特許第6244895号(P6244895)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6244895所要時間特定システム、所要時間特定方法、及び所要時間特定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244895
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】所要時間特定システム、所要時間特定方法、及び所要時間特定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20171204BHJP
【FI】
   G08G1/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-266582(P2013-266582)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-122021(P2015-122021A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】大竹 崇文
【審査官】 平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−248183(JP,A)
【文献】 特開2010−262473(JP,A)
【文献】 特開2001−241959(JP,A)
【文献】 特開平11−110684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
G01C 21/00 − 21/36、
23/00 − 25/00
G09B 23/00 − 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に進入するための進入道路に対応する進入リンクから、当該交差点から退出するための退出道路に対応する退出リンクへと車両が旅行した場合における、前記進入リンクの所要時間を特定する所要時間特定システムであって、
前記車両の現在位置を取得する現在位置取得手段と、
前記現在位置取得手段にて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、前記進入リンクに進入してから、当該進入リンクを退出するまで、に要した時間である進入道路旅行時間を特定すると共に、前記車両が、前記退出リンクに進入してから、当該退出リンクを退出するまで、に要した時間である退出道路旅行時間を特定する、旅行時間特定手段と、
前記現在位置取得手段にて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、少なくとも前記退出リンクに進入してから、前記退出リンク上に設定された位置であって当該退出リンクにおける前記交差点側の端点から所定距離に設定された交差点退出位置を通過するまでにおいて、前記車両が停車に要した時間である交差点停車時間を特定する交差点停車時間特定手段と、
前記旅行時間特定手段にて特定された前記進入道路旅行時間と、前記交差点停車時間特定手段にて特定された前記交差点停車時間とを含んだ時間として、前記進入リンクの所要時間を特定すると共に、前記旅行時間特定手段にて特定された前記退出道路旅行時間から、前記交差点停車時間特定手段にて特定された前記交差点停車時間を減算することにより、前記退出リンクの所要時間を特定する、所要時間特定手段と、を備える、
所要時間特定システム。
【請求項2】
前記車両が前記進入リンクから前記交差点にて右折又は左折して前記退出リンクへと旅行する際における、前記進入リンクの所要時間を特定する、
請求項1に記載の所要時間特定システム。
【請求項3】
前記所定距離を、前記進入道路又は前記退出道路の車線幅又は車線数に基づいて異なる距離に設定した、
請求項1又は2に記載の所要時間特定システム。
【請求項4】
前記現在位置取得手段にて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、前記交差点の内部に設定された交差点リンクに進入してから、当該交差点リンクを退出するまでにおいて、前記車両が少なくとも走行に要した時間である交差点旅行時間を特定する交差点旅行時間特定手段を備え、
前記所要時間特定手段は、前記旅行時間特定手段にて特定された前記進入道路旅行時間と、前記交差点停車時間特定手段にて特定された前記交差点停車時間と、前記交差点旅行時間特定手段にて特定された前記交差点旅行時間とを含んだ時間として、前記進入リンクの所要時間を特定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の所要時間特定システム。
【請求項5】
交差点に進入するための進入道路に対応する進入リンクから、当該交差点から退出するための退出道路に対応する退出リンクへと車両が旅行した場合における、前記進入リンクの所要時間を特定する所要時間特定方法であって、
現在位置取得手段が、前記車両の現在位置を取得する現在位置取得ステップと、
旅行時間特定手段が、前記現在位置取得ステップにおいて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、前記進入リンクに進入してから、当該進入リンクを退出するまで、に要した時間である進入道路旅行時間を特定すると共に、前記車両が、前記退出リンクに進入してから、当該退出リンクを退出するまで、に要した時間である退出道路旅行時間を特定する、旅行時間特定ステップと、
交差点停車時間特定手段が、前記現在位置取得ステップにおいて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、少なくとも前記退出リンクに進入してから、前記退出リンク上に設定された位置であって当該退出リンクにおける前記交差点側の端点から所定距離に設定された交差点退出位置を通過するまでにおいて、前記車両が停車に要した時間である交差点停車時間を特定する交差点停車時間特定ステップと、
所要時間特定手段が、前記旅行時間特定ステップにおいて特定された前記進入道路旅行時間と、前記交差点停車時間特定ステップにおいて特定された前記交差点停車時間とを含んだ時間として、前記進入リンクの所要時間を特定すると共に、前記旅行時間特定ステップにおいて特定された前記退出道路旅行時間から、前記交差点停車時間特定ステップにおいて特定された前記交差点停車時間を減算することにより、前記退出リンクの所要時間を特定する、所要時間特定ステップと、を含む、
所要時間特定方法
【請求項6】
請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させるための所要時間特定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要時間特定システム、所要時間特定方法、及び所要時間特定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、出発地から目的地に至る経路を探索する経路探索システムにおいて、経路上に位置する交差点を通過するために要する時間である交差点の所要時間(いわゆるノードコスト)と、上記交差点を相互に接続する道路リンクを通過するために要する時間である道路リンクの所要時間(いわゆるリンクコスト)とに基づいて、経路全体の所要時間を算出する経路探索システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上記特許文献1においては、交差点の通過し易さを指数化した規定値に基づいて交差点の所要時間を特定するため、交差点における実際の道路事情が交差点の所要時間に反映されないという問題があった。そこで、実際の道路事情を交差点の所要時間に反映させるべく、プローブカーを走行させることによって、実際に車両が交差点に進入してから交差点を退出するまでに要する時間(以下、交差点内通過コスト)を測定し、この交差点内通過コストに基づいて交差点の所要時間を決定する経路探索装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2においては、交差点の所定距離手前の地点でプローブカーが停車した時刻から、プローブカーにて取得されたプローブカーの現在位置が退出リンクにマッチングされた時刻に至る時間を交差点内通過コストとして特定して交差点の所要時間に含め、その後プローブカーの現在位置が退出リンクに継続してマッチングされている時間を退出リンクの所要時間として特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−83526号公報
【特許文献2】特開2007−248183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したように、上記の特許文献2に係る経路探索装置においては、交差点の所要時間や退出リンクの所要時間を、マッチングの結果に基づいて特定するが、マッチング結果に基づいてこれらの所要時間を特定するにはその精度に限界があった。すなわち、プローブカーが交差点の内部において対向車両や横断者の通過待ちを目的として停車した時間(以下、交差点停車時間)が、マッチングの結果次第によっては、交差点の所要時間に含まれる場合と退出リンクの所要時間に含まれる場合とがあった。具体的には、プローブカーが交差点の内部で停車している際に、プローブカーの現在位置が、進入リンクにマッチングされている場合には、交差点停車時間は交差点の所要時間に含まれ、退出リンクにマッチングされている場合には、交差点停車時間は退出リンクの所要時間に含まれるものであった。このようにマッチングの結果によって交差点の所要時間や道路リンクの所要時間が変化することは、経路全体の所要時間を正確に特定する上で好ましくなかった。したがって、プローブカーが交差点内で停車している際に、プローブカーにて取得された車両の現在位置に起因して、道路リンクの所要時間が変動してしまうことを防止することが可能なシステムが要望されていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両が交差点内で停車している際に、車両にて取得された車両の現在位置に起因して道路リンクの所要時間が変動してしまうことを防止でき、経路全体の所要時間を正確に特定することが可能な所要時間特定システム、所要時間特定方法、及び所要時間特定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る所要時間特定システムは、交差点に進入するための進入道路に対応する進入リンクから、当該交差点から退出するための退出道路に対応する退出リンクへと車両が旅行した場合における、前記進入リンクの所要時間を特定する所要時間特定システムであって、前記車両の現在位置を取得する現在位置取得手段と、前記現在位置取得手段にて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、前記進入リンクに進入してから、当該進入リンクを退出するまで、に要した時間である進入道路旅行時間を特定すると共に、前記車両が、前記退出リンクに進入してから、当該退出リンクを退出するまで、に要した時間である退出道路旅行時間を特定する、旅行時間特定手段と、前記現在位置取得手段にて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、少なくとも前記退出リンクに進入してから、前記退出リンク上に設定された位置であって当該退出リンクにおける前記交差点側の端点から所定距離に設定された交差点退出位置を通過するまでにおいて、前記車両が停車に要した時間である交差点停車時間を特定する交差点停車時間特定手段と、前記旅行時間特定手段にて特定された前記進入道路旅行時間と、前記交差点停車時間特定手段にて特定された前記交差点停車時間とを含んだ時間として、前記進入リンクの所要時間を特定すると共に、前記旅行時間特定手段にて特定された前記退出道路旅行時間から、前記交差点停車時間特定手段にて特定された前記交差点停車時間を減算することにより、前記退出リンクの所要時間を特定する、所要時間特定手段と、を備える。
【0008】
また、本発明に係る所要時間特定方法は、交差点に進入するための進入道路に対応する進入リンクから、当該交差点から退出するための退出道路に対応する退出リンクへと車両が旅行した場合における、前記進入リンクの所要時間を特定する所要時間特定方法であって、現在位置取得手段が、前記車両の現在位置を取得する現在位置取得ステップと、旅行時間特定手段が、前記現在位置取得ステップにおいて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、前記進入リンクに進入してから、当該進入リンクを退出するまで、に要した時間である進入道路旅行時間を特定すると共に、前記車両が、前記退出リンクに進入してから、当該退出リンクを退出するまで、に要した時間である退出道路旅行時間を特定する、旅行時間特定ステップと、交差点停車時間特定手段が、前記現在位置取得ステップにおいて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、少なくとも前記退出リンクに進入してから、前記退出リンク上に設定された位置であって当該退出リンクにおける前記交差点側の端点から所定距離に設定された交差点退出位置を通過するまでにおいて、前記車両が停車に要した時間である交差点停車時間を特定する交差点停車時間特定ステップと、所要時間特定手段が、前記旅行時間特定ステップにおいて特定された前記進入道路旅行時間と、前記交差点停車時間特定ステップにおいて特定された前記交差点停車時間とを含んだ時間として、前記進入リンクの所要時間を特定すると共に、前記旅行時間特定ステップにおいて特定された前記退出道路旅行時間から、前記交差点停車時間特定ステップにおいて特定された前記交差点停車時間を減算することにより、前記退出リンクの所要時間を特定する、所要時間特定ステップと、を含む。
【0009】
また、本発明に係る所要時間特定プログラムは、本発明に係る所要時間特定方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る所要時間特定システム、所要時間特定方法、及び所要時間特定プログラムによれば、少なくとも退出リンクに進入してから交差点退出位置を超えるまでに車両が停車に要した時間である交差点停車時間を特定し、この交差点停車時間と進入道路旅行時間とを含む時間を、車両が交差点内で停車している際に車両の現在位置が進入リンク又は退出リンクのいずれにマッチングされているかに関わらず、進入リンクの所要時間に含めるので、車両にて取得された車両の現在位置に起因して道路リンクの所要時間が変動してしまうことを防止でき、各道路リンクの所要時間に基づいてより正確な経路コストを特定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1に係る車両の旅行経路の一部を概略的に示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る所要時間特定システムを例示するブロック図である。
図3】所要時間特定処理のフローチャートである。
図4】交差点停車時間特定処理のフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態2に係る車両の旅行経路の一部を概略的に示す図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る交差点停車時間特定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る所要時間特定システム、所要時間特定方法、及び所要時間特定プログラムの実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
〔実施の形態の基本的概念〕
まず、実施の形態の基本的概念を説明する。この実施の形態は、概略的に、車両が進入リンクから交差点を介して退出リンクへと車両が旅行した場合における進入リンクの所要時間を特定する所要時間特定システム、所要時間特定方法、及び所要時間特定プログラムに関するものである。
【0014】
ここで、「交差点」とは、複数の道路が交差する場所であって、その具体的な範囲は道路交通法に規定された交差点の範囲に限定されず、以下では、この交差点の範囲に含まれる部分を「交差点の内部」、交差点の範囲に含まれない部分を「交差点の外部」と必要に応じて称して説明する。
【0015】
また、「進入リンク」とは、車両が交差点の内部に進入した際に通過した道路リンクであって、この進入リンクに対応する道路を以下では必要に応じて「進入道路」と称して説明する。また、「退出リンク」とは、車両が交差点の内部から退出した際に通過した道路リンクであって、この退出リンクに対応する道路を以下では必要に応じて「退出道路」と称して説明する。
【0016】
次に、車両の動作について示す概念である、「走行する」、「停車する」、及び「旅行する」の3つの概念について説明する。「走行する」とは、車両が所定速度(本実施の形態では、5km/hであるものとして説明する)以上の速度で移動している状態を示す概念である。なお、車両が走行に要した時間を以下では必要に応じて「走行時間」と称して説明する。また、「停車する」とは、車両が上述した所定速度未満の速度で移動している状態や、車両が移動していない状態を示す概念である。なお、車両が停車に要した時間を以下では必要に応じて「停車時間」と称して説明する。また、「旅行する」とは、上述した「走行する」と「停車する」の両方の状態を包含する上位概念である。なお、車両が旅行に要した時間を以下では必要に応じて「旅行時間」と称して説明する。すなわち、例えば所定の区間における「旅行時間」は、当該区間における「走行時間」と「停車時間」との和により表される。
【0017】
ここで、「所要時間」とは、各道路リンクに対応付けられて記憶される時間であって、出発地から目的地に至る経路の経路コストを特定する際に道路リンクの通過コストとして用いられる時間である。なお、各道路リンクの所要時間は、基本的には、車両がこの各道路リンクを旅行した旅行時間に対応する時間が割り当てられるが、進入リンクや退出リンクに関しては、車両がこれら進入リンクや退出リンクを旅行した旅行時間に、本実施の形態に示す処理により特定されたその他の時間を加算又は減算した時間に対応する時間が割り当てられる。
【0018】
〔実施の形態の具体的内容〕
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0019】
〔実施の形態1〕
まずは、実施の形態1について説明する。ここで、図1は、本実施の形態1に係る車両の旅行経路の一部を概略的に示す図である。この「旅行経路」とは、車両が実際に旅行した経路であって、例えば本実施の形態においては、車両が出発地から目的地に旅行する際に通過した経路であるものとして説明する。なお、図1においては交差点Crの範囲を、点線にて囲繞された領域として示している。このように、本実施の形態においては、交差点Crの範囲を、複数の道路が交差する交差部分の周辺の所定範囲であって、特に、この交差部分へと進入する各道路に設けられた交差部分直近の横断歩道Sを含む範囲として設定した。
【0020】
ここで、交差点には、進入リンクと退出リンクとが直接的に接続されている交差点と、進入リンクと退出リンクとが他の道路リンクを介して間接的に接続されている交差点との2種類の交差点が存在するが、本実施の形態は、前者の交差点に関する形態である。
【0021】
(構成)
本実施の形態1では、車載用ナビゲーション装置(以下、車載器)1に所要時間特定プログラムをインストールすることにより、車載器1が所要時間特定システムとして機能する場合について説明する。なお、この他にも、スマートフォンや携帯用ナビゲーション装置を含む任意の装置に所要時間特定プログラムをインストールすることによって所要時間特定システムを構成してもよい。また、所要時間特定システムにおける車載器1としての機能については、公知の車載器と同様の構成により得ることができるので、その説明は省略することとし、特に所要時間を特定する機能を達成するための構成について説明する。なお、この所要時間特定システムを搭載した特定の車両(車載器1を操作する者が搭乗する車両)を以下では「自車両」と称して説明する。また、当該特定の自車両を基準として自車両以外の他の車両について説明するときは、この車両を「他の車両」と称して説明する。なお、「車両」には、自動四輪車、自動二輪車、及び自転車が含まれるが、以下では、車両が自動四輪車である場合について説明する。
【0022】
まず、本実施の形態1に係る所要時間特定システムとして機能する車載器1の構成について説明する。図2は、本実施の形態1に係る所要時間特定システムを例示するブロック図である。
【0023】
(構成−車載器)
最初に、車載器1の構成を説明する。図2に示すように、車載器1は、概略的に、スピーカ2、タッチパネル3、ディスプレイ4、現在位置取得部5、通信部6、制御部7、及びデータ記録部8を備えている。
【0024】
(構成−車載器−スピーカ)
スピーカ2は、制御部7の制御に基づいて情報を音声にて出力する音声出力手段であり、特に、車載器1に備えられた経路探索部(図示省略)により探索された経路を案内する案内手段である。スピーカ2から出力される音声の具体的な態様は任意であり、必要に応じて生成された合成音声や、予め録音された音声を出力することができる。
【0025】
(構成−車載器−タッチパネル)
タッチパネル3は、ユーザの指等で押圧されることにより、当該ユーザから各種手動入力を受け付けるものである。このタッチパネル3は、透明又は半透明状に形成され、ディスプレイ4の前面において当該ディスプレイ4の表示面と重畳するように設けられている。このタッチパネル3としては、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等による操作位置検出手段を備えた公知のタッチパネルを使用することができる。
【0026】
(構成−車載器−ディスプレイ)
ディスプレイ4は、所要時間特定システムによって案内された画像を表示する表示手段であり、特に、地図DB8aにて格納された地図情報に基づいて地図を表示する表示手段である。このディスプレイ4の具体的な構成は任意であり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0027】
(構成−車載器−現在位置取得部)
現在位置取得部5は、自車両の現在位置を取得する現在位置取得手段である。例えば、現在位置取得部5は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つにより検出した現在の車載器1の位置(座標)及び方位等を、公知の方法にて取得する。
【0028】
(構成−車載器−通信部)
通信部6は、センター装置(図示省略)との間でネットワークを介した通信を行う通信手段である。この通信手段の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、公知の移動体無線通信手段や、FM多重放送やビーコンを介した公知のVICS(登録商標)システム用の無線通信手段を用いることができる。
【0029】
(構成−車載器−制御部)
制御部7は、車載器1を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態1に係る所要時間特定プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して車載器1にインストールされることで、制御部7の各部を実質的に構成する。
【0030】
この制御部7は、機能概念的に、旅行時間特定部7a、交差点停車時間特定部7b、及び所要時間特定部7cを備えて構成される。
【0031】
旅行時間特定部7aは、各道路リンクの旅行時間を特定するための旅行時間特定手段であって、特に、進入道路旅行時間を特定するための進入道路旅行時間特定手段である。ここで、「旅行時間」とは、車両が道路リンクに進入してから退出するまでの間に旅行に要した時間であって、特に「進入道路旅行時間」とは、車両が進入リンクに進入してから退出するまでの間に旅行に要した時間である。
【0032】
交差点停車時間特定部7bは、交差点停車時間を特定するための交差点停車時間特定手段である。ここで、「交差点停車時間」とは、概略的には、車両が進入リンクと退出リンクとの接続点付近において停車に要した時間であり、従来技術においてはノードコストに含めるか退出リンクのリンクコストに含めるかがマッチング結果に大きく左右されてしまう時間である。具体的には、この交差点停車時間は、車両が退出リンクに進入してから交差点退出位置Poを通過するまでにおいて停車に要した時間であって、例えば対向車線を走行する他車両の通過待ちを目的とした停車や、交差点Crの内部に位置する横断歩道Sを横断する歩行者の通過待ちを目的とした停車に要した時間である。ここで、「交差点退出位置」Poとは、車両が停車した時間を交差点停車時間に含めるか否かの基準となる位置であって、具体的には、退出リンクにおける交差点Crの中央側の端点(すなわち、地点B)から所定距離(本実施の形態においては、実寸で15m)に設定された位置である。この交差点退出位置Poは、任意の位置に設定することが可能であるが、車両が停車する可能性の特に高い領域である交差点Crの内部の領域において車両が停車した時間を、確実に交差点停車時間に含めることが可能となるような位置に設定することが望ましい。このような位置としては、例えば、交差点Crの外部や、交差点Crの内部と外部との境界線上の位置に設定することが望ましい。また、交差点退出位置Poを決定する上述した「所定距離」は、任意の値に設定することが可能であり、例えば交差点毎に相互に異なる値を用いても良く、特に現在位置取得部5における現在位置の取得精度の低い交差点(例えばビル群等に位置する交差点)においてはより大きい値を用いることが望ましい。また、進入道路や退出道路の車線幅や車線数に基づいて異なる値に設定しても良い。
【0033】
所要時間特定部7cは、道路リンクの所要時間を特定するための所要時間特定手段である。なお、これら制御部7の各部により行われる具体的な処理については後述する。
【0034】
(構成−車載器−データ記録部)
データ記録部8は、車載器1の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。このデータ記録部8は、地図データベース(以下、データベースを「DB」と称する)8a、及び、所要時間DB8bを備えている。
【0035】
図DB8aは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。ここで、「地図情報」とは、道路、道路構造物、施設等を含む各種の位置の特定に必要な情報であり、例えば、道路上に設定された各ノードに関するノードデータ(ノード番号、座標)や、道路上に設定された各リンクに関するリンクデータ(リンクID、リンク名、始点側接続ノード番号、終点側接続ノード番号、道路座標、道路種別(例えば有料道路、一般道路等)、道路情報、地物データ(信号機、道路標識、ガードレール、施設等)、及び地形データ等を含んで構成されている。
【0036】
所要時間DB8bは、所要時間特定部7cにて特定された各道路リンクの所要時間を、センター装置に対してプローブ情報として送信するまでの間において一時的に格納しておくための所要時間格納手段である。ここで、各道路リンクの所要時間は、各道路リンクを一意に識別するためのリンクIDと、当該リンクIDに対応する道路リンクの所要時間とを相互に対応付けられて所要時間DB8bに格納される。ここで、進入リンクの所要時間を格納する上で、当該進入リンクのリンクIDと、車両が当該進入リンクの次に旅行した他の道路リンクのリンクIDとを相互に関連付けて格納しても良い。具体的には、例えば図1に示すように車両が進入リンク(リンクID:100)から右折して退出リンク(リンクID:200)へと旅行した場合、進入リンクのリンクID、退出リンクのリンクID、及び進入リンクの所要時間が一つのレコードとして格納される。また、例えば車両が進入リンクから左折して他の道路リンクへと旅行した場合、進入リンクのリンクID、当該他の道路リンクのリンクID、及び進入リンクの所要時間が一つのレコードとして格納される。このように、進入リンクの所要時間に対して、車両が進入リンクの次に旅行した道路の道路リンクを対応付けて格納することで、より詳細な進入リンクの所要時間を特定することができる。すなわち、進入リンクを旅行した車両が交差点Crにて右折するか、左折するか、あるいは直進するかによって進入リンクの所要時間は大きく相違するため、右折した場合、左折した場合、及び直進した場合のそれぞれについて進入リンクの所要時間を別々に格納することで、より実情に即した詳細な所要時間を特定することが可能になる。
【0037】
(処理)
次に、このように構成される所要時間特定システムによって実行される処理について説明する。
【0038】
(所要時間特定処理)
まずは、所要時間特定処理について説明する。この所要時間特定処理は、所定の時刻間隔(例えば5分毎)で繰り返し実行される処理であって、当該処理を実行する時刻間隔の間に車両が走行した旅行経路(又は旅行経路の一部)上に位置する道路リンクの所要時間を特定する処理である。本実施の形態においては、図1に示すように、車両の旅行経路のうち一部分である進入道路及び退出道路を含む道路に関する所要時間を特定する場合について説明する。ただし、旅行経路のうち図示していない部分に位置する道路に対応する道路リンクについても、同様の処理を実行することにより各道路リンクの所要時間を特定することができる。なお、図1においては、車両は、進入リンクの端点に位置する地点A、進入リンクと退出リンクとの接続点に位置する地点B、退出リンク上に位置する地点Ps、及び退出リンクの端点に位置する地点Cを順次介して移動したものとし、地点Psにおいて停車したものとする。
【0039】
なお、この所要時間特定処理の前提となる処理として、車載器1の制御部7は、情報格納処理を実行する。この情報格納処理とは、所要時間特定処理とは別の処理として所定の時刻間隔(例えば1秒毎)で繰り返し実行される処理であって、当該処理を実行した時刻において取得された各種情報を、当該実行した時刻と相互に関連付けてデータ記録部8に格納する処理である。この「各種情報」としては、例えば、現在位置取得部5にて取得された車両の現在位置、車両の現在位置がリンクマッチングされた道路リンクのリンクID、車速を測定する車速センサ(図示省略)の入力信号に基づいて特定された車速情報、ハンドルの操作状況等の情報を含む。以下に示す所要時間特定処理では、このようにしてデータ記録部8に格納された情報に基づいて、各種の処理を実行する。
【0040】
図3は、所要時間特定処理のフローチャートである。まず、旅行時間特定部7aは、各道路リンクの旅行時間を特定する(SA1)。この特定の具体的な方法は任意であるが、例えば、まず、上述した情報格納処理にてデータ記録部8に格納された情報に基づいて、車両が旅行した道路リンクを特定する。続いて、現在位置取得部5にて取得された車両の現在位置が、各道路リンク上の位置に進入した時刻と、各道路リンク上の位置から退出した時刻とを特定し、これらの両時刻の相互間の時間を算出することにより、各道路リンクの旅行時間を特定する。このような方法以外にも、車両の現在位置が道路リンクに継続してリンクマッチングされている時間に基づいて、各道路リンクの旅行時間を特定しても良い。例えば、上述した情報格納処理にてデータ記録部8に格納された情報に基づいて、車両の現在位置が各道路リンクに継続してマッチングされた時間を特定し、特定された時間を各道路リンクの旅行時間と特定してもよい。なお、本実施の形態においては、旅行時間特定部7aは、進入リンク(リンクID:100)の旅行時間を10秒、退出リンク(リンクID:200)の旅行時間を60秒と特定したものとする。
【0041】
次に、所要時間特定部7cは、SA1にて特定した各道路リンクの旅行時間を、各道路リンクの所要時間として仮に特定する(SA2)。具体的には、地図DB8aに格納された情報に基づいて各道路リンクのリンクIDを特定し、特定されたリンクIDと、各道路の道路リンクの旅行時間とを相互に関連付けて所要時間DB8bに格納する。特に、進入リンク(リンクID:100)のリンクIDと進入リンクの旅行時間(10秒)、及び退出リンク(リンクID:200)のリンクIDと退出リンクの旅行時間(60秒)、については、相互に関連付けて所要時間DB8bに格納する。
【0042】
次に、所要時間特定部7cは、自車両が交差点Crを旅行した否かを判定する(SA3)。この判定の具体的な方法は任意であるが、例えば、地図DB8aに格納されたノードデータに関する情報、及び上述した情報格納処理にてデータ記録部8に格納された情報に基づいて、車両の現在位置が交差点Crのノードを通過したか否かを判定しても良い。そして、交差点Crを旅行したと判定した場合(SA3、Yes)、交差点停車時間特定部7bは、交差点停車時間特定処理(SA4)を実行する。
【0043】
ここで、図4は、交差点停車時間特定処理のフローチャートである。図4に示すように、まず、交差点停車時間特定部7bは、車両が交差点Crにて右左折したか否かを判定する(SB1)。この判定の具体的な方法は任意であるが、例えば、上述した情報格納処理にてデータ記録部8に格納されたハンドルの操作状況に関する情報に基づいて、交差点Crにて車両が右左折したか否かを判定しても良い。または、地図DB8aに格納されたリンクデータに基づいて、進入リンクと退出リンクとの接続関係を特定し、進入リンクから退出リンクへ移動するために右左折を要するか否かを特定することに判定しても良い。
【0044】
そして、右左折したと判定した場合(SB1、Yes)、交差点停車時間特定部7bは、車両が退出リンクに進入してから交差点退出位置Poを通過するまでに停車したか否かを判定する(SB2)。ここで、SB2の判定は具体的には、まずは、地図DB8aに格納された退出リンクにおける始点側接続ノードの位置座標と、交差点退出位置Poの位置座標とを特定し、上述した情報格納処理にてデータ記録部8に格納された車両の現在位置を参照して、車両の現在位置が退出リンクにおける始点側接続ノードを通過した時刻(以下、「端点通過時刻」と称する)と、交差点退出位置Poを通過した時刻(以下、「退出位置通過時刻」と称する)とを特定する。次に、上述した情報格納処理にてデータ記録部8に格納された車速情報に基づいて、上記特定した端点通過時刻と退出位置通過時刻との間において、車速が所定速度(本実施の形態では、時速5km/h)未満となった時刻が存在するか否かを判定する。そして、存在する場合、車両が停車したものと判断し(SB2、Yes)、存在しない場合、車両が停車しなかったものと判断する(SB2、No)。なお、SB2の判定の具体的な方法は上述した方法に限られず、例えば、上述した情報格納処理にてデータ記録部8に格納された、現在位置取得部5にて取得した車両の現在位置、及びこの現在位置を取得した時刻に関する情報に基づいて、車両が停車したか否かを判定しても構わない。
【0045】
そして、交差点退出位置Poを通過するまでに停車したと判定した場合(SB2、Yes)、交差点停車時間特定部7bは、交差点停車時間を、車両が退出リンクに進入してから交差点退出位置Poを通過するまでに停車に要した時間であるものと特定する(SB3)。ここで、この「停車に要した時間」を特定する方法は、具体的には、まず、SB2において特定した端点通過時刻と退出位置通過時刻との間において、車速が所定速度(本実施の形態では、時速5km/h)未満になったと特定された時刻(以下、「停車時刻」と称する)を特定する。次に、この停車時刻と退出位置通過時刻との間において車速が上述した所定速度(本実施の形態では、時速5km/h)以上になった時刻(以下、「発車時刻」と称する)が存在するか否かを判定する。そして、存在する場合、この発車時刻において車両が走行を開始したものと判断し、上述した停車時刻から発車時刻までの時間を「停車に要した時間」として特定する。また、存在しない場合、車両は停車した状態のまま交差点退出位置Poを通過した(すなわち、所定速度未満で移動しながら交差点退出位置Poを通過した)ものと判断し、上述した停車時刻から退出位置通過時刻までの時間を「停車に要した時間」として特定する。なお、本実施の形態においては、この「停車に要した時間」を40秒であると特定したものとして説明する。
【0046】
一方、交差点Crを右左折しなかった場合(SB1、No)や、車両が退出リンクに進入してから交差点退出位置Poを通過するまでに停車しなかった場合(SB2、No)、交差点停車時間を0秒と特定する(SB4)。これにて交差点停車時間特定処理を終了し、所要時間特定処理に戻る。
【0047】
図3に戻り、続いて、SA4にて特定された交差点停車時間を、進入リンクの所要時間に加算する(SA5)。具体的には、SA2にて特定された進入リンクのリンクID(リンクID:100)に関連付けられて所要時間DB8bに格納された所要時間(すなわち、10秒)を特定し、この所要時間に交差点停車時間(すなわち、40秒)を加算した時間(すなわち、10秒+40秒=50秒)を、進入リンクのリンクID(リンクID:100)と相互に関連付けて所要時間DB8bに改めて格納する。
【0048】
次に、SA4にて特定された交差点停車時間を、退出リンクの所要時間から減算する(SA6)。具体的には、SA2にて特定された退出リンクのリンクID(リンクID:200)に関連付けられて所要時間DB8bに格納された所要時間(すなわち、60秒)を特定し、この所要時間から交差点停車時間(すなわち、40秒)を減算した時間(すなわち、60秒−40秒=20秒)を、退出リンクのリンクID(リンクID:200)と相互に関連付けて所要時間DB8bに改めて格納する。このように減算を行うのは、SA2にて特定された退出リンクの旅行時間は、交差点停車時間を含む時間であるため、重複した時間を削除する必要があるためである。
【0049】
最後に、所要時間特定部7cは、プローブ情報を作成し、作成されたプローブ情報をデータ記録部8のプローブ情報DB(図示省略)に格納する(SA7)。このプローブ情報は、車載器1から通信部6を介してセンター装置に対して送信するための情報であって、具体的には、SA2又はSA7にて特定された各道路リンクの所要時間や、車載器1を一意に識別するための固有IDや、プローブ情報の作成日時等を含む情報である。これにて所要時間特定処理を終了する。
【0050】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この形態は、進入リンクと退出リンクとが他の道路リンク(以下、交差点リンク)を介して間接的に接続されている交差点Crに関する形態である。図5は、実施の形態2に係る車両の旅行経路の一部を概略的に示す図である。なお、図5においては車両の動きを矢印にて示しており、具体的には、車両は、進入リンク(リンクID:100)の端点に位置する地点A、進入リンクと交差点リンク(リンクID:195)との接続点に位置する地点B、交差点リンクと退出リンク(リンクID:200)との接続点に位置する地点C、退出リンク上に位置する地点Ps、及び退出リンクの端点に位置する地点Dを順次介して移動したものとし、地点Psにおいて停車したものとする。なお、実施の形態2の構成及び処理は特記する場合を除いて実施の形態1と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号や名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0051】
(処理)
本実施の形態2では、実施の形態1と同様に構成された所要時間特定システムにより、以下の処理が実行される。
【0052】
ここで、情報格納処理や、図3に示す所要時間特定処理については、上記実施の形態1と同様の処理を実行するため、その説明を省略し、実施の形態1とは異なる処理を実行する交差点停車時間特定処理についてのみ説明する。ただし、実施の形態1においては、図3に示す所要時間特定処理のSA1において進入リンクの旅行時間を10秒と特定したが、本実施の形態2においては、SA1において進入リンクの旅行時間を7秒と特定したものとして説明する。図6は、本実施の形態2に係る交差点停車時間特定処理のフローチャートである。
【0053】
まず、交差点停車時間特定部7bは、地図DB8aに格納されたリンクデータに基づいて、車両が旅行した交差点Crの内部に交差点リンクが存在するか否かを判定する(SC1)。そして、交差点リンクが存在する場合(SC1、Yes)、交差点旅行時間を、車両が交差点リンクに進入してから退出するまでに旅行に要した時間であるものと特定する(SC2)。ここで、「交差点旅行時間」とは、車両が交差点リンクに進入してから、当該交差点リンクを退出するまでにおいて、車両が少なくとも走行に要した時間である。なお、「少なくとも走行に要した」とは、本実施の形態2のように「旅行」に要した時間(すなわち、「走行」と「停車」に要した時間の両方を合わせた時間)に限らず、「走行」のみに要した時間を含む概念であって、この点については変形例において後述する。
【0054】
このSC2の処理において、交差点旅行時間を特定する具体的な方法については任意であり、例えば、情報格納処理にてデータ記録部8に格納された情報に基づいて、現在位置取得部5にて取得された車両の現在位置が、交差点リンクの始点側接続ノード上に位置した時刻と、交差点リンクの終点側接続ノード上に位置した時刻とを特定し、これらの両時刻の相互間の時間を算出することにより特定しても良い。なお、本実施の形態においては、このように交差点旅行時間を特定した結果、交差点旅行時間を3秒と特定したものとする。また、交差点リンクが存在しない場合(SC1、No)、車両は交差点リンクを走行していないと判断し、交差点旅行時間を0秒と特定する(SC3)。
【0055】
次に、交差点停車時間特定部7bは、車両が交差点Crにて右左折したか否かを判定する(SC4)。なお、この判定の具体的な方法については、実施の形態1におけるSB1の処理と同様に実行することが出来るため、その詳細な説明を省略する。そして、右左折したと判定した場合(SC4、Yes)、車両が交差点リンクを退出してから交差点退出位置Poを通過するまでに停車したか否かを判定する(SC5)。なお、この判定の具体的な方法については実施の形態1におけるSB2の処理と同様に実行することが出来るため、その詳細な説明を省略する。
【0056】
そして、交差点退出位置Poを通過するまでに停車したと判定した場合(SC5、Yes)、交差点停車時間特定部7bは、交差点停車時間を、車両が交差点リンクを退出してから交差点退出位置Poを通過するまでに停車に要した時間と、上述したSC2又はSC3にて特定された交差点旅行時間とを含む時間であるものと特定する(SC6)。この「停車に要した時間」を特定する方法は、実施の形態1におけるSB3の処理と同様に、端点通過時刻、退出位置通過時刻、停車時刻、及び発車時刻とを特定し、停車時刻から発車時刻又は退出位置通過時刻までの時間を算定することにより特定しても良い。なお、本実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、この「停車に要した時間」を40秒であると特定したものとして説明する。
【0057】
また、車両が交差点Crにて右左折していないと判定した場合(SC4、No)、又は交差点退出位置Poを通過するまでに停車していないと判定した場合(SC5、No)、交差点停車時間特定部7bは、交差点停車時間を、上述したSC2又はSC3にて特定された交差点旅行時間であると特定する(SC7)。これにて交差点停車時間特定処理を終了し、所要時間特定処理に戻る。このように、交差点Crの内部に交差点リンクが存在する場合であっても、車両が交差点リンクを旅行した時間を進入リンクの所要時間に含めることで、交差点Crの内部で車両が停車した時間を一貫して進入リンクの所要時間に含めることができる。以上にて、本実施の形態に係る所要時間特定処理及び交差点停車時間特定処理の説明を終了する。
【0058】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0059】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。例えば道路リンクの所要時間を正確に特定することが出来ない場合であっても、従来と異なる技術により道路リンクの所要時間を特定できている場合には、本願発明の課題が解決されている。
【0060】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。例えば、車載器1又はセンター装置を複数の装置に分散して構成したり、車載器1又はセンター装置を相互に統合したり、車載器1又はセンター装置の一方の機能の一部を他方に持たせたりしてもよい。また、各部を分散する場合において、これら各部の相互間の連携は、有線と無線のいずれか一方又は両方により行うことができる。
【0061】
(実施の形態の相互関係について)
複数の実施の形態が記載されている場合において、これら複数の実施の形態の相互間においては、その構成や処理の一部を相互に入れ替えたり、一方の構成や処理を他方に適用したりしてもよい。
【0062】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0063】
(所要時間特定処理について)
【0064】
また、実施の形態2では、交差点リンクの旅行時間を進入リンクの所要時間に含めるものとして説明し、交差点リンクの所要時間はないものとして説明したが、これに限定されず、交差点リンクの旅行時間を交差点リンクの所要時間に含めても良い。あるいは、交差点リンクの旅行時間のうち走行時間を、交差点リンクの所要時間として特定し、交差点リンクの旅行時間のうち停車時間を交差点停車時間に含めることで進入リンクの所要時間として特定しても良い。
【0065】
〔実施の形態の特徴と効果の一部〕
最後に、これまでに説明した実施の形態の特徴と効果の一部を、以下に例示する。ただし、実施の形態の特徴と効果は、以下の内容に限定されず、以下の特徴の一部のみを具備することによって以下の効果の一部のみを奏する場合や、以下の特徴以外の他の特徴を具備することによって以下の効果以外の他の効果を奏する場合がある。
【0066】
実施の形態の1つの側面1に係る所要時間特定システムは、交差点に進入するための進入道路に対応する進入リンクから、当該交差点から退出するための退出道路に対応する退出リンクへと車両が旅行した場合における、前記進入リンクの所要時間を特定する所要時間特定システムであって、前記車両の現在位置を取得する現在位置取得手段と、前記現在位置取得手段にて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、前記進入リンクに進入してから、当該進入リンクを退出するまで、に要した時間である進入道路旅行時間を特定すると共に、前記車両が、前記退出リンクに進入してから、当該退出リンクを退出するまで、に要した時間である退出道路旅行時間を特定する、旅行時間特定手段と、前記現在位置取得手段にて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、少なくとも前記退出リンクに進入してから、前記退出リンク上に設定された位置であって当該退出リンクにおける前記交差点側の端点から所定距離に設定された交差点退出位置を通過するまでにおいて、前記車両が停車に要した時間である交差点停車時間を特定する交差点停車時間特定手段と、前記旅行時間特定手段にて特定された前記進入道路旅行時間と、前記交差点停車時間特定手段にて特定された前記交差点停車時間とを含んだ時間として、前記進入リンクの所要時間を特定すると共に、前記旅行時間特定手段にて特定された前記退出道路旅行時間から、前記交差点停車時間特定手段にて特定された前記交差点停車時間を減算することにより、前記退出リンクの所要時間を特定する、所要時間特定手段と、を備える。
【0067】
上記側面1に係る所要時間特定システムによれば、少なくとも退出リンクに進入してから交差点退出位置を超えるまでに車両が停車に要した時間である交差点停車時間を特定し、この交差点停車時間と進入道路旅行時間とを含む時間を、車両が交差点内で停車している際に車両の現在位置が進入リンク又は退出リンクのいずれにマッチングされているかに関わらず、進入リンクの所要時間に含めるので、車両にて取得された車両の現在位置に起因して道路リンクの所要時間が変動してしまうことを防止でき、各道路リンクの所要時間に基づいてより正確な経路コストを特定することが可能になる。
【0068】
実施の形態の他の側面2に係る所要時間特定システムは、上記側面1に係る所要時間特定システムにおいて、前記車両が前記進入リンクから前記交差点にて右折又は左折して前記退出リンクへと旅行する際における、前記進入リンクの所要時間を特定する。
【0069】
上記側面2に係る所要時間特定システムによれば、交差点にて右折又は左折して退出リンクへと旅行する際における進入リンクの所要時間を特定するので、車両が対向車両の通過待ちや横断者の通過待ち等している状況のように、車両が停車する可能性が高くマッチングの結果に誤差が出やすい状況においても確実に交差点停車時間を進入リンクの所要時間に含めることができ、各道路リンクの所要時間に基づいてより正確な経路コストを特定することが可能になる。
【0070】
実施の形態の他の側面3に係る所要時間特定システムは、上記側面1又は側面2に係る所要時間特定システムにおいて、前記所定距離を、前記進入道路又は前記退出道路の車線幅又は車線数に基づいて異なる距離に設定した。
【0071】
上記側面3に係る所要時間特定システムによれば、交差点退出位置を特定するための所定距離を、進入道路又は退出道路の車線幅又は車線数に基づいて異なる距離に設定するので、進入道路や退出道路の具体的な構成に応じた適切な交差点退出位置を設定することで、車両の現在位置に起因して道路リンクの所要時間が変動してしまうことをより確実に防止でき、各道路リンクの所要時間に基づいてより正確な経路コストを特定することが可能になる。
【0072】
実施の形態の他の側面4に係る所要時間特定システムは、上記側面1から上記側面3のいずれか1つの側面に係る所要時間特定システムにおいて、前記現在位置取得手段にて取得された前記車両の現在位置に基づいて、前記車両が、前記交差点の内部に設定された交差点リンクに進入してから、当該交差点リンクを退出するまでにおいて、前記車両が少なくとも走行に要した時間である交差点旅行時間を特定する交差点旅行時間特定手段を備え、前記所要時間特定手段は、前記旅行時間特定手段にて特定された前記進入道路旅行時間と、前記交差点停車時間特定手段にて特定された前記交差点停車時間と、前記交差点旅行時間特定手段にて特定された前記交差点旅行時間とを含んだ時間として、前記進入リンクの所要時間を特定する。
【0073】
上記側面4に係る所要時間特定システムによれば、車両が交差点リンクに進入してから当該交差点リンクを退出するまでにおいて、車両が少なくとも走行に要した時間である交差点旅行時間を進入リンクの所要時間に含めるので、交差点の内部に交差点リンクが設定されている場合であっても同様に、車両にて取得された車両の現在位置に起因して道路リンクの所要時間が変動してしまうことを防止できる。
【符号の説明】
【0074】
1 車載器
2 スピーカ
3 タッチパネル
4 ディスプレイ
5 現在位置取得部
6 通信部
7 制御部
7a 旅行時間特定部
7b 交差点停車時間特定部
7c 所要時間特定部
8 データ記録部
8a 地図DB
8b 所要時間DB
A、B、C、D、Ps 地点
Cr 交差点
Po 交差点退出位置
S 横断歩道

図1
図2
図3
図4
図5
図6