(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
<<第1実施形態>>
図1は、本実施形態に係る電池制御装置200を示す構成図である。本実施形態に係る電池制御装置200は、組電池100と接続され、組電池100に含まれる二次電池の性能劣化を判定するための装置である。
【0011】
組電池100は、たとえば、ハイブリッド自動車または電気自動車に搭載される組電池であり、
図1に示すように、m個の電池モジュールC(P1)〜C(Pm)を直列接続することで構成される。そして、組電池100を構成する電池モジュールC(P1)〜C(Pm)は、それぞれn個の二次電池を並列接続することで形成される。本実施形態においては、電池モジュールC(P1)を構成するn個の二次電池C11〜C1nは、たとえば、図示しないバスバーなどによって互いに並列接続される。なお、バスバーとしては、たとえば、銅により構成されたものを用いることができ、このようなバスバーが各二次電池の正極側および負極側の両側にそれぞれに配置されることで、二次電池同士が並列接続される。同様に、電池モジュールC(P2)を構成するn個の二次電池C21〜C2nや、電池モジュールC(Pm)を構成するn個の二次電池Cm1〜Cmnも互いに並列接続されている。
【0012】
本実施形態に係る電池制御装置200は、組電池100に含まれる二次電池について、容量の低下による性能劣化、または内部抵抗の増大による性能劣化の有無を判定するための電池制御装置であり、
図1に示すように、測定部210と、劣化検出部220とを備えている。
【0013】
電池制御装置200の測定部210は、組電池100と接続されており、組電池100の各電池モジュールC(P1)〜C(Pm)をそれぞれ構成する二次電池の電圧および電流を取得するとともに、各二次電池の充放電を行う。
【0014】
ここで、
図2は、組電池100に含まれる二次電池のうち、電池モジュールC(P1)を構成する二次電池C11、C12のみを抜き出して、測定部210とともに示した図である。
図2に示すように、測定部210は、充放電器211と、制御装置212とを備えており、充放電器211が、互いに並列接続された二次電池C11、C12と直接接続されている。
【0015】
以下、
図2を参照し、組電池100から抜き出した二次電池C11、C12について、容量の低下による性能劣化を判定する方法を説明する。
【0016】
まず、測定部210の充放電器211は、制御装置212からの指令により、充放電器211と接続された電池モジュールC(P1)の二次電池C11、C12に対し、性能劣化の判定を行うための所定の電流パターンを印加する。具体的には、充放電器211は、二次電池C11、C12に対して、
図3に示す所定の電流パターンを印加する。すなわち、充放電器211は、二次電池C11、C12のそれぞれに対して、二次電池ごとに、
図3に示すように、時間t
0〜t
1で電流C
dischargeを印加し、時間t
1〜t
2では電流の印加を休止し、時間t
2〜t
3で電流C
chargeを印加し、時間t
3〜t
4では電流の印加を休止し、その後時間t
4から再び電流C
dischargeを印加するような電流パターンを印加する。なお、本実施形態においては、充放電器211は、二次電池C11、C12に対して、電流C
dischargeを印加することで二次電池C11、C12を放電させ、また、電流C
chargeを印加することで二次電池C11、C12を充電させる。
【0017】
そして、測定部210の制御装置212は、充放電器211により電池モジュールC(P1)の二次電池C11、C12に対して上述した
図3に示す電流パターンが印加された際に、二次電池C11、C12に実際に流れた電流のプロファイルを、二次電池C11、C12が有する電流計120によって取得する。
【0018】
なお、
図1では図示省略したが、
図2に示すように、二次電池C11、C12は、それぞれ、電圧および電流を測定するための電圧計110および電流計120を有している。電圧計110としては、特に限定されず、公知の電圧計を用いることができる。また、電流計120としては、特に限定されないが、たとえば、シャント抵抗を用いた方式の電流計を用いることができる。すなわち、二次電池に対してシャント抵抗を並列接続し、二次電池に電流が流れた際におけるシャント抵抗の電圧を検出し、検出したシャント抵抗の電圧に基づいて、二次電池に流れた電流を求める方式の電流計を用いることができる。
【0019】
本実施形態においては、上述したように二次電池C11、C12に対して
図3に示す電流パターンを印加して得られる電流プロファイルにおいては、二次電池C11、C12の中に、容量の低下により性能劣化した二次電池が含まれているか否かに応じて電流の挙動が変化する。そのため、本実施形態においては、このような性質を利用し、上述した電流パターンを二次電池C11、C12に印加して得られる電流プロファイルに基づいて、二次電池C11、C12に、容量の低下により性能劣化した二次電池が含まれているか否かを判定する。
【0020】
ここで、
図4(A)は、二次電池C11、C12がいずれも、容量の低下や内部抵抗の増大などによる性能劣化が発生していない二次電池(あるいは、性能劣化の度合いが所定値未満の二次電池)(以下、「正常電池」と呼ぶ)である場合に、このような二次電池C11、C12に対して、充放電器211により
図3に示す電流パターンを印加した際に得られる電流プロファイルを示すグラフである。なお、
図4(A)に示すグラフにおいては、二次電池C11に流れた電流を実線で示し、二次電池C12に流れた電流を破線で示した。
【0021】
一方、
図4(B)は、二次電池C11aとして正常電池を、二次電池C12aとして容量の低下により性能劣化した二次電池(以下、「容量劣化電池」と呼ぶ)をそれぞれ用い、このような二次電池C11a、C12aを
図2に示すように並列接続し、充放電器211により上記電流パターンを印加した際における、二次電池C11a、C12aに流れた電流のプロファイルを示すグラフである。なお、
図4(B)に示すグラフにおいては、二次電池C11aに流れた電流を実線で示し、二次電池C12aに流れた電流を破線で示した。
【0022】
図4(A)、
図4(B)に示すグラフを比較すると、
図4(B)に示すグラフにおいては、時間t
3〜時間t
4で、各二次電池に大きな電流が流れていることが確認できる。本実施形態においては、このような電流は、以下のようにして流れるものである。
【0023】
すなわち、二次電池C11a、C12aに対して、時間t
2〜t
3で充電を実行した後に、充電が休止されて無負荷状態となった時点では、正常電池である二次電池C11aの方が、容量劣化電池である二次電池C12aよりも適切に充電されたことで端子電圧が高くなる。そのため、充電が休止された直後の時間t
3〜時間t
4において、二次電池C11aと二次電池C12aとの間に端子電圧の差が生じ、これにより、二次電池C11aから二次電池C12aへ電流が流れ、これが
図4(B)のグラフ上の時間t
3〜時間t
4に流れる電流として検出される。
【0024】
なお、この際においては、二次電池C11aから二次電池C12aへ流れる電流の大きさは、二次電池C12aの容量が低下しているほど大きくなる。また、二次電池の容量の低下は、たとえば、二次電池中の電解液が減るなどして、充放電を行うことができるリチウムイオンが減少してしまうことなどに起因して発生する。
【0025】
本実施形態においては、このように、互いに並列接続された二次電池に上記電流パターンが印加された際における時間t
3〜時間t
4、すなわち、充電が休止され各二次電池が無負荷状態となった直後に、二次電池の間に流れる電流を、緩和電流I
αとして検出する。なお、
図4(B)においては、時間t
3〜時間t
4における、二次電池C11aに流れた緩和電流I
αを緩和電流I
α_C11aとして、二次電池C12aに流れた緩和電流I
αを緩和電流I
α_C12aとして、それぞれ示した。
【0026】
そして、本実施形態においては、このように、二次電池の容量が低下しているほど、二次電池の間に流れる緩和電流I
αが大きくなるという特性を利用して、電池制御装置200の劣化検出部220により、互いに並列接続された二次電池について、容量の低下による性能劣化の判定を行う。なお、上述した
図4(B)のグラフにおいては、2つの二次電池が並列接続されている場面に、各二次電池に緩和電流I
αが流れる例を示したが、二次電池が3つ以上並列接続されている場面においても、同様にして、各二次電池に対して
図3に示す電流パターンを印加することにより、正常電池から容量劣化電池に緩和電流I
αが流れる。
【0027】
以下、
図4(B)に示すグラフを参照して、電池制御装置200の劣化検出部220により、互いに並列接続された二次電池C11a、C12aについて、容量の低下による性能劣化を判定する具体的な方法を説明する。
【0028】
容量の低下による性能劣化を判定するための劣化検出部220は、
図1に示すように、情報管理部221と、演算部222と、判定部223と、検出部224と、分析部225と、予測部226と、通知部227とを備えている。
【0029】
まず、劣化検出部220は、測定部210により、二次電池C11a、C12aに対して
図3に示す電流パターンを印加した際における、二次電池C11a、C12aに流れる緩和電流I
α(すなわち、
図4(B)における、二次電池C11aの緩和電流I
α_C11a、および二次電池C12aの緩和電流I
α_C12a)を検出し、検出した緩和電流I
αの情報を、情報管理部221に記憶させる。
【0030】
次いで、劣化検出部220は、演算部222によって、情報管理部221に記憶された緩和電流I
αの情報を読み出し、読み出した緩和電流I
αの積分値である緩和電流積分値を演算する。具体的には、劣化検出部220は、二次電池C11a、C12aの緩和電流I
α_C11aおよび緩和電流I
α_C12aを読み出し、その後、緩和電流I
α_C11aの積分値を緩和電流積分値I
int_C11aとして演算し、また、緩和電流I
α_C12aの積分値を緩和電流積分値I
int_C12aとして演算する。
【0031】
そして、劣化検出部220は、判定部223によって、緩和電流積分値I
int_C11aおよび緩和電流積分値I
int_C12aが、予め設定された電流積分閾値I
int_ref以上であるか否かを、それぞれ判定する。
【0032】
次いで、劣化検出部220は、検出部224によって、二次電池C11a、C12aが容量の低下により性能劣化しているか否かの判定を行う。具体的には、劣化検出部220は、上記判定部223により緩和電流積分値I
int_C11aおよび緩和電流積分値I
int_C12aの少なくとも一方が電流積分閾値I
int_ref以上であると判定された場合には、互いに並列接続された二次電池C11a、C12aのうちいずれかが、容量劣化電池であると判定する。
【0033】
なお、このような二次電池の劣化を判定するための電流積分閾値I
int_refは、たとえば、次にようにして設定することができる。すなわち、予め、正常電池と、容量劣化電池(たとえば、正常電池と比較して、容量が所定の割合まで低下した二次電池など)とを並列接続した後、上述した
図3に示す電流パターンを印加する。この際において、容量劣化電池について、充電を休止した直後の時間t
3〜時間t
4に、容量劣化電池に流れる緩和電流I
αを測定し、この緩和電流I
αを積分して得られる値に基づいて、電流積分閾値I
int_refを設定することができる。
【0034】
なお、
図4(B)に示すグラフにおいては、2つの二次電池C11a、C12aのみが並列接続されている場面における電流プロファイルを示しているため、二次電池C11a、C12aの間に流れた緩和電流I
α_C11aおよび緩和電流I
α_C12aについては、その電流の向きが逆転しているものの、通常、その大きさがほぼ同等である。そのため、これらを積分して得られる緩和電流積分値I
int_C11aと、緩和電流積分値I
int_C12aとはほぼ同等の値となる。これにより、緩和電流積分値I
int_C11aが電流積分閾値I
int_ref以上である場合には、通常、緩和電流積分値I
int_C12aについても電流積分閾値I
int_ref以上となる。
【0035】
また、本実施形態においては、上述したように、互いに並列接続された二次電池C11a、C12aのうちいずれかが、容量劣化電池であると判定された場合において、その後、さらに二次電池C11a、C12aのうちどちらが容量劣化電池であるか特定する。
【0036】
具体的には、上記電流パターンを印加した際において、時間t
3〜時間t
4(充電を休止して二次電池C11a、C12aを無負荷状態とした直後)に流れた緩和電流I
αが、充電電流であった二次電池を、容量劣化電池であると特定する。すなわち、上述したように、充電が休止されて無負荷状態となった直後の時間t
3〜時間t
4では、正常電池である二次電池C11aの方が、容量劣化電池である二次電池C12aよりも適切に充電されたことで端子電圧が高くなる。そのため、端子電圧の差に起因して二次電池C11aから二次電池C12aへ電流が流れ、その結果として、二次電池C11aには放電電流が、二次電池C12aには充電電流がそれぞれ流れることとなる。これにより、本実施形態においては、このような特性を利用し、
図4(B)に示すように、充電が行われた直後の時間t
3〜時間t
4に、充電電流が流れた二次電池C12aを、容量劣化電池であると特定することができる。
【0037】
以上のようにして、劣化検出部220により、互いに並列接続された二次電池C11a、C12aについて、容量の低下による性能劣化の判定が行われる。
【0038】
本実施形態においては、互いに並列接続された二次電池に対して上述した電流パターンを印加した際に、二次電池間において端子電圧の差に起因して流れる電流を、緩和電流として検出し、検出された緩和電流の積分値である緩和電流積分値が、所定の電流積分閾値I
int_ref以上であるか否かを判定することにより、並列接続されている二次電池の中に、容量劣化電池が含まれていると判定する。そのため、本実施形態によれば、並列接続された二次電池の性能劣化の判定を適切に行うことができる。
【0039】
また、本実施形態においては、互いに並列接続された二次電池に対して上述した電流パターンを印加した際に、充電を休止して各二次電池を無負荷状態とした直後に、充電電流が流れた二次電池を、容量劣化電池であると特定する。そのため、本実施形態によれば、並列接続された二次電池のうち、性能劣化が発生している二次電池を適切に特定することができる。
【0040】
なお、上述した例では、
図4(B)に示す場面において、容量の低下による性能劣化の判定を行う対象として、互いに並列接続された2つの二次電池を用いた例を示したが、本実施形態においては、このような性能劣化の判定を行う対象は、互いに並列接続された3つ以上の二次電池としてもよい。
【0041】
たとえば、互いに並列接続された3つ以上の二次電池について、容量の低下による性能劣化の判定を行う場合には、まず、並列接続されている全ての二次電池に対して、二次電池ごとに上述した
図3に示す電流パターンを印加する。そして、各二次電池について、それぞれ、充電を休止した直後の時間t
3〜時間t
4に流れる緩和電流I
αの測定、およびこれを積分して得られる緩和電流積分値の演算を行う。その後、演算された緩和電流積分値が、所定の電流積分閾値I
int_ref以上である二次電池が存在した場合には、緩和電流積分値が電流積分閾値I
int_ref以上である二次電池、およびこれに並列接続されている二次電池の中に、容量劣化電池が含まれていると判定することができる。
【0042】
なお、この際においては、電流積分閾値I
int_refは、並列接続された二次電池の数に応じて変化させてもよい。たとえば、二次電池が3つ以上並列接続されている場合において、正常電池が複数存在するときには、充電を休止した直後の時間t
3〜時間t
4に、容量劣化電池に対して、複数の正常電池から、一時的に大きな緩和電流I
αが流れることが考えられる。この際において、緩和電流I
αに基づいて演算される緩和電流積分値が大きくなるような場合には、これに応じて電流積分閾値I
int_refを大きくしてもよい。
【0043】
次いで、本実施形態において、並列接続された二次電池について、内部抵抗の増大による性能劣化の判定を行う方法を、
図5(A)および
図5(B)に示すグラフを参照して説明する。
【0044】
ここで、
図5(A)は、二次電池C11b、C12bとして正常電池を用い、このような二次電池C11b、C12bを
図2に示すように並列接続し、上記電流パターンを印加した際における、二次電池C11b、C12bに流れた電流のプロファイルを示すグラフである。なお、
図5(A)に示すグラフにおいては、二次電池C11bに流れた電流を実線で示し、二次電池C12bに流れた電流を破線で示した。
【0045】
一方、
図5(B)は、二次電池C11cとして正常電池を、二次電池C12cとして内部抵抗の増大により性能劣化した二次電池(以下、「内部抵抗劣化電池」と呼ぶ)をそれぞれ用い、このような二次電池C11c、C12cを
図2に示すように並列接続し、上記電流パターンを印加した際における、二次電池C11c、C12cの電流プロファイルを示すグラフである。なお、
図5(B)に示すグラフにおいては、二次電池C11cに流れた電流を実線で示し、二次電池C12cに流れた電流を破線で示した。
【0046】
図5(A)、
図5(B)に示すグラフを比較すると、
図5(B)に示すグラフにおいては、時間t
1〜時間t
2で、各二次電池に大きな電流が流れていることが確認できる。本実施形態においては、このような電流は、以下のようにして流れるものである。
【0047】
すなわち、時間t
0〜t
1で二次電池C11c、C12cを放電させた後に、放電が休止されて無負荷状態となった時点では、正常電池であるC11cの方が、内部抵抗劣化電池である二次電池C12cよりも適切に放電されたことで端子電圧が低くなる。そのため、放電が休止された直後の時間t
1〜時間t
2において、二次電池C11cと二次電池C12cとの間に端子電圧の差が生じ、これにより、二次電池C12cから二次電池C11cへ電流が流れ、これが
図5(B)のグラフ上の時間t
1〜時間t
2に流れる電流として検出される。
【0048】
なお、この際においては、二次電池C12cから二次電池C11cへ電流が流れる時間は、二次電池C12cの内部抵抗が増大しているほど長くなる。
【0049】
本実施形態においては、このように、互いに並列接続された二次電池に上記電流パターンが印加された際における、時間t
1〜時間t
2、すなわち、放電が休止され各二次電池が無負荷状態となった直後に、二次電池の間に流れる電流を、緩和電流I
βとして検出する。なお、
図5(B)においては、時間t
1〜時間t
2における、二次電池C11cに流れた緩和電流I
βを緩和電流I
β_C11cとして、二次電池C12cに流れた緩和電流I
βを緩和電流I
β_C12cとして、それぞれ示した。
【0050】
そして、本実施形態においては、このように、二次電池の内部抵抗が増大しているほど、二次電池の間に緩和電流I
βが流れる時間が長くなるという特性を利用して、劣化検出部220により、互いに並列接続された二次電池について、内部抵抗の増大による性能劣化の判定を行う。なお、上述した
図5(B)のグラフにおいては、2つの二次電池が並列接続されている場面に、各二次電池に緩和電流I
βが流れる例を示したが、二次電池が3つ以上並列接続されている場面においても、同様にして、各二次電池に対して
図3に示す電流パターンを印加することにより、内部抵抗劣化電池から正常電池に緩和電流I
βが流れる。
【0051】
以下、
図5(B)に示すグラフを参照して、電池制御装置200が、劣化検出部220により、互いに並列接続された二次電池C11c、C12cについて、内部抵抗の増大による性能劣化を判定する具体的な方法を説明する。
【0052】
まず、劣化検出部220は、測定部210により、二次電池C11c、C12cに対して
図3に示す電流パターンを印加した際における、二次電池C11c、C12cに流れる緩和電流I
β(すなわち、
図5(B)における、二次電池C11cの緩和電流I
β_C11c、および二次電池C12cの緩和電流I
β_C12c)を検出する。さらに、劣化検出部220は、測定部210により、緩和電流I
βが流れた時間である緩和時間を検出する。具体的には、緩和電流I
β_C11cが流れている時間を、緩和時間T
β_C11cとして検出し、また、緩和電流I
β_C12cが流れている時間を、緩和時間T
β_C12cとして検出する。
【0053】
なお、
図5(B)に示すグラフにおいては、二次電池C11c、C12cに緩和電流I
βが流れている途中の時間t
2で、上記電流パターン中の電流C
chargeの印加により充電が開始されている。そのため、緩和電流I
βが流れた時間である緩和時間T
β_C11cおよび緩和時間T
β_C12cは、少なくとも時間t
1〜t
2より長い時間となるが、このような場合においては、後述する内部抵抗の増大による性能劣化の判定を適切に行うことができる範囲であれば、時間t
1〜t
2を、緩和時間T
β_C11cおよび緩和時間T
β_C12cとして検出してもよい。
【0054】
次いで、劣化検出部220は、情報管理部221に、検出した緩和電流I
β_C11cおよび緩和電流I
β_C12c、ならびに緩和時間T
β_C11cおよび緩和時間T
β_C12cの情報を記憶させる。
【0055】
そして、劣化検出部220は、判定部223によって、緩和時間T
β_C11cおよび緩和時間T
β_C12cが、予め設定された時間閾値T
ref以上であるか否かを、それぞれ判定する。
【0056】
次いで、劣化検出部220は、検出部224によって、二次電池C11c、C12cが内部抵抗の増大により性能劣化しているか否かの判定を行う。具体的には、劣化検出部220は、上記判定部223により緩和時間T
β_C11cおよび緩和時間T
β_C12cの少なくとも一方が時間閾値T
ref以上であると判定された場合には、互いに並列接続された二次電池C11c、C12cのうちいずれかが、内部抵抗劣化電池であると判定する。
【0057】
なお、このような二次電池の劣化を判定するための時間閾値T
refは、たとえば、次にようにして設定することができる。すなわち、予め、正常電池と、内部抵抗劣化電池(たとえば、正常電池と比較して、内部抵抗が所定の割合まで増大した二次電池など)とを並列接続した後、上述した
図3に示す電流パターンを印加する。この際において、内部抵抗劣化電池について、放電を休止した直後の時間t
1〜時間t
2に、内部抵抗劣化電池に流れる緩和電流I
βを測定し、この緩和電流I
βが流れた時間に基づいて、時間閾値T
refを設定することができる。
【0058】
なお、
図5(B)に示すグラフにおいては、2つの二次電池C11c、C12cのみが並列接続されている場面における電流プロファイルを示しているため、二次電池C11c、C12cの間に流れた緩和電流I
β_C11cおよび緩和電流I
β_C12cは、流れた時間がほぼ同等となる。そのため、これらの緩和電流から求められる緩和時間T
β_C11cと、緩和時間T
β_C12cとはほぼ同等の長さとなる。これにより、緩和時間T
β_C11cが時間閾値T
ref以上である場合には、通常、緩和時間T
β_C12cについても時間閾値T
ref以上となる。
【0059】
また、本実施形態においては、上述したように、互いに並列接続された二次電池C11c、C12cのうちいずれかが、内部抵抗劣化電池であると判定された場合において、その後、さらに二次電池C11c、C12cのどちらが内部抵抗劣化電池であるか特定する。
【0060】
具体的には、上記電流パターンを印加した際において、時間t
1〜時間t
2(放電を休止して二次電池C11c、C12cを無負荷状態とした直後)に流れた緩和電流I
βが、放電電流であった二次電池を、内部抵抗劣化電池であると特定する。すなわち、上述したように、放電が休止されて無負荷状態となった直後の時間t
1〜時間t
2では、正常電池である二次電池C11cの方が、内部抵抗劣化電池である二次電池C12cよりも適切に放電されたことで端子電圧が低くなる。そのため、端子電圧の差に起因して二次電池C12cから二次電池C11cへ電流が流れ、その結果として、二次電池C11cには充電電流が、二次電池C12cには放電電流がそれぞれ流れることとなる。これにより、本実施形態においては、このような特性を利用し、
図5(B)に示すように、放電が行われた直後の時間t
1〜時間t
2に、放電電流が流れた二次電池C12cを、内部抵抗劣化電池であると特定する。
【0061】
以上のようにして、劣化検出部220により、互いに並列接続された二次電池C11c、C12cについて、内部抵抗の増大による性能劣化の判定が行われる。
【0062】
本実施形態においては、互いに並列接続された二次電池に対して上述した電流パターンを印加した際に、二次電池間において端子電圧の差に起因して流れる電流を、緩和電流として検出し、検出された緩和電流が流れた時間である緩和時間が、所定の時間閾値T
ref以上であるか否かを判定することにより、並列接続されている二次電池の中に、内部抵抗劣化電池が含まれていると判定する。そのため、本実施形態によれば、並列接続された二次電池の性能劣化の判定を適切に行うことができる。
【0063】
また、本実施形態においては、互いに並列接続された二次電池に対して上述した電流パターンを印加した際に、放電を休止して各二次電池を無負荷状態とした直後に、放電電流が流れた二次電池を、内部抵抗劣化電池であると特定する。そのため、本実施形態によれば、並列接続された二次電池のうち、性能劣化が発生している二次電池を適切に特定することができる。
【0064】
なお、上述した例では、
図5(B)に示す場面において、容量の低下による性能劣化の判定を行う対象として、互いに並列接続された2つの二次電池を用いた例を示したが、本実施形態においては、このような性能劣化の判定を行う対象は、互いに並列接続された3つ以上の二次電池としてもよい。
【0065】
たとえば、互いに並列接続された3つ以上の二次電池について、内部抵抗の増大による性能劣化の判定を行う場合には、まず、並列接続されている全ての二次電池に対して、二次電池ごとに上述した
図3に示す電流パターンを印加する。そして、各二次電池について、それぞれ、放電を休止した直後の時間t
1〜時間t
2に流れる緩和電流I
βの測定、および緩和電流I
βが流れる時間である緩和時間の検出を行う。その後、検出された緩和時間が、所定の時間閾値T
ref以上である二次電池が存在した場合には、緩和時間が時間閾値T
ref以上である二次電池、およびこれに並列接続されている二次電池の中に、内部抵抗劣化電池が含まれていると判定することができる。
【0066】
なお、この際においては、時間閾値T
refは、並列接続された二次電池の数に応じて変化させてもよい。たとえば、二次電池が3つ以上並列接続されている場合において、正常電池が複数存在するときには、放電を休止した直後の時間t
1〜時間t
2に、内部抵抗劣化電池に対して、複数の正常電池から、一時的に大きな緩和電流I
βが流れることが考えられる。この際において、より短時間で並列接続された二次電池間の端子電圧の差が調整されることで、緩和電流I
βが流れる時間が短くなるような場合には、これに応じて時間閾値T
refを短くしてもよい。
【0067】
なお、本実施形態においては、このような内部抵抗の増大による性能劣化は、上述した容量の低下による性能劣化と、ある程度同時に進行する傾向にある。そのため、本実施形態においては、並列接続された二次電池に対し、内部抵抗の増大による性能劣化の判定と、容量の低下による性能劣化の判定とを、併せて行うことができる。たとえば、劣化検出部220は、並列接続した二次電池に上記電流パターンの印加を行った際における、時間t
1〜時間t
2に流れる緩和電流I
βおよび時間t
3〜時間t
4に流れる緩和電流I
αを取得し、上述したように、緩和電流I
αに基づいて容量の低下による性能劣化の判定を行った後に、緩和電流I
βに基づいて内部抵抗の増大による性能劣化の判定を行うことができる。
【0068】
これにより、本実施形態によれば、互いに並列接続された二次電池に、容量劣化電池と、内部抵抗劣化電池とが混在している場合や、内部抵抗の増大による性能劣化と、容量の低下による性能劣化とが同時進行している二次電池が存在している場合においても、このような並列接続された二次電池の中に、少なくともいずれか一方の性能劣化が発生している二次電池の有無を検出することが可能となる。
【0069】
以上、本実施形態における、互いに並列接続された二次電池について、容量の低下または内部抵抗の増大による性能劣化の判定を行う方法を説明したが、本実施形態においては、組電池100に含まれる他の二次電池についても、順次このような判定を行うことができる。たとえば、電池制御装置200が、電池モジュールC(P1)の二次電池C11、C12について劣化判定を行った後、電池モジュールC(P1)を構成する他の二次電池や、電池モジュールC(P2)〜C(Pm)を構成する二次電池についても、劣化検出部220により、上述した方法により、容量の低下による性能劣化の判定、および内部抵抗の増大による性能劣化の判定を行うことができる。
【0070】
なお、本実施形態においては、上述したように、容量の低下または内部抵抗の増大により性能劣化している二次電池の判定を行う際には、予め組電池100や電池モジュールC(P1)〜C(Pm)などに温度センサを設置しておき、温度センサにより電池モジュールを構成する二次電池の温度を検出し、検出された温度に基づいて上述した電流積分閾値I
int_refおよび時間閾値T
refを変化させてもよい。
【0071】
すなわち、本実施形態においては、各二次電池の温度が低いほど、二次電池同士の容量の差が小さくなり、これにより、上述したように演算される緩和電流積分値が小さくなる傾向にあり、そのため、上記温度センサにより検出された温度が低いほど、電流積分閾値I
int_refを小さくすることにより、二次電池の温度が変化した場合においても、容量の低下による性能劣化の検出精度を向上させることができる。
【0072】
同様に、本実施形態においては、各二次電池の温度が低いほど、二次電池同士の内部抵抗値の差が大きくなり、これにより、上述したように検出される緩和時間が長くなる傾向にあり、そのため、上記温度センサにより検出された温度が低いほど、時間閾値T
refを長くすることにより、二次電池の温度が変化した場合においても、内部抵抗の増大による性能劣化の検出精度を向上させることができる
【0073】
また、本実施形態においては、互いに並列接続された二次電池について、上述したような実際に性能劣化が発生しているか否かの判定だけではなく、将来的に性能劣化が発生する可能性の予測を行うこともできる。
【0074】
たとえば、容量の低下による性能劣化を予測する場合には、劣化検出部220は、緩和電流I
αから演算される緩和電流積分値を、緩和電流I
αを検出した時刻ごとに、情報管理部221に記憶させておく。そして、劣化検出部220は、分析部225により、情報管理部221に記憶された情報に基づいて、緩和電流I
αから演算される緩和電流積分値と、該緩和電流I
αが測定された時刻との関係式を、最小二乗法などの回帰分析により求める。
【0075】
次いで、劣化検出部220は、予測部226により、求めた上記関係式に基づいて、現在から所定期間以内に緩和電流積分値が電流積分閾値I
int_ref以上となると想定される二次電池が存在するか否かを判定し、このような二次電池が存在する場合には、該二次電池およびこれに並列接続されている二次電池の中に、容量の低下により性能劣化する可能性がある二次電池が含まれていると予測する。なお、上記所定期間は、予め任意に設定することができる。
【0076】
その後、劣化検出部220は、予測部226により予測された結果に基づいて、性能劣化する可能性がある二次電池の情報や、性能劣化が発生する時期などの情報を、通知部227によりユーザに通知する。通知部227によりユーザに通知する方法としては、特に限定されないが、たとえば、電池制御装置200と接続された図示しないディスプレイやスピーカを用いる方法が挙げられる。これにより、本実施形態によれば、組電池100を構成する電池モジュールの二次電池について、容量の低下により性能劣化する可能性を事前に予測し、予測した情報をユーザに通知することにより、ユーザが組電池100のメンテナンスを適切なタイミングを行うことができるようになる。
【0077】
同様に、内部抵抗の増大による性能劣化を予測することもできる。具体的には、劣化検出部220は、緩和電流I
βに基づいて検出される緩和時間を、緩和時間を検出した時刻ごとに、情報管理部221に記憶させておく。そして、劣化検出部220は、分析部225により、情報管理部221に記憶された情報に基づいて、緩和時間と、緩和時間が検出された時刻との関係式を、最小二乗法などの回帰分析により求める。
【0078】
次いで、劣化検出部220は、予測部226により、求めた上記関係式に基づいて、現在から所定期間以内に緩和時間が存在するか否かを判定し、このような二次電池が存在する場合には、該二次電池およびこれに並列接続されている二次電池の中に、内部抵抗の増大により性能劣化する可能性がある二次電池が含まれていると予測する。なお、上記所定期間は、予め任意に設定することができる。
【0079】
その後、劣化検出部220は、予測部226により予測された結果に基づいて、性能劣化する可能性がある二次電池の情報や、性能劣化が発生する時期などの情報を、通知部227によりユーザに通知する。通知部227によりユーザに通知する方法としては、上述した容量の低下による性能劣化を予測する場合と同様に、たとえば、電池制御装置200と接続された図示しないディスプレイやスピーカを用いる方法が挙げられる。これにより、本実施形態によれば、組電池100を構成する電池モジュールの二次電池について、内部抵抗の増大により性能劣化する可能性を事前に予測し、さらに、予測した情報をユーザに通知することにより、ユーザが組電池100のメンテナンスを適切なタイミングを行うことができるようになる。
【0080】
次いで、本実施形態の動作例を説明する。
図6は本実施形態の電池制御装置200により、組電池100の電池モジュールを構成する互いに並列接続された二次電池について、性能劣化の判定を行う方法の一例を示すフローチャートである。
図6に示す処理内容は、たとえば、電気自動車やハイブリッド車などの車両に搭載された組電池100に対して実行する場合には、イグニッションオンの信号が入力されたタイミングで開始することができる。
【0081】
まず、ステップS1では、劣化検出部220は、組電池100が無負荷状態となっているか否か、すなわち、組電池100に充電電流または放電電流が流れていない状態であるか否かを判定する。そして、ステップS1において、組電池100が無負荷状態となっていると判定された場合には、ステップS2へ進む。一方、ステップS1において、組電池100が無負荷状態となっていないと判定された場合には、ステップS1において、組電池100が無負荷状態になるまで待機する。
【0082】
ステップS2では、劣化検出部220は、組電池100を構成するいずれか1つの電池モジュールを抽出し、抽出した電池モジュールを構成する互いに並列接続された2以上の二次電池に、リレーなどを介して測定部210を接続させる。
【0083】
ステップS3では、測定部210により、ステップS2で測定部210と接続された二次電池に対し、
図3に示す電流パターンを印加し、この際において各二次電池に流れる電流のプロファイル(たとえば、
図4(A)、
図4(B)、
図5(A)、または
図5(B)に示すようなプロファイル)を、二次電池ごとに検出する。そして、劣化検出部220は、検出された電流プロファイルに基づいて、
図3に示す電流パターンを印加した際における、時間t
1〜時間t
2に二次電池に流れる緩和電流I
β、および時間t
3〜時間t
4に二次電池に流れる緩和電流I
αを、二次電池ごとに検出する。その後、劣化検出部220は検出した緩和電流I
βおよび緩和電流I
αの情報を、情報管理部221に記憶させる。
【0084】
ステップS4では、劣化検出部220は、演算部222により、情報管理部221に記憶された緩和電流I
αの情報に基づいて、緩和電流I
αの積分値である緩和電流積分値を、二次電池ごとに演算する。
【0085】
ステップS5では、劣化検出部220は、判定部223により、ステップS4で演算された緩和電流積分値が、所定の電流積分閾値I
int_ref以上であるか否かを、二次電池ごとに判定する。そして、ステップS5において、緩和電流積分値が電流積分閾値I
int_ref以上であると判定された二次電池が存在する場合には、ステップS6へ進む。一方、ステップS5において、いずれの二次電池も緩和電流積分値が電流積分閾値I
int_ref未満であると判定された場合には、ステップS7へ進む。
【0086】
ステップS5において、緩和電流積分値が電流積分閾値I
int_ref以上であると判定された二次電池が存在する場合には、ステップS6へ進み、ステップS6では、劣化検出部220は、検出部224により、緩和電流積分値が電流積分閾値I
int_ref以上であった二次電池、およびこれと並列接続されている二次電池の中に、容量劣化電池が含まれていると判定し、本処理を終了する。
【0087】
一方、ステップS5において、いずれの二次電池も緩和電流積分値が電流積分閾値I
int_ref未満であると判定された場合には、ステップS7へ進み、ステップS7では、劣化検出部220は、情報管理部221に記憶された緩和電流I
βの情報に基づいて、緩和電流I
βが流れた時間である緩和時間を、二次電池ごとに検出する。
【0088】
ステップS8では、劣化検出部220は、判定部223により、ステップS7で検出された緩和時間が所定の時間閾値T
ref以上であるか否かを、二次電池ごとに判定する。そして、ステップS8において、緩和時間が時間閾値T
ref以上であると判定された二次電池が存在する場合には、ステップS9へ進む。一方、ステップS8において、いずれの二次電池も緩和時間が時間閾値T
ref未満であると判定された場合には、ステップS10へ進む。
【0089】
ステップS8において、緩和時間が時間閾値T
ref以上であると判定された二次電池が存在する場合には、ステップS9へ進み、ステップS9では、劣化検出部220は、検出部224により、緩和時間が時間閾値T
ref以上であった二次電池、およびこれと並列接続されている二次電池の中に、内部抵抗劣化電池が含まれていると判定し、本処理を終了する。
【0090】
一方、ステップS8において、いずれの二次電池も緩和時間が時間閾値T
ref未満であると判定された場合には、ステップS10へ進み、ステップS10では、測定部210と接続された二次電池には、容量の低下または内部抵抗の増大による性能劣化は発生していないと判定し、本処理を終了する。
【0091】
以上のとおり、本実施形態においては、互いに並列接続された二次電池に対して、所定の電流パターンを印加した際に、充電を休止して各二次電池を無負荷状態とした直後に、二次電池間に流れる電流を緩和電流I
αとして検出し、その後、緩和電流I
αを積分して得られる緩和電流積分値が、電流積分閾値I
int_ref以上であるか否かを二次電池ごとに判定し、緩和電流積分値が電流積分閾値I
int_ref以上である二次電池が存在した場合には、該二次電池およびこれに並列接続された二次電池の中に、容量劣化電池が含まれていると判定する。そのため、本実施形態によれば、並列接続された二次電池について、容量の低下による性能劣化の判定を適切に行うことが可能となる。
【0092】
また、本実施形態においては、互いに並列接続された二次電池に対して、所定の電流パターンを印加した際に、放電を休止して各二次電池を無負荷状態とした直後に、二次電池間に流れる電流を緩和電流I
βとして検出し、その後、緩和電流I
βが流れた時間である緩和時間が、時間閾値T
ref以上であるか否かを二次電池ごとに判定し、緩和時間が時間閾値T
ref以上である二次電池が存在した場合には、該二次電池およびこれに並列接続された二次電池の中に、内部抵抗劣化電池が含まれていると判定する。そのため、本実施形態によれば、並列接続された二次電池について、内部抵抗の増大による性能劣化の判定を適切に行うことが可能となる。
【0093】
なお、本実施形態においては、このような二次電池の間に流れる緩和電流I
βまたは緩和電流I
αを取得する方法としては、たとえば、充放電器211から各二次電池に対して印加された印加電流と、電流計120によって検出された各二次電池に実際に流れた電流との差分を、緩和電流I
βまたは緩和電流I
αとして取得する方法が挙げられる。これにより、各二次電池に備えられている電流計120を用いて、簡便に緩和電流I
βおよび緩和電流I
αを求めることができ、並列接続された二次電池について、性能劣化の判定をより容易に行うことができる。
【0094】
<<第2実施形態>>
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の電池制御装置200aは、
図7に示すような構成を有しており、電池制御装置200aに、二次電池の性能劣化を判定する基準となる参照用二次電池Cαを備えるという点において異なる以外は、第1実施形態に係る電池制御装置200と同様の構成を有する。
【0095】
本実施形態の電池制御装置200aは、
図7に示すように、参照用二次電池Cαを備え、この参照用二次電池Cαが、バスバーなどの接続部材(不図示)を介して、電池モジュールを構成する二次電池と並列接続できるようになっており、このような参照用二次電池Cαと、これに並列接続した二次電池に、上記電流パターンを印加することにより、二次電池の性能劣化の判定を行う。
【0096】
具体的には、まず、電池制御装置200aは、組電池100の電池モジュールC(P1)〜C(Pm)のうち、いずれかの電池モジュールを抽出し、抽出した電池モジュールを構成する二次電池に、参照用二次電池Cαを並列接続させる。なお、参照用二次電池Cαを並列接続させる二次電池は、電池モジュールを構成する二次電池のうち1つの二次電池でもよく、あるいは、電池モジュールを構成する二次電池のうち互いに並列接続された2以上の二次電池としてもよい。
【0097】
なお、本実施形態においては、参照用二次電池Cαとしては、たとえば、電池モジュールを構成する二次電池と同じ型式の二次電池であって、容量の低下や内部抵抗の増大などによる性能劣化がほとんどない二次電池を用いることができる。
【0098】
次いで、参照用二次電池Cαが並列接続された二次電池に、測定部210を接続した後、上述した第1実施形態に係る電池制御装置200と同様に、二次電池に
図3に示すような電流パターンを印加する。
【0099】
そして、電池制御装置200aにおいては、上記電流パターンを印加した際における、参照用二次電池Cαと、これに並列接続された二次電池との間に流れる電流のプロファイルを検出し、検出した電流プロファイルに基づいて、上述した第1実施形態と同様に、
図3に示す電流パターンを印加した際における時間t
1〜時間t
2に二次電池に流れる緩和電流I
β、および時間t
3〜時間t
4に二次電池に流れる緩和電流I
αを、二次電池ごとに検出する。
【0100】
その後、本実施形態においては、検出した緩和電流I
αに基づいて、緩和電流I
αの積分値である緩和電流積分値を演算し、演算した緩和電流積分値が電流積分閾値I
int_ref以上であるか否かを判定する。ここで、緩和電流積分値が電流積分閾値I
int_ref以上であると判定された二次電池が存在する場合には、参照用二次電池Cαに並列接続されている二次電池のなかに、容量劣化電池が含まれていると判定する。
【0101】
また、本実施形態においては、検出した緩和電流I
βに基づいて、緩和電流I
βが流れた時間である緩和時間を検出し、検出した緩和時間が時間閾値T
ref以上であるか否かを判定する。ここで、緩和時間が時間閾値T
ref以上であると判定された二次電池が存在する場合には、参照用二次電池Cαに並列接続されている二次電池のなかに、内部抵抗劣化電池が含まれていると判定する。
【0102】
第2実施形態によれば、上述した第1実施形態による効果に加えて、次の効果を奏する。
すなわち、第2実施形態によれば、容量の低下や内部抵抗の増大などによる性能劣化がほとんどない参照用二次電池Cαを、二次電池の性能劣化を判定するための基準として用いているため、二次電池の性能劣化の検出精度を向上させることができる。
【0103】
なお、上述した実施形態において、測定部210は本発明の電流パターン印加手段、測定手段、および緩和電流検出手段に、劣化検出部220は本発明の演算手段、電流積分値判定手段、容量劣化検出手段、電流積分値記憶手段、容量劣化予測手段、容量劣化通知手段、緩和時間測定手段、緩和時間判定手段、内部抵抗劣化検出手段、緩和時間記憶手段、内部抵抗劣化予測手段、内部抵抗劣化通知手段に、参照用二次電池Cαは本発明の参照用二次電池に、それぞれ相当する。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0105】
たとえば、上述した実施形態においては、
図3に示す電流パターンを印加した際に、充電を休止した直後の時間t
3〜時間t
4に二次電池に流れる緩和電流I
αに基づいて、二次電池について容量の低下による性能劣化の判定を行う例を示したが、このような容量の低下による性能劣化の判定は、電流パターン中における放電を休止した直後の時間t
1〜時間t
2に二次電池に流れる緩和電流I
βに基づいて行ってもよい。たとえば、
図4(B)のグラフに示すように、二次電池C11a、C12aには、時間t
1〜時間t
2にそれぞれ緩和電流I
βが流れている。この際において、並列接続された二次電池の中に、このような緩和電流I
βを積分して得られる緩和電流積分値が、所定の電流積分閾値I
int_ref以上である二次電池が存在した場合には、緩和電流積分値が電流積分閾値I
int_ref以上である二次電池、およびこれに並列接続されている二次電池の中に、容量劣化電池が含まれていると判定することができる。
【0106】
同様に、上述した実施形態においては、
図3に示す電流パターンを印加した際に、放電を休止した直後の時間t
1〜時間t
2に二次電池に流れる緩和電流I
βに基づいて、二次電池について内部抵抗の増大による性能劣化の判定を行う例を示したが、このような内部抵抗の増大による性能劣化の判定は、電流パターン中における放電を休止した直後の時間t
3〜時間t
4に二次電池に流れる緩和電流I
αに基づいて行ってもよい。たとえば、
図5(B)のグラフに示すように、二次電池C11c、C12cには、時間t
3〜時間t
4にそれぞれ緩和電流I
αが流れている。この際において、並列接続された二次電池の中に、このような緩和電流I
αが流れた時間である緩和時間が、所定の時間閾値T
ref以上である二次電池が存在した場合には、緩和時間が時間閾値T
ref以上である二次電池、およびこれに並列接続されている二次電池の中に、内部抵抗劣化電池が含まれていると判定することができる。
【0107】
また、上述した実施形態においては、性能劣化の判定を行うために二次電池に対して印加する所定の電流パターンとして、
図3に示すように、二次電池の充電および放電を行うような電流パターンを用いた例を示したが、印加する電流パターンとしては、二次電池の充電または放電のいずれかのみを行うような電流パターンを用いてもよい。たとえば、二次電池の充電のみを行う電流パターンを用いた場合には、この電流パターンを二次電池に印加した際に、充電を休止した直後に二次電池に流れる緩和電流に基づいて、上述したように、容量の低下による性能劣化または内部抵抗の増大による性能劣化の判定を行う。また、二次電池の放電のみを行う電流パターンを用いた場合には、この電流パターンを二次電池に印加し、放電を休止した直後に二次電池に流れる緩和電流に基づいて、上述したように、容量の低下による性能劣化または内部抵抗の増大による性能劣化の判定を行う。