特許第6244889号(P6244889)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6244889-冷菓用スティック 図000002
  • 特許6244889-冷菓用スティック 図000003
  • 特許6244889-冷菓用スティック 図000004
  • 特許6244889-冷菓用スティック 図000005
  • 特許6244889-冷菓用スティック 図000006
  • 特許6244889-冷菓用スティック 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244889
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】冷菓用スティック
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/26 20060101AFI20171204BHJP
   A63H 33/08 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   A23G9/26
   A63H33/08 D
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-263605(P2013-263605)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-116175(P2015-116175A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓治
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕雄
(72)【発明者】
【氏名】工藤 良太郎
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭48−014065(JP,B1)
【文献】 実開昭50−035399(JP,U)
【文献】 特開2002−306080(JP,A)
【文献】 実開昭62−074592(JP,U)
【文献】 特許第3275550(JP,B2)
【文献】 実開昭63−018198(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 9/00−9/52
A63H 33/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物を成形してなる細長い板状の冷菓用スティックであって、
中央部分と、中央部分の両端に形成された先端部分から構成され、
中央部分は、I字型断面を有し、I字型断面の肉厚は、I字型の天地におけるくびれ部分から、中心部に向って連続的に厚くなっており、
先端部分は、厚さが前記中央部分の天地の厚さと等しく、一定であり、幅が中央部分よりも狭く、
中央部分に、幅方向の中心を通る長手方向の中心線に沿って、前記先端部分を挿入することが可能な横長の挿入孔を複数有することを特徴とする冷菓用スティック。
【請求項2】
すべてのコーナーがR形状であることを特徴とする請求項1に記載の冷菓用スティック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイスクリーム、アイスキャンデー等の冷菓に用いるスティックに関する。
【背景技術】
【0002】
アイスクリーム、アイスキャンデー等の冷菓には、手で持って食べられるように、持ち手(スティック)を備えたものがある。スティック付きの製品は、冷菓をどこでも気軽に手で持って食べることができるので、便利であり、広く普及している。
【0003】
これらの用途に使用するスティックとしては、従来から図6に示したような木材製のスティックが用いられていた。この用途に用いられる木材としては、強い樹脂臭がなく、木目が細かくてささくれが出難いことが必要であるため、樺材などの限られた樹種の木材しか使用することが出来なかった。
【0004】
これらの木材には、資源の枯渇の問題があり、さらに木材製のスティックは高級感に欠けるという基本的な問題もあった。また、嘗めると、かすかではあるが、木材の味がするため味覚の点でも問題があった。
【0005】
本出願人の出願になる特許文献1に記載された冷菓用持ち手棒は、プラスチックを成形して作る冷菓用持ち手棒であり、円盤状の台板と、この台板に対して垂直に設けられた棒状部とが一体に成形された本体と、複数個の小孔を有する板状の冷菓保持板とからなる冷菓用持ち手棒である。特許文献1に記載された冷菓用持ち手棒は、上記の従来の問題を解決することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3275550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された冷菓用持ち手棒は、従来の木材製のスティックに比較して高級感や使い勝手の面で優れた物であるが、従来の木材製スティックとは形状があまりにも異なるため、従来のスティックを前提とした冷菓の製造ラインにおいて、直ちにこれを置換することはできなかった。
【0008】
また、別の問題として、構造的に複雑であり、コストがかかるにも拘らず、使用後は特に使い道がなく、廃棄するだけであることも問題であった。
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、従来の木材製スティックと形状的に近似していて、従来の木材製スティックを前提とした冷菓製造ラインにおいて使用することができ、高級感があって、さらに使用後はおもちゃとしても使用することができる冷菓用スティックを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、熱可塑性樹脂組成物を成形してなる細長い板状の冷菓用スティックであって、中央部分と、中央部分の両端に形成された先端部分から構成され、中央部分は、I字型断面を有し、I字型断面の肉厚は、I字型の天地におけるくびれ部分から、中心部に向って連続的に厚くなっており、先
端部分は、厚さが前記中央部分の中心部の厚さと等しく、一定であり、幅が中央部分よりも狭く、中央部分に、幅方向の中心を通る長手方向の中心線に沿って、前記先端部分を挿入することが可能な横長の挿入孔を複数有することを特徴とする冷菓用スティックである。
【0011】
本発明に係る冷菓用スティックは、中心部が厚いI字型断面形状としたことにより、木材と同等の曲げ剛性を得ることができたものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、すべてのコーナーがR形状であることを特徴とする請求項1に記載の冷菓用スティックである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る冷菓用スティックは、外形形状が従来の木材製のスティックと同様であるため、既存の冷菓製造ラインにおいて、従来のスティックと互換性があり、従来品と並列して用いることができる。
【0014】
また、プラスチック成形品の特徴として、自由な外形形状、表面形状が可能であり、従来品と同様に先端が丸みを帯びた形状とすることができるため、口に入れるものとしての安全性の点において、従来品と同様の安全性が期待できる。また、表面に凹凸があるので、手が滑りにくく、持ちやすい。
【0015】
断面形状をI字型とし、中心部に向って厚くなるようにしたので、曲げ強度や剛性において、従来の木材製品と比較して遜色のないものとすることができる。
【0016】
全体の形状を中央部分と先端部分に分け、中央部分に、先端部分が挿入可能な挿入孔を複数設けたので、使用後のスティックを集めて、構造体に組み立てることができる。組み立てに当っては、幅が狭くなっている先端部分だけが挿入可能であるため、挿入位置がきちっと決り、また挿入孔の部分の肉厚が厚くなっているので、ぐらぐらせずに組み立てることができる。
【0017】
また、使用後のスティックが利用できることは、廃品の有効利用に繋がり、また冷菓の販売促進効果も期待できる。
【0018】
請求項2に記載の発明のように、すべてのコーナーをR形状とした場合には、口に入れるものとしての安全性がさらに高まり、使用後におもちゃとして用いる場合にも安心である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係る冷菓用スティックの実施例を示した斜視図である。
図2図2は、図1に示した冷菓用スティックの正面模式図である。
図3図3(1)は、図2のA−A’断面を示した断面模式図である。図3(2)は、図2のB−B’断面を示した拡大断面模式図である。図3(3)は、図2のC−C’断面を示した拡大断面模式図である。
図4図4は、本発明に係る冷菓用スティックの比較例を示した正面模式図である。
図5図5(1)は、図4のD−D’断面を示した断面模式図である。図5(2)は、図4のE−E’断面を示した拡大断面模式図である。図5(3)は、図4のF−F’断面を示した拡大断面模式図である。
図6図6は、従来の木製スティックの例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る冷菓用スティックについて詳細に説明する。本発明に係る冷菓用スティック(1)は、熱可塑性樹脂組成物を成形してなる図1に示したような、細長い板状の冷菓用スティックである。
【0021】
本発明に係る冷菓用スティック(1)は、中央部分(2)と、中央部分(2)の両端に形成された先端部分(3)とから構成されている。中央部分(2)は、図3(3)に示したように、I字型断面を有し、I字型断面の肉厚は、I字型の天地におけるくびれ部分(4)から、中心部(5)に向って連続的に厚くなっており、この例では、中心部の厚さ(10)が、I字型の天地の厚さ(8、9)と等しくなっている。
【0022】
本発明に係る冷菓用スティックは、このようにI字型断面の中心部(5)の厚さを厚くしたことにより、従来の木材と同等の曲げ強さや剛性を得ることが可能となった。
【0023】
先端部分(3)は、厚さが中央部分の天地の厚さ(8、9)と等しく、一定であり、幅が中央部分(2)よりも狭くなっている。
【0024】
中央部分(2)には、幅方向の中心を通る長手方向の中心線(7)に沿って、先端部分(3)を挿入することが可能な横長の挿入孔(6)を複数有する。この例では、3つの挿入孔(6)が中心線上に等間隔に配置されている。
【0025】
挿入孔(6)の寸法は、先端部分(3)がぴったりと挿入できる寸法であることが望ましく、仮に先端部分(3)の厚さが2.0mmであれば、挿入孔(6)の高さ寸法は、2.2mm程度がよい。
【0026】
本発明に係る冷菓用スティックは、I字型断面の中心部(5)の厚さを厚くしたために、挿入孔(6)の深さが深くなり、このため、スティックの先端部分(3)を挿入孔(6)に差込んだ時に、ぐらぐらせずにしっかりと固定されるという利点が生じる。
【0027】
挿入孔(6)は、この中に冷菓が入り込んで凍結することにより、スティックが抜け難くなる効果も有する。
【0028】
先端部分(3)の先端形状については、万一、子供が口に咥えた状態で、転んだりしたような場合であっても、先端がのどに刺さったりしないように、丸みを帯びた形状とするのが良い。この例では、半円形となっているが、例えば角が丸い矩形状でもよい。
【0029】
このような安全上の観点から、冷菓用スティックのすべてのコーナー部分は、R形状にしておくことが望ましい。R形状の半径は、0.2mm以上が好ましく、特に外側の輪郭部分については、0.5mm以上であることが好ましい。
【0030】
本発明に係る冷菓用スティックに用いる熱可塑性樹脂組成物としては、射出成形が可能な熱可塑性樹脂が一般的に使用可能である。例を挙げれば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂などである。
【0031】
これらの樹脂をベースとして、紙粉や木粉を配合した樹脂組成物を使用することもでき
る。
【実施例1】
【0032】
ポリプロピレン樹脂を用いて、射出成形法により、図1図3に示したような形状の冷菓用スティックを作成した。厚さは、2.0mm、中央部の幅13mm、長さ93mmである。I字型断面の中心部の肉厚は、I字型の天地の厚さと等しい2.0mmとした。
【0033】
<比較例1>
実施例1と同じポリプロピレン樹脂を用いて、図4図5に示したように、I字形状の肉厚が一定(1.0mm)のものを作成した。外形寸法は、実施例と同じである。
【0034】
実施例と比較例の冷菓用スティックを用いて、アイスキャンデーを作成したところ、実施例のスティックは、従来の木製品と比較して曲げ強さ、剛性の点で、特に問題はなかったが、比較例のスティックは、曲げ強さ、剛性とも不十分であり、実用に供することができなかった。
【符号の説明】
【0035】
1・・・冷菓用スティック
2・・・中央部分
3・・・先端部分
4・・・くびれ部分
5・・・中心部
6・・・挿入孔
7・・・中心線
8・・・I字型の天の厚さ
9・・・I字型の地の厚さ
10・・・I字型の中心部の厚さ
11・・・従来のスティック
図1
図2
図3
図4
図5
図6