(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244830
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの加硫装置および方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/04 20060101AFI20171204BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20171204BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
B29C33/04
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-231402(P2013-231402)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-89669(P2015-89669A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年11月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】北井 宏尚
【審査官】
▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−002748(JP,U)
【文献】
特開2013−159049(JP,A)
【文献】
特開昭57−070630(JP,A)
【文献】
特開2004−345087(JP,A)
【文献】
特開2012−166405(JP,A)
【文献】
特開2000−186802(JP,A)
【文献】
特開2004−349518(JP,A)
【文献】
特開2010−230204(JP,A)
【文献】
特開2011−079147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 35/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド内部に配置されたグリーンタイヤに挿入される加硫ブラダと、この加硫ブラダの内部にスチームおよび窒素ガスを注入する注入ラインを備えた空気入りタイヤの加硫装置において、前記加硫ブラダの内部に連通してこの加硫ブラダの外部に延設された循環ラインと、この循環ラインの途中に配置された循環器および冷却分離機構とを有し、前記加硫ブラダの内部に注入されたスチームおよび窒素ガスを前記循環ラインの途中で前記冷却分離機構によって冷却することにより、スチームの水分を凝縮させて取り除きつつ、前記循環器により前記循環ラインを循環させる状態を、予め設定された加硫時間が経過するまで維持して、膨張している前記加硫ブラダによって、前記グリーンタイヤの内周面が押圧されて前記グリーンタイヤが前記モールドに押圧しされつつ加熱される構成にしたことを特徴とする空気入りタイヤの加硫装置。
【請求項2】
前記冷却分離機構が、冷媒を流通させて前記循環ラインの途中区間を冷却する冷却部と、この途中区間の循環ラインの内部に突設された衝突板と、この衝突板の下方側でこの途中区間の循環ラインを下側に膨出させて形成されたトラップ部とを備えた請求項1に記載の空気入りタイヤの加硫装置。
【請求項3】
前記冷却分離機構が、空冷により前記循環ラインの途中区間を冷却する冷却部と、この途中区間の循環ラインの内部に突設された衝突板と、この衝突板の下方側でこの途中区間の循環ラインを下側に膨出させて形成されたトラップ部とを備えた請求項1または2に記載の空気入りタイヤの加硫装置。
【請求項4】
前記循環ラインの途中区間が螺旋状に形成された請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤの加硫装置。
【請求項5】
前記冷却分離機構が、前記循環ラインの途中区間にこの循環ラインを下側に膨出させて形成された貯水部を備え、前記スチームおよび窒素ガスをこの循環ラインに循環させる前に前記貯水部に予め水が貯留される構成にした請求項1に記載に空気入りタイヤの加硫装置。
【請求項6】
モールド内部に配置されたグリーンタイヤに挿入した加硫ブラダの内部にスチームと窒素ガスと注入して膨張させてグリーンタイヤを加硫する空気入りタイヤの加硫方法において、前記加硫ブラダの内部に連通してこの加硫ブラダの外部に延設された循環ラインに、前記加硫ブラダの内部に注入したスチームおよび窒素ガスを流し、循環ラインの途中で冷却分離機構によって冷却することにより、スチームの水分を凝縮させて取り除きつつ、循環ラインを循環させる状態を、予め設定された加硫時間が経過するまで維持して、膨張している前記加硫ブラダによって、前記グリーンタイヤの内周面を押圧して前記グリーンタイヤを前記モールドに押圧しつつ加熱することを特徴とする空気入りタイヤの加硫方法。
【請求項7】
前記冷却分離機構が冷媒を流通させる冷却部を有し、この冷却部により前記スチームおよび窒素ガスを冷却する請求項6に記載の空気入りタイヤの加硫方法。
【請求項8】
前記冷却分離機構が空冷による冷却部を有し、この冷却部により前記スチームおよび窒素ガスを冷却する請求項6または7に記載の空気入りタイヤの加硫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの加硫装置および方法に関し、さらに詳しくは、スチームと窒素ガスを加硫ブラダに注入してグリーンタイヤを加硫する場合に、加硫ブラダ内部に追加的な装置を配置することなく、加硫ブラダの内部のドレーンの量を低減して上下温度差を効果的に低減するとともに、タイヤの生産性向上を図ることができる空気入りタイヤの加硫装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モールド内部に設置されたグリーンタイヤに加硫ブラダを挿入し、この加硫ブラダにスチーム(加熱媒体)および窒素ガス(加圧媒体)を注入してグリーンタイヤを加硫する方法が知られている。このようにスチームと窒素ガスとを用いる加硫方法では、加硫ブラダ内部に注入したスチームの一部が凝縮して、ドレーンとなって加硫ブラダ内部の下側に流れ落ちる。このドレーンによって加硫ブラダの下側の温度が低下する。
【0003】
また、スチームに比して窒素ガスの比重が大きいため、膨張した加硫ブラダの中では、上方にスチームが圧縮された状態で存在し、その下方に窒素ガスが存在した状態になる。そのため、加硫中の加硫ブラダでは、上側の温度が下側に比して高くなって上下温度差が生じる。これらに起因して、加硫したタイヤでは、加硫した際の上下方向で加硫程度のばらつきが大きくなるという問題がある。加硫時間経過後、加硫ブラダを収縮させる際に加硫ブラダの内部に残留するドレーンの量が多いと、ドレーンを加硫ブラダの外部に排出するために要する時間も長くなり、タイヤの生産性低下の要因になる。
【0004】
加硫ブラダの上下温度差を低減させるため、種々の加硫方法、加硫装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、加硫ブラダの内部にドレーン排出管を設置した加硫機が提案されている。この加硫機では、加硫ブラダの内部に発生したドレーンをドレーン排出管を通じて外部に排出することにより、加硫ブラダの上下温度差を小さくする。しかしながら、この提案の装置では、加硫ブラダの内部にドレーン排出管を新設しなければならない。これに伴なって、新設したドレーン排出管が加硫ブラダを収縮する際に邪魔になる等の問題が生じる。そのため、加硫ブラダの内部には追加的に装置を配置しないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−229010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、スチームと窒素ガスを加硫ブラダに注入してグリーンタイヤを加硫する場合に、加硫ブラダの内部に追加的な装置を配置することなく、加硫ブラダの内部のドレーンの量を低減して上下温度差を効果的に低減するとともに、タイヤの生産性向上を図ることができる空気入りタイヤの加硫装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の空気入りタイヤの加硫装置は、モールド内部に配置されたグリーンタイヤに挿入される加硫ブラダと、この加硫ブラダの内部にスチームおよび窒素ガスを注入する注入ラインを備えた空気入りタイヤの加硫装置において、前記加硫ブラダの内部に連通してこの加硫ブラダの外部に延設された循環ラインと、この循環ラインの途中に配置された循環器および冷却分離機構とを有し、前記加硫ブラダの内部に注入されたスチームおよび窒素ガスを前記循環ラインの途中で前記冷却分離機構によって冷却することにより、スチームの水分を凝縮させて取り除きつつ、前記循環器により前記循環ラインを循環させる
状態を、予め設定された加硫時間が経過するまで維持して、膨張している前記加硫ブラダによって、前記グリーンタイヤの内周面が押圧されて前記グリーンタイヤが前記モールドに押圧しされつつ加熱される構成にしたことを特徴とする。
【0008】
本発明の空気入りタイヤの加硫方法は、モールド内部に配置されたグリーンタイヤに挿入した加硫ブラダの内部にスチームと窒素ガスと注入して膨張させてグリーンタイヤを加硫する空気入りタイヤの加硫方法において、前記加硫ブラダの内部に連通してこの加硫ブラダの外部に延設された循環ラインに、前記加硫ブラダの内部に注入したスチームおよび窒素ガスを流し、循環ラインの途中で冷却分離機構によって冷却することにより、スチームの水分を凝縮させて取り除きつつ、循環ラインを循環させる
状態を、予め設定された加硫時間が経過するまで維持して、膨張している前記加硫ブラダによって、前記グリーンタイヤの内周面を押圧して前記グリーンタイヤを前記モールドに押圧しつつ加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加硫ブラダの内部に連通してこの加硫ブラダの外部に延設された循環ラインに、加硫ブラダの内部に注入したスチームおよび窒素ガスを流し、循環ラインの途中で冷却分離機構によって冷却することにより、スチームの水分を凝縮させて取り除きつつ、循環ラインを循環させるので、加硫ブラダの内部に追加的な装置を配置することなく、加硫ブラダの内部に存在するドレーンの量を低減させることができる。これに伴い、加硫ブラダの内部の上下温度差が効果的に低減し、タイヤの生産性向上を図るにも有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の空気入りタイヤの加硫装置の全体概要を例示する説明図である。
【
図5】従来例と実施例の加硫経過時間とタイヤ加硫ブラダの上下温度差との関係を例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の空気入りタイヤの加硫装置および方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1に例示する本発明の空気入りタイヤの加硫装置1の実施形態は、ゴム製の筒状の加硫ブラダ2を有している。加硫ブラダ2の上側クランプ部3a、下側クランプ部3bはそれぞれ、中心機構4に取り付けられた円盤状の上側クランプ保持部5a、下側クランプ保持部5bにより保持される。中心機構4のセンターポストには、加硫ブラダ2の内部に加熱媒体となるスチームSおよび加圧媒体となる窒素ガスNを注入する注入口6が形成されている。
【0013】
注入口6には、スチーム供給源12に接続されるスチーム注入ライン6aと、窒素ガス供給源13に接続される窒素ガス注入ライン6bとが接続されている。スチーム注入ライン6a、窒素ガス注入ライン6bにはそれぞれ、開閉弁10a、10bが設けられている。それぞれの開閉弁10a、10bは制御装置により弁操作が制御される。
【0014】
さらに、加硫ブラダ2の内部に連通して加硫ブラダ2の外部に延設された循環ライン7と、循環ライン7の途中に配置された循環器8および冷却分離機構9とを備えている。循環器8としては例えば循環ポンプ等が用いられる。循環器8は、加硫工程中に加硫ブラダ2の内部に注入されたスチームSおよび窒素ガスNを循環ライン7に循環させる。
【0015】
冷却分離機構9は、循環ライン7の途中区間を冷却して、その途中区間を流れるスチームSの水分を凝縮させて取り除く。この途中区間は例えば、0℃〜150℃、より好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは50℃〜100℃に冷却される。冷却分離機構9は、循環器8の上流側に設置されているが、下流側に設置することも、上流側および下流側に設置することもできる。
【0016】
図2に例示する冷却分離機構9は、循環ライン7の途中区間に外嵌される冷却部9aと、この途中区間の循環ライン7の内部に突設された衝突板9bと、衝突板9bの下方側でこの途中区間の循環ライン7を下側に膨出させて形成されたトラップ部9cとを備えている。冷却部9aには水等の冷媒が流通する。この実施形態では、トラップ部9cの下方に排出路9dが接続され、循環ライン7の内部のトラップ部9cの上流側および下流側にフィルタ7aが設けられている。
【0017】
衝突板9bの下側への突出長さは、循環ライン7の管内径の50%以上にすることが好ましく、さらに好ましくは循環ライン7の管内径の70%以上、より好ましくは100%以上にする。トラップ部9cの下側への膨出具合は、衝突板9bとのすき間が、衝突板9bが存在していない部分と同等以上確保できるように設定することが好ましい。
【0018】
この加硫装置1を用いて空気入りタイヤを加硫するには、グリーンタイヤGをモールド11の内部に横置き状態で配置する。この実施形態のモールド11は、周方向に複数に分割された環状のセクタ11aと、上側に配置される環状のサイドプレート11b、下側に配置される環状のサイドプレート11cで構成されている。加硫ブラダ2はグリーンタイヤGの内側に挿入され、モールド11を閉型した状態にする。
【0019】
次いで、開閉弁10aのみを開弁して、スチーム注入ライン6aを通じてスチーム供給源12から供給されたスチームSを加硫ブラダ2の内部に注入する。注入するスチームSの温度は例えば150℃〜250℃程度である。注入したスチームSにより加硫ブラダ2を所定内圧P1にして、グリーンタイヤGの内壁面に沿ってドーナツ状に膨張させる。
【0020】
次いで、開閉弁10aを閉弁し開閉弁10bを閉弁して、窒素ガス注入ライン6bを通じて窒素ガスNを加硫ブラダ2の内部に注入して加硫ブラダ2を所定内圧P2に上昇させる。注入する窒素ガスNの温度は常温である。加硫ブラダ2に注入したスチームSの一部は、加硫ブラダ2の内部で凝縮して下方に流れ落ちてドレーンDになる。
【0021】
次いで、開閉弁10a、10bを閉弁した状態で循環器8を作動させて加硫ブラダ2の内部に注入したスチームSおよび窒素ガスNを循環ライン7に流して循環させる。循環ライン7に流されたスチームSおよび窒素ガスNは、その途中区間が冷却分離機構9の冷却部9aによって冷却されているので、この途中区間を通過する際に冷却される。この冷却により
図2に例示するように、スチームSに含まれている水分dが凝縮し、衝突板9bに衝突して下方のトラップ部9cに滴下する。トラップ部9cに滴下した水分dは排水路9dを通じて循環ライン7の外部に排出される。
【0022】
窒素ガスNおよび残りのスチームSは、衝突板9bを迂回して下流側の循環ライン7に流れて再び加硫ブラダ2の内部に還流する。このように冷却分離機構9を用いて、スチームSに含まれている水分dを徐々に取り除きつつ、加硫ブラダ2の内部のスチームSおよび窒素ガスNを循環ライン7に循環させる。以後、予め設定された加硫時間が経過するまでこの状態を維持して、膨張している加硫ブラダ2によって、グリーンタイヤGの内周面を押圧してグリーンタイヤGをモールド10に押圧しつつ加熱する。
【0023】
予め設定された加硫時間が経過した後は、加硫ブラダ2の内部の気体およびドレーンDを、排出ラインを通じて加硫ブラダ2の外部に排出する排出工程を行なう。次いで、上側のサイドプレート10bを上方移動させ、それぞれのセクタ11aを拡径方向に移動させてモールド11を開型する。次いで、加硫されたタイヤを上方移動させて加硫ブラダ2から抜き出して加硫工程が完了する。
【0024】
本発明では、加硫ブラダ2の内部に追加的な装置を配置することなく、冷却分離機構9によってスチームSに含まれる水分dを除去するので加硫ブラダ2の内部に生じるドレーンDの量を低減させることができる。これにより、加硫中に加硫ブラダ2の内部に存在するドレーンDの量が減少するので、加硫ブラダ2の下方側がドレーンDに冷却される程度が小さくなり加硫ブラダ2の上下温度差が効果的に低減する。これに伴って、加硫されたタイヤの加硫具合の上下ばらつきが抑制されるのでタイヤ品質の向上に寄与する。
【0025】
また、加硫ブラダ2の上下温度差が小さくなり、加硫ブラダ2の下側の温度低下が抑制されるので、加硫時間を短縮するには有利になる。さらには、加硫時間が経過後に加硫ブラダ2の内部から気体およびドレーンDを外部に排出させる際に、加硫ブラダ2の内部に残留しているドレーンDの量が従来に比して少なくなるので、この排出工程に要する時間を短縮することができる。そのため、タイヤの生産性向上を図ることもできる。
【0026】
図3に例示する冷却分離機構9は、冷却部9aにより冷却される循環ライン7の途中区間が螺旋状に形成されて螺旋部7Aになっている。その他の構成は
図2の冷却分離機構9と同様の構成である。このように循環ライン7を螺旋状に形成することにより、一段と短いスペースでより効率的に循環ライン7を冷却することができる。この実施形態では、螺旋部7Aの外側面に冷却部9aが外嵌されているが、螺旋部7Aに追加して冷却部9aを内嵌することもできる。
【0027】
上述した実施形態の冷却分離機構9の冷却部9aは、冷媒を用いるいわゆる水冷方式であるが、本発明では循環ライン7の途中区間を空冷により冷却する冷却部9aを用いることもできる。
【0028】
図4に例示する冷却分離機構9は、循環ライン7の途中区間にこの循環ライン7を下側に膨出させて形成された貯水部9eを備えている。この貯水部9eには、スチームSおよび窒素ガスNを循環ライン7に循環させる前に予め水Wが貯留される。
【0029】
この冷却分離機構9を用いた場合は、循環ライン7を循環するスチームSおよび窒素ガスNが貯水部9eに貯水された水Wに接触して冷却される。この冷却によりスチームSに含まれる水分dが貯水部9eに貯水された水Wに捕捉される。窒素ガスNおよび水分dが捕捉されたスチームSは、循環ライン7を経て加硫ブラダ2の内部に還流して循環を繰り返す。この冷却分離機構9によれば、極めて簡素な構造にすることができる。
【実施例】
【0030】
一般的な乗用車用空気入りタイヤのグリーンタイヤのサンプルを横置き状態で、スチームおよび窒素ガスを用いて加硫する際に、
図1に示した同様の加硫装置を用いて冷却分離機構の使用の有無だけを異ならせて同等条件で加硫を行なった。冷却分離機構を使用した場合が実施例、使用しない場合が従来例である。実施例、従来例について、加硫経過時間と加硫ブラダの上下温度差との関係を測定し、その結果を
図5に例示する。また、実施例、従来例について、加硫ブラダの内部から気体およびドレーンを排出する排出工程に要する時間を測定した。
【0031】
図5の結果から実施例は従来例よりも加硫ブラダの上下温度差を小さくできることが分かる。また、実施例は従来例よりも排出工程に要する時間を約20秒短縮することができた。
【符号の説明】
【0032】
1 加硫装置
2 加硫ブラダ
3a 上側クランプ部
3b 下側クランプ部
4 中心機構
5a 上側クランプ保持部
5b 下側クランプ保持部
6 注入口
6a スチーム注入ライン
6b 窒素ガス注入ライン
7 循環ライン
7A 螺旋部
7a フィルタ
8 循環器
9 冷却分離機構
9a 冷却部
9b 衝突板
9c トラップ部
9d 排水路
9e 貯水部
10a、10b 開閉弁
11 モールド
11a セクタ
11b、11c サイドプレート
12 スチーム供給源
13 窒素ガス供給源
G グリーンタイヤ