(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
境界の少なくとも一部が物体によって区切られた複数の領域のそれぞれについて、第1の運転モードでの空調と、前記第1の運転モードより消費エネルギーの少ない第2の運転モードでの空調と、を実行可能なセントラル方式の空調システムを制御する空調制御システムであって、
前記複数の領域のそれぞれに設置される複数の副コントローラと、
前記複数の副コントローラのそれぞれと通信可能な主コントローラと、を備え、
前記複数の副コントローラのそれぞれは、
音波を出力可能な携帯可能装置が出力する音波を受信する音波受信部と、
前記音波の受信強度を示す音波強度情報を前記主コントローラに送信する音波強度情報送信部と、を含み、
前記主コントローラは、
所定の閾値を格納する記憶部と、
前記複数の副コントローラのそれぞれから受け取った前記音波強度情報の中に、前記閾値以上の音波強度を示す特定音波強度情報が少なくとも1つ存在する場合には、最大の音波強度を示す前記特定音波強度情報の送信元の前記副コントローラの設置された前記領域について、前記第1の運転モードを設定し、他の前記領域について、前記第2の運転モードを設定する運転モード設定部を含むことを特徴とする、空調制御システム。
境界の少なくとも一部が物体によって区切られた複数の領域のそれぞれについて、第1の運転モードでの空調と、前記第1の運転モードより消費エネルギーの少ない第2の運転モードでの空調と、を実行可能なセントラル方式の空調システムを制御する空調制御システムであって、
前記複数の領域のそれぞれに設置される複数の副コントローラと、
前記複数の副コントローラのそれぞれと通信可能な主コントローラと、を備え、
前記複数の副コントローラのそれぞれは、
人が身に付ける装置が出力する音波を受信する音波受信部と、
前記音波の受信強度を示す音波強度情報を前記主コントローラに送信する音波強度情報送信部と、を含み、
前記主コントローラは、
所定の閾値を格納する記憶部と、
前記複数の副コントローラのそれぞれから受け取った前記音波強度情報の中に、前記閾値以上の音波強度を示す特定音波強度情報が少なくとも1つ存在する場合には、最大の音波強度を示す前記特定音波強度情報の送信元の前記副コントローラの設置された前記領域について、前記第1の運転モードを設定し、他の前記領域について、前記第2の運転モードを設定する運転モード設定部を含むことを特徴とする、空調制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.第1実施形態:
A−1.システム構成:
図1は、本発明の第1実施形態における空調制御システム10の構成を示す説明図である。空調制御システム10は、建物BU内の複数の領域を対象とした空気調和(単に「空調」とも呼ぶ)を行う空調システム300を制御するためのシステムである。
図1には、空調システム300による空調の対象である建物BU内の4つの領域(領域A,B,C,D)を示している。各領域は、その境界が壁WAや床FL、天井CEによって区切られた部屋である。
【0017】
空調システム300は、いわゆるセントラル方式の空調システムであり、建物BUの外部に設置された空調ユニット310と、各領域に設けられた吹き出しユニット330と、空調ユニット310と各吹き出しユニット330とを接続するダクト320とを有する。空調ユニット310は、自らを制御する制御部、圧縮機、熱交換器、送風機等を有し(いずれも不図示)、冷気または暖気を生成する。空調ユニット310により生成された冷気または暖気は、ダクト320を介して搬送され、各領域に設けられた吹き出しユニット330から各領域内に吹き出される。なお、空調ユニット310は、建物BUの内部に設置されてもよい。
【0018】
空調システム300には、例えば開度が調節可能な開閉弁といった風量調節機構(不図示)が設けられている。空調システム300は、風量調節機構を用いて各領域に供給される冷気または暖気の風量を調節することにより、各領域の温度を制御することができる。なお、空調システム300による各領域の温度制御は、風量を調節することに加えて、または、風量を調節することに代えて、各領域に供給される冷気または暖気の温度を調節することにより実行されるとしてもよい。
【0019】
本実施形態における空調システム300は、複数の領域のそれぞれについて、通常運転モードでの空調と、通常運転モードより消費エネルギーの少ない省エネ運転モードでの空調と、を選択的に実行可能である。通常運転モードでは、領域の温度を目標温度に近づけるような空調制御が実行される。目標温度は、領域毎に予め設定される。これに対し、省エネ運転モードでは、領域の温度を、上記目標温度を不快側(冷房時であれば高温側、暖房時であれば低温側)に調整した調整後目標温度に近づけるような空調制御が実行される。そのため、省エネ運転モードでは、通常運転モードと比べて、空調システム300による消費エネルギーが少なくなる。通常運転モードは、請求項における第1の運転モードに相当し、省エネ運転モードは、請求項における第2の運転モードに相当する。
【0020】
空調制御システム10は、空調システム300を制御する。例えば、空調制御システム10は、ユーザが携帯する携帯電話機400から出力される超音波USの受信状況に基づき、各領域についての空調運転モード(通常運転モードまたは省エネ運転モード)を設定し、設定された空調運転モードを空調システム300に指示する。なお、携帯電話機400は、いわゆるスマートフォン(多機能型の携帯電話機)であってもよいし、スマートフォンではない、いわゆるフィーチャーフォンであってもよい。
【0021】
空調制御システム10は、各領域に設置された複数の副リモートコントローラ100と、各副リモートコントローラ100と通信可能な主リモートコントローラ200とを備える。本実施形態では、主リモートコントローラ200は、建物BU内の領域A−D以外の領域、あるいは、建物BU内の外壁に設置されている。なお、主リモートコントローラ200は、領域A−Dのいずれかに設置されてもよい。その場合に、主リモートコントローラ200と1つの副リモートコントローラ100とが一体の装置として構成されてもよい。あるいは、主リモートコントローラ200と空調ユニット310とが一体の装置として構成されてもよい。副リモートコントローラ100は、請求項における副コントローラに相当し、主リモートコントローラ200は、請求項における主コントローラに相当する。
【0022】
図2は、副リモートコントローラ100の構成を概略的に示す説明図である。副リモートコントローラ100は、表示部130と、操作部140と、通信部150と、温度センサ160と、マイク(マイクロフォン)170と、時計180と、CPU(Central Processing Unit)110と、メモリ120とを含んでいる。これらの各要素は、互いに内部バスにより電気的に接続されている。
【0023】
表示部130は、液晶パネルにより構成されており、各種設定情報や各種メニュー画面、温度センサ160により検出された領域の温度(室温)等を表示する。また、表示部130は、マイク170による音波受信強度(後述)を表示するとしてもよい。なお、液晶パネルに代えて他の表示デバイスを用いて表示部130を構成してもよい。操作部140は、ユーザによる各種操作を受け付ける。なお、例えばタッチパネルのように、表示部130と操作部140とが一体となった構成を採用してもよい。通信部150は、主リモートコントローラ200との間で通信を行う。かかる通信は、有線通信であってもよいし無線通信であってもよい。マイク170は、音波(超音波USを含む)を受信して電気信号に変換する。マイク170は、請求項における音波受信部に相当する。
【0024】
メモリ120は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)により構成されている。メモリ120は、制御プログラムを記憶すると共に、領域ID記憶部121を備えている。領域ID記憶部121には、副リモートコントローラ100が設置された領域を特定する領域IDが記憶されている。
【0025】
CPU110は、メモリ120に記憶された制御用プログラムを実行することにより、副リモートコントローラ100の動作を制御する。例えば、CPU110は、操作部140における操作内容に応じた操作信号や温度センサ160により検出された温度を示す情報を、領域ID記憶部121に格納された領域IDと共に、通信部150を介して主リモートコントローラ200に送信する。また、CPU110は、通信部150を介して主リモートコントローラ200から受け取った時刻同期指示に従い、時計180の時刻合わせを行う。これにより、各副リモートコントローラ100間で時計180の時刻が同期される。CPU110は、また、音波強度情報送信部111として機能する。音波強度情報送信部111は、マイク170による音波の受信強度を示す音波強度情報を、領域ID記憶部121に格納された領域IDと共に、通信部150を介して主リモートコントローラ200に送信する。
【0026】
図3は、主リモートコントローラ200の構成を概略的に示す説明図である。主リモートコントローラ200は、操作部240と、通信部250と、時計280と、CPU210と、メモリ220とを含んでいる。これらの各要素は、互いに内部バスにより電気的に接続されている。
【0027】
操作部240は、ユーザによる各種操作を受け付ける。通信部250は、副リモートコントローラ100および空調ユニット310との間で通信(有線通信または無線通信)を行う。なお、主リモートコントローラ200と副リモートコントローラ100および空調ユニット310との間の通信は、直接的な通信に限られず、何らかの中継装置を介した間接的な通信であってもよい。
【0028】
メモリ220は、EEPROMにより構成されている。メモリ220は、制御プログラムを記憶すると共に、閾値記憶部221を備えている。CPU210は、メモリ220に記憶された制御用プログラムを実行することにより、主リモートコントローラ200の動作を制御する。例えば、CPU210は、各領域に設置された副リモートコントローラ100から受け取った温度を示す情報に基づき、各領域の風量等を通信部250を介して空調システム300に指示する。また、CPU210は、各副リモートコントローラ100間で時計180の時刻を同期させるために、所定のタイミングで、時計280の示す時刻情報を含む時刻同期指示を通信部250を介して各副リモートコントローラ100に繰り返し送信する。
【0029】
閾値記憶部221には、予め設定された音波受信強度の閾値Xが記憶されている。一般に、超音波USを含む音波は、電波と比較して、物体に遮られやすく、物体の裏側に回り込みにくい性質、および、空気中を通過する際に減衰しやすい性質を有する。例えば、音波が物体を回り込むと、強度が極めて弱くなる。そのため、携帯電話機400(
図1)から出力された超音波USの強度は、携帯電話機400との間に壁WAや床FL、天井CEといった物体が存在する領域(例えば隣室)に設置された副リモートコントローラ100の位置では非常に弱くなる。本実施形態では、閾値Xは、例えば携帯電話機400が副リモートコントローラ100の設置された領域内に位置する場合のように、携帯電話機400と副リモートコントローラ100との間に物体が存在しない場合の副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度より小さく、かつ、例えば携帯電話機400が副リモートコントローラ100の設置された領域外に位置する場合のように、携帯電話機400と副リモートコントローラ100との間に物体が存在する場合の副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度より大きくなるように、予め設定されている。そのため、副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度が閾値X以上である場合には、副リモートコントローラ100が設置された領域に携帯電話機400(を保持する人)が存在する蓋然性が高いと言える。一方、副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度が閾値X未満である場合には、副リモートコントローラ100が設置された領域に携帯電話機400が存在する蓋然性が低いと言える。
【0030】
CPU210は、また、運転モード設定部211として機能する。運転モード設定部211は、各副リモートコントローラ100から受け取った音波強度情報と閾値記憶部221に格納された閾値Xとを比較することにより、各領域についての空調システム300の運転モードを設定し、設定したモードでの運転を空調システム300に指示する。
【0031】
図4は、携帯電話機400の構成を概略的に示す説明図である。携帯電話機400は、表示部430と、操作部440と、通信部450と、スピーカ460と、マイク470と、CPU410と、メモリ420とを含んでいる。これらの各要素は、互いに内部バスにより電気的に接続されている。
【0032】
表示部430は、液晶パネルにより構成されており、各種情報や画面等を表示する。なお、液晶パネルに代えて他の表示デバイスを用いて表示部430を構成してもよい。操作部440は、ユーザによる各種操作を受け付ける。なお、例えばタッチパネルのように、表示部430と操作部440とが一体となった構成を採用してもよい。通信部450は、移動体通信や無線LAN等により他の装置(例えば
図1に示す建物BU内に設置されたアクセスポイントAP)との間で通信を行う。スピーカ460は、電気信号を物理振動に変えて、音(音波)を出力する。本実施形態では、スピーカ460は、可聴域の音波に加えて、超音波US(周波数が16〜20kHZ以上の音波)を出力することができる。マイク470は、音波を受信して電気信号に変換する。
【0033】
メモリ420は、EEPROMにより構成されており、制御プログラムを記憶する。CPU410は、メモリ420に記憶された制御用プログラムを実行することにより、携帯電話機400の動作を制御する。例えば、CPU410は、通信部450を制御して、建物BU内に設置されたアクセスポイントAPとの間で通信を行う。CPU410は、また、メモリ420に記憶されたアプリケーションプログラムを実行することにより、音波制御部411として機能する。音波制御部411は、スピーカ460を制御して、所定のタイミングで所定の周波数の音波を出力させる。本実施形態では、音波制御部411は、通信部450によって建物BU内に設置されたアクセスポイントAPとの通信が実行可能である期間中(すなわち、携帯電話機400が建物BU内または建物BUの周囲に位置していると考えられる期間中)、スピーカ460に断続的に超音波USを出力させる。
【0034】
A−2.空調制御処理:
図5は、第1実施形態における空調制御処理の流れを示すシーケンス図である。
図5には、左側から順に、携帯電話機400の処理フローと、副リモートコントローラ100の処理フローと、主リモートコントローラ200の処理フローと、空調システム300の処理フローとを示している。
【0035】
上述したように、携帯電話機400の音波制御部411は、通信部450によって建物BU内に設置されたアクセスポイントAPとの通信が実行可能である期間中、スピーカ460に超音波USを断続的に出力させる(ステップS410)。
【0036】
各領域に設置された副リモートコントローラ100のマイク170は、携帯電話機400から出力された超音波USを受信する(ステップS110)。各副リモートコントローラ100の音波強度情報送信部111は、各副リモートコントローラ100に共通のタイミングで、マイク170により受信された超音波USの受信強度を示す音波強度情報を、領域ID記憶部121に格納された領域IDと共に、通信部150を介して主リモートコントローラ200に送信する(ステップS120)。なお、音波強度情報送信部111は、マイク170による超音波USの受信強度がゼロであった場合(ゼロに極めて近い値であった場合を含む)、すなわち、マイク170により超音波USが受信されなかった場合でも、その旨を示す音波強度情報を主リモートコントローラ200に送信する。副リモートコントローラ100は、上述した音波の受信および音波強度情報の送信を繰り返し実行する。
【0037】
主リモートコントローラ200の運転モード設定部211は、各副リモートコントローラ100から送られた音波強度情報を、通信部250を介して受信する(ステップS210)。運転モード設定部211は、各副リモートコントローラ100から音波強度情報を受け取ると、各音波強度情報の示す音波強度と閾値記憶部221に記憶された閾値Xとを比較することにより、各領域における空調運転モードを設定する(ステップS220)。具体的には、運転モード設定部211は、受け取った音波強度情報の中に、閾値X以上の音波強度を示す音波強度情報(以下、「特定音波強度情報」と呼ぶ)が少なくとも1つ存在する場合には、特定音波強度情報の送信元の副リモートコントローラ100の設置された領域のすべてについて、通常運転モードを設定し、他の領域のすべてについて、省エネ運転モードを設定する。運転モード設定部211は、設定された運転モードを、通信部250を介して空調システム300に指示する(ステップS230)。主リモートコントローラ200は、上述した空調運転モードの設定および指示を繰り返し実行する。空調システム300は、各領域について、主リモートコントローラ200から指示された運転モードで空調を行う(ステップS310)。
【0038】
図6から
図8は、第1実施形態における空調運転モードの設定方法の一例を示す説明図である。
図6には、携帯電話機400(を保持する人、以下同様)が、領域Aの開放された入口扉と領域Bの開放された入口扉との中間地点に位置している状態を示している。上述したように、閾値Xは、携帯電話機400と副リモートコントローラ100との間に物体が存在しない場合の副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度より小さく、かつ、携帯電話機400と副リモートコントローラ100との間に物体が存在する場合の副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度より大きくなるように設定されている。そのため、
図6に示す状態では、領域A,Bの副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度は閾値X以上であるが、領域C,Dの副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度は閾値X未満である。この場合には、領域A,Bについては通常運転モードが設定され、領域C,Dについては省エネ運転モードが設定される。
【0039】
図7には、携帯電話機400が
図6に示す位置から領域A内に移動し、領域Aの入口扉が閉じられた状態を示している。
図7に示す状態では、領域Aの副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度は閾値X以上であるが、領域B,C,Dの副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度は閾値X未満である。この場合には、領域Aについては通常運転モードが設定され、領域B,C,Dについては省エネ運転モードが設定される。
【0040】
図8には、携帯電話機400が領域A−Dの外に位置している状態を示している。
図8に示す状態では、領域A,B,C,Dの副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度は閾値X未満である。この場合には、領域A,B,C,Dについて省エネ運転モードが設定される。
【0041】
このように、本実施形態の空調制御システム10では、各副リモートコントローラ100が、携帯電話機400が出力する音波を受信すると共に、音波の受信強度を示す音波強度情報を主リモートコントローラ200に送信する。また、主リモートコントローラ200は、各副リモートコントローラ100から受け取った音波強度情報の中に、閾値X以上の音波強度を示す特定音波強度情報が存在する場合には、特定音波強度情報の送信元の副リモートコントローラ100の設置された領域のすべてについて、通常運転モードを設定し、他の領域について、省エネ運転モードを設定する。そのため、本実施形態の空調制御システム10では、各領域に人感センサを設置することなく、各領域における人の有無を考慮した運転モードの設定が実現できる。また、音波を出力する携帯電話機400が領域内に位置する限り、その領域に設置された副リモートコントローラ100による音波受信強度が一定以上となることが期待できる。また、音波は、電波と比較して、物体に遮られやすく、物体の裏側に回り込みにくい性質、および、空気中を通過する際に減衰しやすい性質を有するため、例えば、音波を出力する携帯電話機400が位置する領域の隣の領域に設置された副リモートコントローラ100のように、携帯電話機400と副リモートコントローラ100との間に物体が存在する場合には、副リモートコントローラ100による音波受信強度がきわめて低くなることが期待できる。そのため、各領域における人の有無を精度良く判定することができる。従って、本実施形態の空調制御システム10では、システム構成の複雑化を回避しつつ、空調の快適性を損なうことなく、セントラル方式の空調システム300の消費エネルギーを効果的に低減することができる。
【0042】
また、本実施形態の空調制御システム10では、携帯電話機400が存在する蓋然性の高い領域が複数存在する場合(
図6参照)には、そのような領域のすべてについて通常運転モードが設定される。その後に、携帯電話機400が存在する蓋然性の高い領域が1つになった場合には、携帯電話機400がその領域内に移動したと考えられるため、その領域についてのみ通常運転モードが設定される。一般に、主リモートコントローラ200から指示があってから空調システム300が実際の動作を開始するまではタイムラグが存在するため、上記のように、携帯電話機400が存在する蓋然性の高い領域が複数存在する場合には、そのような領域のすべてについて通常運転モードを設定することにより、携帯電話機400が存在する蓋然性の高い領域が1つになった後の空調運転をスムーズに実行することができ、空調の快適性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態の空調制御システム10では、各副リモートコントローラ100が共通のタイミングで、音波の受信、および、音波強度情報の主リモートコントローラ200への送信を繰り返し実行し、主リモートコントローラ200が、各領域についての空調の運転モードの設定を繰り返し実行するため、携帯電話機400が移動しても各領域の空調運転モードを携帯電話機400の位置に応じた最適なモードに設定することができる。
【0044】
また、本実施形態の空調制御システム10では、各副リモートコントローラ100の領域ID記憶部121に、各副リモートコントローラ100が設置される領域を特定する領域IDが記憶されており、音波強度情報送信部111は、音波強度情報を領域IDと共に主リモートコントローラ200に送信するため、主リモートコントローラ200が適切に各領域の空調運転モードを設定し、各領域について設定されたモードでの空調実行を空調システム300に指示することができる。
【0045】
図9は、第1実施形態における副リモートコントローラ100による音波の受信状態と各領域に設定される運転モードとの関係をまとめた説明図である。
図9に示した模式図において、太い実線は領域の境界を示している。また、細い実線は副リモートコントローラ100による音波受信強度が閾値X以上となるような携帯電話機400の位置の範囲を示し、破線は副リモートコントローラ100による音波受信強度がゼロより大きく閾値X未満となるような範囲を示している。携帯電話機400が破線の外側の範囲に位置する場合には、副リモートコントローラ100による音波受信強度はゼロとなる。また、ハッチングを付した領域は、通常運転モードが設定される領域を示す。
【0046】
パターン1に示すように、複数の副リモートコントローラ100が閾値X以上の強度の音波を受信した場合、閾値X以上の強度の音波が受信されたすべての領域について通常運転モードが設定される。
【0047】
パターン2に示すように、1つの副リモートコントローラ100が閾値X以上の強度の音波を受信し、その他の副リモートコントローラ100が閾値X未満の強度の音波を受信した場合、閾値X以上の強度の音波が受信された領域については通常運転モードが設定され、閾値X未満の強度の音波が受信された領域については省エネ運転モードが設定される。
【0048】
パターン3に示すように、1つの副リモートコントローラ100が閾値X以上の強度の音波を受信し、その他の副リモートコントローラ100が音波を受信しなかった場合、閾値X以上の強度の音波が受信された領域については通常運転モードが設定され、音波が受信されなかった領域については省エネ運転モードが設定される。
【0049】
パターン4に示すように、複数の副リモートコントローラ100が閾値X未満の強度の音波を受信した場合、閾値X未満の強度の音波が受信されたすべての領域について省エネ運転モードが設定される。
【0050】
パターン5に示すように、1つの副リモートコントローラ100が閾値X未満の強度の音波を受信し、その他の副リモートコントローラ100が音波を受信しなかった場合、閾値X未満の強度の音波が受信された領域、および、音波が受信されなかった領域について省エネ運転モードが設定される。
【0051】
パターン6に示すように、すべての副リモートコントローラ100が音波を受信しなかった場合、音波が受信されなかったすべての領域について省エネ運転モードが設定される。
【0052】
B.第2実施形態:
図10は、第2実施形態における空調制御処理の流れを示すシーケンス図である。第2実施形態における空調制御処理は、各領域における空調運転モードを設定する処理(
図10のステップS222)の内容が
図5に示した第1実施形態と異なっており、その他の点は第1実施形態と同様である。
【0053】
図10に示すように、第2実施形態では、主リモートコントローラ200の運転モード設定部211(
図3)は、副リモートコントローラ100から受け取った音波強度情報の中に、閾値X以上の音波強度を示す特定音波強度情報が少なくとも1つ存在する場合には、最大の音波強度を示す特定音波強度情報の送信元の副リモートコントローラ100の設置された領域について、通常運転モードを設定し、他の領域のすべてについて、省エネ運転モードを設定する。すなわち、第2実施形態では、複数の領域について通常運転モードが設定されることはない。
【0054】
図11から
図13は、第2実施形態における空調運転モードの設定方法の一例を示す説明図である。
図11には、
図6と同様に、携帯電話機400(を保持する人、以下同様)が、領域Aの開放された入口扉と領域Bの開放された入口扉との中間地点に位置している状態を示している。
図11に示す状態では、領域A,Bの副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度は閾値X以上であるが、領域C,Dの副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度は閾値X未満である。この場合には、領域A,Bの内、超音波USの受信強度が最大である領域Bについては通常運転モードが設定され、領域A,C,Dについては省エネ運転モードが設定される。
【0055】
図12には、携帯電話機400が
図11に示す位置から領域A内に移動したが、まだ領域Aの入口扉も領域Bの入口扉も開放された状態を示している。
図12に示す状態では、領域A,Bの副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度は閾値X以上であるが、領域C,Dの副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度は閾値X未満である。この場合には、領域A,Bの内、超音波USの受信強度が最大である領域Aについては通常運転モードが設定され、領域B,C,Dについては省エネ運転モードが設定される。
【0056】
図13には、携帯電話機400が領域A内に位置し、かつ、領域Aの入口扉が閉じられた状態を示している。
図13に示す状態では、領域Aの副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度は閾値X以上であるが、領域B,C,Dの副リモートコントローラ100による超音波USの受信強度は閾値X未満である。この場合には、領域Aについては通常運転モードが設定され、領域B,C,Dについては省エネ運転モードが設定される。
【0057】
このように、第2実施形態の空調制御システム10では、主リモートコントローラ200は、各副リモートコントローラ100から受け取った音波強度情報の中に、閾値X以上の音波強度を示す特定音波強度情報が少なくとも1つ存在する場合には、最大の音波強度を示す特定音波強度情報の送信元の副リモートコントローラ100の設置された領域について、通常運転モードを設定し、他の領域について、省エネ運転モードを設定する。そのため、第2実施形態の空調制御システム10では、上記第1実施形態と同様に、各領域に人感センサを設置することなく、各領域における人の有無を考慮した運転モードの設定が実現できる。また、第2実施形態の空調制御システム10では、複数の領域について通常運転モードが設定されることがないため、空調の快適性をある程度確保しつつ、セントラル方式の空調システム300の消費エネルギーをより効果的に低減することができる。
【0058】
図14は、第2実施形態における副リモートコントローラ100による音波の受信状態と各領域に設定される運転モードとの関係をまとめた説明図である。
図14に示す第2実施形態は、パターン1における空調運転モードの設定方法が
図9に示した第1実施形態と異なっており、その他の点は第1実施形態と同様である。
【0059】
図14のパターン1に示すように、第2実施形態では、複数の副リモートコントローラ100が閾値X以上の強度の音波を受信した場合、最大強度の音波が受信された1つの領域について通常運転モードが設定され、その他の領域については省エネ運転モードが設定される。
【0060】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0061】
C−1.変形例1:
上記各実施形態では、空調システム300による空調の対象は、建物BU内の複数の領域であるが、建物BU内以外(例えば電車等の移動体)の複数の領域であってもよい。また、各領域の境界の全体が壁WAや床FL、天井CEといった物体により区切られている必要は無く、各領域の境界の少なくとも一部が物体により区切られていればよい。例えば、領域の境界の壁WAや床FL、天井CEに開口があってもよい。
【0062】
また、上記各実施形態における副リモートコントローラ100の構成(
図2)は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、副リモートコントローラ100は、必ずしも表示部130を備えている必要は無い。また、副リモートコントローラ100の備えるマイク170は、着脱可能なものであってもよい。
【0063】
同様に、上記各実施形態における主リモートコントローラ200の構成(
図3)は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、主リモートコントローラ200は、表示部を備えていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータープログラム)は、コンピューター読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピューター内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピューターに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【0065】
C−2.変形例2:
上記各実施形態では、空調システム300は、通常運転モードでの空調と省エネ運転モードでの空調とを選択的に実行可能であるとしているが、空調システム300は、これらのモードに限定されず、第1の運転モードでの空調と第1の運転モードより消費エネルギーの少ない第2の運転モードでの空調とを実行可能であればよい。また、空調システム300は、互いに消費エネルギーの異なる3種類以上の運転モードでの空調を実行可能であってもよい。
【0066】
C−3.変形例3:
上記各実施形態では、携帯電話機400が出力する超音波USを用いて各領域に携帯電話機400(を保持する人)が存在するか否かの判定を行っているが、携帯電話機400が出力する可聴域の音波を用いて同様の判定を行うとしてもよい。
【0067】
また、携帯電話機400以外の音波を出力可能な携帯可能装置が出力する音波(超音波USまたは可聴域の音波)を用いて同様の判定を行うとしてもよい。このような携帯可能装置としては、タブレット型端末、ノート型パーソナルコンピュータ等が挙げられる。あるいは、携帯電話機400以外の人が身に付ける装置が出力する音波(超音波USまたは可聴域の音波)を用いて同様の判定を行うとしてもよい。このような人が身に付ける装置としては、例えば、いわゆるウェアラブルコンピュータである眼鏡型の装置や腕時計型の装置、帽子型の装置等が挙げられる。
【0068】
また、上記各実施形態において、各人が保持する携帯電話機400(または人が身に付ける装置)から出力される音波の周波数(周波数の範囲)を互いに異ならせ、副リモートコントローラ100が周波数(周波数の範囲)毎に音波強度情報を作成して主リモートコントローラ200に送信するとしてもよい。このようにすれば、各領域における人の有無の誤判定をより確実に防止することができ、空調システム300の消費エネルギーをより確実に低減することができる。
【0069】
C−4.変形例4:
上記各実施形態では、携帯電話機400の音波制御部411は、スピーカ460に断続的に音波(超音波USまたは可聴域の音波)を出力させるとしているが、音波制御部411は、スピーカ460に連続的に音波を出力させるとしてもよい。
【0070】
また、上記各実施形態では、携帯電話機400の音波制御部411がスピーカ460に音波を出力させる期間は、通信部450によって建物BU内に設置されたアクセスポイントAPとの通信が実行可能である期間中であるとしているが、この期間は種々変形可能である。例えば、上記期間は、通信部450とアクセスポイントAPとの間の通信強度(例えばRSSIで特定される)が所定の閾値以上である期間中であるとしてもよい。また、携帯電話機400がGPS等の位置特定デバイスを有する場合には、上記期間は、携帯電話機400が建物BU内(あるいは建物BUの周囲)に存在すると特定されている期間中であるとしてもよい。あるいは、上記期間は全期間である、すなわち、音波制御部411は常時、スピーカ460に音波を出力させるとしてもよい。
【0071】
C−5.変形例5:
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。