(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明電極を形成する工程と、前記接続端子部を形成する工程とを、前記ロール状透明フィルムの両面に対して行う、請求項1又は2に記載の機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法。
前記透明電極を形成する工程が、酸化インジウム錫(ITO)をスパッタ装置を用いて成膜する工程と、エッチング装置を用いて酸化インジウム錫をエッチングする工程とを有する、請求項1乃至3の何れか1つに記載の機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法。
前記透明電極を形成する工程が、Cu、Ag、Pt、Au、Al、Zn、Zrの群から選ばれる少なくとも1種類以上の金属材料からなる幅20μm以下の線状パターンをメッシュ配置させた電極を形成する工程を有する、請求項1乃至4の何れか1つに記載の機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法。
前記機能性膜を形成する工程が、ハードコート(HC)膜、反射防止(LR)膜、帯電防止(AS)膜、耐指紋付着(AF)膜、ブロッキング防止(AB)膜の群から選ばれる少なくとも1種類以上の膜を形成する工程を有する、請求項1乃至6の何れか1つに記載の機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法について図面を用いて説明する。タッチパネルフィルムの製造方法は、透明電極を形成する工程と、外部接続用の接続端子部116を形成する工程と、透明電極上に機能性膜119を形成する工程とを少なくとも有する。
【0027】
<機能性膜付きタッチパネルフィルム>
本発明の第1の本実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法により製造された片面構造の投影型静電容量式機能性膜付きタッチパネルフィルムの例を
図3に示す。
図3の(a)は、フィルム基材105と、ITOで形成された透明電極をX方向(
図3における横方向をX方向とする)にフィルム基材105上に敷設したX電極117と、X電極117と外部との接続を行うための取出し配線106と、X電極117と取出し配線106を覆うように形成された機能性膜119と、外部のコントローラ(図示省略)と接続するための接続端子部116とを有する投影型静電容量式タッチパネルフィルムを示している。機能性膜119は、具体的には、X電極117と取出し配線106を保護する役割を担うオーバーコート層又はハードコート層、もしくは光学特性を向上させる反射防止層等である。接続端子部116は、図示しない外部のコントローラと接続するために、機能性膜119で被覆されないことが重要である。
図3の(b)は、フィルム基材105と、ITOで形成された透明電極をY方向(
図3における縦方向をY方向とする)に敷設したY電極118と、Y電極118と外部との接続を行うための取出し配線106と、Y電極118と取出し配線106を覆うように形成された機能性膜119と、外部のコントローラ(図示省略)と接続するための接続端子部116とを有する投影型静電容量式タッチパネルフィルムを示している。接続端子部116は、図示しない外部のコントローラと接続できるように、
図3の(a)と同様に、機能性膜119で被覆されていない。X電極117が形成されたフィルム基材105と、Y電極118が形成されたフィルム基材105の2枚を貼り合わせて使用することで、位置検出を行う投影型静電容量式タッチパネルセンサとなる。
図3の(c)は、フィルム基材105の片面に2層の透明電極層が形成された片面構造の投影型静電容量式タッチパネルセンサフィルムを示し、
図3の(c)のフィルムは、貼り合せることなく1枚タイプとして用いられる。
図3の(c)においても、接続端子部116は機能性膜119で被覆されていない。片面構造の1枚タイプの場合、X電極117とY電極118の交差する部分に図示しない層間絶縁層を形成することで、X電極117とY電極118の電気的絶縁が保たれている。
図4の(a)は、機能性膜付きタッチパネルフィルムの構造を説明するための断面図であり、
図3の(a)の破線a−a’位置における層構成を示している。
図4の(a)に示すように、少なくとも接続端子部116上には、機能性膜119は形成されていない。
【0028】
<ロール状透明フィルムの流れ(MD)方向に沿って同一線上に複数の接続端子部が位置するロール状透明フィルム>
図5は、本発明の第1の実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法に用いられる、ロール状透明フィルム122を模式的に示す斜視図である。
図5に示すように、ロール状透明フィルム122は、断裁後にタッチパネル用の単一個片(単一のタッチパネルフィルム)となるパネル領域120をロール状透明フィルム122上に多面形成する際に、ロール状透明フィルム122の流れ方向の同じ列に属する複数のパネル領域120では、全ての接続端子部116がロール状透明フィルムの流れ(MD)方向(長さ方向)に沿って同一線121上に位置していることを特徴とする。具体的に、ロール状透明フィルム122の少なくとも一方の面には、複数のパネル領域120がロール状透明フィルム122の流れ方向に配列されたMD方向列が、ロール状透明フィルム122の幅方向に複数列(
図5では4列)形成されている。接続端子部116を形成する工程では、各MD方向列において複数のパネル領域120の接続端子部116がロール状透明フィルム122の流れ
方向に沿って同一線上に位置するように、接続端子部116を形成する。ロール状透明フィルム122の幅方向において、中央の2列のMD方向列では、全ての接続端子部116がロール状透明フィルム122の内側を向くように各パネル領域120が形成され、外側の2列では、全ての接続端子部116がロール状透明フィルム122の外側を向くように各パネル領域120が形成されている。これにより、後述するストライプ状の機能性膜119を印刷形成することが可能となる。
【0029】
<ストライプ状にパターン化された印刷版を用いてストライプ状の機能性膜を印刷形成する工程>
図6は、本発明の第1の実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法の一工程を模式的に示す斜視図である。
図6は、
図5で示したロール状透明フィルム122に、接続端子部116上に機能性膜119が印刷されないようにストライプ状にパターン化された印刷版123(つまり、複数の帯状パターン123aがストライプ状に形成された印刷版)を用いて、ロールツーロール方式で、接続端子部116上を除く領域(パネル領域120の接続端子部116側の端部を除く領域)にストライプ状の機能性膜119を印刷形成する工程を示している。印刷版123において隣り合う帯状パターン123aの間に形成された帯状の未パターン領域123bが、ロール状透明フィルム122の幅方向において、複数の接続端子部116がロール状透明フィルム122の流れ方向に並ぶ帯状領域に配置されている。本発明を用いることで、パネル領域120の接続端子部116側の端部だけを除く領域に、フォトリソ法や他のフィルムとの貼り合せを必要とすることなく、効率的に機能性膜119を形成することが可能となる。
【0030】
タッチパネルとは、金属配線のような導電体の両端に同じ位相で同じ電圧の交流を加えた場合に、導電体に指や手のような静電的且つ導電性の媒体を近接させると、接地されているとみなされる媒体と導電体間(これも接地されているので)に容量結合が生じて、過剰な交流電流が導電体に流れる現象を利用した電子デバイスである。したがって、導電体に指が直接触れる必要がなく、指が誘電体を介して接触又は近接しても構わない。手がセンサ部の導電体に触れると導電体が汚れるため、通常、導電体は、防汚性のある透明な機能性膜で被覆している。
【0031】
以下、本発明の第1の実施形態である機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法について、
図7A及び
図7Bの工程フロー図(a)〜(h)を用いて説明する。
【0032】
図7Aの(a)は、ロール状透明フィルム122の表面に、透明電極としてITO11をスパッタ装置を用いて成膜する工程を示す図である。
図7A及び
図7Bでは、左側の図が、ロール状透明フィルム122の巻き姿の側面視を示す側面図であり、右側の図が、フィルムの流れ方法の先頭からの正面視を示す正面図であり、フィルム断面の層構成を示している。
図7A及び
図7Bにおいて、図中の矢印は、フィルム基材105の移動方向を示している。
【0033】
本発明の第1の実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法では、ロール状透明フィルム122を用いたロールツーロール方式が用いられる。ロール状透明フィルム122(透明なフィルム基材105)としては、コスト面からポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)が好ましいが、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート等のセルロース系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂等から製造される厚さが10〜300μmの範囲の熱可塑系樹脂フィルムを使用でき、透明性、加工性、コストの点で厚さが50〜188μmのPETが多く用いられる。また、透明なフィルム基材105は、一方または両方の面に、易接着処理、プラズマ処理、コロナ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0034】
図7Aの(b)は、ロールコーター13を用いて感放射線性組成物12を、上側のITO成膜面に0.5〜10μm程度の厚さで塗布する工程を示す。感放射線性組成物12としては、汎用のドライフィルムタイプのネガレジストの他に、カゼインレジストも使用することができる。
図7Aの(b)の塗布工程後、90℃で30分程度の乾燥工程(図示省略)と、所望の電極用パターン等を備えたフォトマスクを介して10〜1000mJ/cm
2の紫外線を照射する工程(図示省略)と、3%の炭酸ナトリウム水溶液等の現像処理を施す工程(図示省略)を経ることにより、
図7Aの(c)に示すように、X電極117(透明電極パターン)に対応するレジストパターン7以外の部分のレジストが除去され、所望のレジストパターン7が形成される。
【0035】
次に、シュウ酸、リン酸、硝酸、塩酸等の酸性水溶液からなるITOエッチング液を用いて、レジストパターン7から露出したITO11をエッチング除去し、残ったレジストパターン7を剥離することにより、
図7Aの(d)に示すように、フィルム基材105のITO成膜面側に、X電極117が形成される。
【0036】
次に、
図7Aの(e)に示すように、金属薄膜8をスパッタ・蒸着等の公知の方法で成膜した後、
図7Aの(b)の工程と同様に、ロールコーター13を用いて感放射線性組成物12を金属薄膜8上に塗布する。その後、乾燥工程(図示省略)と、所望の接続端子部用パターン等を備えたフォトマスクを介して紫外線を照射する工程(図示省略)と、現像処理を施す工程(図示省略)を経て、接続端子部116に対応するレジストパターン(図示省略)を形成する。
【0037】
図7Aの(d)と同様に、塩化第二鉄水溶液、リン酸、硝酸、塩酸等の酸性水溶液からなる金属箔膜エッチング液を用いて、レジストパターンから露出した金属薄膜8をエッチング除去し、残ったレジストパターンを剥離することにより、
図7Aの(f)に示すように、フィルム基材105のX電極117面側に、接続端子部116が形成される。
【0038】
なお、本発明の第1の実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法は、X電極117と接続端子部116を導通するための取出し配線106を形成する工程(図示省略)を含むことができる。取出し配線106を形成する方法としては、例えば、Cu、Ag、At、Pt、Al、Zn、等の金属微粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷又はグラビアオフセット印刷機で印刷形成する方法を用いることができる。他の方法としては、Cu、Ag、At、Pt、Al、Zn、等の金属微粉末を含む感光性導電材料を塗布した後、フォトリソ法でパターン形成する方法を用いても良く、従来公知の方法を用いることができる。取出し配線106の形成順序としては、前述したX電極117の形成前の一番初め、X電極117の形成後、又は、接続端子部116の形成後等、品質を向上させるのに最も良い順序を適宜選択してよい。さらに、取出し配線106と接続端子部116を同一材料を用いて同一工程で形成してもよく、その場合には工程数を減らすことができ、より効率的に本発明の機能性膜付きタッチパネルフィルムを製造できる。
【0039】
図7Bの(g)に、X電極117、および取出し配線106上に、機能性膜119をロールツーロール方式のマイクログラビアコーター等の印刷にて形成する工程を示す。印刷版として、接続端子部116上に機能性膜119が形成されないようにストライプ状にパターン化された印刷版123を使用することで、ロールツーロール方式の印刷のみで機能性膜119を形成可能となる。以上の工程を経ることにより、一貫したロールツーロール方式で、片面構造の投影型静電容量式機能性膜付きタッチパネルフィルムを形成できる(
図7Bの(h))。
【0040】
本実施形態では、
図4の(a)に示すように、X電極117及び取出し配線106の表面が空気と接触しないように、好ましくは酸フリーの有機樹脂からなる機能性膜119で、X電極117及び取出し配線106を完全に被覆するようにしている。機能性膜119は、X電極117間の隙間を埋め且つ表面も覆っている。機能性膜119の表面が、
図7Bの(h)に示すように、概ね面一になるのが好ましい皮膜の形態である。機能性膜119の厚さは、X電極117、取出し配線106、及び、接続端子部116の厚さにもよるが、これらの厚さが0.1〜10μm程度であれば、機能性膜119の厚さは2〜40μm程度が最適である。
【0041】
機能性膜119は、電磁波、紫外線、可視光線、電子線等の電離放射線エネルギーにより架橋硬化させて使用する電離放射線硬化性組成物であって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能性モノマーを主成分とするものであることが、生産効率、及び生産安定性の点で好ましい。紫外線照射による硬化の場合には、波長が150〜450nmの範囲の光を含む高圧水銀灯光源を使用する。電子線硬化の場合には、加速電圧が10〜500kV、より好ましくは30〜200kVの範囲で、照射量が3〜300kGyとなる電子線が必要である。
【0042】
多官能性モノマーとしては、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ‐(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,3‐ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ1,2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3,8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリンサンエステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等を用いることができる。多官能モノマーは、単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、必要で有れば、単官能モノマーと併用して共重合させることもできる。
【0043】
また、本発明において好ましい多官能性モノマーとして、ウレタンアクリレートも挙げられ、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有するアクリレートモノマーを反応させ容易に形成されるものを用いることができる。
【0044】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートト
ルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。また、これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、これらは塗液においてモノマーであってもよいし、一部が重合したオリゴマーであっても構わない。
【0045】
光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン等を用いることができ、これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0046】
光増感剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン、トリフェニルホスフィン等のアルキルフォスフィン系、β−チオジグリコール等のチオエーテル系を用いることができ、これらを1種類、もしくは2種類以上を混合して用いることもできる。
【0047】
さらに、性能改良のため、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤等を含有することもできる。
【0048】
機能性膜119に添加する微粒子としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスティックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することができる。例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化カルシウム等の金属酸化物や、導電性を有するアルミナ、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン等の無機系導電性微粒子や、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル−スチレン共重合体、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋または未架橋の有機系微粒子や、シリコーン系微粒子などを用いることができる。なお、これらの微粒子の形状は、特に制限されず、ビーズ状の球形であってもよいし、粉末等の不定形であってもよいが、球状が好ましく、特に真球状であることが好ましい。これらの微粒子は、1種または2種以上を適宜に選択して用いることができる。
【0049】
微粒子の平均粒子径は、10から200nmであり、好ましくは10から100nmである。平均粒子径が、10nm未満の場合には、十分な凹凸形状を形成することができず、貼りつきの抑制に十分でない。一方、平均粒子径が200nm以上の場合には、機能性膜119内での光散乱が発生してしまい、透過率が低下する。微粒子の割合は、微粒子の平均粒子径、機能性膜119の厚さ等を考慮して適宜に決定されるが、樹脂100重量部に対して、0.1から10重量部とするのが好ましい。
【0050】
機能性膜119に添加する層状粘土鉱物としては、例えば、カオリナイト、タルク、有機処理雲母、ベントナイト、モンモリロナイトを用いることができ、特に有機溶剤への溶解性、分散性が良好な親油性合成スメクタイトが好ましい。具体的には、ルーセンタイトシリーズ(コープケミカル株式会社)などを用いることができる。層状粘土鉱物の配合量は、塗布液の粘度特性などに応じて適宜に決定されるが、一般には塗工性、塗膜平滑性などの点から、樹脂100重量部に対して、1から30重量部、特に1から20重量部とすることが好ましい。
【0051】
機能性膜119の形成方法としては、前述のストライプ状にパターン化された印刷版123を使用可能であれば、どのようなウェットコーティング法を用いてもよく、ロールコ
ーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法等などにより、フィルム基材105の少なくとも片面に、塗液を塗布することにより機能性膜119を形成することができる。特に薄く、均一に機能性膜119を形成する必要性があるため、マイクログラビアコーティング法を用いることが好ましい。前述のストライプ状にパターン化された印刷版123の概念を使用可能であれば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等のコーティング法も用いてもよい。
【0052】
機能性膜119を形成する際の硬化方法としては、例えば、紫外線照射、加熱等を用いることができる。紫外線照射の場合、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ等を使用することができる。紫外線照射量は、通常100mJ/cm
2以上800mJ/cm
2以下である。
【0053】
また、機能性膜119の膜厚は、ハードコート性を求める場合、3μm以上あれば十分な強度となるが、塗工精度、及び取扱いを考慮すると、5μm以上10μm以下の範囲が好ましい。10μm以上では硬化収縮による基材の反り、ゆがみ、基材折れが発生してしまうためである。さらに、膜厚としては、5μm以上7μm以下の範囲であれば、ハードコート層として非常に好ましい。
【0054】
機能性膜119用の塗液に用いる溶剤としては、セルロース系フィルム表面を溶解または膨潤させる溶剤として、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類を用いることができる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。なお、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセトン、シクロヘキサノンのうち少なくとも1種類を用いることが好ましい。
【0055】
これら溶剤は、樹脂組成物100重量部に対して、溶剤が50重量部から150重量部の範囲になるように調液することが好ましい。
【0056】
溶剤が50重量部以下であると、塗布液の粘度が高くなり、ウェットコーティング法にて良好な塗布面を形成できなくなる。一方、溶剤が150重量部以上であると、所定膜厚の機能性膜119を形成できなくなってしまう。
【0057】
機能性膜119には、反射防止機能等の光学特性を良好なものとするために、低屈折率膜を積層することができる。
【0058】
低屈折率膜は、ハードコート層等の機能性膜119に積層して使用することが好ましく、ハードコート層等の機能性膜119よりも低い屈折率を有するものが好ましい。本発明の好ましい形態としては、ハードコート層等の機能性膜119の屈折率が1.5以上であり、低屈折率膜の屈折率が1.5未満である。より好ましくは、低屈折率膜の屈折率は1
.45以下、更に好ましくは1.35以下である。屈折率が1.5以上であると低屈折率膜とハードコート層等の機能性膜119の屈折率差が小さいために、反射が高くなってしまうことから、屈折率は低い方が望ましい。
【0059】
低屈折率膜における低屈折率粒子として、空隙を有する微粒子を用いることができる。空隙を有する微粒子とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子である。
【0060】
また、微粒子の形態、構造、凝集状態、被膜内部での微粒子の分散状態により、内部、及び/又は表面の少なくとも一部に、ナノポーラス構造の形成が可能な微粒子を含ませることもできる。この微粒子を使用した低屈折率膜は、屈折率を1.30以上1.45以下に調節することが可能である。
【0061】
このような空隙を有する無機系の微粒子としては、例えば、中空シリカ微粒子を挙げることができる。空隙を有する中空シリカ微粒子は、製造が容易でそれ自身の硬度が高いため、バインダーと混合して低屈折率膜を形成した際、その層強度が向上され、かつ、屈折率を1.20以上1.45以下程度の範囲内に調整することを可能とする。
【0062】
中空シリカ微粒子の平均粒子径は、5nm以上300nm以下であることが好ましく、下限が8nmであり上限が100nmであることがより好ましく、下限が10nmであり上限が80nmであることが更に好ましい。
【0063】
微粒子の平均粒子径がこの範囲内にあることにより、低屈折率膜として優れた透明性を付与することが可能となる。中空シリカ微粒子は、低屈折率膜中にマトリックス樹脂100重量部に対して、通常0.1重量部以上500重量部以下、好ましくは10重量部以上200重量部以下とするのが好ましい。
【0064】
低屈折率膜の形成にあっては、低屈折率膜形成用樹脂として1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能性モノマー、中空シリカ微粒子、及び必要に応じて添加剤(重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤等)を溶剤に溶解又は分散してなる溶液又は分散液を、低屈折率膜形成用組成物として用い、その組成物による塗膜を形成し、紫外線照射あるいは加熱等により硬化させることで、低屈折率膜を得ることができる。なお、重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤等の添加剤は、公知のものを使用することができる。
【0065】
前述の低屈折率膜形成用樹脂の1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能性モノマーとしては、ハードコート層等の機能性膜119の形成時に用いる電離放射線硬化型樹脂として本明細書に記載している樹脂等を使用することができる。
【0066】
低屈折率膜は、通常、揮発性溶媒に希釈して塗布される。希釈溶媒として用いられるものは、組成物の安定性、ハードコート層等の機能性膜119に対する濡れ性、揮発性などを考慮して、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。中でも、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イソ
プロピルアルコール(IPA)、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、PGME、PGMEAが好ましい。また、組成物の調製方法は、成分を均一に混合できれば良く、公知の方法に従って実施すれば良く、公知の装置を使用して混合分散することができる。
【0067】
低屈折率膜形成用組成物は、前述したストライプ状にパターン化された印刷版を用いてロールツーロール方式で印刷することにより、表面処理を行ったハードコート層等の機能性膜119上に塗工され、加熱乾燥により塗膜中の溶媒を揮発させ、その後、加熱、紫外線照射、電子線照射等を行い、塗膜を硬化させる。また、低屈折率膜の形成は、ハードコート層等の機能性膜119の形成方法と同様に、マイクログラビア法を用いることが好ましい。
【0068】
なお、低屈折率膜を形成する時の膜厚(nm)dAは、式(1)により表される。
dA=mλ/(4nA) 式(1)
式(1)において、nAは低屈折率膜の屈折率を表し、mは正の奇数を表し、λは波長を表す。mは、1であることが好ましく、λは、480〜580nmの範囲の値であることが好ましい。
【0069】
<第2の実施形態>
図4の(b)に、本発明の第1の実施形態である機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法により製造された、フィルム基材105の両面に2層の透明電極層が形成された両面構造の投影型静電容量式タッチパネルセンサフィルムを示す。両面構造のタッチパネルセンサフィルムも、貼り合せることなく1枚タイプとして用いられる。
図4の(b)においても、接続端子部116は、機能性膜119で被覆されておらず、X電極117とY電極118をフィルム基材105の表面と裏面の両面に形成する以外は、第1の実施形態と同様にして製造されるため、重複する部分についての説明は省略し、異なる点のみを以下で記述する。
【0070】
第2の実施形態の機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法としては、第1の実施形態と同様に、
図7A及び
図7Bの(a)から(h)に示す工程を経て、まず初めにフィルム基材105の一方の面に、X電極117と、取出し配線106と、接続端子部116と、機能性膜119を形成した後、フィルム基材105のもう一方の面に、その一方の面と同様の工程を経て、Y電極118等を形成する方法を用いることができる。この他、
図7Aの(a)のITO電極11をフィルム基材105の両面に同時に成膜し、
図7Aの(b)の感放射線性組成物12をロールコーター13を用いて、表面と裏面に連続に成膜した後、表面と裏面でそれぞれX電極パターン、Y電極パターンに対応した異なるフォトマスクを介して両面同時に紫外線を照射し、両面同時にエッチング、レジスト剥離する方法等を使用できる。この方法によれば、両面同時に紫外線照射、エッチング、レジスト剥離を行うため、工程数を減らすことができ、より効率よく機能性膜付きタッチパネルフィルムを製造できる。
【0071】
<第3の実施形態>
図1は、本発明の第3の実施形態である機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法により製造された、金属配線のメッシュ構造パターンを示す上面図である。
【0072】
前述のとおり、透明電極は、酸化インジウム錫(ITO)、導電性高分子や銀ナノワイヤー等の透明導電材料を用いた電極と、導電性の高い金属の細線パターンを格子状に張り巡らせたメッシュ構造の電極の2つに大別される。
【0073】
図1に示すように、金属配線のメッシュ構造1(メッシュ構造の透明電極)は、同じピッチのX方向のストライプ状金属配線2と、Y方向のストライプ状金属配線3とを互いに
直交するように配置したものである。金属配線のメッシュ構造1は、上面視で開口部4が概ね正方形のメッシュ構造をなす。タッチパネルのタイプとしては、一方の面(表面)だけにメッシュ構造1を備えた片面構造のタッチパネルフィルムを2枚準備して背面同士を張り合わせて使用する2枚タイプと、一方の面だけにメッシュ構造1を設けた片面構造のタッチパネルフィルム、およびフィルム基材5の表面と裏面の両面の金属配線2、3でメッシュ構造1を形成した両面構造のタッチパネルフィルムの1枚タイプとがあり、いずれの場合に対しても本発明は適用できる。両面構造の場合は、
図1の実線が表面のストライプ状金属配線3に相当し、
図1の二重線が裏面のストライプ状金属配線2に相当する。この場合、絶縁性のフィルム基材5が金属配線2と金属配線3の間に存在するため、上下の金属配線2、3は、他に絶縁部材を設けなくても絶縁されている。
【0074】
金属配線2、3は、遮光性があるので、線幅dが太くなれば開口率が低くなって透過率が下がり、ストライプのピッチが長くなれば位置センサーとしての分解能が低くなる。従って、線幅dとピッチは、これらを考慮して適切な値に設定される。金属配線2、3の材料としては、アルミニウムや銅が好適であるが、抵抗特性とコストの面から銅が最も好ましい。
【0075】
銅配線によって仕切られたメッシュの開口部4の開口幅(一辺の長さ)をp、遮光部の配線幅をdとすると、開口率90%の場合d/p=0.05程度、開口率98%の場合d/p=0.01程度となる。遮光性金属の線幅dは、概ね20μm以下であれば視認できないといわれているため、線幅d=20μmの場合は、開口部4の開口幅pは、400〜2000μmの範囲となる。より狭い線幅d=10μmの場合は、200〜1000μmの範囲、d=5μmの場合は、100〜500μmの範囲とする必要がある。大型ディスプレイ用では、線幅は50μm程度以下が好ましく、開口率90%の場合に、開口幅pは1000μm程度以上となる。
【0076】
タッチパネルの透視可能な部分の大きさは、液晶ディスプレイや有機EL等の画像表示部に重ねてタッチパネルが使用されるため、少なくともこれらの画像表示部と同じ大きさとなる。但し、画像表示部の全範囲をタッチパネルの入力範囲にしない場合には、透視範囲であっても、メッシュ構造の透明電極(メッシュ電極)を設けなくても構わない。一般に、透視が必要な範囲以外は、加飾領域として、透視できないように枠状に黒塗りされていることが好ましい。
【0077】
メッシュ電極を構成する個々の金属配線2、3は、全てフィルム基材105の外周に取出し配線106に導かれて、外部との接続用の接続端子部116につながっている。これらの金属配線2、3と、取出し配線106と、接続端子部116に用いる材料としては、安価で抵抗の低い銅が好ましい。金属配線2、3の線幅は、透視されない領域では、許される範囲で太くすることができ、概ね0.02〜0.5mmの範囲が好ましい。これらの金属配線2、3と、取出し配線106と、接続端子部116は、フィルム基材105上に成膜形成された銅薄膜から、同一工程に同一材料で一括形成されるため、効率よく機能性膜付きタッチパネルフィルムを製造できる。
【0078】
銅配線の表面抵抗は、3Ω/□程度以下に設定することが好ましい。抵抗が低い方が、センサ感度が高いからである。また、厚さが100μm程度のフィルム基材105の両面に、金属配線2、3を形成する両面構造の場合は、金属配線2、3間の静電容量を0.5〜3pFの範囲に設定することが好ましい。
【0079】
銅配線パターンをエッチングにより厚さ13μm、線幅10μm、ピッチ1000μm、開口率98%のメッシュ電極とした場合には、表面抵抗は0.3Ω/□(四端子法による)程度になる。銅配線パターンを厚さ1.5μm、線幅5μm、メッシュピッチ250
μm(前述のpにほぼ該当)、開口率93%とした場合には、表面抵抗は3Ω/□程度になる。製法上の材質差があるが、表面抵抗は3Ω/□以下の範囲で所望の値に制御できる。
【0080】
フィルム基材105上に、銅からなる金属配線2、3を敷設したままでは銅配線の表面と側面が大気に露出しており、空気中の水分や酸素等により銅表面が酸化して次第に抵抗が増加する不具合を生じる。例えば、85℃95%RHの加速条件では1000時間後に抵抗は20%程度増加することが知られている。抵抗の増加は感度の低下を招くので好ま
しいものではなく抑制する必要がある。これを回避するためにも機能性膜119が必要となる。
【0081】
<第4の実施形態>
以下、本発明の第4の実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法について図面を用いて説明する。
【0082】
<開口部を所定の幅にしたダイヘッドを用いてストライプ状の機能性膜を印刷形成する工程>
図8は、本発明の第4の実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法の一工程を模式的に示す斜視図である。
図8では、
図5で示したロール状透明フィルム122に、端子接続部116上に機能性膜119が印刷されないように開口部を所定の幅にしたダイヘッド124を用いて、ロールツーロール方式で、該端子接続部116上を除く位置にストライプ状の機能性膜119を印刷形成する工程を示している。本発明を用いることで、端子接続部だけを除く位置に、フォトリソ法や他のフィルムとの貼り合せを必要とすることなく、効率的かつ高品質に機能性膜を形成することが可能となる。
【0083】
タッチパネルとは、金属配線のような導電体の両端に同じ位相で同じ電圧の交流を加えた場合に、導電体に指や手のような静電的且つ導電性の媒体を近接させると、接地されているとみなされる媒体と導電体間(これも接地されているので)に容量結合が生じて過剰な交流電流が導電体に流れる現象を利用した電子デバイスである。したがって、導電体に指が直接触れる必要がなく誘電体を介して接触、近接しても構わない。手がセンサ部の導電体に触れると導電体が汚れるので、通常導電体は防汚性のある透明な機能性膜で被覆する必要がある。
【0084】
以下、本発明の第4の実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法の実施態様について
図9の工程図を用いて説明する。
【0085】
図9Aの(a)は、ロール状透明フィルム122の表に透明電極としてITO11をスパッタ装置を用いて成膜する工程を示す工程フロー図である。
図9Aの(a)の左側の側面図とは、ロール状透明フィルムの巻き姿の側面視を示し、右側の正面図とは、フィルムの流れ方法の先頭からの正面視を示すもので、フィルム断面の層構成を示している。図中の矢印は、フィルム基材5の移動方向を模式的に示すものである。
【0086】
本発明の機能性膜付きタッチパネルフィルムでは、ロール状透明フィルムを用いたロールツーロール方式が用いられる。透明なフィルム基材については、コスト面からポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)が好ましいが、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート等のセルロース系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂等から製造される厚さが10〜300μmの範囲の熱可塑系樹脂フィルムが使用でき、透明性、加工性、コストの点で厚さが50〜188μmのPETが多く用いられる。また、透明なフィルム基材は、一方または両方の面に、易接着処理、プラズマ処理、コロナ処理等の表面処理がほどこされていてもよい。
【0087】
図9Aの(b)は、ロールコーター13を用いて感放射線性組成物12を、上側のITO11成膜面に0.5〜10μm程度の厚さで塗布する工程を示す。感放射線性組成物12としては、汎用のドライフィルムタイプのネガレジストの他にカゼインレジストも使用することができる。
図9Aの(b)の塗布工程後、90℃で30分程度の図示しない乾燥工程と、所望する電極パターン他を備えたフォトマスクを介して10〜1000mJ/cm
2の紫外線を照射する工程と、3%の炭酸ナトリウム水溶液等の現像処理を施す工程を経ることにより、
図9Aの(c)に示す透明電極パターン117に対応するレジストパターン7以外の部分のレジストが除去され、所望するレジストパターン7が形成される。
【0088】
次に、シュウ酸、リン酸、硝酸、塩酸等の酸性水溶液からなるITOエッチング液を用いて、レジストパターン7から露出したITOをエッチング除去し、残ったレジストパターン7を剥離することにより、フィルム基材105のITO成膜面側にX電極117が形成される(
図9Aの(d))。
【0089】
次に、
図9Aの(e)に示すように、金属薄膜8をスパッタ・蒸着等の公知の方法で成膜した後、
図9Aの(b)の工程と同様に、ロールコーター13を用いて感放射線性組成物12を金属薄膜8上に塗布する。その後、図示しない乾燥工程と、所望する端子接続部パターン他を備えたフォトマスクを介して紫外線を照射する工程と、現像処理を施す工程を経て、端子接続部116に対応する図示しないレジストパターンを形成する。
【0090】
図9Aの(d)と同様に、塩化第二鉄水溶液、リン酸、硝酸、塩酸等の酸性水溶液からなる金属箔膜エッチング液を用いて、レジストパターンから露出した金属薄膜8をエッチング除去し、残ったレジストパターンを剥離することにより、フィルム基材105のX電極117面側に端子接続部116が形成される(
図9Aの(f))。
【0091】
なお、本発明の機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法では、X電極117と端子接続部116を導通するための図示しない取出し配線106を設けることができる。取出し配線106の製造方法としては、例えば、Cu、Ag、At、Pt、Al、Zn、等の金属微粉末を含む導電性ペーストをスクリーン印刷やグラビアオフセット印刷機で印刷形成したり、他の例としては、Cu、Ag、At、Pt、Al、Zn、等の金属微粉末を含む感光性導電材料を塗布した後、フォトリソ法でパターン形成したりしても良く、従来公知の方法を適用できる。取出し配線106の形成順序としては、前述したX電極117の形成前の一番初めや、X電極117の形成後、または端子接続部116の形成後等、品質が向上する最も良い順序を適宜選択してよい。さらに取出し配線106と端子接続部116を同一材料を用いて同一工程で形成してもよく、その場合には工程を簡略化でき、より効率的に本発明の機能性膜付きタッチパネルフィルムを製造できる。
【0092】
図9Bの(g)に、X電極117、および図示しない取出し配線106上に、機能性膜119をロールツーロール方式のダイ塗工方式による印刷にて形成する工程を示す。ダイヘッド124に、端子接続部116上に機能性膜119が形成されないように開口部を所定の幅にしたダイヘッド124を使用することで、ロールツーロール方式の印刷のみで機能性膜119を形成可能となる。以上の工程を経ることにより、一貫したロールツーロール方式で片面構造の投影型静電容量式機能性膜付きタッチパネルフィルムを形成できる(
図9Bの(h))。
【0093】
本実施形態では、
図4の(a)に示すようにX電極117、および取出し配線106の表面が空気と接触しないように、好ましくは酸フリーの有機樹脂からなる機能性膜119で完全に被覆するようにしている。機能性膜119がX電極117間の隙間を埋設し且つ表面も覆い、機能性膜表面が、
図9の(h)に示すように概ね面一になるのが好ましい皮膜の形態である。機能性膜119の厚さは、該X電極、取出し配線106、および端子接続部116の厚さにもよるが、これらの厚さが0.1〜10μm程度であれば機能性膜119の厚さは2〜40μm程度が最適である。
【0094】
機能性膜は、電磁波、紫外線、可視光線、電子線等の電離放射線エネルギーにより架橋硬化させて使用する電離放射線硬化性組成物であって、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を分子中に含有する多官能性モノマーを主成分とするものであることが生産効率、および生産安定性の点で好ましい。紫外線照射による硬化の場合には、波長が150〜450nmの範囲の光を含む高圧水銀灯光源を使用する。電子線硬化の場合には、加速電圧が10〜500kV、より好ましくは30〜200kVの範囲で照射量が3〜300kGyとなる電子線が必要である。
【0095】
多官能性モノマーとしては、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ‐(メタ)アクリロイルオキシプロピネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,3‐ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシメチル[2.2.1]ヘプタン、ポリ1,2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオール(メタ)アクリレート、3,8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ[5.2.10]デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリンサンエステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。多官能モノマーは、単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、必要で有れば単官能モノマーと併用して共重合させることもできる。
【0096】
また、本発明にて好ましい多官能性モノマーとしてウレタンアクリレートも挙げられ、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有するアクリレートモノマーを反応させ容易に形成されるものを挙げることができる。
【0097】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。また、これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、これらは塗液においてモノマーであってもよいし、一部が重合したオリゴマーであってもかまわない。
【0098】
光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0099】
光増感剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン、トリフェニルホスフィン等のアルキルフォスフィン系、β−チオジグリコール等のチオエーテル系をあげることが出来、これらを1種類あるいは2種類以上を混合して使用することもできる。
【0100】
さらに、性能改良のため、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤等を含有することもできる。
【0101】
本発明の機能性膜にブロッキング耐性を持たせる等の目的で添加する微粒子としては、各種金属酸化物、ガラス、プラスティックなどの透明性を有するものを特に制限なく使用することが出来る。例えば、シリカやジルコニア、チタニア、酸化カルシウム等の金属酸化物や導電性を有するアルミナ、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン等の無機系導電性微粒子、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル−スチレン共重合体、メラミン、ポリカーボネート等の各種ポリマーからなる架橋または未架橋の有機系微粒子やシリコーン系微粒子などが挙げられる。なお、これらの形状は特に制限されずビーズ状の球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、球状のものが好ましく、特に真球状のものであることが好ましい。これらの微粒子は1種または2種以上を適宜に選択して用いることが出来る。
【0102】
微粒子の平均粒子径は10から200nmであり、好ましくは10から100nmである。平均粒子径が10nm未満の場合には、十分な凹凸形状を形成することができず、貼りつきの抑制に十分でない。一方、平均粒子径が200nm以上の場合には、機能性膜内での光散乱が発生してしまい、透過率が低下する。微粒子の割合は、微粒子の平均粒子径、機能性膜の厚さ等を考慮して適宜に決定されるが、樹脂100重量部に対して、0.1から10重量部とするのが好ましい。
【0103】
機能性膜の形成方法としては、所定の位置を除くストライプ状に機能性膜が印刷できればどの塗工方式を用いてもよく、ダイ塗工方式、マイクログラビア塗工方式、スプレーコーティング塗工方式、キスコーティング塗工方式、等により透明基材の少なくとも片面に塗布することにより形成することができる。特に、薄く、均一に層を形成する必要性があるため、高精度薄膜塗工に適したダイ塗工方式を用いることが好ましい。
【0104】
機能性膜を形成する際の硬化方法としては、例えば、紫外線照射、加熱等を用いることができる。紫外線照射の場合、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ等を使用することができる。紫外線照射量は、通常100mJ/cm
2以上800mJ/cm
2以下である。
【0105】
また、機能性膜の膜厚はハードコート性を求める場合、3μm以上あれば十分な強度となるが、塗工精度、取扱いから5μm以上10μm以下の範囲が好ましい。10μm以上では硬化収縮による基材の反り、ゆがみ、基材折れが発生してしまうためである。さらに、膜厚としては、5μm以上7μm以下の範囲であるとハードコート層としては非常に好ましい。
【0106】
本発明における溶剤としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。また、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセトン、シクロヘキサノンのうち少なくとも1種類を用いることが好ましい。
【0107】
これら溶剤は、樹脂組成物100重量部に対して、溶剤は400重量部から700重量部となるように調液することが好ましい。
【0108】
溶剤が400重量部以下であると、塗布液の粘度が高くなり、ダイコーティング法にて良好な塗布面を形成できなくなる。一方、溶剤が700重量部以上であると、所定膜厚の機能性膜を形成できなくなってしまう。
【0109】
本発明の機能性膜は、反射防止機能等の光学特性を良好なものとするものであってもよく、低屈折率膜とすることができる。
【0110】
低屈折率膜は、ハードコート層等の機能性膜に積層して使用することが好ましく、ハードコート層等の機能性膜よりも低い屈折率を有するものが好ましい。本発明の好ましい形態としては、ハードコート層等の機能性膜の屈折率が1.5以上であり、低屈折率膜の屈折率が1.5未満であり、より好ましくは1.45以下、更に好ましくは1.35以下である。屈折率が1.5以上であると低屈折率膜とハードコート層等の機能性膜の屈折率差が小さいために反射が高くなってしまうことから、屈折率は低い方が望ましい。
【0111】
低屈折率膜における低屈折率粒子として、空隙を有する微粒子を利用することが挙げられ、空隙を有する微粒子とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子である。
【0112】
また、微粒子の形態、構造、凝集状態、被膜内部での微粒子の分散状態により、内部、及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子も含まれる。この微粒子を使用した低屈折率膜は、屈折率を1.30以上1.45以下に調節することが可能である。
【0113】
このような空隙を有する無機系の微粒子としては、例えば、中空シリカ微粒子を挙げることができる。空隙を有する中空シリカ微粒子は製造が容易でそれ自身の硬度が高いため、バインダーと混合して低屈折率膜を形成した際、その層強度が向上され、かつ、屈折率を1.20以上1.45以下程度の範囲内に調整することを可能とする。
【0114】
中空シリカ微粒子の平均粒子径は、5nm以上300nm以下であることが好ましく、下限が8nmであり上限が100nmであることがより好ましく、下限が10nmであり上限が80nmであることが更に好ましい。
【0115】
微粒子の平均粒子径がこの範囲内にあることにより、低屈折率層に優れた透明性を付与することが可能となる。中空シリカ微粒子は、低屈折率層中にマトリックス樹脂100重量部に対して、通常0.1重量部以上500重量部以下、好ましくは10重量部以上200重量部以下とするのが好ましい。
【0116】
低屈折率膜の形成にあっては、低屈折率膜形成用樹脂として1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を分子中に含有する多官能性モノマー、中空シリカ微粒子、及び必要に応じて添加剤(重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤等)を溶剤に溶解又は分散してなる溶液又は分散液を低屈折率膜形成用組成物として用い、組成物による塗膜を形成し、紫外線照射あるいは加熱等により硬化させることで低屈折率層を得ることができる。なお、重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤等の添加剤は公知のものを使用することができる。
【0117】
低屈折率膜形成用樹脂の1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を分子中に含有する多官能性モノマーとしては、ハードコート層等の機能性膜形成時に用いる電離放射線硬化型樹脂にて記載している樹脂等を使用することができる。
【0118】
低屈折率膜は、通常、揮発性溶媒に希釈して塗布される。希釈溶媒として用いられるものは、組成物の安定性、ハードコート層等の機能性膜に対する濡れ性、揮発性などを考慮して、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。中でも、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール(IPA)、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が好ましい。また、組成物の調製方法は、成分を均一に混合できれば良く、公知の方法に従って実施すれば良く、公知の装置を使用して混合分散することができる。
【0119】
低屈折率膜は、ロールツーロール方式で印刷により表面処理を行ったハードコート層等の機能性膜上に塗工され、加熱乾燥により塗膜中の溶媒を揮発させ、その後、加熱、紫外線照射、電子線照射等を行い塗膜を硬化させる。また、低屈折率層の形成は、ハードコート層等野機能性膜の形成方法と同様にダイコート法を用いると好ましい。
【0120】
なお、低屈折率膜を形成する時の膜厚(nm)dAは、
dA=mλ/(4nA) 式(2)
(式(2)中、nAは低屈折率膜の屈折率を表し、mは正の奇数を表し、好ましくは1を表し、λは波長であり、好ましくは480〜580nmの範囲の値である)を満たすものが好ましい。
【0121】
<第5の実施形態>
図4の(b)に、本発明の第5の実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法により製造された、フィルム基材の両面に2層の透明電極層が形成された両面構造の投影型静電容量式タッチパネルセンサフィルムを示す。両面構造のタッチパネルセンサフィルムも、貼り合せることなく1枚タイプとして用いられる。
図4の(b)においても接続部116は機能性膜119で被覆されておらず、X電極117とY電極118がフィルム基材105の表面と裏面の両面に形成されていること以外は、第4の実施形態と同様にして製造されるため、重複する部分についての説明は省略し、異なる点のみを以下で記述する。
【0122】
本発明の第5の実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法としては、第4の実施形態と同様に、
図9の(a)から(h)に示す工程を経て、まず初めにフィルム基材105の一方の面にX電極117と、取出し配線106と、端子接続部116と、機能性膜119を形成した後、フィルム基材105のもう一方の面に同様の工程を経てY電極118等を形成する方法がある。この他、
図9の(a)のITO電極11をフィルム基材105の両面に同時に成膜し、
図9の(b)の感放射線性組成物12をロールコーター13を用いて、表面と裏面に連続に成膜した後、表面と裏面でそれぞれX電極パターン、Y電極パターンに対応した異なるフォトマスクを介して両面同時に紫外線を照射し、両面同時にエッチング、レジスト剥離する方法等を使用できる。この方法によれば、両面同時に紫外線照射、エッチング、レジスト剥離されるので、工程が簡略化でき、より効率よく機能性膜付きタッチパネルフィルムを製造できる。
【0123】
<第6の実施形態>
本発明の第6の実施形態に係る機能性膜付きタッチパネルフィルムの製造方法により製造された、金属配線のメッシュ構造パターンを上面視で
図1に示す。
【0124】
前述のとおり、透明電極には酸化インジウム錫(ITO)、導電性高分子や銀ナノワイヤー等の透明導電材料と、導電性の高い金属の細線パターンを格子状に張り巡らせたメッシュ構造の電極の2つに大別される。
【0125】
図1に示すように、金属配線のメッシュ配置1とは、同じピッチのX方向のストライプ状金属配線2、およびY方向のストライプ状金属配線3を直交するように配置したもので、上面視では開口部4が、概ね正方形のメッシュ構造をなすものである。タッチパネルを成す構成としては、一方の面だけにストライプ状金属配線を備えた片面構造のタッチパネルフィルムを2枚準備して背中合わせに張り合わせて使用する2枚タイプと、一方の面だけにメッシュ構造を設けた片面構造のタッチパネルフィルム、およびフィルム基材5の表面と裏面に形成した両面構造のタッチパネルフィルムの1枚タイプとがあり、いずれの場合に対しても本発明は適用できる。両面構造の場合は、実線が表面のストライプ状金属配線3を、二重線が裏面のストライプ状金属配線2に相当し、絶縁性のフィルム基材5が金属配線2と金属配線3の間にあるので、上下の金属配線2、3は自然に絶縁されている。
【0126】
金属配線は遮光性があるので、線幅dが太くなれば開口率が低くなって透過率が下がり、ストライプのピッチpが長くなると位置センサーとしての分解能が低くなるので、線幅dとピッチpは適切な値に設定される。金属材料としては、アルミニウムや銅が好適であるが抵抗とコストの面から銅が最も好ましい。
【0127】
銅配線によって仕切られたメッシュの開口部4の幅をp、遮光部の配線幅をdとすると開口率90%でd/p=0.05程度、開口率98%でd/p=0.01程度である。遮光性金属の線幅dは、概ね20μm以下であれば視認できないといわれているので、線幅d=20μmでは、開口の一辺pは400〜2000μmの範囲となる。より狭い線幅d=10μmでは200〜1000μm、d=5μmでは100〜500μmの範囲とする必要がある。大型ディスプレイ用では線幅は50μm程度以下が好ましく開口率90%でpは1000μm程度以上となる。
【0128】
タッチパネルの透視可能な部分の大きさは、液晶ディスプレイや有機EL等の画像表示部に重ねて使用されるので、少なくともこれらの画像表示部と同じ大きさである。但し、その範囲全てがタッチパネルの入力範囲でない場合には、透視範囲であってもメッシュ電極はなくても構わない。一般に、透視が必要な範囲以外は、見えないように枠状に黒塗りされているのが好ましい(加飾)。
【0129】
メッシュ電極を構成する個々の金属配線2、3は、全てフィルム基材105の外周に取出し配線106に導かれて外部との接続用に端子接続部116につながっている。これらの金属配線2、3と、取出し配線106と、端子接続部116に用いる材質としては、安価で抵抗の低い銅が好ましく、透視されない部分では、許される範囲で線幅を太くすることができ、概ね0.02〜0.5mmの範囲が好ましい。これらの金属配線2、3と、取出し配線106と、端子接続部116は、フィルム基材105上に成膜形成された銅薄膜から同一材料で同一工程で一括形成されるため、効率よく機能性膜付きタッチパネルフィルムを製造できる。
【0130】
銅配線の表面抵抗は3Ω/□程度以下に設定するのが好ましい。抵抗が低い方が、センサ感度が高いからである。また、厚さが100μm程度のフィルム基材105の両面に金属配線間2、3を形成する両面構造の場合は、金属配線間2、3間の静電容量を0.5〜3pFの範囲に設定するのが好ましい。
【0131】
銅配線パターンをエッチングにより厚さ13μm、線幅10μm、ピッチ1000μm、開口率98%のメッシュ構成とした場合には、表面抵抗は0.3Ω/□(四端子法による)程度になる。銅配線パターンを厚さ1.5μm、線幅5μm、メッシュピッチ250μm(前述のpにほぼ該当)、開口率93%とした場合には、表面抵抗は3Ω/□程度になる。製法上の材質差があるが、表面抵抗は3Ω/□以下の範囲で所望の値に制御できる。
【0132】
フィルム基材105上に、銅からなる金属配線2、3を敷設したままでは銅配線の表面と側面が大気に露出しており、空気中の水分や酸素等により銅表面が酸化して次第に抵抗が増加する不具合を生じる。例えば、85℃95%RHの加速条件では1000時間後に抵抗は20%程度増加することが知られている。抵抗の増加は感度の低下を招くので好ましいものではなく抑制する必要がある。これを回避するためにも機能性膜119が必要となる。
【実施例】
【0133】
本発明をさらに詳しく説明するために、以下に実施例を列挙するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例では、前述の実施形態で説明した構成についての製造方法について、詳説する。
【0134】
<実施例1>
幅1330mm、厚さ100μm、長さ2000mのロール状PETフィルムにスパッタによりITOを230Åの厚さで成膜し、ロールコーターを用いてネガレジストを、ITO上に1.5μm程度の厚さで塗布し、90℃で30分乾燥した。次に、透明電極を構成するパターンを備えたフォトマスクを介してUV光を約100mJ/cm
2の露光量で照射し、次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬してフォトレジスト層に、現像処理を施した。これにより、透明電極を構成するパターンに対応する部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0135】
次に、リン酸/硝酸/水が60/10/30の重量比で混合されたエッチング液に、前述のロール状フィルムを40℃90秒浸漬して、ITOの露出部をエッチング除去し、5重量%濃度のNaOH水溶液に40℃120秒浸漬して、残ったレジストを剥離した。これにより、フィルム基材上に、所望の電極パターンを備えるITO電極が形成された。続いて、銀ペーストを用いて、所望のパターンを備えるスクリーン印刷版を用いたスクリーン印刷機で、取出し配線と接続端子部を同時に形成した。
【0136】
機能性膜として、以下に示す処方1を撹拌混合した塗布液を、有効幅1220mm、線数120線のストライプ状にパターン化された印刷版を使用して、マイクログラビアコーティング法により乾燥後の膜厚が6μmになるように塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により600mJ/cm
2の紫外線を照射し、ハードコート層の機能性膜を形成した。以上により、X電極を有する第1タッチパネルフィルムを形成した。
<処方1>
・ウレタンアクリレート(UV−1700B 日本合成化学社製) 100重量部
・微粒子(コロイダルシリカ MEK−ST−L 平均粒子径40nm 30%MEK溶液 日産化学工業社製) 10重量部
・光重合開始剤(イルガキュアー184 BASF社製) 5.0重量部
・溶剤(メチルエチルケトン) 100重量部
・層状粘土鉱物(ルーセンタイトSTN コープケミカル社製) 2.0重量部
【0137】
上記と同様にして、Y電極を有する第2タッチパネルフィルムを形成し、第1タッチパネルフィルムおよび第2タッチパネルフィルムの2枚で構成される実施例1のタッチパネルを得た。次に、タッチパネルについて、接続端子部を介して外部コントローラとの接続の可否を評価した。その結果を表1に示す。
【0138】
<実施例2>
フィルム基材を幅1300mmのロール状PETフィルムに、印刷版を有効幅1190mmの印刷版に、タッチパネル構造を透明電極が銅メッシュ構造の両面1枚構造に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のタッチパネルを得た。以下では、銅メッシュ構造の電極の形成方法について説明する。
【0139】
先ず、厚さが12μmの銅箔を表裏にラミネートしたロール状PETフィルムを用意し、銅箔のパターニングを定法のフォトリソ法を適用して実施した。
【0140】
PETフィルムには、厚さが12μmの表面が平滑な電解銅箔が6μm厚の接着剤を介して表裏に積層されている。銅箔をエッチングして形成する銅線の線幅は、銅箔の厚さよりは細くできないので、所望の線幅から銅箔のタイプや厚さを決める必要がある。線幅が10μm程度以下と細くなる場合には、フィルム上に蒸着した銅薄膜を用いるのが好ましい。電解銅箔以外では圧延銅箔も使用可能である。
【0141】
ロールコーターを用いてネガレジストを、上側の銅箔面に6μm程度の厚さで塗布し、90℃で30分乾燥した。次に、メッシュ部を構成するストライプパターンと取出し配線用パターン等を備えたフォトマスクを介してUV光を約100mJ/cm
2の露光量で照射した。他方のフィルム面にも、同じ厚さでレジストを塗布してからフォトマスクを介して露光を行った。次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液にてフォトレジスト層に、現像処理を施した。これにより、銅配線のストライプパターンに対応する部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0142】
次に、比重1.45の塩化第二鉄液を用いて、表裏同時に銅箔の露出部をエッチング除去し、残ったレジストを剥離した。これにより、フィルム基材の表裏に、上面視でメッシュ構造をなすストライプ状の金属配線が形成され、同時に外周部には取出し配線および接続端子部も形成された。
【0143】
<実施例3>
フィルム基材を幅1250mm、厚さ125μmのロール状PETフィルムに、印刷版を有効幅1140mmの印刷版に、タッチパネル構造をITOの両面1枚構造に、機能性膜を反射防止膜(LR)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のタッチパネルを得た。以下では、両面1枚構造の電極の形成方法と、反射防止膜の形成方法について説明する。
【0144】
幅1250mm、厚さ125μm、長さ2000mのロール状PETフィルムに、スパッタによりITOを230Åの厚さでロール状PETフィルムの両面に同時に成膜し、ロールコーターを用いてネガレジストを、成膜した表裏のITO上に順に1.5μm程度の厚さで塗布し、90℃で30分乾燥した。次に、X、Y透明電極をそれぞれ構成するパターンを備えたフォトマスクを介してUV光を表裏面それぞれに対して約100mJ/cm
2の露光量で照射し、次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬して、表裏のフォトレジスト層に同時に現像処理を施した。これにより、X、Y透明電極をそれぞれ構成するパターンに対応する表裏のそれぞれの部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0145】
次に、リン酸/硝酸/水が60/10/30の重量比で混合されたエッチング液に、前述のロール状フィルムを40℃90秒浸漬して、表裏のITOの露出部を同時に一括エッチング除去し、5重量%濃度のNaOH水溶液に40℃120秒浸漬して、表裏の残ったレジストを同時に一括剥離した。これにより、フィルム基材の両面に、所望の電極パターンを備えるITO電極が表裏同時に形成された。続いて、銀ペーストを用いて、所望のパ
ターンを備えるスクリーン印刷版を用いたスクリーン印刷機で、取出し配線と接続端子部を同時に、表裏にそれぞれ印刷形成した。
【0146】
機能性膜として、以下に示す処方2を撹拌混合した塗布液を、有効幅1140mm、線数120線のストライプ状にパターン化された印刷版を使用して、マイクログラビアコーティング法により塗布した後、温度50℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が300mJになるように照射して塗膜を硬化させることにより、0.2g/cm
2(乾燥時)の反射防止膜(LR)を形成した。以上により、実施例3の両面構造のタッチパネルを形成した。
<処方2>
・中空シリカ微粒子(シリカ微粒子の固形分は20重量%溶液;メチルイソブチルケトン、粒子径50ナノメートル) 70重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 30重量部
・光重合開始剤(イルガキュアー127 BASF社製) 3.0重量部
・メチルイソブチルケトン 50重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 50重量部
【0147】
<実施例4>
フィルム基材を幅1250mmのロール状ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルムに、印刷版を有効幅1140mmの印刷版に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のタッチパネルを得た。
【0148】
<比較例1>
印刷版をストライプ状にパターン化されていない印刷版に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のタッチパネルを得た。実施例1から4のタッチパネル及び比較例1のタッチパネルについて、接続端子部を介して外部コントローラとの接続の可否を評価した。その結果を表1に示す。
【表1】
【0149】
表1に示すように、本発明の製造方法を用いて製造された実施例1から4のタッチパネルでは外部との接続が可能であり、従来の製造方法で製造された比較例1のタッチパネルでは外部との接続が不可能であることが判明した。
【0150】
<実施例5>
幅1330mm、厚さ100μm、長さ2000mのロール状PETフィルムにスパッタによりITOを230Åの厚さで成膜し、ロールコーターを用いてネガレジストを、ITO上に1.5μm程度の厚さで塗布し90℃で30分乾燥した。次に、透明電極を構成するパターンを備えたフォトマスクを介してUV光を約100mJ/cm
2照射し、次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬してフォトレジスト層に、現像処理を施した。これにより、透明電極を構成するパターンに対応する部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0151】
次に、リン酸/硝酸/水が60/10/30の重量比で混合されたエッチング液に、前記のロール状フィルムを40℃90秒浸漬して、ITOの露出部をエッチング除去し、5重量%濃度のNaOH水溶液に40℃120秒浸漬して残ったレジストを剥離した。これにより、フィルム基材上に、所望する電極パターンを備えるITO電極が形成された。続いて、銀ペーストを所望するパターンを備えるスクリーン印刷版を用いてスクリーン印刷機で取出し配線と幅30mmの端子接続部を同時に印刷形成した。
【0152】
機能性膜として、以下に示す処方3を撹拌混合した塗布液を、有効幅を1220mm、端子接続部に相当する位置に幅30mmの未塗工部を設定した開口部を有するダイヘッドを使用して、乾燥後の膜厚が6μmになるように、端子接続部を除く位置に塗布、乾燥させ、高圧水銀灯により600mJ/cm
2の紫外線を照射し、ハードコート層の機能性膜を形成した。以上により、X電極に相当するタッチパネルフィルム1を形成した。
<処方3>
・ウレタンアクリレート(UV−1700B 日本合成化学社製) 100重量部
・微粒子(コロイダルシリカ MEK−ST−L 平均粒子径40nm
30%MEK溶液 日産化学工業社製) 10重量部
・光重合開始剤(イルガキュアー184 BASF社製) 5.0重量部
・溶剤(メチルエチルケトン) 600重量部
・層状粘土鉱物(ルーセンタイトSTN コープケミカル社製) 2.0重量部
【0153】
上記と同様にして、Y電極に相当するタッチパネルフィルム2を形成し、タッチパネルフィルム1およびタッチパネルフィルム2の2枚で構成されるタッチパネル5を得た。次に外部コントローラと接続するために、形成した端子接続部との接続を試みた。その結果を表2に示す。
【0154】
<実施例6>
フィルム基材を幅1330mmのロール状PETフィルムに、タッチパネル構造を透明電極材質として銅メッシュ構造の両面1枚構造に、変更した以外は実施例5と同様にしてタッチパネル6を得た。以下で銅メッシュ構造の電極の形成について示す。
【0155】
先ず、厚さが12μmの銅箔を表裏にラミネートしたロール状PETフィルム5を用意し、銅箔のパターニングを定法のフォトリソ法を適用して実施した。
【0156】
PETフィルムには、厚さが12μmの表面が平滑な電解銅箔が6μm厚の接着剤を介して表裏に積層されている。銅箔をエッチングして形成する銅線の線幅は銅箔の厚さよりは細くできないので、所望の線幅から銅箔のタイプや厚さを決める必要がある。線幅が10μm程度以下と細くなる場合には、フィルム上に蒸着した銅薄膜を用いるのが好ましい。電解銅箔以外では圧延銅箔も使用可能である。
【0157】
ロールコーターを用いてネガレジストを、上側の銅箔11面に6μm程度の厚さで塗布し90℃で30分乾燥した。次に、メッシュ部を構成するストライプパターンと引き出し用電極パターン他を備えたフォトマスクを介してUV光を約100mJ/cm
2照射した。他方のフィルム面にも同じ厚さでレジスト12を塗布してからフォトマスクを介して露光を行った。次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液にてフォトレジスト層に、現像処理を施した。これにより、銅配線のストライプパターンに対応する部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0158】
次に、比重1.45の塩化第二鉄液を用いて、表裏同時に銅箔の露出部をエッチング除去し、残ったレジストを剥離した。これにより、フィルム基材の表裏に、上面視でメッシュ構造をなすストライプ状の金属配線が形成され、同時に外周部には取出し配線および端子接続部も形成された。
【0159】
<実施例7>
フィルム基材を幅1250mm、厚さ125μmのロール状PETフィルムに、ダイヘッドを有効幅が1140mm、かつ開口部の設定を端子接続部に相当する位置に幅20mmの未塗工部を有する設定に、タッチパネル構造をITOの両面1枚構造に、機能性膜をハードコート膜とその上に積層される反射防止膜に変更した以外は実施例5と同様にしてタッチパネル7を得た。以下で両面1枚構造の電極の形成と、反射防止膜の形成について示す。
【0160】
幅1250mm、厚さ125μm、長さ2000mのロール状PETフィルムにスパッタによりITOを230Åの厚さでフィルム基材の両面に同時に成膜し、ロールコーターを用いてネガレジストを、成膜した表裏のITO上に順に1.5μm程度の厚さで塗布し90℃で30分乾燥した。次に、X、Y透明電極をそれぞれ構成するパターンを備えたフォトマスクを介してUV光を表裏面それぞれに対して約100mJ/cm
2照射し、次いで、3%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬して表裏のフォトレジスト層に同時に、現像処理を施した。これにより、X、Y透明電極をそれぞれ構成するパターンに対応する表裏の部分にレジストパターンが形成され、それ以外の部分のレジストが除去された。
【0161】
次に、リン酸/硝酸/水が60/10/30の重量比で混合されたエッチング液に、前記のロール状フィルムを40℃90秒浸漬して、表裏のITOの露出部を同時に一括エッチング除去し、5重量%濃度のNaOH水溶液に40℃120秒浸漬して表裏の残ったレジストを同時に一括剥離した。これにより、フィルム基材の両面に、所望する電極パターンを備えるITO電極が表裏同時に形成された。続いて、銀ペーストを所望するパターンを備えるスクリーン印刷版を用いてスクリーン印刷機で取出し配線と幅20mmの端子接続部を同時に、表裏にそれぞれ印刷形成した。
【0162】
機能性膜として、まず以下に示す処方4を攪拌混合した塗布液を、有効幅を1140mm、端子接続部に相当する位置に幅20mmの未塗工部を設定した開口部を有するダイヘッドを使用して塗布した後、温度65℃の熱オーブン中で30秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が200mJになるように照射して塗膜を硬化させることにより、6.0g/cm
2(乾燥時)のハードコート膜を形成した。
<処方4>
・ジペンタエリスリトールトリアクリレート(A−DPH 新中村化学工業株式会社製) 25重量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート (A−TMMT、新中村化学工業株式会社製) 25重量部
・ウレタンアクリレート (UA−306H 共栄者科学株式会社製) 50重量部
・光重合開始剤(イルガキュア184 BASF社製) 5.0重量部
【0163】
次に、以下に示す処方5を撹拌混合した塗布液を、有効幅を1140mm、端子接続部に相当する位置に幅20mmの未塗工部を設定した開口部を有するダイヘッドを使用して塗布した後、温度50℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が300mJになるように照射して塗膜を硬化させることにより、0.2g/cm
2(乾燥時)の反射防止膜(LR)を形成した。以上により、両面構造のタッチパネル3を形成した。
<処方5>
・中空シリカ微粒子(該シリカ微粒子の固形分は20重量%溶液;メチルイソブチルケトン、粒子径50ナノメートル) 70重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(A−TMM−3LM−N 新中村化学株式会社製) 6.0重量部
・光重合開始剤(イルガキュア184 BASF社製) 0.9重量部
・メチルイソブチルケトン 80重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 1 50重量部
【0164】
<実施例8>
フィルム基材を幅1250mm、のロール状ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルムに、ダイヘッドを有効幅が1140mm、かつ開口部の設定を端子接続部に相当する位置に幅30mmの未塗工部を有する設定に、変更した以外は実施例5と同様にしてタッチパネル8を得た。
【0165】
<比較例2>
機能性膜の塗工方式を一般的なマイクログラビア塗工方式に変更した以外は実施例5と同様にしてタッチパネル9を得た。以上の結果を表2に示す。
【表2】
【0166】
表2に示すように、本発明の製造方法を用いて製造された実施例5から8のタッチパネルでは外部との接続が可能であり、従来の製造方法で製造された比較例のタッチパネルでは外部との接続が不可能であることが判明した。また本発明のヘッドにおける設定を変えることで、同一のダイヘッドを使用して様々な有効幅及び塗工位置に対応することが可能であることが示された。