(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属箔の少なくとも片面に活物質層を有するとともに、前記活物質層を有する面において前記金属箔が露出する未塗工部を有する電極が、前記未塗工部同士が重なる状態で積層して電極収納部に収納されており、
前記電極収納部に収納された前記電極のうち最上部の電極を吸着装置で吸着し、
前記吸着装置を上昇させた直後に、前記吸着装置に吸着された前記電極の前記未塗工部の一辺から突出するタブに対し、前記電極収納部で前記未塗工部よりも上方からエアを吹き付けることを特徴とする電極の取得方法。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug in Hybrid Vehicle)などの車両には、原動機となる電動機への供給電力を蓄える蓄電装置としてリチウムイオン電池などの二次電池が搭載されている。二次電池は、例えば両面に活物質層が形成された矩形状及びシート状の正極電極と負極電極がセパレータを間に挟んだ状態で積層された電極組立体を備える。
【0003】
二次電池の製造時には、例えば、各収納部に収納された正極電極、セパレータ、及び負極電極を、搬送装置によって積層テーブルまで搬送し、積層テーブルで積層して電極組立体が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1のシート積層装置は、正極電極や負極電極を載置する載置部と、載置部に載置された正極電極や負極電極を吸着しつつ搬送する搬送装置と、搬送装置から搬送された正極電極や負極電極が載置される積層部と、を備える。
【0005】
ところで、正極電極や負極電極は、薄いシート状であることから、吸着装置で吸着した際、静電気等により、その吸着した正極電極や負極電極に2枚目の正極電極や負極電極が付着する2枚取りが発生してしまう。このような2枚取りを抑制する装置として、例えば、特許文献2が挙げられる。
【0006】
図9に示すように、特許文献2に開示のウェハ取得装置は、複数のウェハ80を重ねて載せる置き台81と、置き台81に重ねて載せた複数のウェハ80のうち1枚目(最上部)のウェハ80aを保持する吸着パッド82を備える。また、ウェハ取得装置は、置き台81上のウェハ80の側方に配置された離隔用エアノズル83と、ウェハ80を昇降させる昇降機構84と、置き台81上のウェハ80の中央より上方に配置された撓み用エアノズル85とを備えている。
【0007】
そして、ウェハ取得装置では、吸着パッド82が1枚目のウェハ80aを吸着した後、1枚目のウェハ80aと2枚目のウェハ80との間に、離隔用エアノズル83からエアを吹き込む。また、1枚目のウェハ80aの表面に、撓み用エアノズル85からエアを吹き付ける。
【0008】
すると、1枚目のウェハ80aの中央が下方に湾曲するとともに周囲が上方に持ち上がり、1枚目のウェハ80aの縁側部分は2枚目のウェハ80から離れることになる。そして、1枚目のウェハ80aと2枚目のウェハ80との間に、離隔用エアノズル83からのエアが容易に吹き込まれ、1枚目のウェハ80aと2枚目のウェハ80とが離隔され、2枚取りが抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献2のウェハ取得装置を、例えば、負極電極の積層装置に適用すると、負極電極が吸着パッド82に吸着された後、負極電極の1枚目と2枚目の間に、離隔用エアノズル83からエアが吹き込まれる。このとき、2枚目の負極電極が、吹き込まれたエアに乗って活物質層の面に沿う方向へ移動してしまい、1枚目と2枚目の負極電極で活物質層同士が擦れてしまい、活物質の欠落が生じる虞がある。また、1枚目の負極電極から離隔された2枚目の負極電極が落下する際も、離隔用エアノズル83から吹き込まれたエアに乗って活物質層の面に沿う方向へ移動してしまう。このため、落下した2枚目の負極電極が、その収納部に接触してしまい、活物質の欠落が生じる虞がある。また、撓み用エアノズル85から1枚目の負極電極の中央、すなわち、活物質層に向けてエアが吹き付けられる。このため、エアにより活物質層が湾曲や屈曲してしまい、それに伴い活物質の欠落が生じる虞がある。これは、特許文献2のウェハ取得装置を、正極電極の積層装置に適用した場合にも言える。
【0011】
本発明は、活物質の欠落を抑制しつつ2枚取りを抑制することができる電極積層装置及び電極の取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するための電極積層装置は、電極を積層した状態で収納した電極収納部と、前記電極収納部に収納された電極のうち最上部の電極を吸着する吸着装置と、前記吸着装置を昇降させる昇降装置と、異なる極の電極が、両者の間にセパレータが介在する状態で積層されて積層体が形成される積層テーブルと、を有し、前記電極は、金属箔の少なくとも片面に活物質層を有するとともに、前記活物質層を有する面において前記金属箔が露出する未塗工部を有し、前記電極収納部では、前記未塗工部同士が重なる状態で前記電極が積層されており、前記電極収納部の電極を前記吸着装置で吸着し、前記昇降装置を上昇させて前記電極を吸着した前記吸着装置を上昇させるとともに、前記積層テーブル上で前記昇降装置を下降させて前記電極を前記積層体に積層する電極積層装置であって、前記吸着装置を上昇させた直後に、前記吸着装置に吸着された前記電極の前記未塗工部に対し、前記電極収納部で前記未塗工部よりも上方からエアを吹き付け可能なエア噴射装置を備え
、前記未塗工部は、該未塗工部の一辺から突出するタブを含み、前記エア噴射装置は、前記タブにエアを吹き付けることを要旨とする。
【0013】
これによれば、電極収納部にて、吸着装置に吸着された電極の未塗工部に対し、エア噴射装置からエアが吹き付けられると、エアによって未塗工部が撓み、1枚目の電極の未塗工部から2枚目の電極の未塗工部を離隔させ、吸着装置による電極の2枚取りを抑制することができる。
【0014】
エアは、未塗工部の上方から吹き付けられる。このため、吹き付けられたエアによって、2枚目の電極が、電極の面に沿う方向へ移動することが抑制され、落下した2枚目の電極が電極収納部内で積層ずれすることが抑制される。また、エアは、未塗工部に吹き付けられる。このため、エアによって活物質層が撓んだり、屈曲することが抑制され、活物質層から活物質が欠落することが抑制される。
【0015】
また
、タブは、未塗工部の中でも幅狭に形成された部位である。このため、タブにエアを吹き付けると、タブを容易に撓ませることができ、2枚目のタブを1枚目のタブから簡単に離隔させやすくなる。その結果として、2枚目の電極を1枚目の電極から簡単に離隔させることができる。
【0016】
また、電極積層装置について、前記未塗工部の一辺から前記タブが突出する方向を該タブの突出方向とすると、前記エア噴射装置は、前記突出方向に沿った前記タブの先端部にエアを吹き付けることが好ましい。
【0017】
これによれば、タブの先端部は、基端部に比べて撓みやすく、2枚目のタブを1枚目のタブからより一層簡単に離隔させやすくなる。
また、電極積層装置について、前記エア噴射装置は、前記昇降装置の下降方向に沿ってエアを噴射してもよい。
【0018】
これによれば、エア噴射装置から噴射されたエアは、未塗工部の面に対し直交するように吹き付けられ、エアが活物質層に吹き付けられることを抑制できる。
上記問題点を解決するための電極の取得方法は、金属箔の少なくとも片面に活物質層を有するとともに、前記活物質層を有する面において前記金属箔が露出する未塗工部を有する電極が、前記未塗工部同士が重なる状態で積層して電極収納部に収納されており、前記電極収納部に収納された前記電極のうち最上部の電極を吸着装置で吸着し、前記吸着装置を上昇させた直後に、前記吸着装置に吸着された前記電極の前記未塗工部
の一辺から突出するタブに対し、前記電極収納部で前記未塗工部よりも上方からエアを吹き付けることを要旨とする。
【0019】
これによれば、電極収納部にて、吸着装置に吸着された電極の未塗工部に対し、上方からエアを吹き付けると、エアによって未塗工部が撓み、1枚目の電極の未塗工部から2枚目の電極の未塗工部を離隔させ、吸着装置による電極の2枚取りを抑制することができる。
【0020】
エアは、未塗工部の上方から吹き付けられる。このため、吹き付けられたエアによって、2枚目の電極が、電極の面に沿う方向へ移動することが抑制され、落下した2枚目の電極が電極収納部内で積層ずれすることが抑制される。また、エアは、未塗工部に吹き付けられる。このため、エアによって活物質層が撓んだり、屈曲することが抑制され、活物質層から活物質が欠落することが抑制される。
また、タブは、未塗工部の中でも幅狭に形成された部位である。このため、タブにエアを吹き付けると、タブを容易に撓ませることができ、2枚目のタブを1枚目のタブから簡単に離隔させやすくなる。その結果として、2枚目の電極を1枚目の電極から簡単に離隔させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、活物質の欠落を抑制しつつ2枚取りを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、電極積層装置及び電極の取得方法を具体化した一実施形態を
図1〜
図7にしたがって説明する。
図1に示すように、蓄電装置としての二次電池10は、ケース本体11a及び蓋11bで構成されたケース11を備えるとともに、このケース11内に収容された電極組立体12を備える。なお、ケース11内には図示しないが電解液も収容されている。また、本実施形態の二次電池10は、その外観が角型をなす角型電池であり、リチウムイオン電池である。
【0024】
図2に示すように、電極組立体12は、電極としての複数の正極電極14と、電極としての複数の負極電極15とが、両者の間にセパレータ16が介在する状態で交互に積層された積層型の構成である。正極電極14は、矩形状の正極用金属箔(本実施形態ではアルミニウム箔)14aと、その正極用金属箔14aの両面に設けられた矩形状の正極用の活物質層14bと、を有する。正極用金属箔14aの両面の活物質層14bは、同じ平面形状及び同じ厚みであり、かつ正極用金属箔14aを挟んで互いに対向している。正極電極14は、その第1の辺14dに沿って、活物質層14bが設けられず、正極用金属箔14aが露出した正極未塗工部14eを有する。そして、正極電極14において、正極未塗工部14eの第1の辺14dの一部には、正極用の集電タブ14fが突出する状態に設けられている。なお、正極用の集電タブ14fは、正極未塗工部14eの第1の辺14dからの突出方向に沿って一定幅で延びている。
【0025】
負極電極15は、矩形状の負極用金属箔(本実施形態では銅箔)15aと、その負極用金属箔15aの両面に設けられた矩形状の負極用の活物質層15bと、を有する。負極用金属箔15aの両面の活物質層15bは、同じ平面形状及び同じ厚みである。負極電極15は、その第1の辺15dに沿って、活物質層15bが設けられず、負極用金属箔15aが露出した負極未塗工部15eを有する。そして、負極電極15において、負極未塗工部15eの第1の辺15dの一部には、負極用の集電タブ15fが突出する状態に設けられている。なお、負極用の集電タブ15fは、負極未塗工部15eの第1の辺15dからの突出方向に沿って一定幅で延びている。
【0026】
正極電極14は、集電タブ14fの一部が突出する状態で袋状のセパレータ16に包まれている。セパレータ16は、矩形状のセパレータシート16aを長手方向の中央から折り曲げ、セパレータシート16aの対向する長側縁同士を溶着することにより、袋状となっている。よって、セパレータ16は、対向する二側縁に沿って溶着部16cを有する。
【0027】
図1に示すように、正極電極14の集電タブ14fはタブ群18pとして正極用の導電部材19に溶接で接続され、負極電極15の集電タブ15fはタブ群18nとして負極用の導電部材20に溶接で接続されている。正極用の導電部材19は、蓋11bを貫通する正極端子21と一体に形成されている。負極用の導電部材20は、蓋11bを貫通する負極端子22と一体に形成されている。なお、正極端子21及び負極端子22は、ケース11(ケース本体11a及び蓋11b)と電気的に絶縁されている。
【0028】
次に、セパレータ16で包まれた正極電極14と、負極電極15を積層する電極積層装置30について説明する。
図3に示すように、電極積層装置30は、複数枚の正極電極14を、集電タブ14fが同じ方向に揃った状態で積層して収納する箱状の正極収納部31を電極収納部として備える。また、電極積層装置30は、複数枚の負極電極15を、集電タブ15fが同じ方向に揃った状態で積層して収納する箱状の負極収納部32を電極収納部として備える。電極積層装置30は、セパレータ16で包まれた正極電極14、及び負極電極15が載置される積層テーブル33を備え、この積層テーブル33は正極収納部31及び負極収納部32の間に配置されている。また、積層テーブル33は、矩形状であり、支持台35上に支持されている。
【0029】
なお、積層テーブル33では、正極電極14及び負極電極15は、正極の集電タブ14fが積層方向に沿って列状に配置され、且つ正極の集電タブ14fと重ならない位置にて負極の集電タブ15fが積層方向に沿って列状に配置されるように積層される。そして、積層テーブル33では、セパレータ16に収納された正極電極14と、負極電極15とが交互に積層されて積層体23が形成されていく。
【0030】
正極収納部31と、負極収納部32と、積層テーブル33は、同一直線上に並ぶ状態に配置されている。電極積層装置30は、正極収納部31、積層テーブル33、及び負極収納部32上に配置されたガイドレール34を備える。電極積層装置30は、ガイドレール34に沿って移動可能な正極移送装置40を備える。正極移送装置40は、セパレータ16と共に正極電極14を吸着する正極用吸着装置41を備える。
【0031】
正極用吸着装置41は、矩形状の基台42aと、基台42aの四隅に配置された正極用吸着パット42と、各正極用吸着パット42に吸引力を発生させる正極用減圧ポンプ43と、を有する。正極移送装置40は、正極用吸着装置41を昇降させる昇降装置としての正極用シリンダ44を備える。正極用シリンダ44の正極用ロッド45の一端は正極用減圧ポンプ43に連結され、正極用ロッド45の他端には図示しないピストンが連結されている。ピストンは正極用シリンダ44のシリンダチューブ46内で移動可能に収容され、ピストンの移動に伴い正極用ロッド45がシリンダチューブ46に対し出没する。そして、正極用シリンダ44へのエアの給排を制御することにより、シリンダチューブ46に対する正極用ロッド45の出没が制御されるとともに、正極用吸着パット42が昇降する。
【0032】
電極積層装置30は、ガイドレール34に沿って移動可能な負極移送装置50を備える。負極移送装置50は、負極電極15を吸着する負極用吸着装置51を備える。負極用吸着装置51は、矩形状の基台52aと、その基台52aの四隅に配置された負極用吸着パット52と、各負極用吸着パット52に吸引力を発生させる負極用減圧ポンプ53と、を有する。負極移送装置50は、負極用吸着装置51を昇降させる昇降装置としての負極用シリンダ54を備える。負極用シリンダ54の負極用ロッド55の一端は負極用減圧ポンプ53に連結され、負極用ロッド55の他端には図示しないピストンが連結されている。ピストンは負極用シリンダ54のシリンダチューブ56内で移動可能に収容され、ピストンの移動に伴い負極用ロッド55がシリンダチューブ56に対し出没する。そして、負極用シリンダ54へのエアの給排を制御することにより、シリンダチューブ56に対する負極用ロッド55の出没が制御されるとともに、負極用吸着パット52が昇降する。
【0033】
電極積層装置30は、正極用シリンダ44及び負極用シリンダ54の駆動を制御する制御装置60を備え、正極用シリンダ44及び負極用シリンダ54は、制御装置60に信号接続されている。
【0034】
また、電極積層装置30は、正極収納部31の上方に配置された正極用エア噴射装置61を備える。正極用エア噴射装置61は、正極収納部31に収納された正極電極14の集電タブ14fの上方に配置されている。より詳しくは、正極用エア噴射装置61は、集電タブ14fの突出方向の先端部と対向する位置に配置されている。また、正極用エア噴射装置61は、正極用吸着パット42の下降方向に沿ってエアが噴射できるように、正極用エア噴射装置61の軸方向が正極用吸着パット42の昇降方向に延びるように配置されている。
【0035】
同様に、電極積層装置30は、負極収納部32の上方に配置された負極用エア噴射装置62を備える。負極用エア噴射装置62は、負極収納部32に収納された負極電極15の集電タブ15fの上方に配置されている。より詳しくは、負極用エア噴射装置62は、集電タブ15fの突出方向の先端部と対向する位置に配置されている。また、負極用エア噴射装置62は、負極用吸着パット52の下降方向に沿ってエアが噴射できるように、負極用エア噴射装置62の軸方向が負極用吸着パット52の昇降方向に延びるように配置されている。
【0036】
制御装置60には、正極用エア噴射装置61及び負極用エア噴射装置62が信号接続されている。制御装置60の記憶部(図示せず)には、正極用エア噴射装置61及び負極用エア噴射装置62の制御プログラムが記憶されている。制御プログラムには、正極用エア噴射装置61及び負極用エア噴射装置62からエアを噴射させるタイミングが設定されている。
【0037】
制御装置60が、正極用エア噴射装置61にエアを噴射させるタイミングは、セパレータ16に収納された正極電極14を吸着した正極用吸着パット42を正極用シリンダ44により上昇開始させた直後である。そして、制御装置60は、正極用吸着パット42を上昇させるために正極用シリンダ44を上昇させる度に、正極用エア噴射装置61からエアを噴射させる。また、制御装置60は、正極用エア噴射装置61にエアを一定時間噴射したら、エアの噴射を停止させる。エアを噴射し続ける時間は、2枚重なった集電タブ14fを離隔させるのに要する時間であり、実験等により予め決定されている。
【0038】
同様に、制御装置60が、負極用エア噴射装置62にエアを噴射させるタイミングは、負極電極15を吸着した負極用吸着パット52を負極用シリンダ54により上昇開始させた直後である。また、制御装置60は、負極用吸着パット52を上昇させるために負極用シリンダ54を上昇させる度に負極用エア噴射装置62からエアを噴射させる。また、制御装置60は、負極用エア噴射装置62にエアを一定時間噴射したら、エアの噴射を停止させる。エアを噴射し続ける時間は、2枚重なった集電タブ15fを離隔させるのに要する時間であり、実験等により予め決定されている。
【0039】
次に、電極積層装置30の作用を正極電極14及び負極電極15の取得方法とともに記載する。
まず、負極移送装置50を負極収納部32上に移動させ、負極用ロッド55をシリンダチューブ56から突出させて負極用吸着パット52を負極収納部32内で下降させる。そして、負極用減圧ポンプ53を駆動させて負極用吸着パット52に吸引力を発生させ、負極用吸着パット52により、負極収納部32の最上層の(1枚目の)負極電極15を吸着させる。このとき、4本の負極用吸着パット52は、負極電極15の活物質層15bに吸着する。
【0040】
次に、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、負極用ロッド55をシリンダチューブ56に没入させて負極用吸着パット52を上昇させる。このとき、1枚目の負極電極15と2枚目の負極電極15が付着したとする。
【0041】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、負極用吸着パット52の上昇開始直後、負極用エア噴射装置62を駆動させて、負極電極15の集電タブ15fの先端部に向けてエアを吹き付ける。すると、集電タブ15fの先端部が、2枚目の負極電極15の集電タブ15fに向けて撓み、1枚の集電タブ15fが2枚目の集電タブ15fを押し下げる。その結果、2枚目の集電タブ15fが、1枚目の集電タブ15fから離隔し、その離隔した隙間から1枚目と2枚目の負極電極15の間に空気が入り込む。
【0042】
その後、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、負極用吸着パット52が上昇するのに合わせて1枚目の負極電極15が上昇し、2枚目の負極電極15が重力により落下し、負極電極15の2枚取りが回避される。
【0043】
そして、負極電極15を負極用吸着パット52で吸着した状態で、負極移送装置50をガイドレール34に沿って積層テーブル33上まで移動させる。そして、負極用ロッド55をシリンダチューブ56から突出させて負極用吸着パット52を積層テーブル33に向けて下降させる。負極用減圧ポンプ53を停止させ、負極用吸着パット52から負極電極15を落下させるとともに、負極用シリンダ54によって負極用吸着パット52を上昇させる。そして、負極移送装置50を積層テーブル33上から移動させる。
【0044】
次に、負極電極15と同様に、セパレータ16に収納された正極電極14を積層テーブル33に積層する。
まず、正極移送装置40を正極収納部31上に移動させ、正極用ロッド45をシリンダチューブ46から突出させて正極用吸着パット42を正極収納部31内に移動させる。そして、正極用減圧ポンプ43を駆動させて正極用吸着パット42に吸引力を発生させ、正極用吸着パット42により、正極収納部31の最上層の正極電極14を吸着させる。
【0045】
このとき、
図7(a)に示すように、4本の正極用吸着パット42は、正極電極14を包んだセパレータ16に吸着する。次に、正極用ロッド45をシリンダチューブ46に没入させて正極用吸着パット42を上昇させる。正極用吸着パット42を上昇させた直後、正極用エア噴射装置61を駆動させて、正極電極14の集電タブ14fの先端部に向けてエアを噴射させる。
【0046】
すると、
図7(b)に示すように、集電タブ14fの先端部が、2枚目の正極電極14の集電タブ14fに向けて撓み、1枚目の集電タブ14fが2枚目の集電タブ14fを押し下げる。その結果、2枚目の集電タブ14fが、1枚目の集電タブ14fから離隔し、1枚目と2枚目のセパレータ16の間に空気が入り込む。
【0047】
その後、
図7(c)に示すように、正極用吸着パット42とともに1枚目の正極電極14が上昇すると共に、2枚目の正極電極14が重力により落下し、セパレータ16を包んだ正極電極14の2枚取りが回避される。
【0048】
そして、セパレータ16に包まれた正極電極14を正極用吸着パット42で吸着した状態で、正極移送装置40をガイドレール34に沿って積層テーブル33上まで移動させる。そして、正極用ロッド45をシリンダチューブ46から突出させて正極用吸着パット42を積層テーブル33に向けて下降させる。そして、正極用減圧ポンプ43を停止させ、正極用吸着パット42から正極電極14を落下させ、積層体23とするとともに、正極用シリンダ44によって正極用吸着パット42を上昇させる。そして、正極移送装置40を積層テーブル33上から移動させる。
【0049】
その後、負極電極15及びセパレータ16に包まれた正極電極14の積層が交互に繰り返し行われ、正極電極14及び負極電極15が所定枚数積層されて積層工程の全てが完了すると、電極組立体12が製造される。
【0050】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電極積層装置30は、正極収納部31に正極用エア噴射装置61を備え、負極収納部32に負極用エア噴射装置62を備える。そして、各エア噴射装置61,62から集電タブ14f,15fに向けてエアを吹き付けることができる。このため、1枚目と2枚目の集電タブ14f,15fを離隔させ、正極電極14又は負極電極15の2枚取りを抑制することができる。
【0051】
エアは、集電タブ14f,15fの上方から吹き付けられる。このため、吹き付けられたエアによって、2枚目の正極電極14又は負極電極15が、各活物質層14b,15bの面に沿う方向へ移動することが抑制される。その結果、各活物質層14b,15bが擦れることが抑制され、活物質の欠落が抑制されるとともに、落下した2枚目の正極電極14又は負極電極15が、各収納部31,32で積層ずれすることが抑制される。よって、各収納部31,32で積層された正極電極14又は負極電極15を、ずらさずに各吸着装置41,51で吸着でき、積層テーブル33にて積層ずれを抑制して積層体23を作ることができる。
【0052】
また、エアは、集電タブ14f,15fに吹き付けられる。このため、エアによって各活物質層14b,15bから活物質が直接欠落したり、各活物質層14b,15bが撓んだり、屈曲したりすることが原因で、各活物質層14b,15bから活物質が欠落してしまうことが抑制される。
【0053】
(2)各エア噴射装置61,62は、各集電タブ14f,15fに向けてエアを吹き付ける。各集電タブ14f,15fは幅狭であることから、エアが吹き付けられると簡単に撓み、この撓みを利用して2枚目の正極電極14又は負極電極15を簡単に離隔させることができる。
【0054】
(3)各エア噴射装置61,62は、各集電タブ14f,15fの先端部に向けてエアを吹き付ける。各集電タブ14f,15fは先端側ほど、撓みやすいため、エアが吹き付けられると簡単に撓み、この撓みを利用して2枚目の正極電極14又は負極電極15を簡単に離隔させることができる。
【0055】
(4)各エア噴射装置61,62は、各吸着パット42,52を上昇させた直後に、エアを吹き付ける。このため、2枚目の正極電極14又は負極電極15が1枚目から離隔し、落下しても、その落下距離が僅かである。よって、2枚目の正極電極14又は負極電極15が落下する際にダメージを受けたり、積層ずれする虞が減る。
【0056】
(5)各エア噴射装置61,62は、その軸方向が、各吸着パット42,52の下降方向に沿うように配置されている。このため、各エア噴射装置61,62からは、エアが各吸着パット42,52の下降方向に沿って噴射される。よって、各集電タブ14f,15fの面に対し直交するようにエアを吹き付けることができ、エアが各活物質層14b,15bに吹き付けられることを抑制できる。
【0057】
(6)各吸着パット42,52の昇降は、各シリンダ44,54によって行われる。よって、各シリンダ44,54へのエアの給排を制御することにより、各吸着パット42,52が上昇したタイミングを把握でき、そのタイミングでエアを各集電タブ14f,15fに噴射できる。
【0058】
(7)各エア噴射装置61,62からは、各吸着パット42,52が正極電極14又は負極電極15を吸着する度にエアが噴射される。このため、各吸着パット42,52が正極電極14又は負極電極15を吸着する度に2枚取りの発生を抑制できる。よって、例えば、2枚取りが発生したときに初めてエアを吹き付ける場合と比べて、2枚取りの発生率を低減することができる。
【0059】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ エアは、各集電タブ14f,15fではなく、各未塗工部14e,15eに吹き付けてよい。
【0060】
○
図8に示すように、各正極用吸着パット42の下降方向に対し傾斜した方向に沿ってエアが噴射できるように、正極用エア噴射装置61の軸方向が正極用吸着パット42の昇降方向に傾斜するように配置されていてもよい。同様に、負極用吸着パット52の下降方向に対し傾斜した方向に沿ってエアが噴射できるように、負極用エア噴射装置62の軸方向が負極用吸着パット52の昇降方向に傾斜するように配置されていてもよい。
【0061】
○ エアは、各集電タブ14f,15fの先端部ではなく、突出方向の中央部や基端部に吹き付けてもよい。
○ 昇降装置は、シリンダ44,54ではなく、モータでロッドを駆動させるものでもよい。
【0062】
○ 実施形態では、正極電極14をセパレータ16で包み、正極収納部31には、セパレータ16で包まれた正極電極14を収納した。そして、正極用吸着パット42によって、セパレータ16と共に正極電極14を吸着したが、正極電極14は、セパレータ16に包まれていなくてもよく、正極電極14そのものを正極用吸着パット42で吸着して移送するようにしてもよい。この場合、セパレータ16は、別の移送装置によって吸着され、積層テーブル33に移送される。
【0063】
○ 実施形態では、正極電極14用に正極移送装置40と、正極用吸着装置41と、正極用シリンダ44を設け、負極電極15用に負極移送装置50と、負極用吸着装置51と、負極用シリンダ54を設けた。しかし、一つの移送装置と、一つの吸着装置と、一つのシリンダで、正極電極14と負極電極15を交互に移送するようにしてもよい。
【0064】
○ 実施形態では、正極収納部31と、負極収納部32と、積層テーブル33は同一直線上に並ぶ状態に配置されているが、ターンテーブル状に配置されていてもよい。
○ 蓄電装置は、二次電池10に限らず、例えば、電気二重層コンデンサ等の蓄電装置に具体化してもよい。
【0065】
○ 電極組立体12を構成する正極電極14、及び負極電極15の枚数は適宜変更してもよい。
○ 実施形態では、正極電極14は、正極用金属箔14aの両面に活物質層14bを有するとしたが、正極用金属箔14aの片面のみに活物質層14bを有していてもよい。同様に、負極電極15は、負極用金属箔15aの両面に活物質層15bを有するとしたが、負極用金属箔15aの片面のみに活物質層15bを有していてもよい。
【0066】
○ 二次電池10はリチウムイオン二次電池であったが、これに限られず、ニッケル水素等の他の二次電池であってもよい。要は、正極の活物質層14bと負極の活物質層15bとの間をイオンが移動するとともに電荷の授受を行うものであればよい。
【0067】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記エア噴射部は、前記昇降装置の下降方向に対し傾斜した方向に沿ってエアを噴射する。
【0068】
(ロ)前記昇降装置はシリンダである。