(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6244940
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】印刷物とそれを用いた包装材料
(51)【国際特許分類】
B41M 3/00 20060101AFI20171204BHJP
B41M 1/06 20060101ALI20171204BHJP
B41M 1/18 20060101ALI20171204BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20171204BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20171204BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20171204BHJP
B41M 7/02 20060101ALI20171204BHJP
B32B 23/08 20060101ALN20171204BHJP
【FI】
B41M3/00 B
B41M1/06
B41M1/18
B41M3/14
B32B27/00 E
B65D65/40 D
B41M7/02
!B32B23/08
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-13241(P2014-13241)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-139927(P2015-139927A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野口 圭一
(72)【発明者】
【氏名】川村 太郎
【審査官】
外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3169127(JP,U)
【文献】
特開2007−261019(JP,A)
【文献】
特開2005−238626(JP,A)
【文献】
特開2004−114654(JP,A)
【文献】
特開2007−098785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/00
B32B 27/00
B41M 1/06
B41M 1/18
B41M 3/14
B41M 7/02
B65D 65/40
B32B 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に撥液性を有する着色ニス層で絵柄を設け、少なくともその絵柄の着色ニス層を含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層を設け、
前記撥液性を有する着色ニス層の有無により、紫外線硬化型グロスニス層が平滑に塗布された部分と、該撥液性を有する着色ニス層上に該紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集している部分があり、
前記撥液性を有する着色ニス層が着色インキを0.1〜0.2重量%含有するニスで設けられていることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記基材上にあらかじめ印刷インキ層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記撥液性を有する着色ニス層が、紫外線硬化型タイプのニスからなることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の印刷物を用いたことを特徴とする包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物とそれを用いた包装材料に関するものである。特にパール調で、且つ、マット調の部分とグロス調の部分で絵柄などを表現した付加価値の高い印刷物と、その印刷物を用いた紙器などの包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、化粧品、薬品などの商品、特に内容物の販売価格が高い場合には、一般的に多色刷りによるカラフルな印刷や、ポリ塩化ビニルフィルムやポリプロピレンフィルムをラミネートしてグロス調を出したり、マットニスを使用してマット調の印刷を施したり、金・銀箔などの箔押を行なってメタリック調にしたり、エンボス加工により、凹凸感を表現した高級紙器が使用されている。
【0003】
たとえば、高級紙器などの外面にマット調の印刷表現を行なう場合は、オレフィン系、あるいはアルキッド系合成樹脂などの合成樹脂系やシリカ系、カオリン系などの無機材料系のマット剤を適量添加したマットニスを印刷面に設け、マット剤がニスの表面に凹凸を付け、光沢を抑えることにより行なっていた。しかしながら、耐摩擦性が弱くマットニスが擦れることによって光沢が出てきてしまう欠点があった。
【0004】
また、この欠点を改良するために、紫外線硬化型高グロスニスを印刷し硬化させた後に紫外線硬化型低グロスニス(マットニス)を設けてなる印刷物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、UVオフセット印刷機でプロセス4色と特色などの通常印刷を行った後、附属するインラインコータを使用して紫外線硬化型高グロスニスのベタ印刷を行い、さらにUVオフセット印刷機で前記高グロスニス上に低グロスニスの印刷を行うので生産工程が長くなり、生産コストが高くなる問題点と、インライン生産ではないので印刷工程数が多くなり、その分、紙の伸縮などにより、印刷見当も不完全で品質的にも問題点が多く実用的でないのが現状である。
【0006】
上記問題点を解決し、耐摩耗性が優れ、流通工程や使用時において、マット調がなくならない印刷物として開発された印刷物として下記のものがある。
【0007】
すなわち、基材上に撥液性を有するニス層で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層を含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層を設け、前記撥液性を有するニス層の有無により、紫外線硬化型グロスニス層が平滑に塗布された部分と、該撥液性を有するニス層上に該紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集していて、凝集部分のみマット感のある印刷物がある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
一方、紙箱にパール調の加飾を施す場合、パールインキを印刷する方法や、パール紙を貼り合わせる方法があった。しかし、パールインキを施す方法では、パールインキ上に表面コートを施すとパール調ではなくなってしまうため、耐摩擦性を要求される紙箱などへは使用することができなかった。また、パール紙を貼り合わせる方法では、コスト高になってしまっていた。
【0009】
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−52430号公報
【特許文献2】特許第4556445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、低コストで、耐摩耗性があり、パール調であり、且つ、マット調の部分とグロス調の部分で絵柄などが表現された印刷物とそれを用いた包装材料を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は係る課題に鑑みなされたものであり、請求項1の発明は、基材上に撥液性を有する着色ニス層で絵柄を設け、少なくともその絵柄の着色ニス層を含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層を設け、
前記撥液性を有する着色ニス層の有無により、紫外線硬化型グロスニス層が平滑に塗布された部分と、該撥液性を有する着色ニス層上に該紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集している部分があり、
前記撥液性を有する着色ニス層が着色インキを0.1〜0.2重量%含有するニスで設けられていることを特徴とする印刷物である。
【0013】
本発明の請求項2の発明は、前記基材上にあらかじめ印刷インキ層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の印刷物である。
【0014】
本発明の請求項3の発明は、前記撥液性を有する着色ニス層が、紫外線硬化型タイプのニスからなることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷物である。
【0015】
本発明の請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の印刷物を用いたことを特徴とする包装材料である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の印刷物とそれを用いた包装材料は、低コストで、耐摩耗性があり、パール調であって、且つ、マット調の部分とグロス調の部分で絵柄などが表現され、付加価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の印刷物の一例を模式的に断面で示した説明図である。
【
図2】本発明の印刷物の他の例を模式的に断面で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態につき説明する。
図1は、本発明の印刷物の一例を模式的に断面で示した説明図である。
【0019】
本発明の一例の印刷物100は、
図1に示すように、基材1上に撥液性を有する着色ニス層2で絵柄を設け、少なくともその撥液性を有する着色ニス層2を含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層3を設けた印刷物である。
【0020】
先ず、本例の印刷物100に使用する基材1は、印刷物を提供可能なものであれば任意の材料が使用できる。例えば、紙、プラスチックシート、紙とプラスチックフィルムをラミネートした複合材料、金属箔、金属板、木材などが挙げられる。
【0021】
印刷物を包装材料として紙器に用いる場合、使用される紙は、主に板紙が多く、例えばマニラボール、コートボール、ノーコートボール、クラフトボール、色ボールなどが使用される。また、贈答用紙器の場合は、マイクロフルート、Eフルートなど使用した化粧段ボールが使用される。
【0022】
さらに、プラスチックシートとしては、ポリエステルシート、ポリ塩化ビニルシート、アクリル樹脂シートなどが使用できる。
【0023】
紙とプラスチックフィルムをラミネートした複合材料としては、板紙とポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを熱可塑性樹脂であるポリエチレンや接着剤を介してラミネートした複合材料を使用することもできる。
【0024】
このように基材1は、被包装体に適した包装に必要な物性、外観に合せて適宜選択することが可能である。
【0025】
次に、基材1上に撥液性を有する着色ニス層2で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層3を設ける。
【0026】
前記撥液性を有する着色ニス層2に使用するニスは、特に限定されないが、例えばセルローズ系、ポリアミド系、塩酢ビ系、変性ポリオレフィン系、ゴム系、アクリル系、ウレタン系などの樹脂成分にワックスやシリコンを添加したものが使用でき、好ましくは紫外線硬化型の撥液性を有するニスを使用することが望ましい。
【0027】
前記紫外線硬化型の撥液性を有するニスの場合は、アクリル系や不飽和ポリエステル系のプレポリマーに、アクリルやスチレンなどのモノマー成分、および光重合開始剤の混合物にワックスやシリコンを添加したものが使用される。
【0028】
そして、前記撥液性を有する着色ニス層2に使用するニスには、着色インキが0.1〜0.2重量%の割合で含有されている。この範囲で着色インキを含有することにより、撥液性を有する着色ニス層2がパール調に着色されて見える。
【0029】
着色インキの配合が0.1重量%未満では着色が不充分でパール調にならない。逆に0.2重量%より多く含有させると、しっかり色がついてしまいパール調にならない。
【0030】
次に、該撥液性を有する着色ニス層2を含む範囲上に設ける紫外線硬化型グロスニス層3に使用する紫外線硬化型グロスニスは、特に限定されないが、例えばアクリル系や不飽和ポリエステル系のプレポリマーに、アクリルやスチレンなどのモノマー成分、光重合開始剤およびその他添加剤を組成成分とするグロスニスが挙げられる。
【0031】
基材1上に撥液性を有する着色ニス層2で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層3を設ける方法は、特に限定されることはなく、例えば、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、ロールコーティング方式、リバースコーティング方式などを使用することができる。
【0032】
オフセット印刷方式に用いるオフセット印刷機は、UVオフセット印刷機を使用し、基材1上に撥液性を有するニスと紫外線硬化型グロスニスをインラインで印刷することにより、印刷の見当精度が非常に高くなり、高付加価値の印刷物が生産できる。
【0033】
以上のように、基材1上に撥液性を有する着色ニス層2で絵柄を設け、少なくともその
絵柄のニス層2を含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層3を設けることにより、該撥液性を有する着色ニス層2はパール調になり、そして、撥液性を有する着色ニス層2上に設けられた紫外線硬化型グロスニスの部分は、該撥液性を有する着色ニス層2に弾かれ、該ニス層2上に斑点状に凝集し、光を乱反射してマット調になる。
【0034】
このマット調になった紫外線硬化型グロスニスの部分は、非常に硬く、従来のマットニスを塗布した場合に比較して耐摩擦性が良いので、この印刷物を用いた紙器で包装した商品は、流通工程や使用時に発生する紙器の外面に発生する擦れを防止することができるので、物性面からも優れた加飾方法である。
【0035】
一方、撥液性を有する着色ニス層2が塗布されていない基材1上に設けられた紫外線硬化型グロスニスの部分は、平滑に塗布されるので光沢があるグロス調になる。
【0036】
このように1つの基材1上にマット調の部分とグロス調の部分を作り出すことで、インキでの絵柄表現がなくても、撥液性を有する着色ニスと紫外線硬化型グロスニスの組合せで絵柄を表現することができ、また、撥液性を有する着色ニス層のある部分は、パール調に着色されて、高級感があり、付加価値が高い。
【0037】
次に、本発明の印刷物の他の例について説明する。
図2は、本発明の印刷物の他の例を模式的に断面で示した説明図である。
【0038】
本発明の他の例の印刷物200は、
図2に示すように、基材1上にあらかじめ、イエロー、マゼンタ、シアン、スミの4色のプロセスインキを使用して、調子物印刷やベタ印刷した印刷インキ層4上に撥液性を有する着色ニス層2で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層3を設けている。
【0039】
このように、基材上にあらかじめ印刷インキ層4が設けられていることにより、撥液性を有する着色ニス層2や紫外線硬化型グロスニス層3と相まって、独特なデザイン性を有する印刷物が得られる。
【0040】
次に、本発明の印刷物の好ましい物性、性状としては、先ず、基材1上の該撥液性を有する着色ニス層2の無い部分に塗布された紫外線硬化型グロスニスの平滑な面と、該撥液性を有する着色ニス層2上に塗布された該紫外線硬化型グロスニスの斑点状に凝集している面の光沢度の差が、40〜80であることが好ましい。
【0041】
また、該撥液性を有する着色ニス層2上に紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集している部分でこの凝集の斑点の長径が30〜1000μmであることが好ましい。
【0042】
また、該撥液性を有する着色ニス層2上に紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集している部分で、この凝集の斑点の数が10
2〜10
4個/cm
2であることが好ましい。
【0043】
また、該撥液性を有する着色ニス層2上に紫外線硬化型グロスニスが斑点状に凝集している部分で、この凝集の斑点の高さが5〜70μmであることが好ましい。
【0044】
また、紫外線硬化型グロスニスが平滑に塗布された部分の該紫外線硬化型グロスニスの硬化膜の厚さが2〜7μmの範囲であることが好ましい。
【0045】
そして、紫外線硬化型グロスニスが凝集した斑点の25%以上が、平滑に塗布された紫外線硬化型グロスニスの硬化膜の厚さよりも、高さが高いことが好ましい。
【0046】
さらに、撥液性を有する着色ニス層2が、紫外線硬化型タイプのニスからなることが好ましい。
【0047】
以上のように本発明の印刷物は、
図1のように、基材1上に直接、或いは、
図2のように、あらかじめ印刷インキ層4を有する基材1上に、撥液性を有する着色ニス層2で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層3を設けることにより、その撥液性を有する着色ニス層2上の部分は、該グロスニスが斑点状に凝集して光を散乱させマット調になり、また該ニス層2のない部分はグロス調となって独特なデザイン性を有し、さらに、着色インキを含有した撥液性を有する着色ニス層のある部分は、パール調に着色されて、高級感のある印刷物が得られる。
【0048】
そして、その硬化した該グロスニスは非常に硬いため、耐摩擦性が向上し、さらに、パール調を得る方法が、撥液性を有するニスに着色インキを含有させて用いるだけであり、印刷物が、オフセット印刷工程のみで製造できるので印刷見当が非常に良く品質が優れ、且つ1工程で製造できるので生産コストが安くなり、その印刷物は、品質性、デザイン性の優れた高付加価値のあるものとなる。
【0049】
上記した本発明の印刷物は、紙器などの包装材料に用いることができ、さらには、ポスターやチラシなどの商業印刷物、書籍やそのカバー、テーブルクロス、壁紙に用いたり、コピーなどによる偽造防止用途に用いたりすることができる。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0051】
<実施例1>
本発明の印刷物は、
図1に示すように、基材1である板紙(王子製紙(株)のOKボール)上に、アクリル系プレポリマーにアクリルモノマーを希釈剤として用い、これにワックス及びシリコンを添加した紫外線硬化型の撥液性を有するニスに、さらに、紫外線硬化型のオフセットインキ(赤)を、0.1重量%になるように含有させた紫外線硬化型の撥液性を有する着色ニスで、絵柄を、UVオフセット印刷機の1ユニット目のPS版で印刷し、該絵柄部分に紫外線を照射して該撥液性を有するニスを硬化させ、撥液性を有する着色ニス2を設けた。
【0052】
次に、連続してアクリル系プレポリマーにアクリルモノマーを希釈剤として用いた紫外線硬化型グロスニスを、2ユニット目のフレキソコーターによりベタ柄で印刷し、同様に紫外線を照射して該グロスニスを硬化させ、紫外線硬化型グロスニス層3を設け、実施例1の印刷物を作成した。
【0053】
<実施例2>
紫外線硬化型の撥液性を有するニスに含有させる紫外線硬化型のオフセットインキ(赤)を、0.15重量%になるように含有させた紫外線硬化型の撥液性を有する着色ニスを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の印刷物を作成した。
【0054】
<実施例3>
紫外線硬化型の撥液性を有するニスに含有させる紫外線硬化型のオフセットインキ(赤)を、0.2重量%になるように含有させた紫外線硬化型の撥液性を有する着色ニスを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の印刷物を作成した。
【0055】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0056】
<比較例1>
紫外線硬化型の撥液性を有するニスに含有させる紫外線硬化型のオフセットインキ(赤)を、0.05重量%になるように含有させた紫外線硬化型の撥液性を有する着色ニスを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の印刷物を作成した。
【0057】
<比較例2>
紫外線硬化型の撥液性を有するニスに含有させる紫外線硬化型のオフセットインキ(赤)を、0.25重量%になるように含有させた紫外線硬化型の撥液性を有する着色ニスを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の印刷物を作成した。
【0058】
<比較例3>
紫外線硬化型の撥液性を有するニスに含有させる紫外線硬化型のオフセットインキ(赤)を、0.3量%になるように含有させた紫外線硬化型の撥液性を有する着色ニスを用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の印刷物を作成した。
【0059】
<比較結果>
実施例と比較例の印刷物をそれぞれ評価した。以下に、その比較結果について説明する。
【0060】
(外観)
目視による確認を行った。その結果、実施例と比較例の印刷物は、いずれも、撥液性を有するニスのある絵柄部は、マット調になり、撥液性を有するニスのない部分はグロス調の印刷物が作成できた。
【0061】
しかし、実施例1から3の印刷物は、いずれもパール感が得られたが、比較例1の印刷物では着色がほとんど感じられず、パール感が得られなかった。また、比較例2、3の印刷物では着色が濃く、パール感が得られなかった。
【0062】
(摩擦試験)
学振式耐摩擦試験機でクラフト紙を用いて荷重500gで200回の摩擦試験を行なった。その結果、実施例と比較例の印刷物のいずれも外観上の変化はなかった。
【0063】
比較として従来のマット剤としてシリカ微粉末を添加したマットニスでコーテイングし、硬化させた印刷物について実施したところ、帯状に光沢のある筋が出てしまった。
【0064】
(光沢度)
印刷物のグロス部とマット部の光沢度をハンディ光沢度計((株)堀場製作所製の商品名グロスチェッカIG−330)で60度反射を測定した。
【0065】
その結果、実施例と比較例の印刷物のいずれもグロス部で70〜90、マット部で10〜30であり、グロス部とマット部の光沢の差が明確であった。
【0066】
(斑点の高さ)
実施例と比較例の印刷物のマット部の凝集した紫外線硬化型グロスニスの斑点の高さを形状測定器((株)ミツトヨ製の商品名コントレーサCBH−411)で測定した。
【0067】
その結果、実施例と比較例の印刷物のいずれも凝集した紫外線硬化型グロスニスの斑点の高さは、5〜70μmであり、特に、斑点の25%以上は15μm以上あった。
【0068】
比較として従来のマット剤入りマットニスでコーテイングし、硬化させた印刷物の凹凸を測定したところ、およそ2μm程度であった。
【0069】
以上のように本発明の印刷物は、基材1上に、あるいは、基材1に印刷層4を設けた上に、撥液性を有する着色ニス層2で絵柄を設け、少なくともその絵柄のニス層2を含む範囲上に紫外線硬化型グロスニス層3を設けることにより、その撥液性を有する着色ニス層2は、パール調となり、且つ、着色ニス層2上の部分で該グロスニスが斑点状に凝集して光を散乱させマット調になり、また、該ニス層2のない部分はグロス調となって独特なデザイン性を有する印刷物が得られる。
【0070】
そして、その硬化した該グロスニスは非常に硬いため、耐摩擦性が向上し、さらにオフセット印刷工程のみで製造できるので印刷見当が非常に良く品質が優れ、且つ1工程で製造できるので生産コストが安くなった。
【0071】
その印刷物を用いて包装材料を製造した結果、品質性、デザイン性の優れた高付加価値の高級紙器が得られた。
【符号の説明】
【0072】
1・・・基材
2・・・撥液性を有する着色ニス層
3・・・紫外線硬化型グロスニス層
4・・・印刷層