【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省研究開発委託「「モノのインターネット」時代の通信規格の開発・実証」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信制御部は、前記情報価値と前記送信コスト情報を統計処理することで、測定データの送信確率を算出すると共に、前記送信確率に従って測定データを前記管理装置に送信する請求項1又は2に記載のデータ収集管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
初めに、
図1を用いて一実施形態の概要について説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、この概要の記載はなんらの限定を意図するものではない。
【0017】
上述のように、端末から収集されたデータを管理するデータ収集管理システムにおいて、リソースの利用効率を向上させるデータ収集管理システムが望まれる。
【0018】
そこで、一例として
図1に示すデータ収集管理システムを提供する。
図1に示すデータ収集管理システムは、測定データを送信する端末1と、端末1が送信する測定データを受信し、管理する管理装置2と、を含む。管理装置2は、端末1が測定データを管理装置2に送信する際のコストを示す送信コスト情報を、端末1に通知する通知部901を備える。端末1は、測定データの情報としての価値を示す情報価値を算出する算出部902と、情報価値と、送信コスト情報と、に基づいて、測定データを管理装置2に送信するか否かを定める送信制御部903と、を備える。
【0019】
以上の構成及び機能により、
図1に示すデータ収集管理システムでは、システムのリソース量(例えば、端末1と管理装置2の間のネットワーク帯域や、管理装置2の計算資源)は、重要度の高いデータから優先的に消費される。なぜならば、端末1は、送信しようとする測定データの価値(情報価値)を算出し、当該測定データの価値が低い場合や、当該測定データの送信に要するコストが高い場合には、測定データを送信しないためである。その結果、管理装置2が管理する測定データを利用する各種分析等の精度は低下させずに、リソースの利用効率を向上させることができる。
【0020】
以下に具体的な実施の形態について、図面を参照してさらに詳しく説明する。
【0021】
[第1の実施形態]
第1の実施形態について、図面を用いてより詳細に説明する。
【0022】
図2は、本実施形態に係るデータ収集管理システムの構成の一例を示す図である。
図2を参照すると、データ収集管理システムは、複数の端末10−1〜10−n(nは正の整数)と、サーバ20と、センサ等を含んで構成される複数の測定装置30−1〜30−m(mは正の整数)と、を含んで構成される。なお、以降の説明において、端末10−1〜10−nを区別する特段の理由がない場合には、「端末10」と表記する。同様に、測定装置30−1〜30−mを区別する特段の理由がない場合には、「測定装置30」と表記する。
【0023】
測定装置30は、内蔵するセンサから得た測定データを、端末10の要求に応じて端末10に送信する。端末10とサーバ20は、ネットワーク40を介して接続される。端末10は、サーバ20に測定データを出力する。サーバ20は、各端末10が送信する測定データを受信し、受信した測定データを管理する。また、サーバ20は、端末10に制御信号を出力する。なお、
図2に示す構成は例示であって、システムの構成を限定する趣旨ではない。例えば、測定装置30と端末10とが、同じ筐体に格納されていてもよい。
【0024】
図3は、端末10の内部構成の一例を示す図である。
図3を参照すると、端末10は、データ収集インターフェイス101と、データ構造情報管理部102と、データ収集部103と、データ管理部104と、制御信号管理部105と、情報価値推定部106と、データ送信制御部107と、通信部108と、を含んで構成される。
【0025】
データ収集インターフェイス101は、測定装置30から測定データを収集する、測定装置30の制御インターフェイスである。データ収集インターフェイス101が収集する測定データには、端末10の位置、端末10が移動する際の加速度、端末10の周辺温度や湿度、等に代表される各種センサにより収集されるデータである。なお、データ収集インターフェイス101が収集する測定データのフォーマットは、各種センサが出力するデータをデジタル信号に変換したバイナリデータであってもよいし、テキストデータであってもよい。
【0026】
データ収集部103は、データ収集インターフェイス101を用いて測定データを収集する。その際、データ収集部103は、データ構造情報管理部102が記憶する情報を参照しつつ、測定データの取り扱いを決定する。より具体的には、データ収集部103は、測定データが後述する判断データであった場合には、当該測定データ(判断データ)をデータ管理部104及び情報価値推定部106に出力する。一方、測定データでなければ(後述する従属データ)、データ収集部103は、当該測定データを情報価値推定部106に出力せず、データ管理部104に出力する。このように、データ収集部103は、データ構造情報管理部102が記憶する情報に応じて決定した取り扱いに従い、測定データをデータ管理部104及び情報価値推定部106に出力する。
【0027】
データ管理部104は、測定データを記憶し、管理する。
【0028】
データ構造情報管理部102は、データの情報価値判断という観点での属性分類情報を記憶する。データ構造情報管理部102が記憶する属性分類情報は、予めシステムの管理者が設定する。属性分類情報の詳細は後述する。
【0029】
制御信号管理部105は、サーバ20が送信する制御信号を管理する。制御信号管理部105は、サーバ20が送信する制御信号から計算した結果を、端末10に向けた送信コストとしデータ送信制御部107に出力する。サーバ20が送信する制御信号及び送信コストの詳細は後述する。
【0030】
情報価値推定部106は、過去の測定データに基づいて、データ収集部103が収集する測定データの価値を推定することで、測定データに対する情報価値を算出する。情報価値推定部106が算出する情報価値は、測定データをサーバ20に送信するか否かの判断に使用される価値指標パラメータである。情報価値推定部106は、算出した情報価値をデータ送信制御部107に出力する。
【0031】
データ送信制御部107は、情報価値推定部106が算出した情報価値と、制御信号管理部105が出力する送信コストと、に基づきサーバ20に測定データを送信するか否かを決定する。測定データをサーバ20に送信する場合には、データ送信制御部107は、データ管理部104から測定データを取得し、通信部108を介してサーバ20に送信する。
【0032】
図4は、サーバ20の内部構成の一例を示す図である。
図4を参照すると、サーバ20は、通信部201と、制御信号管理部202と、データ受信部203と、データ推定部204と、データ管理部205と、データベース206と、を含んで構成される。
【0033】
通信部201は、端末10との相互通信を実現する手段である。通信部201は、端末10が送信する測定データを受信し、制御信号を端末10に送信する。
【0034】
データ受信部203は、端末10から送られてきた測定データを受信する。データ受信部203は、受信した測定データを、データ管理部205に出力する。
【0035】
データ管理部205は、受信した測定データを、データベース206に登録する。また、データ管理部205は、外部(例えば、測定データの解析を行う装置)からのデータアクセス(読み出し、書き込み、更新等)をサポートする手段である。なお、データベース206のデータ管理方式には、リレーショナルデータベースを採用することが考えられるが、他の方式であってもよい。
【0036】
データ推定部204は、データベース206に登録されている測定データ(現在の測定データ)から、未受信の測定データを推定する手段である。
【0037】
制御信号管理部202は、現在の測定データから、端末10におけるデータ送信制御を行うための情報を含む制御信号を生成する手段である。制御信号管理部202は、制御信号を、通信部201を介して端末10に送信する。なお、制御信号管理部202による制御信号の生成及び送信は、定期的に実行されてもよいし、管理者等の外部からの要求に応じてオンデマンドで実行されてもよい。以降の説明においては、予め設定された周期により定期的に、制御信号の生成及び送信が実行されることを前提とする。
【0038】
なお、端末10に含まれる各部は、端末10に搭載されたコンピュータに、そのハードウェアを用いて、後に詳述する処理を実行させるコンピュータプログラムにより実現することもできる。
【0039】
次に、端末10に含まれる各部の動作について説明する。
【0040】
端末10は、測定装置30から取得した測定データを、サーバ20に送信する。その際、端末10は、測定データに対する動的なデータ送信制御を行う。より具体的には、端末10は、測定データを送信するタイミングを調整する制御や送信するデータを選択する制御を実行する。その際、端末10は、データ構造情報管理部102が記憶する属性分類情報を利用する。
【0041】
図5は、データ構造情報管理部102が記憶する属性分類情報の一例を示す図である。
図5を参照すると、データ構造情報管理部102は、
図5に示す測定データ間の関係性を予め記憶する。測定データは、判断データと、従属データ、という2つの属性に分類される。判断データを親ノード、従属データを子ノードとして、両者は
図5に示すような主従の関係を持つ。例えば、判断データ1は、従属データ1−1及び1−2の親ノードという関係がある(
図5(a)参照)。測定データは、判断データ又は従属データのいずれかの属性に分類され、従属データは、1つ以上の判断データに従属する関係にある。データ構造情報管理部102は、測定装置30から得られる測定データに対し適用するデータ間の関係を記憶する。例えば、判断データとしては、端末10の位置を示す位置情報が考えられる。一方、判断データに従属する従属データとしては、端末10の移動速度等が考えられる。
【0042】
データ収集部103は、データ収集インターフェイス101を介して、測定装置30が測定する各種データを収集する。なお、データ収集部103による測定データの収集は、予め定められた周期で行ってもよいし、非同期に測定装置30から測定データをアップロードしてもよい。いずれにしても、データ収集部103は、測定データのデータ収集時刻として、等間隔で区切られたデータ収集タイムスロットを用いてタイムスロット番号により測定データを管理する。なお、タイムスロット番号は、端末10とサーバ20との間で同期が取れているものとする。端末10とサーバ20との間の同期は、端末10の起動時にサーバ20と同期を取ることで実現する。
【0043】
データ収集部103は、同じタイムスロットで収集された測定データを、データ構造情報管理部102が管理する主従関係の属性分類情報を考慮したデータ構造にて、データ管理部104に格納する。なお、その際のデータ構造は、データ管理部104に格納された従属データが、判断データをキーにして取り出させるように判断データに関連付けするための構造である。また、同じタイムスロット内に従属データの親となる判断データを取得できない場合には、データ収集部103は、その後に最初に取得する判断データと、先の従属データと、を関連付けする。
【0044】
制御信号管理部105は、サーバ20から受信した制御信号を管理する。サーバ20が送信する制御信号は、データ送信制御部107が、測定データをサーバ20に向けて送信するか否かを判断するために用いる送信コスト情報である。また、制御信号とは、送信コスト情報を受信した端末が、測定データを送信した時の送信コストを算出できるよう加工整形された信号である。
【0045】
例えば、制御信号管理部105が、位置に対する制御信号を取得したとすれば、送信する位置をキーとする送信コスト情報を管理する。
【0046】
データ収集部103は、新たな測定データを取得し、取得した測定データが判断データであった場合には、情報価値推定部106に対して、測定データと測定タイムスロット番号を出力する。
【0047】
情報価値推定部106は、予測モジュールを有しており、予測情報から受け付けた測定データの情報価値を推定する。測定データの情報価値とは、当該測定データが存在しないと仮定した場合の予測能力の低下量である。より具体的には、高い確度で予測が可能な測定データは情報価値が低いと判断される。高い確度で予測が可能な測定データは、当該測定データが存在しなくとも、他の測定データから補間データを生成できるためである。即ち、情報価値推定部106が推定する情報価値とは、当該測定データの有無による影響の大小を定量化する指標である。情報価値は、過去の測定データからの予測推定モジュールを用い、当該測定データを用いた予測推定と、当該測定データを用いなかった予測推定との差の大きさによって定めることが望ましい。
【0048】
情報価値推定部106の予測モジュールは、今まで取得してきた測定データ(過去の測定データ)から、次期タイムスロット以降の測定データの確率分布を予測する機能を有すればよい。例えば、予測モジュールには、カルマンフィルタに代表される再帰的フィルタにより過去の履歴情報を持たずに逐次的に内部状態を更新しながら、状態推定を行う手段を採用する。但し、予測モジュールの実現をカルマンフィルタに限定する趣旨ではなく、他の派生フィルタや、その他の時系列データ解析手法や機械学習を用いた予測であってもよい。
【0049】
図6を参照し、情報価値の計算例について説明する。
図6において、現在のタイムスロット番号をtkとし、その際の測定データをD(tk)とする。データ管理部104には、現時点までの測定データ集合301が格納されているとし、情報価値推定部106は、測定誤差を含め現在データの最も確からしいデータの推定範囲を推定範囲302として保持しているものとする。また、現在のタイムスロット番号から3期先のタイムスロット番号tk+3におけるデータの予測推定範囲を推定範囲303とする。このような状況下において、データ管理部104は、実際に毎期ごとの測定データとして、D(tk+1)、D(tk+2)、D(tk+3)からなる測定データ集合304を取得する。
【0050】
情報価値推定部106は、測定データの取得ごとに推定範囲302を更新し、タイムスロット番号tk+3における予測推定範囲が、推定範囲305に更新されたものとする。つまり、推定範囲305は、取得した全測定データを用いた最善の推定範囲であり、推定範囲303はタイムスロット番号tkまでに取得した測定データを用いた最善の推定範囲である。このことから、推定範囲303と推定範囲305のずれが小さいほど、予測の確度が高いことになる。換言するならば、推定範囲303と推定範囲305のずれが小さいほど、情報価値は低い。
【0051】
サーバ20で、測定データ集合304を取得しない場合であっても、サーバ20の側で情報価値推定部106と同様な予測機能(予測モジュール)を使用することで、高い確度でのデータ予測が可能となるためである。即ち、このような情報価値の低い測定データは、不要不急な測定データとみなせる。
【0052】
推定範囲303と推定範囲305のずれを定量的に算出する方法として、両者の分布間の距離としてカルバック・ライブラー情報量DKLを用いることができる。測定データ集合304を得る前の推定分布をΦ1とし、測定データ集合304を得た後の推定分布をΦ2とする。測定データ集合304により得られる情報量は、DKL(Φ2‖Φ1)で与えられる。
【0053】
ここでは、データxの推定が分布関数F(x)である時、その期待値μ及び分散共分散行列Σを用いたガウシアン関数N(μ、Σ)で、DKL(Φ2‖Φ1)を近似する。例えば、ターゲットとする測定データが位置情報(二次元ユークリッド空間上の座標値)である場合、μは期待位置、Σは位置の不確実性を表す指標となる。2つの推定Φ1=N(μ1、Σ1)及びΦ2=N(μ2、Σ2)があり、推定Φ1からみた推定Φ2への距離は、以下の式(1)で評価できる。
なお、tr(A)は行列AのトレースでありNは次元数である。式(1)の値が大きい程、情報価値が高い。このように、情報価値の大きさは、一方では対象の測定データを用いて、他方では対象の測定データを用いないで状態推定を行い、両者の状態推定結果によって規定されるデータの予測推定分布間の距離の差分を計算することで得られる。
【0054】
データ送信制御部107は、判断データごとに、情報価値推定部106が算出する情報価値と、制御信号管理部105から得られる送信コストと、を用いて、測定データを送信すべきタイミングを判断する。データ送信制御部107による測定データの送信は、最後に送信した測定データから現在までに蓄積しておいた測定データをまとめて送信(ストップ/ゴー制御)してもよいし、重要な測定データを選択して送信してもよい。なお、測定データの重要度は、情報価値推定部106において、今まで蓄積した測定データの部分集合を算出し、その部分集合の情報価値を算出することで、判断できる。但し、本実施形態においては、理解の容易のため、最後に送信したデータから現在まで蓄積した測定データを送信するものとする。
【0055】
データ送信制御部107は、重要度の高い測定データと、重要度の低い測定データと、をサーバ20の側で識別可能とするため、それぞれに重要度属性を与えて送信する。以降の説明において、重要度の高い測定データには、「M」という重要度属性により表記する。また、未送信の測定データの中で、重要度の低い測定データには、「L」という重要度属性により表記する。
【0056】
「M」の重要度属性を与える測定データは、当該測定データの活用目的を鑑みると重要な役割を果たす測定データであり、設計者のポリシにより定まる(重要度属性を判断するポリシを予め定める)。例えば、ある程度長い期間、端末10からサーバ20に対して測定データを送信していない場合に、測定データを送信することに決めたタイミング(タイムスロット)での測定データや、一期前の測定データに重要度属性「M」を与えるといったポリシが考えられる。長い期間、測定データを送信していないため、一期前の測定データからの変化の大きさを、サーバ20の側で即座に把握可能とするためである。重要度属性「M」以外の測定データの重要度属性は「L」とする。
【0057】
データ送信制御部107における測定データの送信判断は、情報価値の大きさVと、送信コストPと、に基づいて行う。その際の判断手法の1つとして、情報価値の大きさVと送信コストPを統計処理することで送信確率を算出し、その送信確率に従って測定データの送信可否を決定する方法が考えられる。通常、情報価値の大きさVが大きく、送信コストPが小さいほど送信確率は増加すべきであるので、送信確率はVの単調増加関数、Pの単調減少関数となる。例えば、送信確率G(V、P)は以下の式(2)から算出できる。但し、送信確率の算出方法を式(2)から算出することに限定する趣旨ではない。
なお、α、βは調整パラメータである。調整パラメータα及びβは、予め定められた値でもよいし、動的に端末10やサーバ20から変更される値であってもよい。動的に調整パラメータα及びβを変更することにより、データ送信制御部107における送信タイミングのさらに詳細な動的調整が可能である。
【0058】
図7は、情報価値401及び送信コスト402の時間変動(
図7(a))と、対応する送信確率403の時間変動(
図7(b))の一例を示す図である。通常、時間の経過と共に、予測精度は悪化するため、情報価値は向上する。一方、送信コスト402は、サーバ20から取得する制御信号により定める値のため、特定の傾向を持たない(様々な値を取り得る)。
図7を参照すると、情報価値401が高く、送信コスト402が低くなると送信確率403は上昇する。このように、端末10は、送信コストに対する減少関数、且つ、情報価値に対する増加関数である送信確率に従って、測定データの送信判断を確率的に行う。このように、データ送信制御部107は、送信確率403に従い、測定データの送信可否を判断する。
【0059】
あるいは、送信確率による判断に基づく手法で送信・非送信を決定することに代えて、情報価値と送信コストの関係から送信タイミングを最適化する手法も使用できる。例えば、情報価値の大きさVの現在からの予測経過と、送信コストPの予測経過を算出する。算出した予測経過の差分(V−γP)や、V/P等の統計量を最大化する時刻(タイムスロット)を探索し、当該探索した時間において測定データを送信するという手法を採用することもできる。なお、γには適切な係数値を選択する。より具体的には、制御信号管理部105が制御信号として、各場所で送信コスト情報P[X]を受信したとする。その際、時間の関数として、移動軌跡X[t]を予測すると、ある時間tにおける送信コストはP[X[t]]と計算できる。情報価値の大きさVの時間変動が予測できる場合には、その予測を用いればよい。しかし、情報価値の大きさVの時間変動が予測できない場合は、現在の情報価値の大きさVを用いる。
【0060】
あるいは、通常、情報価値の大きさVは、時間に対する増加傾向にある(予測精度は時間の経過と共に悪化する)ことから、時間に関する適切な増加関数を用いて、上記の差分等の統計量を最大化する時刻(タイムスロット)を算出する手法も採用できる。但し、通常は、送信コストが高くても、一定の品質を保つためには一定周期で測定データを送信した方がよい。その場合には、最後の測定データの送信から一定のタイムスロットを経過した場合には、強制的に測定データを送信するように定めることが望ましい。
【0061】
なお、端末10(制御信号管理部105)が、制御信号を受信するタイミングは、サーバ20から端末10への下りネットワーク帯域に制限がなければ、定期的に更新された制御信号を受信すればよい。しかし、下りネットワーク帯域の利用も削減する場合には、例えば、端末10から測定データがアップロードされたことに応じて、制御信号の送信を行う等の方法を採用すればよい。端末10から測定データが送信される状況は、データ収集管理システムのリソースに余裕があることが多く、下りネットワーク帯域にも余裕があると考えられるためである。
【0062】
次に、端末10の動作について説明する。
【0063】
図8は、端末10の動作の一例を示すフローチャートである。
【0064】
ステップS101において、データ収集部103は、測定データの収集を行う。データ収集部103は、収集したデータを、その属性(判断データ又は従属データ)に応じて構造化されたデータとして、データ管理部104に登録する。
【0065】
ステップS102において、情報価値推定部106は、判断データを用いた情報価値の算出を行う。
【0066】
ステップS103において、データ送信制御部107は、制御信号管理部105から得られる送信コストと、情報価値推定部106が算出した情報価値と、に基づいて、測定データの送信可否を判断する。
【0067】
データ送信制御部107の判断が「データ送信」である場合(ステップS103、Yes分岐)、データ送信制御部107は判断データ及びその従属データを、サーバ20に送信し、ステップS101に戻る(ステップS104)。データ送信制御部107の判断が「データ非送信」である場合(ステップS103、No分岐)、端末10の内部にデータを蓄積し、ステップS101に戻る(ステップS105)。
【0068】
次に、サーバ20に含まれる各部の動作について説明する。
【0069】
サーバ20は、端末10が送信する測定データを、データベース206に保存し、様々なアプリケーションが測定データを利用できるようにデータを管理する。なお、端末10においてデータ送信制御が実行されることで、測定データに重要度属性のマーキング情報が付与される。サーバ20は、この重要度属性のマーキング情報に従って、重要度の高い測定データを優先的に格納する。即ち、サーバ20は、端末10が送信する測定データの重要度に応じて、リソース(例えば、ハードディスク)割り当ての優先制御を行う。このように、サーバ20は、端末10が他の測定データに優先して送信する測定データを優先して格納する。その結果、サーバ20は、測定データを間欠的に記憶することになるため、測定データの管理として、測定データの補間や推定を行う必要がある。また、サーバ20は、端末10に対して制御信号を送信する。
【0070】
データ受信部203は、通信部201を介して、端末10からアップロード送信された測定データを取得し、データ管理部205に出力する。データ管理部205は、それぞれの端末10から取得した測定データをデータベース206に登録する。その際、データ管理部205は、端末ごとに(各端末の識別子ごとに)、測定データ及び測定データの測定時間に加え、タイムスロット番号、判断・従属データの種別、重要度属性を合わせて格納する。
【0071】
制御信号管理部202は、制御信号を端末10に送信することで、送信コスト情報を端末10に通知する。制御信号管理部202は、現在のデータ取得状況、サーバ20の負荷状況及び未受信の測定データに対する予測推定状況等を鑑みて制御信号を定期的に生成し、更新する。制御信号は、各端末10が、制御信号に基づき送信コストを計算するために必要な信号である。何を送信コストとして定めるかは、設計者のポリシによる。例えば、複数の端末10が、測定データを同時に送信することを避けるため、各場所での端末10の密集度情報を制御信号として採用する場合を考える。密集度が高い場所は、その場所から発信される測定データが多いことを意味するので、その分送信コストを高くするように制御信号を生成する。このように、送信コスト情報とは、端末10からアップロードされる測定データが消費するリソース量の集中度合いを反映する指標である。制御信号管理部202は、リソース量の集中度合いが増えるに従い、送信コスト情報の値を増加するように、送信コスト情報を管理する。
【0072】
より具体的には、フィールド(地図)を小領域に分割し、領域i(iは整数、以下同じ)の端末数N[i]を計算する。さらに、適切な上限数Cを定めて、min(1、N[i]/C)のように[0、1]の範囲に規格化した値を領域iの制御信号(送信コスト)とする等の手法が考えられる。なお、送信するデータ量に問題がなければ、それぞれの端末10に、全領域に関する制御信号を送信してもよい。あるいは、制御信号の送信対象となっている端末10の現在位置を中心として、適切な半径を決め、その半径で描かれる円の中にある領域に関する制御信号を送信してもよい。
【0073】
制御信号管理部202は、制御信号を定期的に送信してもよいし、データ受信部203が測定データを受信したタイミングで、その時点での制御信号(最新の制御信号)を端末10に送信してもよい。例えば、制御信号として密集度情報を受け取った端末10は、密集度が高いほど送信コストが高いと判断する。送信コストが高いと判断されれば、送信確率は下がるため、密集領域からの測定データの送信は抑制される。その結果、複数の端末10間でのリソース消費の競合を抑制できる。
【0074】
サーバ20が管理するデータは、間欠的に収集される測定データである場合が多い。つまり、重要度の高い測定データ(重要度属性が「M」の測定データ)は、速やかに収集されるが、重要度の低い測定データ(重要度属性が「L」の測定データ)がいつ取得されるかは、端末10が測定データを送信するタイミングに依存する。例えば、最後に測定データを送信した時から蓄積した測定データを全て送信するストップ/ゴー制御が、端末10で行われている場合には、その送信タイミングで過去の測定データが塊として取得される。さらに、端末10において複雑な測定データの重要度判断が行われ、選択的に重要度の高いデータが送信される場合には、重要度の低い測定データが、いつ送信されるかは、サーバ20で把握できない。
【0075】
そのため、サーバ20は、測定データの分析等を行う際に、未送信の測定データが必要となる場合には、オンデマンドでデータ推定部204を動作させ、必要なデータを推定する。あるいは、推定結果の精度が十分でない場合には、データ推定部204は、通信部201を介して、端末から必要な測定データを収集してもよい。
【0076】
データ推定部204の推定アルゴリズムは、端末10において情報価値算出に用いる推定アルゴリズムと同じアルゴリズムを使用する。また、一度、推定演算がなされた測定データを破棄するのではなく、データ推定部204は、データベース206に重要度属性「E」を付して登録する。重要度属性「E」を与えることで、当該データは推定情報であることを明示する。そして、次に同じ測定データへのアクセスが発生した場合には、データ管理部205は、特段の理由がない限りはこの推定された測定データを再利用する。
【0077】
例えば、
図9において、時系列に並んだ測定データ501が存在する場合に、未来のタイムスロットs1に対するデータ要求が存在するものとする。この場合、データ推定部204は、それまでの測定データを用いて、タイムスロットs1での推定値502を生成する(
図9(a)参照)。
【0078】
あるいは、過去のタイムスロットs2でのデータ要求が存在する場合に、当該要求された測定データを推定することもできる。
図9(b)において、測定データ503が存在するが、その間のタイムスロットの情報が未だに受信されていないものとする。この未受信のタイムスロットの測定データを要求された場合であっても、取得済みの測定データ503を用いてタイムスロットs2の推定値504を生成する。
【0079】
なお、通常、新しい測定データが取得されれば、さらに精度の高い推定が可能である。そのため、より高い精度が必要な場合には、データ推定部204は、最後にデータ推定を行った後に、新規の測定データ入力がなされたか否かの情報を記憶し、高精度な推定を伴ったデータアクセス要求を受け付けた後に、推定データを削除した後に新たな推定データを再生成してもよい。
【0080】
推定データ(重要度属性「E」)や遅延して送信される測定データ(重要度属性「L」)と比較して、重要度の高い測定データ(重要度属性「M」)は、よりアクセス性能(例えば、アクセス速度)が優遇されることが望ましい。例えば、重要度属性にインデックスを作成し、重要度属性が「M」の測定データが高速に取得できるようにデータベースを構成するのが望ましい。あるいは、重要度属性が「M」の測定データに限り格納されるデータベースを別途構築してもよい。
【0081】
次に、
図10を参照しつつ、位置情報の推移を例に取り、上述の測定データ取得から測定データ推定及び測定データの上書き等の一連の動作について説明する。
図10に示す端末側データ620は、位置情報推定点のシーケンスであり、重要度属性が「M」である測定データと、「L」の測定データに分類されたデータが、サーバ20に送信される場合を考える。当初、サーバ側データ630として、端末側データ620のうち重要度属性が「M」である即時送信データ601及び602が、順次送信される。そのため、サーバ20の側では、優先データ631に限り保存され、その間は線形補間がなされる。
【0082】
次に、重要度属性が「M」である測定データの間のタイムスロットのデータ要求が存在する場合には、データ推定を行った測定データ(重要度属性が「E」)が生成される。
図10においては、補間データ621が生成される。なお、
図10は線形補間によりデータ推定を行う例であるため、補助的に直線で測定データ間を結んでいる。その後、対応するタイムスロットの測定データが端末から遅れて送信されてきた場合、データアップロードによるデータ更新633にて、補間データ621が削除され、重要度属性が「L」の受信データ(測定データ)で上書きされる。その他の測定データについても、同様の処理を行うことで、オンデマンドでデータ推定を行いつつ、端末10からの測定データのアップデートがあった場合に情報を更新する処理が実現できる。
【0083】
また、データ推定ではなく、実際の測定値が必要な場合には、データ推定の代わりにオンデマンドで端末10に測定データの送信を明に要求することも可能である。その場合は、データアップロードによるデータ更新633に限り実行される。
【0084】
なお、サーバ20に含まれる各部は、サーバ20に搭載されたコンピュータに、そのハードウェアを用いて、後に詳述する処理を実行させるコンピュータプログラムにより実現することもできる。
【0085】
次に、サーバ20の動作について説明する。
【0086】
図11は、サーバ20の動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図11に示すサーバ20の動作はあくまで例示であって、各処理を実行する順序等を限定する趣旨ではない。また、各処理を直列に実行する必要もなく、測定データの受信処理(ステップS201、ステップS202)や制御信号の送信に係る処理(ステップS205、ステップS206)等が並列に実行されてもよい。
【0087】
ステップS201において、データ受信部203は、各端末10から測定データのアップロード送信を受信したか否かを判断する。測定データを受信していれば(ステップS201、Yes分岐)、データ受信部203は、データ管理部205を介して、測定データをデータベース206に格納する(ステップS202)。
【0088】
ステップS203において、データ推定部204は、測定データの推定が必要か否かを判断する。測定データの推定が必要であれば(ステップS203、Yes分岐)、データ推定部204は、データベース206に格納されたデータを用いて、データの推定を行う(ステップS204)。
【0089】
ステップS205において、制御信号管理部202は、制御信号を送信する条件が満たされているか否かを判断する。制御信号を送信する条件が成就していれば(ステップS205、Yes分岐)、制御信号管理部202は、通信部201を介して、制御信号を各端末10に送信する(ステップS206)。その後、制御信号管理部202は、送信コスト情報の算出を行う(ステップS207)。
【0090】
以上のように、本実施形態に係るデータ収集管理システムは、重要度が高い測定データを選択的に、端末10からサーバ20に送信する。また、サーバ20には、重要度の高い測定データが選択されて送信されることに対応する機能を備える。端末10は、収集する測定データを判断データとそれに従属するデータに分類し、判断データを以て、当該測定データを送信するべきか否かをその重要度から判定し、動的なアップロード制御(動的なデータ送信制御)を実現する。その際の重要度判断は、サーバ20側における分析結果に与える影響の大きさにより定められ、典型的には、予測により補間が可能かどうかを指標とする。このような重要度判断により重要と判断された判断データ及びその従属データは、迅速にサーバ20に送信される。一方、重要度判断により、不要不急と判断された判断データ及びその従属データは、一時的に端末10の内部に保管され、リソース競合の低いタイミングを見定めた上で、サーバ20に送信される。
【0091】
サーバ20の側では、重要度の高いデータと重要度が低いデータを分類して保管し、重要度の高いデータへのアクセス性能を最大化するように構成を最適化する。また、サーバ20は、測定データを用いた各種の分析などの目的でデータにアクセスする際、未受信のデータが必要となる場合がある。このような場合、サーバ20は、既に受信済みのデータを用いて、データの推定を行うことで、データの補間を行う。さらに、サーバ20は、端末10に対して制御信号を送信することで、端末10間での協調的動作を促す。サーバ20が送信する制御信号は、例えば、各場所での端末密集度などに代表される、端末10の側が送信コストを定量化できる指標であり、送信コストが大きいほど、端末10の送信確率が下がる。つまり、端末10の側の送信判断は、情報価値の高さと、送信時の送信コストと、のバランスにより定まる。
【0092】
以上の構成及び各装置の機能により、本実施形態に係るデータ収集管理システムでは、以下のような効果を奏する。
【0093】
第1の効果は、リソースの利用効率が向上することである。上述した先行技術では、端末間において独立にデータが収集され、アップロードされるので、リソースの競合が発生し得る。即ち、上述の先行技術では、動的に変わる複数の端末間でのリソース利用競合の影響等は考慮されていない。例えば、渋滞している場所では、多くの車両からのデータアップロードが発生し、ネットワーク帯域やサーバ資源の競合が起こり得る。そのため、先行技術では、サービスの品質を一定以上に保つためには、リソース利用のピーク値に合わせて容量設計を行う必要がある。しかし、そのような対応では、ピーク時以外は過度な余剰資源となってしまい、リソースの利用効率が悪化する問題が生じる。このような状況を避けるためには、重要度の低い不要不急のデータは、リソースが競合する時間を避け、リソースの利用率が低い時にまとめて送信・管理されることが望ましい。
【0094】
本実施形態に係る端末10は、測定データの重要度から優先的にデータをアップロードする。その結果、重要度の高いデータから優先的にリソースが消費されることにため、限りあるリソースの有効活用が行える。即ち、リソースの利用効率が向上する。
【0095】
第2の効果は、計算処理時間が向上することである。上述した先行技術では、分析などの蓄積データを用いた計算において、長い計算時間が必要となることがある。分析などの蓄積データを用いた計算処理を行う上で、先行技術では、分析結果に影響の高いデータと低いデータを同等に扱うためである。通常、計算時間はデータ量に大きく依存し、大量なデータ量を処理すると、計算時間は指数関数的に増大する。また、データ処理時間はデータ量の非線形的な関数になることが多い。例えば、データへのアクセス速度はデータ量が増大すると非線形的に遅くなるし、多変量分析やクラスタ分析などの複雑な分析に要する時間もデータ量の増大と共に非線形的に増加する。そのため、重要なデータを選択的に取り扱い、できるだけデータ量を削減することが望ましい。
【0096】
本実施形態に係るサーバ20のデータベース206には、重要度の高い測定データが順次、格納されていき、測定データには重要度がマーキングされているため、目的の演算のために用いる測定データを選択し、データ量の実効サイズを削減することができる。その結果、計算処理時間を短縮できる。
【0097】
第3の効果は、目標性能を実現するのに必要なリソース量が削減できることである。上記した先行技術では、設計性能を保証するために必要なリソース量が肥大化し、遊休余剰リソースが増加する問題がある。例えば、端末間で同時にリソース利用が発生すると、リソース利用競合によるバースト的なリソース利用量の増大を生じさせる。そこで、一定以上品質を保つためにはそのピーク値に合わせたリソース設計が必要になるためである。しかし、そのようなピークは全体の中ではごく一部の時間帯しか発生しないため、大半の期間は大きな余剰リソースが発生する。
【0098】
本実施形態に係るサーバ20は、受信した測定データをデータベースに格納し、不要不急のデータは、負荷の低い時にバッチとして処理することも可能であるから、ネットワーク帯域やデータベースへの格納処理の不要な集中が避けることができる。その結果、必要なリソース量を削減することができる。
【0099】
[第2の実施形態]
続いて、第2の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0100】
本実施形態に係るデータ収集管理システムは、自動車等の車両情報を収集管理するシステムである。
【0101】
自動車等の車両は、OBD2(On-board diagnostics)システムを備えている。OBD2システムとは、エンジンの回転数や各種センサ値といった車両管理情報を管理するシステムである。OBD2システムでは、OBDインターフェイスを通して各種データ(以下、OBDデータと表記する)を取得できる。
【0102】
管理サーバにおいて、このOBDデータを分析することで、OBDデータを送信する車両の走行状態や故障状態を分析する。分析結果に応じて、管理サーバは、各種の情報提供サービスが提供できる。例えば、走行車両の燃費を表示すること、渋滞情報を表示すること、事故車の情報を周辺の車両に提供すること、など様々なサービスの提供が考えられる。また、本実施形態においては、収集するデータを車両のOBDデータとして説明するが、信号機、街灯、駐車場、各種の店舗等の施設といったインフラに各種のセンサを設置し、その情報を利用することもできる。その結果、より多くの各種サービスを提供することができる。例えば、駐車場の空きスペースを検知するセンサと、車両の走行情報(位置情報や速度情報)と、から空きスペースのある(又は、スペースが空きそうな)駐車場に誘導するサービスを提供できる。
【0103】
このように状況(駐車場の空きスペースや、その駐車場に向かう車両の数等)が時々刻々と変化する中で、タイミングよく精度の高い分析結果を提供するには、重要なデータを選択的に処理することが必要である。本実施形態に係るデータ収集管理システムは、そのような機能の提供を行う。本実施形態では、OBDデータに対するサーバ上での利用にあたり、各車両から重要な情報を優先的に管理サーバにアップロードする。また、本実施形態では、車両同士の同時アップロードを避けることで、リソース(ネットワーク帯域やデータベースの容量等)消費量のピーク抑制を図る車両データに関するデータ収集管理システムについて説明する。
【0104】
図12は、本実施形態に係る車両データ収集管理システムの構成の一例を示す図である。
図12を参照すると、車両データ収集管理システムは、自動車等の車両701と、スマートフォン等の携帯端末702と、モバイルネットワーク703と、管理サーバ704と、を含んで構成される。
【0105】
車両701には、車両データを取得するセンサユニット705と、OBDインターフェイス706と、が含まれる。センサユニット705は、GPS(Global Positioning System)を利用し、車両位置データを計測する。また、センサユニット705は、他にも、エンジンの回転数や移動速度等の様々なデータの取得が考えられるが、本実施形態では、車両位置データと、それ以外の各種データと、をまとめてOBDデータとする。また、車両位置データを判断データ、他のOBDデータを従属データとする。
【0106】
携帯端末702は、OBDインターフェイス706を介して、これらのデータ(OBDデータ;判断データ及び従属データ)を取得する。より具体的には、車両のECU(Engine Control Unit)に対し、携帯端末702からデータ送信要求を行うことで、OBDデータを取得する。
【0107】
携帯端末702は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUに実行させるプログラムを格納する記憶部と、を備えている。携帯端末702は、CPUにプログラムを実行させることで、車両データを定期的に取得しながら、位置情報の情報価値を計算し、その重要度を評価しながら、管理サーバ704に対するデータ送信を制御する。つまり、携帯端末702は、管理サーバ704に対して、動的なタイミング制御を実行しながら、モバイルネットワーク703を介してデータをアップロードする。
【0108】
携帯端末702のデータ送信制御に用いられる制御信号は、管理サーバ704にデータをアップロードしたタイミングで同時に取得するものとする。また、制御信号は、地図を正方格子に区切った各小領域での送信コスト情報であるコストマップρ[k](但し、kは小領域番号)とする。
【0109】
図13は、携帯端末702に含まれる制御部801の内部構成の一例を示す図である。携帯端末702は、CPUにプログラムを実行させることで、
図13を参照して説明する制御部801の機能を実現する。以下、
図13を参照しつつ、新たな判断データの入力に対して、その情報価値判断からデータ送信制御を実行する動作について説明する。なお、理解の容易のために、入力データとして判断データである車両位置データを用いて説明するが、その従属データである他のOBDデータ一式は、車両位置データが送信される時に一緒に送信されるものとする。また、入力データは、一定時間間隔で定期的に入力され、タイムスロットはその間隔で区切られている。
【0110】
制御部801は、現在時間と車両位置データのペアである入力データ(t、yt)830と、管理サーバ704から得る送信コスト情報であるコストマップ831と、を用いて、データ送信制御を行う。
【0111】
制御部801は、タイムスロット演算部802と、2つの推定部803及び804と、情報価値計算部805と、動的アップローダ部806と、コスト計算部807と、を含んで構成される。
【0112】
タイムスロット演算部802は、入力データ830の時刻から内部で管理するタイムスロット番号を算出し、タイムスロット番号を入力データ830に付与する。その後、タイムスロット演算部802は、推定部803に含まれるキュー821と、推定部804に含まれるカルマンフィルタ824と、コスト計算部807と、に向けて入力データ830を出力する。
【0113】
推定部803と推定部804には、同機能のカルマンフィルタ823及びカルマンフィルタ824を備える。推定部803及び推定部804は、これらのカルマンフィルタを用いて、タイムスロットsにおける状態推定を行う。その際、推定部804は、入力データ830が毎タイムスロットで入力され、その都度、状態推定を行い、推定値833を出力する。推定部803は、一旦、キュー821に入力データ830をバッファし、データローダ部822が最後にロードしたデータを用いて推定値832を出力する。
【0114】
推定部804は、タイムスロットsにおける車両位置データy[s]の入力に対して、カルマンフィルタ824を用いて、内部状態x2[s]とその分散共分散行列Σ2[s]を、τ(例えば、τ=1)期前のx2[s−τ]及びΣ2[s−τ]を用いて下記の式(3)及び(4)により算出する。
但し、F(τ)及びQ(τ)は下記の式(5)及び(6)のとおりである。また、σ1、σ2は正の実数のプロセスノイズの大きさを規定するパラメータである。
【0115】
あるいは、内部状態x2[s]とその分散共分散行列Σ2[s]は、車両位置データy[s]を用いて下記の式(7)及び(8)により算出することもできる。
但し、H及びRは下記の式(9)及び(10)により表され、Iは単位行列である。
また、λ1及びλ2は正の実数で測定ノイズの大きさを指定するパラメータである。x2[s]及びΣ2[s]は、推定値833として出力されると共に、次期のタイムスロットs+1における状態推定が行われるまで保持される。なお、内部状態は4次元ベクトル、分散共分散行列は4×4行列である。
【0116】
推定部803は、各タイムスロットでキュー821に新しい入力データ830を挿入し、古いタイムスロットから順に保持する。
【0117】
データローダ部822は、動的アップローダ部806からデータロード命令を受信した際に、キュー821に保持される全データを、その順番を保ったままカルマンフィルタ823に入力する。データローダ部822は、動的アップローダ部806からデータロード命令を受信しなければ、特段の動作を行わない。
【0118】
カルマンフィルタ823は、構造はカルマンフィルタ824と同じである。しかし、カルマンフィルタ823は、新たなデータの入力がないため、最後のデータ入力時(タイムスロットs−kとする)に計算した内部状態x1[s−k]と、その分散共分散行列Σ1[s−k]と、からタイムスロットsにおける推定値を計算する。その際、カルマンフィルタ823が使用する計算式は、式(3)及び式(4)であり、推定値x1−[s]及びΣ1−[s]を、推定値832として出力する。なお、式(7)及び(8)は、測定データy[s]の不存在のため使用しない。
【0119】
カルマンフィルタ823及びカルマンフィルタ824と同等の機能を備える推定機能が管理サーバ704にも含まれており、推定に用いるデータが同じであれば、その推定値も一致する。つまり、端末10は、推定した測定データが、サーバ20に存在しない場合におけるサーバ20の予測推定精度を把握できる。
【0120】
情報価値計算部805は、タイムスロットsにおける推定値832と推定値833を用いて、入力データ830の情報価値を計算する。情報価値計算部805は、推定値832と推定値833を、ガウシアン関数Φi=N(xi[s]、Σi[s])(i=1、2)として、式(1)に従い、情報価値の大きさVを算出する。情報価値計算部805は、算出した情報価値の大きさVを、情報価値835として、動的アップローダ部806に出力する。
【0121】
コスト計算部807は、コストマップ831を管理サーバ704から取得し、現在の位置データから、現時点でデータを送信することに対する送信コストを算出する。
【0122】
コストマップ831は、小領域iにおけるコスト値P(∈[0、1])であり、現在位置rから属する小領域iを算出し、コスト計算部807はコストを計算する。コスト計算部807は、コスト値Pを、コスト情報834として、動的アップローダ部806に出力する。なお、最新のタイムスロットのデータとその一期前のデータに対して、重要度属性「M」を与えることで、変化点を特徴づける重要な点としてマーキングする。他のデータに対しては、重要度属性「L」が与えられる。
【0123】
動的アップローダ部806は、情報価値835から情報価値の大きさVと、コスト情報834からコスト値Pと、を取得する。動的アップローダ部806は、上述の式(2)に従って、送信確率を計算し、計算した送信確率に従って、データの送信・非送信を判断する。データを送信する場合には、動的アップローダ部806は、データ送信及びフィルタ同期を行う。
【0124】
データ送信とは、キュー821に蓄積されているデータ(判断データである位置データ)と、蓄積されているデータに関連付けられている従属データであるOBDデータ一式と、を管理サーバ704に送信する処理である。
【0125】
フィルタ同期とは、推定部803と推定部804のカルマンフィルタの状態を同期させる処理である。具体的には、以下のような動作によりカルマンフィルタの同期は実現される。初めに、動的アップローダ部806は、データローダ部822に対してデータのアップロード命令を発効する。データローダ部822は、キュー821に蓄積されている全データを、タイムスロットの古い順にカルマンフィルタ823に入力する。カルマンフィルタ823は、式(3)〜式(10)により内部状態と、その分散共分散行列をタイムスロットsまで順に更新処理を行い、内部状態x1[s]とその分散共分散行列Σ1[s]を計算する。その際、内部状態x1[s]とその分散共分散行列Σ1[s]は、内部状態x2[s]とその分散共分散行列Σ2[s]と同じものとなり、カルマンフィルタ823とカルマンフィルタ824は同じ状態に同期される。
【0126】
携帯端末702の制御部801は、上記の動作を繰り返し実行し、動的にデータアップロードを制御する。その結果、端末間の競合を避けるタイミングにより、重要なデータから優先的に管理サーバ704に送信される。
【0127】
以上のように、第2の実施形態に係るデータ収集管理システムは、自動車等の車両情報を収集管理するシステムに好適に適用できる。
【0128】
[第3の実施形態]
続いて、第3の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0129】
本実施形態に係るデータ収集管理システムは、携帯電話やスマートフォン等の携帯端末を含む。近年の携帯端末は、GPSを利用した位置測定機能を備えることが多く、携帯端末の位置情報を利用したアプリケーションを使うことで、種々のサービスの提供を受けることができる。例えば、携帯端末を介してユーザの居る場所を常時把握し、その場所に応じた広告やクーポンを選択的に配信するサービスが存在する。
【0130】
携帯端末の位置測定に要する電力は大きいのが通常である。とりわけ、携帯端末の電源がオン状態であれば、常時、携帯端末の位置を測定すれば、携帯端末の稼働時間に与える影響は大きい(
図16(a)参照)。さらに、携帯端末の位置を測定するたびに、位置情報をサーバ等に送信するならば、電池の消耗を早めるだけではなく、ネットワーク帯域を圧迫することになる(
図17(a)参照)。
【0131】
そこで、本実施形態では、位置推定精度を維持したまま、携帯端末の消費電力や利用するネットワーク上でのデータ通信量を効果的に抑制するデータ収集管理システムを提供する。
【0132】
図14は、第3の実施形態に係るデータ収集管理システムの構成の一例を示す図である。
図14を参照すると、本実施形態に係るデータ収集管理システムは、複数の携帯端末11−1〜11−n(nは正の整数)と、サーバ20と、を含んで構成される。なお、以降の説明において、携帯端末11−1〜11−nを区別する特段の理由がない場合には、「携帯端末11」と表記する。
【0133】
図14に示す各携帯端末11はそれぞれ、位置測定機能を備えており、予め決められた時間周期で位置情報を算出する。また、携帯端末11は、算出した自らの位置情報をサーバ20に送信可能に構成されている。
【0134】
図15は、携帯端末11の内部構成の一例を示す図である。なお、
図15において
図3と同一構成要素には、同一の符号を表し、その説明を省略する。
図3に示す端末10の内部構成と
図15に示す携帯端末11の内部構成の相違点は、位置情報収集インターフェイス101aと、情報価値推定部106aと、データ送信制御部107aと、位置情報算出部109と、位置情報取得制御部110と、を備える点である。なお、
図15において、携帯端末11は、携帯端末11の各部に電源を供給する電池111を備えることを明示した。
【0135】
位置情報収集インターフェイス101aは、第1の実施形態にて説明したデータ収集インターフェイス101に準ずる構成要素である。位置情報収集インターフェイス101aは、位置情報算出部109から測定データとして、携帯端末11の位置情報を取得し、位置情報取得制御部110の指示に応じて位置情報算出部109の活性・非活性を制御する点が、データ収集インターフェイス101と異なる。そのため、位置情報収集インターフェイス101aに関する更なる説明を省略する。
【0136】
情報価値推定部106aは、第1の実施形態にて説明した情報価値推定部106に準ずる構成要素である。情報価値推定部106aは、位置情報に対して算出した情報価値を位置情報取得制御部110に出力する点が、情報価値推定部106と異なる。そのため、情報価値推定部106aに関する更なる説明を省略する。
【0137】
データ送信制御部107aは、第1の実施形態にて説明したデータ送信制御部107に準ずる構成要素である。データ送信制御部107aは、情報価値推定部106aが算出する情報価値と送信コストに加えて、電池111の残量に関する情報に基づき、測定データの送信を決定する点が異なる。データ送信制御部107aは、第1の実施形態にて説明したデータ送信制御部107と同様に、測定データの情報価値に応じてデータ受信を制御する。つまり、データ送信制御部107aは、情報価値が低い測定データに関してはデータ送信を保留することもあり、情報価値が十分高くなった段階で保留していた測定データとその時点での測定データをサーバ20に送信する。このような第1の実施形態にて説明したデータ送信制御部107の動作でも、無条件に測定データが送信されないので、測定データの送信に伴う電池の消耗を減ずることができる。あるいは、第1の実施形態と同様に、サーバ20の側から現在の送信コスト情報が得られる場合には、その情報も加味して送信タイミングを決めることで、ネットワーク帯域を圧迫することもない。
【0138】
データ送信制御部107aでは、データ送信制御部107の機能に加えて、電池111の残量をデータ送信の判断条件に加えることで、電池の消耗を加味したデータ送信制御を実現する。より具体的には、データ送信制御部107aは、電池111の残量が所定の値よりも低い場合には、測定データの送信を抑制するように制御し、電池111の残量に余裕がある場合には、測定データの送信を促進するように制御する。
【0139】
ここで、データ送信制御部107aでは、電池の残量(電池の消費量)とネットワークを介した送信コストの2つの判断条件に基づいて、測定データの送信制御を行うことになる。その際、いずれの条件をどの程度重視するかは管理者が定める設定パラメータの1つである。例えば、送信コストが低い場合であっても、電池の消費を抑制することを重視する場合は、データ送信を見合わせるような設定とする。一方、電池の消費よりも、測定データの送信を重視する場合には、電池の消費を犠牲にしてもデータ送信を優先する設定とする。
【0140】
位置情報算出部109は、GPS衛星が出力するGPS信号を受信するGPSアンテナや受信信号から携帯端末11の位置情報を計算するプロセッサー等を含んで構成される。位置情報算出部109は、計算した位置情報を測定データとして、位置情報収集インターフェイス101aに出力する。また、位置情報算出部109は、位置情報収集インターフェイス101aの指示により、活性状態又は非活性状態に制御される。活性状態にある位置情報算出部109は、位置情報として測定データを出力するが、非活性状態にある位置情報算出部109は、位置情報を計算せず、その出力も行わない。従って、非活性状態にある位置情報算出部109は電力を消費しない(電池111からの電源供給を要しない)。なお、本実施形態では、GPS信号を用いて、携帯端末11の位置情報を算出する場合について説明するが、位置情報の算出を、GPS信号を用いる方法に限定する趣旨ではない。例えば、基地局の発する信号を利用して携帯端末11の位置情報を算出してもよい。
【0141】
位置情報取得制御部110は、情報価値推定部106aが出力する情報価値に基づいて、位置情報収集インターフェイス101aに対して、位置情報算出部109の状態(活性状態・非活性状態)を制御する指示を行う。即ち、位置情報取得制御部110は、情報価値推定部106aが算出した位置情報に対する情報価値に応じて、位置情報算出部109を間欠制御する。
【0142】
より具体的には、位置情報取得制御部110は、情報価値推定部106aが算出した測定データ(位置情報)に対する情報価値が所定の重要度よりも低いと判断した場合には、位置情報収集インターフェイス101aに対し、位置情報算出部109の非活性化を指示する。また、測定データの情報価値と当該測定データの予測可能性は相関関係にあることから、位置情報取得制御部110は、情報価値の大きさから位置情報算出部109を非活性状態にしておく時間(休止時間間隔;次に位置情報取得制御部110を活性状態にする時間)を決定する。休止時間間隔を決定すると、位置情報取得制御部110は内部のタイマに当該時間間隔を設定し、設定時間が経過した後に位置情報収集インターフェイス101aに対して位置情報取得制御部110の活性化を指示する。
【0143】
なお、休止時間間隔は、システムの管理者が決定する設定パラメータの1つである。休止時間間隔の決定は、測定データ(位置情報)の予測可能性が高い場合には休止時間間隔を長めにし、予測可能性が低い場合は短めにする等の柔軟な対応が可能である。あるいは、携帯端末11が起動した直後は、休止時間間隔を短めに設定し、その後の測定データを取得した際に算出した情報価値が低い状態が継続した場合(測定データの予測可能性が継続して高い場合)には、段階的に休止時間間隔を延ばす対応が考えられる。より具体的には、定数δ(但し、定数δは1以上)を定め、あるタイミングでの測定の結果、新たな測定データの予測可能性が前回の測定データの予測可能性以上であった場合には、休止時間間隔をδ倍に設定し、前回の予測可能性よりも小さい場合には休止時間間隔を狭める。なお、休止時間間隔を狭める際には、例えば、休止時間間隔を予め定めた最短休止時間間隔に設定してもよいし、予測可能性の大きさに応じて短縮幅を決めてもよい。
【0144】
なお、測定データの情報価値を判断する際のロジックは共通であるが、その重要度を利用した位置情報取得間隔の決定とデータ送信制御は独立に行われる。ただし、データを送信するという判断を行った時に、位置情報取得を行っていない場合が起こりうるが、その場合はデータ送信を保留するか、そのような場合が生じないように、少なくともデータ送信判断に比べ位置情報取得判断が、より低い判断基準で行われるように設定するのが望ましい。
【0145】
携帯端末11の移動状態によっては、その位置を把握するのに常時位置情報を測定する必要がないことが多い。例えば、ユーザが運転する自動車が渋滞などでほぼ停止状態にある場合や、高速道路等を移動している場合は、測定データ(位置情報)は非常に予測精度が高い状態にある。つまり、このような測定データは、予測による情報補間が容易である。携帯端末11は、自身がそのような移動状態にあることを、測定データの情報価値の大きさを評価することで把握する。携帯端末11は、測定データの予測可能性が高いと判断した場合は、
図16(b)に示すように、予測が容易な状態では位置測定を停止し、その後位置測定を再開するような間欠制御を行う。その結果、携帯端末11の位置推定精度を維持したまま、携帯端末11の消費電力を抑制できる。
【0146】
さらに、
図17(b)に示すように、測定データの予測可能性に応じて、測定データの送付を一時保留し、予測可能性が低下(予測が困難)した場合には、測定データをまとめて送信することにより、位置推定精度を維持したままリソース消費量(電池の消耗、ネットワーク上での通信量)が抑制できる。
【0147】
以上のように、GPS信号を用いて位置情報を算出し、ネットワーク40を介して位置情報を管理するサーバ20に測定データ(位置情報)を送信する携帯端末11は、位置推定の困難さから測定データの重要度を計算し、重要度が低い(補間可能である)と判断した場合は、位置測定を停止する又はデータ送信を保留する。その結果、携帯端末11の位置推定精度を維持したまま、電池の消費量を抑制し、データ送信タイミングの制御によりリソース(電池、ネットワーク帯域等)の消費を抑制できる。このように、第3の実施形態に係るデータ収集管理システムは、スマートフォン等の携帯端末の位置情報を収集管理するシステムに好適に適用できる。
【0148】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0149】
[付記1]
上述の第1の視点に係るデータ収集管理システムのとおりである。
[付記2]
前記送信制御部は、予め定めたポリシにより重要と判断された測定データを、他の測定データに優先して送信する付記1のデータ収集管理システム。
[付記3]
前記端末は、測定データを、第1の測定データと、前記第1の測定データに従属する第2の測定データと、に分類するための属性分類情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記算出部は、前記第1の測定データに分類された測定データの前記情報価値を算出する付記1又は2のデータ収集管理システム。
[付記4]
前記送信制御部は、前記情報価値と前記送信コスト情報を統計処理することで、測定データの送信確率を算出すると共に、前記送信確率に従って測定データを前記管理装置に送信する付記1乃至3のいずれか一に記載のデータ収集管理システム。
[付記5]
前記算出部は、
前記情報価値の算出対象の測定データを取得した第1の時点よりも前に取得した測定データに基づいて、前記第1の時点以降の測定データの第1の確率分布と、前記第1の時点を含む時点までに取得した測定データに基づいて、前記第1の時点以降の測定データの第2の確率分布と、を算出すると共に、
前記第1の確率分布と前記第2の確率分布との分布間距離に応じて、測定データの前記情報価値を算出する付記1乃至4のいずれか一に記載のデータ収集管理システム。
[付記6]
前記管理装置は、
前記端末が送信する測定データが消費するリソース量の集中度合いが増えるに従い前記送信コスト情報の値を増加させる送信コスト管理部をさらに備える付記1乃至5のいずれか一に記載のデータ収集管理システム。
[付記7]
前記管理装置は、
前記端末が他の測定データに優先して送信する測定データを受信し、前記優先して送信された測定データに基づいて、前記端末から受信していない測定データの推定を行う推定部をさらに備える付記1乃至6のいずれか一に記載のデータ収集管理システム。
[付記8]
前記管理装置は、
前記端末が他の測定データに優先して送信した測定データと、前記他の測定データと、を分類して記憶すると共に、前記優先して送信された測定データに対するアクセス性能を、前記他の測定データに対するアクセス性能よりも優先するデータ管理部をさらに備える付記1乃至7のいずれか一に記載のデータ収集管理システム。
[付記9]
上述の第2の視点に係るデータ収集管理方法のとおりである。
[付記10]
前記送信制御工程は、予め定めたポリシにより重要と判断された測定データを、他の測定データに優先して送信する付記9のデータ収集管理方法。
[付記11]
前記送信制御工程は、前記情報価値と前記送信コスト情報を統計処理することで、測定データの送信確率を算出すると共に、前記送信確率に従って測定データを、前記端末から前記管理装置に送信する付記9又は10のデータ収集管理方法。
[付記12]
上述の第3の視点に係る端末のとおりである。
[付記13]
前記送信制御部は、予め定めたポリシにより重要と判断された測定データを、他の測定データに優先して送信する付記12の端末。
[付記14]
測定データを、第1の測定データと、前記第1の測定データに従属する第2の測定データとに分類するための属性分類情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記算出部は、前記第1の測定データに分類された測定データの前記情報価値を算出する付記12又は13の端末。
[付記15]
前記送信制御部は、前記情報価値と前記送信コスト情報を統計処理することで、測定データの送信確率を算出すると共に、前記送信確率に従って測定データを前記管理装置に送信する付記12乃至14のいずれか一に記載の端末。
[付記16]
前記算出部は、
前記情報価値の算出対象の測定データを取得した第1の時点よりも前に取得した測定データに基づいて、前記第1の時点以降の測定データの第1の確率分布と、
前記第1の時点を含む時点までに取得した測定データに基づいて、前記第1の時点以降の測定データの第2の確率分布と、を算出すると共に、
前記第1の確率分布と前記第2の確率分布との分布間距離に応じて、測定データの前記情報価値を算出する付記12乃至15のいずれか一に記載の端末。
[付記17]
測定データの情報としての価値を示す情報価値を算出する算出工程と、
自装置から、測定データを管理する管理装置に測定データを送信する際のコストを示す送信コスト情報と、前記情報価値と、に基づいて、測定データを前記管理装置に送信するか否かを定める送信制御工程と、
を含む端末の制御方法。
[付記18]
測定データの情報としての価値を示す情報価値を算出する算出処理と、
自装置から、測定データを管理する管理装置に測定データを送信する際のコストを示す送信コスト情報と、前記情報価値と、に基づいて、測定データを前記管理装置に送信するか否かを定める送信制御処理と、
を端末を制御するコンピュータに実行させるプログラム。
[付記19]
上述の第4の視点に係る管理装置のとおりである。
[付記20]
前記端末が送信する測定データが消費するリソース量の集中度合いが増えるに従い前記送信コスト情報の値を増加させる送信コスト管理部をさらに備える付記19の管理装置。
[付記21]
前記端末が他の測定データに優先して送信する測定データを受信し、前記優先して送信された測定データに基づいて、前記端末から受信していない測定データの推定を行う推定部をさらに備える付記19又は20の管理装置。
[付記22]
端末が送信する測定データを受信する受信工程と、
前記端末が測定データを自装置に送信する際のコストを示す送信コスト情報を、前記端末に通知する通知工程と、
を含む管理装置の制御方法。
[付記23]
端末が送信する測定データを受信する受信処理と、
前記端末が測定データを自装置に送信する際のコストを示す送信コスト情報を、前記端末に通知する通知処理と、
を管理装置を制御するコンピュータに実行させるプログラム。
なお、付記18及び付記23のプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non−transient)なものとすることができる。
[付記24]
複数の計算機端末が、時系列的に測定したデータを収集し、ネットワークを介してサーバに送信し、前記サーバは送信されたデータを管理するデータ収集管理システムであって、
前記サーバは収集したデータを、データの重要度に基づいてリソース割り当ての優先制御を行い、また未収集のデータに対しては必要に応じて収集済みのデータを用いて推定を行うか、必要な推定精度が達成できない時もしくは測定データが必要な時オンデマンドで前記計算機端末から収集し、さらに、負荷状況及び測定データの予測推定状況から定期的に送信コストを更新計算すると共に、制御信号として前記計算機端末に通知し、
前記計算機端末は、現在測定した複数のデータの情報価値を計算し、前記サーバより受信した前記制御信号を用いて送信コスト情報を得て、データの重要度を定め前記サーバに送信するタイミングを動的に調整することを特徴とするデータ収集管理システム。
[付記25]
前記計算機端末で収集されるデータには、位置、加速度、温度及び湿度の少なくともいずれかを含む付記24のデータ収集管理システム。
[付記26]
前記情報価値とは、測定データの有無による影響の大小を定量化する指標であり、過去のデータからの予測推定装置を用い、測定データを使用する予測推定と測定データを非使用とする予測推定との差の大きさによって定められる付記24のデータ収集管理システム。
[付記27]
前記送信コスト情報とは、前記端末からアップロードされるデータが消費するリソース量の集中度合いを反映する指標であり、
前記集中度合いが大きいと前記送信コストも大きくなる量であらわされ、
前記制御信号とは、前記制御信号を受信する前記端末が、データを送信した時の前記送信コストを算出できるよう加工整形された信号である付記24のデータ収集管理システム。
[付記28]
前記送信コストは、前記端末の送信場所によって規定されるコストであり、
前記制御信号は前記コストのコストマップ情報であり、また、それぞれの前記端末に送信するコストマップ情報は全領域又は一部領域である付記27のデータ収集管理システム。
[付記29]
前記予測推定は、データのとりうる値の予測推定分布によって表現され、また、カルマンフィルタに代表される再帰的フィルタによって過去の履歴情報を持たずに逐次的に内部状態を更新しながら、状態推定を行う手段から構成され、
前記情報価値は、一方では対象のデータを用いて、他方では対象のデータを用いないで状態推定を行い、両者の状態推定結果によって規定されるデータの予測推定分布間の距離によって両者の差により計算される付記26のデータ収集管理システム。
[付記30]
前記送信タイミングの調整とは、前記制御信号から計算される送信コストの減少関数であり、且つ、前記情報価値の増加関数である送信確率に従って送信判断を確率的に行う付記24のデータ収集管理システム。
[付記31]
前記サーバにおける予測推定機能は、
前記計算機端末が具備する予測推定機能と同じ機能を有し、
前記計算機端末はデータが存在しなかった時の前記サーバの予測推定精度を知る付記24、26及び29のいずれか一に記載のデータ収集管理システム。
[付記32]
前記端末は、
自らの位置情報を算出する位置情報算出部と、
前記位置情報算出部を制御する位置情報取得制御部と、
をさらに備え、
前記算出部は、前記位置情報に対応する前記情報価値を算出し、
前記位置情報取得制御部は、前記位置情報に対応する前記情報価値に応じて、前記位置情報算出部を活性状態又は非活性状態に制御する、付記1乃至8のいずれか一に記載のデータ収集管理システム。
[付記33]
前記位置情報取得制御部は、前記位置情報に対応する前記情報価値が所定の値よりも小さい場合に、前記位置情報算出部を非活性状態に制御する付記32のデータ収集管理システム。
[付記34]
前記位置情報取得制御部は、前記位置情報に対応する前記情報価値に応じて、前記位置情報算出部を非活性状態とする期間を定める付記33のデータ収集管理システム。
[付記35]
前記位置情報取得制御部は、前記位置情報に対応する前記情報価値が所定の値よりも小さい状態が、所定の期間継続した場合には、前記位置情報算出部を非活性状態とする期間を長くする、付記34のデータ収集管理システム。
[付記36]
前記送信制御部は、前記情報価値と前記送信コスト情報に加えて、電池の残量に応じて、測定データを前記管理装置に送信するか否かを定める、付記1〜8、付記32〜35のいずれか一に記載のデータ収集管理システム。
【0150】
本願は、先の日本特許出願2013−063579号(2013年3月26日出願)の優先権を主張するものであり、前記先の出願の全記載内容は、本書に引用をもって繰込み記載されているものとみなされる。国内優先権の主張の基礎となる先の出願の当初記載事項(特許請求の範囲、明細書、図面を含む)については、先の出願の出願日を優先日(基準日)として判断するものとし、今回追加した記載事項に影響されず、それが無いものとして判断すべきものである。
【0151】
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。