特許第6244880号(P6244880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244880
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ガラス管の成形方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/04 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   C03B17/04 D
   C03B17/04 C
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-261916(P2013-261916)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-117158(P2015-117158A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162020
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】林 均
(72)【発明者】
【氏名】市川 正広
(72)【発明者】
【氏名】干場 健一
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−150267(JP,A)
【文献】 特開平09−077524(JP,A)
【文献】 特公昭54−008686(JP,B2)
【文献】 実開昭63−098347(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 7/00 − 7/22
C03B 9/00 − 17/06
C03B 19/00 − 19/10
C03B 21/00 − 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管引き成形されたガラス管を徐冷するアニーラーを備えたガラス管を成形するガラス管の成形方法であって、
前記アニーラーは、
ガラス管の管引き方向に沿って直線状に並列して配設され、前記ガラス管を支持する複数の支持ローラーを有し、かつ、上下方向に移動可能、および/または上下方向に回動可能であり、
成形されたガラス管に対して、断面形状の歪み、および軸心方向の湾曲の有無を確認し、
確認結果に基づき、前記アニーラーを所定の位置まで上下方向に移動、および/または回動させる、
ことを特徴とするガラス管の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス管を連続成形するガラス管成形装置、およびガラス管の成形方法の技術に関し、より詳しくは、該ガラス管成形装置に備えられる複数のアニーラーの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば医療用のアンプルや照明用の蛍光管などに用いられるガラス管は、主としてダンナー法によって成形される。
ダンナー法においては、マッフル炉内に備えられ、先端部を斜下方に向けつつ軸心を中心にして回転されるスリーブの外周面に、帯紐状の溶融ガラスが巻き付けられる。スリーブに巻き付けられた溶融ガラスは、徐々に一様な厚みの層となってスリーブの先端部へと流動される。そして、スリーブの先端部には圧縮空気が噴出されるとともに、スリーブの前方、即ち下流側には管引き装置(牽引装置)が配設され、管引き装置の牽引力によって、溶融ガラスはスリーブの先端部より管引きされ(牽引され)、ガラス管となる。
管引き装置によって管引きされたガラス管は、一旦、ガラス管切断装置によって所定の長さに粗切断され、次いで、再切・口焼装置によって両端部を再切断および口焼処理される。
こうして、ガラス管は、ダンナー法により連続成形される。
【0003】
ところで、スリーブと管引き装置との間には、複数のアニーラーが、ガラス管の管引き方向に沿って連続的に一列に並設される。また、各アニーラーの内部には、複数の支持ローラーが、管引き方向に沿って軸支される。
そして、スリーブの先端部より斜下方に引出されたガラス管は、カテナリー(懸垂線)形状を描きながら、これら複数のアニーラー内へと導かれ、複数の支持ローラーに接地して支持されながら、管引き方向に牽引される。
これにより、ガラス管は、直線状に形成されつつ徐々に冷却(除冷)される。
【0004】
ここで、一般的に、スリーブより引出されたガラス管の、アニーラー内における支持ローラーとの接地開始位置がスリーブに対して近過ぎると、支持ローラーに接地を開始する溶融ガラスは未だ高温状態にあるため、粘度が低い状態にて支持ローラーと接地することとなり、断面視楕円形状に歪みやすく、ガラス管の品質不良を引き起こす要因となり易い。
一方、スリーブより引出されたガラス管の、アニーラー内における支持ローラーとの接地開始位置がスリーブに対して遠過ぎると、支持ローラーに接地を開始するガラス管は空気中での冷却が進み過ぎた状態となって、粘度が高い状態にて支持ローラーと接地することとなり、接地後に湾曲形状から直線形状への矯正が十分になされず、ガラス管の品質不良を引き起こす要因となり易い。
【0005】
このようなことから、ガラス管の品質維持を図るためには、少なくとも、適正な粘度を有する箇所にて、ガラス管がアニーラー内の支持ローラーとの接地を開始することが必要である。
換言すると、適正な粘度となる所定の温度状態の箇所より、ガラス管がアニーラー内の支持ローラーとの接地を開始することが必要である。
よって、従来から、例えば、マッフル炉の開口部(出口部)に開閉可能なダンパーを備え、ダンパーの開閉量(出口部の開口面積)を調整し、マッフル炉内の温度を設定することによって、溶融ガラスの温度を所定の温度にまで昇温しつつ維持し、ガラス管がアニーラー内の支持ローラーとの接地を開始する箇所において、ガラス管の粘度が適正になるように調整していた(例えば、「特許文献1」を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭48−93610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、支持ローラーとの接地開始位置におけるガラス管の粘度を、マッフル炉内の温度設定の調整により行う場合、調整後のマッフル炉内の温度が安定した状態になるまで時間を要するため、即座にガラス管の粘度の調整を行うことができなかった。また、マッフル炉内の温度を変更することとなるため、管引き速度等のガラス管のその他の成形条件を適宜調整する必要があった。
【0008】
本発明は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであり、マッフル炉内の温度変更を伴うことなく迅速に、ガラス管がアニーラー内の支持ローラーとの接地を開始する箇所におけるガラス管の粘度が適正になるように調整することができ、ガラス管の品質を一定に維持することが可能なガラス管成形装置、およびガラス管の成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
本発明の請求項に係るガラス管の成形方法は、管引き成形されたガラス管を徐冷するアニーラーを備えたガラス管を成形するガラス管の成形方法であって、前記アニーラーは、ガラス管の管引き方向に沿って直線状に並列して配設され、前記ガラス管を支持する複数の支持ローラーを有し、かつ、上下方向に移動可能、および/または上下方向に回動可能であり、成形されたガラス管に対して、断面形状の歪み、および軸心方向の湾曲の有無を確認し、確認結果に基づき、前記アニーラーを所定の位置まで上下方向に移動、および/または回動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
本発明の請求項に係るガラス管の成形方法によれば、成形されたガラス管の支持ローラーに対する接地開始位置を、マッフル炉内の温度変更を伴うことなく迅速に調整することができ、ガラス管の品質を一定に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るガラス管成形装置の全体的な構成を示した側面図。
図2】アニーラーの高さおよび傾斜角度の調整を行う際の手順を示した工程図。
図3】例えば、ガラス管に対して断面歪みが見られる場合の、アニーラーの高さ・傾斜角度を調整する際のアニーラーの状態を示した図であって、(a)は高さ・傾斜角度を調整する直前のアニーラーの状態を示した側面図、(b)は高さ・傾斜角度を調整した直後のアニーラーの状態を示した側面図。
図4】例えば、ガラス管に対して軸心湾曲が見られる場合の、アニーラーの高さ・傾斜角度を調整する際のアニーラーの状態を示した図であって、(a)は高さ・傾斜角度を調整する直前のアニーラーの状態を示した側面図、(b)は高さ・傾斜角度を調整した直後のアニーラーの状態を示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0019】
[ガラス管成形装置100]
先ず、本発明を具現化するガラス管成形装置100(以下、単に「成形装置100」と記載する)の全体構成について、図1を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図1の上下方向を成形装置100の上下方向と規定して記述する。
また、図1においては、矢印Aの方向をガラス管Gの管引き方向(搬送方向)と規定して記述する。
【0020】
本実施形態に係る成形装置100は、ダンナー法によってガラス管Gを連続的に成形するための装置である。
成形装置100は、主に、ガラス溶融炉1、スリーブ2、スリーブ2を回転駆動する駆動装置3、スリーブ2を格納するマッフル炉4、アニーラー5、管引き装置6、切断装置7、およびコンベア8などにより構成される。
【0021】
ガラス溶融炉1は、ガラス原料を溶融して溶融ガラスMを生成するための炉である。
ガラス溶融炉1内にて生成された溶融ガラスMは、マッフル炉4内のスリーブ2へと供給される。
【0022】
次に、スリーブ2について説明する。
スリーブ2は、溶融ガラスMを管形状に引出すための棒治具として用いられるものである。
スリーブ2は、円筒状の耐火物により構成される。また、スリーブ2の一方の端部2aは、先端へ向かうにつれて徐々に縮径するテーパー形状に形成される。
【0023】
そして、マッフル炉4内において、スリーブ2は、一方の端部2a(以下、適宜「テーパー端部2a」と記載する)を斜下方に向けて配置される。また、スリーブ2の他方の端部よりテーパー端部2aにかけて、駆動装置3のシャフト31が挿通される。
これにより、スリーブ2はシャフト31と連結され、駆動装置3によって回転駆動される。
そして、マッフル炉4へ供給された溶融ガラスMは、スリーブ2によって巻回され、円筒状に引出される。
【0024】
次に、マッフル炉4について説明する。
マッフル炉4は、ガラス溶融炉1より供給された溶融ガラスMがスリーブ2によって円筒状に形成される際の溶融ガラスMの温度を、所定の高温状態に保持するための炉である。
マッフル炉4は、例えば、本実施形態においては箱体状に形成され、ガラス溶融炉1の下方に配設される。
【0025】
そして、マッフル炉4の上面、且つマンドレル2の基部2bの直上には、供給口4aが穿孔され、供給口4aを介して、ガラス溶融炉1より基部2b上に、溶融ガラスMが直接流下して供給される。
【0026】
一方、マッフル炉4において、マンドレル2のテーパー端部2aとの対向面(壁面)には、開口部4bが形成される。
開口部4bにはダンパー41が備えられ、ダンパー41の昇降動作によって、開口部4bが開閉される。
そして、ダンパー41の停止位置に基づき、開口部4bの開閉量(開口部4bの開口面積)を調整することにより、マッフル炉4内の雰囲気が、所定の高温状態に維持される。
これにより、マッフル炉4内において、スリーブ2より管形状に引出される際の溶融ガラスMの温度が、所定の高温状態に昇温され維持される。
【0027】
テーパー端部2aより斜下方に引出された溶融ガラスMは、管形状に成形され、ガラス管Gとなって開口部4bからマッフル炉4の外部へと管引きされる。
その後、ガラス管Gは、カテナリー(懸垂線)形状を描きながらマッフルカバー42内部を通過し、複数のアニーラー5・5・・・へと導入される。
【0028】
次に、アニーラー5について説明する。
アニーラー5は、マッフル炉4より引出されたガラス管Gを徐冷させながら、ガラス管Gを形成するための装置である。
アニーラー5は、例えば、フレーム部材51、フレーム部材51により軸支された複数の支持ローラー52・52・・・、およびこれらのフレーム部材51や支持ローラー52・52・・・を被覆する矩形箱体状のカバー部材53などにより構成される。
【0029】
各支持ローラー52の回転軸は、水平方向かつガラス管Gの管引き方向(図1中の矢印Aの方向)に対して直交する方向に延出される。
また、複数の支持ローラー52・52・・・は、ガラス管Gの管引き方向(ガラス管Gの搬送方向)に沿って直線状に並列するように配置され、フレーム部材51により軸支されている。
一方、フレーム部材51は、これら複数の支持ローラー52・52・・・の配置方向に沿って延出するように形成されるとともに、後述するように、上下方向に移動可能、且つ延出方向の一端部または他端部を中心にして上下方向に回動可能に配設される。
これにより、アニーラー5は、上下方向に移動可能、且つ上下方向に回動可能となる。
【0030】
そして、アニーラー5・5・・・は、マッフル炉4の下流側において複数台備えられ、各アニーラー5に備えられる複数の支持ローラー52・52・52・52が、ガラス管Gの管引き方向に沿って一列に配置されるように、連続して配設される。
【0031】
このような構成からなる複数のアニーラー5・5・・・内に導かれたガラス管Gは、複数の支持ローラー52・52・・・によって下方より支持され、下流側(図1中の矢印Aの方向)へと搬送される。
【0032】
ここで、本実施形態において、各アニーラー5には、手動式または自動式の図示せぬ可動機構部が備えられており、この可動機構部によって、各アニーラー5の高さおよび傾斜角度を、容易に可変可能な構成となっている。
また、互いに隣り合うアニーラー5・5の、各々のフレーム部材51・51は、アニーラー5・5間において、図示せぬ連結機構部によって連結されており、この連結機構部を中心として、上下回動可能に連結される。
【0033】
そして、後述するように、マッフル炉4より導入されるガラス管Gのカテナリー形状に基づき、最上流側に位置するアニーラー5(以下、適宜「上流部アニーラー5A」と記載する)の可動機構部によって、上流部アニーラー5Aの高さおよび傾斜角度を適宜調整することにより、上流部アニーラー5Aに備えられる複数の支持ローラー52・52・・・の内、先ず始めにガラス管Gと接することとなる支持ローラー52の高さ、および複数の支持ローラー52・52・・・の配置方向と水平面との傾斜角度が調整される。
また、上流部アニーラー5Aの高さおよび傾斜角度の調整に伴って、上流部アニーラー5Aの下流側において一列に連結される複数のアニーラー5・5・・・の高さおよび傾斜角度も、同調して調整される。
例えば、互いに隣り合うアニーラー5・5において、上流側に位置するアニーラー5の下流側端部と、下流側に位置するアニーラー5の上流側端部の高さを等しくし、下流側に位置するアニーラー5の水平面に対する傾斜角度を、上流側に位置するアニーラー5の水平面に対する傾斜角度よりも1〜20°小さくすることで、ガラス管Gの形状に沿わせることができる。
【0034】
次に、管引き装置6について説明する。
管引き装置6は、複数のアニーラー5・5・・・の下流側において、ガラス管Gを一定速度で牽引し、切断装置7に向けて搬送するための装置である。
管引き装置6には、上下一対の無端ベルト65・65が備えられる。
そして、これらの無端ベルト65・65によって、ガラス管Gの上下端部を挟持しつつ下流方向へ牽引して管引きすることで、ガラス管Gは切断装置7へと搬送される。
【0035】
次に、切断装置7について説明する。
切断装置7は、管引き装置6から送り出されるガラス管Gを一定長さごとに切断するための装置である。
切断装置7で切断されたガラス管はコンベア8で次工程へ搬送される。
【0036】
以上のような構成からなる成形装置100において、ガラス管Gは、ガラス溶融炉1によって溶融された溶融ガラスMがスリーブ2に供給され、その後、アニーラー5の搬送ローラー52や管引き装置6の無端ベルト65などによって、溶融ガラスMがスリーブ2の先端より引出されて管引きされ、アニーラー5で徐冷されることにより成形される。
【0037】
[アニーラー5の調整方法]
次に、アニーラー5の高さおよび傾斜角度の調整方法について、図2乃至図4を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、図3および図4の上下方向をアニーラー5の上下方向と規定して記述する。
また、図3および図4においては、矢印Aの方向をガラス管Gの管引き方向(搬送方向)と規定して記述する。
【0038】
先ず始めに、図2に示すように、成形装置100によってガラス管Gの連続成形が実施されている状態において、任意の成形されたガラス管Gに対して、確認工程(S101)が実施される。
具体的には、確認工程(S101)においては、任意の成形されたガラス管Gに対して、略楕円形状に変形した断面形状の歪み(以下、適宜「断面歪み」と記載する)が見られるか否か、また、軸心方向の湾曲(以下、適宜「軸心湾曲」と記載する)が見られるか否かが確認される。
【0039】
その結果、確認対象となったガラス管Gに対して、断面歪みおよび軸心湾曲の何れも見られない場合は、成形されるガラス管Gの品質維持が図られており、現時点におけるアニーラー5の高さおよび傾斜角度の調整が不要と判断される。
一方、確認対象となったガラス管Gに対して、断面歪みまたは軸心湾曲の何れかが見られた場合、成形されるガラス管Gの品質維持が図られておらず、確認工程(S101)の結果に基づき、後述する調整工程(S102)が実施される。
【0040】
なお、確認工程(S101)において実施される、ガラス管Gの断面歪みおよび軸心湾曲の確認検査の具体的手法については、例えば、再切後にサンプリングされたガラス管Gを、マイクロメーターやダイヤルゲージなどの測定機器を用いて実測することとしてもよいし、または、切断装置7の手前にて、レーザー光などによる測定装置を別途配設し、この測定装置を用いて自動的に実測することとしてもよい。
【0041】
確認工程(S101)の実施の結果、ガラス管Gに対して、断面歪みまたは軸心湾曲の何れかが見られた場合、確認工程(S101)の実施の結果に基づき、調整工程(S102)が実施され、上流部アニーラー5Aのフレーム部材51が、前述した上流部アニーラー5Aの可動機構部(図示せず)によって、所定の位置まで上下方向に移動、且つ回動されるとともに、上流部アニーラー5Aの下流に位置する複数のアニーラー5・5・・・の高さおよび傾斜角度も、同調して前述したアニーラー5の保持機構部(図示せず)によって調整される。
【0042】
ここで、一般的に、断面歪みは、スリーブ2より引出されたガラス管Gが、スリーブ2と近接し過ぎる位置にて、アニーラー5内の支持ローラー52・52・・・との接地を開始する場合に発生し易いと考えられる。
即ち、スリーブ2と近接し過ぎる位置にあるガラス管Gは、未だ高温状態であって粘度が低いことから、支持ローラー52との接地開始位置において、支持ローラー52に接地したガラス管Gは支持ローラー52から受ける圧力によってたわみ、その断面形状が略楕円形状に歪む。
【0043】
一方、軸心湾曲は、スリーブ2より引出されたガラス管Gと、スリーブ2との離間距離が長過ぎる位置にて、アニーラー5内の支持ローラー52・52・・・との接地を開始する場合に発生し易いと考えられる。
即ち、スリーブ2との離間距離が長過ぎる位置にあるガラス管Gは、空気中にて冷やされ低温状態となり粘度が高いことから、支持ローラー52との接地後に湾曲形状から直線形状への矯正がされ難い。
【0044】
以上の点を踏まえた上で、確認工程(S101)の実施の結果、例えば、ガラス管Gに対して断面歪みが見られた場合、スリーブ2より引出されたガラス管Gの、支持ローラー52との接地開始位置が、スリーブ2より適切な位置にまで離間するように、調整工程(S102)において、アニーラー5の高さおよび傾斜角度の調整が実施される。
【0045】
具体的には、図3(a)に示すように、スリーブ2より引出されたガラス管Gが、カテナリー形状を描きながら、複数のアニーラー5・5・・・内に導かれるところ、ガラス管Gの支持ローラー52との接地開始位置(例えば、図3(a)中において、ガラス管Gが上流部アニーラー5Aの最も入口部に位置する支持ローラー52(以下、適宜「第一支持ローラー52A」と記載)と接地する位置Px)が未だ高温状態にある場合、確認工程(S101)において、ガラス管Gに対して断面歪みが確認される。
【0046】
このような確認工程(S101)の実施の結果が得られた場合、調整工程(S102)においては、前述した上流部アニーラー5Aの可動機構部(図示せず)によって、上流部アニーラー5Aの高さおよび傾斜角度が適宜調整される。
【0047】
即ち、図3(b)に示すように、ガラス管Gの支持ローラー52との接地開始位置(例えば、図3(b)中において、ガラス管Gが、第一支持ローラー52Aと隣接される支持ローラー52(以下、適宜「第二支持ローラー52B」と記載)と接地する位置P1)の高さ(図3(b)中の寸法H1)が、調整前の接地開始位置(位置Px)の高さ(図3(a)中の寸法Hx)に比べて低い位置に設定されるとともに(Hx>H1)、上流部アニーラー5Aに備えられる複数の支持ローラー52・52・・・の配置方向と水平面との傾斜角度(図3(b)中の角度θ1)が、調整前の傾斜角度(図3(b)中の角度θx)に比べて小さな角度に設定される(θx>θ1)。
【0048】
その結果、ガラス管Gの支持ローラー52との接地開始位置を、適切な位置にまでマンドレル2より離間させることができ、ガラス管Gの断面歪みの発生を極力防止し、ガラス管Gの品質維持を図ることができる。また、ガラス管Gの接地開始位置の調整は、上流部アニーラー5Aの高さおよび傾斜角度を変更するだけで行うことができるので、接地開始位置の迅速な調整が可能となる。
つまり、任意の成形されたガラス管Gに対して、略楕円形状に変形した断面形状の歪みが見られる場合、従来のような、マッフル炉4内の温度が、安定した状態になるまで長時間を費やすこともなく、歪みを直ちに抑制することが可能であり、迅速にガラス管の品質維持を図ることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、上流部アニーラー5Aの高さおよび傾斜角度の両方を調整しているが、ガラス管Gの支持ローラー52との接地開始位置を、適切な位置にまでスリーブ2より離間させることができるのであれば、上流部アニーラー5Aの高さおよび傾斜角度の何れか一方のみを調整してもよい。
【0050】
一方、確認工程(S101)の実施の結果、例えば、ガラス管Gに対して軸心湾曲が見られた場合、スリーブ2より引出されたガラス管Gの、支持ローラー52との接地開始位置が、スリーブ2より適切な位置にまで近接するように、調整工程(S102)において、アニーラー5の高さおよび傾斜角度の調整が実施される。
【0051】
具体的には、図4(a)に示すように、スリーブ2より引出されたガラス管Gが、カテナリー形状を描きながら、複数のアニーラー5・5・・・内に導かれるところ、ガラス管Gの支持ローラー52との接地開始位置(例えば、図4(a)中において、ガラス管Gが第二支持ローラー52Bと接地する位置Py)が空気中にて冷やされ低温状態にある場合、確認工程(S101)において、ガラス管Gに対して軸心湾曲が確認される。
【0052】
このような確認工程(S101)の実施の結果が得られた場合、調整工程(S102)においては、前述した上流部アニーラー5Aの可動機構部(図示せず)によって、上流部アニーラー5Aの高さおよび傾斜角度が適宜調整される。
【0053】
即ち、図4(b)に示すように、ガラス管Gの支持ローラー52との接地開始位置(例えば、図4(b)中において、ガラス管Gが第一支持ローラー52Aと接地する位置P2)の高さ(図4(b)中の寸法H2)が、調整前の接地開始位置(位置Py)の高さ(図4(a)中の寸法Hy)に比べて高い位置に設定されるとともに(Hy<H2)、上流部アニーラー5Aに備えられる複数の支持ローラー52・52・・・の配置方向と水平面との傾斜角度(図4(b)中の角度θ2)については、調整前の傾斜角度(図3(a)中の角度θy)に比べて大きな角度に設定される(θy<θ2)。
【0054】
その結果、ガラス管Gの支持ローラー52との接地開始位置を、適切な位置にまでスリーブ2に対して近接させることができるため、ガラス管Gの軸心湾曲の発生を極力防止し、ガラス管Gの品質維持を図ることができる。また、ガラス管Gの接地開始位置の調整は、上流部アニーラー5Aの高さおよび傾斜角度を変更するだけで行うことができるので、接地開始位置の迅速な調整が可能となる。
つまり、任意の成形されたガラス管Gに対して、軸心方向の湾曲が見られる場合、従来のような、マッフル炉4内の温度が、安定した状態になるまで長時間を費やすこともなく、湾曲を直ちに抑制することが可能であり、迅速にガラス管の品質維持を図ることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、上流部アニーラー5Aの高さおよび傾斜角度の両方を調整しているが、ガラス管Gの支持ローラー52との接地開始位置を、適切な位置にまでスリーブ2に対して近接させることができるのであれば、上流部アニーラー5Aの高さおよび傾斜角度の何れか一方のみを調整してもよい。
【0056】
また、調整工程(S101)において、上流部アニーラー5Aの高さおよび傾斜角度を調整する際には、上流部アニーラー5Aの高さ、および傾斜角度の調整に伴って、上流部アニーラー5Aの下流側にて一列に連結される複数のアニーラー5・5・・・の高さおよび傾斜角度も、同調しつつ調整される。
その結果、複数のアニーラー5・5・・・に備えられる支持ローラー群52・52・52・・・は、カテナリー形状を描きながら導入されるガラス管Gに沿って一列に配設されることとなり、ガラス管Gを、これら複数の支持ローラー群52・52・・・によって適切に保持することができ、搬送途中に不意な外力などが付加されることなく、自然な状態によって、ガラス管Gを搬送することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
5 アニーラー
51 フレーム部材
52 支持ローラー
100 ガラス管成形装置(成形装置)
G ガラス管
S101 確認工程
S102 調整工程
図1
図2
図3
図4