(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、この発明の実施の形態に係る静電荷現像用現像剤及び画像形成装置について図面を参照して説明する。
【0021】
実施の形態1
この実施の形態1に係る画像形成装置1は、
図1に示されるように、時計回り方向に回転する像保持体の一例としてのドラム状に形成された電子写真感光体10を備えており、この電子写真感光体10の周囲に、次のような各装置が主に配置されている。主な装置とは、電子写真感光体10の像形成が可能な周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電手段の一例としての帯電装置20と、電子写真感光体10の帯電された周面に画像の情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある静電潜像を形成する静電潜像形成手段の一例としての露光装置30と、その静電潜像を静電荷像現像用現像剤のトナーで現像してトナー像にする現像手段の一例としての現像装置40と、電子写真感光体10の表面に接触して移動し、電子写真感光体10の表面に現像されたトナー像を記録媒体Pに転写する転写手段としての中間転写装置50と、電子写真感光体10の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃する清掃手段の一例としてのドラム清掃装置60等である。
【0022】
電子写真感光体10の下方には、中間転写装置50、給紙装置70、定着装置80が配置されている。中間転写装置50は、電子写真感光体10と一次転写装置51(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に回転する中間転写体としての中間転写ベルト52と、中間転写ベルト52をその内面から所望の状態に保持して回転自在に支持する複数のベルト支持ロール53〜56と、ベルト支持ロール56に支持されている中間転写ベルト52の外周面(像保持面)側に配置されて中間転写ベルト52上のトナー像を記録媒体としての記録用紙Pに二次転写させる二次転写装置57と、二次転写装置57を通過した後に中間転写ベルト52の外周面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルト清掃装置58とで主に構成されている。
【0023】
中間転写ベルト52としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂にカーボンブラック等の抵抗調整剤などを分散させた材料で製作される無端状のベルトが使用される。また、ベルト支持ロール53は駆動ロールとして構成され、ベルト支持ロール54は張力付与ロールとして構成され、ベルト支持ロール55は中間転写ベルト53の走行位置などを保持する従動ロールとして構成され、ベルト支持ロール56は二次転写のバックアップロールとして構成されている。
【0024】
二次転写装置57は、
図1に示されるように、中間転写装置50におけるベルト支持ロール56に支持されている中間転写ベルト52の外周面部分である二次転写位置に接触するように配置された二次転写ロールにより構成されている。また、二次転写装置としての二次転写ロール57又は中間転写装置50の支持ロール56には、トナーの帯電極性と逆極性又は同極性を示す直流の電圧が二次転写用電圧として供給される。
【0025】
定着装置80は、矢印で示す方向に回転するとともに表面温度が所定の温度に保持されるよう加熱手段によって加熱されるドラム形態の加熱用回転体81と、この加熱用回転体81の軸方向にほぼ沿う状態で所定の圧力で接触して従動回転するドラム形態の加圧用回転体82などを配置して構成されたものである。この定着装置80では、加熱用回転体81と加圧用回転体82が接触する接触部が所要の定着処理(加熱及び加圧)を行う定着処理部になる。
【0026】
給紙装置70は、所望のサイズ、種類等の記録用紙Pを積載した状態で収容する単数(又は複数)の図示しない用紙収容体と、用紙収容体から記録媒体としての記録用紙Pを1枚ずつ送り出す送出装置71とで主に構成されている。
【0027】
給紙装置70と二次転写装置57との間には、給紙装置70から送り出される記録用紙Pを二次転写位置まで搬送する搬送ガイド材72や図示しない複数の用紙搬送ロール対で構成される給紙搬送路が設けられている。給紙搬送路において二次転写位置の直前の位置に配置される図示しない用紙搬送ロール対は、例えば記録用紙Pの搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成されている。また、二次転写装置57と定着装置80との間には、二次転写装置57から送り出される二次転写後の記録用紙Pを定着装置80まで搬送するためのベルト形態等の用紙搬送装置83が設けられている。
【0028】
以下、この実施の形態に係る画像形成装置1における主な構成部材について詳細に説明する。
【0029】
<静電潜像現像用現像剤>
この実施の形態に係る静電潜像現像用現像剤は、トナーとキャリアを含む二成分系現像剤である。トナーは、例えば、結着樹脂、着色剤、及び必要に応じて離型剤等の他の添加剤を含むトナー粒子と、体積平均粒径が50nm以上400nm以下であり、平均円形度が0.7以上0.85以下である外添剤と、を含んで構成される。
【0030】
まず、トナー粒子について説明する。
結着樹脂としては、特に制限はないが、スチレン類(例えばスチレン、クロロスチレン等)、モノオレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等)、ビニルエステール類(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等)、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えばビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)等の単独重合体および共重合体、ジカルボン酸類とジオール類との共重合によるポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0031】
特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
また、代表的な結着樹脂としては、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等も挙げられる。
【0032】
着色剤としては、磁性粉(例えばマグネタイト、フェライト等)、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等が代表的なものとして挙げられる。
【0033】
その他の添加剤としては、例えば、離型剤、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等が挙げられる。
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成或いは鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
トナー粒子の特性について説明する。
トナー粒子は、平均形状係数(形状係数=(ML
2/A)×(π/4)×100で表される形状係数の個数平均、ここでMLは粒子の最大長を表し、Aは粒子の投影面積を表す)が100以上150以下であることが望ましく、105以上145以下であることがより望ましく、110以上140以下であることがさらに望ましい。
【0035】
トナー粒子は、体積平均粒子径D50vが2.0μm以上6.5μm以下であり、2.0μm以上6.0μm以下であることが望ましい。
トナー粒子の体積平均粒径D50vが上記範囲であっても、筋状のカブリの発生が抑制される。
なお、トナー粒子の粒径を小径化することで、画像の粒状性(画質)が良化する一方で、2.0μmを下回ると、トナー粒子一粒あたりの電荷が小さくな過ぎてしまい、カブリの発生、転写不良が発生することがある。
【0036】
ここで、トナー粒子の体積平均粒径D50vの測定法は、次の通りである。
まず、分散剤として界面活性剤(望ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の5質量%水溶液2ml中に、測定試料を0.5mg以上50mg以下加え、これを電解液100ml以上150ml以下中に添加した。この測定試料を懸濁させた電解液を超音波分散器で約1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーII型(ベックマン−コールター社製)により、アパーチャー径が100μmのアパーチャーを用いて、粒径が2.0μm以上60μm以下の範囲の粒子の粒度分布を測定する。測定する粒子数は50,000とする。
得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒径側から体積累積分布を引いて、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとする。
【0038】
トナーの転写性を向上させるためには、トナー粒子と電子写真感光体10との付着力を低減させることが効果的である。この実施の形態では、トナー粒子と電子写真感光体10との付着力を低減させるため、トナー粒子に粒子径の大きな大粒径の外添剤を添加するように構成している。
【0039】
外添剤の体積平均粒子径は、50nm〜400nmであることが好ましく、60nm〜300nmであることがより好ましく、80nm〜200nmであることが更に好ましい。外添剤の体積平均粒子径が50nm未満であると、トナー粒子との付着性が高く、トナー粒子に埋没しやすいため、電子写真感光体との付着力を低下し難い。また、外添剤の粒子径が400nmを越えると、トナー粒子との付着力が弱くなりすぎ、トナー粒子から離脱しやすくなり効果が持続し難い。
外添剤のトナーに対する異形外添剤量は、1質量%以上5質量%以下であることが望ましい。異形外添剤のトナーに対する添加量が1質量%未満であると、トナー表面上の被覆率が低下するとともに、経時的なストレスによって外添剤がトナーに埋没することにより、外添剤のスペーサーとしての機能が低下し転写性能が悪化する。また、異形外添剤のトナーに対する添加量が5質量%より多いと、トナーから遊離する外添剤が増え、感光体表面の汚染や流動性の低下、帯電特性の悪化が生じる。
【0040】
また、粒子径の大きな外添剤がトナーから剥離して電子写真感光体10の表面に付着した際に、後述するように、外添剤と電子写真感光体10との摩擦帯電を促進して外添剤の付着を抑制することを考慮すると、外添剤の形状を球形状ではなく異形形状とすることが望ましい。外添剤の形状が球形状であると、電子写真感光体10の表面を転がるため、外添剤と電子写真感光体10との摩擦帯電が弱くなり、十分な摩擦帯電が得難い。
そこで、外添剤は、その平均円形度が0.7以上0.85以下であることが好ましい。外添剤の平均円形度は、製造上の観点から0.7以上とし、電子写真感光体10の表面での転がりを抑えて摩擦帯電させる観点から0.85以下とする。外添剤の円形度は、外添剤の形状を顕微鏡で観察し、次式で求められる。
円形度=(投影面積の等しい円の周長)/(粒子の周長)
【0041】
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられ、該無機粒子として、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0042】
外添剤の表面は、予め疎水化処理をしてもよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
外添剤を異形化することにより、クリーニング時における外添剤の擦り抜けを抑制することができると共に、現像剤の磁気ブラシによる摺擦時に像保持体の表面との摩擦帯電により外添剤が帯電し易くなる。また、外添剤が真球に近い形状である場合は、像保持体の表面に付着した際に、接触点数及び接触面積が低く、最密充填構造をとり易く、摩擦帯電しくくなる。
異形状の外添剤の製造方法としては、例えば、ケイ素塩化物を気化し高温の水素炎中において気相反応によりシリカ微粒子を合成するヒュームドシリカや、アルコールを含有する水系溶媒中でアルキルシリケートを加水分解する触媒の存在下で加水分解し、生成するゾル−ゲル法などが挙げられる。
【0044】
トナーの製造方法について説明する。
まず、トナー粒子は、特に製造方法により限定されるものではないが、例えば、結着樹脂、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を加えて混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と、着色剤及び離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により製造されるトナー粒子が使用される。
【0045】
また上記方法で得られたトナー粒子をコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法等、公知の方法が使用される。なお、トナーの製造方法としては、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が望ましく、乳化重合凝集法が特に望ましい。
【0046】
そして、トナーは、上記トナー粒子及び上記外添剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造される。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添してもよい。
【0048】
キャリアの体積平均粒径D50vは、例えば、15μm以上35μm以下がよく、望ましくは18μm以上32μm以下であり、より望ましくは20μm以上30μm以下である。
また、キャリアの体積平均粒度分布指標GSDvにおいて、例えば、粒径45μm以上のキャリア粒子がキャリア全体で10%以下(望ましくは8%以下、より望ましくは5%以下)であることがよい。
キャリアの体積平均粒度分布指標GSDvは、粗大側粒子(粒径45μm以上のキャリア粒子)の存在が多すぎると、磁気ブラシのブラシ粗さが大きくなる傾向となり、筋状のカブリが発生し易くなることから、上記関係を満たすことがよい。
【0049】
キャリアの体積平均粒径D50v及び体積平均粒度分布指標GSDvは、レーザー散乱粒度測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック)を用いて、100μmのアパーチャ径で測定することにより得られる。このとき、測定はキャリアを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行った。
レーザー散乱粒度測定装置(日機装(株)製、マイクロトラック)で測定されたキャリアの粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積50%となる粒径が体積平均粒径D50vとし、体積平均粒度分布指標GSDvにおいて、チャネルから粒径45μmの粒子の比率を求めた。
【0050】
キャリア(被覆キャリアの場合、芯材)の真比重は、例えば、2.5g/cm
3以上6.0g/cm
3以下がよく、望ましくは2.8g/cm
3以上5.5g/cm
3以下であり、より望ましくは3.0g/cm
3以上5.0g/cm
3以下である。
キャリアの真比重は、次のようにして求められる値である。
キャリアの真比重ρは、例えば、被覆キャリアの場合、用いる磁性粉の種類により調整され、磁性粉分散型キャリアの場合、用いる磁性粉の種類、磁性粉充填量等により調整される。
【0051】
キャリアの真比重は、例えば、気相置換法に準じて、高精度自動体積計(例えば、エステック社製VM−100等)を用いて測定した。
【0052】
キャリアとして具体的には、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア、マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア、多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、樹脂含浸型キャリアは、マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された粒子や、多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0053】
磁性粉としては、例えば、例えば、酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0054】
芯材に被覆する被覆樹脂、磁性粉を分散・配合するマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、芯材に被覆する被覆樹脂や、磁性粉を分散・配合する樹脂には、導電材料等、その他添加剤を含ませてもよい。
【0055】
芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0056】
ここで、被覆樹脂の芯材に対する被覆量は、例えば、キャリア全体の質量に対して0.5質量%以上(望ましくは0.7質量%以上6質量%以下、より望ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下)であることがよい。
芯材が露出し過ぎてしまうと、露出した芯材が感光体(像保持体)と接触すると、電荷リークが生じ易くなることがある。
このため、被覆樹脂の芯材に対する被覆量は、上記範囲であることがよい。
【0057】
この被覆量は、次のようにして求められる。
溶剤可溶の被覆樹脂の場合は、精量したキャリアを可溶溶剤(例えば、トルエン)に溶解させ、磁性粉を磁石で保持し、被覆樹脂が溶解した溶液を洗い流す。これを数度繰り返す事により、被服樹脂が取り除かれた磁性粉が残る。乾燥させ、磁性粉の質量を測定し、差分をキャリア量で割る事により被覆量が算出される。
具体的には、キャリア20.0gを計り取り、ビーカーに入れ、トルエン100gを加え攪拌翼で10分攪拌する。ビーカーの底に磁石をあて、芯材(磁性粉)が流れ出さないようにトルエンを流す。これを4回繰り返し、洗い流した後のビーカーを乾燥させる。乾燥後磁性粉量を測定し、式[(キャリア量−洗浄後の磁性粉量)/キャリア量]で被覆量を算出する。
一方、溶剤不溶の被覆樹脂の場合は、Rigaku社製Thermo plus EVOII 差動型示差熱天秤 TG8120を用い、窒素雰囲気下で、室温(25℃)以上1000℃以下の範囲で加熱し、その質量減少から被覆量を算出する。
【0058】
現像剤において、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、例えば、トナー:キャリア=1:100から30:100程度の範囲が挙げられる。
【0059】
−現像装置−
現像装置40は、
図1に示されるように、現像領域において電子写真感光体10と対向するように配置され、内部にトナー及びキャリアを含む現像剤(二成分現像剤)を収容する現像装置本体41を備えている。
【0060】
現像装置本体41は、その内部に現像剤保持体として現像ロール42を収容する現像ロール室43を有しており、現像ロール室43の下方に隣接して、第1攪拌室44と第1攪拌室44に隣接する第2攪拌室45とを有している。現像ロール室43には、現像ロール42表面の現像剤の層厚を規制する層厚規制部材46が設けられている。第1攪拌室44と第2攪拌室45とは、仕切り壁47によって仕切られているとともに、仕切り壁47の長手方向に沿った両端部に設けられた開口部を介して通じており、第1攪拌室44と第2攪拌室45との間で現像剤が循環するように構成されている。
【0061】
現像ロール室43には、電子写真感光体10と対向するように現像ロール42が配置されている。現像ロール42は、周方向に沿って予め定められた位置に複数の磁極が配置された磁性ロール42aと、磁性ロール42aの外周に配置された現像スリーブ42bとを備えている。磁性ロール42aは、現像装置本体41に固定した状態で装着され、現像スリーブ42bは、現像装置本体41に反時計回り方向に沿って回転するよう装着されている。現像ロール42は、電子写真感光体10の表面と最近接位置において所要の間隙(最近接距離)を隔てて対向している。第1攪拌室44内の現像剤は、磁性ロール42aの磁力によって現像スリーブ42bの表面に吸着され、層厚規制部材46により現像剤の層厚が規制された状態で、現像スリーブ42bの回転に伴って現像剤の磁気ブラシとして現像領域へと搬送される。そして、現像スリーブ42bの表面に保持された現像剤の磁気ブラシが電子写真感光体10の表面に接触することにより、電子写真感光体10の表面に形成された静電潜像が現像されてトナー像となる。現像スリーブ42bの表面に保持され現像領域へと搬送される単位面積あたりの現像剤量は、層厚規制部材46と現像スリーブ42bとの間隙、及び磁性ロール42aの磁力によって主に決定される。
【0062】
現像ロール42の現像スリーブ42aは、例えば、電子写真感光体10の回転方向(時計周り方向)と逆方向に回転するように図示しない駆動手段によって駆動され、現像スリーブ42bの表面に吸着された現像剤は、対向部において、電子写真感光体10の移動方向と同方向(with方向)に所要の周速比(現像ロール表面の移動速度と電子写真感光体10表面の移動速度との比)をもって現像領域に搬送されるようにしている。
【0063】
なお、現像ロール42は、電子写真感光体10と同方向に回転するように駆動し、現像ロール42の表面に吸着された現像剤を、対向部において、電子写真感光体10の移動方向と逆方向(against方向)に所要の周速比をもって現像領域に搬送するように構成しても良い。
【0064】
また、現像ロール42の現像スリーブ42bには、不図示のバイアス電源が接続され、この実施の形態では、トナーの帯電極性と同極性である負極性の直流成分(AC)に交流成分(DC)を重畳した現像バイアスが印加されるように構成されている。
【0065】
第1攪拌室44及び第2攪拌室45には、現像剤を攪拌しながら搬送する攪拌搬送部材としての第1攪拌部材48及び第2攪拌部材49が配置されている。第1攪拌部材48は、現像ロール42の軸方向に伸びる第1回転軸と、回転軸の外周に螺旋状に固定された攪拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。また、第2攪拌部材49も、同様に、第2回転軸及び攪拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。なお、攪拌部材は現像装置本体41に回転自在に支持されている。そして、第1攪拌部材48及び第2攪拌部材49は、その回転によって、第1攪拌室44及び第2攪拌室45の中の現像剤を互いに逆方向に搬送するように配置されている。第1攪拌部材48は、現像剤を攪拌搬送しつつ、現像ロール42に現像剤を供給する。
【0066】
そして、第2攪拌室49の長手方向一端側には、補給用トナー及び補給用キャリアを含む補給用現像剤を第2攪拌室49へ供給するための図示しない補給搬送路の一端が連結されており、補給搬送路の他端には、補給用現像剤を収容している図示しない補給用現像剤収納容器が連結されている。
【0067】
このように現像装置40は、図示しない補給用現像剤収納容器(トナーカートリッジ)から補給搬送路を経て補給用現像剤を現像装置40(第2攪拌室44)へ供給する。
【0068】
ところで、この実施の形態に係る画像形成装置では、高画質化及び高生産性等に対応するため、現像装置40の現像性を向上させるように構成している。現像装置40の現像性に関する現像媒介変数(パラメータ)としては、電子写真感光体10の静電潜像電位及び現像ロール42に印加される現像バイアス電位からなる現像電位、電子写真感光体10の表面と現像ロール42に保持された現像剤の磁気ブラシが接触する現像剤接触領域を規定するパラメータ、電子写真感光体10と現像ロール42との周速比が挙げられる。この実施の形態では、現像装置40の現像性を上げるため、現像剤接触領域を規定するパラメータを制御している。ここで、現像領域における現像剤の接触状態を示すパラメータとしては、電子写真感光体10と現像ロール42との最近接距離と、現像領域における現像ロール43上の単位面積あたりの現像剤量とが挙げられる。
【0069】
電子写真感光体10と現像ロール42との間隙である最近接距離を狭く設定することで、現像領域に存在する現像剤に作用する実効現像電界が強くなり、現像性が向上する。また、現像ロール42上の単位面積あたりの現像剤量を増加させることで、現像剤と電子写真感光体10との接触量が増加するとともに接触面積が広がり、現像性を向上させることができる。
【0070】
そのため、現像ロール42上の単位面積あたりの現像剤量(g/m
2)(以下、「MOS」ともいう。)と、電子写真感光体10と現像ロール42との最近接距離(μm)(以下、「DRS」ともいう。)との比(現像ロール42上の単位面積あたりの現像剤量を、電子写真感光体10と現像ロール42との最近接距離で除算した値)であるMOS/DRSの値が大きい程、現像性が向上することになる。
【0071】
本発明者らが種々研究並びに検討した結果によれば、MOS/DRSの値は、0.8以上1.8以下の範囲が好ましく、0.95以上1.5以下の範囲がより好ましい。MOS/DRSの値が0.8未満であると電子写真感光体10の表面に現像される現像剤量が低下し、1.8を超える場合には、現像剤が現像剤接触領域に詰まり過ぎる傾向がある。
【0072】
また、現像ロール42と電子写真感光体10との周速比は、現像ロール42と電子写真感光体10とが対向部において同方向に移動する場合、1.5以上5.0以下に設定するのが望ましく、更に望ましくは現像ロール42と電子写真感光体10とを対向部において逆方向に移動するように構成するのが望ましい。
【0073】
現像ロール42と電子写真感光体10との周速比は、電子写真感光体10の表面に付着した外添剤の摩擦帯電の観点から1.5以上とし、外添剤が電子写真感光体10の表面に付着するのを抑制する観点から5.0以下とする。
【0074】
−電子写真感光体−
この実施の形態では、上述したように、トナーの転写性を向上させるため、現像剤のトナー粒子に大径の外添剤を付着させている。トナー粒子に大径の外添剤を付着させた場合には、外添剤の体積に対するトナー粒子との接触面積が減少するため、外添剤がトナー粒子から剥離しやすくなる。また、現像装置40では、現像性を向上させるため、MOS/DRSの値を相対的に大きく設定しており、外添剤がトナー粒子から剥離しやすい傾向にある。負極性に帯電した外添剤がトナー粒子から遊離すると電子写真感光体10の表面に強固に付着し、ドラム清掃装置60では除去し難く、電子写真感光体10の表面を帯電装置20によって帯電する際に、表面に存在する外添剤を含めて電子写真感光体10の表面が帯電される。そして、現像装置40で電子写真感光体10表面の静電潜像を現像する際に、現像剤の磁気ブラシによって電子写真感光体10の表面に付着した外添剤が掻き取られ、外添剤が付着していた領域の帯電電位が外添剤が付着していない領域の帯電電位よりも低下して両者の間に電位差が発生し、現像像にポジゴーストを誘発しやすくなる。
【0075】
そこで、この実施の形態では、電子写真感光体10の表面に負極性に帯電する傾向がある無機粒子からなる外添剤が付着するのを抑制するため、電子写真感光体10の最表面層に無機粒子からなる外添剤よりも摩擦帯電系列において負極性に帯電し易い材料であるフッ素樹脂粒子を分散させるように構成している。その際、フッ素樹脂粒子の平均一次粒径は、0.05μm以上1μm以下に設定されており、添加量は、1重量%以上30重量%以下に設定されている。
【0076】
電子写真感光体10としては、例えば、1)導電性基体上に下引層が設けられ、その上に電荷発生層、電荷輸送層、及び保護層が順次形成された構造を有するもの、2)導電性基体上に下引層が設けられ、その上に、電荷輸送層、電荷発生層、及び保護層が順次形成された構造を有するもの、3)導電性基体上に下引層が設けられ、その上に単層型感光層、保護層が順次形成された構造を有するもの、等が挙げられる。
なお、電荷発生層及び電荷輸送層は機能分離型の感光層である。また、電子写真感光体10において、下引層は設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0077】
そして、電子写真感光体10の最表面層を構成する保護層として、例えば、フッ素樹脂粒子を含む硬化膜で構成された保護層が適用される。
以下、各層の詳細について説明する。
【0078】
まず、導電性基体について説明する。
導電性基体としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、薄膜(例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)等の膜)を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、導電性付与剤を塗布又は含浸させたプラスチックフィルム等が挙げられる。基体の形状は円筒状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
なお、導電性基体粒子は、例えば体積抵抗率が10
7Ω・cm未満の導電性を有するものがよい。
【0079】
導電性基体として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0080】
次に、下引層について説明する。
下引層は、導電性基体表面における光反射の防止、導電性基体から感光層への不要なキャリアの流入の防止などの目的で、必要に応じて設けられる。
【0081】
下引層は、例えば、結着樹脂と、必要に応じてその他添加物とを含んで構成される。
下引層に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが望ましく用いられる。
【0082】
下引層には、シリコン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物等の金属化合物等を含有してもよい。
【0083】
金属化合物と結着樹脂との比率は、特に制限されず、所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で設定される。
【0084】
下引層には、表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂粒子等が挙げられる。なお、表面粗さ調整のために下引層を形成後、その表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が用いられる。
【0085】
ここで、下引層の構成として、結着樹脂と導電性粒子とを少なくとも含有する構成が挙げられる。なお、導電性粒子は、例えば体積抵抗率が10
7Ω・cm未満の導電性を有するものがよい。
【0086】
導電性粒子としては、例えば、金属粒子(アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの粒子)、導電性金属酸化物粒子(酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの粒子)、導電性物質粒子(カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末の粒子)等が挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物粒子が好適である。導電性粒子は、2種以上混合して用いてもよい。
また、導電性粒子は、疎水化処理剤(例えばカップリング剤)等により表面処理を施して、抵抗調整して用いてもよい。
導電性粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが望ましく、より望ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0087】
下引層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた下引層形成用塗布液が使用される。
また、下引層形成用塗布液中に粒子を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。ここで、高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0088】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0089】
下引層の膜厚は、15μm以上が望ましく、20μm以上50μm以下がより望ましい。
【0090】
ここで、図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。これらの化合物は、単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いてもよい。中でも、ジルコニウムもしくはケイ素を含有する有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど点から好適である。
【0091】
中間層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた中間層形成用塗布液が使用される。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0092】
なお、中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こすことがある。したがって、中間層を形成する場合には、0.1μm以上3μm以下の膜厚範囲に設定することがよい。また、この場合の中間層を下引層として使用してもよい。
【0093】
次に、電荷発生層について説明する。
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂中とを含んで構成される。かかる電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が挙げられ、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が挙げられる。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0094】
電荷発生層を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、例えば10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
【0095】
電荷発生層の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液が使用される。
【0096】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0097】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0098】
電荷発生層の膜厚は、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
【0099】
次に、電荷輸送層について説明する。
電荷輸送層は、電荷輸送材料と、必要に応じて結着樹脂と、を含んで構成される。そして、電荷輸送層が最表面層に該当する場合、上記如く、電荷輸送層は、上記比表面積を持つフッ素樹脂粒子を含む。
【0100】
電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、及び上記した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
電荷輸送層を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等があげられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は、例えば10:1乃至1:5が望ましい。
【0102】
電荷輸送層は、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液を用いて形成される。
【0103】
電荷輸送層形成用塗布液中に粒子(例えばフッ素樹脂粒子)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0104】
電荷輸送層層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
電荷輸送層の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上40μm以下の範囲に設定される。
【0105】
次に、単層型感光層について説明する。
単層型感光層は(電荷発生/電荷輸送層)、例えば、電荷発生材料の含有量が10質量%以上85質量%以下(望ましくは20質量%以上50質量%以下)であり、電荷輸送材料の含有量が5質量%以上50質量%以下とすることが望ましい。
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。
単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)の膜厚は、例えば、5μm以上50μm以下程度が望ましく、10μm以上40μm以下とするのが更に望ましい。
【0106】
次に、保護層について説明する。
保護層は、フッ素樹脂粒子を含む硬化膜から構成される。
具体的には、例えば、保護層は、フッ素樹脂粒子と硬化性樹脂と電荷輸送材料とを含む硬化性樹脂組成物の硬化膜で構成されることがよい。
【0107】
硬化性樹脂は、加熱や光等により重合して高分子の網目構造を形成し、硬化してもとに戻らなくなる架橋性の樹脂である。硬化性樹脂としては、特に、熱硬化性樹脂が好適である。
熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド樹脂、硬化性アクリル樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0108】
電荷輸送材料としては、特に制限はないが、硬化性樹脂と相溶するものが望ましく、さらに、用いる硬化性樹脂と化学結合を形成するものがより望ましい。硬化性樹脂と化学結合を形成する反応性官能基を有する電荷輸送性有機化合物としては、例えば、−OH、−OCH
3、−NH
2、−SH、及び−COOHから選択される置換基の少なくとも1つを持つものが好適に挙げられる。
【0109】
保護層は、好適には、フッ素樹脂粒子、グアナミン化合物およびメラミン化合物から選択される少なくとも1種と、−OH、−OCH
3、−NH
2、−SHおよび−COOHから選択される少なくとも一つの置換基を持つ電荷輸送性材料(以下単に「特定の電荷輸送性材料」と称す)と、の硬化性組成物の硬化膜から構成されることがよい。
但し、硬化性樹脂としては、グアナミン化合物およびメラミン化合物から選択される少なくとも1種の他、他の硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等)や、スピロアセタール系グアナミン樹脂(例えば「CTU−グアナミン」(味の素ファインテクノ(株)))などを併用してもよい。
【0110】
ここで、保護層となる硬化膜を形成するための硬化性組成物は、フッ素樹脂粒子(その分散剤と機能するフッ化アルキル基含有共重合体含む)を除いた全固形分に対する、グアナミン化合物およびメラミン化合物の総含有率が0.1質量%以上20質量%以下であり、且つフッ素樹脂粒子(その分散剤と機能するフッ化アルキル基含有共重合体含む)を除いた全固形分に対する、特定の電荷輸送性材料の含有率が80質量%以上99.9質量%以下である硬化性組成物であることがよい。
【0111】
グアナミン化合物について説明する。
グアナミン化合物は、グアナミン骨格(構造)を有する化合物であり、単量体であってもよいし、多量体であってもよい。ここで、多量体は、単量体を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。
【0112】
グアナミン化合物は、例えば、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ホルモグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、シクロヘキシルグアナミンなどが挙げられる。
グアナミン化合物の市販品としては、例えば、"スーパーベッカミン(R)L−148−55、スーパーベッカミン(R)13−535、スーパーベッカミン(R)L−145−60、スーパーベッカミン(R)TD−126"以上DIC社製、"ニカラックBL−60、ニカラックBX−4000"以上日本カーバイド社製、などが挙げられる。
【0113】
グアナミン化合物(多量体を含む)は、合成後または市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチル、などの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
グアナミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0114】
メラミン化合物について説明する。
メラミン化合物は、メラミン骨格(構造)であり、単量体であってもよいし、多量体であってもよい。ここで、多量体は、単量体を構造単位として重合されたオリゴマーであり、その重合度は例えば2以上200以下(望ましくは2以上100以下)である。
【0115】
メラミン化合物の市販品としては、例えば、スーパーメラミNo.90(日油社製)、スーパーベッカミン(R)TD−139−60(DIC社製)、ユーバン2020(三井化学)、スミテックスレジンM−3(住友化学工業)、ニカラックMW−30(日本カーバイド社製)、などが挙げられる。
【0116】
メラミン化合物(多量体を含む)は、合成後または市販品の購入後、残留触媒の影響を取り除くために、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの適当な溶剤に溶解し、蒸留水、イオン交換水などで洗浄してもよいし、イオン交換樹脂で処理して除去してもよい。
メラミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0117】
特定の電荷輸送性材料について説明する。
特定の電荷輸送性材料としては、例えば、−OH、−OCH
3、−NH
2、−SH、及び−COOHから選択される置換基(以下単に「特定の反応性官能基」と称す場合がある)の少なくとも1つを持つものが好適に挙げられる。特に、特定の電荷輸送性材料としては、上記特定の反応性官能基を少なくとも2つ持つものが好適に挙げられ、さらには3つ持つものが好適に挙げられる。
【0118】
特定の電荷輸送性材料としては、下記一般式(I)で示される化合物であることが望ましい。
【0119】
一般式(I):F−((−R
1−X)n
1(R
2)n
3−Y)n
2
一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を示し、R
1およびR
2はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0または1を示し、n2は1以上4以下の整数を示し、n3は0または1を示す。Xは酸素、NH、または硫黄原子を示し、Yは−OH、−OCH
3、−NH
2、−SH、又は−COOH(即ち上記特定の反応性官能基)を示す。
【0120】
一般式(I)中、Fで示される正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基における正孔輸送能を有する化合物としては、アリールアミン誘導体が好適に挙げられる。アリールアミン誘導体としては、トリフェニルアミン誘導体、テトラフェニルベンジジン誘導体が好適に挙げられる。
【0121】
そして、一般式(I)で示される化合物は、下記一般式(II)で示される化合物であることが望ましい。
【0123】
一般式(II)中、Ar
1乃至Ar
4は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に置換若しくは未置換のアリール基を示し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基または置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは−(−R
1−X)n
1(R
2)n
3−Yを示し、cはそれぞれ独立に0または1を示し、kは0または1を示し、Dの総数は1以上4以下である。また、R
1およびR
2はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基を示し、n1は0または1を示し、n3は0または1を示し、Xは酸素、NH、または硫黄原子を示し、Yは−OH、−OCH
3、−NH
2、−SH、又は−COOHを示す
【0124】
一般式(II)中、Dを示す「−(−R
1−X)n
1(R
2)n
3−Y」は、一般式(I)と同様であり、R
1およびR
2はそれぞれ独立に炭素数1以上5以下の直鎖状若しくは分鎖状のアルキレン基である。また、n1として望ましくは、1である。また、Xとして望ましくは、酸素である。また、Yとして望ましくは水酸基である。
【0125】
なお、一般式(II)におけるDの総数は、一般式(I)におけるn2に相当し、望ましくは、2以上4以下であり、さらに望ましくは3以上4以下である。つまり、一般式(I)や一般式(II)において、望ましくは一分子中に2以上4以下、さらに望ましくは3以上4以下の、上記特定の反応性官能基を有することが望ましい。
【0126】
一般式(II)中、Ar
1乃至Ar
4としては、下記式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。なお、下記式(1)乃至(7)は、各Ar
1乃至Ar
4に連結され得る「−(D)c」と共に示す。
【0128】
[式(1)乃至(7)中、R
9は水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表し、R
10乃至R
12はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Arは置換または未置換のアリーレン基を表し、Dおよびcは一般式(II)における「D」、「c」と同様であり、sはそれぞれ0または1を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
【0129】
ここで、式(7)中のArとしては、下記式(8)又は(9)で表されるものが望ましい。
【0131】
[式(8)、(9)中、R
13およびR
14はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、tは1以上3以下の整数を表す。]
【0132】
また、式(7)中のZ'としては、下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが望ましい。
【0134】
[式(10)乃至(17)中、R
15およびR
16はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、qおよびrはそれぞれ1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。]
【0135】
[式(10)乃至(17)中、R
15およびR
16はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基もしくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、qおよびrはそれぞれ1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。]
【0136】
上記式(16)乃至(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0138】
また、一般式(II)中、Ar
5は、kが0のときはAr
1乃至Ar
4の説明で例示された上記(1)乃至(7)のアリール基であり、kが1のときはかかる上記(1)乃至(7)のアリール基から1つの水素原子を除いたアリーレン基であることが望ましい。
【0139】
フッ素樹脂粒子について説明する。
フッ素樹脂粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を選択するのが望ましいが、さらに望ましくは4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂であり、特に望ましくは4フッ化エチレン樹脂である。
【0140】
フッ素樹脂粒子の平均一次粒径は0.05μm以上1μm以下が望ましく、更には0.1μm以上0.5μm以下が望ましい。フッ素樹脂粒子の平均一次粒径が0.05μm未満の場合には、フッ素樹脂粒子を添加する効果が得難く、フッ素樹脂粒子の平均一次粒径が1μmを超えると、画像に影響が現れやすくなるため望ましくない。
なお、フッ素樹脂粒子の平均一次粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所製)を用いて、フッ素樹脂粒子が分散された分散液と同じ溶剤に希釈した測定液を屈折率1.35で測定した値をいう。
【0141】
フッ素樹脂粒子の含有量(保護層の固形分全量に対する含有量)は、例えば、1質量%以上30質量%以下が望ましく、2質量%以上20質量%以下がさらに望ましい。フッ素樹脂粒子の含有量は、多くすれば、外添剤を摩擦帯電させる効果が向上するものの、層内部で光散乱が発生し易くなり、線・文字の再現性が悪化すると共に、粒状性も悪化し易くなるため、上記範囲であることがよい。
【0142】
フッ素樹脂粒子は、その分散性を高める目的で、フッ素系分散剤を併用することがよい。フッ素系分散剤として好適には、例えば、フッ化アルキル基含有共重合体が挙げられる。
フッ化アルキル基含有共重合体としては、特に限定されるものではないが、下記構造式(1)および構造式(2)で表される繰り返し単位を含むフッ素系グラフトポリマーであることが望ましく、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、等からなるマクロモノマーおよびパーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレートを用いて例えばグラフト重合により合成される樹脂であることがより望ましい。ここで、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを示す。
【0144】
〔構造式(1)および構造式(2)において、l、mおよびnは1以上の正数を、p、q、rおよびsは0または1以上の正数を、tは1以上7以下の正数を、R
1、R
2、R
3およびR
4は水素原子またはアルキル基を、Xはアルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、−S−、−O−、−NH−または単結合を、Yはアルキレン鎖、ハロゲン置換アルキレン鎖、−(C
ZH
2z-1(OH))−または単結合を、zは1以上の正数を、Qは−O−又は−NH−を表す。〕
【0145】
フッ化アルキル基含有共重合体の重量平均分子量は、10000以上100000以下が望ましく、さらに望ましくは30000以上100000以下である。
【0146】
フッ化アルキル基含有共重合体において、構造式(1)と構造式(2)との含有比即ちl:mは、1:9乃至9:1が望ましく、3:7乃至7:3がさらに望ましい。
【0147】
構造式(1)および構造式(2)において、R
1、R
2、R
3およびR
4で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。R
1、R
2、R
3およびR
4としては、水素原子、メチル基が望ましく、これらの中でもメチル基がさらに望ましい。
フッ化アルキル基含有共重合体は、構造式(3)で表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。構造式(3)の含有量は、構造式(1)および構造式(2)の含有量の合計即ちl+mとの比で、l+m:zとして10:0乃至7:3が望ましく、9:1乃至7:3がさらに望ましい
【0149】
〔構造式(3)において、R
5およびR
6は水素原子またはアルキル基を、zは1以上の正数を表す。〕
【0150】
なお、R
5、R
6としては、水素原子、メチル基、エチル基が望ましく、これらの中でもメチル基がさらに望ましい。
【0151】
フッ化アルキル基含有共重合体の含有量は、フッ素樹脂粒子の質量に対して1質量%以上10質量%以下であることが望ましい。
【0152】
その他添加物について説明する。
保護層には、界面活性剤、酸化防止剤、硬化触媒、その他添加物を含んでいてもよい。
【0153】
保護層の膜厚は、望ましくは1μm以上25μm以下、より望ましくは2μm以上10μm以下の範囲に設定される。
【0154】
なお、電子写真感光体10として、最表面層を構成する保護層として、フッ素樹脂粒子を含む硬化膜で構成された保護層を適用した形態を説明したが、これに限られず、保護層を有さず、例えば、電荷輸送層、単層型感光層が最表面層を構成する場合、これらの層をフッ素樹脂粒子を含む硬化膜から構成させる形態であってもよい。
【0155】
−帯電装置−
帯電装置20としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。また、帯電装置20としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。帯電装置20としては、接触型帯電器がよい。
なお、本実施形態では、直流に交流を重畳した電圧を印加する方式の帯電器を採用しても、放電生成物が生じ易い方式であるが、このような方式を採用しても、電子写真感光体10に放電生成物の付着・堆積が抑制され、画像の白抜けが抑制される。
【0156】
−露光装置−
露光装置30としては、例えば、電子写真感光体10表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体10の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザーの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザーや青色レーザーとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザーも利用してもよい。また、露光装置30としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザー光源も有効である。
【0157】
−転写装置−
一次転写装置51、及び二次転写装置52としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0158】
−ドラム清掃装置−
ドラム清掃装置60は、筐体61と、筐体61から突出するように配設されるクリーニングブレード62と、を含んで構成されている。
なお、クリーニングブレード62は、筐体61の端部で支持された形態であってもよし、別途、支持部材(ホルダー)により支持される形態であってもよいが、この実施の形態では、筐体61の端部で支持された形態を示している。
【0159】
クリーニングブレード62について説明する。
クリーニングブレード62は、電子写真感光体10の回転軸に沿った方向に延びた板状のものであって、電子写真感光体10の回転方向(矢印A)の上流側に、先端部が圧力を掛けつつ接触されるように設けられている。
クリーニングブレード62を構成する材料としては、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、プロロピレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。これらの中で、ウレタンゴムがよい。
ウレタンゴム(ポリウレタン)は、例えば、通常ポリウレタンの形成に用いられるものであれば特に限定されないが、例えばポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトンなどのポリエステルポリオールなどのポリオールとジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートとからなるウレタンプレポリマー及びたとえば1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコールやこれらの混合物などの架橋剤を原料とするものよい。
【0160】
次に、この実施の形態に係る画像形成装置1の画像プロセス(画像形成方法)について説明する。
【0161】
この実施の形態に係る画像形成装置1では、
図1に示されるように、まず、電子写真感光体10が矢印Aで示される方向に沿って回転し、帯電装置20が電子写真感光体10の表面を所要の極性(実施の形態では負極性)及び電位に帯電させる。続いて、露光装置30が、帯電後の電子写真感光体10の表面に対し、画像形成装置1に入力される画像の情報(信号)に基づいて発光される光LBを照射し、その表面に所要の電位差で構成される静電潜像を形成する。
【0162】
続いて、現像装置40が電子写真感光体10の表面に形成された静電潜像に対し、現像ロール42の表面に保持された現像剤の磁気ブラシを接触させて現像を行う。この現像により、電子写真感光体10に形成された静電潜像は、トナーで現像されたトナー像として顕像化される。
【0163】
続いて、電子写真感光体10上に形成されたトナー像が一次転写位置まで搬送されると、一次転写装置51が、そのトナー像を中間転写装置50の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト52に対して一次転写させる。
【0164】
続いて、中間転写装置50では、中間転写ベルト52の回転により一次転写されたトナー像を保持して二次転写位置まで搬送する。一方、給紙装置70では、電子写真感光体10表面の作像動作に合わせて所要の記録用紙Pを給紙搬送路に送り出す。給紙搬送路では、レジストロールとしての図示しない用紙搬送ロール対が記録用紙Pを転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。
【0165】
二次転写位置においては、二次転写装置57が、中間転写ベルト52上のトナー像を記録用紙Pに二次転写させる。また、二次転写が終了した中間転写装置50では、ベルト清掃装置58が、二次転写後の中間転写ベルト52の表面に残留したトナー等の付着物を取り除いて清掃する。
【0166】
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト52と二次転写装置57から剥離された後に搬送装置83により定着装置80まで搬送される。定着装置80では、回転する加熱回転体81と加圧回転体81との間の接触部に二次転写後の記録用紙Pを導入して通過させることにより、必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を用紙Pに定着させる。最後に、定着が終了した後の記録用紙Pは、その片面への画像の形成を行うだけの画像形成動作のときは、用紙排出ロール対59により、例えば画像形成装置1の外部に設置される図示しない排出収容部にむけて排出される。
【0167】
以上の動作により、画像が形成された記録用紙Pが出力される。
【0168】
ここで、トナー像が中間転写体50に転写された後、電子写真感光体10は、転写後、ドラム清掃装置60のクリーニングブレード62により、表面に残ったトナーや放電生成物が除去される。そして、ドラム清掃装置60において、転写残のトナーや放電生成物が除去された電子写真感光体10は、帯電装置20により、再び帯電せられ、露光装置30において露光されて潜像が形成される。
【0169】
また、この実施の形態に係る画像形成装置1は、例えば、
図1に示されるように、筐体11内に、電子写真感光体10、帯電装置20、現像装置40、及びドラム清掃装置60を一体に収容させたプロセスカートリッジ1aを備えた形態であってもよい。このプロセスカートリッジ1aは、複数の部材を一体的に収容し、画像形成装置1に脱着させるものである。なお、
図1に示す画像形成装置101では、現像装置40には、補給用現像剤収納容器を設けない形態が示されている。
プロセスカートリッジ1aの構成は、これに限られず、例えば、少なくとも、電子写真感光体10と現像装置40とドラム清掃装置60を備えていればよく、その他、例えば、帯電装置20、露光装置30、及び一次転写装置51から選択される少なくとも一つを備えていてもよい。
【0170】
また、この実施の形態に係る画像形成装置1は、上記構成に限られず、例えば、電子写真感光体10の周囲であって、一次転写装置51よりも電子写真感光体10の回転方向下流側でドラム清掃装置60よりも電子写真感光体10の回転方向上流側に、残留したトナーの極性を揃え、クリーニングブラシ等で除去しやすくするための第1除電装置を設けた形態であってもよいし、ドラム清掃装置60よりも電子写真感光体10の回転方向下流側で帯電装置20よりも電子写真感光体10の回転方向上流側に、電子写真感光体10の表面を除電する第2除電装置を設けた形態であってもよい。
【0171】
また、この実施の形態に係る画像形成装置1は、上記構成に限れず、周知の構成、例えば、電子写真感光体10に形成したトナー像を直接、記録紙Pに転写する方式を採用してもよいし、タンデム方式の画像形成装置を採用してもよい。
【0172】
実施の形態2
図2はこの発明の実施の形態2に係る画像形成装置の要部を示すものである。
【0173】
この画像形成装置の現像装置40は、現像性を更に向上させるため、電子写真感光体10との対向部において、電子写真感光体10の表面と逆方向に移動する第1の現像剤保持体としての第1の現像ロール421と、第1の現像ロール421よりも電子写真感光体10の移動方向に沿った下流側に配置され、電子写真感光体10の表面と同方向に移動する第2の現像剤保持体としての第2の現像ロール422とを備えている。
【0174】
この実施の形態2では、
図2に示されるように、第2の現像ロール422の表面に所要の間隙を介して対向するように層厚規制部材46が配置されている。第2の現像ロール422の表面に層厚が規制されて供給された現像剤は、第1の現像ロール421と第2の現像ロール422の対向位置において各現像ロールに分割され、第1の現像ロール421及び第2の現像ロール422の回転に伴って現像領域へと搬送される。
【0175】
そして、現像装置40では、電子写真感光体10の表面への外添剤の付着を抑制するため、第1の現像ロール421の現像条件を第2の現像ロール422の現像条件よりも低下させるように構成されている。
【0176】
現像領域における現像剤の接触状態を示すパラメータとしては、上述したように、電子写真感光体10と現像ロール42との最近接距離と、現像領域における現像ロール43上の単位面積あたりの現像剤量とが挙げられる。
【0177】
第1の現像ロール421では、MOS/DRSの値が基準となる値と比較して相対的に小さくなるように設定されているのに対して、第2の現像ロール422では、MOS/DRSの値が基準となる値と比較して相対的に大きくなるように設定されている。
【0178】
このように、第1の現像ロール421の現像条件を第2の現像ロール422の現像条件よりも低下させることにより、電子写真感光体10の表面への外添剤の付着を抑制しつつ、現像性を向上させることが可能となっている。
【0179】
なお、MOS/DRSの値を変更する代わりに、第1の現像ロール421の回転数を基準となる値と比較して相対的に減少させるとともに、第2の現像ロール422の回転数を基準となる値と比較して相対的に増加させるように構成しても良い。
【実施例】
【0180】
以下に実施例を挙げてこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例において「部」は質量部を意味する。
【0181】
[実施例1]
(電子写真感光体1の作製)
−下引層の形成−
酸化亜鉛:(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m
2/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学社製)1.3質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤表面処理酸化亜鉛を得た。
【0182】
表面処理を施した酸化亜鉛60質量部と、アリザリン0.6質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5質量部とブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)15質量部をメチルエチルケトン85質量部に溶解した溶液38質量部とメチルエチルケトン:25質量部とを混合し、1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
【0183】
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製):40質量部を添加し、下引層用塗布液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ19μmの下引層を得た。
【0184】
−電荷発生層の作製−
電荷発生物質としてのCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、結着樹脂としての塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニカー社製)10質量部、n−酢酸ブチル200質量部からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn−酢酸ブチル175質量部、メチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層用塗布液を得た。この電荷発生層用塗布液を下引層上に浸漬塗布し、常温(25℃)で乾燥して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0185】
−電荷輸送層の作製−
N,N'−ジフェニル−N,N'−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1']ビフェニル−4,4'−ジアミン45質量部およびビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万)55質量部をクロルベンゼン800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層用塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に塗布し、130℃、45分の乾燥を行って膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0186】
−保護層の作製−
4フッ化エチレン樹脂粒子としてルブロンL−2(ダイキン工業製)5質量部、および下記構造式(4)で表される繰り返し単位を含むフッ化アルキル基含有共重合体(重量平均分子量50,000、l:m=1:1、s=1、n=60)0.25質量部を、シクロペンタノン(環状脂肪族ケトン化合物)17質量部に十分に攪拌混合して、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を作製した。
【0187】
【化8】
【0188】
次に、下記式(AM−1)で示されるメラミン化合物5質量部、電荷輸送材料として下記(I−1)で示される化合物95質量部、をシクロペンタノン220質量部に加えて、十分に溶解混合した後に、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を加えて、攪拌混合した後、微細な流路をもつ貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製 YSNM−1500AR)を用いて、700kgf/cm
2まで昇圧しての分散処理を20回繰返した後、触媒としてNACURE5225(キングインダストリー社製)0.2質量部を加えて保護層形成用塗布液を調製した。この塗布液を電荷輸送層の上に突き上げ塗布法により塗布し、150℃で1時間加熱処理して硬化させ、膜厚4μmの保護層を形成して感光体1を作製した。
【0189】
【化9】
【0190】
(トナー1の作製)
−ポリエステル樹脂分散液の調製−
・テレフタル酸 30mol%
・フマル酸 70mol%
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 20mol%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 80mol%
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記成分を仕込み、1時間を要して190℃まで温度を上昇させ、反応系内が攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイド1.2質量部を投入した。
さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、酸価が12.0mg/KOH、重量平均分子量9700である非晶質ポリエステル樹脂を得た。
【0191】
次いで、これを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。
別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37質量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記非晶質ポリエステル樹脂1溶融体と同時にキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に移送した。
回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm
2の条件でキャビトロンを運転し、平均粒径0.16μm、固形分量30質量部のポリエステル樹脂からなる樹脂分散液を得た。
【0192】
−着色剤分散液の調製−
・シアン顔料(銅フタロシアニンB15:3:大日精化社製) 45質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬社製) 5質量部
・イオン交換水 200質量部
上記成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径168nm、固形分量22.0質量部の着色剤分散液を得た。
【0193】
−離型剤分散液の調製−
・パラフィンワックス HNP9(融点75℃:日本精鑞社製) 45質量部
・カチオン性界面活性剤 ネオゲンRK(第一工業製薬社製) 5質量部
・イオン交換水 200質量部
上記成分を95℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、中心径200nm、固形分量20.0質量部の離型剤分散液を得た。
【0194】
−トナー粒子の作製−
・ポリエステル樹脂分散液 278.9質量部
・着色剤分散液 27.3質量部
・離型剤分散液 35質量部
【0195】
上記成分を丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で混合・分散した。次いで、この溶液にポリ塩化アルミニウム0.20質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で60分保持した後、ここに樹脂分散液を70.0質量部追加した。
その後、0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを9.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら96℃まで加熱し、5時間保持した。
反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固
液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水1Lに再分散し、15分300rpm
で攪拌・洗浄した。
これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.5、電気伝導度7.0μS/cmtとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続した。
【0196】
このときの粒子径をコールターマルチサイザーにて測定したところ体積平均粒径D50は4.8μm、粒度分布係数GSDは1.14であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めたトナー粒子の形状係数は0.970であることが観察された。
【0197】
<外添剤1の作成>
(造粒工程)
−アルカリ触媒溶液準備工程〔アルカリ触媒溶液(1)の調製〕−
金属製撹拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び、温度計を有した容積3Lのガラス製反応容器にメタノール157.9部、10%アンモニア水25.89部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液(1)を得た。
−粒子生成工程〔シリカ粒子懸濁液の調製〕−
次に、アルカリ触媒溶液(1)の温度を47℃に調整し、アルカリ触媒溶液(1)を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液(1)を撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)28.73部と、触媒(NH3)濃度が3.8%のアンモニア水とを、下記供給量で、同時に滴下を行いシリカ粒子の懸濁液(シリカ粒子懸濁液(1))を得た。
ここで、テトラメトキシシラン(TMOS)の供給量は、5.27部/min、3.8%アンモニア水の供給量は、3.18部/minとした。
得られたシリカ粒子懸濁液(1)の粒子を、既述の粒度測定装置で測定したところ体積平均粒子径(D50v)は118nmであった。
【0198】
(疎水化処理工程)
得られた親水性シリカ粒子の懸濁液(親水性シリカ粒子分散液)を、スプレードライにより乾燥して、溶媒を除去し、親水性シリカ粒子の粉末を得た。得られた親水性シリカ粒子の粉末100部をミキサーに入れ、窒素雰囲気下で200℃に加熱しながら200rpmで撹拌し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を親水性シリカ粒子の粉末に対し、30部滴下し2時間反応させた。その後、冷却させ疎水処理された疎水性シリカ粒子の粉末を得た。得られた疎水性シリカ粒子(1)を、粒径100μmの樹脂粒子に添加し、疎水性シリカ粒子(1)の一次粒子100個についてSEM写真撮影を行った。次に、得られたSEM写真に対して、画像解析を行った結果、疎水性シリカ粒子(1)の一次粒子は、平均円形度が0.78であった。
【0199】
<外添剤2の作成>
(造粒工程)
−アルカリ触媒溶液準備工程〔アルカリ触媒溶液(2)の調製〕−
金属製撹拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び、温度計を有した容積3Lのガラス製反応容器にメタノール157.9部、10%アンモニア水25.1部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液(2)を得た。
【0200】
−粒子生成工程〔シリカ粒子懸濁液の調製〕−
次に、アルカリ触媒溶液(2)の温度を58℃に調整し、アルカリ触媒溶液(2)を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液(2)を撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)28.73部と、触媒(NH3)濃度が3.8%のアンモニア水とを、下記供給量で、同時に滴下を行いシリカ粒子の懸濁液(シリカ粒子懸濁液(2))を得た。
ここで、テトラメトキシシラン(TMOS)の供給量は、6.4部/min、3.8%アンモニア水の供給量は、3.18部/minとした。
得られたシリカ粒子懸濁液(2)の粒子を、既述の粒度測定装置で測定したところ体積平均粒子径(D50v)は86nmであった。
【0201】
(疎水化処理工程)
得られた親水性シリカ粒子の懸濁液(親水性シリカ粒子分散液)を、スプレードライにより乾燥して、溶媒を除去し、親水性シリカ粒子の粉末を得た。得られた親水性シリカ粒子の粉末100部をミキサーに入れ、窒素雰囲気下で200℃に加熱しながら200rpmで撹拌し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を親水性シリカ粒子の粉末に対し、30部滴下し2時間反応させた。その後、冷却させ疎水処理された疎水性シリカ粒子の粉末を得た。
得られた疎水性シリカ粒子(2)を、粒径100μmの樹脂粒子に添加し、疎水性シリカ粒子(2)の一次粒子100個についてSEM写真撮影を行った。次に、得られたSEM写真に対して、画像解析を行った結果、疎水性シリカ粒子(1)の一次粒子は、平均円形度が0.75であった。
【0202】
<外添剤3の作製>
(造粒工程)
−アルカリ触媒溶液準備工程〔アルカリ触媒溶液(3)の調製〕−
金属製撹拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び、温度計を有した容積3Lのガラス製反応容器にメタノール157.9部、10%アンモニア水25.89部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液(1)を得た。
【0203】
−粒子生成工程〔シリカ粒子懸濁液の調製〕−
次に、アルカリ触媒溶液(1)の温度を45℃に調整し、アルカリ触媒溶液(1)を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液(1)を撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)28.73部と、触媒(NH3)濃度が3.8%のアンモニア水とを、下記供給量で、同時に滴下を行いシリカ粒子の懸濁液(シリカ粒子懸濁液(1))を得た。
ここで、テトラメトキシシラン(TMOS)の供給量は、3.0部/min、3.8%アンモニア水の供給量は、3.18部/minとした。
得られたシリカ粒子懸濁液(1)の粒子を、既述の粒度測定装置で測定したところ体積平均粒子径(D50v)は122nmであった。
【0204】
(疎水化処理工程)
得られた親水性シリカ粒子の懸濁液(親水性シリカ粒子分散液)を、スプレードライにより乾燥して、溶媒を除去し、親水性シリカ粒子の粉末を得た。得られた親水性シリカ粒子の粉末100部をミキサーに入れ、窒素雰囲気下で200℃に加熱しながら200rpmで撹拌し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を親水性シリカ粒子の粉末に対し、30部滴下し2時間反応させた。その後、冷却させ疎水処理された疎水性シリカ粒子の粉末を得た。
得られた疎水性シリカ粒子(1)を、粒径100μmの樹脂粒子に添加し、疎水性シリカ粒子(1)の一次粒子100個についてSEM写真撮影を行った。次に、得られたSEM写真に対して、画像解析を行った結果、疎水性シリカ粒子(1)の一次粒子は、平均円形度が0.83であった。
【0205】
−トナーの作製−
トナー粒子100質量部に、外添剤としてシリカ粒子3質量部及びチタニア粒子(P25(日本アエロジル社製)):1質量部を加え、5リットルヘンシェルミキサーを用い、周速30m/sで15分間ブレンドを行った後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去し、トナー1を作製した。
【0206】
(キャリア1の作製)
・綜研化学社製「ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂(Mw72,000、Mn36,000): 3質量部
・和光純薬工業株式会社 トルエン(特級): 30質量部
・芯材[パウダーテック社製磁性粉「Mn−Mgフェライトコア(平均粒径30μm、飽和磁化58A/m
2/kg(1kOe時)、真比重4.6g/cm
3)]: 100質量部 まず、上記組成のうち、PMMA樹脂をトルエンに溶解させPMMA樹脂のトルエン溶液を作製する。次に、芯材であるフェライトコア(磁性粉)を80℃に加熱したニーダーに投入し、攪拌させる。フェライトコアが50℃になった時点で、PMMAのトルエン溶液を投入し、密閉し10分攪拌させる。
次に、攪拌したまま、真空にし、トルエンを蒸発させる。30分後真空を解除し、取り出す。そして、放置冷却させ30℃になった後、45μmの目開きの篩を用いて篩分を実施し、キャリア1を得た。
【0207】
(現像剤の作製)
上記トナー1の4部とキャリア96部とをV−ブレンダーを用いて40rpmで20分間攪拌し、250μmの目開きの篩を用いて篩分を実施し、現像剤を作成した。
【0208】
<評価>
得られた電子写真感光体及び現像剤について次のような評価を行った。
【0209】
得られた現像剤を画像形成装置ApeosportC7780(富士ゼロックス社製)の改造機の現像装置40に収納し、以下の現像条件において、画像密度5%の画像を連続して1000枚出力した後、電子写真感光体10上の現像像によるトナー現像量(g/m
2)、電子写真感光体10から中間転写ベルト52上への転写トナー像による転写効率(%)、クリーニング後の電子写真感光体10表面のシリカ被覆率を測定した。
シリカ被覆率は、画像密度5%の画像を連続して1000枚出力した後の電子写真感光体10表面のクリーニング部から帯電装置20までの区間における画像部の領域をレーザー顕微鏡(キーエンス社製 VK9500)で撮影し、シリカが付着した部分は黒くなる為、画像解析により2値化解析し、外添剤の被覆率を算出した。更に説明すると、白黒超探査モードでレーザー顕微鏡の撮影画像(×3000)を画像処理ソフト"Image J"で二値化し、シリカ付着箇所の面積率を算出することでシリカ被覆率を求めた。
【0210】
−現像条件−
・現像ロールと電子写真感光体との対向間距離(DRS)中心:300μm (要因比較水準250μm〜300μm)
・現像ロール上の現像剤量(MOS)中心:300g/m
2(要因比較水準:250g/m
2〜420g/m
2)
・現像ロールの回転速度(プロセススピード)300mm/sec
・現像ロールの回転方向(MRS)
:感光体と同方向(with方向)で周速比1.7〜2.3
:電子写真感光体と逆方向(against方向)で周速比1.2
・現像ロール表面形状・粗さ:溝スリーブ0.8mmピッチ
・現像ロールの径Φ18mm
・現像ロール上の現像極磁力125mmT
・現像ロールのマグネットセットアングル(MSA):上流側3°
・現像ロールに印加する電圧の直流成分電圧550V
・現像ロールに印加する電圧の直流成分電圧と画像の背景部に対応する感光体表面電位との差(Vcln)125V
・現像ローラ印加する直流成分電圧(DC)に重畳する交流成分電圧(現像ACバイアス)波形:sine波(矩形波)
・現像ACバイアスの振幅(Vp-p:peak to peak電圧)1.75kV
・印加電圧の交流成分電圧が占める割合(現像ACバイアスDuty)50%
・現像ACバイアスの周波数10kHz
【0211】
<評価基準>
(現像性)
○:トナー現像量4.0(g/m
2)以上
△:トナー現像量3.5(g/m
2)以上4.0(g/m
2)未満
×:トナー現像量3.5(g/m
2)未満
【0212】
(転写性)
○:95%を超える
△:90%以上95%以下
×:90%未満
【0213】
(感光体汚染)
○:10%未満
△:10%以上20%以下
×:20%を超える
【0214】
(総合判定結果)
○:問題無し
△:使用可能
×:使用不可
【0215】
図3及び
図4は、実施例及び比較例の条件及び結果をそれぞれ示す図表である。
【0216】
[実施例2]
実施例1における現像装置40のMOSの値を250(g/m
2)に変更し、MOS/DRSの値を0.83とした以外は、実施例1と同様にして評価を行った。その結果は、
図3及び
図4に示されるように、現像性が3.8(g/m
2)と実施例1に比較して低下し、感光体汚染が17%と悪化する傾向にあった。総合判定結果は、使用可能である。
【0217】
[実施例3]
実施例1における現像装置のMOSの値を350(g/m
2)に変更してMOS/DRSの比を1.17に設定した以外は、実施例1と同様の評価を行った。現像性が4.3(g/cm
2)と実施例1に比較してと増加し、感光体汚染も7%とわずかではあるが改善する傾向にあった。
【0218】
[実施例4]
実施例1における現像装置40のMOSの値を420(g/m
2)に変更してMOS/DRSの比を1.67と高い値に設定した以外は、実施例1と同様の評価を行った。現像性が4.6(g/m
2)と実施例1に比較して大幅に増加し、感光体汚染も6%と改善される傾向にあった。ただし、実施例4では、現像装置40のMOSの値が420(g/m
2)と多いため、現像ロールを駆動する駆動トルクの増加が見られた。
【0219】
[実施例5]
実施例1において、現像装置40の現像ロール42と電子写真感光体10との周速比を2.3に変更した以外は、実施例1と同様の評価を行った。現像性が4.5(g/m
2)と実施例1に比較して増加し、感光体汚染が5%とかなり改善する傾向が見られた。これは、現像装置40の現像ロール42と電子写真感光体10との周速比を2.3と大きな値に設定することにより、電子写真感光体10の表面に付着した外添剤の摩擦帯電が促進され、感光体汚染が改善されたものと考えられる。
【0220】
[実施例6]
実施例1において、現像装置の現像ロール42を電子写真感光体10と同方向に回転させ、対向部における現像ロール42と電子写真感光体10の移動方向を逆方向に設定するとともに周速比を1.2に変更した以外は、実施例1と同様の評価を行った。現像性が4.2(g/m
2)と実施例1に比較して僅かに増加し、感光体汚染が5%とかなり改善する傾向が見られた。
【0221】
[実施例7]
実施例1において、現像剤の外添剤として粒子径86nm、平均円形度0.75のものを用いた以外は、実施例1と同様の評価を行った。現像性が4.0(g/m
2)と実施例1に比較して僅かであるが低下し、転写性も92%に低下する傾向が見られたが、感光体汚染は6%とかなり改善する傾向が見られた。これは、外添剤として粒子径が86nmと相対的に小さいものを用いたため、転写性が低下したものと考えられる。
【0222】
[実施例8]
実施例1において、現像剤の外添剤として粒子径122nm、平均円形度0.83のものを用いた以外は、実施例1と同様の評価を行った。現像性が実施例1に比較して4.0(g/cm
2)と僅かであるが低下したが、転写性は実施例1に比較して98%と向上した。これは、外添剤として粒子径122nmと相対的に粒子径が大きいものを用いたため、転写性が向上したものと考えられる。ただし、感光体汚染は16%とかなり悪化する傾向が見られた。
【0223】
[実施例9]
<外添剤4の作製>
(造粒工程)
−アルカリ触媒溶液準備工程〔アルカリ触媒溶液の調製〕−
金属製撹拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び、温度計を有した容積3Lのガラス製反応容器にメタノール300重量部、10%アンモニア水51.9重量部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液を得た。
【0224】
−粒子生成工程〔シリカ粒子懸濁液の調製〕−
次に、アルカリ触媒溶液の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液を撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)450重量部と、触媒(NH
3)濃度が4.44%のアンモニア水270重量とを、下記供給量で、同時に滴下を行いシリカ粒子の懸濁液(シリカ粒子懸濁液)を得た。
ここで、テトラメトキシシラン(TMOS)の供給量は、6.37重量部/min、4.44%アンモニア水の供給量は、3.82重量部/minとした。
得られたシリカ粒子懸濁液の粒子を、既述の粒度測定装置で測定したところ体積平均粒子径(D50v)は250nmであった。
【0225】
(乾燥工程)
得られた親水性シリカ粒子の懸濁液(親水性シリカ粒子分散液)を、スプレードライにより乾燥して、溶媒を除去し、親水性シリカ粒子の粉末を得た。
(疎水化処理工程)
得られた親水性シリカ粒子の粉末100部をミキサーに入れ、窒素雰囲気下で200℃に加熱しながら200rpmで撹拌し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を親水性シリカ粒子の粉末に対し、30重量部滴下し2時間反応させた。その後、冷却させ疎水処理された疎水性シリカ粒子の粉末(S1)を得た。
得られた疎水性シリカ粒子(S1)を、トナー粒子に添加し、疎水性シリカ粒子(S1)の一次粒子100個についてSEM写真撮影を行った。次に、得られたSEM写真に対して、画像解析を行った結果、疎水性シリカ粒子(S1)の一次粒子は、平均円形度が0.78であった。なお、それぞれの粒径、平均円形度は
図3のようであった。
上記の如く製造したシリカ粒子を添加したトナーを用いた以外、実施例1と同様の評価を行った。現像性は実施例1よりも僅かに高く4.3(g/cm
2)であり、転写性も98%と良好であったが、感光体汚染が16%と増加し、判定結果は使用可であった。
【0226】
[実施例10]
<外添剤5の作製>
(造粒工程)
−アルカリ触媒溶液準備工程〔アルカリ触媒溶液の調製〕−
金属製撹拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び、温度計を有した容積3Lのガラス製反応容器にメタノール300重量部、10%アンモニア水54.3重量部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液を得た。
【0227】
−粒子生成工程〔シリカ粒子懸濁液の調製〕−
次に、アルカリ触媒溶液の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液を撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)450重量部と、触媒(NH
3)濃度が4.44%のアンモニア水270重量とを、下記供給量で、同時に滴下を行いシリカ粒子の懸濁液(シリカ粒子懸濁液)を得た。
ここで、テトラメトキシシラン(TMOS)の供給量は、6.37重量部/min、4.44%アンモニア水の供給量は、3.82重量部/minとした。
得られたシリカ粒子懸濁液の粒子を、既述の粒度測定装置で測定したところ体積平均粒子径(D50v)は350nmであった。
【0228】
(乾燥工程)
次に、得られた親水性シリカ粒子の懸濁液(親水性シリカ粒子分散液)を、スプレードライにより乾燥して、溶媒を除去し、親水性シリカ粒子の粉末を得た。
(疎水化処理工程)
得られた親水性シリカ粒子の粉末100部をミキサーに入れ、窒素雰囲気下で200℃に加熱しながら200rpmで撹拌し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を親水性シリカ粒子の粉末に対し、30重量部滴下し2時間反応させた。その後、冷却させ疎水処理された疎水性シリカ粒子の粉末(S2)を得た。
得られた疎水性シリカ粒子(S2)を、トナー粒子に添加し、疎水性シリカ粒子(S2)の一次粒子100個についてSEM写真撮影を行った。次に、得られたSEM写真に対して、画像解析を行った結果、疎水性シリカ粒子(S2)の一次粒子は、平均円形度が0.78であった。
上記の如く製造したシリカ粒子を添加したトナーを用いた以外、実施例1と同様の評価を行った。現像性は実施例1よりも僅かに高く4.3(g/cm
2)であり、転写性も98%と良好であったが、感光体汚染が18%と増加し、判定結果は使用可であった。
【0229】
[比較例1]
比較例1は、電子写真感光体10として最表面層にフッ素樹脂粒子を添加しないものを用いた以外、実施例1と同様の評価を行った。現像性は実施例1と同じ4.1(g/cm
2)であったが、転写性が92%と低下し、感光体汚染が32%と大幅に悪化する結果が得られ、判定結果は使用不可であった。
これは、電子写真感光体10として最表面層にフッ素樹脂粒子を添加しないものを用いたため、電子写真感光体10の表面に付着した外添剤が除去できず、感光体汚染が大幅に悪化したものと考えられる。
【0230】
[比較例2]
比較例2は、次のようにして製造した外添剤を用いた。
(造粒工程)
−アルカリ触媒溶液準備工程(アルカリ触媒溶液(4)の調整)−
金属製攪拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び、温度計を有した容積3Lのガラス製反応容器にメタノール300質量部、10%アンモニア水47.4重量部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液(4)を得た。
−粒子生成工程−〔シリカ粒子懸濁液の調整〕
次に、アルカリ触媒溶液(4)の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液(4)を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液(4)を攪拌しながら、テトラメトキリシラン(TMOS)450質量部と、触媒(NH3)濃度が4.44%のアンモニア水270質量部とを、下記供給量で、同時に滴下を行い、シリカ粒子の懸濁液(シリカ粒子懸濁液(4))を得た。
ここで、テトラメモキシシランの供給量は、7.08質量部/min、4.44%のアンモニア水の供給量は、4.25質量部/minとした。
得られたシリカ粒子懸濁液(4)の粒子を、既述の粒度測定装置で測定したところ体積平均粒子径(D50v)は58nmであった。
【0231】
(乾燥工程)
次に、得られた親水性シリカ粒子の懸濁液(親水性シリカ粒子分散液)を、スプレードライにより乾燥して、溶媒を除去し、親水性シリカ粒子の粉末を得た。
【0232】
(疎水化処理工程)
得られた親水性シリカ粒子の粉末100質量部をミキサーに入れ、窒素雰囲気下で200℃に加熱しながら200rpmで攪拌し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を親水性シリカ粒子の粉末に対し、30質量部滴下し2時間反応させた。その後、冷却させ疎水処理された疎水性シリカ粒子の粉末を得た。
得られた疎水性シリカ粒子(4)を、トナー粒子に添加し、疎水性シリカ粒子の一次粒子100個についてSEM写真撮影を行った。次に、得られたSEM写真に対して、画像解析を行った結果、疎水性シリカ粒子の一次粒子は、平均円形度が0.75であった。
【0233】
比較例2は、粒子径が58nmの外添剤を用いた以外、実施例1と同様の評価を行った。その結果、帯電がやや高くなり、現像性が3.9(g/cm
2)となり、転写性が83%と大幅に低下した。現像後のトナーを解析した結果、外添剤のトナーへの埋没が多いことが確認された。
【0234】
[比較例3]
比較例3は、次のようにして製造した外添剤を用いた。
−アルカリ触媒溶液準備工程(アルカリ触媒溶液(5)の調整)−
金属攪拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び、温度計を有した容積3Lのガラス製反応容器にメタノール300質量部、10%アンモニア水48.9質量部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液(5)を得た。
−粒子生成工程(シリカ粒子懸濁液の調整)−
次に、アルカリ触媒溶液(5)の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液(5)を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液(5)を攪拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)450質量部と、触媒(NH
3)濃度が4.44%のアンモニア水270質量部とを、下記供給量で、同時に滴下を行い、シリカ粒子の懸濁液(シリカ粒子懸濁液(5))を得た。
ここで、テトラメトキシシランの供給量は、2.12質量部/min、4.44%アンモニア水の供給量は、1.27質量部/minとした。
得られたシリカ粒子懸濁液の粒子を、既述の粒度測定装置で測定したところ体積平均粒子径(D50v)は120nmであった。
【0235】
(乾燥工程)
次に、得られた親水性シリカ粒子の懸濁液(親水性シリカ粒子分散液)を、スプレードライにより乾燥して、溶媒を除去し、親水性シリカ粒子の粉末を得た。
【0236】
(疎水化処理工程)
得られた親水性シリカ粒子(5)の粉末100重量部をミキサーに入れ、窒素雰囲気下で200℃に加熱しながら200rpmで攪拌し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を親水性シリカ粒子の粉末に対し、30質量部滴下し2時間反応させた。その後、冷却させ疎水処理された疎水シリカ粒子の粉末を得た。
得られた疎水性シリカ粒子(5)を、トナー粒子に添加し、疎水性シリカ粒子の一次粒子100個についてSEM写真撮影を行った。次に、得られたSEM写真に対して、画像解析を行った結果、疎水性シリカ粒子の一次粒子は、平均円形度が0.96であった。
【0237】
比較例3は、形状係数が0.96の球状外添剤を用いた以外、実施例1と同様の評価を行った。現像性、転写性に問題は無かったが、感光体上の外添剤被覆率が28%と多く、画像ディフェクトが発生した。
【0238】
[比較例4]
比較例4は、次のようにして製造した外添剤を用いた。
(造粒工程)
−アルカリ触媒溶液準備工程〔アルカリ触媒溶液の調製〕−
金属製撹拌棒、滴下ノズル(テフロン(登録商標)製マイクロチューブポンプ)、及び、温度計を有した容積3Lのガラス製反応容器にメタノール300重量部、10%アンモニア水56.6重量部を入れ、攪拌混合して、アルカリ触媒溶液を得た。
【0239】
−粒子生成工程〔シリカ粒子懸濁液の調製〕−
次に、アルカリ触媒溶液の温度を25℃に調整し、アルカリ触媒溶液を窒素置換した。その後、アルカリ触媒溶液を撹拌しながら、テトラメトキシシラン(TMOS)450重量部と、触媒(NH
3)濃度が4.44%のアンモニア水270重量とを、下記供給量で、同時に滴下を行いシリカ粒子の懸濁液(シリカ粒子懸濁液)を得た。
ここで、テトラメトキシシラン(TMOS)の供給量は、6.37重量部/min、4.44%アンモニア水の供給量は、3.82重量部/minとした。
得られたシリカ粒子懸濁液の粒子を、既述の粒度測定装置で測定したところ体積平均粒子径(D50v)は450nmであった。
【0240】
(乾燥工程)
次に、得られた親水性シリカ粒子の懸濁液(親水性シリカ粒子分散液)を、スプレードライにより乾燥して、溶媒を除去し、親水性シリカ粒子の粉末を得た。
(疎水化処理工程)
得られた親水性シリカ粒子の粉末100部をミキサーに入れ、窒素雰囲気下で200℃に加熱しながら200rpmで撹拌し、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を親水性シリカ粒子の粉末に対し、30重量部滴下し2時間反応させた。その後、冷却させ疎水処理された疎水性シリカ粒子の粉末(S3)を得た。
得られた疎水性シリカ粒子(S3)を、トナー粒子に添加し、疎水性シリカ粒子(S3)の一次粒子100個についてSEM写真撮影を行った。次に、得られたSEM写真に対して、画像解析を行った結果、疎水性シリカ粒子(S3)の一次粒子は、平均円形度が0.78であった。
【0241】
比較例4は、粒子径が450nmの外添剤を用いた以外、実施例1と同様の評価を行った。現像性、転写性に問題は無かったが、感光体上の外添剤被覆率が22%と多く、画像ディフェクトが発生した。
【0242】
上記
図3及び
図4に示されるように、電子写真感光体10の最表面層にフッ素樹脂粒子を分散させ、現像装置40としてMOS/DRSの値が所要の範囲を満たし、トナーの外添剤の体積平均粒径及び平均円形度が所要の範囲を満たすことにより、トナーの転写性を向上するとともに、現像装置40の現像性を向上させた場合であっても、電子写真感光体10の表面へのトナーの外添剤の付着を抑制することができる。