(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
媒体の主走査方向に沿って吐出部から液滴を吐出することによって前記媒体にドットを記録する主走査方向記録動作、および、前記主走査方向と交差する副走査方向に前記媒体と前記吐出部とを相対的に移動させる副走査動作を実行して、前記主走査方向に沿う1つの主走査線に位置するドットの記録をN回(Nは2以上の整数)の前記主走査方向記録動作で完了するマルチパス記録を行うことによって、前記媒体にドットを記録する印刷動作と、前記吐出部に対するメンテナンス処理を行なうメンテナンス動作と、を行う液滴吐出方法であって、
複数回のメンテナンス動作を実行する際に、前回のメンテナンス動作を実行してから次のメンテナンス動作を実行するまでの間に、少なくとも(N−1)回の主走査方向記録動作を実行し、
1回の前記メンテナンス動作によって前記印刷動作が中断する時間は、許容時間以下に制限され、
完了に要する時間が前記許容時間以上のメンテナンス処理は、前記許容時間以下の複数回のメンテナンス動作に分割される、
ことを特徴とする液滴吐出方法。
媒体の主走査方向に沿って吐出部から液滴を吐出することによって前記媒体にドットを記録する主走査方向記録動作、および、前記主走査方向と交差する副走査方向に前記媒体と前記吐出部とを相対的に移動させる副走査動作を実行して、前記主走査方向に沿う1つの主走査線に位置するドットの記録をN回(Nは2以上の整数)の前記主走査方向記録動作で完了するマルチパス記録を行うことによって、前記媒体にドットを記録する印刷動作と、前記吐出部に対するメンテナンス処理を行なうメンテナンス動作と、を行う液滴吐出方法であって、
前記マルチパス記録のパラメータNが、N1である第1のモードと、N2(N2はN1よりも大きい整数)である第2のモードと、のいずれか一方で前記印刷動作を制御可能であり、
前記第1のモードにおいては、前回のメンテナンス動作を実行してから次のメンテナンス動作を実行するまでの間に少なくとも(N1−1)回の第1の回数の主走査方向記録動作を実行するように制御し、
前記第2のモードにおいては、前回のメンテナンス動作を実行してから次のメンテナンス動作を実行するまでの間に少なくとも(N2−1)回の第2の回数の主走査方向記録動作を実行するように制御する
ことを特徴とする液滴吐出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、インクジェットプリンターにおいて、上述した不良ノズルの発生に起因する印刷不良による画像の画質の低下を抑制するためには、印刷の途中においても可能な限り多くのメンテナンス処理を実行することが望まれている。しかしながら、印刷途中におけるメンテナンス処理の実行は以下の問題を有している。
【0006】
1つの媒体への印刷の途中においてメンテナンス処理を実行した場合、そのメンテナンス処理により停止した時間により、メンテナンス処理の直前の主走査パスで形成されたドットと、メンテナンス処理の直後の主走査パスにより形成されたドットとの間での形成状態に違いが発生し、これに起因した色むらによる画質の低下が顕在化する可能性がある、という問題がある。例えば、マルチパス方式において、一つのラスターラインに並ぶ複数のドットの中に、メンテナンス処理直前の主走査パスにおけるドットと、メンテナンス処理直後の主走査パスにおけるドットと、が混在するため、これに起因する色むらが顕在化する可能性がある。
【0007】
なお、上述した課題は、シリアル方式のインクジェットプリンターに限らず、媒体に液滴を吐出してドットを記録する液滴吐出装置に共通する課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本発明の形態によれば、媒体にドットを記録する液滴吐出装置が提供される。この液滴吐出装置は、液滴を吐出する吐出部と;前記媒体の主走査方向に沿って前記液滴を吐出することによってドットを記録する主走査方向記録動作、および、前記主走査方向と交差する副走査方向に前記媒体と前記吐出部とを相対的に移動させる副走査動作を実行して、前記主走査方向に沿う1つの主走査線に位置するドットの記録をN回(Nは2以上の整数)の前記主走査方向記録動作で完了するマルチパス記録を行うことによって、前記媒体にドットを記録する印刷動作と、前記吐出部に対するメンテナンスを行なうメンテナンス動作と、を制御する制御部と;を備える。前記制御部は、複数回のメンテナンス動作を実行する際に、前回のメンテナンス動作を実行してから次のメンテナンス動作を実行するまでの間に、少なくとも(N−1)回の主走査方向記録動作を実行するように制御する。この形態の液滴吐出装置によれば、N回の主走査パスで完了するマルチパス記録により実行される印刷動作中において、(N−1)回以上の主走査パスのメンテナンス間隔でメンテナンス処理を分散して行うことができる。これにより、印刷動作中にメンテナンス処理を行うことによって発生する色むらの顕在化を抑制し、印刷された画像の画質の低下を抑制することができる。
【0010】
(2)上記形態の液滴吐出装置において、前記主走査方向記録動作は、前記吐出部と前記媒体を前記主走査方向に相対的に移動させつつ前記吐出部から前記液滴を吐出させる動作としてもよい。この場合、媒体に対して相対的に移動する吐出部に対するメンテナンスを行なうことができる。
【0011】
(3)上記形態の液滴吐出装置において、1回の前記メンテナンス動作によって前記印刷動作が中断する時間は、許容時間以下に制限され、完了に要する時間が前記許容時間以上のメンテナンス処理は、前記許容時間以下の複数回のメンテナンス動作に分割されるようにしてもよい。許容時間以上のメンテナンス処理を印刷動作中に実行することによって色むらが顕在化するのを抑制し、印刷された画像の画質の低下を抑制することができる。
【0012】
(4)上記形態の液滴吐出装置において、前記制御部は、前記マルチパス記録のパラメータNが、N
1である第1のモードと、N
2(N
2はN
1よりも大きい整数)である第2のモードと、のいずれか一方で前記印刷動作を制御可能であり;前記第1のモードにおいては、前回のメンテナンス動作を実行してから次のメンテナンス動作を実行するまでの間に少なくとも(N
1−1)回の第1の回数の主走査方向記録動作を実行するように制御し;前記第2のモードにおいては、前回のメンテナンス動作を実行してから次のメンテナンス動作を実行するまでの間に少なくとも(N
2−1)回の第2の回数の主走査方向記録動作を実行するように制御するようにしてもよい。この形態の液滴吐出装置によれば、それぞれのモードに適した間隔でメンテナンス動作を分散して実行することができる。
【0013】
(5)上記形態の液滴吐出装置において、前記第1の回数と前記第2の回数は等しい値に設定されるようにしてもよい。このようにすれば、モードに関係なく一定の間隔でメンテナンス動作を分散して実行することができ、処理の簡易化を図ることができる。
【0014】
(6)上記形態の液滴吐出装置において、前記メンテナンス処理は、(i)前記吐出部のノズル状態を検査するノズル検査と、(ii)前記吐出部から液滴を空吐出するフラッシングと、(iii)前記吐出部のノズルが設けられた面を拭き取るワイピングと、のうち少なくとも一つを含むようにしてもよい。この場合、印刷動作中に、ノズル検査とフラッシングとワイピングとのうち少なくとも一つのメンテナンス処理が実行されることによって発生する色むらの顕在化を抑制し、記録された画像の画質の低下を抑制することができる。
【0015】
(7)上記形態の液滴吐出装置において、前記液滴は、樹脂を含むインクであるようにしてもよい。この場合、樹脂を含むインクを使用する液滴吐出装置は、樹脂が硬化して、媒体上に樹脂被膜が形成されることにより、インクが媒体に定着する構造を利用するものであり、吐出部のノズル内でインクが硬化して詰まりやすい。従って、樹脂を含むインクを使用する液滴吐出装置では、印刷動作の途中においてメンテナンス処理を実行することにより、吐出部のノズルの目詰まりを効果的に抑制して画質の低下を抑制することができる。
【0016】
なお、本発明は、以下に示すような種々の態様で実現することが可能である。
(a)液滴吐出装置、液滴吐出制御装置。
(b)液滴吐出方法、液滴吐出制御方法。
(c)上記の装置や方法を実現するためのコンピュータープログラム。
(d)上記の装置や方法を実現するためのコンピュータープログラムを記録した一時的でない記録媒体(non‐transitory storage medium)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A1.印刷装置の構成:
図1は、本発明の液滴吐出装置の一実施形態としてのカラーインクジェットプリンター20の主要な構成を示す概略斜視図である。このプリンター20は、図示しない紙送りモーターで駆動される紙送りローラー24と、プラテン板26と、キャリッジ28と、キャリッジモーター30と、キャリッジモーター30によって駆動される牽引ベルト32と、キャリッジ28のためのガイドレール34と、を備えている。キャリッジ28には、多数のノズルを備えた印刷ヘッド40および複数のインクカートリッジ41が搭載されている。印刷ヘッド40は、液滴を吐出する吐出部として機能する。複数のインクカートリッジ41として、具体的には、ブラックインクのインクカートリッジ41kと、シアンインクのインクカートリッジ41cと、マゼンダインクのインクカートリッジ41mと、イエローインクのインクカートリッジ41yと、が搭載されている。
【0019】
図1の右端におけるキャリッジ28のメンテナンスポジションMPには、ノズル検査部100およびインク受け容器210が設けられている。ノズル検査部100は、発光素子102aと受光素子102bとを備えており、これらの素子102a,102bを利用してノズルから吐出されるインク滴の飛行状態を調べることによってドット抜けを検査する。ノズル検査部による検査(以下、「ノズル検査」あるいは「ドット抜け検査」とも呼ぶ)の詳細な内容については後述する。インク受け容器210は、ノズル検査および後述するフラッシングにおいてノズルから空吐出されるインクのインク受け容器ともなる。
【0020】
また、インク受け容器210とプラテン板26との間の位置には、ワイパー部300が設けられている。ワイパー部300は、ワイパー保持部314に保持されたワイパーブレード312を備えており、印刷ヘッド40のノズルの周辺の汚れを拭き取る、いわゆるワイピングを行う。ワイパー部によるワイピングの詳細な内容については後述する。
【0021】
キャリッジ28は、牽引ベルト32に牽引されて、ガイドレール34に沿って主走査方向に移動する。キャリッジ28の主走査方向の移動に伴って、インクカートリッジ41および印刷ヘッド40も主走査方向に移動する。印刷用紙(媒体)Pは、不図示の用紙スタッカーから紙送りローラー24によって巻き取られて、プラテン板26の表面上を副走査方向へ送られる。主走査方向は副走査方向と垂直である。ただし、副走査方向と主走査方向とは、必ずしも直交している必要はなく、交差していればよい。なお、媒体として印刷用紙を用いているが、紙以外を素材とする媒体を用いてもよい。具体的には、布、塩化ビニル樹脂といった素材の媒体を用いてもよい。
【0022】
印刷用紙Pの副走査方向への移動(紙送り)の後、印刷ヘッド40の主走査方向への移動の際に、印刷ヘッド40に配置されたノズル(後述)からインク滴が吐出されることにより、印刷用紙Pの主走査方向に沿った主走査線上にドットの形成が実行される。このように、印刷ヘッド40の主走査方向への移動および主走査線上へのインク滴の吐出を主走査といい、1回の主走査を「主走査パス(main scan pass)」または単に「パス」と呼ぶ。また、印刷用紙Pの副走査方向への移動を副走査という。
【0023】
上記副走査動作と主走査動作とが交互に繰り返されることにより、主走査方向に沿って主走査線上に並ぶ複数のドットで構成されるラスターラインが副走査方向に沿って複数並んで形成され、印刷用紙Pへの画像の印刷が実行される。
【0024】
図2は、プリンター20の電気的な構成を示すブロック図である。プリンター20は、ホストコンピューター10から供給された信号を受信するインターフェイス50と、プリンター20全体の動作を制御するシステムコントローラー52と、を備えている。システムコントローラー52は、印刷制御部52a及びメンテナンス制御部52bとして動作可能である。システムコントローラー52は、プリンター20の種々の動作を制御する制御部として機能する。
【0025】
システムコントローラー52は、不図示のCPUと、ROMやRAM等のメモリーと、を備えるコンピューター、例えば、マイクロコンピューターで構成される。システムコントローラー52は、例えば、印刷制御部52aおよびメンテナンス制御部52bとして機能し、主走査駆動部54と副走査駆動部56とヘッド駆動部60とノズル検査駆動部62とワイパー駆動部64の動作を制御する。
【0026】
主走査駆動部54は、キャリッジモーター30と牽引ベルト32とガイドレール34とで構成される主走査駆動機構を駆動する。主走査駆動部54は、印刷動作では、システムコントローラー52(印刷制御部52a)の制御に従って上述した主走査におけるキャリッジ28、すなわち、印刷ヘッド40の移動を実行する。また、主走査駆動部54は、メンテナンス動作では、システムコントローラー52(メンテナンス制御部52b)の制御に従って印刷ヘッド40のメンテナンスポジションMPへの移動を実行する。
【0027】
副走査駆動部56は、不図示の紙送りモーターと紙送りローラー24とで構成される副走査駆動機構を駆動する。副走査駆動部56は、システムコントローラー52(印刷制御部52a)の制御に従って上述した副走査における印刷用紙Pの移動(紙送り)を実行する。但し、副走査動作は、印刷用紙Pの代わりに印刷ヘッド40を移動させるものでもよい。
【0028】
ヘッド駆動部60は、印刷動作では、システムコントローラー52(印刷制御部52a)の制御に従って、ホストコンピューター10から転送された印刷データに応じて印刷ヘッド40に設けられたノズルを駆動し、上述した主走査におけるインク滴の吐出を行って、印刷データに応じたドットの形成を実行する。ヘッド駆動部60は、メンテナンス動作では、システムコントローラー52(メンテナンス制御部52b)の制御に従って、上述したメンテナンスポジションMPにおいてノズルからのインクの空吐出を行い、インク滴とともに気泡や粘性が増加したインクをノズルから噴射する、いわゆるフラッシングを実行する。従って、ヘッド駆動部60は、フラッシング部としても動作する。なお、「空吐出」とは、インク滴の本来の用途(すなわち印刷)以外の目的のために行われる吐出を意味する。
【0029】
ノズル検査駆動部62は、システムコントローラー52(メンテナンス制御部52b)の制御に従って、後述するノズル検査を実行する。また、ワイパー駆動部64は、システムコントローラー52(メンテナンス制御部52b)の制御に従って、後述するワイピングを実行する。
【0030】
図3は、印刷ヘッド40に設けられたノズルの構成の一例を示す説明図である。印刷ヘッド40の下面(以下、「ノズル面」とも呼ぶ)45pには、ブラックインクのノズル列NLkと、シアンインクのノズル列NLcと、マゼンダインクのノズル列NLmと、イエローインクのノズル列
NLyと、を備える。なお、以下の説明で色を特に区別しない場合には、単に「ノズル列NL」と呼ぶ。各ノズル列NLは、一定のノズルピッチで副走査方向SSに並んだ複数のノズルNZを備える。なお、副走査方向SSは、印刷用紙Pと印刷ヘッド40との相対的な移動方向を示している。本実施形態では、ノズルピッチdpと印刷用紙P上の副走査方向の画素ピッチとが等しい。ただし、ノズルピッチdpを、印刷用紙P上の副走査方向の画素ピッチの2倍以上の整数倍とすることも可能である。後者の場合には、いわゆるインターレース記録(1回目のパスでドット形成がなされた主走査線の間に存在する他の主走査線上において、2回目以降のパスでドットを形成する記録方法)が実行される。
【0031】
A2.印刷動作概要:
印刷動作とは、媒体にドットを記録する動作のことである。
図4は、マルチパス記録による印刷について示す説明図である。ここでは、3つの主走査パスにおけるノズル列NLの位置と、その位置における印刷領域と、を示している。また、図示の便宜上、印刷用紙Pに対して印刷ヘッド40が副走査方向SSに移動する様子を示している。
【0032】
ここで、「マルチパス記録」とは、個々の主走査線(ラスターライン)上のドットの形成を、N回(Nは2以上の整数)の主走査パスで完了するドット記録方法を意味しており、「マルチパス印刷」とも呼ぶ。
図4の例では、マルチパス記録のパス数N(以下、「マルチパス数N」とも呼ぶ)が3の場合を示している。1回目のパス(1PS)と、2回目のパス(2PS)と、3回目のパス(3PS)とでは、それぞれ、ノズル列NLの位置は、ヘッド高さHhの1/3に相当する距離だけ副走査方向にずれている。ここで、「ヘッド高さHh」とは、m×dp(mはノズル列
NLのノズル数、dpはノズルピッチ)で表される距離を意味する。
図4の例では、ノズル数mを9とし、主走査パスごとに3つのノズル分ずつ副走査方向にずれた状態を示している。
【0033】
ここでは、一色のインク(例えばシアンインク)を用いて印刷用紙Pの全画素にドットを形成する場合を例にとり説明する。1回目のパスでは、領域Q1〜Q3においてドットの形成が実行される。2回目のパスでは、領域Q2〜Q4においてドットの形成が実行される。3回目のパスでは、領域Q3〜Q5においてドットの形成が実行される。個々の主走査線上では3回の主走査パスが実行されるので、各主走査パスでは、各主走査線上の全部の画素位置におけるドット記録を実行するのではなく、その一部のみを実行する。また、各主走査線上において3回の主走査パスが完了した時点で、その主走査線上のすべての画素位置におけるドット記録が完了する。なお、本明細書において、「ドット記録」という用語は、「ドットの形成または不形成を実行すること」を意味する。
【0034】
A3.メンテナンス動作概要:
メンテナンス動作とは、メンテナンス処理を実行する動作のことである。印刷ヘッド40に対するメンテナンス処理には、ノズル検査と、フラッシングと、ワイピングの3種類のメンテナンス処理のうちの少なくとも一つのメンテナンス処理が含まれる。これらのメンテナンス処理は、例えば、印刷装置の起動時や遮断時、印刷非実行時において、定期的に、あるいは、ユーザーが不図示のボタンを介してメンテナンス指示を行った時、等の種々のタイミングでメンテナンスの要求が発生した際に実行される。また、印刷実行中においては、メンテナンスの要求が種々のタイミングで発生し、対応するメンテナンス処理が後述するように実行される。ここでは、各メンテナンス処理の内容について説明する。
【0035】
(1)ノズル検査
図5は、ノズル検査部100による各ノズルNZの検査を説明するための模式図である。発光素子102aと受光素子102bは、印刷ヘッド40を挟んだ両側に配置されている。ノズル列NLyが、レーザー光Lの光路の上方に来るような位置に印刷ヘッド40を位置決めした状態において、ヘッド駆動部60(
図2)がノズル列NLyの各ノズルを1つずつ、かつ、所定の駆動期間ずつ順番に駆動して、各ノズルからインク滴を順次空吐出させる。吐出されたインク滴は、途中でレーザー光Lの光路を遮るので、受光素子102bにおける受光が一時的に中断される。従って、あるノズルから正常にインク滴が吐出されていれば、レーザー光Lが受光素子102bで一時的に遮光されるので、そのノズルに目詰まりが無いと判断することができる。また、あるノズルの駆動期間内にレーザー光Lが全く遮光されないときには、そのノズルは目詰まりしていると判断することができる。なお、ノズル検査としては、このような光学式の検査以外の他の方式の検査も利用可能である。例えば、ノズルのアクチュエータがピエゾ素子の場合には、ピエゾ素子に振動を与えた後の残振動を測定することによって、個々のノズルからインク滴が正常に吐出し得るか否かを検査する検査方式を採用してもよい。
【0036】
(2)フラッシング
図6は、印刷ヘッド40の各ノズルNZのフラッシング処理を説明するための模式図である。フラッシング処理では、ヘッド駆動部60が各ノズルNZを駆動してインク滴の空吐出を実行する。
【0037】
(3)ワイピング
図7は、ワイパー部300による印刷ヘッド40のノズル面45pの拭き取り処理(ワイピング処理)を説明するための模式図である。なお、ノズル面とは、ノズルが設けられた面である。ノズル面45pは、増粘したインクがノズル開口部に付着して汚れる場合がある。また、インク受け容器210の端面と接触することによって、ノズル面45pにインク汚れが付着する場合などがある。ノズル面45pの汚れが蓄積すると、印刷ヘッド40の性能が劣化する。ワイピング処理では印刷ヘッド40を矢印X方向(主走査方向(MS))に移動させることにより、ワイパーブレード312の先端部312eでノズル面45pの汚れを拭き取ることができる。
【0038】
A4.印刷動作中のメンテナンス動作:
図8は、1枚の媒体上における印刷動作中においてメンテナンス処理を実行させる際のメンテナンス処理の管理手順について示す説明図である。上述したマルチパス記録による印刷動作の開始に合わせて、メンテナンス制御部52b(
図2参照)は、
図8に示したメンテナンス管理を開始し、1枚の媒体上における印刷動作が終了するまで(ステップS10:YES)、ステップS20〜ステップS90の処理を繰り返し実行する。
【0039】
ステップS20では、印刷動作中において、上記した複数種類のメンテナンス処理のうち少なくとも一つのメンテナンス処理の実行要求が発生して、「メンテナンス有り」と判断されない間、待機する。メンテナンス処理の要求が有った場合には、印刷制御部52aから、現在実行中の主走査パスのパス番号(パス数)Pn(Pnは1以上の整数)を取得する(ステップS30)。メンテナンスの実行要求としては、例えば、設定された管理スケジュールに従って、ノズル検査、フラッシング、および、ワイピングのうちのいずれかのメンテナンス処理の実行要求が、適宜発生する。また、1回のメンテナンス動作のために印刷を停止する時間Tm(以下、「停止時間Tm」)は、あらかじめ定められた制限時間Tr以下になるように設定されていることが好ましい。この制限時間Trは、印刷停止による色ムラの発生への影響を考慮して設定されている。このため、この制限時間Trよりも長い時間を要するメンテナンス処理については、複数のメンテナンス動作に分割されて実行される。例えば、印刷ヘッドに設けられる多数のノズルの検査に要する時間は制限時間Trよりも長くなることが想定される。そこで、ノズル検査については、あらかじめ定めたノズル数の検査を行う複数回の動作に分割して、検査を実行することができる。また、印刷装置が多数の印刷ヘッドを有する場合には、フラッシングやワイピングについても、予め定めた印刷ヘッド数毎に検査動作を実行してもよい。本明細書において、制限時間Tr内で行われる1回の動作を「メンテナンス動作」と呼ぶ。また、1つのメンテナンス要求に対応して行われる処理を「メンテナンス処理」と呼ぶ。従って、1回分のメンテナンス処理は、1回又は複数回のメンテナンス動作によって完了する。
【0040】
ステップS40において、発生したメンテナンス要求が1枚の媒体上の印刷動作中における最初の要求である場合には、後述するステップS60に移行する。一方、発生したメンテナンス要求が印刷動作中における最初の要求でない場合には、(Pn−Pm)<Miが成立するか否かが判断される(ステップS50)。ここで、Pmは、前回のメンテナンス動作の直前に実行された主走査パスのパス番号である。また、Miは、これらのパス番号Pn,Pmの間の間に十分な数のパスが実行されたか否かを判断するための閾値であり、(N−1)以上の値(Nはマルチパス数)に設定されることが好ましい。以下では、(Pn−Pm)を「経過パス数」と呼ぶ。経過パス数(Pn−Pm)が間隔Mi未満である場合には、ステップS30に戻ってステップS30〜S50を繰り返す。一方、経過パス数(Pn−Pm)が間隔Miに等しくなった場合には、ステップS60に移行し、印刷制御部52aに対して、現在実行中のパス番号Pnの主走査パスの終了後に印刷動作を一時停止することを指示する。なお、印刷動作の停止を指示された印刷制御部52aは、現在実行中の主走査パスを終了した時点で印刷動作を一時停止する。
【0041】
経過パス数(Pn−Pm)のための閾値Miは、ノズル検査の実行時間や、フラッシングの実行時間等の、種々のメンテナンスの実行時間に基づいて決定される。また、閾値Miの値は、あらかじめ設定される一定のパス数や、あらかじめ設定された印刷領域に対応するパス数等に基づいて設定されるようにしてもよい。また、閾値Miの値は、少なくとも、印刷の途中で1回以上のメンテナンスが実行されるように設定されていればよい。
【0042】
メンテナンス制御部52bは、印刷動作の一時停止後、要求のあったメンテナンス動作を実行する(ステップS70)。前述したように、1回のメンテナンス動作のための停止時間Tm、所定の制限時間Tr以下になるように設定されている。メンテナンス動作の終了後、印刷制御部52aに対して印刷動作の一時停止の解除を指示する(ステップS80)。印刷動作の一時停止解除を指示された印刷制御部52aは、次の主走査パスから印刷動作を再開する。そして、メンテナンス制御部52bは、Pm=Pnに設定し(ステップS90)、1枚の媒体上における印刷動作が終了するまで、ステップS10〜ステップS90の処理を繰り返し実行する。
【0043】
図8のフローにおいて、経過パス数(Pn−Pm)が閾値Miに等しくなったときにメンテナンス動作を実行するようにした理由は、短期間にメンテナンス動作が過度に集中しないようにするためである。すなわち、メンテナンス要求が発生したときにも、経過パス数(Pn−Pm)が閾値Miに等しくなるまでメンテナンス動作を実行しないので、短期間の間にメンテナンス動作が過度に集中することはない。前述したように、閾値Miを(N−1)以上の値(Nはマルチパス数)に設定することが好ましいが、この理由は以下の通りである。すなわち、マルチパス記録では、個々の走査線上におけるドット記録がN回の主走査パスによって完了する。このとき、閾値Miを(N−1)以上の値に設定しておけば、個々の主走査線上でのドット記録の開始から完了までの期間内において、最大でも1回のメンテナンス動作が実行されるだけである。従って、個々の走査線上におけるドット記録の開始から完了までの間に過度に長い時間が経過することを抑制することができ、この結果、色ムラを抑制することができるという効果がある。また、1回のメンテナンス動作のための停止時間Tmを所定の制限時間Tr以下に制限しておけば、この効果を更に高めることが可能である。なお、マルチパス数Nが2の場合には、閾値Miを1に設定し得るので、1回の主走査パス毎にメンテナンス動作を実行することも許容される。しかし、この場合にも、1回のメンテナンス動作のための停止時間Tmが所定の制限時間Tr以下になるように設定されていれば、個々の走査線上において、或るドットの記録タイミングと他のドットの記録タイミングとの間に過度に長い時間が経過することを抑制することができる。但し、閾値Miとしては、マルチパス数Nの値に拘わらず、2以上の値に設定することが好ましい。こうすれば、メンテナンス動作の時間間隔を更に広く確保することができるので、色ムラを抑制するという効果を更に高めることが可能である。また、閾値Miは、1枚の媒体上における印刷動作で実行される主走査パスの回数よりも小さな値に設定することが好ましい。こうすれば、1枚の媒体上における印刷動作の間に少なくとも1回のメンテナンス動作を実行することが可能である。
【0044】
以上説明したメンテナンス処理の管理手順によれば、1つのメンテナンス動作を行なってから次のメンテナンス動作を行なうまでに、必ず、Mi(≧N−1)回の主走査パスの間隔が開けられる。このため、例えば、上述したノズル検査のように、複数回に分割されて実行されるメンテナンスの要求が発生したとしても、1つのメンテナンス動作を行った後に、次のメンテナンス動作を行うまでに、必ずMi回の主走査パスの間隔が開けられることになり、複数のメンテナンス動作が分散して実行される。
【0045】
図9は、実施例として複数のメンテナンス動作が分散される場合について示す説明図である。
図10は、比較例として複数のメンテナンス動作が分散されない場合について示す説明図である。
図9の実施例は、マルチパス数Nが3のマルチパス印刷で、Pn=1の主走査パスの実行中に分割数Qが4のメンテナンス処理(4回に分割して実行されるメンテナンス処理)が要求され、間隔Miが2(=N−1)に設定された場合を示している。
図10の比較例は、実施例と同様に、マルチパス数Nが3のマルチパス印刷で、Pn=1の主走査パスの実行中に分割数Qが4のメンテナンス処理が要求され、間隔Miの設定がなく、すなわち、間隔Miが0で、4回のメンテナンス動作が主走査パスと主走査パスの間ごとに1回ずつ実行される場合を示している。なお、各メンテナンス動作における停止時間Tmは説明を容易にするため全て同じ時間として説明する。
【0046】
比較例(
図10)では、Pn=1〜4の各主走査パスの終了後に、Q(=4)回のメンテナンス動作が順次実行される。この場合、ラスター番号7〜15のラスターラインでは、N(=3)回の主走査パスの間に、(N−1)・Tm(=2・Tm)の停止時間が累積される。このため、これらのラスターラインでは、課題で説明したように、N回の主走査パスのそれぞれで形成されるドット間で形成状態に違いが発生することになり、これによって主走査方向に沿った色むらが目立ち易くなる。また、(N−1)回の停止時間が累積されるラスターラインが副走査方向に沿って多数本にわたって連続することになり、副走査方向に沿った色むらも目立ち易くなる。従って、この比較例の場合には、色むらの発生箇所が集中して目立ち易くなり、画質の低下が顕在化する可能性がある。
【0047】
これに対して、実施例(
図9)では、Pn=1,3,5,7の各主走査パスの終了後に、メンテナンス動作が間隔Mi(=N−1=2)で分散して実行される。この場合、ラスター番号7〜26のラスターライン上では、N(=3)回の主走査パスの間に、それぞれ1回の停止時間Tmが発生するのみであり、停止時間が累積されることはない。このため、これらのラスターラインでは、メンテナンス処理が実行される直前の主走査パスにおけるドットの形成状態と直後の主走査パスにおけるドットとの間で形成状態にかなりの差異が発生するが、メンテナンス動作が行われずに連続して実行される主走査パス間ではドットの形成状態の差異が小さくなるので、色むらの発生が分散することになる。この結果、比較例に比べて色むらの顕在化を抑制することにより、画質の低下を抑制することが可能である。なお、上記の実施形態では1枚の媒体上における印刷動作を例として説明したが、1つの印刷ジョブにおける印刷動作に本発明を適用してもよい。例えば、媒体がロール状であった場合、1つの印刷ジョブにおける印刷動作に本発明が適用される。
【0048】
B.変形例:
(1)上記実施形態では、メンテナンス動作のための印刷停止時間Tmの制限時間Trを、印刷時間への影響を考慮して設定された時間として説明した。これに対して制限時間Trを以下のように設定された時間とするようにしてもよい。
【0049】
課題において説明したように、そのメンテナンス動作で中断した時間(停止時間Tm)により、メンテナンス動作の直前の主走査パスで形成されたドットと、メンテナンス動作の直後の主走査パスにより形成されたドットとの間での形成状態に違いが発生し、これに起因した色むらが顕在化して画質が低下する、という問題がある。そこで、制限時間Trを、中断しても画質の低下が許容される範囲に収まる時間を許容時間に基づいて設定すればよい。このようにすれば、メンテナンス動作の直前の主走査パスで形成されたドットと、メンテナンス動作の直後の主走査パスにより形成されたドットとの間での形成状態の違いを抑制し、これに起因した色むらの顕在化を抑制して、画質の低下を抑制することができる。なお、許容時間は、印刷動作が中断しても画質の低下が許容される範囲に収まる時間を、あらかじめ確認することによって求められる。また、許容時間は、ユーザーの入力に基づいて設定されてもよい。
【0050】
(2)上記実施形態では、マルチパス数がNの印刷を行なう印刷装置として説明した。これに対して、マルチパス印刷を行なう印刷装置には、マルチパス数がN
1の第1のモードと、マルチパス数がN
2(N
2はN
1よりも大きい整数)の第2のモードと、備えて、第1のモードあるいは第2のモードのいずれかに切り替えて印刷を行なうことが可能な印刷装置がある。このような印刷装置の場合には、以下のようにしてもよい。
【0051】
マルチパス数がN
1の第1のモードにおけるメンテナンス動作の間隔を(N
1−1)以上の主走査パス数の間隔Mi
1とし、マルチパス数がN
2の第2のモードにおけるメンテナンス動作の間隔Mi
2を(N
2−1)以上とし、かつ、2つのモードにおける間隔Mi
1,Mi
2を互いに異なる値に設定するようにしてもよい。この場合、第1のモードおよび第2のモードのそれぞれにおいて適切な間隔でメンテナンス動作を分散して実行することができる。
【0052】
また、第1のモードにおけるメンテナンス動作の間隔Mi
1を第2のモードにおけるメンテナンス動作の間隔Mi
2と同じ間隔に設定するようにしてもよい。このようにすれば、モードに関係なく印刷途中における一定の間隔でメンテナンス動作を分散して実行することができ、処理の簡易化を図ることができる。
【0053】
また、2つのモードではなく、3つ以上の異なるマルチパス数のモードを備える印刷装置において、それぞれのモードで適切なメンテナンス動作の間隔を設定して、それぞれメンテナンス動作を分散して実行するようにしてもよく、モードに関係なく最も大きなマルチパス数のモードの間隔で、それぞれのモードにおけるメンテナンス動作を分散して実行するようにしてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態では、印刷途中において、メンテナンス処理として、ノズル検査、フラッシング、および、ワイピングの3つが実行可能な印刷装置について説明した。これに対して、フラッシングおよびワイピングの2つが実行可能な印刷装置や、ノズル検査およびフラッシングの2つが実行可能な印刷装置、フラッシングのみが実行可能な印刷装置など、メンテナンスとして、ノズル検査、フラッシング、および、ワイピングのうちの少なくとも一つが実行可能な印刷装置に適用可能である。
【0055】
(4)上記実施形態では、印刷ヘッドが主走査方向に移動するシリアル方式の印刷装置について説明したが、本発明は、印刷ヘッドが停止した状態で、主走査方向に沿った媒体の幅の全体(すなわち、主走査線の全長)にわたってドット記録を実行可能な印刷装置にも適用可能である。この場合には、印刷ヘッド(又は媒体)の主走査方向の移動(主走査)は行われないが、媒体(又は印刷ヘッド)の副走査方向の移動(副走査)は実行することが好ましい。また、この場合にも、マルチパス記録は上記実施形態とほぼ同様に実行可能である。
【0056】
印刷ヘッドや媒体の主走査方向の移動を行わない装置と行う装置とが存在するが、これらの両方の装置のいずれの場合にも、主走査線上で行われるドット記録を「主走査方向記録動作」と呼ぶことができる。すなわち、印刷ヘッドの主走査を行わない装置では、「主走査方向記録動作」は、印刷ヘッドが媒体に対して停止した状態で各主走査線上のドット記録を実行する動作である。一方、印刷ヘッドの主走査を行う装置では、「主走査方向記録動作」は、印刷ヘッドと媒体が主走査方向に相対的に移動しつつ各主走査線上のドット記録を実行する動作である。これは主走査パスに相当する。主走査方向記録動作とは、換言すると、媒体の主走査方向に沿って液滴を吐出することによってドットを記録する主走査方向記録動作である。なお、前述したマルチパス記録とは、換言すると、主走査方向に沿う1つの主走査線に位置するドットの記録をN回(Nは2以上の整数)の主走査方向記録動作で完了することである。
【0057】
(5)上記実施形態では、使用するインクについて特に限定されておらず種々のインクを使用する印刷装置に適用可能である。例えば、樹脂を含むインク(樹脂系インク)を使用する印刷装置において効果的である。例えば、低温で硬化する水性バインダー(特殊ポリマー)を含むレジンインクのような樹脂系インクは、低温(通常、40℃〜60℃程度)で硬化して、媒体上に樹脂被膜が形成されることにより、インクが媒体に定着する構造を利用するものであり、印刷ヘッドのノズル内で硬化して詰まりやすい。このため、樹脂系インクを使用する印刷装置では、印刷の途中においてもメンテナンス処理を実行することが、印刷ヘッドのノズルの目詰まりを抑制して画質の低下を抑制するために有効な手段である。なお、樹脂系インクに特に限定はなく、種々の樹脂系インクを使用する印刷装置に適用可能である。
【0058】
(6)上記実施形態では、ラスターライン(主走査線)上におけるドットの形成をN回(Nは2以上の整数)の主走査パスで完了するマルチパス記録を行う印刷装置として説明した。このマルチパス記録とともに、N回の主走査パスでドットの形成が完了するラスターラインの間に、ドットの形成が行われていないラスターラインが挟まれるような印刷方法であるインターレース記録を行う印刷装置にも適用可能である。
【0059】
(7)上述した実施形態では、インクを印刷用紙上に吐出する印刷装置について説明したが、本発明は、液滴を媒体上に吐出してドットを記録する種々の装置に適用可能である。このような装置は、液体噴射装置、液滴吐出装置などと呼称される。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。
【0060】
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。