312aに対するレンズチャック軸222F、222Rの相対的な角度(傾斜角度)を調整する。
【0047】
続いて、平仕上げ加工の工程に移行される(S6)。制御ユニット50は、位置調整ユニット110の各機構の駆動を制御し、平仕上げ加工具334に対するレンズLEの位置関係を調整し、玉型に基づいてレンズLEの周縁を平仕上げ加工具334によって平仕上げ加工させる。このとき、制御ユニット50は、
図12に示すように、玉型に対応する位置でのレンズ前屈折面LEfに対する被平加工面が予め設定された角度LTa(例えば、法線方向)となるように、レンズの回転角毎に加工具回転軸312eとレンズチャック軸222F、222Rとの相対角度α1を調整する。角度α1は加工具回転軸312eの中心軸312eCとレンズチャック軸222F、222Rの中心軸222Cとが成す角度である。
【0048】
平仕上げ加工が終了すると、ステップ加工に先立ち、ステップ加工後に残されるレンズ周縁の突出部分LS1の前側及び後側の両角部を面取り加工する工程に移行される(S7)。このとき、突出部分LS1の面取りにはヤゲン加工具332のV溝331が使用される。
【0049】
図13は、ステップ加工及び突出部分LS1の面取り加工を説明する図である。
図13は、ステップ加工の前に、突出部分LS1の両角部を先に面取り加工する例を示す。
【0050】
制御ユニット50は、位置調整ユニット110を制御し、突出部分LS1の前面取り斜面Cf1及び後面取り斜面Cr1(
図13(c)参照)が、被平加工面の角度LTa(
図12参照)に対して設定された一定角度になるように、レンズの回転角毎に加工具回転軸312eとレンズチャック軸222F、222Rとの相対角度を調整する。例えば、
図13(a)のように、レンズの回転角毎に、レンズLEの周縁の被平加工面とヤゲン加工具332の平加工面YSとが平行となる位置関係に調整する。また、制御ユニット50は、位置調整ユニット110を制御し、ステップ形成情報TSDの内の厚みLSWと、レンズLEの玉型に対応した位置における前屈折面LEfの位置と、に基づき、V溝331に対するレンズLEの厚み方向の位置をレンズの回転角毎に調整する。例えば、制御ユニット50は、突出部分LS1における厚みLSWの中心LSp1とヤゲン加工具332のV溝331の中心331p1とが一致するように、レンズの回転角毎にV溝331に対するレンズLEの位置を調整する。
【0051】
次に、制御ユニット50は、位置調整ユニット110を制御し、
図13(b)のように、V溝331に対するレンズLEの切り込み距離YD1を調整することにより、V溝331によって前側角部Cf及び後側角部Crを同時に面取り加工する。すなわち、V溝331の前ヤゲン加工部331Fによって前側角部Cfが面取り加工され、V溝331の後ヤゲン加工部331Rによって後側角部Crが面取り加工される。このとき、ヤゲン加工具332に対するレンズLEの切り込み距離YD1(ヤゲン加工具332の外周の平加工面VYに対するレンズLEの被平加工面の距離)は、前側面取り距離Cfw及び後側面取り距離Crwに基づいて制御ユニット50によって決定される。つまり、切り込み距離YD1は面取りデータに基づいて決定される。メモリ51には、ヤゲン溝の中心軸VLaに対する前ヤゲン加工部331F及び後ヤゲン加工部331Rの傾斜角度β1が記憶されている。切り込み距離YD1は、傾斜角度β1、厚みLSW、距離Cfw及び距離Crwに基づいて制御ユニット50によって求められる。これにより、突出部分LS1の前面取り斜面Cf1及び後面取り斜面Cr1がレンズの周方向で均一に面取りされることになる。
【0052】
このとき、レンズLEの後面部分(突出部分LS1より後面側の部分)の一部がヤゲン加工具332の平加工面YSによって加工される。しかし、ヤゲン加工具332の外周の平加工面VYに対するV溝331の深さVDaは、突出部分LS1を残すためのステップ加工の切込み距離LSDに対して小さい。通常、切込み距離LSDは2mmほどある。これに対して、実施形態のV溝331の深さVDaは、例えば、0.9mmである。このため、レンズLEの後面部分(突出部分LS1より後面側の部分)の一部がヤゲン加工具332によって加工されたとしても、突出部分LS1の裾野部分LC1までは加工されない(加工具332が裾野部分LC1に干渉しない)。すなわち、ヤゲン加工具332によって加工された後面部分は、次のステップ加工によって切り落とされる部分であるので支障は無い。
【0053】
なお、V溝331の深さVDa又は前述の距離YD1に対して突出部分LS1を残すための切込み距離LSDが大きいことを条件として、制御ユニット50がV溝331による面取り加工を行うことを決定しても良い。深さVDa又は距離YD1に対して切込み距離LSDが小さいときは、制御ユニット50は警告を発し、V溝331による面取り加工が不可であることを操作者に知らせる。
【0054】
面取り加工が終了すると、ステップ加工の工程に移行される(S8)。制御ユニット50は、位置調整ユニット110を制御し、ステップ形成情報TSDに基づいて加工具回転軸312fに対するレンズチャック軸222F、222Rの位置関係をレンズ回転角毎に調整し、ステップ加工具340によってレンズ周縁にステップ加工を行わせる。実施形態では、
図13(c)に示すように、レンズLEの玉型に対応した前屈折面LEfの位置から厚みLSWを隔てた位置に、ステップ加工具340の端部340aが位置するように調整される。そして、玉型及び切込み距離LSDに基づき、レンズの回転角毎に加工具回転軸312fに対するレンズチャック軸222F、222Rの間隔が調整され、
図13(c)の斜線部で示す段差部分LSが削り取られる(ステップ加工される)。このステップ加工により、
図13(d)に示すように、レンズLEの周縁に突出部分LS1が形成される。また、突出部分LS1の前側及び後側に面取りが形成された状態となる。
【0055】
なお、ステップ加工の工程(S8)を先に行い、その後にヤゲン加工具332のV溝331による面取り加工の工程(S7)を行っても良い。また、平加工具334による平加工工程(S6)を面取り加工の工程(S7)及びステップ加工の工程(S8)の後に行っても良い。
【0056】
以上のように実施形態の装置では、ステップ加工後に残される突出部分LS1の前側角部及び後側角部の面取り加工を自動的に行うことができる。また、実施形態の装置では、突出部分LS1の前側角部及び後側角部の面取りがヤゲン加工具332のV溝331によって同時に加工されるため、前側角部及び後側角部を別々に面取り加工する場合に対して加工時間が短縮される。
【0057】
また、実施形態の
図10に示した加工手順では、平加工の工程(S6)に続いてヤゲン加工具332のV溝331による面取り加工の工程を行うため、加工具回転軸を切替え頻度が少なくなり、加工が効率的に行われ、加工時間が短縮される。すなわち、平加工の工程(S6)と面取り加工の工程(S7)との間にステップ加工の工程(S8)を行う場合は、途中で加工具回転軸の切替えが有り、この切替えにレンズチャック軸222F、222Rの移動時間が掛かる。これに対して、実施形態では、加工具回転軸312eに平加工具334及びヤゲン加工具332が同軸に備えられているため、平加工の工程(S6)及び面取り加工の工程(S7)を連続的に行えば、加工具回転軸の切替え無く、レンズチャック軸222F、222Rの移動時間を短縮できる。なお、平加工の工程(S6)及び面取り加工の工程(S7)を連続的であれば、その順番は逆でも良い。
【0058】
なお、ヤゲン加工具332による通常レンズのヤゲン加工では、粗加工320aによって粗加工されたレンズLEの周縁がヤゲン加工具332によって加工され、V溝331によってレンズ周縁にヤゲンが形成される。V溝331によるヤゲン加工は、低カーブレンズ(例えば、5カーブ以下のレンズ)の場合に適用される。ヤゲン加工具332の外周の加工面YSによって、レンズLEの周縁にはヤゲンの裾野が形成される。このヤゲン加工については、周知であるので、ここでは詳細な説明は省略する。