(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃焼ガスにより蓄熱煉瓦を加熱して蓄熱する燃焼期間と、当該蓄熱煉瓦に冷風を通して当該蓄熱煉瓦との熱交換により熱風を生成して高炉に供給する送風期間とを含む期間を1サイクルとして稼働する熱風炉であり、珪石煉瓦を含む蓄熱煉瓦を有する蓄熱室と、前記蓄熱室を加熱するための燃焼室と、前記蓄熱室から前記燃焼室を介して流入される熱風の温度調節を当該熱風に冷風を混合することにより行う混冷室とを備える熱風炉の操業を制御するための計算を行う熱風炉制御計算装置であって、
前記混冷室で前記冷風を混合させて操業する場合に、前記送風期間が終了したときの前記蓄熱煉瓦の残熱量の指標としての第1の残熱量指標を用いて、前記送風期間が終了したときの前記珪石煉瓦の最低温度の下限値に対する変更量を珪石煉瓦最低温度下限値の変更量として導出する第1の導出手段と、
前記混冷室で前記冷風を混合させないで操業する場合に、前記送風期間が終了したときの前記蓄熱煉瓦の残熱量の指標としての第2の残熱量指標を用いて、前記送風期間が終了したときの前記珪石煉瓦の最低温度の下限値に対する変更量を珪石煉瓦最低温度下限値の変更量として導出する第2の導出手段と、
前記第1の導出手段又は前記第2の導出手段により導出された、前記送風期間が終了したときの前記珪石煉瓦の最低温度の下限値に対する変更量と、前記送風期間が終了したときの前記珪石煉瓦の最低温度の下限値の現在の値と、から、次の前記サイクルにおける前記送風期間が終了したときの前記珪石煉瓦の最低温度の下限値を珪石煉瓦最低温度下限値として導出する第3の導出手段と、
を有し、
前記第1の残熱量指標は、前記混冷室に流入する前記冷風の流量を調節するための冷風バタフライ弁の開度に基づいて定められ、
前記第2の残熱量指標は、前記燃焼室に流入する前記冷風の流量を調節するための送風バタフライ弁の開度、又は、前記熱風炉から高炉に排出される熱風の温度であって、何れの前記熱風炉から排出される熱風も通る領域における熱風の温度である送風温度に基づいて定められることを特徴とする熱風炉制御計算装置。
前記第1の残熱量指標は、前記送風期間における所定のタイミング又は期間における前記冷風バタフライ弁の開度、又は、前記送風期間において前記冷風バタフライが全閉である時間であり、
前記第2の残熱量指標は、前記送風期間における所定のタイミング又は期間における前記送風バタフライ弁の開度、又は、前記送風期間における所定のタイミング又は期間における前記送風温度であることを特徴とする請求項1に記載の熱風炉制御計算装置。
前記送風期間が終了するときの前記珪石煉瓦の最低温度である珪石煉瓦最低温度の目標値を、前記熱風炉の時定数よりも長い期間であって、前記サイクル単位の期間である最適化時間範囲において導出する目標蓄熱量導出手段と、
前記熱風炉に対する投入熱量を入力して当該熱風炉のプロセス状態を計算する計算モデルである第1のプロセスモデルを用いて、当該熱風炉のプロセス状態の予測値を導出する第1のプロセス状態予測手段と、を有し、
前記第1のプロセス状態予測手段は、前記熱風炉に対する投入熱量の候補を前記第1のプロセスモデルに与えて、前記熱風炉の時定数を下回る期間であって、前記サイクル単位の期間である予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値を導出し、前記予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値が、前記最適化時間範囲において前記目標蓄熱量導出手段により導出された前記珪石煉瓦最低温度の目標値に近いほど値が小さくなる第1の目的関数の値を最小化するときの、前記熱風炉に対する投入熱量の候補が、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量として得られるまで、前記熱風炉に対する投入熱量の候補を設定し直して、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量を決定し、
前記目標蓄熱量導出手段は、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補と前記第1のプロセス状態予測手段により前記熱風炉に対する投入熱量が決定されたときに導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値とが近いほど値が小さくなる目的関数と、前記第1のプロセス状態予測手段により決定された、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量の総和が小さいほど値が小さくなる目的関数と、前記第3の導出手段により導出された前記珪石煉瓦最低温度下限値が前記第1のプロセス状態予測手段により前記熱風炉に対する投入熱量が決定されたときに導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値を上回る場合に当該上回る量が小さいほど値が小さくなる目的関数と、の重み付き和である第2の目的関数の値を最小にするときの、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補が得られるまで、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補を設定し直して、前記珪石煉瓦最低温度の目標値を決定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の熱風炉制御計算装置。
前記送風期間が終了するときの前記珪石煉瓦の最低温度である珪石煉瓦最低温度の目標値を、前記熱風炉の時定数よりも長い期間であって、前記サイクル単位の期間である最適化時間範囲において導出する目標蓄熱量導出手段と、
前記熱風炉に対する投入熱量を入力して当該熱風炉のプロセス状態を計算する計算モデルである第1のプロセスモデルを用いて、当該熱風炉のプロセス状態の予測値を導出する第1のプロセス状態予測手段と、を有し、
前記第1のプロセス状態予測手段は、前記熱風炉に対する投入熱量の候補を前記第1のプロセスモデルに与えて、前記熱風炉の時定数を下回る期間であって、前記サイクル単位の期間である予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値を導出し、前記予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値が、前記最適化時間範囲において前記目標蓄熱量導出手段により導出された前記珪石煉瓦最低温度の目標値に近いほど値が小さくなる第1の目的関数の値を最小化するときの、前記熱風炉に対する投入熱量の候補が、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量として得られるまで、前記熱風炉に対する投入熱量の候補を設定し直して、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量を決定し、
前記目標蓄熱量導出手段は、前記第3の導出手段により導出された前記珪石煉瓦最低温度下限値が前記第1のプロセス状態予測手段により前記熱風炉に対する投入熱量が決定されたときに導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値を上回らないという制約を示す制約式と、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補と前記第1のプロセス状態予測手段により前記熱風炉に対する投入熱量が決定されたときに導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値との差の絶対値が所定値以下であるという制約を示す制約式とを満足する範囲で、前記第1のプロセス状態予測手段により決定された、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量の総和が小さいほど値が小さくなる目的関数である第2の目的関数の値を最小にするときの、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補が得られるまで、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補を設定し直して、前記珪石煉瓦最低温度の目標値を決定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の熱風炉制御計算装置。
前記送風期間が終了するときの前記珪石煉瓦の最低温度である珪石煉瓦最低温度の目標値を、前記熱風炉の時定数よりも長い期間であって、前記サイクル単位の期間である最適化時間範囲において導出する目標蓄熱量導出手段と、
前記熱風炉に対する投入熱量を入力して当該熱風炉のプロセス状態を計算する計算モデルである第1のプロセスモデルを用いて、当該熱風炉のプロセス状態の予測値を導出する第1のプロセス状態予測手段と、を有し、
前記第1のプロセス状態予測手段は、前記熱風炉に対する投入熱量の候補を前記第1のプロセスモデルに与えて、前記熱風炉の時定数を下回る期間であって、前記サイクル単位の期間である予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値を導出し、前記予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値が、前記最適化時間範囲において前記目標蓄熱量導出手段により導出された前記珪石煉瓦最低温度の目標値に近いほど値が小さくなる第1の目的関数の値を最小化するときの、前記熱風炉に対する投入熱量の候補が、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量として得られるまで、前記熱風炉に対する投入熱量の候補を設定し直して、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量を決定し、
前記目標蓄熱量導出手段は、前記第3の導出手段により導出された前記珪石煉瓦最低温度下限値が前記第1のプロセス状態予測手段により導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値を上回らないという制約を示す制約式を満足する範囲で、前記第1のプロセス状態予測手段により決定された、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量の総和が小さいほど値が小さくなる目的関数と、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補と前記第1のプロセス状態予測手段により前記熱風炉に対する投入熱量が決定されたときに導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値とが近いほど値が小さくなる目的関数と、の重み付き和である第2の目的関数の値を最小にするときの、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補が得られるまで、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補を設定し直して、前記珪石煉瓦最低温度の目標値を決定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の熱風炉制御計算装置。
現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量は、サイクル単位で定められる区間であって、その区間の最後のサイクルが前記予測区間の最初のサイクルよりも前のサイクルである制御区間における前記熱風炉に対する投入熱量から求められる投入熱量であり、
前記第1のプロセス状態予測手段は、前記予測区間と前記制御区間をサイクル単位で異ならせて、複数の前記予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値を導出すると共に、複数の前記制御区間における前記熱風炉への現時点以降の前記サイクル単位の投入熱量を決定することを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の熱風炉制御計算装置。
前記第1の目的関数の値に対する制約式は、前記第1のプロセスモデルにより計算された、前記熱風炉における送風温度の予測値の最低値と前記熱風炉における送風温度の目標との差の絶対値が閾値以下であることを示す制約式と、前記珪石煉瓦最低温度の目標値と、前記第1のプロセスモデルにより計算された前記珪石煉瓦最低温度の予測値との差の絶対値が閾値以下であることを示す制約式とを含むことを特徴とする請求項4〜7の何れか1項に記載の熱風炉制御計算装置。
現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量は、サイクル単位で定められる区間であって、その区間の最後のサイクルが前記予測区間の最初のサイクルよりも前のサイクルである制御区間における前記熱風炉に対する投入熱量から求められる投入熱量であり、
前記最適追従制御手段は、前記制御区間をサイクル単位で異ならせて、複数の前記制御区間における前記熱風炉への現時点以降の前記サイクル単位の投入熱量を決定し、
前記第2のプロセス状態予測手段は、前記予測区間をサイクル単位で異ならせて、複数の前記予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値を導出することを特徴とする請求項9に記載の熱風炉制御計算装置。
燃焼ガスにより蓄熱煉瓦を加熱して蓄熱する燃焼期間と、当該蓄熱煉瓦に冷風を通して当該蓄熱煉瓦との熱交換により熱風を生成して高炉に供給する送風期間とを含む期間を1サイクルとして稼働する熱風炉であり、珪石煉瓦を含む蓄熱煉瓦を有する蓄熱室と、前記蓄熱室を加熱するための燃焼室と、前記蓄熱室から前記燃焼室を介して流入される熱風の温度調節を当該熱風に冷風を混合することにより行う混冷室とを備える熱風炉の操業を制御するための計算を行う熱風炉操業指標導出方法であって、
前記混冷室で前記冷風を混合させて操業する場合に、前記送風期間が終了したときの前記蓄熱煉瓦の残熱量の指標としての第1の残熱量指標を用いて、前記送風期間が終了したときの前記珪石煉瓦の最低温度の下限値に対する変更量を珪石煉瓦最低温度下限値の変更量として導出する第1の導出工程と、
前記混冷室で前記冷風を混合させないで操業する場合に、前記送風期間が終了したときの前記蓄熱煉瓦の残熱量の指標としての第2の残熱量指標を用いて、前記送風期間が終了したときの前記珪石煉瓦の最低温度の下限値に対する変更量を珪石煉瓦最低温度下限値の変更量として導出する第2の導出工程と、
前記第1の導出工程又は前記第2の導出工程により導出された、前記送風期間が終了したときの前記珪石煉瓦の最低温度の下限値に対する変更量と、前記送風期間が終了したときの前記珪石煉瓦の最低温度の下限値の現在の値と、から、次の前記サイクルにおける前記送風期間が終了したときの前記珪石煉瓦の最低温度の下限値を珪石煉瓦最低温度下限値として導出する第3の導出工程と、
を有し、
前記第1の残熱量指標は、前記混冷室に流入する前記冷風の流量を調節するための冷風バタフライ弁の開度に基づいて定められ、
前記第2の残熱量指標は、前記燃焼室に流入する前記冷風の流量を調節するための送風バタフライ弁の開度、又は、前記熱風炉から高炉に排出される熱風の温度であって、何れの前記熱風炉から排出される熱風も通る領域における熱風の温度である送風温度に基づいて定められることを特徴とすることを特徴とする熱風炉操業指標導出方法。
前記第1の残熱量指標は、前記送風期間における所定のタイミング又は期間における前記冷風バタフライ弁の開度、又は、前記送風期間において前記冷風バタフライが全閉である時間であり、
前記第2の残熱量指標は、前記送風期間における所定のタイミング又は期間における前記送風バタフライ弁の開度、又は、前記送風期間における所定のタイミング又は期間における前記送風温度であることを特徴とする請求項11に記載の熱風炉操業指標導出方法。
前記送風期間が終了するときの前記珪石煉瓦の最低温度である珪石煉瓦最低温度の目標値を、前記熱風炉の時定数よりも長い期間であって、前記サイクル単位の期間である最適化時間範囲において導出する目標蓄熱量導出工程と、
前記熱風炉に対する投入熱量を入力して当該熱風炉のプロセス状態を計算する計算モデルである第1のプロセスモデルを用いて、当該熱風炉のプロセス状態の予測値を導出する第1のプロセス状態予測工程と、を有し、
前記第1のプロセス状態予測工程は、前記熱風炉に対する投入熱量の候補を前記第1のプロセスモデルに与えて、前記熱風炉の時定数を下回る期間であって、前記サイクル単位の期間である予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値を導出し、前記予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値が、前記最適化時間範囲において前記目標蓄熱量導出工程により導出された前記珪石煉瓦最低温度の目標値に近いほど値が小さくなる第1の目的関数の値を最小化するときの、前記熱風炉に対する投入熱量の候補が、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量として得られるまで、前記熱風炉に対する投入熱量の候補を設定し直して、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量を決定し、
前記目標蓄熱量導出工程は、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補と前記第1のプロセス状態予測工程により前記熱風炉に対する投入熱量が決定されたときに導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値とが近いほど値が小さくなる目的関数と、前記第1のプロセス状態予測工程により決定された、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量の総和が小さいほど値が小さくなる目的関数と、前記第3の導出工程により導出された前記珪石煉瓦最低温度下限値が前記第1のプロセス状態予測工程により前記熱風炉に対する投入熱量が決定されたときに導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値を上回る場合に当該上回る量が小さいほど値が小さくなる目的関数と、の重み付き和である第2の目的関数の値を最小にするときの、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補が得られるまで、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補を設定し直して、前記珪石煉瓦最低温度の目標値を決定することを特徴とする請求項11〜13の何れか1項に記載の熱風炉操業指標導出方法。
前記送風期間が終了するときの前記珪石煉瓦の最低温度である珪石煉瓦最低温度の目標値を、前記熱風炉の時定数よりも長い期間であって、前記サイクル単位の期間である最適化時間範囲において導出する目標蓄熱量導出工程と、
前記熱風炉に対する投入熱量を入力して当該熱風炉のプロセス状態を計算する計算モデルである第1のプロセスモデルを用いて、当該熱風炉のプロセス状態の予測値を導出する第1のプロセス状態予測工程と、を有し、
前記第1のプロセス状態予測工程は、前記熱風炉に対する投入熱量の候補を前記第1のプロセスモデルに与えて、前記熱風炉の時定数を下回る期間であって、前記サイクル単位の期間である予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値を導出し、前記予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値が、前記最適化時間範囲において前記目標蓄熱量導出工程により導出された前記珪石煉瓦最低温度の目標値に近いほど値が小さくなる第1の目的関数の値を最小化するときの、前記熱風炉に対する投入熱量の候補が、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量として得られるまで、前記熱風炉に対する投入熱量の候補を設定し直して、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量を決定し、
前記目標蓄熱量導出工程は、前記第3の導出工程により導出された前記珪石煉瓦最低温度下限値が前記第1のプロセス状態予測工程により前記熱風炉に対する投入熱量が決定されたときに導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値を上回らないという制約を示す制約式と、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補と前記第1のプロセス状態予測工程により前記熱風炉に対する投入熱量が決定されたときに導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値との差の絶対値が所定値以下であるという制約を示す制約式とを満足する範囲で、前記第1のプロセス状態予測工程により決定された、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量の総和が小さいほど値が小さくなる目的関数である第2の目的関数の値を最小にするときの、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補が得られるまで、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補を設定し直して、前記珪石煉瓦最低温度の目標値を決定することを特徴とする請求項11〜13の何れか1項に記載の熱風炉操業指標導出方法。
前記目標蓄熱量導出工程は、前記第3の導出工程により導出された前記珪石煉瓦最低温度下限値が前記第1のプロセス状態予測工程により導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値を上回らないという制約を示す制約式を満足する範囲で、前記第1のプロセス状態予測工程により決定された、現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量の総和が小さいほど値が小さくなる目的関数と、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補と前記第1のプロセス状態予測工程により前記熱風炉に対する投入熱量が決定されたときに導出された前記珪石煉瓦最低温度の予測値とが近いほど値が小さくなる目的関数と、の重み付き和である目的関数である第2の目的関数の値を最小にするときの、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補が得られるまで、前記珪石煉瓦最低温度の目標値の候補を設定し直して、前記珪石煉瓦最低温度の目標値を決定することを特徴とする請求項11〜13の何れか1項に記載の熱風炉操業指標導出方法。
現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量は、サイクル単位で定められる区間であって、その区間の最後のサイクルが前記予測区間の最初のサイクルよりも前のサイクルである制御区間における前記熱風炉に対する投入熱量から求められる投入熱量であり、
前記第1のプロセス状態予測工程は、前記予測区間と前記制御区間をサイクル単位で異ならせて、複数の前記予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値を導出すると共に、複数の前記制御区間における前記熱風炉への現時点以降の前記サイクル単位の投入熱量を決定することを特徴とする請求項14〜16の何れか1項に記載の熱風炉操業指標導出方法。
前記第1の目的関数の値に対する制約式は、前記第1のプロセスモデルにより計算された、前記熱風炉における送風温度の予測値の最低値と前記熱風炉における送風温度の目標との差の絶対値が閾値以下であることを示す制約式と、前記珪石煉瓦最低温度の目標値と、前記第1のプロセスモデルにより計算された前記珪石煉瓦最低温度の予測値との差の絶対値が閾値以下であることを示す制約式とを含むことを特徴とする請求項14〜17の何れか1項に記載の熱風炉操業指標導出方法。
現時点以降の所定の前記サイクルにおける前記熱風炉に対する投入熱量は、サイクル単位で定められる区間であって、その区間の最後のサイクルが前記予測区間の最初のサイクルよりも前のサイクルである制御区間における前記熱風炉に対する投入熱量から求められる投入熱量であり、
前記最適追従制御工程は、前記制御区間をサイクル単位で異ならせて、複数の前記制御区間における前記熱風炉への現時点以降の前記サイクル単位の投入熱量を決定し、
前記第2のプロセス状態予測工程は、前記予測区間をサイクル単位で異ならせて、複数の前記予測区間における前記珪石煉瓦最低温度の予測値を導出することを特徴とする請求項19に記載の熱風炉操業指標導出方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
[熱風炉100の構成]
図1は、熱風炉100の概略構成の一例を示す図である。尚、各図では、説明の都合上、必要な部分のみを、必要に応じて簡略化して示す。
図1において、熱風炉100は、不図示の高炉に熱風を供給するための蓄熱式熱交換器である。熱風炉100は、高炉への送風に熱を与える蓄熱室101と、蓄熱室101を加熱するための燃焼室102と、熱風の温度調節を行うための混冷室103と、を有している。
【0015】
燃焼室102では、ガス供給ダクト112から吹き込まれるBFGとCOGとLDGとの混合ガス(尚、以下の説明では、これらの混合ガスを必要に応じて「燃焼ガス」と総称する)及び燃焼空気供給ダクト113から吹き込まれる燃焼空気とを燃焼バーナ108で燃焼させ、この燃焼ガスを蓄熱室101の内部に積層された蓄熱煉瓦の間を通過させて加熱して熱を蓄える。
【0016】
図1に示す例では、この蓄熱煉瓦として、下側から順に、粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、シリカを主成分とする珪石煉瓦111が積層されており、これらの粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111には、上下方向に延びる複数の通過口が形成されている。
ガス供給ダクト112には、ガス遮断弁130、ガスバタフライ弁131、及び燃焼ガス流量計132が設けられており、ガスバタフライ弁131を開閉することにより、燃焼室102に流入する燃焼ガスの流入量を調節することができる。
【0017】
燃焼空気供給ダクト113は、燃焼空気ファンから送風された空気を熱風炉100に送風する。
燃焼空気供給ダクト113には、空気流量計127、空気バタフライ弁128、及び空気遮断弁129が設けられている。燃焼空気供給ダクト113には、燃焼ガスの流量に応じて、燃焼に必要な量の空気が流入されるようにしている。
蓄熱室101の下端部には、ダクト114が設けられており、このダクト114は、N
2、CO
2等を含む燃焼ガスを排出するためのガス排出ダクト119と、ダクト114を介して蓄熱室101に冷風を供給するための冷風導入ダクト116と、に分岐される。
ガス排出ダクト119には、煙道弁126が設けられている。
【0018】
冷風導入ダクト116には、送風弁124、及び送風バタフライ弁125が設けられており、送風バタフライ弁125を開閉させることにより、熱風炉100に流入する冷風の流入量を調節することができる。
また、混冷室103には、高炉用の熱風を排出するための熱風排出ダクト117が接続されている。この熱風排出ダクト117には、熱風弁121が設けられている。
また、冷風導入ダクト116の送風バタフライ弁125より上流側には、混冷室103に繋がるダクト118が設けられている。このダクト118には、冷風弁122と、冷風バタフライ弁123とが設けられている。
【0019】
図2は、熱風炉100における燃焼期間と送風期間の動作の概要の一例を示す図である。
図2(a)に示すように、燃焼期間において、蓄熱室101に熱を蓄える場合には、送風弁124、冷風弁122、及び熱風弁121を完全に閉じて、ガス供給ダクト112及び燃焼空気供給ダクト113を介して燃焼室102内に燃焼ガス及び燃焼空気を流入させる。
これらの燃焼ガス及び燃焼空気はバーナ108によって燃焼され、この燃焼ガスは、蓄熱室101の粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111に形成された開口部を通って、粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111を蓄熱する。粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111を通過した燃焼ガスは、ガス排出ダクト119を介して排ガスとして煙道に排出される。ここで、珪石煉瓦111の最下部での最低温度は、珪石煉瓦111の変態点温度以下となることのないように管理される。また、粘土煉瓦109の最下部での温度の下限値は(排ガス温度が高くならないようにできるだけ低く)一定値に管理される。以下の説明では、送風期間終了時の珪石煉瓦111の下端部の最低温度を、必要に応じて「珪石煉瓦最低温度」と略称する。
【0020】
蓄熱室101への蓄熱が完了すると、
図2(b)に示すように、煙道弁126、空気遮断弁129、及びガス遮断弁130を完全に閉じて、冷風導入ダクト116を介して蓄熱室101に冷風を流入させる。蓄熱室101に流入した冷風は、粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111に形成された開口部を通過して900〜1300℃に加熱された後、高炉用の熱風として熱風排出ダクト117から排出される。
【0021】
図3は、熱風炉の制御システムの概略構成の一例を示す図である。
図3において、実線は信号の流れを示し、破線は、冷風、熱風、燃焼ガス、燃焼空気の流れを示している。
図3では、1基の高炉に対して4基の熱風炉100a〜100dを付帯させた場合を例に挙げて示している。また、これら4基の熱風炉100a〜100dは、スタッガードパラレル方式で操業するものとする。
図4は、スタッガードパラレル方式における操業スケジュールの概略の一例を説明する図である。
図4に示す例では、左から右へ送風から燃焼への切替と、燃焼と、燃焼から送風への切替と、送風とをこの順番で行い、これらの期間を合わせた期間で1サイクルを構成するようにしている(
図4に示す「1サイクル=切り替え時間401+燃焼時間402+切り替え時間401+送風時間403」の部分を参照)。1サイクルは、例えば、180[min]である。そして、熱風を供給する順番で前後(隣接)する2基(例えば熱風炉1と熱風炉2)の送風時間の一部をラップさせるようにする。更に、
図4に示す例では、簡単のために送風時間と燃焼時間とを同じ長さにしているので、熱風を供給する順番で隣接しない2基(例えば熱風炉1と熱風炉3)については、一方の熱風炉が送風期間であるときに他方の熱風炉が燃焼期間となり、一方の熱風炉が燃焼期間であるときに他方の熱風炉が送風期間となるようにする。また、
図4に示すように、4つの熱風炉のうち1つの熱風炉だけが送風期間となる状態が生じるように操業することができる。本実施形態では、全てのサイクルにおいて、送風時間が同じ時間である場合を例に挙げて説明する。
【0022】
[制御装置300の構成]
図3の説明に戻り、熱風炉の制御システムは、熱風炉100a〜100dの操業を制御する制御装置300を有している。制御装置300は、熱風炉制御計算機301と、入出力装置302と、流量調節計304と、温度調節計305と、開度調節計313a〜313dと、を有している。
熱風炉制御計算機301は、予め設定される入力データをもとに熱風炉100a〜100dの操業指標を導出するための演算を行う。熱風炉制御計算機301に対するデータの入力は、インターフェース部である入出力装置302を介して行われる。入出力装置302に入力される情報としては、例えば、以下のようなものがある。
【0023】
まず、熱風炉のオペレータによる入力装置312の操作に基づく情報として、例えば、以下の情報がある。
・熱風炉100a〜100dの操業を、高炉からの要求に応じた状態に変更する際の操業目標値(目標送風温度BT
ref(time)、目標送風流量BV
ref(time)、目標送風時間BTime
ref(time))。尚、本実施形態では、目標送風時間BTime
ref(time)は固定値であるとする。
・設備負荷(炉別・サイクル別熱効率η(i,n+j)、炉別・サイクル別投入熱量Qin(i,n+j)、炉別・サイクル別蓄熱量Q
bf(i,n+j)、炉別・サイクル別蓄熱分担比率α(i,n+j)の候補の初期値。
【0024】
・炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の候補の初期値
・熱風炉のプロセスモデルを表す線形時系列モデルの係数a
0・
x(i)、b0・
x(i)、c0・
x(i)、a1・
x(i)、b1・
x(i)、c1・
x(i)
・目的関数J
1(i)の重み係数w
1(i)、w
2(i)
【0025】
・炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の最適化時間範囲602を定めるサイクル数q(qは正の整数)
ここで、サイクル数qが、熱風炉100a〜100dの時定数よりも長い時間に対応するサイクル数となるように、サイクル数qが設定される。例えば、現在時刻が属するサイクルに対応するサイクル数をnとし、熱風炉100a〜100dの時定数が3日である場合、現在時刻が属するサイクルから、3日以上先のサイクルに対応するサイクル数がn+qとなるように、サイクル数qが設定される(
図6を参照)。尚、時定数とは、熱風炉100a〜100dに対して操業指示(送風流量や送風温度の指示)を行ってから、(外乱による影響を受けずに)熱風炉100の各部の温度が平衡状態(操業条件を反映した状態)になるまでの時間をいう。
【0026】
・現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の導出対象となる制御区間702を定めるサイクル数s(sは正の整数)
ここで、サイクル数sは、制御区間702の最後のサイクルを定めるものであり、サイクル数n+sは、熱風炉100a〜100dの時定数及びサイクル数n+qを下回る値である(
図6、
図7を参照)。
・炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)の予測区間701を定めるサイクル数d、m(d、mは正の整数。d<m)
ここで、サイクル数d(dは正の整数)は、予測区間701の最初のサイクルを定めるものである(
図7を参照)。また、サイクル数dはサイクル数sよりも大きい(サイクル数s以上となる)値である(
図7を参照)。
サイクル数mは、予測区間701の最後のサイクルを定めるものである(
図7を参照)。サイクル数mは、熱風炉100a〜100dの時定数及びサイクル数qを下回る値である(
図6、
図7を参照)。
このように、予測区間701と制御区間702は、熱風炉100a〜100dの時定数及び最適化時間範囲602を下回る期間であり、制御区間702の最後のサイクルは、予測区間701の最初のサイクルよりも(時間的に)前のサイクルとなる。
【0027】
予測区間701としては、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)が、目標値(炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n))によく追従するような区間が、オペレータにより適宜設定される。送風流量BVや送風温度BTといった操業条件の変更をしても、熱風炉100a〜100dの蓄熱量は、直ぐにはその操業条件の変更を反映しない。よって、例えば、熱風炉100a〜100dの蓄熱量が、操業条件の変更を反映し始めた後の時間に対応するサイクル数を、サイクル数dとして設定することができる。一方、サイクル数mとしては、例えば、8時間〜1日先の時間に対応するサイクル数を設定することができる。
【0028】
・熱風炉100を構成する設備(粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111等)・ガス(燃焼ガス・燃焼空気等)の既知データ(物理定数・設備定数)。
・蓄熱煉瓦の残熱量の指標となる物理量の目標値(R1目標〜R4目標、R6目標〜R11目標、T5目標)。
・蓄熱煉瓦の残熱量の指標となる物理量を規定するための基準時間(T1、T3、T6、T8、T9)。
・珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mを算出する際の補正ゲインk(k11、k12、k21、k22、k31、k32、k41、k42、k51、k52、k61、k62、k71、k72、k81、k82、k91、k92、k101、k102)。
尚、蓄熱煉瓦の残熱量の指標となる物理量の目標値と、蓄熱煉瓦の残熱量の指標となる物理量を規定するための基準時間と、珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mを算出する際の補正ゲインkの詳細については、
図8〜
図14を参照しながら後述する。
この他にも、後述する計算において予めオペレータが設定する情報も入出力装置302に入力される。
【0029】
ここで、添字refは、目標値であることを表し、添字pは、将来の値であることを表す。
また、(i,n+j)、(i)のiは、熱風炉100によって値が異なり得ることを表す。本実施形態では、熱風炉100a〜100dは4基なので、iは1〜4となる。また、(i,n+j)、(i,t)のn、j、tは、サイクルによって値が異なり得ることを表す。nは、現在時刻が属するサイクルのサイクル数を、n+jは、現在時刻が属するサイクルよりもjだけ先のサイクルのサイクル数をそれぞれ表す。tは、現在時刻が属するサイクルよりも先のサイクル数を表す。
また、(time)のtimeは、時刻(例えば、分(min)を最小単位とする時刻)によって値が異なり得ることを表す。
【0030】
本実施形態では、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の候補の初期値として、T
si,ref(i,n)、T
si,ref(i,n+1)、・・・、T
si,ref(i,n+q)が設定される。
また、サイクル数n〜n+qに対応する時間(最適化時間範囲602)において、目標送風温度BT
ref(time)と、目標送風流量BV
ref(time)が設定される。
【0031】
また、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)として、T
si,ref(i,n)、T
si,ref(i,n+1)、・・・、T
si,ref(i,n+q)が導出される。
また、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)として、T
si,p(i,n+d+g)、T
si,p(i,n+d+1+g)、・・・、T
si,p(i,n+m+g)が導出される。ここで、gは、0(ゼロ)からq−mまでの整数である。すなわち、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)として、T
si,p(i,n+d)〜T
si,p(i,n+m)、T
si,p(i,n+d+1)〜T
si,p(i,n+m+1)、T
si,p(i,n+d+2)〜T
si,p(i,n+m+2)、・・・、T
si,p(i,n+d+q−m)〜T
si,p(i,n+m+q−m)が、この順で導出される。導出された炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)のうち、重複するサイクルの値については、最新の値が採用される。
【0032】
また、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)として、Q
in,p(i,n+g)、Q
in,p(i,n+1+g)、・・・、Q
in,p(i,n+s+g)が導出される。すなわち、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)として、Q
in,p(i,n)〜Q
in,p(i,n+s)、Q
in,p(i,n+1)〜Q
in,p(i,n+s+1)、・・・、Q
in,p(i,n+g)〜Q
in,p(i,n+s+g)が、この順で導出される。導出された現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)のうち、重複するサイクルの値については、最新の値が採用される。
【0033】
操業実績を示す情報としては、例えば、以下のようなものがある。
・熱風炉100a〜100dから高炉に排出される熱風の温度(送風温度)を測定する熱風温度計310により測定された送風温度BT。
・珪石煉瓦111の下端の温度を炉毎に測定する珪石煉瓦温度計315a〜315dにより測定された珪石煉瓦下端温度T
si。
・送風機306から送風された冷風の流量(冷風流量)を測定する送風流量計307で測定された冷風流量(=送風流量BV)。
・送風機306から送風された冷風の温度を測定する冷風温度計308により測定された冷風温度。
・混冷室103に流入する冷風の流入量を調節する冷風バタフライ弁123の開度。
・熱風炉100に流入する冷風の流入量を調節する送風バタフライ弁125の開度。
弁の開度は0[%](=全閉)〜100[%]の値をとるものとする。
また、図示を省略するが、各熱風炉100a〜100dに付帯するその他センサから出力されるその他の操業実績を示す情報も入出力装置302に入力される。
【0034】
以下に、熱風炉制御計算機301が行う処理の一例の概要を説明する。
本実施形態では、熱風炉制御計算機301は、入力された情報等をもとに、蓄熱量目標軌道導出プログラムを実行して、現在時刻が属するサイクル(サイクル数n)から、熱風炉100a〜100dの時定数よりも長い時間に対応するサイクル(サイクル数n+q)が経過するまで(例えば3日以上先まで)の各サイクルにおいて、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)を導出する。ここで、jは以下の(1)式で表される。
j=0,1,・・・,q ・・・(1)
【0035】
次に、熱風炉制御計算機301は、入力された情報等をもとに、投入熱量導出プログラムを実行して、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)が、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)に追従するように、各熱風炉100a〜100dへの現時点以降の投入熱量Q
in,p(i,t)を熱風炉100a〜100d毎に個別に計算する。次に、熱風炉制御計算機301は、各熱風炉100a〜100dへの現時点以降の投入熱量Q
in,p(i,t)を用いて、燃焼ガスの流量を熱風炉100a〜100d毎に個別に計算する。次に、熱風炉制御計算機301は、熱風炉制御計算機301は、各熱風炉100a〜100dに対応して設けられている流量調節計304a〜304dに対して、燃焼ガスの流量を指示する。
流量調節計304a〜304dは、熱風炉制御計算機301から指示された流量が指示通りになるように、ガスバタフライ弁131a〜131dの開閉動作を調節する。
【0036】
また、熱風炉制御計算機301は、オペレータによる入力装置312の操作に基づいて得られた温度を、熱風炉100a〜100dから排出される熱風の温度の目標値として、温度調節計305に設定する。温度調節計305は、送風バタフライ弁125a〜125dの開閉動作を調節する開度調節計313a〜313dに対して、目標開度を指示する。例えば、2基の熱風炉100で送風している期間であれば、温度調節計305は、送風温度が高ければ、先行して送風する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度を開けると共に、後行して送風する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度を閉める。逆に、送風温度が低ければ、温度調節計305は、先行して送風する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度を閉めると共に、後行して送風する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度を開ける。先行して送風する熱風炉100は、熱交換が進んでいるため、熱風温度が低く、後行して送風する熱風炉100は、十分に蓄熱しているため、熱風温度が高いので、これらの送風バタフライ弁125の開度(風量の配分)を調節することによって送風温度を制御することができる。また、送風期間中に冷風バタフライ弁123を徐々に閉めて送風温度を調節する。
送風機306は、送風流量調節計309に設定された風量の冷風を送風する。送風流量調節計309の設定は、送風工場で変更される。
また、熱風炉制御計算機301は、以上のような計算結果に基づく画面の表示を、入出力装置302を介して表示装置303に行わせる。
【0037】
以下に、熱風炉制御計算機301が行う処理の一例を詳細に説明する。尚、以下の説明では、熱風炉制御計算機301が行う処理のうち、本実施形態を説明するのに必要な部分のみの構成及び動作を説明し、本実施形態の説明に不要な部分の構成及び動作の詳細な説明を省略する。
熱風炉制御計算機301は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDDを備えたコンピュータを用いることにより実現することができる。また、前述したプログラムは、例えば、HDDに記憶され、CPUにより実行される。
【0038】
[熱風炉制御計算機301の機能構成]
図5は、熱風炉制御計算機301の機能的な構成の一例を示す図である。
図5に示すように、熱風炉制御計算機301は、蓄熱量目標軌道最適化部501と、第1のプロセス状態予測部502と、最適追従制御部503と、第2のプロセス状態予測部504と、を有する。
【0039】
(蓄熱量目標軌道最適化部501、第1のプロセス状態予測部502)
蓄熱量目標軌道最適化部501及び第1のプロセス状態予測部502は、前述した蓄熱量目標軌道導出プログラムを実行する部分である。前述したように、蓄熱量目標軌道導出プログラムを実行することにより、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)が、最適化時間範囲602(j=0、1、・・・、q)において導出される。最適化時間範囲602とは、現在時刻が属するサイクル(サイクル数n)から、熱風炉100a〜100dの時定数よりも長い時間に対応するサイクル(サイクル数n+q)が経過するまでの時間である。このように長期間に亘って、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)を導出するのは、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)を、熱風炉100a〜100dの各部の温度が平衡状態になるまでの状態を反映したものにするためである。
以下に、蓄熱量目標軌道最適化部501及び第1のプロセス状態予測部502が有する機能の一例を説明する。
【0040】
図6は、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)と、操業目標値(操業条件)の一例を概念的に示す図である。
蓄熱量目標軌道最適化部501は、現在時刻が属するサイクル(サイクル数n)から、最適化時間範囲602が経過する時刻が属するサイクル(サイクル数n+q)までの間に、操業目標値601が変動するか否かを判定する。操業目標値601とは、操業条件を指し、例えば、目標送風温度BT
ref(time)、目標送風流量BV
ref(time))、又はこれらから得られる目標送風熱量である。
この判定の結果、操業目標値601が変動する場合に、以下の処理が実行される。
図6に示す例では、最適化時間範囲602内で、操業目標値601が3回変動している。尚、この判定は、例えば、1[min]毎に行われる。
【0041】
以上のようにして操業目標値601が変動していると判定すると、蓄熱量目標軌道最適化部501は、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の候補を第1のプロセス状態予測部502に出力する。尚、最初は、入出力装置302に入力された「炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の候補の初期値」を第1のプロセス状態予測部502に出力する。
【0042】
図7は、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)と、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
p,ref(i,t)と、操業目標値(操業条件)と、炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の一例を概念的に示す図である。
第1のプロセス状態予測部502は、熱風炉100a〜100dに対する炉別・サイクル別投入熱量Q
inを入力して当該熱風炉100a〜100dのプロセス状態を個別に計算する計算モデルであるプロセスモデルを用いて、各熱風炉100a〜100dのプロセス状態の予測値を導出する。本実施形態では、各熱風炉100a〜100dのプロセス状態の予測値は、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)と、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)と、炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,t)とを含む。ここで、tは、予測区間701又は制御区間702におけるサイクル数を表すものであり、以下の(2a)式、(2b)式で表される。
予測区間; t=n+d+g、n+d+1+g、・・・、n+m+g ・・・(2a)
制御区間; t=n+g、n+1+g、・・・、n+s+g ・・・(2b)
【0043】
前述したように、nは、現在時刻が属するサイクル数である。dは、予測区間701の最初のサイクルに対応するサイクル数を表す。mは、予測区間701の最後のサイクルに対応するサイクル数を表す。gは、0(ゼロ)からq−mまでの整数である。すなわち、予測区間701は、サイクル数m−dの範囲の区間である。
以上のように、予測区間701は、その最後のサイクルに対応するサイクル数がn+q−mとなるまで、サイクル数m−dの範囲の区間を1サイクルずつ後ろにずらしたものとなる。また、制御区間702は、その最後のサイクルに対応するサイクル数がn+s+q−mになるまで、サイクル数sの範囲の区間を1サイクルずつ後ろにずらしたものとなる。
【0044】
本実施形態では、第1のプロセス状態予測部502は、プロセスモデルとして、線形時系列モデルを用いる。プロセス状態の予測値をサイクル毎に計算する統計解析モデルの一つである。
具体的に、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)は、以下の(3)式を用いることにより求められる。
【0046】
(3)式において、係数a0・
x(i)、b0・
x(i)、c0・
x(i)は、入力装置312の操作に基づいて入力された係数である。例えば、これらの係数として、熱風炉100a〜100dの過去の操業結果に(3)式の形が最も合うときの係数が別途求められ、求められた係数が入力装置312の操作に基づいて入力される。熱風炉100a〜100dの過去の操業結果に(3)式の形を合わせるための手法としては、最小二乗法等の手法が用いられる。
ΔT
si,p(i,n+j+1)は、以下の(4)式で表される。
ΔT
si,p(i,n+j+1)=T
si,p(i,n+j+1)−T
si,p(i,n+j) ・・・(4)
【0047】
ΔT
si(i,n+j−x)は、以下の(5)式で表される。
ΔT
si(i,n+j−x)=T
si(i,n+j−x)−T
si(i,n+j−x−1) ・・・(5)
第1のプロセス状態予測部502は、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度T
si(i,n+j−x)のうち、過去の値については、操業実績として入力された珪石煉瓦下端温度を設定する。一方、将来の値については、それまでに(4)式により得られている炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)を設定する。
【0048】
ΔQ
in(i,n+j+1−x)は、以下の(6)式で表される。
ΔQ
in(i,n+j+1−x)=Q
in(i,n+j+1−x)−Q
in(i,n+j−x) ・・・(6)
第1のプロセス状態予測部502は、Q
in(i,n+j+1−x)のうち、過去の値については、炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の過去の値を設定する。一方、将来の値については、現時点で既に導出されている現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)と、現時点で計算対象となっている制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,n+g)〜Q
in,p(i,n+s+g)の候補とを設定する。
【0049】
ΔQ
out(i,n+j+1−x)は、以下の(7)式で表される。
ΔQ
out(i,n+j+1−x)=Q
out(i,n+j+1−x)−Q
out(i,n+j−x) ・・・(7)
Q
outは、送風熱量[J]である。第1のプロセス状態予測部502は、炉別・サイクル別送風熱量Q
out(i,n+j+1−x)のうち、過去の値については、操業実績として入力された送風温度及び送風流量から求められる炉別・サイクル別送風熱量を設定する。一方、将来の値については、操業目標値(目標送風温度BT
ref(time)、目標送風流量BV
ref(time))から求められる炉別・サイクル別送風熱量を設定する。
第1のプロセス状態予測部502は、以上のようにして、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)を、少なくとも、i=1〜4、t=n〜n+m+gについてそれぞれ導出する。そして、第1のプロセス状態予測部502は、導出した炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)のうち、i=1〜4、t=n+d+g〜n+m+gの値を、予測区間701における炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)として採用する。
【0050】
また、炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,t)は、以下の(8)式を用いることにより求められる。
【0052】
(8)式において、係数a1・
x(i)、b1・
x(i)、c1・
x(i)は、入力装置312の操作に基づいて入力された係数である。これらの係数a1・
x(i)、b1・
x(i)、c1・
x(i)も、係数a0・
x(i)、b0・
x(i)、c0・
x(i)と同様にして予め求められるものである。
ΔBT
p(i,n+j+1)は、以下の(9)式で表される。
ΔBT
p(i,n+j+1)=BT
p(i,n+j+1)−BT
p(i,n+j) ・・・(9)
【0053】
ΔBT(i,n+j−x)は、以下の(10)式で表される。
ΔBT(i,n+j−x)=BT(i,n+j−x)−BT(i,n+j−x−1) ・・・(10)
第1のプロセス状態予測部502は、炉別・サイクル別送風温度BT(i,n+j−x)のうち、過去の値については、操業実績として入力された送風温度を設定する。一方、将来の値については、それまでに(8)式により得られている炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,t)を設定する。
ΔQ
in(i,n+j+1−x)、ΔQ
out(i,n+j+1−x)については、それぞれ、前述した(6)式、(7)式で表される。
【0054】
第1のプロセス状態予測部502は、以上のようにして、予測区間701における炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,n+d+g)〜T
si,p(i,n+m+g)と、予測区間701における炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,n+d+g)〜BT
p(i,n+m+g)とを導出すると、以下の(11)式の炉別目的関数J
1(i)の評価値の値を、以下の(12)式及び(13)式の制約条件を満たす範囲で最小化するために、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の候補の値をそれぞれどれだけ変更すればよいのかを、最適化手法を用いて判断する。この判断のロジックは、GA、山登り法、及び線形計画法等、公知の方法で実現することができる。制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の候補の変更量は、このロジックに応じて定まるものである。第1のプロセス状態予測部502は、この変更量に基づいて、(11)式の炉別目的関数J
1(i)の評価値の値が最小と見なせるまで、制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の候補の値を変更して、前述した(3)式〜(13)式の計算を繰り返し行う。
【0056】
(11)式において、T
si,err(i,t)は、以下の(14)式で表され、ΔQ
in(i,t)は、以下の(15)式で表される。
T
si,err(i,t)=T
si,ref(i,t)−T
si,p(i,t) ・・・(14)
ΔQ
in(i,t)=Q
in(i,t)−Q
in(i,t−1) ・・・(15)
また、(12)式、(13)式において、Th
1(i)、Th
2(i)は、閾値であり、予め設定されているものである。また、BT
p,min(i,t)は、炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,t)の最低値であることを示す。また、BT
ref(i,t)は、目標送風温度である。尚、前述したように、本実施形態では、目標送風温度BT
ref(time)は、炉iに依存せず時間timeに依存するので、サイクルtに対応する時間timeの目標送風温度BT
ref(time)がBT
ref(i,t)として採用される。
(11)式の右辺の第1項は、予測区間701における炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)を、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)に良く追従させることを目的とする目的関数である。(11)式の右辺の第2項は、同一の熱風炉100において相互に隣接するサイクルにおける炉別・サイクル別投入熱量Q
in(i,t)の変動を小さくすることを目的とする目的関数である。(11)式に示す炉別目的関数は、これらの目的関数の重み付き線形和で表される。(11)式におけるW
1(i)、W
2(i)は、(11)式に示す炉別目的関数の各項に対する重み係数である。
【0057】
第1のプロセス状態予測部502は、(11)式の炉別目的関数J
1(i)の評価値の値が最小となったときの「炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,n+d+g)〜T
si,p(i,n+m+g)と、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,n)〜Q
in(i,n+s+g)(の候補の値)」を、蓄熱量目標軌道最適化部501に出力(返信)する。
【0058】
以上のような各熱風炉100a〜100dのプロセス状態の予測値の導出は、予測区間701と制御区間702をそれぞれ1サイクルずつ後ろにずらして順次行われる。例えば、予測区間701として、サイクル数n+d〜n+mのサイクルの区間を設定すると共に、制御区間702として、サイクル数n〜n+sのサイクルの区間を設定して、各熱風炉100a〜100dのプロセス状態の予測値を導出すると、その次に、予測区間701として、サイクル数n+d+1〜n+m+1のサイクルの区間を設定すると共に、制御区間702として、サイクル数n+1〜n+s+1のサイクルの区間を設定して、各熱風炉100a〜100dのプロセス状態の予測値を導出する。
そして、予測区間701の最後のサイクルが、サイクル数n+qのサイクルになったときのプロセス状態の予測値が導出されると、プロセス状態の予測値の導出を終了する。このようにすることにより、サイクル数n〜n+q−mの各サイクルにおけるプロセス状態の予測値が導出される。ここで、同一のサイクルにおいて導出されたプロセス状態の予測値のうち、最新のプロセス状態の予測値が採用される。
【0059】
蓄熱量目標軌道最適化部501は、第1のプロセス状態予測部502から、各熱風炉100a〜100dのプロセス状態の予測値を入力すると、以下の(16)式の炉別目的関数J
2(i)の評価値の値を最小化するために、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の候補の値をそれぞれどれだけ変更すればよいのかを、最適化手法を用いて判断する。この判断のロジックは、GA、山登り法、及び線形計画法等、公知の方法で実現することができる。炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の候補の変更量は、このロジックに応じて定まるものである。この変更量に基づいて、(16)式の炉別目的関数J
2(i)の評価値の値が最小であると見なせるまで、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の候補の値を変更して、前述した(3)式〜(16)式の計算が繰り返し行われる。
【0061】
(16)式において、T
si,m(i,t)は、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値である。
(16)式の右辺第1項は、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)と炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)との差の絶対値の最適化時間範囲602における最大値を表す。したがって、(16)式の右辺の第1項は、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)を炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,t)に良く追従させることを目的とする目的関数である。
【0062】
また、(16)式の右辺第2項は、炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適化時間範囲602における総和を表す。したがって、(16)式の右辺の第2項は、炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)を小さくすることを目的とする目的関数である。
また、(16)式の右辺の第3項は、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)から炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)を減算した値と0(ゼロ)とのうち大きい方の値の最適化時間範囲602における最大値を表す。したがって、(16)式の右辺の第3項は、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)が炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)よりも大きくなることを抑制することを目的とする目的関数である。(16)式の炉別目的関数は、これらの重み付き線形和で表される。(16)式におけるW
3(i)、W
4(i)、W
5(i)は、(16)式に示す炉別目的関数の各項に対する重み係数である。
【0063】
炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)が、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)よりも小さくなると、蓄熱量が不足し、高炉に必要な熱風を供給することができなくなる。そこで、(16)式の第3項に示す目的関数を導入する。
ここで、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)を導出する方法の一例を説明する。
【0064】
本実施形態では、送風期間の終了時における珪石煉瓦の残熱量の指標であって、実測することができる指標を用いて、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)を導出する。以下の説明では、この指標を必要に応じて「残熱量指標」と称する。
本実施形態では、残熱量指標として、冷風バタフライ弁123の開度と、送風バタフライ弁125の開度と、熱風温度計310により測定される送風温度との何れかを用いる。
具体的には、冷風バタフライ弁123を開いて混冷室103に冷風を流入させる(いわゆる混冷を行う)場合には、冷風バタフライ弁123の開度を残熱量指標として用いる。一方、冷風バタフライ弁123を閉じて混冷室103に冷風を流入させない(いわゆる混冷を行わない)場合には、送風バタフライ弁125の開度と、熱風温度計310により測定される送風温度との何れかを残熱量指標として用いる。
【0065】
ここで、混冷を行う場合に冷風バタフライ弁123の開度を残熱量指標として用いる理由を説明する。
図8は、混冷室103に流入する冷風流量と時間との関係と、熱風温度計310により測定される送風温度と時間との関係の一例を示す図である。尚、
図8の波形は、説明のために示したものであり、実際の波形は、必ずしもこのようにはならない。
図8の上から一番目の波形801は、冷風バタフライ弁123を全閉にした場合の送風温度の波形を示す。
図8の上から二番目の波形802は、
図8の上から一番目の波形801を
図8の上から三番目の波形803にするための或る1つの熱風炉100における冷風流量の波形を示す。
図8の上から三番目の波形803に示す送風温度は、操業上の目標となる送風温度に対応する。
【0066】
冷風バタフライ弁123の開度は、1[sec]毎に、送風期間の終了時の開度が目標値(ここでは0(ゼロ))になることを目標として予め定められた開度パターンに従って変更されるものとし、且つ、冷風バタフライ弁123を開いている間は、送風バタフライ弁125は一定の開度に保たれているものとする。また、先行する熱風炉100において冷風バタフライ弁123を開いている間は、後行する熱風炉100においては、冷風バタフライ弁123は全閉であるものとする。波形801、802の一つの山が先行する熱風炉100の一送風期間に対応する。
【0067】
図8に示すように、送風温度が高いときには冷風流量を増大させる。一方、送風温度が低いときには冷風流量を減少させる。そして、或る1つの熱風炉100の送風期間が終了するときの当該熱風炉100の冷風バタフライ弁123の開度が目標値(ここでは0(ゼロ))であれば、当該熱風炉100の当該サイクルの燃焼期間に蓄熱された熱量を無駄なく高炉に供給することができており、当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量は、1サイクル前の残熱量から変化がないとみなすことができる。尚、厳密には、当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量が、1サイクル前の残熱量から変化がないと言えるのは、冷風バタフライ弁123の開度の目標値が0(ゼロ)である場合である。しかしながら、実際の操業では、余裕を見て0(ゼロ)よりも少し大きな値を目標値とすることがある。
【0068】
図9は、冷風バタフライ弁123の開度と時間との関係を示す図である、尚、
図9の波形も、説明のために示したものであり、実際の波形は、必ずしもこのようにはならない。
図9の波形901は、熱風炉100の冷風バタフライ弁123の開度の波形を示す。
図9において、時刻t
Eは、先行する熱風炉100の送風期間が終了する時刻であり、時刻t
Cは、後行する熱風炉100の送風期間が開始する時刻である(先行する熱風炉100の冷風バタフライ弁123の開度が0(ゼロ)になる時刻である)。
【0069】
図9に示すように、送風期間が終了する前に冷風バタフライ弁123の開度を0(ゼロ)にすることを目標にして操業することがある。この場合、或る1つの熱風炉100の冷風バタフライ弁123の開度が0(ゼロ)になってから送風期間が終了するまでの期間(=t
E−t
C)が目標通りであると、当該送風期間が終了したときの当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量は、1つ前のサイクルの残熱量から変化がないとみなすことができる。また、この期間が、目標よりも長いと、当該送風期間が終了したときの当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量は、1サイクル前の残熱量よりも小さく、逆に、短いと、当該送風期間が終了したときの当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量は、1サイクル前の残熱量よりも大きいとみなすことができる。以下の説明では、この期間を必要に応じて「全閉期間」と称する。
【0070】
また、前述したように、送風期間が終了する時に冷風バタフライ弁123の開度を0(ゼロ)にすることを目標にしても、送風期間が終了する前に冷風バタフライ弁123の開度が0(ゼロ)になることがある。この場合、全閉期間が長ければ長いほど、当該送風期間が終了したときの当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量は、1サイクル前の残熱量よりも小さいとみなすことができる。
以上のように、冷風バタフライ弁123の開度は、熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量と相関関係を有することから、本実施形態では、混冷を行う場合には冷風バタフライ弁123の開度を残熱量指標として用いるようにしている。
【0071】
次に、混冷を行わない場合に送風バタフライ弁125の開度と、熱風温度計310により測定される送風温度との何れかを残熱量指標として用いる理由を説明する。
図10は、送風バタフライ弁125の開度と時間との関係の一例を示す図である、尚、
図10の波形も、説明のために示したものであり、実際の波形は、必ずしもこのようにはならない。
図10の波形1001は、先行する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度の波形を示し、波形1002は、後行する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度の波形を示す。
図10において、時刻t
Eは、先行する熱風炉100の送風期間が終了する時刻であり、時刻t
Cは、後行する熱風炉100の送風期間が開始する時刻である。
【0072】
図10に示すように、先行する熱風炉100の送風期間が開始すると、先行する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度は一定の目標値(全開または全開に近い値)に保たれており、また、後行する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度も一定の目標値(全閉または全閉に近い値)に保たれている。
【0073】
その後、先行する熱風炉100の送風バタフライ弁125と後行する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度を調節して、送風温度を調整する。具体的に説明すると、先行する熱風炉100から高炉に送風される熱風の温度は低下しているので、先行する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度を徐々に小さくすると共に、高温の熱風を高炉に供給できる状態(燃焼期間が終了した状態)の後行する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度を徐々に大きくする(
図10の波形1001、1002を参照)。
【0074】
ここでは、先行する熱風炉100の送風期間が終了するとき(時刻t
E)に、当該先行する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度が、目標値(全閉または全閉に近い値)になるようにすると共に、先行する熱風炉100の送風期間が終了するとき(時刻t
E)に、後行する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度が、目標値(全開または全開に近い値)になるようにする。
【0075】
したがって、先行する熱風炉100の送風期間が終了したとき(時刻t
E)の当該熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度が目標値(全閉または全閉に近い値)であれば、当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量は、1サイクル前の残熱量から変化がないとみなすことができる。尚、厳密には、当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量が、1サイクル前の残熱量から変化がないと言えるのは、送風バタフライ弁125の目標値が0(ゼロ)である場合であるが、実際の操業では、余裕を見て0(ゼロ)よりも少し大きな値を目標値とすることがある。また、先行する熱風炉100の送風期間が終了したとき(時刻t
E)の当該熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度が目標値よりも大きければ、当該送風期間が終了したときの当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量は、1サイクル前の残熱量よりも大きく、小さければ、当該送風期間が終了したときの当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量は、1サイクル前の残熱量よりも小さいとみなすことができる。
【0076】
以上のことは、送風温度についても同じであり、先行する熱風炉100の送風期間が終了したとき(時刻t
E)の送風温度が目標値であれば、当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量は、1サイクル前の残熱量から変化がないとみなすことができる。また、先行する熱風炉100の送風期間が終了したとき(時刻t
E)の送風温度が目標値よりも大きければ、当該送風期間が終了したときの当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量は、1サイクル前の残熱量よりも大きく、小さければ、当該送風期間が終了したときの当該熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量は、1サイクル前の残熱量よりも小さいとみなすことができる。
以上のように送風バタフライ弁125の開度と、熱風温度計310により測定される送風温度は、熱風炉100の蓄熱煉瓦の残熱量と相関関係を有することから、本実施形態では、混冷を行わない場合には、送風バタフライ弁125の開度と、熱風温度計310により測定される送風温度との何れかを残熱量指標として用いるようにしている。
【0077】
次に、混冷を行う場合の具体的な残熱量指標を説明する。
図11は、混冷を行う場合の具体的な残熱量指標の一例を説明する図である。
図11に示すように、本実施形態では、以下の5つのうちの何れか1つを、混冷を行う場合の残熱量指標とする。
(1)送風終了n分前
図11に示す送風終了n分前とは、送風期間が終了する時刻のn分前における冷風バタフライ弁123の開度を残熱量指標とすることを意味する。この残熱量指標の目標値をR1目標、実測値をR1実績、補正ゲインをk1_(>0(ゼロ))とすると、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mは、以下の(17)式で表される。
ΔT
si,m=k1_×(R1目標−R1実績) ・・・(17)
ここで、R1目標≧R1実績の場合の補正ゲインk1_はk11、R1目標<R1実績の場合の補正ゲインk1_はk12とする。これらの補正ゲインk11、k12の値は同じであっても異なっていてもよい。また、前記nに対応する基準時間T1が設定される。
【0078】
図12は、1サイクルにおける或る熱風炉100の冷風バタフライ弁123の開度と時間との関係の一例を示す図である。尚、
図12の波形も、説明のために示したものであり、実際の波形は、必ずしもこのようにはならない。
図12の波形1201は、熱風炉100の冷風バタフライ弁123の開度の波形を示す。
図12において、時刻t
Sは、熱風炉100の送風期間が開始する時刻であり、時刻t
Eは、熱風炉100の送風期間が終了する時刻である。
図12に示すように、熱風炉100の送風期間が終了する時刻t
Eよりも基準時間T1だけ前の時刻における冷風バタフライ弁123の開度1202の目標値と実測値とを比較すれば、冷風バタフライ弁123の開度1202の実測値が目標値よりもどのくらい低いのか(送風期間が終了する時の蓄熱煉瓦の残熱量が、1サイクル前よりもどのくらい小さくなっているのか)を評価することができる。これに対し、熱風炉100の送風期間が終了する時刻t
Eで冷風バタフライ弁123の開度1202の目標値と実測値とを比較すると、このような評価ができない。
【0079】
(2)送風開始n分間Max
図11に示す送風開始n分間Maxとは、送風期間が開始してからn分間における冷風バタフライ弁123の開度の最大値を意味する。この残熱量指標の目標値をR2目標、実測値をR2実績、補正ゲインをk2_(>0(ゼロ))とすると、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mは、以下の(18)式で表される。
ΔT
si,m=k2_×(R2目標−R2実績) ・・・(18)
ここで、R2目標≧R2実績の場合の補正ゲインk2_はk21、R1目標<R1実績の場合の補正ゲインk2_はk22とする。これらの補正ゲインk21、k22の値は同じであっても異なっていてもよい。また、前記nに対応する基準時間T2が設定される。
【0080】
(3)一基送風Max
図11に示す一基送風Maxとは、1つの熱風炉100のみで送風を行っている期間(1つの熱風炉100のみが送風期間となっている間)における冷風バタフライ弁123の開度の最大値を意味する。
この残熱量指標の目標値をR3目標、実測値をR3実績、補正ゲインをk3_(>0(ゼロ))とすると、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mは、以下の(19)式で表される。
ΔT
si,m=k3_×(R3目標−R3実績) ・・・(19)
ここで、R3目標≧R3実績の場合の補正ゲインk3_はk31、R3目標<R3実績の場合の補正ゲインk3_はk32とする。これらの補正ゲインk31、k32の値は同じであっても異なっていてもよい。
【0081】
(4)送風終了時開度
図11に示す送風終了時開度とは、送風期間が終了するときの冷風バタフライ弁123の開度を意味する。
この残熱量指標の目標値をR4目標、実測値をR4実績、補正ゲインをk4_(>0(ゼロ))とすると、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mは、以下の(20)式で表される。
ΔT
si,m=k4_×(R4目標−R4実績) ・・・(20)
ここで、R4目標≧R4実績の場合の補正ゲインk4_はk41、R4目標<R4実績の場合の補正ゲインk4_はk42とする。これらの補正ゲインk41、k42の値は同じであっても異なっていてもよい。尚、開度に負の値はないので、R4目標が0(ゼロ)である場合には、R4目標>R4実績の条件が成立することはない。
【0082】
(5)送風終了前全閉時間
図11に示す送風終了前全閉時間とは、全閉時間が設定されている場合の全閉時間を意味する。
この残熱量指標の目標値をT5目標、実測値をT5実績、補正ゲインをk5_(>0(ゼロ))とすると、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mは、以下の(21)式で表される。
ΔT
si,m=k5_×(T5実績−T5目標) ・・・(21)
ここで、T5目標≧T5実績の場合の補正ゲインk5_はk51、T5目標<T5実績の場合の補正ゲインk5_はk52とする。これらの補正ゲインk51、k52の値は同じであっても異なっていてもよい。
【0083】
図13は、混冷を行わない場合の具体的な残熱量指標を説明する図である。
図13は、混冷を行わない場合の残熱量指標の一例を説明する図である。具体的に、
図13(a)は、残熱量指標が送風バタフライ弁125の開度である場合、
図13(b)は、残熱量指標が送風温度である場合について示す図である。
図13(a)、
図13(b)に示すように、本実施形態では、以下の5つのうちの何れか1つを、混冷を行わない場合の残熱量指標とする。
(6)送風終了n分前
図13(a)に示す送風終了n分前とは、送風期間が終了する時刻のn分前における送風バタフライ弁125の開度を残熱量指標とすることを意味する。
この残熱量指標の目標値をR6目標、実測値をR6実績、補正ゲインをk6_(>0(ゼロ))とすると、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mは、以下の(22)式で表される。
ΔT
si,m=k6_×(R6目標−R6実績) ・・・(22)
ここで、R6目標≧R6実績の場合の補正ゲインk6_はk61、R6目標<R6実績の場合の補正ゲインk6_はk62とする。これらの補正ゲインk61、k62の値は同じであっても異なっていてもよい。また、前記nに対応する基準時間T6が設定される。
【0084】
(7)送風終了時開度
図13(a)に示す送風終了時開度とは、送風期間が終了するときの送風バタフライ弁125の開度を意味する。
この残熱量指標の目標値をR7目標、実測値をR7実績、補正ゲインをk7_(>0(ゼロ))とすると、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mは、以下の(23)式で表される。
ΔT
si,m=k7_×(R7目標−R7実績) ・・・(23)
ここで、R7目標≧R7実績の場合の補正ゲインk7_はk71、R7目標<R7実績の場合の補正ゲインk7_はk72とする。これらの補正ゲインk71、k72の値は同じであっても異なっていてもよい。尚、開度に負の値はないので、R7目標が0(ゼロ)である場合には、R7目標>R7実績の条件が成立することはない。
【0085】
(8)送風終了n分間Ave
図13(b)に示す送風終了n分間Aveとは、送風期間が終了する時刻までのn分間(当該n分前の時刻から当該送風期間が終了する時刻までの期間)における送風温度の平均値を意味する。
この残熱量指標の目標値をR8目標、実測値をR8実績、補正ゲインをk8_(>0(ゼロ))とすると、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mは、以下の(24)式で表される。
ΔT
si,m=k8_×(R8目標−R8実績) ・・・(24)
ここで、R8目標≧R8実績の場合の補正ゲインk8_はk81、R8目標<R8実績の場合の補正ゲインk8_はk82とする。これらの補正ゲインk81、k82の値は同じであっても異なっていてもよい。また、前記nに対応する基準時間T8が設定される。
【0086】
(9)送風終了n分間Min
図13(b)の送風終了n分間Minとは、送風期間が終了する時刻までのn分間(当該n分前の時刻から当該送風期間が終了する時刻までの期間)における送風温度の最低値を意味する。この残熱量指標の目標値をR9目標、実測値をR9実績、補正ゲインをk9_(>0(ゼロ))とすると、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mは、以下の(25)式で表される。
ΔT
si,m=k9_×(R9目標−R9実績) ・・・(25)
ここで、R9目標≧R9実績の場合の補正ゲインk9_はk91、R9目標<R9実績の場合の補正ゲインk9_はk92とする。これらの補正ゲインk91、k92の値は同じであっても異なっていてもよい。また、前記nに対応する基準時間T9が設定される。
【0087】
(10)送風終了時温度
図13(b)の送風終了時温度とは、送風期間が終了するときの送風温度を意味する。
この残熱量指標の目標値をR10目標、実測値をR10実績、補正ゲインをk10_(>0(ゼロ))とすると、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mは、以下の(26)式で表される。
ΔT
si,m=k10_×(R10目標−R10実績) ・・・(26)
ここで、R10目標≧R10実績の場合の補正ゲインk10_はk101、R10目標<R10実績の場合の補正ゲインk10_はk102とする。これらの補正ゲインk101、k102の値は同じであっても異なっていてもよい。
【0088】
尚、本実施形態では、前述した(6)〜(10)の残熱量指標である送風温度は、前述したように熱風温度計310により測定される。また、本実施形態では、前述したR1実績〜R10実績は、現在時刻で既に終了している送風期間のうち最新の送風期間で得られる実績値である。
【0089】
図14は、以上の残熱量指標を設定するための残熱量指標設定画面の一例を示す図である。
熱風炉制御計算機301は、
図5に示す各部の処理が開始される前に、残熱量指標設定画面1400を表示装置303に表示し、残熱量指標設定画面1400に対する入力装置312を用いたオペレータによる操作の内容に基づいて、4つの熱風炉100a〜100d(熱風炉1〜4)のそれぞれにおいて前述した(1)〜(10)の残熱量指標から適用する残熱量指標を選択するとともに、選択した残熱量指標に対応する目標値と補正ゲインを取得する。尚、選択した残熱量指標が基準時間を必要とするものである場合、熱風炉制御計算機301は、基準時間も併せて取得する。
【0090】
図10に示す例では、判定条件の欄がプルダウンメニューを表示する欄になっており、前述した(1)〜(10)の何れか1つの残熱量指標を選択することができるようになっている。
図10に示す例では、前述した(4)送風終了時開度が全ての熱風炉100a〜100d(熱風炉1〜4)に対して設定されている場合を例に挙げて示している。前述したように、(4)送風終了時開度は基準時間を有しない残熱量指標であるので、基準時間を設定することはできないようにしている。
【0091】
ここで、本実施形態では、各熱風炉100a〜100d(熱風炉1〜4)に対して異なる残熱量指標を設定することができるものとする。ただし、混冷を行う場合の残熱量指標(前述した(1)〜(5)の残熱量指標)と、混冷を行わない場合の残熱量指標(前述した(6)〜(10)の残熱量指標)とを同時に設定することはできないものとする。また、各熱風炉100a〜100d(熱風炉1〜4)に対して異なる目標値を設定することができるものとする。このことは、基準時間についても同じである。
尚、本実施形態では、補正ゲインk1_〜k10_は、予め熱風炉制御計算機301に設定されているものとする。ただし、残熱量指標設定画面1400に対し、補正ゲインk1_〜k10_の入力欄を追加し、この入力欄を用いて補正ゲインk1_〜k10_を設定するようにしてもよい。
残熱量指標設定画面1400のOKボタン1401が押下されると、熱風炉制御計算機301は、残熱量指標設定画面1400に入力された内容を、残熱量指標の情報として設定する。一方、残熱量指標設定画面1400のキャンセルボタン1402が押下されると、熱風炉制御計算機301は、残熱量指標設定画面1400に入力された内容を、受け付けずに、残熱量指標設定画面1400の表示を消す。
【0092】
蓄熱量目標軌道最適化部501は、各熱風炉iに対して設定されている残熱量指標に基づいて、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)の変更量ΔT
si,mを導出し、炉別・サイクル別炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)の現在の値に、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mを加算して、炉別・サイクル別炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)を更新する。蓄熱量目標軌道最適化部501は、このようにして得られた炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)を(16)式に設定する。
【0093】
例えば、
図14に示すように、前述した(4)送風終了時開度が残熱量指標として設定された場合、蓄熱量目標軌道最適化部501は、各熱風炉100a〜100d(熱風炉1〜4)の直近の送風期間が終了したときの冷風バタフライ弁123の開度をR4実績として取得すると共に、
図14に示す残熱量指標設定画面1400に設定されたR4目標を取得する。さらに、蓄熱量目標軌道最適化部501は、R4目標がR4実績以上である場合には、補正ゲインk41を取得し、そうでない場合には、補正ゲインk42を取得する。そして、蓄熱量目標軌道最適化部501は、取得した情報を(20)式に代入して、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mを導出し、現在の炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mに加算する。
【0094】
ただし、以上のようにして更新された炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mが、珪石煉瓦111の変態点温度を下回る場合に、蓄熱量目標軌道最適化部501は、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mとして、珪石煉瓦111の変態点温度を設定する。
尚、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの初期値としては、例えば、投入熱量の制御を開始するタイミングで珪石煉瓦温度計315a〜315dにより測定された珪石煉瓦下端温度T
siを採用する。
【0095】
(最適追従制御部503、第2のプロセス状態予測部504)
最適追従制御部503及び第2のプロセス状態予測部504は、前述した投入熱量導出プログラムを実行する部分である。前述したようにして蓄熱量目標軌道最適化部501により、最適化時間範囲602における炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)が導出されると、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,n+j)を予測区間701において導出する。前述したように、予測区間701は、現在時刻が属するサイクル(サイクル数n)よりもサイクル数d〜mだけ先の期間である。また、サイクル数n+mに対応する時間は、熱風炉100a〜100dの時定数を下回る時間である。このように、サイクル数n+mに対応する時間を、熱風炉100a〜100dの時定数を下回る時間としているのは、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,n+j)を、余りに先の時間まで導出すると、操業の変更等があった場合に、導出した値の多くが無駄になってしまう虞があるからである。
【0096】
そして、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,n+j)が、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)に追従するように、制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,n+g)〜Q
in,p(i,n+s+g)が導出される。制御区間702は、サイクル数sの範囲の期間である。
以下に、最適追従制御部503及び第2のプロセス状態予測部504が有する機能の一例を説明する。
【0097】
最適追従制御部503は、熱風炉100a〜100d毎に、各サイクルの燃焼期間が開始する前の切り替え時間内の所定の時間になったか否かを判定する。
この判定の結果、熱風炉100a〜100dの何れかにおいて、各サイクルの燃焼期間が開始する前の切り替え時間内の所定の時間になると、以下の処理が実行される。
【0098】
最適追従制御部503は、制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,n+g)〜Q
in,p(i,n+s+g)の候補を第2のプロセス状態予測部504に出力する。尚、最初は、現在時刻が属するサイクル(サイクル数n)よりもs−1だけ前のサイクル(サイクル数n−s−1)から、現在時刻が属するサイクルよりも1だけ前のサイクル(サイクル数n−1)までの現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の値Q
in,p(i,n−s−1)〜Q
in,p(i,n−1)を、第2のプロセス状態予測部504に出力する。
【0099】
第2のプロセス状態予測部504は、熱風炉シミュレータを実行する。熱風炉シミュレータは、熱物理学を活用して、燃焼・送風によって、熱風炉100で行われる熱交換を忠実に再現する熱風炉モデルを用いて構築される。熱風炉シミュレータも、線形時系列モデルと同様に、熱風炉100a〜100dに対する炉別・サイクル別投入熱量Q
inを入力して当該熱風炉100a〜100dのプロセス状態を個別に計算する計算モデルであるプロセスモデルである。ただし、熱風炉シミュレータは、1サイクルを下回る時間間隔でプロセス状態の予測値を計算するものであり、線形時系列モデルよりもプロセス状態の予測値を厳密に計算することができる。
図15は、熱風炉モデルの一例を概念的に示す図である。ここでは、蓄熱室101における熱風炉モデルの一例を示す。
本実施形態で説明する熱風炉モデルでは、蓄熱室101の形が円筒であるとする。そして、その円筒を軸に沿って切った断面(二次元平面)における熱収支を表すモデル式を構築する。
【0100】
図15に示すように、例えば、珪石煉瓦111は、蓄熱煉瓦(珪石)1501と、炉壁煉瓦1502とにより表され、この炉壁煉瓦1502は、更に、鉄皮1502a、耐火煉瓦(A)〜(C)1502b〜1502d、キャスタブル1502e、鉄皮1502fにより構成される。珪石煉瓦111のモデル式では、これらについての前述した二次元平面の伝熱が表現される。他の粘土煉瓦109及びハイアルミナ煉瓦110についても、珪石煉瓦111と同様に、前述した二次元平面の伝熱が表現される。
【0101】
本実施形態の熱風炉モデルでは、燃焼時において、燃焼ガスと蓄熱煉瓦(珪石)1501との間と、蓄熱煉瓦(珪石)1501と炉壁煉瓦1502との間の伝熱は、対流熱伝達と輻射熱伝達によるものとする。また、送風時において、冷風と蓄熱煉瓦(珪石)1501との間と、蓄熱煉瓦(珪石)1501と炉壁1502との間と、炉壁1502と大気との間の伝熱は、対流熱伝達によるものとする。また、炉壁1502内は、熱伝導による伝熱がなされるものとする。また、蓄熱煉瓦(珪石)1501は、通過口が存在することによる寸法換算を行う。また、高さ方向の熱伝導は無視するものとする。これらの仮定は、他の粘土煉瓦109及びハイアルミナ煉瓦110についても同じである。
【0102】
まず、ガスの熱収支を表すモデル式は、以下の(27)式で表される。また、蓄熱煉瓦の熱収支を表すモデル式は、以下の(28)式で表される。また、炉壁煉瓦の熱収支を表すモデル式は、以下の(29)式で表される。
【0104】
(27)式〜(29)式における記号の意味は、以下の通りである。
【0105】
ρ:密度[kg/m
3]
C
p:比熱[J/kg・K]
S:断面積[m
2](前述した円筒をその軸に沿って切った断面積から通過口の断面積の総和を引いた煉瓦の(正味の)切り口面積)
v:流速[m/s]
T:温度[K]
h:熱伝達率[W/m
2・K]
A:接触面積[m
2]
L:高さ[m](炉底を0とする)
ε:放射率[−]
z:高さ方向の位置[m]
t:時間[s]
G:ガス
CH:蓄熱煉瓦
W:炉壁煉瓦
Wb:炉壁煉瓦の構成煉瓦(珪石煉瓦111であれば、耐火煉瓦(珪石)1502a、耐熱煉瓦(A)〜(C)1502b〜1502d、キャスタブル1502e、鉄皮1502f)
Wb−1、Wb+1:Wbで特定される煉瓦の隣の煉瓦(耐熱煉瓦(A)がWbであれば、Wb−1は耐火煉瓦(珪石)1502aであり、Wb+1は、耐熱煉瓦(B))
δ:ステファンボルツマン定数
【0106】
第2のプロセス状態予測部504は、(27)式〜(29)式のモデル式を使って、以下に示す機能を実現するものである。
図16は、第2のプロセス状態予測部504の詳細な機能構成の一例を示す図である。
第2のプロセス状態予測部504は、燃焼時シミュレーション部1601と、送風時シミュレーション部1602とに大別される。
((燃焼時シミュレーション部1601))
燃焼時シミュレーション部1601は、燃焼期間における各熱風炉100a〜100bの状態をシミュレーションするためのものである。
燃焼時シミュレーション部1601は、使用ガス容量算出部1601aと、モデル式計算部1601bとを有する。
【0107】
<使用ガス容量算出部1601a>
使用ガス容量算出部1601aは、現時点で既に導出されている現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)と、現時点で計算対象となっている制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の候補と、を入力する。ここで、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)は、1サイクルずつ制御区間702を後ろにずらして導出されるものである。よって、既に計算が行われた制御区間702を示すサイクル数がn〜n+s+vであるとすると、現時点で計算対象となっている制御区間702は、n+v+1〜n+s+v+1となる。
【0108】
また、使用ガス容量算出部1601aは、BFG、COG、及びLDGの各使用ガスの使用比率[−]を入力する。この使用ガスの使用比率は、燃焼期間中に変化するものとし、1つの燃焼期間を分割した複数の期間毎に個別に設定することができる。
さらに、使用ガス容量算出部1601aは、BFG、COG、LDG、及び空気の各使用ガスのガスカロリー(ガス組成単位熱量)[J/Nm
3]を入力する。
使用ガス容量算出部1601aは、以上の入力した情報に基づいて、BFG、COG、LDG、及び空気の各使用ガスの容量[Nm
3]を算出してモデル式計算部1601bに出力する。
【0109】
<モデル式計算部1601b>
モデル式計算部1601bは、使用ガス容量算出部1601aから、BFG、COG、LDG、及び空気の各ガスの容量を入力する。
モデル式計算部1601bは、ガス燃焼温度T
G[℃]、密度ρ
G[kg/m
3]、比熱C
p,G[J/kg・K]を入力する。ここで、添字Gは、ガスを表す。
そして、モデル式計算部1601bは、入力した情報を用いて、前述したモデル式((27)式〜(29)式)を使用して、燃焼開始から燃焼終了まで(1つの燃焼期間)の、熱風炉100a〜100dにおける熱収支の計算を行い、燃焼終了の時点での以下の値を出力する。
・炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度T
CH(i,t)
・炉別・サイクル別炉壁煉瓦(の構成煉瓦)温度T
Wb(i,t)
・炉別・サイクル別排ガス温度T
ex(i,t)
・炉別・サイクル別燃焼効率η(i,t)
【0110】
尚、ガスボリュームV
Gは、(27)式の左辺の「S
G×v
G」に反映されるものである。また、炉別・サイクル別排ガス温度T
ex(i,t)は、計算対象の燃焼期間において蓄熱されなかった熱量と、ガスボリュームV
Gと、ガスの成分とを用いて算出されるものである。
以上の使用ガス容量算出部1601aとモデル式計算部1601bの処理は、サイクル毎に繰り返し行われる。
【0111】
((送風時シミュレーション部1602))
送風時シミュレーション部1602は、送風期間における各熱風炉100a〜100bの状態をシミュレーションするためのものである。
送風時シミュレーション部1602は、各炉運転内容指示部1602aと、モデル式計算部1602bと、送風流量・温度決定部1602cとを有する。
【0112】
<各炉運転内容指示部1602a>
各炉運転内容指示部1602aは、モデル式計算部1601bから、炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度T
CH(i,t)と炉別・サイクル別炉壁煉瓦(の構成煉瓦)温度T
Wb(i,t)とを入力する度に(燃焼時シミュレーション部1601において、燃焼期間における燃焼終了時の計算が終了する度に)計算を開始する。ここでは、3秒毎の計算結果が得られるように繰り返し計算が行われるものとする。
【0113】
各炉運転内容指示部1602aは、後述する送風流量・温度決定部1602cで決定された「炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time+3)と、炉別・時間別混冷流量Air(i,time+3)」を、計算対象の時間の「炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time)と、炉別・時間別混冷流量Air(i,time)」とする。ここで、timeは時間(時刻)を表し、time+3は、時間timeの3秒後であることを表す。
そして、各炉運転内容指示部1602aは、炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time)をモデル式計算部1602bに出力すると共に、炉別・時間別混冷流量Air(i,time)を送風流量・温度決定部1602cに出力する。ここで、通過送風流量とは、
図1に示すダクト114、蓄熱室101、燃焼室102を通って混冷室103に進入した冷風の流量である。また、混冷流量とは、
図1に示すダクト118を通って混冷室103に進入した冷風の流量である。これらの通過送風流量と混冷流量との加算値が送風流量BV(i,time)になる。
尚、最初の計算では、後述する送風流量・温度決定部1602cで「炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time+3)と、炉別・時間別混冷流量Air(i,time+3)」が決定されていないので、各炉運転内容指示部1602aは、炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time)と、炉別・時間別混冷流量Air(i,time)の初期値を採用する。
【0114】
<モデル式計算部1602b>
モデル式計算部1602bは、モデル式計算部1601bから、炉別・サイクル別蓄熱煉瓦の温度T
CH(i,t)と、炉別・サイクル別炉壁煉瓦の構成煉瓦の温度T
Wb(i,t)とを入力する。
また、モデル式計算部1602bは、密度ρ
G、及び比熱C
p,Gを入力する。
また、モデル式計算部1602bは、各炉運転内容指示部1602aから、炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time)を入力する。ここで、炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time)に時間timeを掛けた値がガスボリュームV
Gとなる。
そして、モデル式計算部1602bは、入力した情報を用いて、前述したモデル式((27)式〜(29)式)を使用して、送風期間における計算対象の時間timeでの熱収支の計算を繰り返し行い、炉別・時間別ガス温度T
G(i,time)と炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度T
CH(i,time)を、送風流量・温度決定部1602cに出力する。尚、燃焼時と送風時とでは、モデル式((27)式及び(28)式)熱伝達率h
G,CHの値が異なる。
【0115】
<送風流量・温度決定部1602c>
送風流量・温度決定部1602cは、操業目標値601(目標送風温度BT
ref(time)、目標送風流量BV
ref(time)、目標送風時間BTime
ref(time))を入力する。
また、送風流量・温度決定部1602cは、各炉運転内容指示部1602aから、炉別・時間別混冷流量Air(i,time)を入力する。
また、送風流量・温度決定部1602cは、モデル式計算部1602bから、炉別・時間別のガスの温度T
G(i,time)を入力する。
また、送風流量・温度決定部1602cは、冷風温度T
CWを入力する。
【0116】
そして、送風流量・温度決定部1602cは、入力した情報を用いて、以下の(30)式〜(32)式により、目標送風温度BT
ref(time)及び目標送風流量BV
ref(time)が得られるように、「炉別・時間別送風流量BV(i,time+3)、炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time+3)、炉別・時間別混冷流量Air(i,time+3)」を算出する。そして、算出された「炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time+3)と、炉別・時間別混冷流量Air(i,time+3)」は、前述したように、各炉運転内容指示部1602aに出力される。すなわち、「炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time+3)と、炉別・時間別混冷流量Air(i,time+3)」は、次の計算対象の時間における炉別の通過送風流量・混冷流量となる。
【0118】
送風流量・温度決定部1602cは、予測区間701において得られた「炉別・時間別のガスの温度T
G(i,time)、炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time)、炉別・時間別混冷流量Air(i,time)」を、(30)式〜(32)式の右辺に与えて、予測区間701における炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,t)を算出する。
また、送風流量・温度決定部1602cは、送風期間の終了時(送風終了時)に得られた炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度T
CH(i,t)の中から珪石煉瓦下端部の温度を抽出し、抽出した温度を、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度の予測値T
si,p(i,t)とする。送風流量・温度決定部1602cは、このような炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度の予測値T
si,p(i,t)の抽出を、予測区間701における送風期間の終了時の夫々において行う。
【0119】
そして、送風流量・温度決定部1602cは、これらの「予測区間701における炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,t)、と、予測区間701における炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度の予測値T
si,p(i,t)」を、各熱風炉100a〜100dのプロセス状態の予測値として最適追従制御部503に出力する。
【0120】
図5の説明に戻り、最適追従制御部503は、以上のようにして、第2のプロセス状態予測部504から、予測区間701における炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,n+d+g)〜T
si,p(i,n+m+g)と、予測区間701における炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,n+d+g)〜BT
p(i,n+m+g)とを入力すると、前述した(11)式の炉別目的関数J
1(i)の評価値の値を、(12)式及び(13)式の制約条件を満たす範囲で最小化するために、制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の候補の値をそれぞれどれだけ変更すればよいのかを、統計的に判断する。最適追従制御部503は、(11)式の炉別目的関数J
1(i)の評価値の値が最小となるまで、制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の候補の値を変更し、その変更値を第2のプロセス状態予測部504に出力する。
【0121】
そして、最適追従制御部503は、(11)式の炉別目的関数J
1(i)の評価値の値が最小となったときの現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,n)〜Q
in,p(i,n+s+q−m)(の候補の値)を操業指令として実熱風炉プロセス510に対して指示する。
【0122】
以上のような各熱風炉100a〜100dのプロセス状態の予測値の導出は、予測区間701と制御区間702をそれぞれ1サイクルずつ後ろにずらして順次行われる。例えば、予測区間701として、サイクル数n+d〜n+mのサイクルの区間を設定すると共に、制御区間702として、サイクル数n〜n+sのサイクルの区間をそれぞれ設定して、各熱風炉100a〜100dのプロセス状態の予測値を導出すると、予測区間701として、サイクル数n+d+1〜n+m+1のサイクルの区間を設定すると共に、制御区間702として、サイクル数n+1〜n+s+1のサイクルの区間をそれぞれ設定して、各熱風炉100a〜100dのプロセス状態の予測値を導出する。
そして、予測区間701の最後のサイクルが、サイクル数n+qに対応するサイクルになったときのプロセス状態の予測値が導出されると、プロセス状態の予測値の導出を終了する。このようにすることにより、サイクル数n〜n+q−mの各サイクルにおけるプロセス状態の予測値が導出される。ここで、同一のサイクルにおいて導出される複数のプロセス状態の予測値については、最新のプロセス状態の予測値が採用される。
【0123】
(動作フローチャート)
次に、
図17のフローチャートを参照しながら、各送風期間終了時の炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度を導出する際の熱風炉制御計算機301の処理の一例を説明する。
まず、ステップS1701において、蓄熱量目標軌道最適化部501は、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度を導出する処理を開始するタイミングであるか否かを判定する。本実施形態では、現在時刻が属するサイクル(サイクル数n)から最適化時間範囲602が経過する時刻が属するサイクル(サイクル数n+q)が経過するまでの間に、操業目標値601が変動しているか否かを1[min]に判定することによりステップS1701の判定が行われる。
【0124】
この判定の結果、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度を導出する処理を開始するタイミングでない場合には、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度を導出する処理を開始するタイミングになるまで待機する。そして、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度を導出する処理を開始するタイミングになると、ステップS1702に進む。
【0125】
ステップS1702に進むと、蓄熱量目標軌道最適化部501は、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の最適解が導出されたか否かを判定する。本実施形態では、(16)式の炉別目的関数J
2(i)の評価値の値が最小であるか否かを判定することにより、ステップS1703の判定が行われる。
この判定の結果、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の最適解が導出された場合には、後述するステップS1712に進む。
【0126】
一方、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の最適解が導出されていない場合には、ステップS1703に進む。
ステップS1703に進むと、蓄熱量目標軌道最適化部501は、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の候補を第1のプロセス状態予測部502に出力(設定)する。
【0127】
次に、ステップS1704において、第1のプロセス状態予測部502は、予測区間701と制御区間702を定める変数gとして初期値(=0(ゼロ))を設定する。
次に、ステップS1705において、第1のプロセス状態予測部502は、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解が導出されたか否かを判定する。本実施形態では、(11)式の炉別目的関数J
1(i)の評価値の値が最小であるか否かを判定することにより、ステップS1705の判定が行われる。
【0128】
この判定の結果、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解が導出された場合には、後述するステップS1709に進む。
一方、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解が導出されていない場合には、ステップS1706に進む。
ステップS1706に進むと、第1のプロセス状態予測部502は、制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,n+g)〜Q
in,p(i,n+s+g)の候補を設定する。
【0129】
次に、ステップS1707において、第1のプロセス状態予測部502は、(3)式〜(10)式に示す線形時系列モデルを用いて、プロセス状態の予測値を導出する。具体的に本実施形態では、予測区間701における炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,n+d+g)〜T
si,p(i,n+m+g)と、予測区間701における炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,n+d+g)〜BT
p(i,n+m+g)とが導出される。
【0130】
次に、ステップS1708において、第1のプロセス状態予測部502は、制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の候補の値の変更量を、GA、山登り法、及び線形計画法等の最適化手法を用いて判断する。具体的に本実施形態では、第1のプロセス状態予測部502は、(11)式〜(13)式を用いて説明した処理を行う。
そして、ステップS1705に戻り、第1のプロセス状態予測部502は、ステップS1708で判断した変更量に基づいて、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解が導出されたか否かを判定する。
【0131】
以上のようにして現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解が導出されると、ステップS1709に進む。
ステップS1709に進むと、第1のプロセス状態予測部502は、予測区間701と制御区間702を定める変数gがq−mとなったか否かを判定する。すなわち、予測区間701の最後のサイクルが最適化時間範囲602の最後のサイクルになったか否かを判定する。この判定の結果、予測区間701と制御区間702を定める変数gがq−mとなっていない場合には、ステップS1710に進む。
【0132】
ステップS1710に進むと、第1のプロセス状態予測部502は、予測区間701と制御区間702を定める変数gに「1」を加算する。そして、ステップS1705以降の処理を行い、予測区間701と制御区間702とを1サイクルずつ後ろにずらして、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解を導出する。
以上のようにして、予測区間701と制御区間702を定める変数gがq−mになると、ステップS1711に進む。
【0133】
ステップS1711に進むと、蓄熱量目標軌道最適化部501は、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の候補の値の変更量を、GA、山登り法、及び線形計画法等の最適化手法を用いて判断する。具体的に本実施形態では、蓄熱量目標軌道最適化部501は、(16)式を用いて説明した処理を行う。
そして、ステップS1702に戻り、蓄熱量目標軌道最適化部501は、ステップS1711で判断した変更量に基づいて、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の最適解が導出されたか否かを判定する。
【0134】
以上のようにして炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の最適解が導出されると、ステップS1712に進む。
ステップS1712に進むと、蓄熱量目標軌道最適化部501は、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)の最適解を記憶する。そして、ステップS1701に戻る。
図17のフローチャートによる処理は、熱風炉100a〜100d毎に個別に行われる。
【0135】
次に、
図18のフローチャートを参照しながら、(16)式の右辺の第3項の炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)を導出する珪石煉瓦最低温度下限値導出処理の一例を説明する。
図18のフローチャートは、熱風炉100a〜100dの送風期間が終了するたびに、熱風炉100a〜100d毎に個別に行われる。尚、
図18のフローチャートが開始する前に、残熱量指標設定画面1400を用いた設定が完了しているものとする。また、
図18のフローチャートが開始する前に、直前の送風期間における「冷風バタフライ弁123の開度、送風バタフライ弁125の開度、及び送風温度」が測定されているものとする。
【0136】
まず、ステップS1801において、蓄熱量目標軌道最適化部501は、残熱量指標設定画面1400のOKボタン1401が押下されたときに、残熱量指標設定画面1400の判定条件の欄に入力されている蓄熱量指標を読み出す。具体的には、前述した(1)〜(10)の蓄熱量指標の何れかが読み出される。
次に、ステップS1802において、蓄熱量目標軌道最適化部501は、残熱量指標設定画面1400のOKボタン1401が押下されたときに、残熱量指標設定画面1400の目標値の欄に入力されている目標値を読み出す。具体的には、前述したR1目標〜R10目標の何れかが読み出される。また、蓄熱量目標軌道最適化部501は、基準時間が設定されている場合には、当該基準時間を読み出す。具体的には、前述した(1)、(2)、(6)、(8)、(9)の残熱量指標がステップS1801で読み出された場合に、読み出された残熱量指標に対応する基準時間T1、T2、T6、T8、T9の何れかが読み出される。
【0137】
次に、ステップS1803において、蓄熱量目標軌道最適化部501は、ステップS1801で読み出した残熱量指標に応じた実績値を取得する。
次に、ステップS1804において、蓄熱量目標軌道最適化部501は、ステップS1802で読み出した目標値と、ステップS1803で読み出した実績値との大小関係を導出し、導出した結果から、ステップS1801で読み出した残熱量指標に応じた補正ゲインk1_〜k10_を1つ読み出す。
【0138】
次に、ステップS1805において、蓄熱量目標軌道最適化部501は、ステップS1801〜S1804で読み出した結果から、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mを導出する。具体的には、ステップS1801で読み出した残熱量指標に応じて、(17)式〜(26)式の何れかの計算が行われる。
次に、ステップS1806において、蓄熱量目標軌道最適化部501は、現在の炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mに対し、ステップS1805で導出した炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mを加算して、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mを設定(更新)する。
【0139】
次に、ステップS1807において、蓄熱量目標軌道最適化部501は、ステップS1806で設定した炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mが珪石煉瓦111の変態点温度を下回るか否かを判定する。
この判定の結果、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mが珪石煉瓦111の変態点温度を下回る場合には、ステップS1808に進む。ステップS1808に進むと、蓄熱量目標軌道最適化部501は、ステップS1806で設定した炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mを珪石煉瓦111の変態点温度に設定する。そして、
図18のフローチャートによる処理を終了する。
一方、ステップS1807において、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mが珪石煉瓦111の変態点温度を下回らない場合には、ステップS1808の処理を行わずに
図18のフローチャートによる処理を終了する。
以上のようにして
図18のフローチャートで最終的に設定された炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)は、
図17のステップS1701で(16)式の計算を行う際に使用される。
【0140】
次に、
図19のフローチャートを参照しながら、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)を導出する際の熱風炉制御計算機301の処理の一例を説明する。
まず、ステップS1901において、最適追従制御部503は、予測区間701と制御区間702を定める変数gとして初期値(=0(ゼロ))を設定する。
次に、ステップS1902において、最適追従制御部503は、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)を導出する処理を開始するタイミングであるか否かを判定する。本実施形態では、熱風炉100a〜100d毎に、各サイクルの燃焼期間が開始する前の切り替え時間内の所定の時間になったか否かを判定することにより、このステップS1902の判定が行われる。
【0141】
この判定の結果、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)を導出する処理を開始するタイミングでない場合には、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)を導出する処理を開始するタイミングになるまで待機する。そして、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)を導出する処理を開始するタイミングになると、ステップS1903に進む。
【0142】
ステップS1903に進むと、最適追従制御部503は、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解が導出されたか否かを判定する。本実施形態では、(11)式の炉別目的関数J
1(i)の評価値の値が最小であるか否かを判定することにより、ステップS1903の判定が行われる。
この判定の結果、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解が導出された場合には、後述するステップS1907に進む。
一方、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解が導出されていない場合には、ステップS1904に進む。
【0143】
ステップS1904に進むと、最適追従制御部503は、制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,n+g)〜Q
in,p(i,n+s+g)の候補を第2のプロセス状態予測部504に出力(設定)する。
次に、ステップS1905において、第2のプロセス状態予測部504は、熱風炉シミュレータ処理を実行する。熱風炉シミュレータ処理により、予測区間701における炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,t)、と、予測区間701における炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度の予測値T
si,p(i,t)とが導出される。尚、熱風炉シミュレータ処理の詳細については、
図20を参照しながら後述する。
【0144】
次に、ステップS1906において、最適追従制御部503は、制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の候補の値の変更量を、GA、山登り法、及び線形計画法等の最適化手法を用いて判断する。具体的に本実施形態では、最適追従制御部503は、(11)式〜(13)式を用いて説明した処理を行う。
そして、ステップS1903に戻り、最適追従制御部503は、ステップS1906で判断した変更量に基づいて、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解が導出されたか否かを判定する。
【0145】
以上のようにして現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解が導出されると、ステップS1907に進む。
ステップS1907に進むと、最適追従制御部503は、予測区間701と制御区間702を定める変数gがq−mとなったか否かを判定する。すなわち、予測区間701の最後のサイクルが最適化時間範囲602の最後のサイクルになったか否かを判定する。この判定の結果、予測区間701と制御区間702を定める変数gがq−mとなっていない場合には、ステップS1908に進む。
【0146】
ステップS1908に進むと、最適追従制御部503は、予測区間701と制御区間702を定める変数gに「1」を加算する。そして、ステップS1903以降の処理を行い、予測区間701と制御区間702とを1サイクルずつ後ろにずらして、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解を導出する。
以上のようにして、予測区間701と制御区間702を定める変数gがq−mになると、ステップS1909に進む。ステップS1909に進むと、最適追従制御部503は、現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,t)の最適解を操業指令として実熱風炉プロセス510に対して指示する。尚、同一のサイクルにおける最適解については、最新の値が採用される。そして、ステップS1901に戻る。
図19のフローチャートによる処理は、熱風炉100a〜100d毎に個別に行われる。
【0147】
次に、
図20のフローチャートを参照しながら、
図19のステップS1905の熱風炉シミュレータ実行処理の一例を説明する。
まず、ステップS2001において、使用ガス容量算出部1601aは、使用ガス容量算出部1601aは、制御区間702における現時点以降の炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p(i,n+g)〜Q
in,p(i,n+s+g)の候補を取得する。
次に、ステップS2002において、使用ガス容量算出部1601aは、計算を行うサイクル数tとして最初のサイクルを示す「1」を指定する。
次に、ステップS2003において、使用ガス容量算出部1601aは、BFG、COG、LDG、及び空気の各使用ガスの容量を算出する。
【0148】
次に、ステップS2004において、モデル式計算部1601bは、モデル式((27)式〜(29)式)を使用して、サイクル数tにおける燃焼開始から燃焼終了までの、熱風炉100a〜100dにおける熱収支の計算を行う。この計算により、サイクル数tのサイクルの燃焼終了の時点での「炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度T
CH(i,t)、炉別・サイクル別炉壁煉瓦(の構成煉瓦)温度T
Wb(i,t)、炉別・サイクル別排ガス温度T
ex(i,t)、炉別・サイクル別燃焼効率η(i,t)」が得られる。
次に、ステップS2005において、モデル式計算部1601bは、サイクル数tのサイクルの燃焼終了の時点での「炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度T
CH(i,t)、炉別・サイクル別炉壁煉瓦(の構成煉瓦)温度T
Wb(i,t)」を各炉運転内容指示部1602aに出力する。
【0149】
次に、ステップS2006において、送風流量・温度決定部1602cは、操業目標値(目標送風温度BT
ref(time)、目標送風流量BV
ref(time)、目標送風時間BTime
ref(time))を取得する。
次に、ステップS2007において、各炉運転内容指示部1602aは、計算対象の時間timeとしてtime=1[秒]を設定する。
次に、ステップS2008において、各炉運転内容指示部1602aは、計算対象の時間(time=1)の「炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time)と、炉別・時間別混冷流量Air(i,time)」の初期値を決定し、モデル式計算部1602bに与える。
【0150】
次に、ステップS2009において、モデル式計算部1602bは、モデル式((27)式〜(29)式)を使用して、送風期間における計算対象の時間timeでの熱収支の計算を行う。この計算により、送風期間における計算対象の時間timeでの「炉別・時間別ガス温度T
G(i,time)、炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度T
CH(i,time)」が得られる。
次に、ステップS2010において、モデル式計算部1602bは、送風期間が終了したか否かを判定する。尚、前述したように、本実施形態では、目標送風期間BTime
ref(i,n+j))を固定値としているので、この送風期間も固定値である。この判定の結果、送風期間が終了していない場合には、ステップS2011に進む。ステップS2011に進むと、送風流量・温度決定部1602cは、計算対象の時間timeに「3[秒]」を加算する。
【0151】
次に、ステップS2012において、送風流量・温度決定部1602cは、(30)式〜(29)式により、目標送風温度BT
ref(time)及び目標送風流量BV
ref(time)が得られるように、「炉別・時間別送風流量BV(i,time)、炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time)、炉別・時間別混冷流量Air(i,time)」を(決定)する。そして、送風流量・温度決定部1602cは、各炉運転内容指示部1602aを介して、計算対象の時間timeの「炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time)と、炉別・時間別混冷流量Air(i,time)」をモデル式計算部1602bに与える。そして、送風期間が終了するまでの3秒毎の「炉別・時間別送風流量BV(i,time)、炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time)、炉別・時間別混冷流量Air(i,time)」が得られるまで、ステップS2009〜S2012の処理を繰り返し行う。
【0152】
そして、ステップS2010において、送風期間が終了したと判定すると、ステップS2013に進む。ステップS2013に進むと、送風流量・温度決定部1602cは、サイクル数tが、予測区間701の最後のサイクルに対応するサイクル数n+m+gとなったか否かを判定する。この判定の結果、サイクル数tが、予測区間701の最後のサイクルに対応するサイクル数n+m+gとなっていない場合には、ステップS2014に進む。ステップS2014に進むと、使用ガス容量算出部1601aは、計算を行うサイクルtに「1」を加算する。そして、サイクル数tが、予測区間701の最後のサイクルに対応するサイクル数n+m+gとなるまで、ステップS2003〜S2014の処理を繰り返し行う。
【0153】
そして、サイクル数tが、予測区間701の終最後のサイクルに対応するサイクル数n+m+gになると、ステップS2015に進む。ステップS2015に進むと、送風流量・温度決定部1602cは、各予測区間701において得られた「炉別・時間別のガスの温度T
G(i,time)、炉別・時間別通過送風流量BHS(i,time)、炉別・時間別混冷流量Air(i,time)」を、(30)式〜(32)式の右辺に与えて、各予測区間701における炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,t)を算出する。
また、送風流量・温度決定部1602cは、各予測区間701における送風期間の終了時(送風終了時)に得られた炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度T
CH(i,t)の中から珪石煉瓦下端部の温度を抽出し、抽出した温度を、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)とする。
【0154】
そして、送風流量・温度決定部1602cは、これらの「各予測区間701における送風期間終了時の炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)と、各予測区間701における炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,t)」を、これらの情報を要求した最適追従制御部503に出力する。尚、予測値が重複する場合には、最新の値を採用して最適追従制御部503に出力する。これにより、
図20のフローチャートによる処理が終了する。
【0155】
(まとめ)
以上のように本実施形態では、混冷を行う場合には、送風期間が終了するときの蓄熱煉瓦の残熱量の指標として、冷風バタフライ弁123の開度を用いる。一方、混冷を行わない場合には、送風期間が終了するときの蓄熱煉瓦の残熱量指標として、送風バタフライ弁125又は送風温度を用いる。そして、送風期間が終了するときの蓄熱煉瓦の残熱量指標の目標値と実績値とを用いて、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mを導出し、導出した結果から、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mを導出する。そして、この炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mを用いて投入熱量Q
in,pを導出する。したがって、熱風炉100a〜100dに対する投入熱量Q
in,pを決定するために、熱風炉100a〜100dにおける各サイクルの蓄熱量を反映する珪石煉瓦最低温度の下限値を、熱風炉のプロセス状態の実測値を用いて導出することができる。
【0156】
また、本実施形態では、予測区間701における珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,pが、最適化時間範囲602で設定した目標珪石煉瓦最低温度T
si,refの候補に近く、且つ、制御区間702において隣接するサイクル間での炉別・サイクル別投入熱量Q
inの差が小さいほど評価が高くなる炉別目的関数J
1の値を最小化するような、制御区間702における現時点以降の投入熱量Q
in,pを、熱風炉100の計算モデルであるプロセスモデルを用いて導出する。そして、最適化時間範囲602における投入熱量Q
in,pの総和と、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)と、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,t)との差の絶対値の最適化時間範囲602における最大値と、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)から炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)を減算した値の最適化時間範囲602における最大値(と0(ゼロ)との大きい方の値)との重み付き線形和が小さいほど評価が高くなる炉別目的関数J
2の値を最小化する目標珪石煉瓦最低温度T
si,refが得られるまで、目標珪石煉瓦最低温度T
si,refの候補を変更して、前述した処理を繰り返し行う。最適化時間範囲602は、熱風炉100の時定数よりも長い時間である。したがって、蓄熱量の目標軌道である炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,t)を最適化するために、熱風炉100a〜100dにおける各サイクルの蓄熱量を反映する珪石煉瓦最低温度の下限値を、熱風炉のプロセス状態の実績値を用いて設定することができる。
【0157】
また、本実施形態では、予測区間701における珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,pが、以上のようにして導出した目標珪石煉瓦最低温度T
si,refに近く、且つ、制御区間702において隣接するサイクル間での炉別・サイクル別投入熱量Q
inの差が小さいほど評価が高くなる炉別目的関数J
1の値を最小化するような、制御区間702における現時点以降の投入熱量Q
in,pを、熱風炉100の計算モデルであるプロセスモデルを用いて導出する。そして、導出した制御区間702における現時点以降の投入熱量Q
in,pを、実熱風炉プロセス510に対する操業指令値とする。したがって、熱風炉100における蓄熱量を反映する物理量の時間変化が目標に追従するように熱風炉100に対する投入熱量Q
inを決定することができる。
【0158】
また、本実施形態では、目標珪石煉瓦最低温度T
si,refを導出する際に使用するプロセスモデルとして、プロセス状態の予測値を、サイクル毎に導出する線形時系列モデルを採用した。したがって、熱風炉100の時定数よりも長い時間の予測の計算負荷を低減することができる。
また、本実施形態では、投入熱量Q
in,pの操業指令値を導出する際に使用するプロセスモデルとして、熱風炉100におけるガスの熱収支と煉瓦の熱収支の計算を行う熱風炉シミュレータを採用した。したがって、投入熱量Q
in,pの計算精度を向上させることができる。
【0159】
(変形例)
[変形例1]
本実施形態では、珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mを算出するようにした。珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mは、珪石煉瓦111の最低温度としてこれ以上下げてはいけない温度である。したがって、珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mは、送風期間が終了したときの蓄熱煉瓦の残熱量として最も小さくできる量を指標化したものとなる。
しかしながら、実際の操業では、送風期間が終了したときの蓄熱煉瓦の残熱量に余裕を持たせた方がよい場合がある。例えば、操業変動が激しく、送風期間が終了したときの蓄熱煉瓦の残熱量が(一時的に)小さくなりすぎることを防止するために、送風期間が終了したときの蓄熱煉瓦の残熱量を大きくする必要がある。また、正確な時刻は不明であるが、近い将来、増風(送風温度・送風流量を増加)させる可能性がある場合には、送風期間が終了したときの蓄熱煉瓦の残熱量を早めに大きくする必要がある。熱風炉100a〜100dの時定数は3日程度と大きいからである。
【0160】
このような場合に、送風期間が終了したときの蓄熱煉瓦の残熱量に余裕を持たせないと、操業変動や増風があった場合に、珪石煉瓦111の最低温度が低くなり、場合によっては、珪石煉瓦111の変態点温度を下回る虞がある。
そこで、前述した炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mを増加させるようにしてもよい。
具体的には、(送風流量計307で測定される)送風温度と(冷風温度計308により測定される)送風流量とから定まる送風熱量の変更量ΔQ
out(増加量)をオペレータが決定する。
そして、オペレータは、決定した送風熱量の変更量ΔQ
outを入力装置312に入力する。
【0161】
その後、蓄熱量目標軌道最適化部501は、ステップS1801で読み出した残熱量指標に対応する残熱量指標変更テーブルを読み出す。
図21は、残熱量指標変更テーブルの一例を示す図である。
図21において、残熱量指標変更テーブル2100は、送風熱量の変更量ΔQ
outと、残熱量指標の変更量Δzanとの関係を残熱量指標ごとに記憶するものである。前述した例では、前述した(1)〜(10)の残熱量指標ごとに、送風熱量の変更量ΔQ
outと、残熱量指標の変更量Δzanとの関係が記憶される。送風熱量の変更量ΔQ
outと、残熱量指標の変更量Δzanとの関係は、例えば、実績データを用いた統計解析処理により得ることができる。
【0162】
そして、蓄熱量目標軌道最適化部501は、オペレータが決定した送風熱量の変更量ΔQ
outに対応する残熱量指標の変更量Δzanを読み出し、ステップS1802で読み出した目標値に加算する。
このようにすれば、操業変動や増風があった場合でも、送風期間が終了したときの蓄熱煉瓦の残熱量が小さくなることを防止することができる。
【0163】
尚、残熱量指標変更テーブル2100の替わりに、送風熱量の変更量ΔQ
outと、残熱量指標の変更量Δzanとの関係を示す関係式を用いてもよい。また、送風熱量ではなく、送風温度の変更量(増加量)と残熱量指標の変更量Δzanとの関係と、送風熱量の変更量(増加量)と残熱量指標の変更量Δzanとの関係とを個別に用意してもよい。
【0164】
[変形例2]
本実施形態では、炉別目的関数J
2を(16)式で表現する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。
[[変形例2−1]]
例えば、(16)式の代わりに、以下の(33)式〜(35)式を採用してもよい。
【0166】
(33)式は、(16)式の右辺の第1項〜第3項のうち、第2項のみを目的関数として採用したものである。(34)式は、(16)式の右辺の第3項に対応するものであり、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,m(i,t)から炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)を減算した値が0(ゼロ)以上になるという制約を示す制約式である。(35)式は、(16)式の右辺の第1項に対応するものであり、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)と、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,t)との差の絶対値が閾値Th
3(i)以下であるという制約を示す制約式である。
[[変形例2−2]]
また、例えば、(16)式の代わりに、以下の(36)式と前記(34)式を採用してもよい。
【0168】
(36)式は、(16)式の右辺の第1項〜第3項のうち、第1項と第2項のみを目的関数として採用したものである。
【0169】
[変形例3]
炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mを用いて炉別・サイクル別投入熱量Q
in,pを決定していれば、必ずしも前述した蓄熱量目標軌道最適化部501、第1のプロセス状態予測部502、最適追従制御部503、及び第2のプロセス状態予測部504による演算を行わなくてもよい。例えば、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mを複数の変数のうちの1つとし、且つ、炉別・サイクル別投入熱量Q
in,pを決定変数として、目的関数と制約式との少なくとも何れか一方に導入して、最適化計算により、炉別・サイクル別投入熱量Q
in,pの最適値を導出してもよい。また、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mを表示し、オペレータが、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mを見て、熱風炉100の操業条件(炉別・サイクル別投入熱量Q
in,p等)を決定してもよい。
【0170】
[変形例4]
目標珪石煉瓦最低温度T
si,refが導出されると、導出された目標珪石煉瓦最低温度T
si,refを出力(表示)してもよい。オペレータは、この目標珪石煉瓦最低温度T
si,refを見て、熱風炉100の操業条件を決定することもできるからである。このように、必ずしも、操業指令として、現時点以降の投入熱量Q
in,pを導出する必要はない(最適追従制御部503及び第2のプロセス状態予測部504の機能は必ずしも必要ではない)。
[変形例5]
所定時間(例えば、数時間)の周期が経過した場合に、目標珪石煉瓦最低温度T
si,refを導出する処理を開始してもよい(
図17のステップS1701でYesと判断されるようにしてもよい)。
【0171】
[変形例6]
目標珪石煉瓦最低温度T
si,refを導出する際に使用するプロセスモデルは、線形時系列モデルに限定されない。例えば、線形時系列モデル以外の統計解析モデル等を使用してもよい。また、熱風炉100における操業実績から同定したプロセスモデル(ステップ応答モデルやインパルス応答モデル)を使用してもよい。プロセス状態の予測値を、サイクル毎に導出するプロセスモデルを採用すれば、前述したように計算負荷を低減できるので好ましいが、計算負荷の制約が小さい場合には、熱風炉シミュレータを使用してもよい。
【0172】
[変形例7]
(11)式の右辺の第2項を炉別目的関数に含めれば、同一の熱風炉100において相互に隣接するサイクルにおける炉別・サイクル別投入熱量Q
in(i,t)の変動を小さくすることができるので好ましい。しかしながら、この項がなくても、(11)式の右辺の第1項により、予測区間701における炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の予測値T
si,p(i,t)を、炉別・サイクル別目標珪石煉瓦最低温度T
si,ref(i,n+j)に良く追従させることができる。よって、必ずしも(11)式の右辺の第2項は必要ではない。
【0173】
[変形例8]
投入熱量Q
in,pの操業指令値を導出する際に使用するプロセスモデルは、熱風炉シミュレータに限定されない。計算精度の制約が小さい場合には、例えば、前述した線形時系列モデル等の統計解析モデルを使用してもよい。
[変形例9]
スタッガードパラレル方式で操業せず、例えば、各熱風炉100a〜100dのサイクルが相互に重複しないように操業する場合には、操業目標値が、各炉において異なる値であってもよい(すなわち、炉別・時間別操業目標値であってもよい)。
また、熱風炉100の数は1基以上であれば、必ずしも4基である必要はない。
【0174】
[変形例10]
プロセス状態の予測値として、炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,t)の代わりに、炉別・サイクル別冷風バタフライ弁123の開度の最低値(送風期間終了時の炉別・サイクル別冷風バタフライ弁123の開度)の予測値KB
p(i,t)を用いてもよい。線形時系列モデルにおいては、炉別・サイクル別冷風バタフライ弁123の開度の最低値の予測値KB
p(i,t)を、以下の(37)式を用いることにより求められる。
【0176】
(37)式において、係数a2・
x(i)、b2・
x(i)、c2・
x(i)は、入力装置312の操作に基づいて入力されるものである。これらの係数a2・
x(i)、b2・
x(i)、c2・
x(i)も、係数a0・
x(i)、b0・
x(i)、c0・
x(i)と同様にして予め求められるものである。
ΔKB
p(i,n+j+1)は、以下の(38)式で表される。
ΔKB
p(i,n+j+1)=KB
p(i,n+j+1)−KB
p(i,n+j) ・・・(38)
【0177】
ΔKB(i,n+j−x)は、以下の(39)式で表される。
ΔKB(i,n+j−x)=KB(i,n+j−x)−KB(i,n+j−x−1) ・・・(39)
また、送風温度と冷風バタフライ弁123の開度とは相関関係を有する。よって、これらの関係を定式化することにより、熱風炉シミュレータを用いても、炉別・サイクル別送風温度の予測値BT
p(i,t)から、炉別・サイクル別冷風バタフライ弁123の開度の最低値の予測値KB
p(i,t)を求めることができる。
【0178】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0179】
(請求項との関係)
第1の導出手段、第2の導出手段、第3の導出手段、選択手段、目標蓄熱量導出手段は、例えば、蓄熱量目標軌道最適化部501により実現される。
第1の残熱量指標は、例えば、
図11の判定条件の欄に示す残熱量指標で実現され、第2の残熱量指標は、例えば、
図13の判定条件の欄に示す残熱量指標で実現される。
送風期間が終了したときの珪石煉瓦最低温度下限値の変更量は、例えば、炉別・サイクル別珪石煉瓦最低温度の下限値T
si,mの変更量ΔT
si,mで実現される。
第1のプロセス状態予測手段は、例えば、第1のプロセス状態予測部502により実現される。
第1のプロセスモデルは、例えば、(3)式〜(10)式に示される線形時系列モデルにより実現される。
第1の目的関数は、例えば、(11)式により実現される。
第2の目的関数は、例えば、(16)式(請求項4)、(33)式(請求項5)、又は(36)式(請求項6)により実現される。
第1の目的関数に対する制約式は、例えば、(12)式、(13)式により実現される。
第2の目的関数に対する制約式は、(34)式、(35)式により実現される。
最適追従制御手段は、例えば、最適追従制御部503により実現される。
第2のプロセス状態予測手段は、例えば、第2のプロセス状態予測部504により実現される。
第2のプロセスモデルは、例えば、熱風炉シミュレータにより実現される。
第3の目的関数は、例えば、(11)式により実現される。
第3の目的関数に対する制約式は、例えば、(12)式、(13)式により実現される。