(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244855
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】蓄電デバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 11/72 20130101AFI20171204BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20171204BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20171204BHJP
H01G 11/76 20130101ALI20171204BHJP
H01M 2/26 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
H01G11/72
H01G11/70
H01G11/84
H01G11/76
H01M2/26 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-243445(P2013-243445)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-103679(P2015-103679A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】森 正行
(72)【発明者】
【氏名】古澤 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】迎田 准一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 庸平
(72)【発明者】
【氏名】千田 将博
【審査官】
中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−026463(JP,A)
【文献】
特開平07−226341(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0113185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/72
H01G 11/70
H01G 11/76
H01G 11/84
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子の素子端面に形成された電極部に集電板が接続された蓄電デバイスであって、
前記蓄電素子の素子端面に引き出された電極引出部の素子中心側の端部を含み前記素子中心側に折り曲げる折曲げ部が設定され、この折曲げ部が先行して折り曲げられて前記電極部に成形されていることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
前記電極部は、陽極側および陰極側に備えられ、素子中心を含む絶縁間隔を挟んで前記素子端面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
蓄電素子の素子端面に形成された電極部に集電板が接続された蓄電デバイスの製造方法であって、
前記蓄電素子の素子端面に引き出された電極引出部の素子中心側の端部を含み前記素子中心側に折り曲げる折曲げ部を設定し、
この折曲げ部が先行して折り曲げられて前記電極部に成形される工程を含むことを特徴とする蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層コンデンサなどの蓄電デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層コンデンサや電解コンデンサなどの蓄電デバイスでは、蓄電素子から引き出された電極体に接続部材を介在させて外部端子を接続し、蓄電素子の内部抵抗や接続部の接続抵抗を低減させている。
【0003】
このような素子と外部端子の接続に関し、コンデンサ素子の素子端面に設置した集電端子に接続するため、コンデンサ素子から電極箔を露出させることが知られている(たとえば、特許文献1および特許文献2)。このような接続に関し、集電箔を覆う集電板と集電箔とを溶接によって接続することが知られている(たとえば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−219857号公報
【特許文献2】特開2001−068379号公報
【特許文献3】特開2007−335156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蓄電素子の素子端面に電極部を形成するには、陽極側および陰極側の電極引出し部が設けられる。各電極引出し部は治具を押し当てることにより折り曲げられて電極部に加工される。
【0006】
電極引出し部を折り曲げる際に、最内周側の電極引出し部が折り曲げにくく、その根元から倒れ込むおそれがある。蓄電素子の素子中心を挟んで対向する陽極側および陰極側の電極引出し部の間の距離が短く、根元から倒れ込むと、電極引出し部間が接近したり、接触したりするなど、両者間の絶縁性が不安定化するという課題がある。
【0007】
また、電極引出部の枚数が多い場合には、折り曲げて形成される電極部を平坦面化しにくく、素子中心付近では突出状態となるなど凹凸面化するおそれがある。このような凹凸面となった電極部ではたとえば、レーザ溶接による接続が安定しないという課題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は上記課題に鑑み、蓄電素子の電極引出部間の絶縁性を高めることにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、電極部と集電板の接続性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の蓄電デバイスは、蓄電素子の素子端面に形成された電極部に集電板が接続された蓄電デバイスであって、前記蓄電素子の素子端面に引き出された電極引出部の素子中心側の端部を含み前記素子中心側に折り曲げる折曲げ部が設定され、この折曲げ部が先行して折り曲げられて前記電極部に成形されている。
【0011】
上記蓄電デバイスにおいて、前記電極部は、陽極側および陰極側に備えられ、素子中心を含む絶縁間隔を挟んで前記素子端面に配置されている。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の蓄電デバイスの製造方法は、蓄電素子の素子端面に形成された電極部に集電板が接続された蓄電デバイスの製造方法であって、前記蓄電素子の素子端面に引き出された電極引出部の素子中心側の端部を含み前記素子中心側に折り曲げる折曲げ部を設定し、この折曲げ部が先行して折り曲げられて前記電極部に成形される工程を含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の蓄電デバイスによれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0014】
(1) 電極引出部で形成された電極部の絶縁間隔が拡開され、電極部間の絶縁性が高められる。
【0015】
(2) 電極部と集電板の接続が安定化し、両者の接続性を高めることができる。
【0016】
また、本発明の蓄電デバイスの製造方法によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0017】
(1) 蓄電素子の素子中心側の電極引出部が素子中心から離れる方向に折り曲げられているので、電極引出部の異極間隔が広がり、電極引出部で形成された電極部の絶縁間隔を拡開でき、電極部間の絶縁性が高められる。
【0018】
(2) 電極部の溶接面の平坦化により、電極部と集電板のレーザ溶接の接続が安定化し、両者の接続性を向上させることができる。
【0019】
そして、本発明の他の目的、特徴および利点は、添付図面および各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施の形態に係るコンデンサ素子の素子端面を示す平面図である。
【
図2】コンデンサ素子の電極引出部の先行折曲げ前後を示す平面図である。
【
図3】コンデンサ素子の先行折曲げ後の電極部の成形を示す平面図である。
【
図4】コンデンサ素子の電極引出部の先行折曲げから電極部への成形を示す断面図である。
【
図5】電極部への集電板のレーザ溶接を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、一実施の形態に係るコンデンサに用いられるコンデンサ素子の素子端面を示している。この実施の形態では、蓄電デバイスの一例であるコンデンサとして電気二重層コンデンサを例示している。
【0023】
このコンデンサ素子2の素子端面4には、異極側の電極引出部6−1、6−2が形成されている。コンデンサ素子2は蓄電素子の一例である。電極引出部6−1はたとえば、陽極側であり、電極引出部6−2は陰極側である。各電極引出部6−1、6−2は、セパレータ8の幅より突出させ、コンデンサ素子2に巻回曲率半径に比例して巻回方向の幅を異ならせて形成されている。
【0025】
このコンデンサ素子2について、素子端面4、素子中心10、電極引出部6−1、6−2の端部12、縁部14および電極部16−1、16−2を次のように定義する。
【0026】
素子端面4: コンデンサ素子2のセパレータ8の縁部によって形成された平坦面である。
【0027】
素子中心10: コンデンサ素子2の巻回中心部にある円筒空洞部である。
【0028】
電極引出部6−1または電極引出部6−2の端部12: 素子端面4と交差方向に生じている電極引出部6−1または電極引出部6−2の引出端であり、コンデンサ素子2に巻回される電極箔の引出し用切断端である。
【0029】
電極引出部6−1または電極引出部6−2の縁部14: 素子端面4と平行する電極引出部6−1または電極引出部6−2の電極箔の縁端である。
【0030】
電極部16−1、16−2: 電極引出部6−1または電極引出部6−2の折曲げ成形によって形成される溶接前または溶接後の電極引出部6−1または電極引出部6−2の成形部である。
【0031】
このコンデンサ素子2について、電極引出部6−1、6−2に先行折曲げ部18を設定する。先行折曲げ部18は、電極引出し部6−1、6−2の素子中心10側の各端部12を含み素子中心10側に折り曲げられる。
【0032】
<電極引出部6−1、6−2の先行折曲げ>
【0033】
図2は、電極引出部6−1、6−2の先行折曲げ工程を示している。
【0034】
電極引出部6−1、6−2の先行折曲げ工程は蓄電デバイスの製造工程の一例である。この製造工程では、既述の各先行折曲げ部18の折曲げ加工を行う。この折曲げ加工には、
図2のAに示すように、折曲げ加工治具20が用いられる。折曲げ加工治具20は、一対の加工アーム部22−1、22−2および駆動部24を備える。加工アーム部22−1、22−2は、素子中心10を中心に電極引出部6−1、6−2の間に挿入され、駆動部24によって拡開可能である。駆動部24は、電動などの駆動力を加工アーム部22−1、22−2を拡開させ、各先行折曲げ部18に折曲げ負荷を加える。
【0035】
折曲げ加工治具20はコンデンサ素子2に対して矢印aで示すように進退可能であり、
図2のAに示す位置は、折曲げ位置である。加工アーム部22−1、22−2は矢印bで示すように拡開し、または閉じる。
【0036】
加工アーム部22−1、22−2は、
図2のBに示すように、所定幅Wに拡開し、電極引出部6−1、6−2の各先行折曲げ部18を押し広げる。この場合、電極引出部6−1、6−2の端部12は素子中心10と同心円状に湾曲状態にある。各端部12に加工アーム部22−1、22−2が押し当てられると、加工アーム部22−1、22−2から応力を受けた各端部12は素子中心10に向かって曲がり、電極箔の各先端部が折れ曲がる。各電極引出部6−1、6−2の各端部12は水平方向に折り曲げられ、つまり、コンデンサ素子2の素子端面4と平行に折り曲げられている。これにより、各先行折曲げ部18における電極引出部6−1、6−2の間隔が押し広げられる。
【0037】
このような先行折曲げを行った折曲げ加工治具20は、加工アーム部22−1、22−2を矢印cで示すように閉じた後、または加工アーム部22−1、22−2を閉じつつ後退してコンデンサ素子2から離れる。コンデンサ素子2は180度回転させ、電極引出部6−1、6−2の先行折曲げ位置に設定される。そして、このコンデンサ素子2に対し、折曲げ加工治具20により、同様の先行折曲げを行う。
【0039】
図3のAは、先行折曲げ加工後のコンデンサ素子2の電極引出部6−1、6−2を示している。
【0040】
各電極引出部6−1、6−2は、先行折曲げ部18で折り曲げられ、素子中心10側の端部12が湾曲状態に折り曲げられている。これにより、各電極引出部6−1、6−2の間隔が折曲げ前の状態(
図1)に比較して大きく拡開されており、大きな間隔Wが設定されている。
【0041】
この電極部16−1、16−2の成形工程では、各電極引出部6−1、6−2に対し、第1の折曲げ成形部26−1および第2の折曲げ成形部26−2が設定される。折曲げ成形部26−1は、素子中心10を通る各電極引出部6−1、6−2の仮想中心線Lを中心に角度θ1に設定されている。これに対し、折曲げ成形部26−2は、折曲げ成形部26−1を挟んで角度θ2に設定されている。
【0042】
角度θ1、θ2はθ1<θ2に設定される。また、折曲げ成形順位は折曲げ成形部26−1を先行して成形し、折曲げ成形部26−1の成形後に折曲げ成形部26−2を行う。各電極引出部6−1、6−2はたとえば、コンデンサ素子2の周縁側から素子中心10に向かって治具を進退させる。この治具としてたとえば、へら状の成形治具をコンデンサ素子2に進行させて押し当て、折曲げ成形部26−1、26−2を折り曲げる。
【0043】
図3のBは、コンデンサ素子2の素子端面4に形成された電極部16−1、16−2を示している。
【0044】
折曲げ成形部26−1の折曲げ成形の後、折曲げ成形部26−2が折曲げ成形されると、電極部16−1、16−2が形成される。折曲げ成形部26−2では、先行する折曲げ成形部26−1の上に折曲げ成形部26−2がのし上がり、畳み込み部28が形成されている。各畳み込み部28は折曲げ成形部26−1の上に折曲げ成形部26−2が重なった重合部分である。
【0045】
このように成形された電極部16−1、16−2では、各先行折曲げ部18が折曲げ成形部26−1に巻き込まれて成形されている。この結果、各電極部16−1、16−2は、成形によって間隔が狭まることなく、絶縁間隔Dが生成される。この絶縁間隔Dは、既述の間隔Wの大きさを損なうことなく、各電極部16−1、16−2間の絶縁性を維持する十分な距離となる。この場合、各電極部16−1、16−2が素子中心10を含む絶縁間隔Dを挟んで並行に素子端面4に配置されていることが好ましい。
【0046】
図4は、コンデンサ素子2の電極引出部6−1、6−2の先行折曲げから電極部16−1、16−2への成形状態を示している。
【0047】
図4のAに示すように、各電極引出部6−1、6−2は、コンデンサ素子2の素子端面4に直立状態に維持される。各電極引出部6−1、6−2は
図4のBに示すように、先行折曲げ部18に先行折曲げを行った後、
図4のCに示すように、各電極引出部6−1、6−2が電極部16−1、16−2に成形される。このような電極部16−1、16−2では、平坦な接続面30が生成される。
【0048】
<電極部16−1、16−2と集電板32−1、32−2の接続>
【0049】
図5は、電極部16−1、16−2と集電板32−1、32−2のレーザ溶接による接続を示している。
【0050】
この溶接工程では、素子端面4に形成された電極部16−1には陽極側の集電板32−1が重ねられ、電極部16−2には陰極側の集電板32−2が重ねられる。そして、集電板32−1、32−2の上面からレーザ照射34を行う。これにより、電極部16−1には集電板32−1、電極部16−2には集電板32−2が溶接される。
【0051】
この場合、集電板32−1、32−2の間には絶縁間隔Eが設定され、この絶縁間隔Eに対し、電極部16−1、16−2の絶縁間隔Dは大きく、信頼性の高い極間絶縁間隔が得られている。
【0052】
各集電板32−1、32−2には、図示しない外装ケースを封口する封口板にある外部端子が接続される。外装ケースにはコンデンサ素子2が収納され、このコンデンサ素子2に一体化された封口板によって封止される。この封止は、外装ケースのカーリング処理によって実現される。
【0054】
(1) 素子端面4に陽極側および陰極側の電極引出部6−1、6−2が引き出された後、コンデンサ素子2の外周側から折曲げ加工治具にて折り曲げて電極部16−1、16−2が形成され、その後、各電極部16−1、16−2に載置された集電板32−1、32−2とレーザ溶接にて接続し、コンデンサが形成される。
【0055】
(2) 電極引出部6−1、6−2を形成する電極箔の折曲げ枚数が多い場合には、その折曲げ加工の成形制御が難しい。特に、折曲げ時に極間絶縁距離が確保しにくい。これに対し、コンデンサ素子2の同一の素子端面4から電極引出部6−1、6−2を引き出した状態で、素子中心10側の電極引出部6−1、6−2の端部12を素子中心10側に折り曲げる。その後、電極引出部6−1、6−2を成形して電極部16−1、16−2が成形される。素子中心10側に折り曲げられた各電極引出部6−1、6−2の端部12は、電極部16−1、16−2の成形の際に折り込まれ、十分な大きさの極間絶縁距離が確保される。
【0057】
(1) 上記実施の形態では、電極部16−1、16−2を成形する際、電極引出部6−1、6−2の中間部を先行して折り曲げているが、中間部を後成形としてもよい。
【0058】
(2) 上記実施の形態では、蓄電デバイスの一例として電気二重層コンデンサ、その蓄電素子としてコンデンサ素子2を例示したが、コンデンサ素子2は、電解コンデンサなどの蓄電デバイスの蓄電素子であってもよい。
【0059】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明では、コンデンサ素子などの蓄電素子の素子端面に引き出された電極引出部の端部を先行して加工し、電極部への成形の際に折り込むことにより、絶縁間隔が損なわれるのを防止でき、極間の絶縁性を高めることができる。
【符号の説明】
【0061】
2 コンデンサ素子
4 素子端面
6−1、6−2 電極引出部
8 セパレータ
10 素子中心
12 端部
14 縁部
16−1、16−2 電極部
18 先行折曲げ部
20 折曲げ加工治具
22−1、22−2 加工アーム部
24 駆動部
26−1 第1の折曲げ成形部
26−2 第2の折曲げ成形部
28 畳み込み部
30 接続面
32−1、32−2 集電板
34 レーザ照射