(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端部と、前記基端部より延出し自己拡開力により開腕するとともに外力により閉腕可能な複数の腕部と、を備えるクリップを装着して用いられる内視鏡用クリップ装置であって、
長尺のシースと、
前記シースの内部において進退移動を可能に挿通された操作ワイヤと、
前記シースの遠位端部に収納され、前記操作ワイヤの進行移動に連動して遠位端部が前記シースより突出する突出状態と、前記操作ワイヤの退行移動に連動し、かつ突出する遠位端部が外力により縮径することによって当該遠位端部が前記シースに収納される収納状態と、に遷移可能である縮径スリーブと、
前記操作ワイヤの遠位端部に設けられ前記クリップの前記基端部と係合するための係止部と、を有し、
前記縮径スリーブは、
前記操作ワイヤが挿通される管状のスリーブ本体と、
前記スリーブ本体の遠位端部から遠位側に向かって延在しており前記突出状態において前記スリーブ本体の外径および前記シースの内径よりも大きい外径を有するガイド部と、
を有し、
前記ガイド部の外側面は、前記収納状態において、前記シースの軸方向に対し平行であるか、または遠位側に向かって内向きに傾斜していることを特徴とする内視鏡用クリップ装置。
前記ガイド部の軸方向長さが、前記シースの中心軸に沿って切断した切断面における前記線状部材の一の断面中心から他の断面中心までの距離を超える請求項3に記載の内視鏡用クリップ装置。
前記補強層は、前記スリーブ本体の周方向に亘り前記スリーブ本体と接合されて固定されている固定部と、前記固定部よりも遠位側に位置しスリーブ本体に対し非固定である非固定部と、と有する請求項5から7のいずれか一項に記載の内視鏡用クリップ装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
なお、本実施の形態では図示するように左右の方向を規定して説明する場合がある。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものであり、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
本発明の内視鏡用クリップ装置の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0018】
本発明における用語または本発明を説明する際に用いられる用語は、特段の断りがない限り、以下のとおり定義される。
本明細書において「近位側」とは、特に断りのない限り、内視鏡用クリップ装置を操作する操作者(以下、単に「操作者」という)が操作する側に近い側をいう。本明細書において「遠位側」とは、特に断りのない限り、操作者が操作する側から遠い側をいう。
「近位端部」とは、内視鏡用クリップ装置、当該装置に設けられる部材、または当該装置に装着されたクリップにおいて、近位側の端部(近位端)を含み得る所定の長さ領域をいう。同様に「遠位端部」とは、遠位側の端部(遠位端)を含み得る所定の長さ領域をいう。
本発明において、「進退移動」とは、内視鏡用クリップ装置の近位側と遠位側とにおける移動をいう。「進行移動」とは、進退移動のうち、遠位側に向かう移動を意味する。「退行移動」とは、進退移動のうち、近位側に向かう移動を意味する。
また本発明を説明する際、特に断りがない限り、「内方向」とは、内視鏡用クリップ装置において、操作ワイヤの軸または当該軸の延長線に向かう方向を意味し、径方向の内向きを含む。また「外方向」とは、操作ワイヤの軸または当該軸の延長線から離間する方向を意味し、径方向の外向きを含む。
また本発明を説明する際に、特に断りがない限り、「軸方向」とは、操作ワイヤの軸方向を意味する。
【0019】
(第一実施形態)
以下に、本発明の第一実施形態である内視鏡用クリップ装置100(以下、単に「クリップ装置100」ともいう)の構成について図面を用いて説明する。
図1に示すとおり、クリップ装置100は、クリップ200を装着可能である。
図1は、本発明の第一実施態様を例示するクリップ装置100の斜視図であって、クリップ200が装着された状態を示す。
クリップ装置100は、例えば、近位側から指かけリング500、駆動部510、および操作部本体520を備える。操作者が、操作部本体520に対し駆動部510を相対移動させて操作することにより、シース10に挿通された操作ワイヤ20は、シース10の延伸方向に進退移動する。また、指かけリング500に指をかけて固定するとともに、操作部本体520の全体を軸周りに回転させる。これにより、操作ワイヤ20およびクリップ200を回転操作することができる。ただし、上述するクリップ装置100の操作に関する構成および操作の動作の説明は本実施形態にかかるクリップ装置100の一例であり、本発明を何ら限定するものではない。
【0020】
次に、
図2を用いて、クリップ装置100の詳細を説明する。
図2は、
図1に示すクリップ装置100の遠位側における破線円で示された遠位側端部領域の拡大説明図である。尚、
図2には、シース10、縮径スリーブ70、補強層75、および延長部80についてスリット146に沿って軸方向に切断した断面を図示し、それ以外の構成については側面を図示し、クリップ装置100を模式的に示す。後述する
図5についても同様に断面と側面とを併せて本発明を模式的に図示する。
【0021】
クリップ装置100は、基端部である第一係止部50と、基端部である第一係止部50より延出し自己拡開力により開腕するとともに外力により閉腕可能な複数の腕部40と、を備えるクリップ200を装着して用いられる。
クリップ装置100は、長尺のシース10と、シース10の内部において進退移動を可能に挿通された操作ワイヤ20と、シース10の遠位端部に収納された縮径スリーブ70と、を有する。操作ワイヤ20の遠位端部には、クリップ装置100の基端部である第一係止部50と係合するための係止部である第二係止部30が設けられている。
図2では第一係止部50と第二係止部30とが係合し、クリップ200がクリップ装置100に装着された状態を示している。
縮径スリーブ70は、突出状態(
図2)と収納状態(
図5a)とに遷移可能である。
上記突出状態は、操作ワイヤ20の進行移動に連動して縮径スリーブ70の遠位端部がシース10より突出する状態である。上記収納状態は、操作ワイヤ20の退行移動に連動し、かつ突出する縮径スリーブ70の遠位端部が外力により縮径することによって、縮径スリーブ70の当該遠位端部がシース10に収納される状態である。
縮径スリーブ70は、操作ワイヤ20が挿通される管状のスリーブ本体122と、ガイド部120と、を有している。
図2に示すとおり、ガイド部120は、スリーブ本体122の遠位端部から遠位側に向かって延在しており、上記突出状態においてスリーブ本体122の外径Cおよびシース10の内径Bよりも大きい外径Aを有する。ガイド部120の外側面は、上記収納状態において、シース10の軸方向に対し平行(
図4a)であるか、または遠位側に向かって内方向に傾斜(
図4b)している。
【0022】
本実施形態にかかるクリップ装置100は、たとえば、内視鏡(不図示)のチャネル(不図示)内に挿通させて、チャネルの先端部からクリップ200を突出させることにより、体腔内の生体組織を結紮するための長尺の医療用器具として使用することができる。
【0023】
本実施形態における縮径スリーブ70において、ガイド部120が設けられたことにより発揮される効果について
図4を用いて説明する。
図4は、クリップ装置100における線状部材が密巻されてなるコイルであるシース10と縮径スリーブ70との当接状態を示す説明図である。
図4は、スリット146においてシース10の中心軸に沿ってクリップ装置100を切断した部分切断面を模式的に示している。紙面左右方向において、シース10を構成するコイル断面11が隣接している。
図4に示すコイル断面11は、
図6に関し説明した「コイル断面11」と同様であるため、詳細な説明を割愛する。
縮径スリーブ70は、操作ワイヤ20(
図2)と連係されており、操作ワイヤ20の進退移動に連動して、同方向に進退移動する。
縮径スリーブ70には、ガイド部120からスリーブ本体122の遠位端部に亘りスリット146が設けられている。
図4aおよび
図4bに示すとおり、縮径スリーブ70は、スリット146の幅寸法が縮小することにより縮径している。また、スリーブ本体122におけるスリット146の終端部近傍においてスリーブ本体122の剛性が変化している。これにより、縮径スリーブ70は、シース10内において、スリット146の当該終端部近傍から先端側が径方向の内向きに撓むように屈曲し、縮径している。
【0024】
図4aは、縮径スリーブ70に設けられたガイド部120の外側面が、シース10に収納された収納状態において、シース10の軸方向に対し平行である態様を示す。ここで平行とは、ガイド部120の外側面が実質的に平坦であって、シース10の軸方向に対し平行である態様であってもよい。あるいは、上記平行とは、ガイド部120の外側面に本発明の趣旨を逸脱しない範囲において凹凸が設けられており、上記凹凸を含む外側面を巨視的にみた場合の当該外側面とシース10の軸方向とが平行である態様であってもよい。
収納状態にあるガイド部120は、突出状態のときと比較して縮径されおり、径方向の外向きに広がろうとする力を有している。したがってガイド部120の外側面と当接するコイル断面11であるコイル断面11Bは、シース10の径方向の外向きに押し出され得る。
この結果、
図4aに示すとおりガイド部120の先端が、当該先端より遠位側にあるコイル断面11Aの中心より下端側に当接する。この状態で、縮径スリーブ70に対し進行移動する力が付与されると、コイル断面11Aに対し遠位側に向かって斜め外方向(図面矢印z方向)に向かう力が付与される。これにより、コイル断面11Aが、外向きに僅かにずれるとともに、コイル断面11の直径と略同等の距離だけ縮径スリーブ70が進行移動する。外向きにずれたコイル断面11Aは、ガイド部120の外側面に乗り上げる(図示省略)。外側面がシース10の軸方向に対し平行であるガイド部120は、前方にあるコイル11を順次押しのけて、縮径スリーブ70の移動は操作ワイヤ20の進行移動に伴い連続的に行われる。即ち、縮径スリーブ70は、良好に進行移動するとともに、縮径スリーブ70に連係される操作ワイヤ20も良好に進行移動する。
【0025】
図4bは、縮径スリーブ70に設けられたガイド部120の外側面が、シース10に収納された収納状態において、遠位側に向かって内向きに傾斜している態様を示す。
収納状態にあるガイド部120は、突出状態と比較して縮径されおり、径方向の外向きに広がろうとする力を有している。そのため、ガイド部120の遠位端部がコイル断面11と当接し、
図4bに示すとおり、コイル断面11Aと、コイル断面11Bとの間に入り込む場合がある。コイル断面11Aは、コイル断面11Bよりも遠位側に位置し、コイル断面11Bと軸方向において隣り合っている。
このとき、遠位側に向かって内向きに傾斜するガイド部120の外側面とコイル断面11Aが当接している。これにより縮径スリーブ70に対し進行移動する力が付与されたとき、コイル断面11Aとガイド部120との接線に対し法線方向(図面矢印z方向)の力がコイル断面11Aに付与される。これにより、コイル断面11Aは、外向きに僅かにずれるとともに、コイル断面11の直径と略同等の距離だけ縮径スリーブ70が進行移動する。上述する縮径スリーブ70の移動は操作ワイヤ20の進行移動に伴い連続的に行われる。即ち、縮径スリーブ70は、良好に進行移動するとともに、縮径スリーブ70に連係される操作ワイヤ20も良好に進行移動する。
【0026】
上述のとおり、クリップ装置100に設けられた縮径スリーブ70は、シース10内において進行移動する際、シース10の内側面に対する引っ掛かりが抑制される。そのため縮径スリーブ70およびこれに連係される操作ワイヤ20は、良好に進行移動する。
特に、
図4bに示す態様では、ガイド部120の傾斜面に当接するコイル断面11Aによって進行移動のための力の一部が外方向にスムーズに逃されるため、進行移動が良好である。
【0027】
上述では、縮径スリーブ70および操作ワイヤ20を進行移動させる場合に関し説明した。同様に、クリップ装置100は、縮径スリーブ70および操作ワイヤ20の後退移動も良好である。特に、段差部124が、
図4に示すように、近位側に向かって細径となるテーパー状である場合には、
図4bに関する説明が、適宜、後退移動にも適用される。即ち、段差部124が上記テーパー状である場合には、後退移動が特に良好である。
【0028】
上述では、上記コイルであるシース10を用いた態様に関しガイド部120の作用効果を説明した。同様の説明は、可撓性の樹脂チューブからなるシース10を用いた態様にも適用される。即ち、縮径スリーブ70および操作ワイヤ20の進退移動を良好とする本発明の効果は、樹脂チューブからなるシース10を用いたクリップ装置100においても、同様に発揮され得る。
【0029】
図2を用いて、クリップ装置100の各構成について説明する。
長尺のシース10は、長尺で可撓性の管状部材である。
本実施形態におけるシース10は、たとえば
図2に示すように、線状部材が密巻状に巻き回されてなる長尺のコイルである。また、図示省略するが、シース10は、可撓性の樹脂部材からなるチューブ状の管状部材であってもよい。
【0030】
線状部材とは、針金などの細径であって長尺の部材をいう。線状部材の一般的な例としては、ステンレスや鋼などを主材とする針金が例示されるが、これに限定されない。
本明細書において密巻状とは、自然状態において、巻き回されて軸方向に隣り合う一のループと他のループとが互いに当接するか、または僅かな距離を空けて隣り合う状態をいう。シース10をなす線状部材からなるコイルは、一本の線状部材が周方向に巻き回されてなるもの、および二本以上の線状部材が周方向に多条に巻き回されてなるものを含む。
シース10をなす上記コイルは、内部に操作ワイヤ20が挿通された状態で操作ワイヤ20を操作可能な程度に線状部材が密に巻かれたコイルである。上記コイルの内周面には、適宜、フッ素系ポリマーからなる内層(不図示)が設けられていてもよい。
【0031】
上記コイルからなるシース10は、湾曲性および強度が良好であり、内部に挿通された操作ワイヤ20の操作に追随して任意の方向に屈曲させ易い。そのため、上記コイルから構成されたシース10を備えるクリップ装置100は、操作性が良好である。
上述する従来技術1の課題は、シース10がコイルからなる場合および樹脂チューブからなる場合のいずれにおいても生じ得る。ただし、コイルからなるシース10では、特に、鍔920の引っ掛かりによる係止部材900の進退移動の不良の傾向が顕著であった。したがって当該課題が改善された本発明のクリップ装置100は、上記コイルであるシース10を備える態様において、特に本発明の効果が良好に奏される。
【0032】
シース10の内径は、少なくとも操作ワイヤ20を摺動可能な大きさである。シース10の内径は、クリップ200が収納可能な大きさが確保されてもよい。本実施形態では、閉腕した状態の腕部40を備えるクリップ200がシース10の内部に収納可能である(
図5a)。具体的には、シース10の内径は、たとえば、100μm以上2.4mm以下である。また、シース10の厚さは、たとえば、100μm以上350μm以下である。これにより、シース10の屈曲性をよくすることができる。
【0033】
操作ワイヤ20は、シース10の内部を軸方向に進退可能に挿通されている。操作ワイヤ20は、たとえば、ステンレス鋼、耐腐食性被覆された鋼鉄線、チタンまたはチタン合金などの剛性の強い金属材料により形成されている。
【0034】
操作ワイヤ20の遠位端部は、クリップ200の基端部である第一係止部50と係合するための係止部である第二係止部30が設けられている。
図2では第一係止部50と第二係止部30とが係合した状態を示している。上記係合は、操作ワイヤ20の操作によって解除可能である。
【0035】
図3に示すとおり、本実施形態における第二係止部30は、近位側に位置する基端部32と、基端部32から遠位側に向けて操作ワイヤ20の軸方向に延在する3つ以上の爪部34と、を有している。爪部34は、たとえば、当該軸方向に対し略平行に延在するよう設けることができるが、延在角度はこれに限定されない。
基端部32は、爪部34の基端と連係するとともに、操作ワイヤ20の遠位側の端部と連結する。例えば基端部32は、筒状体であって、筒状体の一方側の底面には、操作ワイヤ20と連結する連結底面116を有している。
図3に示すとおり、本実施形態における基端部32は、円筒形状をなしており、近位側端面は連結底面116で閉じられるとともに遠位側端面は開口している。第二係止部30を構成する金属材料としては、ステンレス鋼、チタンまたはチタン合金などを例示することができるが、これに限定されない。また上記金属部材は、適宜、耐腐食性被覆処理がなされたものであってもよい。
【0036】
爪部34は、基端部32の遠位端からさらに遠位側に延在している。爪部34は、基端部32と別体で形成されたものを基端部32に接合してなるもの、あるいは基端部32と一材で一体的に形成してなるものをいずれも含む。3つ以上の爪部34は、第二係止部30に係止される第一係止部50の周囲を包囲する(
図2参照)。3つ以上の爪部34で第一係止部50の周囲を包囲して、第二係止部30から第一係止部50が離脱することを良好に防止するという観点から、爪部34は、板状体であることが好ましい。本実施形態において爪部34は、板状体であって、一方の主面が内方向を向いている。これによって、第一係止部50を包囲する爪部34の面積を増大させ、第一係止部50が第二係止部30から離脱することを良好に防止する。
上述する3つ以上の爪部34は、内方向に突出した突出部36を有する。基端部32と3つ以上の爪部34に設けられた突出部36との間に第一係止部50を包含して係止する空間150が区画されている。一の突出部36と、これに対向する他の突出部36との距離は、第一係止部50の外径よりも小さく構成されている。突出部36は、空間150に包含され第一係止部50と当接可能である。突出部36と第一係止部50とが当接することによって、第一係止部50が第二係止部30に対し近位側から遠位側に相対移動することが規制される。当該規制により、第一係止部50が第二係止部30から容易に離脱することが防止される。
爪部34において、突出部36の遠位側を向く面は、近位側に向かって内方向に傾斜する遠位側向き傾斜面38をなす。ここで、遠位側を向く面とは、面の法線が遠位側に向かう方向成分を有する面のことをいう。第一係止部50と遠位側向き傾斜面38とが当接するとともに、第一係止部50が第二係止部30に対し遠位側から近位側に相対移動する方向に外力が付加されると、爪部34が外方向に押し広げられて傾斜する。これにより第一係止部50は、スムーズに空間150に包含され第二係止部30に係止される。
爪部34において、突出部36の近位側を向く面は、近位側に向かって外方向に傾斜する近位側向き傾斜面37をなす。ここで、近位側を向く面とは、面の法線が近位側に向かう方向成分を有する面のことをいう。
近位側向き傾斜面37と空間150に包含された第一係止部50とが当接した状態で、第一係止部50が近位側から遠位側に相対移動する方向に外力が付加されると、爪部34が外方向に押し広げられ傾斜する。この結果、第一係止部50および第二係止部30のいずれも破壊されることなく、第一係止部50と第二係止部との係合が解除される。
爪部本体35および突出部36は、例えば一連の板状体から一体的に構成される。
【0037】
本実施形態にかかるクリップ装置100に用いられるクリップ200は、基端部の全体が、第二係止部30と係合可能な第一係止部50をなしている。第一係止部50は、第二係止部30に包含されることによって、第一係止部50と第二係止部30とが係合する。当該係合により、クリップ装置100に対しクリップ200が装着される。
ただし、上述する第二係止部30およびこれと係合する第一係止部50は、本発明を何ら限定するものではない。第二係止部30および第一係止部50は、互いが係合することによってクリップ200がクリップ装置100に装着され、かつ操作ワイヤ20の操作がクリップ200に伝動可能である範囲において、適宜設計することができる。
【0038】
次に、縮径スリーブ70について説明する。
図3に示すとおり、縮径スリーブ70は、スリーブ本体122と、ガイド部120と、スリーブ本体122とガイド部120との間に設けられた段差部124と、を有する。
縮径スリーブ70の少なくとも一部は、シース10内に進退可能に収納されている。縮径スリーブ70は、外力により遠位端部が縮径する。縮径した遠位端部は、シース10内に収納可能である。
【0039】
縮径スリーブ70は、上述のとおり、突出状態と収納状態とに遷移可能である。
突出状態は、スリーブ本体122の中間部までシース10の先端から突出する場合(
図5b)と、ガイド部120の全体がシース10の先端から突出するとともにスリーブ本体122の全体がシース10に収納される場合(
図5c)とを含む。また、突出状態は、シース10の内径よりも大きい外径を有するガイド部120がシース10の先端に当接してクリップ装置100に対し近位側に相対移動することが規制される規制状態である場合(
図5c)を含む。
収納状態は、ガイド部120の遠位端までシース10に収納された状態(
図5a)と、ガイド部120の中間部までがシース10に収納された状態(不図示)を含む。
縮径スリーブ70は、収納状態と突出状態とに遷移可能であるとともに、突出状態において、さらに規制状態となり得るという特性を有する。上記特性により、クリップ装置100に装着されたクリップ200は、シース10に収納され、シース10から突出し、また所定の位置でクリップ装置100に対し近位側に相対移動することが規制され得る。クリップ200の上記規制により、第一係止部50と第二係止部30との係合が解除され得る。クリップ200の動作を含めたクリップ装置100の動作の詳細については後述する。
【0040】
縮径スリーブ70は、突出状態から収納状態に遷移可能となる程度に遠位端部が縮径する。たとえば本実施形態における縮径スリーブ70は、スリーブ本体の遠位端部に加え、ガイド部120、および段差部124が縮径する。
縮径スリーブ70の構成材料(特には縮径可能な遠位端部の構成材料)は、外力により縮径を可能とする部材であれば特定の材質に限定されない。例えば、構成材料は、ゴムなどのエラストマー、ステンレスや鋼などの金属、あるいはこれらの組み合わせであってよい。縮径スリーブ70に対する強度的な要求事項を考慮するならば、縮径スリーブ70を金属材料により構成するとともに、遠位端部の縮径を許容する構造を縮径スリーブ70に設けることが好ましい。上記縮径を許容する構造とは、縮径スリーブ70の周方向において設けられた空間であって、外力により当該空間が周方向において縮小しこれよって縮径可能とする構造を挙げることできる。より具体的な例としては、後述するスリット146を挙げることができる。本実施形態において、スリーブ本体122、および段差部124、ガイド部120は、一材により一体成形されている。
【0041】
スリーブ本体122は、操作ワイヤ20が挿通される管状体である。上記管状体の具体的な例としては、円筒、角筒、円錐または角錐などが挙げられる。スリーブ本体122は、突出状態と縮径状態とにおいて、その形状が変形してもよい。例えばスリーブ本体122は、突出状態であるときには筒状体をなしてよい(
図5b)。また収納状態であるときには、スリーブ本体122は、遠位端部が遠位端に向けて緩やかに細径をなしてよい(
図5a)。
【0042】
ガイド部120は、スリーブ本体122の遠位端部から遠位側に向かって延在している。たとえばガイド部120は、板状体であって外側面と内側面とが略平行である。ただし、ガイド部120はこれに限定されず、少なくとも、突出状態においてスリーブ本体122の外径およびシース10の内径よりも大きい外径を有するよう構成される。これによって上記規制状態が実現可能となる。突出状態においてスリーブ本体122の外径およびシース10の内径よりも大きい外径とは、ガイド部120の少なくとも一部において示されればよい。たとえば、ガイド部120の遠位端あるいは中間部において上記外径よりも径の小さい領域を有していてもよい。
本実施形態におけるガイド部120は、スリット146により分割された板状体が主面を内向きにして周方向に連続して配置されてなる筒状体である。
図3に示すとおり、ガイド部120は、遠位端から近位端まで略等しい外径を有するよう構成することができる。また、図示省略するが、突出状態においてガイド部120が、遠位側に向かって拡径していてもよい。
ガイド部120の図示省略する変形例としては、たとえばガイド部120は、周方向に連続する複数の棒状体から構成されてもよい。ガイド部120の外径とは、ガイド部120を構成する部材の外面に沿って示される外周形状の径であり、上記部材が一の部材であるか、複数の部材であるかは限定されない。
【0043】
本実施形態におけるシース10は、たとえば
図2に示すとおり、線状部材を密巻してなるコイルから構成することができる。
コイルであるシース10とガイド部120との関係では以下の態様が好ましい。
即ち、クリップ装置100は、
図4に示すとおり、ガイド部120の軸方向長さsが、シース10の中心軸に沿って切断した切断面における線状部材の一の断面中心から他の断面中心までの距離tを超える。上記態様では、ガイド部120の外側面の略全体または一部が、シース10を構成するコイルに引っ掛かり難く、シース10内におけるガイド部120の進退移動が良好である。
より好ましくは、ガイド部120の軸方向長さsが上記距離tの2倍以上であり、さらに好ましくは、ガイド部120の軸方向長さsが上記距離tの3倍以上である。
【0044】
特に、ガイド部120の外側面がシース10の軸方向に対し平行である態様では、ガイド部120の軸方向長さsが上記距離tを超えることにより、
図4(A)に示すとおり1を超えるコイル断面11Bが上記外側面に乗り上げ得るため好ましい。
即ち、シース10内においてガイド部120が外方向に広がる力が複数のコイル断面11Bに分散され得る。1を超えるコイル断面11Bがガイド部120の外側面と当接することにより、当該1を超えるコイル断面11Bが、シース10の径方向の外向きに押し出され得る押出し距離は、小さく抑えられる。
したがって
図4aに示すとおりガイド部120の先端が、当該先端より遠位側にあるコイル断面11Aの中心より下端側に当接しやすく、ガイド部120が前方にあるコイル11を順次押しのけ易い。
【0045】
段差部124は、
図2に示すとおり、スリーブ本体122の外径Cとガイド部120の外径Aとの差異により形成された段差である。段差部124は、ガイド部120からスリーブ本体122に向けて細径になるよう傾斜している。これにより、縮径スリーブ70は、突出状態から収納状態にスムーズに遷移可能である。より具体的には、突出状態において段差部124をシース10の先端に当接させるとともに操作ワイヤ20を近位側に引くことにより、縮径スリーブ70を収納状態に遷移させることが可能である。操作ワイヤ20を近位側に引くことにより、縮径スリーブ70の遠位端部を縮径させる外力の少なくとも一部を発生させ得る。
【0046】
ただし、上述は、本実施形態にかかるクリップ装置100において、スリーブ本体122とガイド部120との間に、不連続な段差である段差部124が設けられることを除外する趣旨ではない。不連続な段差である段差部124を有する縮径スリーブ70は、たとえば、スリーブ本体122またはガイド部120の外側から内方向に向けて外力を付与することにより、当該遠位端部を縮径させることができる。
【0047】
次に、縮径スリーブ70に設けられたスリット146について説明する。
図3に示すとおり、縮径スリーブ70は、ガイド部120からスリーブ本体122の遠位端部までに亘り伸長するスリット146が設けられている。たとえば、スリット146は、ガイド部120の遠位端から段差部124を亘り、スリーブ本体122の中間部まで設けられる。
【0048】
スリット146は、ガイド部120が外力により縮径することを可能とするための構成である。スリット146の幅方向において対向するスリットの端面と端面とが近接することによって、縮径スリーブ70が縮径する。スリット146は、1本または2本以上設けることができる。たとえばスリット146は、上記端面と上記端面とが近接可能に切り欠かれた切欠きである。上記端面と上記端面との間は、実質的に空間であってよい。これにより、上記端面と上記端面とが近接し易く、縮径スリーブ70が縮径し易い。また別の態様としては、上記端面と上記端面との間の少なくとも一部には、ゴムなどの弾性部材が適宜充填されていてもよい。これによって、スリット146の設けられた縮径スリーブ70の遠位端部を縮径可能とするとともに、補強することができる。
【0049】
スリット146は、シース10の内径を上回る外径を有する縮径スリーブ70の遠位端部に設けられるとともに、シース10の内径以下である外径を有するスリーブ本体122の遠位端部まで伸長して設けられている。これによって、シース10の内径を上回る外径を有する上記遠位端部を無理なくシース10の内部に収納可能とする。
【0050】
上述するスリット146を備えるクリップ装置100において、縮径スリーブ70は、スリーブ本体122の周方向に連続するとともにスリーブ本体122に設けられたスリット146の少なくとも一部を覆う補強層75が設けられるとよい。補強層75の少なくとも一部が、縮径スリーブ70と接合される。
【0051】
縮径スリーブ70は、スリット146を有しない領域と比較して、スリット146を有する領域が脆弱になる傾向にある。特に、スリーブ本体122からガイド部120に亘りスリット146が設けられる態様では、スリット146の延在距離が長くなる傾向にあり、上記脆弱になる傾向が強い。これに対し、補強層75を設けることにより、スリット146を有する縮径スリーブ70の遠位端部が補強され、当該遠位端部の破損が回避され得る。
【0052】
補強層75は、スリット146の近位側の終端部よりもさらに近位側まで設けられてもよい。スリット146の近位側の終端部の周囲は、特に脆弱度合が高くなる傾向にある。そのため、上記終端部を介して近位側から遠位側までに亘り補強層75を設け縮径スリーブ70を補強することが好ましい。
【0053】
一方、本実施形態において、補強層75の遠位側の終端部は、ガイド部120よりも近位側に位置している。
ガイド部120よりも外径の小さい段差部124またはスリーブ本体122において補強層75の遠位端部を終端させることによって、縮径スリーブ70の最大径が補強層75により増大することを回避し、縮径スリーブ70をコンパクトに構成することができる。
【0054】
たとえば、補強層75の遠位端部は、近位側に向かって細径となる段差部124の近位端部よりも近位側に位置することが好ましい。これにより、シース10の先端を段差部124の外側面に当接させスムーズに摺動させることができる。
【0055】
補強層75は、たとえば径方向に伸縮可能な伸縮部材または径方向に移動可能な伸縮部材から形成されてよい。具体的には、補強層75は、樹脂部材や、ステンレスなどの線状部材であって周方向に巻き回されてなるコイルバネなどであってよい。クリップ装置100において、軸方向とは異なる角度から組織を結紮した腕部40をその状態で操作すると縮径スリーブ70の遠位端部に横力がかかる場合がある。このとき、補強層75の遠位端から遠位方向に露出するガイド部120あるいは段差部124の根元に応力が集中し、当該根元近傍が破損し、あるはい塑性変形する虞がある。これに対し、補強層75が径方向に伸縮可能な部材から構成されることによって、当該応力に対応して径方向に伸縮し、当該応力を逃すことができる。
【0056】
補強層75は、任意の部材から構成されてよい。たとえば樹脂部材や、ステンレスなどの金属部材により補強層75を形成することができる。
より具体的な例としては、補強層75は、軸方向に伸縮可能な伸縮部材から形成されてもよい。上記伸縮部材としては例えば、たとえば金属や、樹脂、ゴムなどのエラストマーなどの部材から構成される。強度的な要求事項を考慮するならば、特に限定はされないが、例えば、上記伸縮部材は、ステンレスやタングステンの細線を等ピッチ、または可変ピッチに巻いたコイルバネであることが好ましい。例えば、当該コイルバネは、縮径スリーブ70の周方向にらせん状に巻き回されてなる。
本実施形態にかかるクリップ装置100は、
図3に示すとおり、伸縮部材がスリーブ本体122の近位端を超えて近位側に伸長する延長部80を有している。延長部80は、操作ワイヤ20の中間部と接続されている。延長部80は、シース10内において進退自在に摺動し、軸方向に伸縮可能である。
【0057】
補強層75と縮径スリーブ70とが連係するとともに、補強層75から近位側に伸長する延長部80が操作ワイヤ20と連係することにより、操作ワイヤ20と縮径スリーブ70とが連係される。
延長部80は、操作ワイヤ20と縮径スリーブ70とを連係する連係部材をなす。連係部材である延長部80と、縮径スリーブ70を補強する補強層75とが、一材かつ一連で構成されることにより、シース10の内部における部品点数を少なくすることができる。
特には、補強層75および延長部80が、一材かつ一連であって、軸方向に伸長可能であり、かつ径方向に伸長可能または変形可能なコイルバネなどの部材から形成されることが好ましい。これによって、補強層75および延長部80をなす一部材が、補強層75の領域では径方向の伸長作用または変形作用を発揮するとともに、延長部80の領域では軸方向の伸長作用を発揮する。
別の態様として、延長部80と補強層75とは異なる部材から構成されるとともに、互いに連係されていてもよい。
【0058】
本実施形態にかかるクリップ装置100は、延長部80の近位端部がセンタリング部90に接続されている。センタリング部90の略中心には、操作ワイヤ20が挿通され固定されている。したがって、操作ワイヤ20の進退方向の動作に連動してセンタリング部90およびこれに接続される延長部80も進退方向に動作可能である。センタリング部90が設けられることによって、センタリング部90の近傍において操作ワイヤ20の挿通位置が中心軸に沿うよう規制される。即ち、センタリング部90によって操作ワイヤ20はシース10内でシース10断面中央にセンタリングされている。操作ワイヤ20は、当該センタリングによって、シース10内部における挿通径路が矯正され、設計に基づき予定される好ましい操作が実現され得る。尚、ここでいうシース10断面とは、シース10の軸方向に対し垂直に切断した切断面を意味する。
【0059】
本実施形態における補強層75は、スリーブ本体122の周方向に亘りスリーブ本体122と接合されて固定されている固定部75Aと、固定部75Aよりも遠位側に位置しスリーブ本体122に対し非固定である非固定部75Bとを有している。
補強層75がスリーブ本体の周方向に亘り設けられるとは、スリーブ本体の周方向の全周において補強層75が連続する場合、およびスリーブ本体の周方向において断続的に補強層75が設けられる場合のいずれも含む。
【0060】
固定部75Aにより、補強層75とスリーブ本体122とが連係されている。固定部75Aが、スリーブ本体122の周方向に亘り設けられることによって、スリーブ本体122の強度を向上させることができる。固定部75Aの形成手段は特に限定されず、接着剤を用いて補強層75とスリーブ本体122とを接着する接着手段、補強層75およびスリーブ本体122の少なくともいずれか一方を熱により溶融し互いを溶着させる溶着手段などを例示することができる。
【0061】
たとえば、
図3に示すコイルである補強層75は、所定の領域に熱をかけて溶融され、スリーブ本体122の外側面に熱融着されている。固定部75Aは、脆弱度合の高いスリット146の近位端部を覆って設けられてもよい。あるいは、固定部75Aは、スリット146の近位端部よりも近位側に設けられてもよい。これによってスリット146の幅方向の変形を固定部75Aによって制限することを回避し、縮径スリーブ70の縮径の自由度が小さくなることを回避することができる。
固定部75Aよりも遠位側に非固定部75Bを設けることにより、スリット146の幅方向の変形が確保される。
図3に示すとおり、縮径状態が解除され、自然状態(相対的な拡径状態)にあるとき、縮径スリーブ70の外側面は、非固定部75Bを構成するコイルの内側面に実質的に当接していてもよい。縮径スリーブ70の遠位端部がシース10に収容されたとき、縮径スリーブ70の遠位端部は縮径し、縮径スリーブ70の外側面は、非固定部75Bを構成するコイルの内側面と離間してもよい(
図5a参照)。
【0062】
クリップ装置100は、腕部40の基端側の領域において進退可能に挿通された締付部材60をさらに有するクリップ200を装着して用いることができる。
段差部124の内側面は、締付部材60と当接することによって締付部材60が縮径スリーブ70に対し近位側に相対移動することを規制する規制部をなす。
【0063】
締付部材60は、腕部40を当該腕部40の拡開方向とは異なる方向に締付けて閉腕させるための部材である。本実施形態では、締付部材60がクリップ200に設けられた例を示した。しかし本実施形態は、締付部材60と同様の機能を有する部材を、クリップ装置100に設ける態様を除外するものではない。
【0064】
上記規制部をなす段差部124の内側面は、段差部124の外側面と略平行に構成された態様、および段差部124の外側面と非平行である態様のいずれも含む。たとえば、当該外側面が不連続な段差であり、かつ当該内側面が近位側に向かって内方向に傾斜していてもよい。あるいは、当該外側面および当該内側面が略平行であり、かつ近位側に向かって内方向に傾斜していてもよい。
【0065】
締付部材60が段差部124に当接することによって縮径スリーブ70に対し近位側に相対移動することが規制された状態(以下、締付部材規制状態ともいう)となる。締付部材規制状態において、さらに操作ワイヤ20が近位側に引かれることによって、第一係止部50およびこれに連係される腕部40が、締付部材60に引き込まれ閉腕する。
【0066】
(第二実施形態)
次に、本発明の内視鏡用クリップ装置キット300(以下、クリップ装置キット300ともいう)について説明する。
図2に示すとおり、クリップ装置キット300は、上述する第一実施例にかかるクリップ装置100と、クリップ200とを備えて構成される。
クリップ200は、基端部(第一係止部50)と、基端部(第一係止部50)より延出し自己拡開力により開腕するとともに外力により閉腕可能な複数の腕部40と、を備える。「自己拡開力」とは、複数の腕部40が互いに向き合う方向に閉じようとする外力に対して反発し、自ら上記互いに向き合う方向とは異なる方向に開こうとする力のことをいう。
【0067】
クリップ装置キット300は、クリップ装置100と、これに装着可能なクリップ200とを備えることにより、取扱い性が良い。またクリップ装置キット300は、クリップ装置100が発揮する効果を享受し、操作ワイヤ20の操作性が良好であるとともに、操作ワイヤ20の操作によるクリップ200の操作性が良好である。
【0068】
クリップ200は、生体組織を結紮するものであり、クリップ200で生体組織を結紮することにより、例えば止血処置、縫縮およびマーキングなどの処置を行うことができる。
本実施形態において示すクリップ200は、一例であり、内視鏡用クリップ装置に用いられるクリップのその他の態様に適宜変更することができる。
【0069】
クリップ200は、クリップ装置100に装着される。詳しくは、クリップ200に設けられた第一係止部50と、クリップ装置に設けられた第二係止部30とが係合することによって、クリップ200がクリップ装置100に装着される。係合の態様として、円筒形の第一係止部50を包含する第二係止部30の例を上述において説明した。しかし、第一係止部50および第二係止部30の係合の態様はこれに限定されるものではなく、クリップ装置100にクリップ200を装着させることが可能な範囲において、上記係合の態様は適宜変更することができる。
【0070】
クリップ200は、上述するとおり、締付部材60を有していてもよい。締付部材60は、たとえばリング状の部材である。リング状の部材である締付部材60の径に対し、閉腕した状態で腕部の先端の通り抜けを禁止する拡大幅部114が腕部40に設けられている。拡大幅部114は、閉腕した状態の腕部40に対し、締付部材60が遠位側に相対移動を禁止する。拡大幅部114よりも近位側には、腕部40の外側面であって外方向に突出する規制部115が設けられている。締付部材60が規制部115に乗り上げて、腕部40の先端側に移動することによって、腕部40が閉腕した状態が維持される。
【0071】
図2に示すとおり、クリップ装置キット300は、段差部124の内側面に、近位側に向かって内向きに傾斜する第一傾斜面125を有している。
一方、締付部材60は、近位端部に、操作ワイヤ20の中心軸に対する第一傾斜面125の傾斜角度と略等しい角度で近位側に向かって内向きに傾斜する第二傾斜面210を有している。
第一傾斜面125と第二傾斜面210とが当接することによって、締付部材60は、縮径スリーブ70に対し近位側に相対移動することを規制されている。
【0072】
第一傾斜面125と第二傾斜面210とを当接させることによって、縮径スリーブ70と締付部材60との当接面は、軸方向に対し垂直方向にずれることが防止される。したがって、第一傾斜面125と第二傾斜面210との当接状態が安定する。また第一傾斜面125と第二傾斜面210とを当接させることによって、縮径スリーブ70の中心軸は、締付部材60の中心軸に重ねあわされてセンタリングされる。
【0073】
図2に示すクリップ装置キット300は、縮径スリーブ70が突出状態にある。クリップ装置キット300は、突出状態にあるガイド部120の内径Dと、締付部材60の外径Eとが略同等となるよう構成されている。即ち、締付部材60は、ガイド部120の内側に嵌合しており、クリップ装置キット300における締付部材60配置姿勢が安定する。
また、突出状態においてガイド部120の内側に締付部材60が嵌合することによって、ガイド部120の外側から内向きの外力が付与された場合であっても、ガイド部120が縮径することが規制される。したがって、ガイド部120は、シース10内に侵入することができず突出状態が維持される。
【0074】
クリップ装置100に対しクリップ200を装着する方法は特に限定されない。たとえば、図示省略するクリップ200が充填されたカートリッジを準備する。上記カートリッジは、充填されたクリップ200を取り出すためのクリップ取り出し開口が設けられる。上記クリップ取り出し開口に対し、シース10の先端を対向させる。その状態で操作ワイヤ20を遠位側に押し出すことによって第二係止部30を遠位側に移動させる。上記クリップ取り出し開口には、シース10がカートリッジに対し遠位側に相対移動することを規制するシース規制部が設けられてよい。シース規制部により遠位側への移動が規制されたシース10から第二係止部30を突出させ、第一係止部50と係合させる。当該係合を維持したまま、カートリッジ開口よりクリップ200を抜き出して、クリップ200が装着されたクリップ装置100をなすことができる。シース10から第二係止部30を突出させたとき縮径スリーブ70も突出状態となり得る。
【0075】
次に、
図5aから
図5c(これらを総称して
図5とも呼ぶ)を用いて、結紮部位を把持するクリップ200の動作に関し説明する。
図5は、クリップ200が装着されたクリップ装置100の把持動作を説明する説明図である。
図5aは、装着されたクリップ200がシース10の内部に収納された状態を示す。このとき縮径スリーブ70は収納状態である。
図5bは、クリップ200がシース10の遠位端より突出し腕部40が拡開した状態を示す。このとき縮径スリーブ70は、突出状態である。
図5cは、クリップ200が閉塞した状態を示す。このとき縮径スリーブ70は突出状態であるとともに規制状態である。
【0076】
第二係止部30とともにシース10から突出して突出状態となった縮径スリーブ70は、遠位端部に外力が付されることによって縮径し、かつ、操作ワイヤ20が近位側に引かれることによって収納状態に遷移する。
図5aに、クリップ装置100に装着されたクリップ200が、縮径スリーブ70とともにシース10に収納された状態を示す。
この状態で体腔内にクリップ装置100を体内に侵入させる。
シース10の遠位側端部が結紮を要する患部近傍に至ったら、まず、操作ワイヤ20を遠位側へ押し出す。これにより、クリップ200および締付部材60が、シース10の先端より突出する。さらに操作ワイヤ20を遠位側に押し出すことによって、縮径スリーブ70におけるガイド部120および段差部124は、シース10の先端より露出し元の径に拡張する。換言すると、縮径スリーブ70の遠位端部は、縮径した状態が解除される。締付部材60は、縮径状態が解除されたガイド部120の内側に嵌合する(
図5b)。締付部材60はガイド部120の内側に嵌合するとともに、締付部材60の近位端部の傾斜面が段差部124の内側面に当接する。
【0077】
次に、結紮部位に対し、クリップ200の位置決めを行う。クリップ200の回転操作は、操作部本体520(
図1)による回転駆動力を操作ワイヤ20を介してクリップ200に伝動して行う。
クリップ200の位置決め終了後、クリップ200先端を結紮部位に押し当てた状態で、操作ワイヤ20を近位側へ引き込む。
締付部材60は、上述のとおりガイド部120の内側に嵌合しているため、縮径スリーブ70に対し近位側に相対移動することが規制されている。このため、締付部材60が縮径スリーブ70の内側を通過してシース10内へ引き込まれることはない。
また、締付部材60がガイド部120に嵌合しているため、外力による縮径スリーブ70先端径の収縮が抑止されており、操作ワイヤ20を大きな力で近位側に引き込んでも縮径スリーブ70がシース10内に引き込まれることがない。締付部材60が嵌合されたガイド部120の外径は、シース10の内径を超える。
図5cにおいて、締付部材60が嵌合されたガイド部120の外径は、シース10の内径を超え、シース10の外径未満である。図示省略するが、締付部材60が嵌合されたガイド部120の外径は、シース10の外径以上であってもよい。即ち、縮径スリーブ70が、クリップ装置100に対し近位側に相対移動することが規制されている。したがって、締付部材60も、クリップ装置100に対し近位側に相対移動することが規制されている。
【0078】
操作ワイヤ20と縮径スリーブ70とは、延長部80によって連係されている。そのため、クリップ装置100に対し縮径スリーブ70および締付部材60が近位側への相対移動を規制された後も、操作ワイヤ20を近位側に引き込むことによって延長部80が伸びる。これとともに、操作ワイヤ20の先端に設けられた第二係止部30およびこれに係合する第一係止部50は、シース10内において更に近位側へ引き込まれる。
【0079】
このようにして、縮径スリーブ70および締付部材60のクリップ装置100に対する近位側への相対移動が規制された後も操作ワイヤ20を近位側に引き込んでいくと、腕部40は、締付部材60内に引き込まれて閉腕し結紮部位を結紮する。ただしこの状態では、再度、操作ワイヤ20を遠位側に押し込むことによって腕部40を拡開可能であるため、結紮部位を把持し直すことが可能である。
【0080】
最適な結紮が確認できた後に、更に操作ワイヤ20を近位側へ引き込むと、締付部材60が腕部40に対し遠位側に相対移動し、腕部40に設けられた規制部115に乗り上げる。これにより、腕部40の閉塞状態が維持される(
図5c)。加えて、腕部40は締付部材60内径より板幅の広い拡大幅部114を有し、拡大幅部114を越えて腕部40が締付部材60内に引き込まれることはない。
【0081】
図5cに示すとおりクリップ200がクリップ装置100に対し近位側に相対移動することが規制された状態で、更に操作ワイヤ20を近位側に引き込む。これにより、第一係止部50と第二係止部30との係合が解除される。以上の動作により、クリップ200はクリップ装置100から離脱し、体内に留置される。
【0082】
以上に本発明の第一実施形態および第二実施態様について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様を含む。各実施形態において説明した事項は、他の実施形態に適宜、適用される。
【0083】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)基端部と、前記基端部より延出し自己拡開力により開腕するとともに外力により閉腕可能な複数の腕部と、を備えるクリップを装着して用いられる内視鏡用クリップ装置であって、
長尺のシースと、
前記シースの内部において進退移動を可能に挿通された操作ワイヤと、
前記シースの遠位端部に収納され、前記操作ワイヤの進行移動に連動して遠位端部が前記シースより突出する突出状態と、前記操作ワイヤの退行移動に連動し、かつ突出する遠位端部が外力により縮径することによって当該遠位端部が前記シースに収納される収納状態と、に遷移可能である縮径スリーブと、
前記操作ワイヤの遠位端部に設けられ前記クリップの前記基端部と係合するための係止部と、を有し、
前記縮径スリーブは、
前記操作ワイヤが挿通される管状のスリーブ本体と、
前記スリーブ本体の遠位端部から遠位側に向かって延在しており前記突出状態において前記スリーブ本体の外径および前記シースの内径よりも大きい外径を有するガイド部と、
を有し、
前記ガイド部の外側面は、前記収納状態において、前記シースの軸方向に対し平行であるか、または遠位側に向かって内向きに傾斜していることを特徴とする内視鏡用クリップ装置。
(2)前記スリーブ本体の外径と前記ガイド部の外径との差異により形成された段差である段差部を有し、
前記段差部が、前記ガイド部から前記スリーブ本体に向けて細径になるよう傾斜している上記(1)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(3)前記シースが、線状部材が密巻状に巻き回されてなる長尺のコイルである上記(1)または(2)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(4)前記ガイド部の軸方向長さが、前記シースの中心軸に沿って切断した切断面における前記線状部材の一の断面中心から他の断面中心までの距離を超える上記(3)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(5)前記ガイド部から前記スリーブ本体の遠位端部までに亘り伸長するスリットが設けられており、
前記スリーブ本体の周方向に連続するとともに前記スリーブ本体に設けられた前記スリットの少なくとも一部を覆う補強層が設けられている上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の内視鏡用クリップ装置。
(6)前記補強層の遠位側の終端部は、前記ガイド部よりも近位側に位置する上記(5)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(7)前記補強層は、前記軸方向に伸縮可能な伸縮部材から形成されており、前記伸縮部材は、前記スリーブ本体の近位端を超えて近位側に伸長する延長部を有し、
前記延長部が前記操作ワイヤの中間部と接続されている上記(5)または(6)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(8)前記補強層は、前記スリーブ本体の周方向に亘り前記スリーブ本体と接合されて固定されている固定部と、前記固定部よりも遠位側に位置しスリーブ本体に対し非固定である非固定部と、と有する上記(5)から(7)のいずれか一項に記載の内視鏡用クリップ装置。
(9)前記腕部の基端側の領域において進退可能に挿通された締付部材をさらに有する前記クリップを装着して用いられる前記内視鏡用クリップ装置であって、
前記段差部の内側面が、前記締付部材と当接することによって前記締付部材が前記縮径スリーブに対し近位側に相対移動することを規制する規制部である上記(2)に記載の内視鏡用クリップ装置。
(10)上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の内視鏡用クリップ装置と、
基端部と、前記基端部より延出し自己拡開力により開腕するとともに外力により閉腕可能な複数の腕部と、を備えるクリップとを備えることを特徴とする内視鏡用クリップ装置キット。
(11)前記クリップが、前記腕部の基端側の領域において進退可能に挿通された締付部材を有し、
前記内視鏡用クリップ装置が、前記スリーブ本体の外径と前記ガイド部の外径との差異により形成された段差である段差部を有し、
前記突出状態において、前記段差部の内側面が、前記締付部材と当接することによって前記締付部材が前記縮径スリーブに対し近位側に相対移動することを規制する規制部である上記(10)に記載の内視鏡用クリップ装置キット。
(12)前記内視鏡用クリップ装置は、前記段差部の内側面に、近位側に向かって内向きに傾斜する第一傾斜面を有し、
前記締付部材は、近位端部に、前記操作ワイヤの中心軸に対する前記第一傾斜面の傾斜の傾斜角度と略等しい角度で近位側に向かって内向きに傾斜する第二傾斜面を有し、
前記第一傾斜面と前記第二傾斜面とが当接することによって、前記締付部材が、前記縮径スリーブに対し近位側に相対移動することが規制される上記(11)に記載の内視鏡用クリップ装置キット。
(13)前記ガイド部の内径が、前記締付部材の外径と略同等である上記(11)または(12)に記載の内視鏡用クリップ装置キット。
(付記1)基端部と、前記基端部より延出し自己拡開性により開腕するとともに外力により閉腕可能な両腕部と、前記腕部の基端側の領域において進退可能に挿通された締付け部材とを備えるクリップを装着して用いられる内視鏡用クリップ装置であって、
長尺のシースと、
前記シースの内部において進退移動を可能に挿通された操作ワイヤと、
前記シースの遠位端部に収納され、遠位端部が前記シースより突出する突出状態と、突出する当該遠位端部が外力により縮径することによって全体が前記シースに収納される全収納状態と、に前記操作ワイヤの前記進退移動に連動して遷移可能である縮径スリーブと、
前記操作ワイヤの遠位端部に設けられ前記クリップの前記基端部と係合するための係止部と、を有し、
前記縮径スリーブは、
前記操作ワイヤが挿通される管状のスリーブ本体と、
遠位端部から遠位側に向かって延在しており前記突出状態において前記スリーブ本体の外径および前記シースの外径よりも大きい外径を有するガイド部と、
前記締付部材が前記縮径スリーブに対し近位側に相対移動することを規制する規制部と、を有し、
前記ガイド部の外側面は、前記全収納状態において、前記シースの内面に対し平行であるか、または遠位側に向かって内方向に傾斜していることを特徴とする内視鏡用クリップ装置。
(付記2)前記スリーブ本体と前記ガイド部との間に形成された段差である段差部が設けられており、前記段差部が前記規制部である上記付記2に記載の内視鏡用クリップ装置。