特許第6244845号(P6244845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244845
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】識別情報読取装置及び識別情報読取方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 9/20 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   G06K9/20 360B
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-237725(P2013-237725)
(22)【出願日】2013年11月18日
(65)【公開番号】特開2015-99422(P2015-99422A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】平安名 啓介
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 一男
(72)【発明者】
【氏名】福崎 浩二
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 秀世
(72)【発明者】
【氏名】三上 博季
【審査官】 佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−111984(JP,A)
【文献】 特開平10−021331(JP,A)
【文献】 特開2012−192742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の表面に刻印された識別情報を読み取る識別情報読取装置であって、
前記識別情報が刻印された鋼材の表面に当該刻印された部位も含め黒色系の塗布剤を塗布する塗布部と、
前記塗布剤が塗布された鋼材の表面に対して光を照射する照明部と、
前記光が照射された鋼材の表面を撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された鋼材の表面の画像から前記識別情報を読み取る画像処理部と、を有することを特徴とする、識別情報読取装置。
【請求項2】
複数の鋼材を前記塗布部に対して相対的に移動させた状態で、
前記塗布部は複数の鋼材の表面に前記塗布剤を連続的に塗布することを特徴とする、請求項1に記載の識別情報読取装置。
【請求項3】
複数の鋼材を前記撮像部に対して相対的に移動させた状態で、
前記撮像部は複数の鋼材の表面を連続的に撮像することを特徴とする、請求項1又は2に記載の識別情報読取装置。
【請求項4】
照明部は、鋼材の表面の垂直面から傾斜した方向に光を照射することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の識別情報読取装置。
【請求項5】
前記撮像部で鋼材の表面を撮像する前に、前記塗布部で前記塗布剤が塗布された鋼材の表面に気体を吹き付けて当該鋼材の表面を乾燥させる乾燥部をさらに有することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の識別情報読取装置。
【請求項6】
鋼材の表面に刻印された識別情報を読み取る識別情報読取方法であって、
前記識別情報が刻印された鋼材の表面に塗布部から当該刻印された部位も含め黒色系の塗布剤を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で前記塗布剤が塗布された鋼材の表面に対して照明部から光を照射しながら、当該光が照射された鋼材の表面を撮像部によって撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像された鋼材の表面の画像から前記識別情報を読み取る画像処理工程と、を有することを特徴とする、識別情報読取方法。
【請求項7】
前記塗布工程において、複数の鋼材を前記塗布部に対して相対的に移動させながら、前記塗布部から複数の鋼材の表面に前記塗布剤を連続的に塗布することを特徴とする、請求項に記載の識別情報読取方法。
【請求項8】
前記撮像工程において、複数の鋼材を前記撮像部に対して相対的に移動させながら、前記撮像部によって複数の鋼材の表面を連続的に撮像することを特徴とする、請求項又はに記載の識別情報読取方法。
【請求項9】
前記撮像工程において、前記照明部は鋼材の表面の垂直面から傾斜した方向に光を照射することを特徴とする、請求項のいずれかに記載の識別情報読取方法。
【請求項10】
前記塗布工程の後であって前記撮像工程の前に、前記塗布剤が塗布された鋼材の表面に気体を吹き付けて当該鋼材の表面を乾燥させる乾燥工程をさらに有することを特徴とする、請求項のいずれかに記載の識別情報読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の表面に刻印された識別情報を読み取る識別情報読取装置、及び当該識別情報読取装置を用いた識別情報読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばビレット、ブルーム、厚板などの鋼材を識別するにあたっては、鋼材の表面に文字(識別情報)を刻印し、当該文字を読み取ることで鋼材を特定することが行われている。かかる文字の読み取りには、種々の方法が用いられる。例えば文字が刻印された鋼材の表面に照明を当てながら、カメラによって鋼材の表面を撮像して画像を取得した後、文字と背景を分離する閾値を用いて画像を2値化し、当該文字の位置を検出して文字を読み取るという方法がある。また、例えば文字の凹凸パターンを光学的に読み取った後、読取信号の3値化処理、凹凸パターンの境界線抽出、及び凹凸パターンを認識する連結処理を順次行うことによって、当該文字を読み取るという方法もある。
【0003】
しかしながら、鋼材の表面には外部環境の影響により錆が発生したり、熱加工等によりスケールが生成するなど、異物が付着している場合があり、これらの異物により文字の識別性が低下して文字を適切に読み取れない場合があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、鋼材の表面に対して互いに異なる方向から、別々の時間で光照射を行い、これを鋼材の表面に垂直な面上に設けた撮像手段でそれぞれ撮像を行い、この撮像した2つの面画像中の文字を含む陰影部を膨張処理し、膨張処理した2つの画像の合成を行って得た画像から文字の読み取りを行うことが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、熱間圧延におけるスケールの発生を抑制するため、文字が刻印された鋼材の表面を600℃〜670℃に冷却することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−21331号公報
【特許文献2】特開平9−253747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、スケール等の異物による陰影部を膨張処理するとしているが、異物の影響が大きく、そもそも文字自体の概略位置すら不明である場合には、膨張処理そのものが適切に行われない。そうすると、膨張処理した2つの画像の合成を行っても文字を適切に読み取ることはできない。
【0008】
また、特許文献2に記載された方法では、鋼材の表面を冷却してもスケールの発生を完全に防止することはできない。さらに、鋼材の表面に錆が発生する場合もある。このように鋼材の表面性状が悪い場合、鋼材の表面を撮像しても濃淡ムラが生じ、上述した2値化処理や3値化処理などの画像処理を行っても、文字を適切に読み取ることができない。
【0009】
以上のように従来の方法において、鋼材の表面に刻印された文字の読み取りには改善の余地がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、鋼材の表面に刻印された識別情報を適切に読み取ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明は鋼材の表面に刻印された識別情報を読み取る識別情報読取装置であって、前記識別情報が刻印された鋼材の表面に当該刻印された部位も含め黒色系の塗布剤を塗布する塗布部と、前記塗布剤が塗布された鋼材の表面に対して光を照射する照明部と、前記光が照射された鋼材の表面を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された鋼材の表面の画像から前記識別情報を読み取る画像処理部と、を有することを特徴としている。なお、本発明における識別情報は、鋼材を識別するための情報であって、ひらがなやアルファベット等の文字、数字、図形など種々の記号を含む。
【0012】
本発明によれば、撮像部で鋼材の表面を撮像するに先だって、鋼材の表面に塗布部から塗布剤を塗布する。そうすると、例えば鋼材の表面に錆やスケール等の異物が付着している場合でも、塗布剤が当該異物を覆いつつ、鋼材の表面に刻印された識別情報の凹凸パターンのみを浮き上がらせることができる。すなわち、塗布剤によって異物の影響が除去され、鋼材の表面性状が改善される。その結果、塗布剤が塗布された鋼材の表面に照明部から光を照射しながら、当該鋼材の表面を撮像部によって撮像すると、撮像された画像の濃淡ムラを抑制でき、当該画像中の識別情報の凹凸パターンを明瞭にすることができる。そうすると、その後に画像処理部で行われる画像処理においてノイズを適切に除去することがきる。したがって、鋼材の表面に刻印された識別情報を適切に読み取ることができる。
【0013】
なお、本発明における識別情報読取装置の画像処理部では、2値化処理や3値化処理などの種々の方法で画像処理を行うことができる。
【0014】
複数の鋼材を前記塗布部に対して相対的に移動させた状態で、前記塗布部は複数の鋼材の表面に前記塗布剤を連続的に塗布してもよい。
【0015】
複数の鋼材を前記撮像部に対して相対的に移動させた状態で、前記撮像部は複数の鋼材の表面を連続的に撮像してもよい。
【0017】
照明部は、鋼材の表面の垂直面から傾斜した方向に光を照射してもよい。
【0018】
前記識別情報読取装置は、前記撮像部で鋼材の表面を撮像する前に、前記塗布部で前記塗布剤が塗布された鋼材の表面に気体を吹き付けて当該鋼材の表面を乾燥させる乾燥部をさらに有していてもよい。
【0019】
別な観点による本発明は、鋼材の表面に刻印された識別情報を読み取る識別情報読取方法であって、前記識別情報が刻印された鋼材の表面に塗布部から当該刻印された部位も含め黒色系の塗布剤を塗布する塗布工程と、前記塗布工程で前記塗布剤が塗布された鋼材の表面に対して照明部から光を照射しながら、当該光が照射された鋼材の表面を撮像部によって撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像された鋼材の表面の画像から前記識別情報を読み取る画像処理工程と、を有することを特徴としている。
【0020】
前記塗布工程において、複数の鋼材を前記塗布部に対して相対的に移動させながら、前記塗布部から複数の鋼材の表面に前記塗布剤を連続的に塗布してもよい。
【0021】
前記撮像工程において、複数の鋼材を前記撮像部に対して相対的に移動させながら、前記撮像部によって複数の鋼材の表面を連続的に撮像してもよい。
【0023】
前記撮像工程において、前記照明部は鋼材の表面の垂直面から傾斜した方向に光を照射してもよい。
【0024】
前記識別情報読取方法は、前記塗布工程の後であって前記撮像工程の前に、前記塗布剤が塗布された鋼材の表面に気体を吹き付けて当該鋼材の表面を乾燥させる乾燥工程をさらに有していてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、鋼材の表面に刻印された識別情報を適切に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施の形態にかかる識別情報読取装置の構成の概略を示す説明図である。
図2】塗布部の構成の概略を示す側面図である。
図3】塗布部の構成の概略を示す側面図である。
図4】撮像部及び照明部の構成の概略を示す側面図である。
図5】撮像部及び照明部の構成の概略を示す側面図である。
図6】識別情報読取装置を用いて鋼材の刻印面の識別情報を読み取る様子を示す説明図である。
図7】鋼材の刻印面に異物が付着した様子を示す説明図である。
図8】鋼材の刻印面に塗布剤が塗布された様子を示す説明図である。
図9】他の実施の形態にかかる識別情報読取装置の構成の概略を示す説明図である。
図10】他の実施の形態にかかる鋼材の刻印面に異物が付着した様子を示す説明図である。
図11】他の実施の形態にかかる鋼材の刻印面に塗布剤が塗布された様子を示す説明図である。
図12】他の実施の形態にかかる鋼材の刻印面に異物が付着した様子を示す説明図である。
図13】他の実施の形態にかかる鋼材の刻印面に塗布剤が塗布された様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
図1は、本実施の形態にかかる識別情報読取装置1の構成の概略を示す説明図である。識別情報読取装置1は、鋼材10の端面11(以下、「刻印面11」という場合がある。)に刻印された識別情報12を読み取る。識別情報12は、鋼材10を識別するための情報であって、図示の例ではアルファベットと数字を含むが、その他にひらがな等の文字や図形など種々の記号を含んでいてもよい。
【0029】
鋼材10は、その長手方向がY方向に延伸した状態で、搬送テーブル20上をX方向正方向側に複数連続して搬送されている。搬送テーブル20の構成としては、複数の鋼材10を連続的に搬送するものであれば特に限定されるものでないが、例えば搬送テーブル20はX方向に複数並べて配置された搬送ローラ(図示せず)によって鋼材10を搬送してもよいし、或いはコンベアによって鋼材10を搬送してもよい。また鋼材10の刻印面11は、当該鋼材10のY方向負方向側の端面となっている。そして、識別情報読取装置1は、鋼材10のY方向負方向側に設置されている。
【0030】
識別情報読取装置1は、鋼材10の刻印面11に塗布剤Dを塗布する塗布部30と、鋼材10の刻印面11を撮像する撮像部31と、を有している。塗布部30と撮像部31は、鋼材10の搬送方向(X方向正方向)に並べて配置されている。
【0031】
先ず、塗布部30の構成及びこれに付随する部材の構成について説明する。塗布部30には、例えば塗布剤Dを吐出する塗布ノズルが用いられる。塗布剤Dの種類は特に限定されるものではないが、後述するように撮像部31で刻印面11を撮像する際に、識別情報12の凹凸パターンをより際立たせるため、黒色系の塗布剤を用いるのが好ましい。また本実施の形態においては、塗布剤Dとして例えば現像剤が用いられる。
【0032】
塗布部30の配置は、当該塗布部30によって塗布剤Dが刻印面11に面内均一に塗布される位置であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態においては図2に示すように、塗布部30の先端と刻印面11との距離Hが例えば150mmとなる位置に塗布部30が配置されている。
【0033】
また、図2及び図3に示すように塗布部30の先端には、塗布部30から吐出された塗布剤Dに対する外部雰囲気の影響を抑制するためのカバー32が設けられている。カバー32は、例えば塗布部30の周囲を覆う略円錐台形状を有し、塗布部30側から刻印面11側に向かってその径がテーパ状に拡大するように構成されている。このカバー32によって、塗布部30によって刻印面11に塗布された塗布剤Dの面内均一性が維持される。
【0034】
塗布部30は、図1に示すように供給管33を介して、内部に塗布剤Dを貯留して塗布部30に塗布剤Dを供給する加圧タンク34に連通している。加圧タンク34の内部には、例えばエアモータによる攪拌機(図示せず)が設けられている。この攪拌機によって塗布剤Dである現像剤中の紛体の沈殿が抑制される。また供給管33には、電磁弁(図示せず)やレギュレータ(図示せず)を備えた供給制御部35が設けられている。この供給制御部35によって、加圧タンク34から塗布部30に供給される塗布剤Dの流量や圧力が制御される。
【0035】
次に、撮像部31の構成及びこれに付随する部材の構成について説明する。撮像部31には、例えば鋼材10の刻印面11を撮像するカメラが用いられる。撮像部31の構成は刻印面11を撮像できれば特に限定されるものではなく、例えばビデオカメラやCCDカメラ、CMOSカメラなど種々のカメラが用いられる。
【0036】
撮像部31は、図4に示すように鋼材10の刻印面11の垂直面11a上であって、且つ当該刻印面11の鉛直方向中央位置に対向する位置に配置される。また撮像部31は、移動機構(図示せず)によって、X方向及びY方向の水平方向に移動自在に構成されている。このように撮像部31が移動することによって、後述するように撮像部複数の鋼材10の刻印面11の撮像を効率よく行うことができる。
【0037】
また、図4及び図5に示すように撮像部31の先端には、撮像部31が損傷を被るのを抑制するためのカバー36が設けられている。カバー36は、例えば撮像部31の周囲を覆う略四角錐台形状を有し、撮像部31側から刻印面11側に向かってその径がテーパ状に拡大するように構成されている。
【0038】
撮像部31の周囲を覆うカバー36の各辺には、鋼材10の刻印面11に対して光Lを照射する照明部37が4つ設けられている。照明部37から照射される光Lは、撮像部31が刻印面11を撮像できるものであれば特に限定されるものではないが、例えばLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)やレーザ光が用いられる。
【0039】
照明部37は、カバー36の内側面に沿って設けられ、刻印面11の垂直面11aから傾斜した方向に光Lが照射されるように設けられている。このように照明部37からの光Lが刻印面11に対して斜めに照射されることにより、後述するように撮像部31で刻印面11を撮像する際に、当該刻印面11に刻印された識別情報12の凹凸パターンを明瞭に浮かび上がらせることができる。
【0040】
撮像部31で撮像された画像(画像信号)は、図1に示すように画像処理部38に出力される。画像処理部38では、撮像部31で撮像された画像から識別情報12を読み取る。具体的には、例えば画像処理部38では、撮像部31で撮像された画像において、識別情報12と背景のコントラストの差を大きくする処理を施し、その後、識別情報12と背景を分離する閾値を用いて画像を2値化する。次に、2値化された画像に含まれる、例えば高周波のノイズをローパスフィルタ等を用いて除去し、さらに識別情報12と背景の境界を強調する処理を行う。その後、このように処理された画像から識別情報12を読み取る。なお、この画像処理部38における画像処理は本実施の形態に限定されず、種々の画像処理を用いることができる。
【0041】
本実施の形態にかかる識別情報読取装置1は以上のように構成されており、次にこの識別情報読取装置1により、鋼材10の刻印面11に刻印された識別情報12を読み取る方法について説明する。
【0042】
図6に示すように、先ず、搬送テーブル20上を所定の速度で複数の鋼材10が順次搬送される。そして、搬送中の鋼材10に対してY方向の位置調節が行われる。具体的には、複数の鋼材10の刻印面11のY方向位置が一致し、当該刻印面11がX方向に揃うように鋼材10の位置調節が行われる。
【0043】
その後、鋼材10は、その刻印面11が塗布部30に対向する位置に搬送される。このように鋼材10が塗布部30に到達したことは、例えば位置センサ(図示せず)を用いて検出される。そして、鋼材10の刻印面11に塗布部30から塗布剤Dが塗布される。なお、本実施の形態(例えば図1参照)では刻印面11全面に均一に塗布剤Dが塗布されるが、塗布剤Dは必ずしも刻印面11全面に塗布されている必要はなく、少なくとも識別情報12を覆うように塗布されればよい。
【0044】
ここで、刻印面11に塗布剤Dが塗布される様子について説明する。先ず、塗布剤Dが塗布される前の刻印面11には、例えば図7に示すように錆やスケール等の異物Fが付着している。図示の例では、識別情報12は断面視において三角形状を有する。また本実施の形態においては、異物Fは識別情報12にかかって付着しており、刻印面11の表面から識別情報12である窪み部(凹部)に亘って付着している。かかる場合、異物Fによって識別情報12の凹凸パターンが明瞭にならず、仮にこの状態で撮像部31によって刻印面11を撮像しても濃淡ムラが生じ、識別情報12を適切に読み取ることができない。
【0045】
そこで、塗布部30から刻印面11に対して塗布剤Dを塗布する。塗布剤Dは、例えば図8に示すように刻印面11、識別情報12及び異物Fを覆って塗布される。そうすると、異物Fに対して塗布剤Dの厚みが十分に大きいため、当該塗布剤Dの表面には識別情報12に対応した窪み部Dが形成される。このように塗布剤Dの表面に窪み部Dのみを浮き上がらせ、すなわち刻印面11に識別情報12の凹凸パターンのみを浮き上がらせることができる。したがって、塗布剤Dによって異物Fの影響が除去され、刻印面11の表面性状が改善される。
【0046】
その後、図6に示すように鋼材10は、その刻印面11が撮像部31に対向する位置に搬送される。このように鋼材10が撮像部31に到達したことは、例えば位置センサ(図示せず)を用いて検出される。
【0047】
続いて、4つの照明部37から刻印面11に光Lを照射する。このとき、上述したように各照明部37から照射される光Lは刻印面11に対して斜めに照射されるので、当該刻印面11に刻印された識別情報12の凹凸パターン、より正確には塗布剤Dの窪み部Dを明瞭に浮かび上がらせることができる。
【0048】
また、照明部37によって光Lが照射された刻印面11を撮像部31によって撮像する。上述の通り、塗布剤Dによって刻印面11の識別情報12の凹凸パターンが明瞭になっているので、当該刻印面11を撮像した画像の濃淡ムラが抑制され、画像中の識別情報12の凹凸パターンも明瞭になる。そして、撮像部31で撮像された画像(画像信号)は、画像処理部38に出力される。画像処理部38では、画像の2値化処理を行い、さらにノイズを適切に除去して、識別情報12を読み取る。
【0049】
そして、鋼材10は搬送テーブル20上を連続的に搬送されており、当該搬送中の鋼材10に対して、上記塗布部30による塗布剤Dの塗布、撮像部31による刻印面11の撮像、及び画像処理部38による識別情報12の読み取りが連続して行われる。
【0050】
なお、撮像部31はX方向及びY方向の水平方向に移動自在に構成されており、例えば撮像部31がX方向負方向側に移動することによって、複数の鋼材10の刻印面11をより迅速に撮像する。
【0051】
以上の実施の形態によれば、鋼材10の刻印面11に塗布部30から塗布剤Dを塗布しているので、刻印面11に錆やスケール等の異物Fが付着している場合でも、塗布剤Dが異物Fを覆いつつ、刻印面11の識別情報12の凹凸パターンのみを浮き上がらせることができる。すなわち、塗布剤Dによって異物Fの影響が除去され、刻印面11の表面性状が改善される。その結果、塗布剤Dが塗布された刻印面11に照明部37から光Lを照射しながら、当該刻印面11を撮像部31によって撮像すると、撮像された画像の濃淡ムラを抑制でき、当該画像中の識別情報12の凹凸パターンを明瞭にすることができる。そうすると、その後に画像処理部38で行われる画像処理においてノイズを適切に除去することがきる。したがって、刻印面11に刻印された識別情報12を適切に読み取ることができる。
【0052】
また、搬送テーブル20上で搬送中の複数の鋼材10に対して、塗布部30による塗布剤Dの塗布、撮像部31による刻印面11の撮像、及び画像処理部38による識別情報12の読み取りが連続して行われるので、複数の鋼材10を効率よく識別することができる。特に撮像部31は水平方向に移動自在に構成されているので、複数の鋼材10の刻印面11を迅速に撮像でき、当該複数の鋼材10を識別する効率がより向上する。
【0053】
また、塗布部30から吐出される塗布剤Dは黒色系であるため、撮像部31で刻印面11を撮像する際に、識別情報12の凹凸パターンをより際立たせることができる。したがって、識別情報12の読み取り精度を向上させることができる。
【0054】
さらに、照明部37から照射される光Lは刻印面11に対して斜めに照射されるので、識別情報12の凹凸パターンを明瞭に浮かび上がらせることができる。かかる観点からも、識別情報12の読み取り精度を向上させることができる。
【0055】
以上の実施の形態の識別情報読取装置1は、図9に示すように、塗布部30で塗布剤Dが塗布された鋼材10の刻印面11に気体を吹き付けて当該刻印面11を乾燥させる乾燥部40を有していてもよい。乾燥部40は、X方向において塗布部30と撮像部31の間に配置される。
【0056】
乾燥部40は、供給管41を介して、内部に気体、例えば乾燥空気を貯留する気体供給源42に連通している。供給管41には、電磁弁(図示せず)やレギュレータ(図示せず)を備えた供給制御部43が設けられている。この供給制御部43によって、気体供給源42から乾燥部40に供給される気体の流量や圧力が制御される。
【0057】
かかる場合、塗布部30によって刻印面11に塗布剤Dが塗布された鋼材10は、乾燥部40に対向する位置に搬送される。このように鋼材10が乾燥部40に到達したことは、例えば位置センサ(図示せず)を用いて検出される。そして、刻印面11に対して乾燥部40から気体が吹き付けられ、当該刻印面11が乾燥される。
【0058】
本実施の形態によれば、塗布部30で刻印面11に塗布剤Dを塗布した直後に、乾燥部40によって塗布剤Dを乾燥させることができる。そうすると、刻印面11における塗布剤Dの塗布ムラを抑制することができ、その後撮像部31において刻印面11を適切に撮像し、当該撮像された画像の濃淡ムラを抑制することができる。したがって、刻印面11に刻印された識別情報12をより適切に読み取ることができる。
【0059】
なお、塗布剤Dとして速乾性のあるものを使用した場合、上記乾燥部40を省略してもよい。
【0060】
以上の実施の形態の識別情報読取装置1において、塗布部30の水平方向の位置は固定されていたが、塗布部30は、撮像部31と同様にX方向及びY方向の水平方向に移動自在に構成されていてもよい。かかる場合、搬送テーブル20上で搬送中の複数の鋼材10に対して、塗布部30が水平方向に移動することによって、当該複数の鋼材10の刻印面11に塗布剤Dをより迅速に塗布することができる。したがって、識別情報読取装置1において、刻印面11の識別情報12の読み取りをより効率よく行うことができる。
【0061】
以上の実施の形態では、識別情報12が刻印される刻印面11は鋼材10の端面であったが、刻印面11はこれに限定されず、鋼材10における任意の表面であってもよい。
【0062】
また、以上の実施の形態では、図7及び図8に示したように識別情報12の断面形状は三角形状であったが、これに限定されない。識別情報12の断面形状は、例えば図10及び図11に示すように台形状であってもよいし、例えば図12及び図13に示すように長方形状であってもよい。図10及び図12に示すようにいずれの断面形状の識別情報12に異物Fが付着していても、図11及び図13に示すように刻印面11に対して塗布剤Dを塗布すると、塗布剤Dの表面に窪み部Dのみを浮き上がらせ、すなわち刻印面11に識別情報12の凹凸パターンのみを浮き上がらせることができる。したがって、刻印面11に刻印された識別情報12を適切に読み取ることができる。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の識別情報読取装置を用いて鋼材の表面に刻印された識別情報を読み取る効果について説明する。本発明にかかる実施例1においては、図1に示した識別情報読取装置1を用いて、鋼材10の刻印面11の識別情報12の読み取りを行った。すなわち、実施例1では、塗布部30による刻印面11への塗布剤Dの塗布、撮像部31による刻印面11の撮像、及び画像処理部38による識別情報12の読み取りが順次行われた。これに対して、比較例1では、塗布部30が省略された識別情報読取装置を用いて、刻印面11の識別情報12の読み取りを行った。すなわち、比較例1では、刻印面11に塗布剤を塗布せずに、撮像部31による刻印面11の撮像、及び画像処理部38による識別情報12の読み取りが行われた。
【0065】
実施例1と比較例1の比較に際しては、鋼材10Aと鋼材10Bの2種類の鋼材を用いて行われた。鋼材10Aは、分塊圧延材である。また鋼材10Bは、ビレット用連続鋳造材である。なお、これら鋼材10Aの刻印面11と鋼材10Bの刻印面11には、それぞれ識別情報12にかかるように錆が発生している。
【0066】
以上の条件で刻印面11の識別情報12を読み取った結果を表1に示す。表1中、分母は識別情報12の読み取りを行った鋼材10A、10Bの総数を示し、分子は識別情報12の読み取りが適切に行われた鋼材10A、10Bの数を示している。
【0067】
表1を参照すると、鋼材10Aと鋼材10B共に、比較例1に比べて実施例1の方が識別情報12の読取率が格段に向上していることが分かる。しかも、実施例1においては、識別情報12の読取率はほぼ100%である。したがって、本発明の識別情報読取装置1によれば、鋼材10の刻印面11に刻印された識別情報12を適切に読み取れることが分かった。
【0068】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、鋼材の表面に刻印された識別情報(文字や数字等)を読み取る際に有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 識別情報読取装置
10 鋼材
11 刻印面
11a 垂直面
12 識別情報
20 搬送テーブル
30 塗布部
31 撮像部
32 カバー
33 供給管
34 加圧タンク
35 供給制御部
36 カバー
37 照明部
38 画像処理部
40 乾燥部
41 供給管
42 気体供給源
43 供給制御部
D 塗布剤
窪み部
F 異物
L 光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13