(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
内部に装飾部材を配置することによって美的外観が改善されるようにした、腕時計のような携帯用品が、従来技術において知られている。例えば、特許文献1には、文字板組立体4を備える時計1が開示されている(特許文献1の
図1、
図3を参照)。文字板組立体4は、文字板6と、11個の装飾用構造体70とを有しており(特許文献1の
図3を参照)、装飾用構造体70は、文字板本体61の、時刻を表す1〜12の数字のうちの「1」〜「11」に対応する位置に設置されている。各装飾用構造体70は、装飾部材7と支持部材8とで構成されており(特許文献1の
図4、
図5を参照)、装飾部材7は、文字板6の表側からカバーガラス5を介して視認される宝石である。装飾部材7が宝石で構成されていることにより、時計1の装飾性が向上するとともに、時計1の高級感が高くなる。
【0003】
また、特許文献1には以下のことが開示されている。装飾部材7は、表側の多面形成部71と、裏側の円錐状部72(または多角錐状部)とに分けることができ(特許文献1の
図5〜
図7を参照)、装飾部材7と支持部材8を組み立てる際に、円錐状部72は、支持部材8の表側の面81の中央部に形成されている凹部82に収納され、多面形成部71は露出させ、カバーガラス5を介して視認される。多面形成部71には、多数の平面が形成されており、各平面は、互いに異なる方向を向いている。特許文献の
図4に示す構成では、多面形成部71は、上方を向き、八角形状をなす平面711と、平面711の周囲に当該平面711に対し互いに異なる方向に傾斜して形成された、扇形状をなす8枚の平面712、713、714、715、716、717、718、719とを有している。このような多面形成部71により、光が多方向に反射され(拡散され)、時計1の装飾性がさらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る時計用文字板及び時計の一実施形態について詳しく説明する。なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態における時計用文字板を備える腕時計を示す斜視図である。
図1に示す腕時計は、胴(ケース)と、裏蓋と、カバーガラス(風防)と、バンドとを備えている。また、時計の内部空間(胴と裏蓋とカバーガラスとで囲まれた空間)には、カバーガラスが設けられた側から順に、時計用文字板とムーブメントとが収納されている。また、ムーブメントには、指針(時針、分針、秒針)が回転可能に支持されており、ムーブメントとともに時計の内部空間内に収納されている。また、腕時計の具体的な構成や組み立て方式は、本発明に係らず、従来の何れかの構成や組み立て方式を用いることができるので、その説明を省略する。また、本発明における時計用文字板は、腕時計のほかに、腕時計以外の各種の時計に適用できる。以下、本発明の実施形態における時計用文字板の詳細を説明する。
【0012】
図2は、本発明の実施形態に係る時計用文字板を示す平面図である。
図3(a)及び
図3(b)は、本発明の実施形態に係る装飾ユニットを示す局部拡大図である。
図4(a)及び
図4(b)は、本発明の実施形態に係る装飾部材を示す斜視図である。
【0013】
図2に示されるように、本発明の一実施形態における時計用文字板は、見切板(見切り板)201と、紫外線LED(光源ユニット)202と、装飾ユニット203とを備えている。
図2に示す例において、時計用文字板には、時刻を表す1〜12の数字のうちの「1」、「2」、「4」、「5」、「7」〜「11」に対応する位置にそれぞれ装飾ユニット203が設けられている。しかしながら、これは、例示にすぎず、特にこれに限定されない。文字板上に装飾ユニット203が設けられていればよく、装飾ユニット203の設置場所及び設置数は特に限定されない。例えば、文字板上には、時刻を表す1〜12の数字のうちの「1」〜「11」に対応する位置にそれぞれ装飾ユニット203が設けられてもよいし、時刻を表す1〜12の数字のうちの「3」、「6」、「9」、「12」に対応する位置にそれぞれ装飾ユニット203が設けられてもよいし、時刻を表す1〜12の数字のうちの「6」または「12」に対応する位置だけに装飾ユニット203が設けられてもよい。また、本発明においては、装飾ユニット203の具体的な構成や形状も特に限定されない。
【0014】
図2に示す例において、文字板上には、時刻を表す1〜12の数字のうちの「6」の下部に紫外線LED202が設けられているが、これは、例示にすぎず、特にこれに限定されない。文字板上に光源ユニットが設けられていればよい。光源ユニットの設置位置及び設置数も特に限定されない。例えば、時刻を表す1〜12の数字のうちの「12」の上部などに設けられていても良い。
【0015】
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、装飾ユニットは、装飾部材301及び支持部材302を含み、支持部材302は、装飾部材301を支持するためのものであり、支持部材302の具体的な構成及び装飾部材301と支持部材302との組み立て方式については、従来の何れの構成及び組み立て方式を用いることができ、ここには具体的な説明をしない。例えば、特許文献1に記載の支持部材の構成、及び装飾部材と支持部材との組み立て方式を用いることができる。
【0016】
装飾部材301は、ガラスまたは宝石などであり、宝石としては、特に限定されず、例えば、水晶、ダイヤモンド、サファイア、ルビー等が挙げられる。また、装飾部材301は、シングルカット(single cut)やブリリアントカット(brilliant cut)などのカットを施されたガラス、または宝石が好ましい。ガラスまたは宝石は光透過性を持ち、且つ、シングルカットやブリリアントカットなどのカットを施されたガラスまたは宝石は、一定方向からの光を入射し一定方向内で反射させ、光と反射効果の組み合わせで輝きを得られる。
【0017】
また、
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、カットを施されたガラスまたは宝石(装飾部材)は、上部にクラウン(crown)401を有し、下部にパビリオン(pavilion)402を有し、言い換えると、装飾部材は、クラウン401とパビリオン402からなる。クラウン401とは、宝石(またはガラス)の上部の部分であり、つまり、ガードル(girdle)の上の部分であり、略円錐台形状又は略角錘台形状をなす多面体であり、上部中央に平坦なテーブル(table)403を有する。シングルカットを施された場合、クラウン401は、平坦なテーブル403のほか、当該テーブル403の周囲に当該テーブル403に対し互いに異なる方向に傾斜して形成された、扇形状をなす8枚の平面を有し、ブリリアントカットを施された場合、クラウン401は、平坦なテーブル403のほか、三角形をなす、1つの辺がテーブル403と共用される8枚のスター面(Star Facet)と、四角形をなす8枚のベゼル面(Bezel Facet、クラウンのメインファセットとも呼ばれる)と、三角形をなす、1つの辺がガードルと共用される16枚のアッパーガードル面(Upper Girdle Facet)とを有する。
【0018】
つまり、クラウン401は、上部中央に平坦なテーブル403を有し、略円錐台形状又は略角錘台形状をなす。即ち、クラウン401は、上部中央に平坦なテーブル403を有する略円錐台形状又は略角錘台形状をなす多面体である。
【0019】
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、パビリオン402とは、宝石(またはガラス)の下部の部分であり、つまり、ガードル(girdle)の下の部分であり、略円錐台形状、略角錘台形状、略円錐形状、又は略角錘形状をなす。
【0020】
そして、装飾部材(例えば、ダイヤモンド)のクラウン401の一部の領域に、光源ユニット(例えば、紫外線LED)からの励起光(例えば、紫外線、紫外光とも呼ばれる)を照射されるによって発光する発光部材(例えば、蛍光体)が配置されている場合、装飾部材の反射特性を効果的に利用して、外部から入射する光がある場合に、輝きが得られるだけではなく、発光部材が励起光を照射されるによって発光する光及び装飾部材の反射特性を利用して、外部から光が入らない暗所にある場合にも、輝きが得られることができる。
【0021】
光源ユニットと発光部材(発光物質)は、特に限定されず、発光部材が光源ユニットから照射された励起光によって発光(可視光)すればよい。
【0022】
また、発光部材(発光物質)を装飾部材に配置して装飾部材を暗所でも輝かせるによって時計用文字板の装飾性を高くする必要があるので、発光部材(発光物質)は、透明または半透明である必要がある。透明とは、可視光を透過できることであり、無色透明の他、有色(着色)透明も含まれる。
【0023】
発光部材を装飾部材に配置する方法として、塗布、及び印刷などが用いられる。以下、塗布を用いる方法を例にして説明する。
【0024】
また、カットを施されたガラス、宝石の反射特性(例えば、スワロフスキー(swarovski)の反射特性)は、カット後の面構成が正面から入った光を正面に出すよう設定されている特性がある。したがって、光入射面に蛍光材料を塗布すれば、光が屈折するので、想定外の反射を起す。例えば、カットを施されたガラス、宝石の光入射面の全面に発光物質を塗布すれば、側面垂れ込みなどの影響により、反射特性にばらつきを起し、且つ、発光物質を介して入射するので、輝きが若干低下する。したがって、極力小範囲に有効発光成分(lumisis)の濃い蛍光物質溶液を塗布する必要がある。
【0025】
以下、
図5(a)〜
図7(b)を参照して本発明における発光部材(発光物質)を装飾部材に塗布する塗布パターンを説明する。
【0026】
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)及び
図5(d)は、シングルカットする場合のクラウンの塗布領域の塗布パターンを説明するための平面図である。
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)及び
図6(d)は、ブリリアントカットする場合のクラウンの塗布領域の塗布パターンを説明するための平面図である。
図7(a)及び
図7(b)は、クラウンのテーブルに凹部を設置し塗布する場合の塗布パターンを説明するための平面図及び断面図である。
【0027】
図5(a)〜
図5(d)に、シングルカットを施された場合の4種類の塗布パターンが示されている。即ち、
図5(a)はクラウンのテーブルの領域に塗布すること、
図5(b)はクラウンのテーブル以外の領域に塗布すること、
図5(c)はクラウンを構成する多面体のうちの一部の面に塗布すること、
図5(d)はクラウンを構成する各面の所定の割合(50%)の領域に塗布することを示す。図面において、501は発光部材の塗布領域を表す。
図6(a)〜
図6(d)に、ブリリアントカットを施された場合の4種類の塗布パターンが示されている。即ち、
図6(a)はクラウンのテーブルの領域に塗布すること、
図6(b)はクラウンのテーブル以外の領域に塗布すること、
図6(c)はクラウンを構成する多面体のうちの一部の面に塗布すること、
図6(d)はクラウンを構成する各面の所定の割合(50%)の領域に塗布することを示す。図面において、601は発光部材の塗布領域を表す。
図7(a)及び
図7(b)に、クラウンのテーブルに凹部を設け、凹部の領域を塗布する塗布パターンが示されている。即ち、クラウンのテーブルの凹部の領域を塗布することが示されている。図面において、701は発光部材の塗布領域を表す。
【0028】
また、
図5(d)に示す塗布パターン及び
図6(d)に示す塗布パターンにて、クラウンを構成する各面に50%の比率で塗布する例が示されているが、当該50%は所定の割合の1つの例にすぎず、特に、これに限定されない。
【0029】
図7(a)及び
図7(b)に示されているのは、ブリリアントカットを施された場合であるが、該当塗布パターンは、シングルカットを施された場合などにも適用できる。
【0030】
装飾部材に発光部材(発光物質)を配置することによって、外部から光が入らない暗所にも、装飾部材は、輝きが得られ、装飾部材によりもたらされる装飾性が高くなる。
【0031】
カットを施されたガラス、宝石の反射特性を効果的に利用するため、
図5(a)に示す塗布パターン及び
図6(a)に示す塗布パターンのように、クラウンの上部中央における平坦なテーブルの領域に発光部材を塗布する場合、カットを施されたガラス、宝石の光入射面の天面(即ち、クラウンの上部中央における平坦なテーブルの領域)のみに発光物質を塗布すれば、光入射面の天面のみに塗布するので、発光ばらつきが小さく、さらに、発光物質を介して入光する範囲が小さいため、輝き効果が良い。また、天面(即ち、クラウンの上部中央における平坦なテーブル)に集中し塗布しているのみだが、反射特性により、全体が光っているように見える。
【0032】
また、
図5(b)、
図5(c)、
図6(b)及び
図6(c)に示す塗布パターンのように、装飾部材のクラウンの上部中央における平坦なテーブル以外の領域に発光部材を塗布する場合、即ち、クラウンのテーブル以外の領域の全てまたは一部に発光部材を塗布する場合、カットを施されたガラス、宝石の光入射面の天面(即ち、クラウンの上部中央における平坦なテーブルの領域)に発光物質を塗布しないので、外部から光が入射する場合、入射面の天面から入った光が反射することによりもたらされる輝き効果にあまり影響しない。
【0033】
また、
図5(d)及び
図6(d)に示す塗布パターンのように、クラウンは、上部中央に平坦なテーブルを有する略円錐台形状又は略角錘台形状をなす多面体であり、前記多面体の各面の所定の割合の領域に発光部材を塗布する場合、外部から光が入る場合、装飾部材によりもたらされる装飾性が効果的に得られるし、外部から光が入らない場合も、装飾部材によりもたらされる装飾性が効果的に得られる。
【0034】
また、
図6(c)に示す塗布パターンのように、装飾部材のクラウンの上部中央における平坦なテーブル区域にも、クラウンを構成する多面体のうちの一部の面にも発光部材を塗布することにより、外部から光が入らない場合に、装飾部材によりもたらされる装飾性が効果的に得られる。
【0035】
また、
図7(a)及び
図7(b)に示す塗布パターンのように、装飾部材のクラウンの上部中央の平坦なテーブルに凹部を設置し、前記凹部の領域に発光部材を塗布する場合、発光物質用の溝が設けられているので、発光物質を安定して配置することが可能になり、且つ、これにより発光物質を含めた反射特性となっているため、輝き効果が良い。さらに、発光部材が凹部に配置されているので、クラウンのテーブルを高くなることがない。
【0036】
以上のように、本発明の塗布パターンを説明したが、これは1つの例にすぎず、特に限定されない。当業者にとって、他の塗布パターンを用いることができると考えられる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態を結合して本発明を説明したが、本発明の範囲や要旨を逸脱しない範囲で、本発明に対して各種の補正や変更を行うことができることは言うまでもない。また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
装飾ユニットと前記装飾ユニットに励起光を照射する光源ユニットとを有する時計用文字板であって、
前記装飾ユニットは、
上部中央に平坦なテーブルを有する略円錐台形状又は略角錘台形状をなすクラウンと、略円錐台形状、略角錘台形状、略円錐形状、又は略角錘形状をなすパビリオンとから構成される装飾部材と、
前記装飾部材を支持する支持部材とを有し、
前記装飾部材の前記クラウンの一部の領域に、前記光源ユニットから照射された励起光によって発光する発光部材が配置されていることを特徴とする時計用文字板。
<請求項2>
請求項1に記載の時計用文字板において、
前記発光部材は、透明又は半透明であり、前記クラウンの前記テーブルの領域に塗布されていることを特徴とする時計用文字板。
<請求項3>
請求項1に記載の時計用文字板において、
前記発光部材は、透明又は半透明であり、前記クラウンの前記テーブル以外の領域に塗布されていることを特徴とする時計用文字板。
<請求項4>
請求項1に記載の時計用文字板において、
前記クラウンの前記テーブルに凹部を設け、
前記発光部材は、透明又は半透明であり、前記凹部の領域に塗布されている、ことを特徴とする時計用文字板。
<請求項5>
請求項1に記載の時計用文字板において、
前記クラウンは、上部中央に平坦なテーブルを有する略角錘台形状をなす多面体であり、
前記発光部材は、透明又は半透明であり、前記多面体の各面の所定の割合の領域に塗布されていることを特徴とする時計用文字板。
<請求項6>
請求項1から請求項5のいずれかに記載の時計用文字板において、
前記励起光は紫外光であり、且つ、前記発光部材は蛍光体であることを特徴とする時計用文字板。
<請求項7>
請求項1から請求項6のいずれかに記載の時計用文字板において、
前記装飾部材は、ガラス、又は宝石であることを特徴とする時計用文字板。
<請求項8>
請求項1から請求項7のいずれかに記載の時計用文字板を備えた時計。